説明

神経損傷の治療を目的としたPUFAの使用

本発明は、式(I)の多価不飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である化合物の使用であって、ラセミ体、立体異性体または立体異性体の混合物または医薬品として許容できるその塩、または溶媒和物の形態にあり、式中−Alk−が−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−、−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−、−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−(CH−、−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;Rが水素原子であるか;またはRがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環ヘテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか;またはRが式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であって、RおよびRがそれぞれ独立に水素原子または−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする基であるか、またはRが式−(CHOCHOHの基であって、mが1から200の整数であることを特徴とする基であるか;またはRが薬物部分であり;各Rが同一であるかまたは異なりかつそれぞれが独立に水素原子;または基−(C=O)−Rであって、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか、またはRが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であるか、またはRが薬物部分であることを特徴とする基;または式−(CHOCHOHの基であって、nが1から200の整数であることを特徴とする基;または薬物部分を表し;かつ式中前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよび脂肪族基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつ水素原子およびC−Cアルコキシ、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すSR’およびNR’R”から選択される1、2または3個の置換基によって置換され;前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつハロゲン原子、およびシアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、C−Cヒドロキシアルキル、各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すことを特徴とするSR’およびNR’R”から選択される1,2,3または4個の置換基で置換される化合物の;
哺乳類における神経損傷を治療または予防する際の使用を目的とした医薬品の製造における前記使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類における神経損傷、具体的には糖尿病に罹患した患者における神経損傷、すなわち糖尿病性ニューロパチーを治療および/または予防する新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類における神経損傷は、数多くの異なる病因より発生しうる。たとえば、細菌、ウイルスまたはプリオンなどの感染性病原体、具体的にはHIV/エイズなどへの曝露;糖尿病などの代謝性またはミトコンドリア障害;腫瘍、具体的には脳腫瘍;遺伝性疾患;たとえば溶媒、薬剤、アルコール、塗料、工業用化学薬品およびある種の金属などの毒物への曝露;放射線照射;化学療法;外傷;たとえばビタミン欠乏症などの栄養不良;アルツハイマー病またはパーキンソン病などの変性性疾患;炎症性疾患;または鎌形赤血球性貧血に起因する血管閉塞危機などの神経細胞への酸素または血流不足によって引き起こされることがある。
【0003】
哺乳類の神経系は2つのカテゴリー:末梢神経系および中枢神経系に大別される。中枢神経系は脳および脊髄を含む。末梢神経系は、残る中枢神経系の外側の神経系を含む。末梢神経系はさらに体性神経系および自律神経系に分類される。
【0004】
末梢神経系障害は、一般に末梢ニューロパチー、または単純にニューロパチーと呼ばれる。上記のように、哺乳類において神経損傷を引き起こすことが知られている因子が広範囲にある。しかし、ヒトにおける末梢ニューロパチーの主要な原因の1つは糖尿病である。糖尿病に起因する末梢ニューロパチーは、一般的に糖尿病性ニューロパチーと呼ばれる。糖尿病性ニューロパチーは、身体の神経を擾乱および損傷する不規則な血糖レベルの累積的な影響に起因する。
【0005】
糖尿病性ニューロパチーに罹患した患者は、感覚および運動機能のいずれにおいても典型的には陰性(機能喪失)症状および陽性(機能獲得)症状を示す。症状はしびれ、異常感覚(身体部分に対する知覚の低下または喪失)、嚥下障害(嚥下困難)、言語障害、振戦、筋力低下、めまい、疲労感、消沈、顔面、口または眼瞼の下垂、視覚の変化、平衡の喪失、異常歩行、刺痛、疼痛(焼け付くような、刺すようなおよび/または電気ショックのような疼痛)、かゆみ、蟻走感、チクチク感、痙攣、線維束性収縮(筋収縮)および靴擦れを含む。糖尿病性ニューロパチーに起因する自律神経障害は、血圧および心拍数の異常、発汗能力の低下、味覚性発汗、消化不良、便秘、下痢、その後に膀胱感染症に至る可能性のある膀胱機能障害すなわち失禁、インポテンス、および性的機能障害(例:勃起機能障害)を引き起こすことがある。靴擦れは糖尿病性ニューロパチーに罹患した患者では比較的多く、治療せずに放置した場合は四肢切断または死亡を含む健康上極めて重大な意味をもたらすことがある。糖尿病性ニューロパチーは、糖尿病患者の罹患および死亡の主要原因である。
【0006】
現行の糖尿病性ニューロパチーの治療法は三環系抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、抗痙攣剤およびオピオイド鎮痛剤を含む。しかし糖尿病性ニューロパチーに対して利用できる治療法の大半は、疾患による不快な症状からの一時的な救済をもたらすに過ぎない。したがって、現在は背景にある疾患の身体的機構を標的とし、進行速度を低下させるか、または損傷された神経を再生させることは不可能である。さらに、利用できる治療法の多くは望ましくない副作用を伴う。
【0007】
したがって、哺乳類における神経損傷を治療または予防するための、具体的には糖尿病性ニューロパチーを治療または予防するための新たな方法に対するニーズがある。さらに、単に神経損傷に伴う症状を緩和するのではなく、神経損傷それ自体を標的としかつその進行速度を低下させかつ神経の再生を助ける方法に対するニーズがある。
【0008】
9−ヒドロキシオクタデカ−10E,12Z−ジエン酸(9−HODE)は、オクタデカ−9E,12E−ジエン酸(リノール酸またはLA)に由来する市販の多価不飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である。9−HODEは以下に示す構造を有する。
【化1】

【0009】
13−ヒドロキシオクタデカ−9Z,11E−ジエン酸(13−HODE)は、オクタデカ−9E,12E−ジエン酸(リノール酸またはLA)に由来する多価不飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である。13−HODEは以下に示す構造を有する。
【化2】

【0010】
5−ヒドロキシ−エイコサ−6E,8Z,11Z−トリエン酸(5−HETrE))は、ミード酸に由来する市販のPUFA誘導体である。5−HETrEは以下に示す構造を有する。
【化3】

【0011】
8−ヒドロキシ−エイコサ−9E,11Z,14Z−トリエン酸(8−HETrE)は、エイコサ−8Z,11Z,14Z−トリエン酸(ジホモ−γ−リノレン酸またはDGLA)に由来する市販のPUFA誘導体である。8−HETrEは以下に示す構造を有する。
【化4】

【0012】
15−ヒドロキシ−エイコサ−8Z,11Z,13E−トリエン酸(15−HETrE)1は、エイコサ−8Z,11Z,14Z−トリエン酸(ジホモ−γ−リノレン酸またはDGLA)に由来する市販のPUFA誘導体である。15−HETrEは以下に示す構造を有する。
【化5】

【0013】
国際公開番号WO−A−0176568は抗血栓薬として13−HODEを記載する。哺乳類における神経損傷の治療または予防する際の13−HODEの使用は記載しない。
【0014】
糖尿病性ニューロパチーを治療するためにγ−リノレン酸(GLA)、および他の関連PUFAを用いることが知られている。しかし驚くべきことに、本発明で用いる化合物は神経機能の修復においてGLAよりもさらに強力であることが確認されている。したがって、13−HODEはラットにおける運動神経伝導速度の修復においてGLAよりも約3000倍強力である。15−HETrEはGLAよりも約500倍強力である。好都合なことに、これは本発明で用いる化合物をGLAおよび他の関連PUFAよりもさらに低い用量で投与することができることを意味している。
【0015】
驚くべきことに、現在9−HODE、13−HODE、5−HETrE、8−HETrEおよび15−HETrEおよび他の誘導体は神経損傷、具体的には糖尿病性ニューロパチーに伴う損傷を治療または予防することができることが確認されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明は、式(I)の多価不飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である化合物:
【化6】

ラセミ体、立体異性体または立体異性体の混合物、または医薬品として許容できるその塩、または溶媒和物の形態にあり、式中
−Alk−が−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−、−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−、−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−(CH−、−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;
が水素原子であるか;または
がC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環ヘテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか;または
が式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であって、RおよびRがそれぞれ独立に水素原子または−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする基であるか、または
が式−(CHOCHOHの基であって、mが1から200の整数であることを特徴とする基であるか;または
が薬物部分であり;
各Rが同一であるかまたは異なりかつそれぞれが独立に水素原子;または
基−(C=O)−Rであって、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか、またはRが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であるか、またはRが薬物部分であることを特徴とする基;または
式−(CHOCHOHの基であって、nが1から200の整数であることを特徴とする基;または
薬物部分を表し;
かつ式中
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよび脂肪族基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつ水素原子およびC−Cアルコキシ、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すSR’およびNR’R”基を表す1、2または3個の置換基によって置換され;
前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつハロゲン原子、およびシアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、C−Cヒドロキシアルキル、各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すことを特徴とするSR’およびNR’R”から選択される1,2,3または4個の置換基で置換される;
の哺乳類における神経損傷を治療または予防する際に使用する医薬品の製造における使用を提供する。
【0017】
また、式(I)のポリ飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である化合物の使用であって、
【化7】

ラセミ体、立体異性体または立体異性体の混合物または医薬品として許容できるその塩、または溶媒和物の形態にあり、
式中
−Alk−が−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−、−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−、−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−(CH−、−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;
が水素原子であるか;または
がC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環ヘテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか;または
が式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であって、RおよびRがそれぞれ独立に水素原子または−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする基であるか、または
が式−(CHOCHOHの基であって、mが1から200の整数であることを特徴とする基であるか;または
が薬物部分であり;
各Rが同一であるかまたは異なりかつそれぞれが独立に水素原子;または
基−(C=O)−Rであって、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか、またはRが3から29炭素原子を有する脂肪族基であるか、またはRが薬物部分であることを特徴とする基;または
式−(CHOCHOHの基であって、nが1から200の整数であることを特徴とする基;または
薬物部分を表し;
かつ式中
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよび脂肪族基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつ水素原子およびC−Cアルコキシ、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すことを特徴とするSR’およびNR’R”基から選択される1、2または3個の置換基によって置換され;
前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつハロゲン原子、およびシアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、C−Cヒドロキシアルキル、各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すことを特徴とするSR’およびNR’R”から選択される1,2,3または4個の置換基で置換される化合物の;
糖尿病性ニューロパチーによって生じるめまい、消化不良、膀胱感染症、靴擦れ、大腿筋の損耗、性的機能不全(例:勃起機能不全)、しびれ、焼灼感、疼痛、下肢および足の刺痛、温度感覚の低下または消失、足首反射の低下または消失および/または振動感覚の低下または消失を治療または予防する際の使用を目的とした医薬品の製造における使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ラットにおける運動神経における神経伝導速度(NCV)に対する13−HODEの連日投与の効果を判定するためのNCV実験の結果を示す。
【図2】同上。
【図3】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における運動神経伝導速度の比較を示す。
【図4】ラットにおける感覚神経における神経伝導速度(NCV)に対する13−HODEの連日投与の効果を判定するためのNCV実験の結果を示す。
【図5】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における感覚神経伝導速度の比較を示す。
【図6】ラットにおける運動および感覚神経における神経伝導速度(NCV)に対する15−HETrEの連日投与の効果を判定するためのNCV実験の結果を示す。
【図7】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における坐骨神経血流の比較を示す。
【図8】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における熱刺激に対する反応の潜時の比較を示す。
【図9】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における接触性アロジニアの比較を示す。
【図10】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における機械的深部加圧に対する足引込め反応の比較を示す。
【図11】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における海綿体神経刺激に対する海綿体反応の比較を示す。
【図12】非糖尿病ラット(第1の棒グラフ)、糖尿病ラット(第2の棒グラフ)および13−HODEを投与した糖尿病ラット(第3の棒グラフ)における主要な骨盤神経節の比較を示す。
【図13】GLA、13−HODEおよび15−HETreを投与した糖尿病ラットにおける運動NCVの用量−反応曲線を示す。
【図14】(i)15−HETrE、(ii)13−HODEおよび(iii)ヒマワリ油プラセボを投与したラットにおける組織血漿15−HETrEレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび脂肪族基は、非置換であるか、または同一であるかまたは異なりかつ水素原子およびC−Cアルコキシ、ヒドロキシル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルキルオキシ、およびR’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素またはC−Cアルキルを表すことを特徴とする−NR’R”基から選択される1、2または3個、好ましくは1または2個、より好ましくは1個の非置換置換基によって置換される。より好ましい置換基はハロゲン、C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、およびR’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素またはC−Cアルキルを表すことを特徴とするNR’R”基である。特に好ましい置換基はヒドロキシルおよびR’およびR”が同一でありかつ水素を表すことを特徴とするNR’R”基である。
【0020】
上記のアルキル、アルケニル、アルキニルおよび脂肪族基が2個または3個の置換基によって置換されるとき、2個以下の置換基がヒドロキシル基から選択されることが好ましい。より好ましくは、1個以下の置換基がヒドロキシル基より選択される。
【0021】
より好ましくは、上記のアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は非置換である。
【0022】
本明細書で用いるところのC−Cアルキル基は1から6個の炭素原子を含む線形または分岐アルキル基、たとえば1から4個の炭素原子を含むC−Cアルキル基、好ましくは1から2個の炭素原子を含むC−Cアルキル基などである。C−Cアルキル基の例はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルおよびt−ブチルを含む。疑いを避けるために、本発明の1つの化合物中に2個のアルキル基が存在する場合、アルキル基は同一であってもまたは異なっていてもよい。
【0023】
本明細書で用いるところのC−Cアルケニル基は、該当する場合はcisまたはtrans配置のいずれかである、少なくとも1つの二重結合を有し、かつ2から6個の炭素原子を含む線形または分岐アルキル基、たとえば−CH=CHまたは−CH−CH=CH、−CH−CH−CH=CH、−CH−CH=CH−CH、−CH=C(CH)−CHおよび−CH−C(CH)=CHなどの2から4個の炭素原子を含むC−Cアルケニル基、好ましくは2個の炭素原子を含むCアルケニル基などである。疑いを避けるために、本発明の1つの化合物中に2個のアルケニル基が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
本明細書で用いるところのC−Cアルキニル基は2から6個の炭素原子を含む線形または分岐アルキル基、たとえば2から4個の炭素原子を含むC−Cアルキニル基、好ましくは2個の炭素原子を含むCアルキニル基などである。例示的なアルキニル基は−C≡CHまたは−CH−C≡CH、さらには1−および2−ブチニル、2−メチル−2−プロピニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニルおよび5−ヘキシニルを含む。疑いを避けるために、本発明の1つの化合物中に2個のアルキニル基が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
好ましくは、前記C−Cアルキル基はC−Cアルキル基であり、前記C−Cアルケニル基はCアルケニル基でありかつ前記C−Cアルキニル基はCアルキニル基である。
【0026】
本明細書で用いるところのハロゲン原子は塩素、フッ素、臭素またはヨウ素である。
【0027】
本明細書で用いるところのC−Cアルコキシ基またはC−Cアルケニルオキシ基は、典型的にはそれぞれ酸素原子と結合した前記C−Cアルキル(例:C−Cアルキル)基または前記C−Cアルケニル(例:C−Cアルケニル)基である。
【0028】
ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルコキシまたはハロアルケニルオキシ基は、典型的には1個またはそれ以上の前記ハロゲン原子によってそれぞれ置換された前記アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアルケニルオキシ基である。典型的には、1、2または3個の前記ハロゲン原子によって置換される。好ましいハロアルキルおよびハロアルコキシ基は、Xが前記ハロゲン原子、たとえば塩素またはフッ素などであることを特徴とする−CXおよび−OCXなどの過ハロアルキルおよび過ハロアルコキシ基を含む。
【0029】
本明細書で用いるところのC−CアルキルチオまたはC−Cアルケニルチオ基は、典型的には硫黄原子とそれぞれ結合した前記C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基、たとえばS−CHなどである。
【0030】
本明細書で用いるところのC−Cヒドロキシアルキル基は、1個またはそれ以上のヒドロキシ基で置換されたC−Cアルキル基である。典型的には、1、2または3個の前記ヒドロキシ基によって置換される。好ましくは、単一のヒドロキシ基によって置換される。
【0031】
本明細書で用いるところのC−C10アリール基は、6から10個の炭素原子を含む単環式または多環式、好ましくは単環式芳香族環、たとえば6個の炭素原子を含むCアリール基などである。このようなアリール基の例はフェニル、ナフタレンおよびアズレンを含む。フェニルが好ましい。
【0032】
本明細書で用いるところの5から10員環へテロアリール基は、O、SおよびNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、たとえば1、2、3または4個のヘテロ原子などを含む、5または6員環などの単環式または多環式、好ましくは単環式の5から10員環芳香族環である。環が4個のヘテロ原子を含むとき、好ましくはこれらは全て窒素原子である。例はチエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルおよびテトラゾリル基を含む。チエニル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルおよびピラジニル基、たとえばピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルおよびピラジニル基などが好まれる。より好ましい基はチエニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリルおよびトリアジニル、たとえばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリルおよびトリアジニル、最も好ましくはピリジニルである。
【0033】
本明細書で用いるところの5から10員環複素環基は1個またそれ以上、たとえば1、2、3または4個などの炭素原子がN、O、S、S(O)およびS(O)から選択される部分と置換され、かつ1個またはそれ以上の残りの炭素原子が任意に−C(O)−または−C(S)−と置換されることを特徴とする、非芳香族、飽和または不飽和単環式または多環式、好ましくは単環式のC−C10炭素環である。1個またはそれ以上の残りの炭素原子が−C(O)−または−C(S)−と置換されるとき、好ましくは1または2個のみの(より好ましくは2個の)そのような炭素原子が置換される。典型的には、5から10員環複素環は5から6員環である。
【0034】
適切な複素環基は、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ジチオラニル、ジオキソラニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、チオモルホリニル、S−オキソ−チオモルホリニル、S,S−ジオキソ−チオモルホリニル、モルホリニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキソラニル、トリオキソラニル、トリチアニル、イミダゾリニル、ピラニル、ピラゾリニル、チオキソラニル、チオキソチアゾリジニル、1H−ピラゾール−5−(4H)−オニル、1,3,4−チアジアゾール−2(3H)−チオニル、オキソピロリジニル、オキソチアゾリジニル、オキソピラゾリジニル、サクシンイミドおよびマレイミド基および部分を含む。好ましい複素環基は、ピロリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ジチオラニル、ジオキソラニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、チチオモルホリニルおよびモルホリニル基および部分を含む。
【0035】
疑いを避けるために、上記のヘテロアリールおよび複素環基の定義は環の中に存在することのできる「N」部分を指すものの、技術に通じた科学者にとって明らかになるように、隣接するそれぞれの環原子と単結合を経て結合する場合、N原子はプロトン化されるであろう(または以下に定義する置換基を担持するであろう)。
【0036】
本明細書で用いるところのC−C炭素環基は、3から7個の炭素原子を有する非芳香族飽和または不飽和炭化水素環である。好ましくは、3から7個の炭素原子、より好ましくは3から6個の炭素原子を有する飽和または一価不飽和炭化水素環(すなわちシクロアルキル部分またはシクロアルケニル部分)である。例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルおよびその一価不飽和変種、より好ましくはシクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。C−C炭素環基は上に記載されているが1個またはそれ以上の環炭素原子が−C(O)−基と置換されていることを特徴とするC−C炭素環基も含む。より好ましくは0、1または2個(最も好ましくは0個)の炭素原子が−C(O)−と置換されている。最も好ましくは、前記C−C炭素環基はシクロヘキシルである。
【0037】
典型的には、RおよびRにおけるアリール、ヘテロアリール、複素環および炭素環基は非置換であるか、または1、2、3または4個の非置換置換基によって、たとえば1、2または3個の非置換置換基などによって置換される。好ましい置換基はハロゲン原子およびC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、ニトロ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cヒドロキシアルケニル、C−Cアルキルチオ、C−Cアルケニルチオおよび各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素またはC−Cアルキルを表すことを特徴とする−NR’R”基を含む。より好ましい置換基はハロゲン原子および非置換C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素またはC−Cアルキルを表すことを特徴とするSR’およびNR’R”基を含む。より好ましい置換基はハロゲン原子、ヒドロキシル基およびC−CアルキルおよびC−Cアルコキシ基を含む。
【0038】
最も好ましくは、上記のアリール、ヘテロアリール、複素環および炭素環基は非置換である。
【0039】
およびRにおけるアリール、ヘテロアリール、複素環および炭素環基が2、3または4個の置換基によって置換されるとき、2個以下の置換基がヒドロキシル、シアノおよびニトロから選択されることが好ましい。より好ましくは、1個以下の置換基がヒドロキシル、シアノおよびニトロから選択される。
【0040】
本明細書で用いるところの医薬品として許容できる塩は、医薬品として許容できる酸または塩基との塩である。医薬品として許容できる酸は塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸などの無機酸、およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸などの有機酸のいずれをも含む。医薬品として許容できる塩基はアルカリ金属(例:ナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例:カルシウムまたはマグネシウム)の水酸化物およびアルキルアミン、アラルキルアミンおよび複素環アミンなどの有機塩基を含む。
【0041】
用語「溶媒和物」は1個またはそれ以上の溶質、すなわち本発明の化合物または医薬品として許容できるその塩の分子と、1個またはそれ以上の溶媒分子の複合体または凝集物を指す。そのような溶媒和物は、典型的には溶質と溶媒の相当固定されたモル比を有する結晶状の固形物である。典型的な溶媒は、例として水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などを含む。溶媒が水であるとき、形成される溶媒和物は水和物である。
【0042】
本発明の化合物はキラル中心を含む。したがって、ラセミ混合物、1つの光学異性体、または1つまたはそれ以上の立体異性体が濃縮された混合物の形態で使用することができる。記載および請求されているところの本発明の範囲は、本発明の化合物ラセミ形態、さらには個々の光学異性体および立体異性体濃縮混合物を包含する。
【0043】
用語「または医薬品として許容できるその塩または溶媒和物」は、本発明の化合物の医薬品として許容できる塩の溶媒和物と言った、全ての塩および溶媒和物の順列を含むことを意図している。
【0044】
およびRは3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であってもよい。典型的には、脂肪族基は環状ではない。脂肪族基は、典型的には線形または分岐、好ましくは線形である。典型的には、脂肪族基は7から25個の炭素原子、より好ましくは11から25個の炭素原子を有する。脂肪族基は、典型的には非置換であるかまたは1個のヒドロキシル基によって置換される。脂肪族基は典型的には非置換である。
【0045】
脂肪族基は飽和であっても、一価不飽和または多価不飽和であってもよい。飽和脂肪族基が好ましい。
【0046】
典型的には、飽和脂肪族基は7から25個の炭素原子、好ましくは11から17個の炭素原子を有する。
【0047】
一価不飽和脂肪族基は典型的には単一のC=C二重結合を含む。二重結合はcisまたはtrans配置を有する。単一の二重結合は脂肪族基のどの点に存在していてもよいが、典型的には脂肪族基が結合する(C=O)基より遠位の脂肪族基の末端から7または9炭素原子にある。典型的には、一価不飽和脂肪族基は7から25個の炭素原子、より好ましくは15から23個の炭素原子を有する。
【0048】
多価不飽和脂肪族基は、典型的には2つまたはそれ以上のC=C二重結合、たとえば2、3、4、5または6つのC=C二重結合を含む。各二重結合はcisまたはtrans配置を有しうる。二重結合は脂肪族基のどの点に存在していてもよいが、しかし典型的には、脂肪族基が結合する(C=O)基から最も離れたC=C二重結合は脂肪族基が結合する(C=O)基より遠位の脂肪族基の末端から3、6または9炭素原子にある。典型的には、多価不飽和脂肪族基は7から25個の炭素原子、好ましくは15から23個の炭素原子を有する。
【0049】
典型的には、前記脂肪族基はR−COHが脂肪酸であることを特徴とする基Rである。好ましくは、前記脂肪酸はラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、cis−バクセン酸、オレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、またはミード酸である。より好ましくは、前記脂肪酸はラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸またはステアリン酸である。
【0050】
1つの実施形態においては、3から29個の炭素原子を有する脂肪族基は、本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体の脂肪族基、すなわち脂肪族基は−Alk−が上記に定義する通りであることを特徴とする式−(CH−Alk−(CHCHの脂肪族基である。
【0051】
好ましい実施形態においては、3から29個の炭素原子を有する脂肪族基は13−ヒドロキシオクタデカジエン酸または15−ヒドロキシエイコサトリエン酸、すなわち脂肪族基は−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OH)−(CHCH、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OH)−(CHCHである。
【0052】
より好ましい実施形態においては、式(I)のPUFA誘導体は、各R’が同一であるかかまたは異なりかつ13−ヒドロキシオクタデカジエン酸または15−ヒドロキシエイコサトリエン酸の脂肪族基である、すなわちR’が−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OH)−(CHCH、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OH)−(CHCHであることを特徴とする、式R’O−CH−CH(OR’)−CH−OR’のものである。好ましくは、各R’は同一である。したがって、式(I)のPUFA誘導体は好ましくは
【化8】

または
【化9】

である。
【0053】
−Alk−部分の左手側は−COOR部分を担持する不飽和炭素鎖と結合し、かつ−AlK−基の右手側は飽和炭素鎖と結合することを理解すべきである。
【0054】
、RおよびRは「薬物部分」であってもよい。典型的には、「薬物部分」はニューロパチー、ニューロパチー性疼痛および/または糖尿病性ニューロパチーを治療する上で有効である薬物部分である。適切なそのような薬物部分は技術上周知である。
【0055】
が薬物部分であるとき、薬物部分は酸素原子と直接的または間接的に結合、好ましくは直接的に結合してもよい。Rが薬物部分であるとき、薬物部分は酸素分子と直接的に結合、または間接的、好ましくは直接的に結合してもよい。前記酸素原子への直接的結合は、カルボキシ基などの薬物部分上のあらゆる好適な官能基を介して発生しうる。
【0056】
が薬物部分であるとき、薬物部分はカルボキシル基と直接的または間接的に結合、好ましくは直接的に結合してもよい。前記カルボキシ基への直接的結合は、ヒドロキシル基またはアミノ基といった薬物部分上のあらゆる好適な官能基を介して発生しうる。
【0057】
間接的結合はリンク部分を介して発生するであろう。当業者は適切なリンク部分を十分に認識するであろう。適切なリンク部分は二および多官能性アルキル、アリール、アラルキルまたはペプチド部分である。
【0058】
典型的には、薬物部分はアルドースレダクターゼ阻害剤、ACE阻害剤、ビタミンまたは抗酸化剤である。典型的には、薬物部分はブプレノルフィン、カンナビジオール、テトラヒドロカンナビノール、デュロキセチン、エパルレスタット、リドカイン、プレガバリン、varicella zosterウイルス、アルプロスタジル、ラコサミド、トランサシン、メキシレチン、アセチル−L−カルニチン、アミトリプチリン、ケタミン、デスベンラファキシン、デキストロメトルファン、フィダレスタット、ガバペンチン、GW−1000(GW Pharmaceuticals)、ラモチグリン、メマンチン、NGX−4010(NeurogesX)、ラニレスタット、ルボキシスタウリン、681323(GSK)、ABT 894 PII NP(Abbott/NeuroSearch)、ADL 5859(Adolor/Pfizer)、アジュレム酸、アドレナリンα−受容体作動薬、ベラプロスト、ビシファジン、ブリバラセタム、ブピバカイン、BVT 115959(Biovitrum)、カンデサルタンシレキセチル、カンナビノール、CNS 5161(CeNeS)、コレノイラミド、ダバサイシン、ガランタミン、FARBETIC、CNSB 001(CNSBio)、ガバペンチンエナカルビル、VEGF ZFP(Sangamo BioSciences)、イブジラスト、インダンタドール、KD 7040 PII NP(Kalypsys)、リドレスタットMK 0759(Merck&Co)、ペランパネル、プロインスリンC−ペプチド、QR 333(Quigley)、ラジプロジル、ラルフィナミド、REN 1654(Evotec)、SLC 022(Solace)、S,S−レボキセチン、SSR 180575(Sanofi−Aventis)、TAK 428(武田薬品工業)、チムコダール、トランサシン、TRO 19622(Trophos)、トランスドゥールブピバカイン、ビタミンB、ビタミンB12またはリポ酸である。好ましくは、薬物部分はプレガビリン、カルバメザピン、リドカイン、ガパペンチンまたはシンバルタである。
【0059】
式(I)の化合物に1つ以上の薬物部分が存在するとき、各薬物部分は同一であっても異なっていてもよい。典型的には、薬物部分を含む式(I)の化合物はそのような薬物部分を1個のみ含む。
【0060】
典型的には、−Alk−は、各Rが同一であるかまたは異なりかつ本明細書に定義する通りであることを特徴とする、−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−である。
【0061】
好ましくは、−Alk−は、Rが本明細書に定義する通りであることを特徴とする−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−である。
【0062】
典型的には、Rは薬物部分ではない。
【0063】
典型的には、Rが水素原子であるか;またはRがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、Cアリール、5から6員環へテロアリール、C−C炭素環または5から6員環複素環基であるか;またはRが式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であって、RおよびRが本明細書に定義する通りであることを特徴とする基であるか;またはRが式−(CHOCHOHの基であって、mが本明細書に定義する通りであることを特徴とし、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるか、または同一であるか異なりかつハロゲン原子、C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、およびR’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表す−NR’R”基から選択される1、または2個の非置換置換基で置換されることを特徴とする基であり;かつ前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるか、または同一であるか異なりかつハロゲン原子、およびシアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、および各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキル基を表すNR’R”基から選択される1,2または3個の非置換置換基で置換される。
【0064】
好ましくは、Rが水素原子であるか;またはRが非置換C−Cアルキル基であるか;またはRが、RおよびRが本明細書に定義する通りであることを特徴とする式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であるか;またはRが、mが本明細書に定義する通りであることを特徴とする式−(CHOCHOHの基である。
【0065】
より好ましくは、Rが水素原子であるか;またはRが、RおよびRが本明細書に定義する通りであることを特徴とし、かつRまたはRのうち少なくとも1つが−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが本明細書に定義する通りであることを特徴とする式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基である。
【0066】
最も好ましくは、Rは水素原子である。
【0067】
mは典型的には5から150、好ましくは10から50の整数である。
【0068】
は、典型的にはRが本明細書に定義する通りであることを特徴とする−(C=O)−Rである。
【0069】
は、典型的にはRが本明細書に定義する通りであることを特徴とする−(C=O)−Rである。
【0070】
好ましくは、RおよびRは、それぞれ各Rが同一であってもまたは異なっていてもよくかつ本明細書に定義する通りであることを特徴とする−(C=O)−Rである。
【0071】
典型的には、RおよびRが共に−(C=O)−Rであるとき、Rは3から29個の炭素原子を有する脂肪族基ではない。
【0072】
は、本明細書に定義するところの、3から29個の炭素原子を有する脂肪族基である。典型的には、前記脂肪族基は飽和である。典型的には、Rは7から25個の炭素原子、より好ましくは11から17個の炭素原子を有する脂肪族基である。好ましくは、Rは、R−COHが金酸、ミリスチン酸、パルミチン酸またはステアリン酸であることを特徴とする基Rである。
【0073】
典型的には、Rは薬物部分ではない。
【0074】
典型的には、Rが水素原子であるか;またはRが基−(C=O)−Rであって、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、Cアリール、5から6員環へテロアリール、C−C炭素環または5から6員環複素環基であるか、またはRが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする基であるか;またはRが式−(CHOCHOHの基であって、nが本明細書に定義する通りであることを特徴とし、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるか、または同一であるか異なりかつハロゲン原子、C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、およびR’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すNR’R”基から選択される1,または2個の非置換置換基で置換されることを特徴とする基であり;かつ前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるか、または同一であるか異なりかつハロゲン原子、およびシアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、および各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキル基を表すことを特徴とするNR’R”基から選択される1,2または3個の非置換置換基で置換される。
【0075】
好ましくは、Rが水素原子であるか;またはRが基−(C=O)−Rであって、Rが非置換C−Cアルキルであることを特徴とする基であるか;またはRが−(C=O)−Rであって、Rが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする基であるか;またはRが式−(CHOCHOHの基であって、nが本明細書に定義する通りであることを特徴とする基である。
【0076】
より好ましくは、Rが水素原子であるか;またはRが、Rが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする−(C=O)−Rであるか;またはRが、nが本明細書に定義する通りであることを特徴とする式−(CHOCHOHの基である。
【0077】
最も好ましくは、Rは水素原子である。
【0078】
nは典型的には5から150、好ましくは10から50の整数である。
【0079】
が3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であるとき、前記脂肪族基は本明細書に定義する通りである。典型的には、前記脂肪族基は飽和である。典型的には、Rは7から25個の炭素原子、好ましくは11から17個の炭素原子を有する脂肪族基である。好ましくは、Rは、R−COHが金酸、ミリスチン酸、パルミチン酸またはステアリン酸であることを特徴とする基Rである。
【0080】
好ましい実施形態においては、−Alk−は−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]−CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;Rは水素原子、非置換C−Cアルキル基、または式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であってRおよびRがそれぞれ独立に水素原子または−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが11から25個の炭素原子を有する線形脂肪族基であって、該脂肪族基が非置換であるかまたは1個のヒドロキシル基によって置換される脂肪族基であること特徴とする基であるか、またはRが式−(CHOCHOHの基であってmが5から150の整数であることを特徴とする基であり;かつ各Rが同一であるかまたは異なりかつ水素原子;基−(C=O)−RであってRが非置換C−Cアルキルであることを特徴とする基、または基−(C=O)−RであってRが11から25個の炭素原子を有する線形脂肪族基であって該脂肪族基が非置換であるかまたは1個のヒドロキシル基で置換されることを特徴とする基;または式−(CHOCHOHの基であってnが5から150の整数であることを特徴とする基である。
【0081】
より好ましい実施形態においては、−Alk−は−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;Rが水素原子、式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であってRおよびRがそれぞれ独立に水素原子または−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが11から17個の炭素原子を有する非置換線形、飽和脂肪族基であることを特徴とし、かつRまたはRの少なくとも一方が−(C=O)−Rであることを特徴とする基であり;かつ各Rが同一であるかまたは異なりかつ水素原子;基−(C=O)−RであってRが11から17個の炭素原子を有する非置換線形、飽和脂肪族基であることを特徴とする基;または式−(CHOCHOHの基であってnが10から50の整数であることを特徴とする基である。
【0082】
典型的には、RおよびRはいずれも水素原子である。
【0083】
さらにより好ましい実施形態においては、−Alk−は−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;Rは水素原子でありかつRは水素原子である。
【0084】
特に好ましい実施形態においては、−Alk−は−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり、かつRおよびRはいずれも水素原子である。この実施形態においては、式(I)のPUFA誘導体は15−HETrEでありかつ式
【化10】

で表される。
【0085】
他の実施形態においては、−Alk−は−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり、かつRおよびRはいずれも水素原子である。この実施形態においては、式(I)のPUFA誘導体は13−HODEでありかつ式
【化11】

で表される。
【0086】
1つの実施形態においては、式(I)のPUFA誘導体はRおよびS光学異性体のラセミ混合物として存在する。
【0087】
他の実施形態においては、式(I)のPUFA誘導体はR光学異性体として存在する。
【0088】
他の実施形態においては、式(I)のPUFA誘導体はS光学異性体として存在する。
【0089】
典型的には、哺乳類はヒトである。
【0090】
典型的には、本発明の使用は化合物を経口的に、非経口的にまたは静脈内に投与することを包含する。経口投与が好ましい。
【0091】
本発明の使用が化合物を非経口的にまたは静脈内に投与することを包含するとき、化合物は典型的には本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体の塩または溶媒和物である。
【0092】
典型的には、本発明の使用は1日1回またはそれ以上の投与、好ましくは1日1から4回の投与、より好ましくは1日1から2回の投与として化合物を投与することを包含する。
【0093】
典型的には、本発明の使用は1μg/kg/日から100mg/kg/日、好ましくは10μg/kg/日から50mg/kg/日、より好ましくは50μg/kg/日から10mg/kg/日、最も好ましくは0.1mg/kg/日から5mg/kg/日の1日用量で化合物を投与することを包含する。
【0094】
典型的には、本発明の使用は哺乳類、好ましくはヒトにおける神経損傷、好ましくは末梢ニューロパチー、より好ましくは代謝および/または内分泌障害に起因する末梢ニューロパチー、最も好ましくは糖尿病性ニューロパチーを治療することを包含する。
【0095】
1つの実施形態においては、神経損傷は鎌形赤血球貧血によって生じる血管閉塞性危機に起因する神経損傷である。
【0096】
1つの実施形態においては、神経損傷は中枢神経系に対する神経損傷である。したがって、この実施形態においては、本発明の化合物はアルツハイマー病、パーキンソン病および/または認知症を含む中枢神経系の障害を治療および/予防する際の使用を目的としている。
【0097】
好ましい実施形態においては、神経損傷は末梢神経系に対する神経障害であり、すなわち本発明の化合物は末梢ニューロパチーを治療および/または予防する際の使用を目的とする。
【0098】
末梢ニューロパチーは、典型的には遺伝性疾患、代謝性および/または内分泌性障害、毒性原因、フルオロキノリン毒性症候群、炎症性疾患、ビタミン欠乏症、物理的外傷、帯状疱疹、悪性疾患、HIV/エイズ、放射線照射および/または化学療法によって生じる末梢ニューロパチーである。
【0099】
上述の遺伝性疾患はフリードライヒ運動失調症およびシャルコー・マリー・トゥース症候群を含む。上述の代謝性および/または内分泌性ディスコーダーは糖尿病、慢性腎不全、ポルフリア、アミロイドーシス、肝不全および甲状腺機能亢進症を含む。上述の毒性原因はアルコール依存症、薬物毒性(例:ビンクリスチン、フェニトイン、イソニアジドなど)、有機金属中毒、重金属中毒およびビタミンB過剰摂取を含む。上述の炎症性疾患はギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス、らい病、シェーグレン症候群を含む。上述のビタミン欠乏症はビタミンB12、ビタミンA、ビタミンEおよびビタミンB欠乏症を含む。上述の物理的外傷は神経の圧迫、挟締および切断を含み、かつ発作による損傷も含む。
【0100】
典型的には、末梢ニューロパチーは代謝性および/または内分泌性障害に起因する末梢ニューロパチーである。好ましくは、末梢ニューロパチーは糖尿病性ニューロパチーである。
【0101】
本明細書で用いるところの糖尿病は1型および2型糖尿病を共に含む。
【0102】
典型的には、糖尿病性ニューロパチーは感覚神経、運動神経および/または自律神経の糖尿病性ニューロパチーである。
【0103】
1つの実施形態においては、糖尿病性ニューロパチーは脳ニューロパチーまたは糖尿病性第3脳神経麻痺である。
【0104】
所見は式(I)の化合物が神経機能を改善するというものである。したがって、本発明は、哺乳類において神経機能を改善する際の使用を目的とした医薬品の製造における、本明細書に定義するところの化合物の使用を提供する。典型的には、前記哺乳類はニューロパチー、具体的には糖尿病性ニューロパチーに罹患している。本発明は、哺乳類において、神経機能を改善することによってニューロパチー、具体的には糖尿病性ニューロパチーを治療または予防する際の使用を目的とした医薬品の製造における、本明細書に定義するところの化合物の使用も提供する。
【0105】
本発明は、糖尿病性ニューロパチーによって生じるしびれ、知覚異常、嚥下障害、言語障害、振戦、筋力低下、めまい、疲労感、消沈、顔面、口または眼瞼の下垂、視覚の変化、平衡感覚の喪失、異常歩行、刺痛、灼熱感、疼痛(鎌形赤血球貧血による疼痛を含む)、具体的には焼け付くような、刺すようなおよび電気ショックのような疼痛、かゆみ、蟻走感、チクチク感、下肢および足の刺痛、温度感覚の低下または喪失、足首反射の低下または喪失、振動に対する感受性の低下または喪失、痙攣、線維束性収縮、筋肉損耗、具体的には大腿筋の筋肉損耗、血圧および心拍数の異常、発汗能力の低下、味覚性発汗、消化不良、便秘、下痢、膀胱機能障害、失禁、膀胱感染症、インポテンス、および性的機能障害(例:勃起機能障害)を治療または予防する際の使用を目的とした医薬品の製造における、本明細書に定義するところの化合物の使用も提供する。糖尿病性ニューロパチーによって生じるめまい、消化不良、膀胱感染症、靴擦れ、大腿筋の損耗、性的機能不全(例:勃起機能不全)、しびれ、焼灼感、疼痛、下肢および足の刺痛、温度感覚の低下または消失、足首反射の低下または消失および/または振動に対する感受性の低下または消失を治療または予防することが好ましい。性的機能不全、具体的には勃起機能不全を治療することがより好ましい。
【0106】
典型的には、本発明の使用は本明細書で定義するところの化合物を、1つまたはそれ以上のさらなる治療薬と併用投与することを包含する。前記のさらなる治療薬は、典型的には糖尿病、ニューロパチー、ニューロパチー性疼痛および/または糖尿病性ニューロパチーを治療する際に有効である。そのような治療薬は当業者に周知であり、かつアルドースレダクターゼ阻害薬、ACE阻害薬、ビタミンおよび抗酸化剤を含むが、これに限定されない。適切なさらなる薬剤はブプレノルフィン、カンナビジオール、テトラヒドロカンナビノール、デュロキセチン、エパルレスタット、リドカイン、プレガバリン、varicella zosterウイルス、アルプロスタジル、ラコサミド、トランサシン、メキシレチン、アセチル−L−カルニチン、アミトリプチリン、ケタミン、デスベンラファキシン、デキストロメトルファン、フィダレスタット、ガバペンチン、GW−1000(GW Pharmaceuticals)、ラモチグリン、メマンチン、NGX−4010(NeurogesX)、ラニレスタット、ルボキシスタウリン、681323(GSK)、ABT 894 PII NP(Abbott/NeuroSearch)、ADL 5859(Adolor/Pfizer)、アジュレム酸、アドレナリンα−受容体作動薬、ベラプロスト、ビシファジン、ブリバラセタム、ブピバカイン、BVT 115959(Biovitrum)、カンデサルタンシレキセチル、カンナビオール、CNS 5161(CeNeS)、コレノイラミド、ダバサイシン、ガランタミン、FARBETIC、CNSB 001(CNSBio)、ガバペンチンエナカルビル、VEGF ZFP(Sangamo BioSciences)、イブジラスト、インダンタドール、KD 7040 PII NP(Kalypsys)、リドレスタットMK 0759(Merck&Co)、ペランパネル、プロインスリンC−ペプチド、QR 333(Quigley)、ラジプロジル、ラルフィナミド、REN 1654(Evotec)、SLC 022(Solace)、S,S−レボキセチン、SSR 180575(Sanofi−Aventis)、TAK 428(武田薬品工業)、チムコダール、トランサシン、TRO 19622(Trophos)、トランスドゥールブピバカイン、ビタミンB、ビタミンB12およびリポ酸を含む。1つまたはそれ以上のさらなる治療薬の、本明細書に定義するところの化合物と併用投与するための適切な用量は、当業者に明らかとなるであろう。
【0107】
本発明で用いられる化合物は、典型的には市販されているか、または既知の方法の相似によって調製してもよい。したがって、9−HODE、13−HODE、5−HETrE、8−HETrEおよび15−HETrEは全て市販されている(Cayman Chemicals)。これらの入手可能な脂肪酸を既知の方法により容易に誘導体化して式(I)のPUFA誘導体を得ることができる。
【0108】
たとえば、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか;またはRが式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であってRおよびRが本明細書に定義する通りであることを特徴とする基であるか;またはRが式−(CHOCHOHの基であって、mが本明細書で定義する通りであることを特徴とする基であることを特徴とする、本明細書で定義するところの式(I)のPUFA誘導体は、式
【化12】

の化合物であって、式中−Alk−が本明細書に定義する通りでありかつXが脱離基、たとえばハロゲン分子、トシル化物またはメシル化物基などである化合物を、式R’−OHのアルコールであって、R’がC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか;またはR’が式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であってRおよびRが本明細書に定義する通りであることを特徴とする基であるか;またはR’が式−(CHOCHOHの基であってmが本明細書に定義する通りであることを特徴とする基であることを特徴とするアルコールでエステル化することによって調製することができる。代替的に、Xはヒドロキシル基であってもよい。その場合、反応は好ましくは酸性条件、または適切な触媒、たとえばピリジンなどの存在下で遂行される。式R’−OHの化合物は、典型的には市販されているか、または既知の方法の相似によって調製してもよい。
【0109】
が基−(C=O)−Rであることを特徴とし、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか、またはRが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする、本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体は、Rが水素であることを特徴とする本明細書で定義するところの式(I)のPUFA誘導体を、カルボン酸誘導体Y−(C=O)−R’であって、R’がC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか、またはR’が3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であり、かつYが脱離基、たとえばハロゲン原子、トシル化物またはメシル化物基などであることを特徴とするカルボン酸誘導体で処理することによって調製することができる。式Y−(C=O)−R’の化合物は、典型的には市販されているか、または既知の方法の相似によって調製してもよい。
【0110】
が式−(CHOCHOHの基であることを特徴とし、nが本明細書に定義する通りであることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体は、Rが水素であることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体を、式Z−(CHOCHOHの化合物であって、nが本明細書に定義する通りでありかつZが良好な脱離基、たとえばハロゲン原子、トシル化物またはメシル化物基などであることを特徴とする化合物で処理することによって調製することができる。式Z−(CHOCHOHの化合物は、典型的には市販されているか、または既知の方法の相似によって調製してもよい。
【0111】
が本明細書に定義するところの薬物部分であることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体は、式
【化13】

のPUFA誘導体であって、式中−Alk−が本明細書に定義する通りでありかつXが脱離基、たとえばハロゲン原子、トシル化物またはメシル化物基などであるPUFA誘導体を、(a)上記のPUFA誘導体のX(C=O)と反応することのできる求核基を含む薬物、または(b)上記に定義するところのリンカー部分と結合する薬物であって、該リンカー部分が上記のPUFA誘導体のX(C=O)と反応することのできる求核基を含む薬物で処理することにより調製することができる。上記のPUFA誘導体の基X(C=O)と反応することのできるそのような基の例はヒドロキシルおよびアミノ基を含む。
【0112】
が本明細書に定義するところの薬物部分であることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体は、Rが水素であることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体を、(a)PUFA誘導体上のヒドロキシル基と反応することのできる求電子基を含む薬物、または(b)上記に定義するところのリンカー部分と結合する薬物であって、該リンカー部分がPUFA誘導体上のヒドロキシル基と反応することのできる求電子基を含む薬物で処理することによって調製することができる。ヒドロキシル基と反応できるそのような基の例は、酸塩化物およびハロゲン化アルキルを含む。
【0113】
が基−(C=O)Rであることを特徴とし、Rが本明細書に定義するところの薬物部分であることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体は、Rが水素であることを特徴とする本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体を、カルボン酸誘導体Y−(C=O)−R”であってR”が本明細書に定義するところの薬物部分であり、かつYが脱離基、たとえばハロゲン原子、トシル化物またはメシル化物基などであることを特徴とするカルボン酸誘導体で処理することによって調製することができる。式Y−(C=O)−R”の化合物は、典型的には市販されているか、または既知の方法の相似によって調製してもよい。
【0114】
本発明は、本明細書に定義するところの哺乳類において、本明細書に定義するところの神経損傷を治療または予防する方法における使用を目的とした、本明細書に定義するところの本発明の化合物、および医薬品として許容できる希釈剤または担体を含む医薬組成物も提供する。好ましい医薬組成物は無菌でありかつ発熱性物質を含まない。
【0115】
担体は典型的にはモノ、ジ、またはトリグリセリド油脂である。担体は、典型的にはトウモロコシ、ヒマワリ、ベニバナ、綿実、グレープシード、オリーブ、イブニングプリムローズ、ルリチチャ、魚肉または魚肝油、または16〜26個の炭素原子および1つまたはそれ以上の二重結合を含む脂肪酸のエステルを含む。前記エステルは、典型的にはエチル−エイコサペンタエン酸(エチル−EPA)、オレイン酸、リノール酸、α−リノール酸、ステアリドン酸、γ−リノレン酸、ジホモγ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸エステルである。
【0116】
医薬組成物は、典型的にはレシチンの存在下でパルミチン酸アスコルビル、トコフェロールおよび/またはアスコルビン酸などの脂溶性抗酸化剤をさらに含む。
【0117】
医薬組成物は、典型的には凝集剤、分散剤、浸透圧調節塩、緩衝剤、甘味料および着色料から選択される1つの添加剤をさらに含む。
【0118】
医薬組成物は、典型的にはディアテティック組成物、または錠剤、糖衣錠、カプセル、顆粒、坐剤、溶液、懸濁液および凍結乾燥組成物から選択される製剤として投与される。
【0119】
医薬組成物が溶液の形態にあるとき、組成物は、典型的には本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体の塩または溶媒和物および水を含む。
【0120】
医薬組成物が懸濁液の形態にあるとき、組成物は、典型的には本明細書に定義するところの本発明の化合物、水、およびCremopohorまたはポリソルベートなどの、1つまたはそれ以上の界面活性剤を含む。
【0121】
典型的には、本発明の医薬組成物は本明細書に定義するところの1つまたはそれ以上の追加的治療薬をさらに含む。医薬組成物中に存在する1つまたはそれ以上のさらなる治療薬の量は、当業者に明らかとなるであろう。
【0122】
本発明は、本明細書において定義するところの哺乳類において、本明細書において定義するところの神経損傷を治療または予防する方法における使用を目的とした、本明細書に定義するところの化合物も提供する。
【0123】
本発明は、本明細書において定義するところの哺乳類において、本明細書において定義するところの神経損傷を治療または予防する方法における使用を目的とした、本明細書に定義するところの1つまたはそれ以上の化合物を含む医薬品も提供する。医薬品は、典型的には、本明細書に定義するところの医薬組成物の形態で製剤化される。
【0124】
本発明は、本明細書に定義するところの化合物も、相当純粋な形態で、または1つまたはそれ以上の医薬品として許容できる希釈剤または担体と共に、本明細書において定義するところの哺乳類において、本明細書に定義するところの神経損傷を治療または予防する方法における使用を目的として提供する。1つまたはそれ以上の医薬品として許容できる希釈剤または担体は、典型的には上記に定義する通りである。
【0125】
本明細書で用いるところの用語「相当純粋な形態」は、典型的には50%またはそれ以上、好ましくは75%またはそれ以上、より好ましくは90%またはそれ以上、さらにより好ましくは95%またはそれ以上、かつ最も好ましくは99%またはそれ以上の純度にある化合物を指す。
【0126】
本発明は、本明細書に定義するところの哺乳類において、本明細書に定義するところの神経損傷を治療または予防する方法であって、該方法が前記哺乳類に対して本明細書に定義するところの式(I)のPUFA誘導体である化合物または医薬品として許容できるその塩または溶媒和物の治療的に有効な量を投与することを含む方法も提供する。
【実施例】
【0127】
全ての実験は、英国「1986年動物処置法」および米国国立衛生研究所「1985年改訂版実験動物管理基準」に規定された規則に従って実施された。
【実施例1】
【0128】
(糖尿病の誘発および治療)
試験開始時点で週齢19週の雄性Sprague−Dawleyラット(アバディーン大学コロニー)を用いた。無菌0.9%生理食塩水に新たに溶解したストレプトゾシンの40〜45mg/kgの腹腔内注射によって糖尿病を誘発した。24時間後に高血糖(血糖>19.9mM)および糖尿を測定することによってこれを確認し、血液(尾静脈)および尿グルコースレベル用試験紙を用いて糖尿病状態を毎週モニタリングした。体重も毎日モニタリングして体重増加(β細胞機能の部分的回復を示しかつ糖尿病状態を除外する)を確認した。
【0129】
6週間糖尿病の治療を行わず、その後4実験群(各群n=6)を、食餌に添加しヒマワリ油媒体に分散した様々な用量の13−HODE(13−ヒドロキシジエン酸、Equateq、英国ルイス島)の連日経口投与により2週間の期間治療した。実験群は、本発明の代表的な化合物13−HODEを0.01mg/kg/日から100mg/kg/日の範囲で複数用量投与された。
【0130】
(神経伝達速度)
ラットをチオブタバルビタールナトリウム(50〜100mg/kg腹腔内)で麻酔した。気管に人工呼吸用のカニューレを挿入した。
【0131】
坐骨神経を坐骨切痕と膝の間で露出し、Cameron NEら(1989年)Q J Exp Physiol 74:917−926およびCameron NEら(1991年)Diabetes 40:532−539の報告に従い、糖尿病に対する感受性および治療効果について坐骨神経全体を代表する前脛骨筋への神経分岐において、同軸二極電極を用いて運動神経伝導速度(NCV)を測定した。各刺激部位からの誘発筋電図記録(EMG)電位を8回平均し、刺激電極間の距離を2つの部位から誘発されたEMG電位発生間の平均潜時差で割ることにより、平均運動神経NCVを算出した。熱電対プローブで神経温度をモニタリングし、輻射熱により36〜38℃の範囲に維持した。電熱毛布を用いて体温も37℃付近に維持した。
【0132】
実施例1の用量−反応曲線を図1および2に示す。非糖尿病ラット、糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットにおける運動神経伝導速度の比較は図3に示す通りである。
【0133】
NCVは末梢神経系における神経機能の有用な指標であり、かつ末梢ニューロパチー、特に糖尿病性ニューロパチーのバイオマーカーである。糖尿病性ニューロパチーに罹患した患者は正常な健康患者で予測されるよりも低いNCVを有する。ラットにおいては、60m/sのNCVが正常、健康ラットの典型である。50m/sのNCVが糖尿病性ニューロパチーに罹患したラットの典型である。ラットにおいて、13−HODE投与により運動NCVが糖尿病ラットの予測値(約50m/s)から非糖尿病ラットの予測値(約60m/s)まで明確に改善することが分かる。
【実施例2】
【0134】
鼠径部から腓腹中央部までの感覚NCVを測定したこと以外は実施例1と同様の様式で実験を実施した。単極白金フック電極を用いて、足首で直接的な神経誘発電位を記録した。
【0135】
実施例2の用量反応曲線は図4に示す通りである。非糖尿病ラット、糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットにおける感覚神経伝導速度の比較は図5に示す通りである。
【0136】
ラットにおいて、13−HODEの投与により感覚NCVが糖尿病ラットの予測値(約50m/s)から非糖尿病ラットの予測値(約60m/s)まで明確に改善したことが分かる。
【実施例3】
【0137】
13−HODEの代わりに15−HETrEを用いたこと以外は実施例1および2と同様の様式で実験を実施した。
【0138】
実施例3の結果を図6に示す。
【0139】
ラットにおいて、15−HETrEの投与の結果運動および感覚NCVが糖尿病ラットの予測値(約50m/s)から非糖尿病ラットの予測値(約60m/s)まで明確に改善したことが分かる。
【実施例4】
【0140】
(糖尿病の誘発および治療)
ストレプトゾトシンの注射により(40〜45mg/kg腹腔内)、成熟(週齢19週)雄性Sprague−Dawley系に糖尿病を誘発させた。市販の血中(尾静脈)および尿中グルコースレベル試験紙を用いて、糖尿病状態を週1回モニタリングした。体重も毎日モニタリングした。糖尿病状態の基準は;血糖値>19.9mM、糖尿、および体重増加のエビデンス(β細胞機能に部分的な回復を示す)がない、とする。実験終了時に、血漿グルコースの測定のために血液サンプルを採取することとした。
【0141】
実験は逆転(介入)パラダイムによりデザインした:糖尿病ラットに対する治療を6週間行わないことで神経血管機能不全を発生させた。その後次の2週間に、食品添加物としてヒマワリ油媒体に分散して与えた(50mL/2.5kg食餌)本発明の代表的な化合物13−HODEを1mg/kg/日用量で投与した。非糖尿病対照ラットおよび媒体のみを投与したラットの群も検討した。
【0142】
(坐骨血流)
Day TJ,Lagerlund TD,Low PA(1989)ラット坐骨神経における血流量の測定に用いられたHクリアランス曲線の分析、J Physiol 414:35−54およびCameron NE,Cotter MA,Low PA(1991)ラットの実験的初期糖尿病における神経血流:伝導障害との関係Am J Physiol 261:E1−E8の報告による方法を用いて、非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与された糖尿病ラット、および13−HODEを投与された糖尿病ラットにおける坐骨神経神経内膜血流を、微小電極ポーラログラフィおよび水素クリアランスにより評価した。ラットには人工呼吸を実施した。頸動脈にカニューレを挿入して血圧をモニタリングし、また必要があればラットにd−ツボクラリン(頸動脈カニューレより2mg/kg)を用いて神経筋ブロックを与え、機械的動作アーチファクトを低下させた。手技、および必要に応じて与えた補助的なチオブタバルビタール麻酔に対する血圧のあらゆる反応を観察することにより麻酔のレベルをモニタリングした。標的神経組織を露出し、切開部位周囲の組織を金属リングに縫合し、37℃の鉱物油で満たされたプールを形成した。記録中、輻射熱によりプール温度を35〜37℃に維持した。皮下参照電極に対して250mVに分極させたガラス絶縁白金微小電極を、神経構造に挿入した。吸入ガスに10%Hを添加し、OとNの比率をそれぞれ20%と70%に調節した。電極によって記録されたH電流が安定化し、動脈血との平衡を示したとき、H供給を遮断し、N供給を適切に上昇させた。2分間以上電極電流に体系的な低下がないと定義される、安定したベースラインに到達するまでHクリアランスを記録した。次に、この方法を他の神経部位で繰り返した。実験後、クリアランス曲線をデジタル化し、さらにコンピュータにより、非線形回帰分析および一般的両対数方程式を用いて、片対数または両対数曲線をデータにフィッティングさせた:
y=a exp (−bx)+c exp(−dx)+e
式中、yは電極水素電流(任意の単位)、xは時間(分)、aおよびcはそれぞれ高速(非栄養)および低速(栄養)クリアランス成分、bは高速成分およびでdは低速成分(mL/分/mL神経)、かつeはベースライン電極電流(任意の単位)である。組織密度を1と仮定すると、栄養血流はd×100(mL/分/100g)と算出された。2つの測定値の平均を取って神経血流パラメータを表した。
【0143】
実施例4の結果を図7に示す。
【0144】
糖尿病ラットでは坐骨神経内膜血流が半減し、これは13−HODEの投与によって完全に修復されることが分かる。
【実施例5】
【0145】
実施例4と同様に、非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットの群を入手した。
【0146】
最終実験の前に、足の侵害性熱刺激に対する引込め反射についての侵害受容潜時を、市販の機器(Ugo−Basile、Comerio、イタリア)を用いてHargreavesプランター試験により評価した。非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットを、その中で自由に動くことのできる底部がガラス製のパースペックス密閉箱から構成される熱試験装置に配置した。30分間の馴化の後、ガラス製底部を通して一定出力の赤外線刺激の焦点を足の踵に合わせ、反射的な足の引込みの潜時を光電モニターにより自動的に記録した。
【0147】
各セッションについて、左右それぞれの足より2回、4回の測定値を得、平均値を最終引込み潜時とした。
【0148】
実施例5の結果を図8に示す。
【0149】
図8より、糖尿病ラットでは潜時の低下があることが分かった。これは潜在的侵害性熱に対する感度が上昇していることを示す。この感度の上昇は13−HODEの投与によって完全に修正された。
【実施例6】
【0150】
実施例4と同様に、非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットの群を入手した。
【0151】
非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットにおける接触性アロディニアを、電子式von Freys毛髪装置を用いてモニタリングした。試験は恒温室で毎日同じ時間に実施した。1日に両足についてアロディニアを測定した。
【0152】
実施例6の結果を図9に示す。
【0153】
図9より、糖尿病ラットは接触性アロディニアの上昇、すなわち触覚刺激(接触)に対する足引込めに対する閾値の低下を示すことが分かる。これは、非糖尿病ラットにとって非侵害性の刺激に対して反射反応が起こることを示す。13−HODEの投与はこの効果を完全に逆転させる。
【実施例7】
【0154】
実施例4と同様に、非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットの群を入手した。
【0155】
最終実験の前に、Randall−Sellito試験により機械的刺激に対する侵害受容閾値を測定した。次に、非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットにおける機械的加圧閾値を、1日に左右の足で2回ずつ3日間評価した。
【0156】
実施例7の結果を図10に示す。
【0157】
図10より、糖尿病ラットが機械的深部圧迫に対して感受性の上昇を示すことが分かる。13−HODEを投与したところ、このパラメータは小さいながらも統計的に有意に改善した。
【実施例8】
【0158】
実施例4と同様に、非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットの群を入手した。
【0159】
非糖尿病対照ラット、媒体のみを投与した糖尿病ラットおよび13−HODEを投与した糖尿病ラットをチオブタバルビタール(50〜100mg/kg静脈内)で麻酔した。気管に人工呼吸用のカニューレを挿入した。頸動脈にカニューレを挿入して全身血圧をモニタリングした。主要な骨盤神経節および腹部海綿体神経を鈍的に切開して露出し、液状パラフィンプールに浸漬した。細い二極白金刺激電極を神経の周囲に留置した。圧トランスデューサーに接続した23Gニードルを用いて海綿体空隙にカニューレを挿入した。1〜32Hzの範囲の周波数での60秒間の閾上(3〜5mA)神経刺激に対応して、海綿体圧反応を記録した(刺激時間1.5〜2m秒)。次に、刺激開始より75秒間の平均全身圧に対する圧力発生曲線下面積について周波数応答曲線を作成した。
【0160】
実施例8の結果を図11に示す。
【0161】
図11は、60秒間の間圧応答が神経刺激の周波数に依存し、周波数が高いほど応答はプラトーに達するまで大きくなることを示す。複数の刺激周波数において顕著な糖尿病欠損があり、8Hz以上では統計的有意性が高い。これは13−HODEの投与によって完全に修正された。周波数反応曲線全体を比較するとき(すなわち1回の比較において収集した全てのデータを用いる場合)、13−HODE投与群の曲線は非糖尿病対照よりも有意に大きな圧応答を示す(2元ANOVA;p<0.01)。これは注目すべき治療効果である。
【実施例9】
【0162】
陰茎に供給される海綿体神経線維が発生する細胞体を収容する主要な骨盤神経節の血流を測定したことを除き、上記の実施例4と同様に実験を実施した。
【0163】
実施例9の結果を図12に示す。
【0164】
図12は、糖尿病ラットでは血流が低下し、13−HODEの投与によって非糖尿病範囲まで回復することを明示する。
【実施例10】
【0165】
糖尿病ラットにおける運動NCVに対するGLA、13−HODEおよび15HETrEの効果を判定するために、実施例1の方法に従って実験を実施した。
【0166】
実施例10の用量−反応曲線を図13として示す。
【0167】
3種類の投与の効果の評価は、図13に示したデータより算出したED50値によって得た。GLAについてのED50値は164.7mg/kgである。13−HODEについてのED50値は0.057mg/kgである。15−HETrEについてのED50値は0.252mg/kgである。
【0168】
したがって、13−HODEはGLAよりも約3000倍強力である。15−HETrEはGLAよりも約500倍強力である。
【実施例11】
【0169】
(i)15−HETrE、(ii)13−HODEおよび(iii)ヒマワリ油プラセボを2週間投与したラット集団において、血漿および神経組織中の15−HETrEレベルを測定した。
【0170】
集団(i)における平均15−HETrEレベルは1.28μLであると確認された(標準偏差0.83)。集団(ii)における平均15−HETrEレベルは0.57μLであると確認された(標準偏差0.33)。集団(iii)における平均15−HETrEレベルは0.26μLであると確認された(標準偏差0.30)。
【0171】
これらの結果は図14にグラフとして示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の多価不飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である化合物:
【化1】

ラセミ体、1つの立体異性体または立体異性体の混合物または医薬品として許容できるその塩または溶媒和物の形態にあり、式中
−Alk−が−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−、−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−、−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−(CH−、−(CH−CH(OR)−[trans]CH=CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−、または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であり;
が水素原子であるか;または
がC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環ヘテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか;または
が式−CH−CH(OR)−CH−(OR)の基であって、RおよびRがそれぞれ独立に水素原子または−(C=O)−Rであることを特徴とし、Rが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であることを特徴とする基であるか、または
が式−(CHOCHOHの基であって、mが1から200の整数であることを特徴とする基であるか;または
が薬物部分であり;
各Rが同一であるかまたは異なりかつそれぞれが独立に水素原子;または
基−(C=O)−Rであって、RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール、5から10員環へテロアリール、C−C炭素環または5から10員環複素環基であるか、またはRが3から29個の炭素原子を有する脂肪族基であるか、またはRが薬物部分であることを特徴とする基;または
式−(CHOCHOHの基であって、nが1から200の整数であることを特徴とする基;または
薬物部分を表し;
かつ式中
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよび脂肪族基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつ水素原子およびC−Cアルコキシ、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すSR’およびNR’R”から選択される1、2または3個の置換基によって置換され;
前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環基が同一であるかまたは異なりかつそれぞれ非置換であるかまたは同一であるかまたは異なりかつハロゲン原子、およびシアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルコキシ、C−Cハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、C−Cヒドロキシアルキル、各R’およびR”が同一であるかまたは異なりかつ水素または非置換C−Cアルキルを表すことを特徴とするSR’およびNR’R”から選択される1,2,3または4個の置換基で置換される;
の哺乳類における神経損傷を治療または予防するために使用する医薬品の製造における使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、Rが水素原子であることを特徴とする前記使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用であって、Rが水素原子であることを特徴とする前記使用。
【請求項4】
前述の請求項のうちいずれか1つに記載の使用であって、−Alk−が−(CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−または−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であることを特徴とし、各Rが同一であるかまたは異なりかつ請求項1または3に定義する通りであることを特徴とする前記使用。
【請求項5】
請求項4に記載の使用であって、−Alk−が−(CH−[cis]CH=CH−CH−[cis]CH=CH−[trans]CH=CH−CH(OR)−であることを特徴とし、Rが請求項1または3に記載する通りであることを特徴とする前記使用。
【請求項6】
前述の請求項のうちいずれか1つに記載の使用であって、前記PUFA誘導体がR光学異性体として存在することを特徴とする前記使用。
【請求項7】
請求項1から4のうちいずれか1つに記載の使用であって、前記PUFA誘導体がS光学異性体として存在することを特徴とする前記使用。
【請求項8】
前述の請求項のうちいずれか1つに記載の使用であって、前記哺乳類がヒトであることを特徴とする前記使用。
【請求項9】
前述の請求項のうちいずれか1つに記載の使用であって、前記化合物が経口的、非経口的または静脈内投与されることを特徴とする前記使用。
【請求項10】
前述の請求項のうちいずれか1つに記載の使用であって、前記神経損傷が末梢ニューロパチーであることを特徴とする前記使用。
【請求項11】
請求項10に記載の使用であって、前記末梢ニューロパチーが糖尿病性ニューロパチーであることを特徴とする前記使用。
【請求項12】
請求項11に記載の使用であって、前記糖尿病性ニューロパチーが感覚神経、運動神経および/または自律神経の糖尿病性ニューロパチーであることを特徴とする前記使用。
【請求項13】
糖尿病によって発生する、めまい、消化不良、膀胱感染症、靴擦れ、大腿筋の損耗、性的機能不全、しびれ、焼灼感、疼痛、下肢および脚の刺痛、温度感覚の低下または消失、足首反射の低下および/または振動感覚の低下を治療または予防する際の使用を目的とした医薬品の製造における、請求項1から7のうちいずれか1つに定義されるところの、式(I)の多価不飽和脂肪酸(PUFA)誘導体である化合物のラセミ体、1つの立体異性体または立体異性体の混合物、または医薬品として許容できるその塩、または溶媒和物の形態での使用。
【請求項14】
勃起機能不全における、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1または8に定義するところの、哺乳類における、請求項1および10から12のうちいずれか1つに定義するところの、神経損傷を治療または予防する方法における使用を目的とした、請求項1から7のうちいずれか1つに定義されるところの化合物、および医薬品として許容できる希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項1または8に定義するところの、哺乳類における、請求項1および10から12のいずれか1つに定義するところの、神経損傷を治療または予防する方法であって、前記方法が請求項1から7のいずれか1つに定義するところの式(I)のPUFA誘導体である化合物または医薬品として許容できるその塩、または溶媒和物の治療的に有効な量を前記哺乳類に投与することを含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−525362(P2012−525362A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507808(P2012−507808)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000817
【国際公開番号】WO2010/125330
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511265741)イクウエイテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】