説明

秘匿文書およびこの種の文書におけるレーザーマーキングの形成方法

【課題】本発明は、少なくとも一つのレーザー光による秘匿文書におけるレーザー刻印の形成方法に関する。
【解決手段】秘匿文書は、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と少なくとも部分的に重り、不透明領域を有する少なくとも一つの反射層とを備える。少なくとも一つの反射層は、少なくとも一つの透明領域を有し、レーザー刻印可能層のレーザー処理により、少なくとも視覚的に著しく変化しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのレーザー光による秘匿文書におけるレーザー刻印の形成方法に関する。秘匿文書は、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と少なくとも部分的に重なり、不透明領域を有する少なくとも一つの反射層とを備える。
【背景技術】
【0002】
複製からの保護としての秘匿文書類へのレーザー刻印の導入は、特許文献1で知られている。身分証や同様のデータ搬送体は、この場合、レーザー刻印可能層、反射金属層、および透明カードカバー層により、この順番で形成される。レーザー光の支援により、幾何学的な識別が、カードカバー層を通じ、反射層およびレーザー刻印可能層に形成される。レーザー刻印可能層は、この場合、カードコア層のコーティングとして適用され、反射層はレーザー刻印可能層を完全にはカバーせず、その結果、反射層だけでなく、レーザー刻印可能層にも識別の形成が可能である。
【0003】
さらに、レーザー刻印可能層と、少なくともある領域で重なる透明な光学可変層を備えたデータ搬送体の形成方法が、特許文献2で知られている。光学可変層は、例えば異なる視認角度で異なる色を示すような、異なる印象を与える。透明な、光学可変層は、観測者に面するレーザー刻印可能層側に配置され、使用されるレーザー照射に対して高い透明度を有する。レーザー光により、視覚認知可能な刻印、特に黒色の刻印が、光学可変層を通じてレーザー刻印可能層に記録され、特に形成されたレーザー刻印に重なる光学可変層の領域において、光学可変効果が明確に視認される。一方、光学可変層によりカバーされるレーザー刻印可能層の他の領域においては、光学可変効果は明確に視認されない。
【0004】
他方、特許文献1による不透明な反射領域を備えたセキュリティ要素は、不透明な金属領域の高い反射性のため、背景から独立して、視覚的に明確に認知可能である。反射金属層は、反射金属層に形成された開口部において、レーザー照射により変化した材料のみが視覚できるように、その下方に配置されるレーザー刻印可能層のレーザー刻印中に、幾何学的に切削される。レーザー刻印可能層に、反射金属層における開口部の形態に依存しないレーザー刻印の情報コンテンツを形成することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 44 10 431 A1
【特許文献2】WO 01/62509 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、秘匿文書においてレーザー刻印を形成する方法と、従来より強い光学的印象を与える本方法で形成された秘匿文書を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層と、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と少なくとも部分的に重り、不透明領域を有する少なくとも一つの反射層とを備えた秘匿文書における、少なくとも一つのレーザー光によるレーザー刻印の形成方法に対し、目的は、少なくとも一つの反射層が、反射層面に垂直に見た場合、少なくとも一つの反射層と少なくとも一つのレーザー刻印可能層とが重なる少なくとも一つの重複領域に、少なくとも一つの反射層の不透明領域により少なくとも2つの側面が囲まれた少なくとも一つの透明領域を備えて形成され、少なくとも一つの反射層が、少なくとも一つのレーザー光用の少なくとも一つのレーザー照射光源と少なくとも一つのレーザー刻印可能層との間に配置され、レーザー刻印が、少なくとも一つの透明領域を通じて視覚的に認知可能であるように、少なくとも一つのレーザー刻印可能層に形成され、少なくとも一つの反射層が、少なくとも視覚的に大きな変化なく維持されること、により達成される。
【0008】
本発明による方法は、不透明または半導体領域および透明領域を備えた、レーザー刻印中のレーザー光の経路におけるレーザー刻印可能層の上の反射層の視覚的印象の変更なく、または、視覚的印象の部分的な変更で、レーザー刻印可能層へのレーザー刻印を可能にする。これは、反射層が実際はわずかに変化し得るが、観察者に対しては、拡大鏡や顕微鏡等の支援なしに視覚的に認知され得ないことを意味する。例えば反射作用におけるような、視覚的印象のわずかな変化は、付加的な特別のセキュリティ効果として、むしろ望ましいかもしれない。すくなくとも一つの反射層の不透明領域は、背景と独立して認知し得る強い印象の光学効果を達成する。使用されるレーザー光に対して透明性を有するように少なくとも広範囲で形成されたすくなくとも一つの反射層の半透明または透明領域において、透明領域を通じて形成されたその下方にあるレーザー刻印可能層のレーザー刻印は、可視化される。この場合、レーザー刻印は、好ましくは、観察者に対して光学的に、不透明領域により互いに分離された多数の反透明または透明領域に広がる。
【0009】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層と、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と少なくとも部分的に重なり、不透明領域を有する少なくとも一つの反射層とを有し、少なくとも一つの反射層が、反射層面に垂直に見た場合、少なくとも一つの反射層と少なくとも一つのレーザー刻印可能層とが重なる少なくとも一つの重複領域に、少なくとも一つの反射層の不透明領域により少なくとも2つの側面が囲まれた少なくとも一つの透明領域を備えて形成される秘匿文書に対し、目的は、少なくとも2つの透明領域にわたる、レーザー刻印可能層において隣接するレーザー刻印が、少なくとも2つの隣接する透明領域において、観察者に対して視覚的に認知可能であり、レーザー刻印が、反射層における透明領域の形態に無関係に形成され、レーザー刻印可能層におけるレーザー刻印が、観察者に対して視覚的に認知不可能であるように、不透明領域の下で遮断されること、により達成される。
【0010】
これは、レーザー刻印が、少なくとも一つの反射層のレーザー刻印可能層への適用前に、レーザー刻印可能層に既に存在したような印象を視覚的に与える。
【0011】
一般に、英数字、または、文字列、シンボル、ロゴ、画像、写真、キャプション、線、指紋等の生体認証データが、少なくとも一つのレーザー光により、識別票または刻印として、レーザー刻印可能層に永久的に記録される。
【0012】
身元証、パスポート、身分証、銀行カード、チケット、紙幣のような有価文書等が、特に秘匿書類として理解される。レーザー光は、秘匿書類または有価文書を個性化、個人化し、名前、誕生日、住所、サイン、写真等、またはシリアル番号、バーコード等のような他のデータが、文書に形成される。この場合、一般に、黒白刻印、グレースケール画像、カラー画像、またはカラー刻印が形成され得る。
【0013】
反射層としては、金属層が好んで用いられるが、例えば、シリコン、ゲルマニウムまたは硫化鉛の層も適している。
【0014】
少なくとも一つの反射層の不透明領域が、反射層面に垂直に見た場合、あるパターン、および/または、格子、および/または、平行領域、および/または、波線として形成されていること確証されている。さらに、不透明領域は、同じまたは異なる行列間隔、および/または、同じまたは異なるマトリクスドットサイズを有するドットマトリクスを形成し得る。
【0015】
少なくとも一つの透明領域が、好ましくは、全ての側面で不透明領域に囲まれている。
【0016】
不透明領域における少なくとも一つの反射層の少なくとも重大な視覚的機能障害は、レーザー刻印中、不透明領域に形成される、0.2〜150μm範囲の厚さの、少なくとも一つの反射層と、少なくとも一つの反射層の不透明領域と少なくとも一つの透明領域とを通過する、レーザー刻印用の少なくとも一つのレーザー光とにより、効果的に回避される。
【0017】
秘匿文書に通常用いられる反射層に比べて、不透明領域における少なくとも一つの反射層のきわめて高い密度により、反射層材料は、少なくとも一つのレーザー光が不透明領域を横切るレーザー照射中に、部分的にのみ蒸発または損傷され、または全くされない。厚い反射層の放熱が十分に高い場合、反射層は、不透明領域において蒸発しない。いずれにしても、不透明領域の横断後、十分な厚さの反射層が、不透明領域に残り、レーザー光が横断しない不透明領域に対して、視覚的に、または実質的に等価となる。
【0018】
この場合、少なくとも一つの反射層を形成するための材料は、できる限りレーザー照射を吸収しないことが確証されている。好ましくは、少なくとも一つの反射層が、特に、銀、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、銅等の金属層として形成される。
【0019】
反射層は、幾何学的に順に重ねて配置された、異なる材料の少なくとも二つの層を含む多層構造であり得る。例えば、薄く、観察者に見える、光学的に特徴ある反射層が、可視化が意図されず、特に放熱の機能を果たす、厚く、光学的に特徴のない反射層に組み合わせられ得る。
【0020】
さらに、特にレーザー光の吸収の低減効果を有する回折凹凸構造が、反射層の不透明領域に配置され得る。
【0021】
不透明領域における少なくとも一つの反射層の視覚的機能障害は、レーザー刻印中に、レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光により実施される、少なくとも一つの反射層の不透明領域の少なくとも一部の位置検出により、広く回避される。レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光は、レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光が、少なくとも一つの反射層の不透明領域のどの部分にも作用しないように、位置検出から測定されるデータに基づいて制御される。
【0022】
あるいは、レーザー光のパワーの低減が、反射層の不透明領域で行われる。
【0023】
この場合、位置検出は、光学的に行われることが好ましい。この場合、不透明領域の位置は、少なくともある領域において、センサーユニットにより光学的に検出され、測定されたデータは、演算ユニットに転送される。演算ユニットは、データに基づいて、レーザーを制御する。
【0024】
この場合、一方では、選択ポイントのみにおいて行われ、不透明領域の参照画像が演算ユニットに記録される位置検出の可能性がある。測定データと、不透明領域の記録された参照データとの同期化が行われ、参照データに対する不透明領域のどのような歪みに対しても、検出が可能となり、レーザー光の制御に取り入れることができる。同期化により算出された、全ての不透明領域の実際の位置は、レーザー光の制御用ベースとして用いられ、不透明領域は、レーザー処理が除外され、または低減されたパワーのレーザー光で作用される。
【0025】
他方では、特にカメラにより、全ての不透明領域、特にレーザー刻印を形成するレーザー光のレーザー光路における不透明領域の位置の直接的光学的検出の実施が可能である。少なくとも一つの反射層の全ての不透明領域の検出画像は、レーザーを制御する要求データを生成し、レーザー処理から不透明領域を除外し、または、低減されたパワーのレーザー光で作用する。これは、例えば、製品誤差により、不透明領域が、個々のまたは個人のデータまたはキネグラム(登録商標)の構造を変える場合、特に利点である。
【0026】
レーザー刻印を形成するレーザー光のレーザー光路にある不透明領域が検出された場合、例えばサインまたはシリアルナンバーの形態となるべきレーザー光路は、データーレコードとして演算ユニットに記録されている必要がある。データレコードベースで、少なくとも一つのレーザー刻印を形成するレーザー光が照射される全ての点で、レーザー刻印可能層の光学的スキャンが行われる。スキャン中に不透明領域が測定された点では、データが生成され、これらのデータは、不透明領域において、レーザー処理がなされないように、または、低減されたパワーのレーザー処理がなされるように、レーザー制御に用いられる。その結果、反射層の不透明領域のどのような歪みも直接補正される。
【0027】
少なくとも一つの反射層が、少なくとも一つの光学的に検知可能な位置マークを備えて形成され、位置マークの位置が測定されること、あるいは、反射層に無関係に、少なくとも一つの光学的に検知可能な位置マークが、秘匿文書に形成され、位置マークの位置が測定されることが確証されている。位置マークとしては、回折マーク、印刷マーク、レーザーで形成されたマーク、機械読み取り可能マーク、赤外照射により検出可能なマーク、磁気マーク等が適している。反射層自体は、位置マークを形成するため、矢印、バー、ドット等の形態の不透明領域を備えて形成され得る。
【0028】
少なくとも一つの反射層または秘匿文書が、少なくとも三つの光学的に検知可能な位置マークを備えて形成され、少なくとも三つの位置マークの位置が、少なくとも一つの反射層が少なくとも一つのレーザー刻印可能層に適用される際に生じ得る少なくとも一つの反射層の歪みを検出および補正可能となるように測定されることが好ましい。
【0029】
不透明領域における少なくとも一つの反射層の視覚的機能障害は、レーザー刻印中に、レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光と組み合わされた、少なくとも一つの検出レーザー光により、効果的に回避され、または、少なくとも一つのレーザー光と平行に導かれ、少なくとも一つの検出レーザー光が、少なくとも一つの反射層の不透明領域の存在を検出する際に、レーザー刻印形成用の少なくとも一つのレーザー光のパワーの低減、または、そのレーザー光のスイッチオフが行われる。反対のケースでは、レーザー刻印形成用の少なくとも一つのレーザー光のパワーの増加、またはそのレーザー光のスイッチオンが行われる。
【0030】
検出用レーザー光とレーザー刻印形成用レーザー光とに異なる波長のレーザー放射が用いられる場合は、検出用レーザー光で検出された不透明領域と、レーザー刻印形成用レーザー光による照射から実際に除外されるべき領域との間で空間的補正が行われるように、放射は波長に依存的に、異なって偏向されることに留意する必要がある。検出用レーザー光は、レーザー刻印形成用レーザー光と同軸で配置され得る。または、検出用レーザー光は、レーザー刻印形成用レーザー光に対して傾斜するように位置合わせされ、検出用レーザー光とレーザー刻印形成用レーザー光の双方は反射層の共通ポイントに導かれるように、調整され得る。
【0031】
しかしながら、異なるモードで制御される単一レーザーが、検出用レーザー光とレーザー刻印形成用レーザー光の機能を担っても良い。レーザー光が、反射層の新たな位置に移動した場合、レーザーのパワーは切削が生じるパワー制限値より下の値に設定され、この位置で、パワーが低減されたレーザー光の直接または散乱反射が計測される。低反射または無反射の透明領域が構築される場合、レーザーのパワーは増加され、選択された位置におけるレーザー刻印可能層においてレーザー刻印が形成される。あるいは、レーザーは、パワーの変化なく移動し、次のポイントで計測が繰り返される。
【0032】
レーザー光に対する不透明領域のできるだけ短い露光時間を達成するために、不透明領域露光レーザー光のパワーの制御の代わりに、レーザー光の移動速度の制御も行われ得る。これは、加速したレーザー光により横切られるべき特に相対的に広い不透明領域に対して、現在のところ重要である。
【0033】
反射層の不透明領域を除外する他の可能性は、レーザーと反射層との間の光路に配置されるマスクを用いることである。この場合、マスクは、反射層の不透明領域に幾何学的に関連して、レーザー光を通さず、下方にある反射層の不透明領域をレーザー光から保護する領域を有するように構成される。さらに、レンズ配置またはレンズ配列が、反射層の上のマスクとして利用され得、レーザー光はレンズにより、反射層の特定の点に集光され、反射層でのレーザー光路に影響する。反射層の不透明領域の光学的スキャンは、マスクの不可侵領域、またはレーザー光の偏向領域を、反射層の不透明領域の上に、できるだけ正確に配置するために役立つ。
【0034】
反射層の不透明領域を除外する方法のために、吸収の低い材料と吸収の高い材料双方が、少なくとも一つの反射層の形成に用いられる。この場合、金属層として、少なくとも一つの反射層を、特に、銀、金、アルミニウム、ニッケル、銅、クロム等から形成することが確証されている。
【0035】
少なくとも一つの反射層の不透明領域が、少なくとも一つの反射層面に垂直に見た場合、0.5〜1000μmの範囲の幅の細線として形成されることが特に好ましい。そのような細かい不透明な線は、偽造が特に困難で、レーザー放射で容易に損傷を受け得るため、秘匿文書に対し、偽造や改ざんに対する高いレベルの保護が達成される。
【0036】
この場合、細かく不透明な線が、少なくとも一つの透明領域に隣接して配置されることが特に好ましい。透明領域においては、この場合、レーザー刻印は、特に刻印されず結果的に異なる色のレーザー刻印可能層の領域に沿って、可視可能であることが好ましい。
【0037】
少なくとも一つの反射層が、透明フィルム体に配置され、少なくとも一つの反射層を含むフィルム体が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と重なるように配置されることが確証されている。その結果、少なくとも一つの反射層の形成は、レーザー刻印可能層で直接行われ得ず、さらに、レーザー刻印可能層を損傷する方法ステップを含み得る。
【0038】
この場合、フィルム体が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層と重なるように、転写フィルムの転写層として、または、ラミネートフィルムとして適用される。転写層は、レーザー放射を透過する透明保護層にも適用され、少なくとも一つのレーザー刻印可能層に共にラミネートされ得る。これは、少なくとも一つの反射層が、保護層の下に配置され、機械的、および/または、化学的損傷から保護され得る利点がある。例えば、転写フィルムの転写層は、刻印により、紙幣に刻印され得る。
【0039】
フィルム体が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層に、接着付着またはラミネートされることが確証されている。フィルム体は、さらに、例えば、発光性物質、光発色性物質、干渉顔料、または液晶顔料等の秘匿要素を含み得る。
【0040】
少なくとも一つの透明領域を形成するために、少なくとも一つの反射層が、これらの点で、不透明領域における厚さよりも薄い厚さで形成され、あるいは、少なくとも一つの反射層が、開口部を備えることが好ましい。従って、観察者に対し、透明で可視不可能な、またはほとんど可視不可能な薄い厚さを備えた透明領域に、少なくとも一つの反射層が存在し得る。特に、回折構造を備えた第一の領域が透明層に刻印され、続いて平面の第二の領域と透明領域の凹凸構造が備えられた第一の領域が、透明領域の平面に関して一定領域密度を備える反射層を形成するための材料によりスパッタされる反射層の形成方法が適している。反射層を形成する材料は、凹凸構造のために、第一の領域において少なくとも大きな透明反射層が透明層の表面に形成され、不透明な反射層が平面の第二の領域に形成される厚さで、スパッタされる。
【0041】
これに代わり、少なくとも一つの反射層が、反射層の材料が存在しないように、透明領域において、完全に除外され得る。これは、通常、マスクによる反射層の部分的な形成、または、例えば反射層のエッチングによる反射層の部分的な除去により達成される。
【0042】
さらに、反射層の不透明領域が、少なくとも二つの異なる厚さで形成されていることが有利である。これは、レーザー処理の結果をさらに変化させ得る。
【0043】
レーザー刻印可能層の非刻印領域が少なくとも一つの透明領域内で見えるように、少なくとも一つの透明領域が、部分的にレーザー刻印で充たされることが確証されている。
【0044】
レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光が、秘匿文書の平面に垂直に作用することが好ましい。
【0045】
しかしながら、少なくとも一つの透明領域のエッジで、レーザー刻印を形成するレーザー光が、秘匿文書の平面に対して斜めに入射し、レーザー刻印は、不透明領域の下で、少なくとも短い領域を超えて連続することが好ましい。この目的のため、レーザー刻印可能外と反射層との間に供給されるレーザー光に対して透明な透明空間層を提供する必要があり得る。
【0046】
好ましくは、変色、黒色化、漂白化が、レーザー刻印領域における少なくとも一つのレーザー刻印可能層で生じる。その結果、カラー刻印、カラー画像、黒白刻印、グレースケール画像、またはそれらの組み合わせが形成される。この場合のレーザー刻印は、レーザー刻印可能層において、特に永久的または不可逆的に形成され、後のUV照射その他により再び消去することはできない。
【0047】
カラー画像を形成するため、順に重なる少なくとも3層のレーザー刻印可能層が、特に、シアン、マゼンタ、およびイエローの色を備えることが確証されている。また、レーザー処理前に、全てのレーザー感光着色剤の組み合わせ色の、異なる着色剤が、単一のレーザー刻印可能層に混合され得る。
【0048】
漂白色素を含むカラー層は、レーザー刻印可能層として好ましく用いられる。このため、黄色素が、青色レーザー光により、好ましくは漂白され、シアン色素は、赤色レーザー光により、好ましくは漂白され、マゼンタ色素は、緑色レーザー光により、好ましくは漂白される。黒色レーザー刻印可能層は、好ましくは炭素を含み、一方、黒色化可能レーザー刻印可能層は、特に、レーザー照射により変化し得る炭素化合物を含む。さらに、レーザー照射の下で、例えば顕著で不可逆的なカラー変化を示す、レーザー刻印可能材料が、レーザー刻印可能層に含まれ得る。複数のレーザー刻印可能層が、順に重ねて用いられる場合、または、異なる着色剤の混合を含むレーザー刻印可能層が用いられる場合、それぞれのレーザー刻印可能層、または、異なる着色剤の混合を含むレーザー刻印可能層の個別部分の、連続的なレーザー処理により、例えば、刻印されるべき秘匿書類の所有者の写真等の、減法混色または加法混色により自然色特性を備えたフルカラー画像を形成することが可能である。
【0049】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層が、紙、PE、PC、PET、PVC、またはテスリン(登録商標)のキャリア基質に配置され得る。反射層と同様の方法で、少なくとも一つのレーザー刻印可能層は、キャリア基質にラミネートされ、または、接着層の支援によりラミネートフィルムまたは転写フィルムの転写層として接着され得る。
【0050】
さらに、秘匿文書は、キャリア基質の裏面、キャリア基質とレーザー刻印可能層との間、レーザー刻印可能層と反射層との間、および、反射層に配置される、保護層や、印刷層等の付加層を含み得る。
【0051】
レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光を吸収する背景層が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層とキャリア基質との間の少なくともある領域に配置されることが確証されている。これは、紙の高感度キャリア基質に対して特に利点である。
【0052】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層が、パターンの形態でキャリア基質に配置されることが好ましい。これは、層材料の、例えば印刷、または、例えば、レーザー刻印可能層が例えば転写フィルムなどのキャリアに形成され、固体状態でキャリア基質に転写され、キャリアが再び剥離される転写方法等の直接適用により起こり得る。これは、秘匿書類の光学的に特に魅力的なデザインを可能とする。
【0053】
さらに、少なくとも一つのレーザー刻印可能層自体が、紙、PC、PVC、テスリン(登録商標)のキャリア基質、または、レーザー刻印可能物質によりドープされたキャリア物質により形成され得る。
【0054】
異なる色の不透明領域を備えた少なくとも2つの反射層が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層に配置されることが確証されている。特に、銀色および金色の不透明金属領域の組み合わせが、特に高品質な外観を形成する。
【0055】
透明フィルム体、または、秘匿文書は、少なくとも一つの反射層に加えて、透明または半透明カラー層、および/または、透明または半透明誘電層、および/または、透明または半透明光学可変層を有する。これは、レーザー刻印可能であり、レーザー刻印可能層の刻印に用いられるものと同じレーザー光によりレーザー刻印可能である。この場合、レーザー刻印可能層との同時レーザー刻印が好ましい。透明カラー層、および/または、透明HRI層、および/または、透明光学可変層は、レーザー刻印可能層とは反対側の反射層の側に配置されることが好ましい。
【0056】
光学可変層は、好ましくは、回折構造、および/または、ホログラム構造、特にホログラムまたはキネグラム(登録商標)、および/または、液晶材料、および/または、透明金属薄膜を含み得る、視認角度依存干渉効果を備えた薄膜多層システム、および/または、光発色性物質、および/または、発光性物質、を含む。少なくとも一つのレーザー光に対する反射層の透明領域の透明性は、透明フィルム体または秘匿文書に含まれる付加的な透明または半透明層により、低下せず、または、わずかにしか低下しないことが好ましい。
【0057】
観察者の視点から、少なくとも一つの反射層の少なくとも不透明領域は、少なくとも部分的に光学可変層の下、特に、ホログラムまたはキネグラム(登録商標)、および/または、薄膜多層システムの下、に配置されることが確証されている。特に、光学可変層が、不透明領域、および/または、少なくとも一つの透明領域の上に広がっていることが有利である。この場合、光学可変層の光学可変効果は、不透明領域の上とその位置でのみ、または、少なくとも一つの透明領域の上とその位置でのみ、明らかである。回折構造、または、ホログラム構造を、それぞれの不透明または透明領域に正確に配置することが好ましい。この場合、光学可変層の光学可変効果は、反射層自体、または、開口を有する場合、例えば付加的な透明誘電HRI(High Reflection Index)層により、増強される。
【0058】
一般に、レーザー刻印可能層のレーザー刻印を阻害せず、または、ほとんど阻害せず、レーザー照射により損傷されない、または、実質的に損傷されない、少なくとも実質的な透明誘電HRI層は、反射層の下、および/または上に備えられ得る。そのようなHRI層は、反射層の不透明領域、および/または、透明領域に配置され、その結果、さらなる魅力的な光学効果を提供し得る。HRI層として知られる材料は、例えば、ZnS、または、TiO2である。
【0059】
透明カラー層、および/または、透明HRI層、および/または、透明光学可変層は、レーザー刻印可能層とは反対側の反射層の側に配置され得る。
【0060】
カラー層、HRI層、または、光学可変層は、少なくともある領域で、または、あるパターンで、回折凹凸構造を示す反射層に直接適用され、または、透明フィルムに適用され得る。フィルムは、例えば、接着取り付け、ラミネート、ホットスタンプ等により、反射層の上、または下に、連続的に配置される。
【0061】
さらに、マイクロレンズアレイが、反射層に組み合わせられ得る。マイクロレンズにより、レーザー光がフォーカスされ、レーザー光放射の結果およびその後の可視的結果は、さらに影響される。
【0062】
レーザー刻印を形成する少なくとも一つのレーザー光が、ネオジム−YAGレーザー照射源により発生されることが確証されている。しかしながら、その他のレーザー照射源も利用され得る。パルス、多周波数固体レーザー、光学的パラメトリック発振器(OPOs)、および、パルスUVレーザー(エキシマーレーザー)が適している。レーザー処理において、5〜20nsのパルス期間で、好ましくは0.05〜0.5J/cm2のエネルギー密度が用いられ得る。
【0063】
本発明は、例えばさらなる個人化を行うために、少なくともある領域で、レーザー光の組み合わせによる、反射層の光学領域、または、HRI層の領域、または光学可変領域の意図的な変更の可能性を除外しないことに注目されたい。これは、本発明によれば、下方に配置されたレーザー刻印可能層のレーザー照射により変化のない、または、ほとんど変化のない、反射層の不透明領域だけでなく、特許文献1で既によく知られている、例えば黒色化、退色化、磨耗等、レーザー光により視覚的に変化した不透明領域をももたらす。薄膜多層システムの場合、視認角度依存干渉効果を変化または除去するために、薄膜スタックの層は、レーザー照射により、意図的に変化され得る。これは、レーザー照射により、秘匿文書の耐偽造性を高め、なおかつ光学的に魅力的にする。
【0064】
これに関連し、反射層の不透明領域が、レーザー照射により異なる影響を受け得るような効果を得るために、不透明領域における反射層の厚さを単一ではなく異なる層厚とすることが確証されている。
【0065】
本発明は、図1〜図3の例により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】身分証明書形態の秘匿文書を示す。
【図2a】図1に従う秘匿文書の領域A−A´における概略断面図を示す。
【図2b】図1に従う秘匿文書の領域A−A´における実際の実断面図を示す。
【図2c】回折構造を備えた光学可変層を含む、図1に従う秘匿文書の領域A−A´における概略断面図を示す。
【図3】不透明領域として繊細な金属線を含む反射金属層を備えた透明フィルム体を示す。
【図4a】レーザーによる身分証の個人化を示す。
【図4b】レーザーによる身分証の個人化を示す。
【図4c】レーザーによる身分証の個人化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、身分証明書形態の秘匿文書1を平面図で示す。秘匿文書1は、ある領域に印刷された、サイン領域の形態のレーザー刻印可能層2と、円形フィルム体5とを含む。
【0068】
レーザー刻印可能層2を形成するために、以下の組成を備えたカラーコーティングが用いられる。
【0069】
メチルエチルケトン 割合34.0
トルエン 割合26.0
エチルアセテート 割合13.0
硝酸セルロース(低粘性、アルコール中65%) 割合20.0
線状ポリウレタン(流動点>200℃) 割合3.5
高分子量分散剤(40%、アミン価20) 割合2
青色素15:4 割合0.5
赤色素57:1 割合0.5
黄色素155 割合0.5
【0070】
フィルム体5は、反射層としての金属層と、それぞれ50μmの幅で線状に形成され、3つの星型を含む2つの同心円を表す不透明領域3とを含む。不透明な金属線3の間には、レーザー光を透過する透明領域があり、金属層は、レーザー刻印可能層2の下方に位置する領域、カード所有者の写真6およびキャリア基質7(図2a〜2c参照)、を観察可能とする開口を有する。カード所有者のサインの形態のレーザー刻印4は、レーザー照射により、レーザー刻印可能層2に形成されている。レーザー刻印4は、フィルム要素5が適用される前にレーザー刻印可能層2に既に存在したような印象を観察者に与える。
【0071】
図2aは、図1に従う秘匿要素の領域A−A´における概略断面図を示す。図2aの概略図において、断面線は、レーザー刻印4の経路に正確に従い、従って、同心円および星型の不透明な金属線と、レーザー刻印4の領域における透明領域3aとを連続的に横断するものと仮定する。キャリア基質7の上には、金属層を含むフィルム体5をカバーする、レーザー刻印可能層2が認識できる。フィルム体5は、細かく、線状の不透明な金属領域3を含んでいる。詳細形態が示される秘匿要素1の上側は、フィルム体5が保護フィルム8とキャリア基質7との間に保護状態で組み込まれるように、レーザー光を透過する透明保護フィルム8によりラミネイトされている。レーザー刻印4を形成するレーザー光は(図1参照)、秘匿要素1の平面に垂直に導かれ、レーザー刻印4が、レーザー刻印可能層2に形成される。
【0072】
キャリア基質7を保護するために、以下の組成を備えたカラーコーティングにより形成され得る背景層ーここでは不図示ーが、レーザー刻印可能層2とキャリア基質7との間に配置され得る。
【0073】
メチルエチルケトン 割合40.0
トルエン 割合22.0
エチレン−ビニル アセテート ターポリマー(流動点=60℃) 割合2.5
ポリビニル クロライド(ガラス転移温度:89℃) 割合5.5
ポリビニル クロライド(ガラス転移温度:40℃) 割合3.0
分散剤(50%、酸価51) 割合1.0
二酸化チタン(d=3.8 − 4.2g/cm3) 割合26.0
【0074】
レーザー光が、パワーの変化を伴わずに不透明な金属領域を通過する場合、金属層の不透明な金属領域3は銀で形成され、厚さ10μmである。
【0075】
また、例えば、複数のまたは全ての不透明な金属領域3の位置を検出し、対応するデータを生成するカメラにより、不透明な金属領域3の位置検出が行われる場合、不透明な金属領域3がレーザー処理から除外されるように、または、より低いレーザーパワーで作用されるように、または、レーザー光がレーザー刻印可能層2の刻印領域より速く不透明な金属領域3を通過するように、生成データに基づくレーザー光の制御が行われる。この場合、金属層の不透明な金属領域3は、30nmの厚さで形成され、金属層の材料として金が用いられる。
【0076】
不透明な金属領域3の下方の領域2bにおいて、レーザー刻印可能層2は、レーザー刻印4を形成するレーザー光(図1参照)が不透明な金属領域3の下で非活性であるため、いかなる形態変化も生じない。不透明な金属領域3から離れた場合、少なくとも一つのレーザー光がレーザー刻印可能層2に達し、その結果、領域2aの色が連続的に変化し、金属層の平面に垂直な観察者の観点で見た場合に、サインとして形成されるレーザー刻印4を示す。
【0077】
図1におけるレーザー刻印4(またはレーザー刻印領域2a)は、観察者には、レーザー刻印可能層2において連続するサインとして、さもなければ、色は不変で、金属層の不透明な金属領域3の形態とは無関係に見える。しかしながら、実際は、サインは、それぞれ全ての不透明な金属線の下の領域で中断される。
【0078】
経済的側面から、通常、小さい表面領域のレーザー刻印可能層の領域のみが、レーザー処理される。しかしながら、大きい表面領域もレーザー処理され得る。従って、図1において、サインの後ろにある背景領域は、レーザー刻印として形成され得、サインは、レーザーにより刻印されないレーザー刻印可能層の色であり得、したがって、色は変化しない。この場合、金属層の面に垂直に見ると、背景領域における不透明な金属領域下で、レーザー刻印の中断−観察者には認知できない−があり、不透明な金属領域下でも、サインは連続的に示される。
【0079】
図2aに対して、図2bは、図1に従う秘匿文書の領域A−A´における実断面図を示す。

【0080】
図2cは、回折凹凸構造9´を備えた光学可変層を含む、図1に従う秘匿要素1の領域A−A´における他の概略断面図を示す。図2bの概略図において、断面線はレーザー刻印4の経路に正確に従い、従って、同心円および星型の不透明な金属線と、レーザー刻印4の領域における透明領域3aとを連続的に横断するものと、再度仮定する。キャリア基質7の上には、金属層を含むフィルム体5をカバーするレーザー刻印可能層2が認識できる。フィルム体5は、細かく、線状の不透明な金属領域3を含んでいる。詳細形態が示される秘匿要素1の上側は、フィルム体5が保護フィルム8とキャリア基質7との間に保護状態で組み込まれるように、レーザー光を透過する透明保護フィルム8によりラミネイトされている。回折凹凸構造9´は、金属層の透明領域に一致して配置され、ZnSの透明HRI層(ここでは独立して表示せず)が、回折凹凸構造9´を有する光学可変層の側に配置される。
【0081】
図3は、格子線の形態で配置される、細かい不透明な金属領域3と、さらに不透明な金属領域(とりわけ交差形態で)とを含む、フィルム要素5´の例の約400%拡大を示す。フィルム要素5´は、キネグラム(登録商標)を示し、前記フィルム要素を、一つ以上のレーザー感光層に配置することが可能である。
【0082】
図4aは、レーザー個人化、すなわちパスの所有者の個人データの形成前の、空白の身分証10´を平面図で示す。空白の身分証10´は、パスの所有者の写真用、および所有者の名前、家族名、誕生日用、およびパスの有効期間を示す日付用スペースを提供する。空白の身分証10´の少なくともこれらの領域に、データが記録され得るレーザー刻印可能層がある。
【0083】
図4bによれば、フィルム要素50が、熱転写フィルムにより空白の身分証10´に転写され、個人データが記録されるレーザー刻印可能領域が、部分的にカバーされる。フィルム要素50は、反射層および金属層、それぞれ55μm幅で線状に形成される不透明領域30を有する。全ての不透明領域30は、一体となり、9の楕円からなる花様の形態を形成する。不透明領域30は、フィルム要素50の領域において、凹凸構造を備え、運動学的な効果を示す。いわゆるキネグラム(登録商標)が見える。フィルム要素50の不透明領域30から離れた場合、透明領域30aが存在し、これを通じて、下方にある空白の身分証10´のレーザー刻印可能領域が見える。フィルム要素50でコーティングされた身分証10´´は、まだ個人データを含まず、単にフィルム要素50を含む。
【0084】
図4cによれば、パスの所有者の個人データが、レーザー光により、コーティングされた身分証10´´に形成される。この場合、フィルム要素50と重なるパスの所有者の画像60が形成される。さらに、データ40bがフィルム要素50と重なるように、データ40aおよび40bが記録される。フィルム要素50の領域または不透明領域30におけるレーザー個人化が、金属層の不透明領域30がレーザー照射から除外され、または、レーザー処理から除外されるように、本発明に従う方法により行われる。完成した身分証10´´´に対して形成された印象は、データ40bまたは画像60の形態のレーザー刻印が、フィルム要素50が適用される前に、光学的に、あたかも、空白の身分証10´に形成されたようなものである。レーザー刻印の隣接領域である金属層の不透明領域30は、少なくとも光学的に、レーザー刻印に隣接しない不透明領域30と区別不能である。したがって、フィルム要素50は、レーザー刻印形成後のみに提供される必要はない。
【符号の説明】
【0085】
1 秘匿文書
2 レーザー刻印可能層
3 不透明領域
3a 透明領域
4 レーザー刻印
5 透明フィルム体
6 写真
7 キャリア基質
8 透明保護フィルム
9 光学可変層
9´ 回折構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と少なくとも部分的に重り、不透明な領域を有する少なくとも一つの反射層とを備えた秘匿文書(1)における、少なくとも一つのレーザー光によるレーザー刻印(4)の形成方法であって、
少なくとも一つの反射層が、反射層面に垂直に見た場合、少なくとも一つの反射層と少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)とが重なる少なくとも一つの重複領域に、少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)により少なくとも2つの側面が囲まれた少なくとも一つの透明領域(3a)を備えて形成され、
少なくとも一つの反射層が、少なくとも一つのレーザー光用の少なくとも一つのレーザー照射光源と少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)との間に配置され、
レーザー刻印(4)が、少なくとも一つの透明領域(3a)を通じて視覚的に認知可能であるように、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)に形成され、
少なくとも一つの反射層が、少なくとも視覚的に大きな変化なく維持されること、
を特徴とするレーザー刻印の形成方法。
【請求項2】
少なくとも一つの反射層が、金属層、および/または、カラー半導体層で形成されること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)が、反射層面に垂直に見た場合、あるパターン、および/または、格子、および/または、平行領域、および/または、波線、および/または、ドットマトリクスとして形成されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの透明領域(3a)が、全ての側面で不透明領域(3)に囲まれていること、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反射層面に垂直に見た場合、少なくとも反射層の不透明領域の上方に、レーザー光を通さない領域を備えて形成されたマスクが、レーザー照射光源と反射層との間の光路に配置されること、
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの反射層が、不透明領域(3)において、0.2〜150μmの範囲の厚さを有し、レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光が、少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)と、少なくとも一つの透明領域(3a)とを通過すること、
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)の少なくとも一部またはマスクの非貫通領域の位置検出が実行され、レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザーが、少なくとも一つの反射層の不透明流域(3)のどの部分にも、または、マスクの非貫通領域に作用しないように、あるいは、レーザー刻印(4)を形成するレーザー光のパワーの低下が、少なくとも一つの反射領域の不透明領域(3)またはマスクの非貫通領域で行われるように、レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光が、位置検出から測定されるデータに基づいて制御されること、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
位置検出が、光学的に行われること、
を特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つの反射層が、少なくとも一つの光学的に検知可能な位置マークを備えて形成され、位置マークの位置が測定されること、あるいは、少なくともひとつの反射層に無関係に、少なくとも一つの光学的に検知可能な位置マークが、秘匿文書(1)に形成され、位置マークの位置が測定されること、
を特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの反射層が、少なくとも三つの光学的に検知可能な位置マークを備えて形成され、少なくとも三つの位置マークの位置が、少なくとも一つの反射層が少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)に適用される際に生じ得る少なくとも一つの反射層の歪みを検出するように測定されること、
を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つの検出レーザー光が少なくとも一つのレーザー刻印(4)形成用レーザー光と組み合わされ、または、少なくとも一つのレーザー光と平行に導かれ、少なくとも一つの検出レーザー光が、少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)の存在を検出する際に、レーザー刻印(4)形成用の少なくとも一つのレーザー光のパワーの低下、または、そのレーザー光のスイッチオフが行われること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一つの反射層が、銀、金、アルミニウム、銅、クロム、またはニッケルの金属層として形成されること、
を特徴とする請求項2〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)が、少なくとも一つの反射層面に垂直に見た場合、0.5〜1000μmの範囲の幅の細線として形成されること、
を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
細線が、少なくとも一つの透明領域(3a)に隣接して配置されること、
を特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの反射層が、透明フィルム体(5)に配置され、少なくとも一つの反射層を含むフィルム体(5)が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と重なるように配置されること、
を特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
フィルム体(5)が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と重なるように、転写フィルムの転写層として、または、ラミネートフィルムとして適用されること、
を特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フィルム体(5)が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と重なるように、接着付着またはラミネートされること、
を特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つの透明領域(3a)を形成するために、少なくとも一つの反射層が、不透明領域(3)における厚さよりも薄い厚さで形成され、あるいは、少なくとも一つの反射層が、開口部を備えること、
を特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
レーザー刻印可能層(2)の非刻印領域が、少なくとも一つの透明領域(3a)内で見えるように、少なくとも一つの透明領域(3a)が、部分的にレーザー刻印(4)で充たされていること、
を特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光が、秘匿文書(1)の平面に垂直に作用すること、
を特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一つの透明領域(3a)のエッジで、レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光が、秘匿文書(1)の平面に対して斜めに入射し、レーザー刻印(4)は、不透明領域(3)の下で連続すること、
を特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
変色、黒色化、漂白化が、レーザー刻印(4)領域における少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)で生じること、
を特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
順に重なる少なくとも3層のレーザー刻印可能層(2)が、特に、シアン、マゼンタ、およびイエローの色を備えること、
を特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)が、紙、PE、PC、PET、PVC、またはテスリン(登録商標)のキャリア基質(7)に配置されること、
を特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光を吸収する背景層が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)とキャリア基質(7)との間の少なくともある領域に配置されること、
を特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)が、パターンの形態でキャリア基質(7)に配置されること、
を特徴とする請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)が、紙、PC、PVC、またはテスリン(登録商標)のキャリア基質(7)により形成されること、
を特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
異なる色の不透明領域を備えた少なくとも2つの反射層が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)に重なるように配置されること、
を特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
レーザー刻印可能な、透明なフィルム体(5)が、透明なカラー層、および/または、透明なHRI層、および/または、透明な光学可変層(9)、により形成されること、
を特徴とする請求項15〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
透明なカラー層、および/または、透明なHRI層、および/または、透明な光学可変層(9)が、レーザー刻印可能層(2)とは反対の反射層の面に配置されること、
を特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
光学可変層(9)が、回折構造(9´)、および/または、ホログラム構造、および/または、液晶材料、および/または、視認角度依存干渉効果を備えた薄膜多層システム、および/または、光発色性物質、および/または、熱発色性物質、および/または、発光性物質、を含むように形成されること、
を特徴とする請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光が、ネオジム−YAGレーザー源により発生されること、
を特徴とする請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法により得られ、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と少なくとも部分的に重なり、不透明な領域を有する少なくとも一つの反射層とを有し、少なくとも一つの反射層が、反射層面に垂直に見た場合、少なくとも一つの反射層と少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)とが重なる少なくとも一つの重複領域に、少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)により少なくとも2つの側面が囲まれた少なくとも一つの透明領域(3a)を備えて形成される秘匿文書(1)であって、
少なくとも2つの透明領域(3a)にわたる、レーザー刻印可能層(2)において隣接するレーザー刻印(4)が、少なくとも2つの隣接する透明領域(3a)において、観察者に対して視覚的に認知可能であり、レーザー刻印(4)が、反射層における透明領域(3a)の形態に無関係に形成され、
レーザー刻印可能層(2)におけるレーザー刻印(4)が、観察者に対して視覚的に認知不可能であるように、不透明領域(3)の下で遮断されること、
を特徴とする秘匿文書。
【請求項34】
少なくとも一つの反射層が、金属層、および/または、半導体層で形成されること、
を特徴とする請求項33に記載の秘匿文書。
【請求項35】
少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)が、反射層面に垂直に見た場合、あるパターン、および/または、格子、および/または、平行領域、および/または、波線、および/または、ドットマトリクスとして形成されていること、
を特徴とする請求項33または34に記載の秘匿文書。
【請求項36】
少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)が、少なくとも一つの反射層面に垂直に見た場合、0.5〜1000μmの範囲の幅の細線として形成されること、
を特徴とする請求項33〜35のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項37】
細線が、少なくとも一つの透明領域(3a)に隣接して配置されること、
を特徴とする請求項33〜36のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項38】
少なくとも一つの反射層が、透明フィルム体(5)に配置され、少なくとも一つの反射層を含むフィルム体(5)が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)と重なるように配置されること、
を特徴とする請求項33〜37のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項39】
レーザー刻印可能層(2)の非刻印領域が、少なくとも一つの透明領域(3a)内で見えるように、少なくとも一つの透明領域(3a)が、部分的にレーザー刻印(4)されていること、
を特徴とする請求項33〜38のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項40】
順に重なる少なくとも3層のレーザー刻印可能層(2)が、特に、シアン、マゼンタ、およびイエローの色を備えること、
を特徴とする請求項33〜39のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項41】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)が、紙、PE、PC、PET、PVC、またはテスリン(登録商標)のキャリア基質(7)に配置されること、
を特徴とする請求項33〜40のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項42】
レーザー刻印(4)を形成する少なくとも一つのレーザー光を吸収する背景層が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)とキャリア基質(7)との間の少なくともある領域に配置されること、
を特徴とする請求項41に記載の秘匿文書。
【請求項43】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)が、パターンの形態でキャリア基質(7)に配置されること、
を特徴とする請求項41または42に記載の秘匿文書。
【請求項44】
少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)が、紙、PC、PVC、またはテスリン(登録商標)のキャリア基質(7)により形成されること、
を特徴とする請求項33〜43のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項45】
異なる色の不透明領域を備えた少なくとも2つの反射層が、少なくとも一つのレーザー刻印可能層(2)に重なるように配置されること、
を特徴とする請求項33〜44のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項46】
レーザー刻印可能な、透明なフィルム体(5)が、透明なカラー層、および/または、透明なHRI層、および/または、透明な光学可変層(9)、を有すること、
を特徴とする請求項38〜45のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項47】
透明なカラー層、および/または、透明なHRI層、および/または、透明な光学可変層(9)が、レーザー刻印可能層(2)とは反対の反射層の面に配置されること、
を特徴とする請求項46に記載の秘匿文書。
【請求項48】
光学可変層(9)が、回折構造(9´)、および/または、ホロフフラム構造、および/または、液晶材料、および/または、視認角度依存干渉効果を備えた薄膜多層システム、および/または、光発色性基質、および/または、熱発色性物質、および/または、発光性物質、を含むこと、
を特徴とする請求項46または47に記載の秘匿文書。
【請求項49】
観察者の視点から、反射層の少なくとも一つの不透明領域(3)が、光学可変層(9)の下、特に、ホログラムおよびキネグラム(登録商標)の下に、および/または、HRI層の下に、少なくとも部分的に配置されていること、
を特徴とする請求項46〜48のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項50】
光学可変層(9)が、不透明領域(3)の上に、および/または、少なくとも一つの透明領域(3a)の上に広がること、
を特徴とする請求項46〜49のいずれか1項に記載の秘匿文書。
【請求項51】
少なくとも一つの反射層の不透明領域(3)が、少なくとも2つの異なる層厚で形成されること、
を特徴とする請求項33〜50のいずれか1項に記載の秘匿文書。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公表番号】特表2010−534145(P2010−534145A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521162(P2009−521162)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006560
【国際公開番号】WO2008/012061
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】