説明

移動体の位置の計測方法

【課題】複数のICタグを利用して移動体の位置を把握する移動体の位置の計測方法。事前に複数のICタグ全ての位置を計測しておく必要が不要で、複数のICタグを利用していながらその設置や撤去を容易にする。
【解決手段】複数個のICタグと少なくとも2個の目標があらかじめ定められている位置関係で配置されている移動体位置計測用具を配備し、当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも2個以上の目標の位置を計測することにより、前記複数個のICタグの位置を把握すると共に、位置を計測される対象となっている移動体が前記複数個のICタグの中のICタグからの電波を受信して、当該電波を受信したICタグの位置を把握することにより、当該移動体の位置を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICタグを利用した移動体の位置の計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの電波を受信して現在位置を計測する技術は、例えば、自動車のカーナビゲーション装置等に利用されている。また近年の携帯電話技術の進歩に伴い、GPS機能を有する携帯電話も普及している。
【0003】
またGPS装置とICタグとを利用して、移動体の現在の位置とその関連情報を提供する歩行者誘導ブロック情報入力装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載の装置は、点字ブロックにICタグを埋め込み、このICタグにGPS装置で取得した位置と位置周囲の環境情報等とを記録して、例えば杖にICタグリーダ/ライタを埋め込んで、視覚障害者の利用に供するものである。
【0005】
ICタグには、パッシブ型のものとアクティブ型のものがある。
【0006】
パッシブ型のICタグでは、まず、ICタグリーダが応答要求の電波を送信し、応答要求を受信したICタグはこれに対する応答の電波を送信する。ICタグが動作するためのエネルギーは、応答要求の電波等を通じて供給されるため、ICタグには電源を準備する必要がない。
【0007】
一方、アクティブ型のICタグでは、ICタグが一定間隔で電波を送信する。ICタグに電源を準備する必要があり、通常はICタグに電池を内蔵し、電源として利用する。アクティブ型のICタグは、定期的な電池交換を必要とするが、比較的通信距離が長いという利点を有する。
【特許文献1】特開2002−170191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この歩行者誘導ブロック情報入力装置は、位置とその関連情報を有効に提供するものであるが、事前に全てのICタグの位置を計測しておく必要がある。また、ICタグは点字ブロックに固定されるため、使用が設置場所に限定されてしまい、例えば、イベント会場等のように臨時に使用する場合には、その設置と撤去による再利用が困難である。
【0009】
本発明は、複数のICタグを利用して移動体の位置を把握する移動体の位置の計測方法において、事前に前記複数のICタグ全ての位置を計測しておく必要が不要で、複数のICタグを利用する場合であっても、その設置や撤去が容易な移動体の位置計測技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数個のICタグが、あらかじめ定められている位置関係で配置されている移動体位置計測用具を配備し、この移動体位置計測用具を用いた移動体の位置計測方法に工夫を加えることによって、前記課題の解決を図ったものである。
【0011】
すなわち、前記目的を達成するために本発明が提案するものは、複数個のICタグと少なくとも2個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されている移動体位置計測用具を配備し、当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも2個以上の目標の位置を計測することにより、前記複数個のICタグの位置を把握すると共に、位置を計測される対象となっている移動体が前記複数個のICタグの中のICタグからの電波を受信して、当該電波を受信したICタグの位置を把握することにより、当該移動体の位置を計測することを特徴とする移動体の位置の計測方法である。
【0012】
また、前記目的を達成するために本発明が提案する他の方法は、複数個のICタグと少なくとも1個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されており、かつ方向の基準となる基準線を含む移動体位置計測用具を、当該基準線があらかじめ定められた方向と一致するように配備し、当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも1個の目標の位置を計測することにより、前記複数個のICタグの位置を把握すると共に、位置を計測される対象となっている移動体が前記複数個のICタグの中のICタグからの電波を受信して、当該電波を受信したICタグの位置を把握することにより、当該移動体の位置を計測することを特徴とする移動体の位置の計測方法である。
【0013】
本発明で使用する前記の移動体位置計測用具は、複数個のICタグと少なくとも2個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されているものである。あるいは、複数個のICタグと少なくとも1個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されており、かつ方向の基準となる基準線を含むものである。
【0014】
いずれの形態であっても、本発明で使用する前記の移動体位置計測用具は、柔軟性を有する支持体に前記ICタグ及び目標が配置されているもの、あるいは、折り畳むことができる支持体に前記ICタグ及び目標が配置されているものとすることができる。このような形態の移動体位置計測用具は、その設置、撤去、保管が容易である。
【0015】
例えば、巻き取り、あるいは折り畳み可能なように柔軟性を有するものであれば、シート状、テープ状、網状、等、種々のものを移動体位置計測用具の支持体として使用することができる。
【0016】
あるいは、柔軟性を有しない支持体であっても、所定の間隔で蝶番などが配備されていることによって折り畳み可能なものであれば、棒状体、板状体、等、種々のものを移動体位置計測用具の支持体として使用することができる。
【0017】
すなわち、前記移動体位置計測用具は、巻き取ることあるいは折り畳むことが可能な前述した支持体を伸張あるいは展開した場合に、複数個のICタグと少なくとも2個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されているもの、あるいは、複数個のICタグと少なくとも1個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されており、かつ方向の基準となる基準線を含むものである。
【0018】
例えば、前記移動体位置計測用具は、巻き取ることあるいは折り畳むことが可能なテープ状あるいは棒状の支持体に、支持体を伸張あるいは展開した状態において前記複数個のICタグが直線上に一定間隔で配置されており、その両端に目標が配置されているものとすることができる。
【0019】
別の例では、前記移動体位置計測用具は、巻き取ることあるいは折り畳むことが可能なシート状、板状、あるいは網状の支持体に、支持体を伸張あるいは展開した場合に、前記複数個のICタグが格子状に配置されており、その四隅に目標が配置されているものとすることもできる。
【0020】
以上に説明したように、巻き取り、あるいは折り畳むことができ、伸張あるいは展開した場合に予定した位置関係が実現する移動体位置計測用具は、設置、撤去、保管に適している。
【0021】
なお、設置場所の状況に合わせて、これらの移動体位置計測用具の一部のみを伸張あるいは展開して利用することもできる。
【0022】
特に、テープ状あるいは棒状の移動体位置計測用具の場合は、折れ線状に伸張して、折れ線中の各直線部分に含まれるICタグ及び目標が所定の位置関係で配置されていると、この直線部分に含まれる基準線が方向の基準となることを利用してもかまわない。
【0023】
移動体位置計測用具に配置されているICタグは、前述したように巻き取ることあるいは折り畳むことが可能な支持体に恒久的に固定する、あるいはICタグを支持体と一体として製造することも可能であるが、支持体には取り付け予定位置のみを明示し、両面テープ等を用いて必要に応じて支持体にICタグを取り付けることもできる。
【0024】
支持体に取り付け予定位置のみを明示しておき、両面テープ等を用いて必要に応じて支持体にICタグを取り付ける場合、必要な密度でICタグを配置すること、ICタグが破損したり仕様の異なるICタグを使用したりするためにICタグを取り替えること、ICタグを支持体から剥がして再利用することが可能である。
【0025】
移動体位置計測用具に配置されている目標は、十字線のような模様・記号・印などからなる目標や、2次元バーコード等の機械的に読み取り可能な記号を、移動体位置計測用具の支持体に直接記載することもできるほか、移動体位置計測用具に配置されている複数のICタグの中の所定のICタグを目標として使用することも可能である。
【0026】
目標をICタグとする場合、あるいは2次元バーコード等の機械的に読み取り可能な記号とする場合は、計測した目標とその目標を含む移動体位置計測用具を機械的に識別することができ、計測作業を効率化することができる。
【0027】
複数個のICタグと少なくとも1個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されており、かつ方向の基準となる基準線を含む移動体位置計測用具における基準線は、移動体位置計測用具の支持体に直接記載することもできるほか、支持体が直線的に延びる端縁を有する場合には、当該端縁で代用することも可能である。
【0028】
支持体が有する直線的に延びる端縁で代用すると、廊下の縁の壁に沿って廊下の床面上に移動体位置計測用具を配置する場合等に便利である。
【0029】
このような移動体位置計測用具を、移動体の位置を計測する場所に設置する。
【0030】
設置の仕方は、例えば、建物内の設置であるときは、天井面、壁面、床面、床下等に、感圧式両面粘着テープやねじ等により、再利用を目的として着脱可能に取り付けることができる。
【0031】
なお、移動体位置計測用具に前述した基準線がある場合は、当該基準線があらかじめ定められた方向と一致するように移動体位置計測用具を配備する必要があるが、建物の壁面、床に描画されている直線等をあらかじめ定められた方向としておくことにより、基準線を建物の壁面、床に描画されている直線等に沿って配置し、移動体位置計測用具の方向を定めることができる。
【0032】
本発明の移動体の位置の計測方法においては、前記のようにして移動体の位置を計測する場所に設置されている移動体位置計測用具が、複数個のICタグと少なくとも2個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されているものである場合には、当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも2個以上の目標の位置を計測し、記録する。
【0033】
また、前記のようにして移動体の位置を計測する場所に設置されている移動体位置計測用具が、複数個のICタグと少なくとも1個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されており、かつ方向の基準となる基準線を含むものである場合には、当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも1個の目標の位置を計測し、記録する。
【0034】
すなわち、基準線を用いて移動体位置計測用具の方向が定まっている場合は、計測する目標の数を少なくとも2個から、少なくとも1個に減らすことができる。もちろん、基準線がある移動体位置計測用具が2個以上の目標を有する場合は、基準線を用いずに設置し、前記目標の中の少なくとも2個の目標の位置を計測し、記録することも可能である。
【0035】
ここで、必ずしも移動体位置計測用具に設けられた全ての目標の位置を計測する必要はない。複数個のICタグと少なくとも2個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されている場合には、前記目標の中の計測しやすい2個の目標の位置を計測することも可能である。例えば、3個以上の目標が配置されている場合に、この中の計測しやすい2個の目標の位置を計測することが可能である。
【0036】
例えば、前述したように巻き取ることあるいは折り畳むことが可能なテープ状あるいは棒状の支持体に、複数個のICタグがあらかじめ定められている位置関係で配置されている移動体位置計測用具の場合、全てのICタグを目標として利用できるようにしておき、移動体位置計測用具の一部を伸張し、伸張した範囲の両端に存在するICタグをの位置を目標として位置計測すれば、便利である。
【0037】
同様に、基準線を用いて移動体位置計測用具の方向が定まって設置されている場合は計測しやすい1個の目標を計測することも可能である。
【0038】
前述したように、移動体位置計測用具を建物の天井面などに設置し、目標の位置を計測して記録した後、移動体位置計測用具の全てのICタグの位置を算出する。
【0039】
この算出には、移動体位置計測用具内のICタグと目標の位置関係及び目標の位置の計測結果を与件とする最小2乗法を用いることができる。
【0040】
簡単な例では、ICタグが直線上に一定間隔で並んでおり、その両端のICタグを目標として用いる場合は、両端のICタグの位置の計測値を基に、比例配分で各ICタグの位置を算出することができる。
【0041】
もちろん、必要に応じ、本発明の移動体位置計測具と、通常のICタグの双方を設置し、本発明の移動体計測具のICタグについては上記の方法で位置を算出し、通常のICタグについては個別にその位置を計測することにより、全てのICタグの位置を決定し、測位環境を構築することも可能である。
【0042】
なお、目標の位置の計測とICタグの位置の算出は、国家座標系に基づいて行うことも可能であるが、建物内部等で局所的に定めた座標系に基づいて行うことも可能である。
【0043】
ICタグは、ICタグを識別するためのID情報を送信するので、位置を計測される対象となっている移動体が備えるICタグリーダが、対象となる場所に設置された1個あるいは複数個の移動体位置計測用具に配置されている複数個のICタグのうち、移動体の近くに配置されているICタグのID情報を受信することで、当該ICタグの位置を移動体の位置として把握することができる。
【0044】
もちろん、ICタグにID情報ではなく、位置を記憶させ、送信することも可能である。この場合は、書き換え可能なICタグを使用するとともに、移動体位置計測用具を設置し、目標の位置を計測し、各ICタグの位置を算出した後に、ICタグに位置を記録する必要がある。
【0045】
なお、前記電波を受信したICタグが2以上のときは、以下のように、それぞれ受信した電波の電界強度と受信時刻で定まる値を重みとして前記電波を受信した2以上のICタグの位置の加重平均を算出して前記移動体の位置とすることができる。
【0046】
2以上のICタグから電波を受信したときに、これらの電波の電界強度等を重みとして加重平均により移動体の位置を算出すれば、より精度の高い移動体の位置を提供できる。
【0047】
例えば、電界強度を重みとして前記電波を受信した2以上のICタグの位置の加重平均を算出し、前記移動体の位置とすることができる。
【0048】
移動体位置計測用具に取り付けられているICタグがICタグリーダからの返信要求に応じて返信を送るパッシブ型のICタグにおいては、一連の返信要求に対する返信が複数ある場合、それらの返信に対応するICタグの位置を前記の方法で加重平均する。
【0049】
一方、移動体位置計測用具に取り付けられているICタグが一定の時間間隔で電波を送信するアクティブ型のICタグにおいては、現在からこの一定の時間間隔以内に受信したICタグの位置を前記の方法で加重平均する。もちろん、位置を計測される対象となっている移動体の速度が速く、この一定の時間間隔以内にICタグの配置間隔以上の距離を移動すると予想される場合は、電界強度から予想されるICタグとICタグリーダの間の距離の推定値と、受信後移動体が移動する距離の推定値を勘案した重みを用いて、加重平均することもできる。
【0050】
また、ICタグがICタグリーダからの返信要求に応じて返信を送るパッシブ型のICタグにおいて、電界強度を観測できないが、近距離にあるICタグからの返信がより早く受信されることが期待される場合は、前記電波を受信したICタグが2以上の場合、例えば、同一の返信要求に対する応答の中から、早い順に1、1/2、1/3等の重みを用いて前記2以上のICタグの位置の加重平均を算出し、前記移動体の位置とすることができる。
【0051】
以上の本発明の方法において、前記の移動体の位置は、当該移動体を含む周囲を表示する地図画像上に表示することができる。特に、地図画像を移動体が所持している携帯端末の表示手段に表示すれば、移動体が人である場合はその人が、移動体が車両である場合はその車両に乗車している人が、自己の位置を容易に認識できる。
【0052】
あるいは、あらかじめ定めている範囲の監視を目的とした場合は、監視の対象とする範囲を表示する地図画像上に前記移動体の位置を表示することができる。特に、監視の対象とする範囲にある全ての移動体の位置を、地図画像を背景として中央監視装置の表示手段に表示すれば、監視の対象とする範囲に移動体がいるかどうかに関係なく、興味のある範囲(監視の対象とする範囲)の状況を把握することができる。
【0053】
なお、本発明において、移動体としては人間の他、位置を計測される対象となる移動するものなら動物や物品等の広範囲のものが該当する。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、複数のICタグを利用して移動体の位置を把握する移動体の位置の計測方法において、事前に前記複数のICタグ全ての位置を計測しておく必要が不要で、複数のICタグを利用する場合であっても、その設置や撤去が容易な移動体の位置を計測できる移動体の位置の計測方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明の最良の実施の形態である実施例を添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0056】
図1は本発明に係る移動体の位置の計測方法に使用する移動体位置計測用具の一例を説明する概略図である。
【0057】
図1では、本発明に係る移動体の位置の計測方法に使用する移動体位置計測用具11が横長のテープ状体12からなる場合について説明している。
【0058】
横長のテープ状体12としては、例えば、軽量で伸縮の少ないガラス繊維製とすることができる。
【0059】
このテープ状体12の一面側13に、直線状に延びる端縁17aに沿ってあらかじめ定められている所定の間隔Dでn個のICタグ15(15、15、・・・、15)が取り付けられている。
【0060】
なお、本明細書においては、複数個のICタグ15、15、・・・、15を総称して「ICタグ15」と表すことがある。
【0061】
図2図示の実施形態における移動体位置計測用具11aでは、例えば、ICタグ15の中で、両端に位置するICタグ15とICタグ15を、目標としての役割を果たすものとして使用できる。
【0062】
テープ状体12の一面側13の裏面である他の面側16は、移動体位置計測用具11を所定の位置に設置する際に使用される貼着面であり、例えば、感圧式粘着面となっている。
【0063】
ICタグ15(15、15、・・・、15)には、ICタグごとに異なるID情報がそれぞれ格納されており、このID情報を電波で送信するものである。ID情報を用いて、個々のICタグを識別することができる。
【0064】
そして移動体位置計測用具11は、図1において、使用前は横長方向に巻き取られ、計測用として設置するときに伸張されて、例えば、天井面、床面等に貼付け、設置されるようになっている。
【0065】
図示の実施形態では、テープ状体12の幅を一定にしているため、テープの端縁17aまたは17bを移動体位置計測用具11が備えている基準線として使用できる。
【0066】
図2は、移動体位置計測用具11(11a、11b、11c、11d)が設置されたイベント会場21の平面概略図である。
【0067】
なお、本明細書においては、複数個の移動体位置計測用具11a、11b、11c、11dを総称して「移動体位置計測用具11」と表すことがある。
【0068】
このイベント会場21には、会場内の位置を表示するために、座標軸として横方向、縦方向にそれぞれ所定間隔で直線軸(横方向:A1、・・・、A11、縦方向:B1、・・・・、B18)が設けられている。
【0069】
図示のイベント会場21は、平面が長方形で、対向する短辺の壁2面にそれぞれ出入口22(22a、22b、22c、22d)が2箇所ずつ設置され、他の対向する長辺の壁2面には展示ブース23a、23bがそれぞれ設置されている。またイベント会場21の中央には展示ブース23c、23d、23eが島状に設置されている。
【0070】
そして壁面側の展示ブース23aの前に壁面に沿って移動体位置計測用具11aが設置され、他の壁面側の展示ブース23bの前にも同様に移動体位置計測用具11bが設置されている。また島状の展示ブース23cと23dの間には移動体位置計測用具11cが、展示ブース23dと23eの間には移動体位置計測用具11dがそれぞれ設置されている。
【0071】
上記の移動体位置計測用具11(11a、11b、11c、11d)は、テープ状体12の裏面である他の面側16の粘着面をイベント会場21の天井面に貼付けて、設置されている。落下防止のため一部ねじ止めしてもよく、あるいはICタグからの電波を受信可能であれば床下の躯体に設置してもよい。
【0072】
移動体位置計測用具11aには、テープ状体12の横長方向の一端から他端に向けてあらかじめ定められた所定間隔でICタグ15(15、15、・・・、158)が取り付け配置されている。また同じく移動体位置計測用具11b、11c、11dにもあらかじめ定められた所定間隔で複数個のICタグ15が取り付け配置されている(図中ICタグの番号を省略する)。
【0073】
図3は、移動体位置計測用具11aに配置されたICタグ15(15、15、・・・、15)と、このICタグ15から送信される識別情報を受信する、移動体の所持するICタグ読取表示装置51のブロック構成図である。
【0074】
図3に示すように、ICタグ15(15、15、・・・、15)は、それぞれ電波の送信用のアンテナ31と、通信部32と、記録部33とを備えているものである。
【0075】
ICタグとして、ICタグリーダから送信される電波等により電力を供給するパッシブ型のICタグを使用してもよいが、本実施例では、独自の電源を使用することにより比較的送信距離が長く位置計測に適したアクティブ型のICタグを使用している。
【0076】
ICタグ15の記録部33には、ICタグ15ごとに定められた識別情報であるID情報が記録されている。
【0077】
また、通信部32は、ICタグ読取表示装置51への送信を行う機能を備えたもので、発信回路、変調回路、増幅回路等を備えているものである。
【0078】
図に例示するICタグ読取表示装置51は、ICタグリーダの機能に加えて移動体の位置を算出し表示する機能を有する。
【0079】
具体的には、図示の例では、ICタグ読取表示装置51は、アンテナ52、通信手段53、制御手段55、ICタグ配置位置情報記録手段56、位置出力手段57、画像描画・出力手段58、画像表示手段59、地図情報記録手段60を備えている。
【0080】
アンテナ52は、各ICタグ15からの電波の受信に使用するものである。
【0081】
通信手段53はICタグ15からの電波の受信を行う機能を備えたもので、高周波増幅回路、局部発信回路、周波数混合回路、中間周波増幅回路、アナログ−ディジタルコンバータ、ディジタル信号プロセッサ等を備えてなる。
【0082】
アンテナ52及び通信手段53はICタグリーダとしての機能を発揮するためのものであり、ICタグのID情報を出力する。
【0083】
ICタグ配置位置情報記録手段56は、各ICタグ15のID情報をキーとして、各ICタグの位置が記録されるもので、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置が相当する。
【0084】
位置出力手段57は、通信手段53が出力する各ICタグ15のID情報とICタグ配置情報記録手段56を用い、読み取った各ICタグ15の位置を出力する。
【0085】
地図情報記録手段60は、移動体の位置を表示するための背景となる地図情報が記録されるもので、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置が相当する。
【0086】
画像描画・出力手段59は、位置出力手段57が出力した、ICタグ読取表示装置51が受信した電波を送信したICタグ15の位置をもとに、地図情報記録手段61に記録されている地図情報から、上記位置の周囲の地図画像を描画し、その上に上記位置を表示する記号等を重ねて描画する。
【0087】
画像描画・出力手段58は、描画された画像の映像信号を生成し、画像表示手段59に出力する機能を有する。
【0088】
画像表示手段59は、画像描画・出力手段58が出力した映像信号を表示する機能を有するもので、例えば、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置が相当する。
【0089】
そして、制御手段55が上記各手段の機能を制御するもので、この制御手段55や位置出力手段57、画像描画・出力手段58は、CPU及びRAM等の装置が該当し、所定のプログラムを実行することで上記各手段の機能が発揮できるものである。なお、画像描画・出力手段58は、独立したグラフィックチップ等を利用する場合もある。
【0090】
もちろん、ICタグ配置位置情報記録手段56、位置出力手段57、画像描画・出力手段58、画像描画・出力手段59、地図情報記録手段60の中のいずれか、あるいは全てを、ICタグ読取表示装置51が不図示のネットワークを介して相互交信可能なネットワーク上の別のシステム(たとえば、ucode(登録商標) 解決サーバー)に配備しておき、ネットワークを通じてICタグ読取表示装置51が必要な情報を得て、画像表示手段59に表示する実装も当然可能である。
【0091】
次に、ICタグ配置位置情報記録手段56に記録すべき各ICタグの位置を算出する手法を述べる。
【0092】
本実施例では、テープ状の移動体位置計測用具11には、直線に沿ってあらかじめ定められている所定の間隔Dでn個のICタグ15(15、15、・・・、15)が取り付けられており、その両端のICタグの位置を計測している。ICタグ15の位置の計測値を(x1b,y1b)、ICタグ15の位置の計測値を(xnb,ynb)とする。
【0093】
ICタグ15の位置の最確値を(x,y)、ICタグ15の位置の最確値を(x,y)・・・ICタグ15の位置の最確値を(x,y)とする。距離Dに誤差がなく、ICタグ15の位置の計測値(x1b,y1b)、ICタグ15の位置の計測値(xnb,ynb)に誤差がある場合、i番目のICタグの位置の最確値(x,y)は次の式で表される。
【数1】

【0094】
ここでθは、2引数の逆正接関数atan2を用いて、次のように表される。
【数2】

【0095】
一方、距離Dに誤差があり、ICタグ15の位置の計測値(x1b,y1b)、ICタグ15の位置の計測値(x,y)に誤差がない場合、i番目のICタグの位置の最確値(x,y)は次の式で表される。
【数3】

【0096】
状況に応じて、いずれかの式を用い、各タグの位置の最確値を求める。
【0097】
一方、基準線を用いる場合は、基準線として使用するテープの端縁17aまたは端縁17bを直線軸A1〜A11、B1〜B11のいずれかにあわせて設置する。
【0098】
使用した直前軸の方向余弦を(l,m)とする。j番目のタグの位置の計測値を(xjb,yjb)とする。i番目のICタグの位置の最確値(x,y)は、方向余弦(l,m)がICタグ15から15に向かう方向と同方向の場合は、次の式で表される。
【数4】

【0099】
また、逆方向の場合は、次の式で表される。
【数5】

【0100】
以上の計算は、移動体位置計測用具11の設置時に、本実施例に記載されているICタグ読取表示装置51等とは異なるシステムの上で実行される。
【0101】
以上の方法で求めたICタグの位置の最確値を、ICタグ15のID情報をキーとして、ICタグ配置位置情報記録手段56に記録する。
【0102】
イベント会場21内を、移動体がICタグ読取表示装置51を所持して移動すると、移動体の近傍に配置されたICタグ15からのID情報の電波をICタグ読取表示装置51が受信する。
【0103】
位置出力手段57は、受信したID情報とICタグ配置位置情報記録手段56に記録されている各ICタグ15のID情報とを照合して、受信したICタグ15の位置を出力する。
【0104】
そして画像描画・出力手段58は、地図情報記録手段60に記録されている地図データを用いて描画した地図画像上にICタグ15の位置を表示した映像信号を画像表示手段59に出力し、画像表示手段59は上記映像信号を表示する。
【0105】
これにより移動体は受信した近傍のICタグの位置を地図上で確認することができるので、移動体がその付近にいることを認識できる。
【0106】
このように、複数のICタグを利用して移動体の位置を把握する移動体の位置の計測方法において、事前に前記複数のICタグ全ての位置を計測しておく必要なしに移動体の位置の計測を行なうことができる。
【0107】
また、移動体位置の計測に使用する移動体位置計測用具11(11a、11b、11c、11d)は、テープ状体12の裏面16を設置場所から引き剥がして簡単に撤去し、巻き取って、コンパクトに保管し、再度、使用する場合には、図1図示のように伸張し、裏面16を設置場所に貼り付けて使用すればよいので、簡単に設置することができる。このように、移動体位置計測用具11はその設置、撤去、再利用が容易であり、コストや手間が軽減されたものとなる。
【実施例2】
【0108】
本発明の実施例2について、移動体の位置の計測方法の手順を示した流れ図である図4を参照して説明する。
【0109】
なお、移動体位置計測用具11及びICタグ読取表示装置51は実施例1と同様であり、ICタグ読取表示装置51の位置情報の算出機能が強化された点が異なるものである。
【0110】
図4に示すように、ICタグ読取表示装置51がICタグ15からの電波を受信し(S11)、かつ2以上のICタグからの電波受信をしたときに(S12)、本実施例の移動体の位置の計測方法が実施される。
【0111】
本実施例で使用するICタグは、一定の時間間隔で電波を発信する。そこで、現在からその時間間隔だけ遡った間に受信したICタグについて、受信した電波の電界強度を重みとして、受信したICタグの位置を加重平均することにより位置を算出する(S13)。
【0112】
これは2以上のICタグ15から電波を受信したときに、受信したICタグ15の位置の平均を単純に計算するのでなく、より近くにあるICタグ15から受信する電波の電界強度が大きいことから、この電界強度を重みとして受信した各ICタグ15の位置情報の加重平均を算出する。
【0113】
適切な方法で重みづけられた加重平均を用いることよって、より精度の高い移動体の位置情報を提供することができる。
【0114】
例えば、2個のICタグ15の間に移動体が位置し、この2個のICタグ15からそれぞれ電波を受信したときは、受信した電波の電界強度を重みとして2個のICタグ15の位置の加重平均を算出することで、電界強度が距離とともに減衰するならば、単純平均と比較し、移動体に近い側のICタグの位置に近い位置を出力することができる。
【0115】
加重平均の算出は、ICタグ読取表示装置51の位置出力手段57が所定のプログラムと、ICタグ配置位置情報記録手段56に記録されているICタグの位置に基づいて行い、この算出された移動体の位置は画像描画・出力手段58により地図を背景として描画され、画像表示手段59の画面上に表される。
【0116】
なお受信したICタグ15の数が1個であるときは、実施例1と同様に、受信したそのICタグ15の位置をもって、移動体の位置とする(S15)。
【0117】
このように本実施例によれば、電界強度により重みによる加重平均による位置情報を提供するので、より一層精度の高い移動体の位置情報を提供することができる。
【実施例3】
【0118】
図5を参照して本発明の実施例3について説明する。
【0119】
図5は本実施例で使用する移動体位置計測用具11に配置されたICタグ15〜15、ICタグ読取装置71そして中央監視装置81のブロック構成図である。
【0120】
なお、実施例1の図3のブロック構成図で示したものと同一機能のものは同一名称を付してある。
【0121】
したがって実施例1、2と同一内容の部分は説明を省略し、異なる特徴部分を中心に説明する。
【0122】
図5に示すように、本実施例の特徴は、移動体が所持するICタグ読取装置71には表示装置等が備えられておらず、移動体の位置を表示する地図画像は中央監視装置81の表示手段89に表示されることである。移動体の所持するICタグ読取装置71は、ICタグ15からの電波を受信するICタグリーダの機能と、受信したID情報を中央監視装置81に送信する機能とを有するものである。
【0123】
したがって移動体の所持するICタグ読取装置71は、上記したICタグ読取表示装置51に比較して軽量かつコンパクトになり、移動体の負担を軽減することができるとともに安価に製造できる。このような特徴は、移動体自身が自己の位置情報を把握する必要がなく、中央監視措置81で多数の移動体の位置を把握する場合等に有効となる。
【0124】
本実施例では、ICタグ読取装置71と中央監視装置81の間は、無線LANを介して接続し、ID情報を転送している。もちろんPHS等の他の通信手段を用いること、ICタグ読取装置71に位置出力手段等を追加して、ID情報の代わりに位置を転送することも可能である。
【0125】
中央監視措置81の画像表示手段89に表示される移動体の位置は、実施例1のように受信したICタグの位置を地図画像に表示して、これを移動体の位置情報とするものでもよく、あるいは実施例2のように2以上の受信したICタグの電波の電界強度を重みとする加重平均によって位置情報を算出してもよい。
【0126】
このように、本実施例では中央の管理者が複数の移動体の分布状況及び移動状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】移動体位置計測用具の概略図。
【図2】移動体位置計測用具が設置されたイベント会場の平面概略図。
【図3】ICタグとICタグ読取表示装置のブロック構成図。
【図4】移動体の位置の計測方法の手順を示した流れ図。
【図5】ICタグ、ICタグ読取装置そして中央監視装置のブロック構成図。
【符号の説明】
【0128】
11 移動体位置計測用具
12 テープ状体12
15(15、・・・・・、15)ICタグ
51 ICタグ読取表示装置
71 ICタグ読取装置
81 中央監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のICタグと少なくとも2個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されている移動体位置計測用具を配備し、
当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも2個以上の目標の位置を計測することにより、前記複数個のICタグの位置を把握すると共に、
位置を計測される対象となっている移動体が前記複数個のICタグの中のICタグからの電波を受信して、当該電波を受信したICタグの位置を把握することにより、当該移動体の位置を計測することを特徴とする移動体の位置の計測方法。
【請求項2】
複数個のICタグと少なくとも1個の目標が、あらかじめ定められている位置関係で配置されており、かつ方向の基準となる基準線を含む移動体位置計測用具を、当該基準線があらかじめ定められた方向と一致するように配備し、
当該移動体位置計測用具における前記目標の中の少なくとも1個の目標の位置を計測することにより、前記複数個のICタグの位置を把握すると共に、
位置を計測される対象となっている移動体が前記複数個のICタグの中のICタグからの電波を受信して、当該電波を受信したICタグの位置を把握することにより、当該移動体の位置を計測することを特徴とする移動体の位置の計測方法。
【請求項3】
前記移動体位置計測用具は、柔軟性を有する支持体に前記ICタグ及び目標が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体の位置の計測方法。
【請求項4】
前記移動体位置計測用具は、折り畳むことができる支持体に前記ICタグ及び目標が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体の位置の計測方法。
【請求項5】
前記電波を受信したICタグが2以上のときは、それぞれ受信した電波の電界強度と受信時刻で定まる値を重みとして前記電波を受信した2以上のICタグの位置の加重平均を算出し、前記移動体の位置とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の移動体の位置の計測方法。
【請求項6】
前記移動体の位置は、当該移動体を含む周囲、あるいは監視の対象とする範囲を表示する地図画像上に表示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の移動体の位置の計測方法。
【請求項7】
前記地図画像は、前記移動体又は中央監視装置の表示手段に表示されることを特徴とする請求項6に記載の移動体の位置の計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−203076(P2008−203076A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39139(P2007−39139)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(301042480)国土交通省国土地理院長 (12)
【Fターム(参考)】