説明

移動体の気流はく離抑制構造

【課題】簡単な構造によって移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することができる移動体の気流はく離抑制構造を提供する。
【解決手段】はく離抑制部6は、車両2の車体端面3aに衝突した気流Fをこの車両2の車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する。車両2がX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fが内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両は、車両走行時に車体側方における空気流の発生を抑制するために、先頭車両の妻面の両側部に車体中心側に向かって湾曲する板状部材を備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の鉄道車両では、先頭車両の妻面に衝突した気流を板状部材によって車体の上方及び下方に分離して導くことによって、車両走行時に車体側方に発生する気流を抑制し、プラットホーム上に発生する列車風を低減している。
【0003】
【特許文献1】特開2003-246265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速列車がトンネル入口側坑口に突入するとトンネル内に圧縮波が発生する。この圧縮波はトンネル内を伝播する。そして、圧縮波が出口側坑口に到達した時、パルス状の圧力波であるトンネル微気圧が外部へ放出される。一方、圧縮波は坑口や列車端で反射しトンネル内を往復し、列車に圧力変動を及ぼす。圧力変動は、車内におけるいわゆる「耳つん」現象などの原因となる。これらの現象には、列車突入時に形成される圧縮波の圧力の大きさ、および、圧力勾配(圧力の変化時間)が主に関係すると考えられる。
【0005】
近年、車両性能の向上や線形改良により在来線でも高速化が進み、特に先頭部端部に丸みのほとんど無い切妻型列車のトンネル突入時に形成される圧縮波について、その圧力の大きさおよび圧力勾配が増大する傾向にある。これらの増大の主原因は、列車の切妻型先頭部からの流れのはく離による見かけの車両断面積増大が考えられている。この圧縮波の圧力の大きさおよび圧力勾配が増大するのに伴い、耳つん、トンネル微気圧波などが増大する傾向にある。一方、先頭部からの流れのはく離が大きくなると、列車の空気抵抗も増大するという問題もあることが分かっている。
【0006】
しかし、従来の鉄道車両では、プラットホーム上に発生する列車風の低減を目的としており、先頭車両の妻面に衝突した気流を板状部材によって車体の上方及び下方に導くと、車体の上面及び下面で気流がはく離するおそれがある。その結果、従来の鉄道車両では、列車風を低減することは可能であっても、トンネル微気圧波が発生してしまう問題点がある。
【0007】
この発明の課題は、簡単な構造によって移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することができる移動体の気流はく離抑制構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図3、図10及び図15に示すように、移動体(2)が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流(F)のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造であって、前記移動体の前面(3a)に衝突した気流をこの移動体の側面(3b,3c)に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制するはく離抑制部(6)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造(5)である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図3に示すように、前記はく離抑制部は、内側フィン部(7a)と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ1)に前記気流を通過させるルーバー部(7)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図10に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の側面(3b,3c)と内側フィン部(7a)との間の間隙部(Δ21)に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ22)に前記気流を通過させるルーバー部(7;7A)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図15に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の側面(3b,3c)との間の間隙部(Δ3)に前記気流を通過させるフィン部(19)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2又は請求項3に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図3、図4、図10及び図11に示すように、前記内側フィン部及び前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(7g,7h,7i,7j)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項3に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図21及び図22(B)に示すように、前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(7i,7j)を備え前記内側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(7g,7h)と、この湾曲面の先端部から伸びる平面(7m,7n)とを備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項4に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図15及び図16に示すように、前記フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(19g,19h)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0015】
請求項8の発明は、図2、図9及び図14に示すように、移動体(2)が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流(F)のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造であって、前記移動体の前面(3a)に衝突した気流をこの移動体の上面(3d)に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制するはく離抑制部(6)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造(5)である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図2に示すように、前記はく離抑制部は、内側フィン部(7a)と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ1)に前記気流を通過させるルーバー部を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図9に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の上面(3d)と内側フィン部(7a)との間の間隙部(Δ21)に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ22)に前記気流を通過させるルーバー部(7;7B)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0018】
請求項11の発明は、請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図14に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の上面(3d)との間の間隙部(Δ3)に前記気流を通過させるフィン部(19)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0019】
請求項12の発明は、請求項9又は請求項10に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図2、図4、図9及び図11に示すように、前記内側フィン部及び前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(7g,7h,7i,7j)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0020】
請求項13の発明は、請求項10に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図20及び図22(A)に示すように、前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(7i,7j)を備え、前記内側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(7g,7h)と、この湾曲面の先端部から伸びる平面(7m,7n)とを備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0021】
請求項14の発明は、請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図14及び図16に示すように、前記フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面(19g,19h)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0022】
請求項15の発明は、請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図19に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の上面の中心部に前記気流を導く部分がこの移動体の上面の両縁部に前記気流を導く部分よりも、この移動体の進行方向前側(X)に突出していることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0023】
請求項16の発明は、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向(X)の突出長さLxであり、前記移動体の移動方向と直交する方向(Y)の突出長さLYであり、前記移動体の幅Wであるときに、LX/W=0.0714以上であり、かつ、LY/W=0.0358以上であることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0024】
請求項17の発明は、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図4、図11及び図16に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体側に着脱自在に装着可能であることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0025】
請求項18の発明は、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図5、図12及び図17に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体側に折畳可能であることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0026】
請求項19の発明は、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図4、図11及び図16に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向及び/又はこの移動方向と直交する方向に移動可能であることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0027】
請求項13の発明は、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、前記はく離抑制部は、前記移動体の運転者が外部を看視するための透過部(7c,7d;19c)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によると、簡単な構造によって移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。図4は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の使用状態を概略的に示す横断面図である。図5は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の折畳状態を概略的に示す横断面図である。
【0030】
図1〜図3に示す軌道1は、車両2が走行する通路(線路)であり、車両2の車輪4aを案内する一対のレール1aなどから構成されている。車両2は、軌道1に沿って走行する移動体であり、電車又は気動車などの鉄道車両である。車両2は、図1〜図5に示す車体3と、図2に示す台車4と、図1〜図5に示す気流はく離抑制構造5などを備えている。図1〜図3に示す車両2は、列車の運転制御をするための運転室を備える先頭車両である。
【0031】
車体3は、乗客を積載し輸送するための構造物である。車体3は、図1〜図5に示す車体端面(車体前面)3aと、図1及び図3に示す車体側面3b,3cと、図1〜図3に示す車体上面3dと、図2に示す車体底面3eと、図4及び図5に示す貫通孔3fなどを備えている。車体端面3aは、車両2の妻構えを構成する外板(妻板)であり、先頭車両の先頭部である。車体端面3aは、量産が容易で低コストな切妻形状であり、妻板が平面であり側板と直角に形成されている。図1に示す車体端面3aは、車両2が中間車両として連結されたときに、前後の車両間を乗客及び乗務員が移動するときに使用する妻入口3gと、乗務員が前方を看視するために運転室前面に形成された前面窓3hなどを備えている。図3に示す車体側面3b,3cは、車両2の側構えを構成する外板(側板)であり、図2に示すように乗務員が車外を看視するための側窓3iと、乗務員が乗降するときに使用する側出入口3jと、乗客が乗降するときに使用する側出入口3kなどを備えている。図1〜図3に示す車体上面3dは、車両2の屋根構えを構成する外板(屋根板)であり、車室内を空気調和するための空気調和装置などの屋根上機器が設置される。図2に示す車体底面3eは、車両2の床構造を構成する外板であり、台車4などの走行装置が設置されている。図4及び図5に示す貫通孔3fは、駆動部12のピストンロッド12d〜12fが移動自在に貫通する部分であり、車体端面3aに水平方向に形成されたスリット状の長孔である。図2に示す台車4は、車体3を支持して軌道1上を走行する走行装置であり、レール1aと転がり接触する車輪4aなどを備えている。
【0032】
図1〜図5に示す気流はく離抑制構造5は、車両2が走行するときにこの車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する構造である。気流はく離抑制構造5は、図2〜図4に示すように、車体端面3aに衝突した気流Fを車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、気流のはく離を抑制して車両2の空気抵抗を低減するとともに、車両2の先頭部の見かけの車両断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減する。また、気流はく離抑制構造5は、車両2のトンネル突入時に発生するトンネル内の圧力変動を抑制し、その結果、車体3に作用する繰り返し荷重によって発生する車体構造疲労を低減するとともに、気圧変動に起因して車体3内の乗客に発生する耳の不快感や違和感である耳つん現象を低減する。気流はく離抑制構造5は、図1〜図5に示すはく離抑制部6と、図4及び図5に示す連結部8〜11と、駆動部12と、密封部13と、操作部14と、設定部15と、記憶部16と、制御部17などを備えている。
【0033】
図1〜図5に示すはく離抑制部6は、車両2の車体端面3aに衝突した気流Fをこの車両2の車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する部分である。はく離抑制部6は、図1に示すように、車体端面3aの側縁部及び上縁部に沿って、この車体端面3aを囲むように配置されており、車体端面3aの両側と車体端面3aの上側とに配置されている。はく離抑制部6は、いずれも同一構造であり、以下では進行方向前側から見て車体端面3aの右側縁部に配置されたはく離抑制部6を中心に説明し、車体端面3aの左側縁部及び上縁部に配置されたはく離抑制部6については詳細な説明を省略する。はく離抑制部6は、車両2側に着脱自在に装着可能であるとともに、図5に示すように車両2側に折畳可能であり、図4に示すように車両2の移動方向(X軸方向)及びこの車両2の移動方向と直交する方向(Y軸方向)に移動可能である。はく離抑制部6は、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属、アクリル樹脂などの合成樹脂又は繊維強化プラスチック(FRP)などによって形成されている。はく離抑制部6は、図2〜図5に示すように、ルーバー部7などを備えている。
【0034】
図2〜図4に示すルーバー部7は、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1に気流Fを通過させる部分である。ルーバー部7は、図2〜図5に示す内側フィン部7aと、外側フィン部7bと、図2に示す透過部7c,7dなどを備えている。
【0035】
図1〜図5に示す内側フィン部7aは、気流Fの向きを変える部分であり、図3及び図4に示すように車体3と外側フィン部7bとの間に配置されている。内側フィン部7aは、図4に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hを備える羽根板状の部材であり、車両2と対向する側の表面に凹状湾曲面7gを備え、車両2と対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面7hを備えている。内側フィン部7aの先端部は、図2及び図3に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。内側フィン部7aの後端部は、車体端面3aと車体側面3b,3cとの境界である角部に回転自在に連結されており、車体側面3b,3cとの間に段差部が形成されないように、凸状湾曲面7hが車体側面3b,3c及び車体上面3dと同一高さ(同一面)で連続している。
【0036】
図1〜図5に示す外側フィン部7bは、内側フィン部7aとの間で気流Fの向きを変える部分であり、図2〜図4に示すように内側フィン部7aの外側に所定の間隔をあけて配置されている。外側フィン部7bは、図4に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7i及び凸状湾曲面7jを備えており、内側フィン部7aと同様の羽根板状の部材である。外側フィン部7bは、内側フィン部7aと対向する側の表面に凹状湾曲面7iを備え、内側フィン部7aと対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面7jを備えている。外側フィン部7bの先端部は、車体端面3a側に湾曲しており、内側フィン部7aの先端部よりも僅かに前方に突出している。外側フィン部7bの後端部は、内側フィン部7aの後端部よりも僅かに前方に突出しており車体側面3b,3cよりも外側又は内側に変位可能である。
【0037】
図2に示す透過部7c,7dは、車両2の運転者が外部を看視するための部分である。透過部7c,7dは、車両2の運転室内の乗務員が外部を看視可能なように、図1及び図2に示す前面窓3h及び側窓3iと対向する部分に形成されている。透過部7c,7dは、ルーバー部7が運転者の視界を遮らないように、運転者の視界領域内に形成された透明又は半透明な部分であり、透過部7cは内側フィン部7aの一部に形成されており、透過部7dは外側フィン部7bの一部に形成されている。透過部7cは、例えば、ポリカーボネートなどの合成樹脂又は強化ガラスなどによって形成されている。
【0038】
図4及び図5に示す連結部8〜11は、はく離抑制部6を車両2に着脱自在に装着する部分である。連結部8は、内側フィン部7aと車体3とを回転自在に連結する。連結部8は、この連結部8を回転中心として内側フィン部7aが回転可能なように、内側フィン部7aの後端部を車体3に回転自在に連結する蝶番(ヒンジ構造)である。連結部8は、車両2側に取り付けられた車両側軸受部と、内側フィン部7a側に取り付けられたフィン側軸受部と、車両側軸受部とフィン側軸受部とに着脱自在に挿入されるピン部とを備えている。連結部8は、内側フィン部7aを車両2から取り外すときには、車両側軸受部とフィン側軸受部とからピン部を抜き取り、内側フィン部7aを車両2に取り付けるときには、車両側軸受部とフィン側軸受部とにピン部を挿入する。
【0039】
連結部9は、内側フィン部7aとピストンロッド12dとを回転自在に連結する。連結部9は、連結部8を回転中心として内側フィン部7aが回転可能なように、内側フィン部7aの先端部寄りをピストンロッド12dに回転自在に連結する蝶番(ヒンジ構造)である。連結部9は、内側フィン部7a側に取り付けられたフィン側軸受部と、ピストンロッド12d側に取り付けられたロッド側軸受部と、フィン側軸受部とロッド側軸受部とに着脱自在に挿入されるピン部とを備えており、連結部8と同様の操作によって内側フィン部7aを車両2に着脱可能である。
【0040】
連結部10は、外側フィン部7bとピストンロッド12eとを回転自在に連結し、連結部11は外側フィン部7bとピストンロッド12fとを回転自在に連結する。連結部10,11は、連結部9と同一構造であり、外側フィン部7bが変位可能なように、外側フィン部7bの先端部寄りと後端部寄りとをそれぞれピストンロッド12e,12fに回転自在に連結する蝶番(ヒンジ構造)である。連結部10,11は、外側フィン部7b側に取り付けられたフィン側軸受部と、ピストンロッド12e,12f側にそれぞれ取り付けられたロッド側軸受部と、フィン側軸受部とロッド側軸受部とに着脱自在に挿入されるピン部とを備えている。連結部10,11は、連結部8,9と同様の操作によって外側フィン部7bを車両2に着脱可能である。
【0041】
駆動部12は、はく離抑制部6を駆動する部分である。駆動部12は、例えば、はく離抑制部6を車両2の移動方向(X軸方向)及びこの移動方向と直交する方向(Y軸方向)に移動して、このはく離抑制部6の姿勢を変化させるとともに、はく離抑制部6を車両2側から展開したりこのはく離抑制部6を車両2側に折り畳んだりする。駆動部12は、図4及び図5に示すように、シリンダ部12a〜12cと、ピストンロッド12d〜12fと、流体圧回路12g〜12iなどを備えている。シリンダ部12aは、内側フィン部7aを駆動する部材であり、ピストンロッド12dを伸縮することによって、連結部8を回転中心として内側フィン部7aを回転駆動し、内側フィン部7aの先端部をX軸方向及びY軸方向に変位させる。シリンダ部12b,12cは、外側フィン部7bを駆動する部材であり、ピストンロッド12e,12fを伸縮することによって、外側フィン部7bの先端部及び後端部をX軸方向及びY軸方向に変位させる。シリンダ部12a〜12cは、例えば、油圧又は空気圧などの作動流体の流体圧によって駆動力を発生する油圧シリンダ又は空気圧シリンダなどのアクチュエータであり、垂直軸(Z軸)回りに回転可能なように車体3側の固定部材に連結されている。ピストンロッド12d〜12fは、シリンダ部12a〜12c内のピストンの進退動作に連動して進退動作する部材である。ピストンロッド12dの先端部は、内側フィン部7aに連結されており、ピストンロッド12e,12fの先端部は外側フィン部7bに連結されている。
【0042】
図6は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造における駆動部の流体圧回路の回路図である。
図4及び図5に示す流体圧回路12g〜12iは、シリンダ部12a〜12c内のピストンを作動流体の流体圧によって駆動するための回路である。流体圧回路12g〜12iは、いずれも同一構造であり、以下では流体圧回路12gを例に挙げて説明する。流体圧回路12gは、図6に示すように、ポンプ12jと、タンク12kと、方向切替弁12mなどを備えている。ポンプ12jは、シリンダ部12aのヘッド側室S1に作動流体を供給する装置であり、タンク12kはシリンダ部12aのヘッド側室S1及びロッド側室S2から排出される作動流体を回収する装置である。方向切替弁12mは、ピストンロッド12dの前進、後退及び停止を切り替える装置である。方向切替弁12mは、右側のソレノイドSOL-aが通電状態になると流路が切り替わり、ピストンロッド12dが前進するように、ポンプ12jからの作動流体をヘッド側室S1に供給させ、ロッド側室S2からタンク12kに作動流体を排出させる。一方、方向切替弁12mは、左側のソレノイドSOL-bが通電状態になると流路が切り替わり、ピストンロッド12dが後退するように、ポンプ12jからの作動流体をロッド側室S2に供給させ、ヘッド側室S1からタンク12kに作動流体を排出させる。また、方向切替弁12mは、ソレノイドSOL-a,SOL-bが非通電状態になると流路が切り替わり、ピストンロッド12dが停止するように、ヘッド側室S1及びロッド側室S2への作動流体の供給及び排出を禁止する。
【0043】
図7は、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造における密封部の正面図である。
図7に示す密封部13は、車体3の貫通孔3fを密封する部分である。密封部13は、貫通孔3fから気流Fが車内に流入するのを阻止しており、貫通孔3fの上縁部に装着された上側密封部13aと、貫通孔3fの下縁部に装着された下側密封部13bとを備えている。密封部13は、上側密封部13aの下端面と下側密封部13bの上端面とを密着させており、ピストンロッド12d〜12fが長さ方向と交差する方向(貫通孔3fの長さ方向)にスライド可能なように、上側密封部13aと下側密封部13bとの間に挟み込んでいる。
【0044】
図4及び図5に示す操作部14は、はく離抑制部6を使用状態及び非使用状態に切り替えるときに操作する部分である。操作部14は、例えば、はく離抑制部6を図5に示す折畳状態(非使用状態)から図4に示す展開状態(使用状態)に切り替えるときには乗務員にON操作され、はく離抑制部6を展開状態から折畳状態に切り替えるときにはOFF操作される切替スイッチなどである。操作部14は、車両2の運転室内に設置されており、乗務員のON操作及びOFF操作に応じてON/OFF操作信号を制御部17に出力する。
【0045】
設定部15は、はく離抑制部6の変位量を設定する部分である。設定部15は、例えば、はく離抑制部6のX軸方向及び/又はY軸方向の変位量を設定する入力装置などである。設定部15は、例えば、内側フィン部7a及び外側フィン部7bの変位量などを設定する。設定部15は、はく離抑制部6の変位量を変位量情報として制御部17に出力する。
【0046】
記憶部16は、はく離抑制部6の変位量を記憶する部分である。記憶部16は、設定部15が設定したはく離抑制部6の変位量を変位量情報として記憶するメモリなどである。記憶部16は、例えば、内側フィン部7a及び外側フィン部7bの変位量を座標系に数値情報化して記憶している。
【0047】
制御部17は、駆動部12を制御する部分である。制御部17は、例えば、操作部14が出力するON操作信号及びOFF操作信号に基づいて駆動部12を駆動制御したり、設定部15が出力する変位量情報を記憶部16に記憶させたりする。制御部17は、操作部14からON操作信号が入力したときには、図4に示すようにピストンロッド12d〜12fが前進して、はく離抑制部6が展開状態になるように流体圧回路12g〜12iを動作制御する。一方、制御部17は、操作部14からOFF操作信号が入力したときには、図5に示すようにピストンロッド12d〜12fが後退して、はく離抑制部6が折畳状態になるように流体圧回路12g〜12iを動作制御する。
【0048】
次に、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図1〜図4に示すように、はく離抑制部6を使用状態にするときには、図4に示す操作部14を乗務員がON操作すると、操作部14が出力するON操作信号が制御部17に入力する。ON操作信号が制御部17に入力すると、変位量情報を制御部17が記憶部16から読み出して、内側フィン部7a及び外側フィン部7bが所定の変位量だけ駆動するように、制御部17が流体圧回路12g〜12iを動作制御する。その結果、図6に示すソレノイドSOL-aを制御部17が通電状態にして方向切替弁12mを切り替えるとともに、制御部17がポンプ12jを駆動させる。このため、タンク12kからヘッド側室S1に作動流体をポンプ12jが供給し、ロッド側室S2からタンク12kに作動流体が排出されて、ピストンロッド12d〜12fが前進する。その結果、図4に示すように、内側フィン部7a及び外側フィン部7bが変位して、はく離抑制部6が折畳状態から展開状態に切り替わる。この状態で、図6に示すソレノイドSOL-a,SOL-bを制御部17が非通電状態にして方向切替弁12mを切り替えるとともに、制御部17がポンプ12jの駆動を停止する。その結果、ヘッド側室S1及びロッド側室S2への作動流体の供給及び排出が禁止されて、ピストンロッド12d〜12fが停止し、はく離抑制部6が所定の姿勢に維持される。
【0049】
図1〜図4に示す状態で車両2がX軸方向に走行すると、図2〜図4に示すように車体端面3aに衝突した気流Fが内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増加するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。
【0050】
図5に示すように、はく離抑制部6を非使用状態にするときには、操作部14を乗務員がOFF操作すると、操作部14が出力するOFF操作信号が制御部17に入力し、制御部17が流体圧回路12g〜12iを動作制御する。その結果、図6に示すソレノイドSOL-bを制御部17が通電状態にして方向切替弁12mを切り替えるとともに、制御部17がポンプ12jを駆動させる。このため、タンク12kからロッド側室S2に作動流体をポンプ12jが供給し、ヘッド側室S1からタンク12kに作動流体が排出されて、ピストンロッド12d〜12fが後退する。その結果、図5に示すように、内側フィン部7a及び外側フィン部7bが変位して、はく離抑制部6が展開状態から折畳状態に切り替わる。
【0051】
この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、車両2の車体端面3aに衝突した気流Fを車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、この車体端面3aからの気流Fのはく離をはく離抑制部6が抑制し、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1にルーバー部7が気流Fを通過させる。このため、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離するのを抑制して、車両2の空気抵抗を低減することができるとともに、車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減することができる。また、車体3に作用する繰り返し荷重によって発生する車体構造疲労を低減することができるとともに、気圧変動に起因して車体3内の乗客に発生する耳つん現象を低減することができる。
【0052】
(2) この第1実施形態では、はく離抑制部6が車両2に着脱自在に装着可能である。このため、トンネル区間の少ない線区を車両2が走行するようなときには、はく離抑制部6を簡単に取り外すことができる。また、簡単な改造によって既存の車両2にはく離抑制部6を低コストで容易に追加設置することができる。
【0053】
(3) この第1実施形態では、はく離抑制部6が車両2側に折畳可能である。このため、車両2の前側に他の車両2が連結されたときに、車両2のはく離抑制部6を折り畳み、後側の車両2のはく離抑制部6と前側の車両2のはく離抑制部6とが互に干渉するのを防ぐことができる。
【0054】
(4) この第1実施形態では、車両2の移動方向(X軸方向)及びこの移動方向と直交する方向(Y軸方向)にはく離抑制部6が移動可能である。このため、車両2の車体端面3aから気流Fがはく離しないように、はく離抑制部6を最適な姿勢に簡単に変化させることができる。
【0055】
(5) この第1実施形態では、車両2の運転者が外部を看視するための透過部7c,7dをはく離抑制部6が備えている。このため、はく離抑制部6が展開状態及び折畳状態に変更されても、運転室内の乗務員の視界を遮ることがなく、車両2を安全に運転することができる。
【0056】
(第2実施形態)
図8は、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。図9は、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。図10は、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。図11は、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の使用状態を概略的に示す横断面図である。図12は、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の折畳状態を概略的に示す横断面図である。以下では、図1〜図7に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
図8〜図12に示す気流はく離抑制構造5は、はく離抑制部6と、連結部9〜11,18と、駆動部12と、密封部13と、操作部14と、設定部15と、記憶部16と、制御部17などを備えており、図8〜図12に示すはく離抑制部6はルーバー部7などを備えている。ルーバー部7は、図9及び図10に示すように、車体側面3b,3c及び車体上面3dと内側フィン部7aとの間の間隙部Δ21に気流Fを通過させるとともに、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ22に気流Fを通過させる部分である。内側フィン部7aの後端部は、図9及び図10に示すように、車体側面3b,3c側及び車体上面3d側に湾曲してこれらの表面と平行に形成されており、これらの表面よりも僅かに突出している。外側フィン部7bの後端部は、内側フィン部7aに沿って湾曲しており、内側フィン部7aの後端部よりも僅かに前方に突出するとともに、この内側フィン部7aよりも外側に突出している。
【0058】
駆動部12は、図11及び図12に示すように、シリンダ部12a〜12c,12nと、ピストンロッド12d〜12f,12pと、流体圧回路12g〜12i,12qなどを備えている。シリンダ部12nは、内側フィン部7aを駆動する部材であり、ピストンロッド12pを伸縮することによって、内側フィン部7aをX軸方向及びY軸方向に変位させる。シリンダ部12nは、例えば、図4及び図5に示すシリンダ部12a〜12cと同一構造であり、Z軸回りに回転可能なように車体3側の固定部材に連結されている。ピストンロッド12pは、シリンダ部12n内のピストンの進退動作に連動して進退動作する部材であり、ピストンロッド12pの先端部は内側フィン部7aに連結されている。流体圧回路12qは、シリンダ部12nを作動流体の流体圧によって駆動するための回路であり、図4〜図6に示す流体圧回路12g〜12iと同一構造である。
【0059】
制御部17は、操作部14からON操作信号が入力したときには、図11に示すようにピストンロッド12d〜12f,12pが前進して、はく離抑制部6が展開状態になるように流体圧回路12g〜12i,12qを動作制御する。制御部17は、操作部14からOFF操作信号が入力したときには、図12に示すようにピストンロッド12d〜12fが後退して、はく離抑制部6が折畳状態になるように流体圧回路12g〜12iを動作制御する。
【0060】
連結部18は、はく離抑制部6を車両2に着脱自在に装着する部分であり、内側フィン部7aとピストンロッド12pとを回転自在に連結する。連結部18は、内側フィン部7aが変位可能なように、この内側フィン部7aの後端部寄りをピストンロッド12pに回転自在に連結する蝶番(ヒンジ構造)である。連結部18は、図4及び図5に示す連結部9〜11と同一構造である。
【0061】
次に、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図8〜図11に示す状態で車両2がX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fが車体側面3b,3c及び車体上面3dと内側フィン部7aとの間の間隙部Δ21を通過するとともに、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ22を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0062】
(第3実施形態)
図13は、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。図14は、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。図15は、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。図16は、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の使用状態を概略的に示す横断面図である。図17は、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の折畳状態を概略的に示す横断面図である。
【0063】
図13〜図17に示すはく離抑制部6は、フィン部19などを備えており、フィン部19は図13〜図16に示すように、車体側面3b,3cとの間の間隙部Δ3に気流Fを通過させるとともに、車体上面3dとの間の間隙部Δ3に気流Fを通過させる部分である。フィン部19は、図16に示すように車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面19g及び凸状湾曲面19hを備えており、図2〜図5及び図9〜図12に示す内側フィン部7a及び外側フィン部7bと同様の羽根板状の部材である。フィン部19は、図13及び図14に示すように、図1及び図8に示す透過部7c,7dと同様の透過部19cと、図16に示すように、図4及び図11に示す凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hと同様の凹状湾曲面19g及び凸状湾曲面19hなどを備えている。フィン部19の先端部は、図14及び図15に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。フィン部19の後端部は、車体側面3b,3c側及び車体上面3d側に湾曲してこれらの表面と平行に形成されており、これらの表面よりも僅かに突出している。
【0064】
駆動部12は、図16及び図17に示すように、シリンダ部12a,12nと、ピストンロッド12d,12pと、流体圧回路12g,12qなどを備えている。シリンダ部12a,12nは、フィン部19を駆動する部材であり、ピストンロッド12d,12pを伸縮することによって、フィン部19をX軸方向及びY軸方向に変位させる。制御部17は、操作部14からON操作信号が入力したときには、図16に示すようにピストンロッド12d,12pが前進して、はく離抑制部6が展開状態になるように流体圧回路12g,12qを動作制御する。制御部17は、操作部14からOFF操作信号が入力したときには、図17に示すようにピストンロッド12d,12pが後退して、はく離抑制部6が折畳状態になるように流体圧回路12g,12qを動作制御する。
【0065】
次に、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図13〜図16に示す状態で車両2がX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fが車体側面3b,3c及び車体上面3dとフィン部19との間の間隙部Δ3を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。この第3実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果がある。
【0066】
(第4実施形態)
図18は、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。図19は、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す平面図である。図20は、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。図21は、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。図22は、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の一部を拡大して示す断面図であり、図22(A)は図20のXXIIA部分の断面図であり、図22(B)は図21のXXIIB部分の断面図である。
【0067】
図18〜図21に示す車体3は、車体端面3aの全面が平面ではなく、車両2が他の車両と連結されて中間車両となったときにこの車両2が曲線通過時に他の車両の車体端面と干渉しないように、車体端面3aの側縁部及び上縁部が後方に後退した切妻形状である。車体端面3aは、図19及び図21に示すように、車体側面3b,3cに向かって後方に湾曲する湾曲面3m,3nと、図20に示すように車体上面3dに向かって後方に湾曲する湾曲面3pなどを備えている。はく離抑制部6は、図19に示すように、車体上面3dの中心部に気流Fを導く部分がこの車体上面3dの両縁部に気流Fを導く部分よりも、車両2の進行方向前側(車体端面3aの前方)に突出している。はく離抑制部6は、図18に示すように、ルーバー部7A,7Bを備えている。
【0068】
ルーバー部7Aは、車体端面3aの側縁部に配置されており、ルーバー部7Bは車体端面3aの上縁部に配置されている。ルーバー部7Bは、図18に示すように、車体端面3aの上縁部に沿って2つに分割されて配置されており、車体3の腰部と側部とにそれぞれ対応して配置されている。ルーバー部7Bは、車体上面3dの前端部に沿って7つに分割されて配置されており、車体3の肩部、縁部、中央部及び縁部と中央部との間の中間部にそれぞれ対応して配置されている。ルーバー部7A,7Bは、図20及び図21に示すように、内側フィン部7aと、外側フィン部7bと、支持部7kなどを備えている。ルーバー部7Aは、図10及び図11に示すルーバー部7や図20及び図22(A)に示すルーバー部7Bとは内側フィン部7aの構造が相違するが、ルーバー部7Bは図10及び図11に示すルーバー部7と同一構造であり、以下ではルーバー部7A側の部分を中心に説明しルーバー部7Bの部分については詳細な説明を省略する。
【0069】
内側フィン部7aは、図22(B)に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hと、この凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hの先端部から延びる平面7m,7nとを備えている。内側フィン部7aは、後端部から先端部に向かって車体端面3a側に湾曲する湾曲板(曲面板)部分と、この湾曲板部分から先端部に向かって伸びる平面板(平板)部分とによって一体に形成されている。内側フィン部7aは、車両2と対向する側の表面に凹状湾曲面7gと連続する平面7mを備え、車両2と対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面7hと連続する平面7nを備えている。内側フィン部7aは、外側フィン部7bよりも長く形成されており、湾曲板部分の先端に平面板部分を延長したような形状に形成されている。外側フィン部7bは、内側フィン部7aとは異なり先端部が平面に形成されておらず、車体端面3a側に湾曲している。外側フィン部7bの先端部は、内側フィン部7aの先端部よりも僅かに前方に突出しており、外側フィン部7bの後端部も内側フィン部7aの先端部よりも僅かに前方に突出している。支持部7kは、内側フィン部7a及び外側フィン部7bを車体3に支持する部分である。支持部7kは、内側フィン部7a及び外側フィン部7bの長さ方向に所定の間隔をあけて複数配置されており、内側フィン部7aと外側フィン部7bとを連結するとともに、この外側フィン部7bと車体3とを連結する。支持部7kは、図示しないボルト又はねじなどの締結部材によって車体3に着脱自在に固定されている。
【0070】
この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第4実施形態では、車体端面3a側に湾曲する湾曲面を外側フィン部7bが備えており、この車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hと、この凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hの先端部から伸びる平面7m,7nとを内側フィン部7aが備えている。例えば、一方の車両2と他方の車両2とが連結された状態で曲線を走行する場合には、一方の車両2側のはく離抑制部6と他方の車両2側のはく離抑制部6とが干渉しないように、車体端面3aから越えてはならない限界(車両限界)内にはく離抑制部6を配置する必要がある。このような場合には、車両限界内で比較的余裕のない外側フィン部7bに代えて、車両限界内で比較的余裕のある内側フィン部7aの先端部を延長することによって、気流Fのはく離抑制効果を向上させることができる。
【0071】
(2) この第4実施形態では、はく離抑制部6のうち車体上面3dの中心部に気流Fを導く部分がこの車体上面3dの両縁部に気流Fを導く部分よりも、車両2の進行方向前側に突出している。このため、車体端面3aの形状に合わせて車体上面3dの屋根中心部付近のルーバー部7Bを車両2の前側に突出させることによって、気流Fのはく離抑制効果を向上させることができる。
【実施例】
【0072】
次に、この発明の実施例について説明する。
図23は、空気抵抗測定試験に使用した風洞試験装置の構成図であり、図23(A)は側面図であり、図23(B)は平面図であり、図23(C)は図23(B)のXVIII-XVIIIC線で切断した状態を示す断面図である。図24は、空気抵抗の測定に使用した模型車両の外観図であり、図24(A)正面図であり、図24(B)は平面図であり、図24(C)は側面図である。なお、図23及び図24に示す数値の単位はmmである。
【0073】
(風洞試験装置)
図23に示す風洞試験装置20は、模型車両30に空気を流したときにこの空気の流れによって生ずるこの模型車両30の挙動を測定する装置であり、模型車両30に作用する空気抵抗を測定する。風洞試験装置20は、空気を吹き出すノズル(吹出口)20aと、このノズル20aからの空気を模型車両30に流す風洞測定部20bと、床面上の昇降台に設置される地面板20cと、この地面板20c上に模型車両30を支持する支柱20dと、風洞測定部20bからの空気を吸い込む図示しない吸込部(コレクタ)などを備えている。この実験では、風洞測定部20bが開放型である財団法人鉄道総合技術研究所のH棟小型風洞(開放型)を使用した。地面板20cは、長さ1490mm×幅790mmの合板製であり、幅720mm×高さ600mmのノズル20aの底面とこの地面板20cの表面とが一致するように設置した。模型車両30は、断面が翼型形状の4本の支柱20dを利用して地面板20cに固定した。図23(A)に示すように、ノズル20aの先端から車両先頭部30bまでの距離は150mm、地面板20cの表面から模型車両30の底面までの距離は62mm(実物のレール底面から車両底面までの距離に相当)であり、実験風速U=40m/sに設定した。模型車両30の幅W=140mmを代表長さとしたレイノルズ数Re=3.7×105(Re=UW/ν=40×0.14/(1.5×10-5)、空気の動粘性係数ν)である。図23(A)(B)に示すように、座標系は、車両先頭部30bの上端の幅方向の中心点を原点として、レール方向(流れ方向)をX軸、まくらぎ方向をY軸、これらの右手座標系で鉛直上方をZ軸として設定した。
【0074】
(模型車両)
図23及び図24に示す模型車両30は、実際の鉄道車両を模擬(縮小)した車両であり、図23(C)に示すように車両本体部30aと、この車両本体部30aに着脱自在に装着される車両先頭部30bと、車両本体部30aと車両先頭部30bとの間の間隙部を塞ぐ塞ぎ部材30cとを備えている。模型車両30は、201系電車を参考に製作された20分の1縮尺模型である。模型車両30は、図24(A)に示すように、車両断面が矩形であって、屋根面が完全にフラットな板であり、側面と屋根面が接続する部分が角である。模型車両30は、4本の支柱20dを除き、床下機器類は一切無くフラットである。模型車両30は、1両であり、図23(C)に示すように車両先端部からX軸方向に95mmの車両先頭部30bが車両本体部30aから取り外し可能であり独立した構造である。塞ぎ部材30cは、車両本体部30aと車両先頭部30bとの間の約2mmのクリアランスに流れが入り込まないように、このクリアランスを塞ぐビニルであり、車両先頭部30bに作用する力が車両本体部30aに伝わらないように僅かに弛みを持たせている。
【0075】
(空気抵抗測定装置)
図23(C)に示す空気抵抗測定装置40は、車両先頭部30bに作用する空気抵抗を測定する装置であり、この車両先頭部30bを固定した状態で車両本体部30aに設置されている。空気抵抗測定装置40は、車両本体部30a内に設置されたロードセル(昭和測器社製:DP-100N)であり、車両先頭部30bのみに作用する空気抵抗を測定する。この実験では、ロードセルの出力をアンプ(共和電業製:DPM601B)で増幅し、30Hzのローパスフィルターを適用して、A/D変換器(ナショナルインスツルメンツ社製:DAQ-Pad6020E)を介してパーソナルコンピュータ(PC)に取り込んだ。サンプリング周波数は100Hzであり、1回の収録で500個(5秒間)のデータを収録し、測定した空気抵抗FDから空気抵抗係数CDを算出した。ここで、空気抵抗係数CD=FD/(0.5ρU2車両)であり、空気抵抗FD(N)、空気密度ρ(kg/m3)、模型車両30の投影断面積A車両=0.140×0.133=0.0187(m2)である。
【0076】
(先頭部形状)
図25は、空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状がつい立形である場合の外観図であり、図25(A)正面図であり、図25(B)は平面図であり、図25(C)は側面図である。
図25に示す突起物41は、つい立形であり、図25に示すeは車両先頭部30bの側面及び上面からつい立の側面及び上面までの距離であり、fは車両先頭部30bの前面から突起物41の先端面までの高さである。図25に示すつい立形の突起物41については、三種類(e,f)=(5.8,10.0),(8.7,15.0),(11.6,20.0)(mm)作製した。そして、(e,f)= (11.6,20.0)(つい立1)を試験番号(以下、試番という)1とし、(e,f)= (8.7,15.0)(つい立2)を試番3とし、(e,f)=(5.8,10.0)(つい立3)を試番4とした。なお、車両先頭部30bに突起物41を取り付けていないものを試番2とした。
【0077】
図26は、空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状が1/2円又は1/4円である場合の外観図であり、図26(A)正面図であり、図26(B)は1/2円の場合の平面図であり、図26(C)は1/4円の場合の平面図であり、図26(D)は側面図である。
図26に示す突起物41は、1/2円又は1/4円である。図26に示すWは車体幅140mmであり、dは1/2円の場合には直径であり、1/4円の場合には半径である。図26に示す1/2円又は1/4円の突起物41については、d=0.1W=14mmの場合とd=0.15W=21mmの場合とをそれぞれ二種類作製した。そして、d=0.15W=21mmの1/2円(半円H1)を試番5とし、d=0.15W=21mmの1/4円(半円Q1)を試番6とし、d=0.1W=14mmの1/2円(半円H3)を試番7とし、d=0.1W=14mmの1/4円(半円Q2)を試番8とした。
【0078】
図27は、空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状がフィンである場合の外観図であり、図27(A)はフィンの形状及び変位量を示す平面図であり、図27(B)はフィンの固定状態を概略的に示す斜視図である。図28は、空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状がフィン又は2枚のフィンを組み合わせたルーバーである場合の平面図である。なお、図27には、後述する突起物41の形状毎の空気抵抗係数CD及び再付着を示すタフト番号を付してある。
【0079】
図27及び図28に示す突起物41は、フィンであり、図27(B)に示すように車両先頭部30bの前面部からフィン固定用支柱を2〜3箇所伸ばして固定されている。フィンは、図27(A)に示すように、半径rの円弧60度分で構成した。フィンの円弧半径rの大きさは三種類r=11.6mm,17.3mm,23.1mmであり、X軸方向の長さaがそれぞれa=10.0mm,15.0mm,20.0mm(実物換算でそれぞれa=200mm,300mm,400mm)になり、Y軸方向の長さbがそれぞれb=5.8mm,8.7mm,11.6mm(実物換算でそれぞれb=116mm,173mm,231mm)になるように設定した。フィンの大きさ及び取り付け位置は、図28に説明するように、(r,s,t)と表記した。ここで、sはY軸方向のフィンの変位量であり、tはX軸方向のフィンの変位量である。
【0080】
突起物41がフィンである場合には、図28に示すように、(r,s,t)=(23.1,0,0)を試番9とし、(r,s,t)=(23.1,0,5)を試番10とし、(r,s,t)=(23.1,2.5,-2.5)を試番11とし、(r,s,t)=(17.3,2.5,-2.5)を試番12とし、(r,s,t)=(17.3,5.0,-2.5)を試番13とし、(r,s,t)=(17.3,5.0,-5.0)を試番14とし、(r,s,t)=(11.6,5.0,-5.0)を試番15とし、(r,s,t)=(11.6,5.0,0)を試番16とし、(r,s,t)=(11.6,5.0,-2.5)を試番17とした。
【0081】
突起物41がルーバーである場合には、図28に示すように、(r,s,t)=内(11.6,0,0)外(11.6,2.5,2.5)を試番18とし、(r,s,t)=内(11.6,0,0)外(11.6,5.0,5.0)を試番19とし、(r,s,t)=内(11.6,0,0)外(11.6,5.0,2.5)を試番20とし、(r,s,t)=内(11.6,0,0)外(11.6,0,10.0)を試番21とし、(r,s,t)=内(11.6,2.5,-2.5)外(11.6,5.0,2.5)を試番22とした。
【0082】
(タフト法による可視化)
試番1〜試番22の突起物41を車両先頭部30bに取り付けて、図23に示す風洞試験装置20に模型車両30を設置し空気抵抗測定試験を実施した。先ず、模型車両30の周りの流れの様子を調べるため、図23及び図24に示すようにタフト法による可視化を実施した。ここで、タフト法とは、物体表面の流れの様子を糸や毛糸などを用いて観察し、流れの方向、はく離域及び不安定域などを可視化したものである。図23及び図24に示すタフト42は、綿糸#40であり、車体表面(屋根面及び側面)に粘着テープ(幅12mm)で貼り付けた。テープの幅を除いた有効タフト長は15mmである。図24に示すように、X軸方向には車両先頭部30bの先端から22mmの位置に1列目を貼り付け、30mmピッチで19列設置した。また、Y軸方向には、屋根面及び側面にそれぞれ2行分を貼り付けた。なお、側面の先頭部先端から3列目までは、フィン固定用支柱の取付け位置を避けるため1行分のみを貼り付けた。この実験では、タフト42の動きに応じて「はく離」、「はく離無し」の各領域を次のように定義した。「はく離」領域は、タフト42が流れと逆方向を向いている領域とし、「はく離無し」領域はタフト42が流れ方向(順方向)を向いている領域とした。流れは、「はく離」と「はく離無し」の間で「再付着」する。なお、全タフト42が順方向の場合であっても、タフト42が設置されていない車両先頭部30bの端部近傍で微小なはく離領域が存在する場合や3次元はく離の場合には、必ずしもはく離領域で逆流しているとは限らない場合が考えられる。しかし、この実験では、そのようなはく離領域は捉えることは困難なことから考慮せず、タフト42が順方向の場合は「はく離無し」とした。
【0083】
(実験結果)
図29は、模型車両の車両先頭部の形状毎の空気抵抗係数CD及び再付着を示すタフト番号を示すグラフである。
図29に示す左側の縦軸は、空気抵抗係数CDであり、右側の縦軸が再付着を示す(上面)タフト番号であり、横軸は試番である。表1は、空気抵抗係数CD及び再付着を示すタフト位置の実験結果を示す一覧表である。
【0084】
【表1】

【0085】
ここで、図29及び表1に示す試番2は、車両先頭部30bが角柱形状であり、つい立などが設置されていない。図29及び表1に示すように、空気抵抗係数CDは、0.3〜0.8程度の範囲に分布しており、空気抵抗係数CDが最大値をとる先頭部形状は、「上辺側辺ともに角」(試番2)であり、空気抵抗係数CD=0.82である。また、試番2は、上辺及び側辺のいずれについても車両先頭部30bの先端の角部から流れが大きくはく離しており、図23に示すタフト42の8列目(1.66W)付近で再付着している。このため、試番2は、流れが大きくはく離していることが原因により、他の試番よりも空気抵抗係数CDが大きな値を示している。「つい立」形状(試番1,3,4)では、空気抵抗係数CD=0.50〜0.76であり、「半円」形状(試番5〜8)では空気抵抗係数CD=0.44〜0.66に分布しており、いずれの形状についても流れのはく離領域が存在する。一方、「フィン」形状(試番9〜17)では、空気抵抗係数CD=0.31〜0.58に分布しており、空気抵抗係数CDが約0.4以下の試番11,13,14(但し試番9を除く)では「はく離無し」であることが分かる。また、「ルーバー」形状(試番18〜22)では、空気抵抗係数CD=0.32〜0.59に分布しており、空気抵抗係数CDが約0.4以下の試番19,21,22で「はく離無し」であることが分かった。以上の結果より、流れのはく離抑制に効果がある模型車両30の先頭部形状は、フィン又はルーバーを設置したときの試番11,13,14,19,21,22であることが確認された。
【0086】
表2は、車両先頭部30bの形状がフィン及びルーバーであるときの設置時の突出長さを示す一覧表である。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示すLXは、X軸方向の突出長さであり、LYはY軸方向の突出長さである。フィン又はルーバーを実物の車両2の先頭部に設置することを考えた場合には、これらの先頭部への設置時の突出長さを車両限界範囲内に収める必要がある。表2には、「はく離無し」の試番11,13,14,19,21,22について、フィン又はルーバーを車両先頭部30bに設置したときの突出長さ(模型及び実物換算)を示した。表2に示すように、X軸方向の突出長さLX(=a+t)が最も小さい形状は試番14であり、LX=a+t=15-5=10mm(車体の幅W=140mmを基準とした無次元長さLX/W=10/140=0.0714、実物換算200mm)である。Y軸方向の突出長さLY(=s)が最も小さい形状は試番21でありX軸方向の突出長さLY=0である。X軸方向及びY軸方向の突出長さの和LX+LYが最小の形状は試番14であり、X軸方向及びY軸方向の突出長さの和LX+LY=10+5=15mm(車体幅W=140mmを基準とした無次元長さ(LX+LY)/W=0.107、実物換算300mm)である。その結果、試番14は、X軸方向の突出長さLXが最小であり、かつ、X軸方向及びY軸方向の突出長さの和LX+LYも最小である。一方、試番21は、Y軸方向の突出長さLYが最小であるが、X軸方向の突出長さLXが最大であり、X軸方向及びY軸方向の突出長さの和LX+LYも最大である。
【0089】
以上の結果から、この実験で用いたフィン形状及びルーバー形状を実際の車両の先頭部に設置する場合には、車体の幅W=140mmを基準としたときに、X軸方向(車両2の移動方向(レール方向))にLX/W=0.0714(実物換算200mm)以上、かつ、Y軸方向(車両2の移動方向と直交する方向(まくらぎ方向))にLY/W=0.0357(実物換算100mm)以上にすれば、はく離が抑えられることが確認された。
【0090】
次に、試番9,10,11を比較すると、フィンの円弧半径r=23.1mmが全て同じ大きさであるが、試番9は隙間なしであり、試番10はX軸方向にt=5.0mmの隙間があり、試番11はY軸方向にs=2.5mm、かつ、X軸方向にt=-2.5mmの隙間がある。試番9,10,11は、タフト42の可視化の結果より、再付着を示すタフト番号がそれぞれ1,5,0であり、試番11ははく離領域が無い。その結果、先頭部端部が角の場合には、フィンを「Y軸方向に変位」させフィンと車両側面との間に隙間を設けて、車両前面にぶつかる流れをフィンにより車両側面にスムーズに流すことがはく離抑制に有効であることが確認された。
【0091】
次に、試番12,13を比較すると、試番12はフィンと車両側面との隙間の広さがs=2.5mmであり、試番13はフィンと車両側面との隙間の広さが5.0mmであり、試番13は試番12よりも隙間が広くはく離領域が無い。その結果、はく離を抑制するためには隙間の広さを所定長さ以上形成して、フィンの内側から車両側面及び車両上面への流れを確保し、フィンの外側の流れを引き込むことによって大きなはく離を防ぐことができることが確認された。
【0092】
次に、試番13と試番14とを比較すると、試番13はX軸方向のフィンの変位量t=-2.5mmであり、試番14はX軸方向のフィンの変位量t=-5.0mmである。試番13,14は、いずれもはく離領域が無いことから、フィンの内側から車両側面及び車両上面への流れをある程度確保していれば、X軸方向のフィンの変位量sにはある程度の許容範囲があることが確認された。
【0093】
次に、試番15,16,17と試番13,14とを比較すると、これらの試番13〜17はいずれも車両前面にぶつかる流れをフィンにより車両側面及び車両上面にスムーズに流すことを目的として、Y軸方向に隙間を設けていることである。一方、試番15,16,17と試番13,14とは、フィンの大きさが相違し、試番15,16,17ははく離有りであり、試番13,14ははく離無しである。その結果、Y軸方向に隙間を設けた場合であっても、フィンの大きさがある程度(この実験条件ではr=17.3mm)以上必要であることが確認された。
【0094】
次に、試番9,10,21を比較すると、これらの試番9,10,21はいずれもY軸方向のフィンの変位量s=0であるが、試番9,10はフィン形状であり、試番21はルーバー形状である。表2に示すように、試番21は、X軸方向の突出長さLX=20mmであり、試番9,10のX軸方向の突出長さLX=20mm,25mmと同じ又は短いにもかかわらず、表1及び図29に示すタフト法の可視化の結果より、試番9,10ははく離有りであり、試番21ははく離無しである。その結果、同程度の突出長さの場合には、フィン形状よりもルーバー形状の方が、はく離抑制効果が高いと推測された。
【0095】
次に、試番20,22を比較すると、試番20,22は内側のフィンの変位量が異なり、試番20は内側フィンと車両側面との隙間が無く、試番22は内側フィンと車両側面との隙間が有る。また、試番20ははく離有りであり、試番22ははく離無しである。その結果、ルーバー形状の場合には、外側フィンの突出長さが一定の条件に制限されて、はく離領域が存在するときであっても、内側のフィンの変位量を調整することによって、はく離抑制が可能な場合もあると推測される。
【0096】
(走行試験)
図30は、走行試験に使用したルーバーの装着状態を概略的に示す外観図であり、図30(A)はルーバーの装着状態を概略的に示す平面図であり、図30(B)はルーバーの装着状態を概略的に示す正面図である。図31は、走行試験に使用したルーバーの装着状態を概略的に示す断面図であり、図31(A)は図30のXXX-XXXA線で切断した状態を示す断面図であり、図31(B)は図30のXXX-XXXB線で切断した状態を示す断面図であり、図31(C)は図30のXXX-XXXC線で切断した状態を示す断面図である。
【0097】
この発明の実施例の効果を確認するために、試験に供した車両の前面に、図30及び図31に示すルーバー43A,43Bを装着して営業線上を走行した。図30及び図31に示すルーバー43A,43Bは、図18〜図22に示すルーバー部7A,7Bと同一構造であり、図31に示すように内側フィン部43aと、外側フィン部43bと、支持部43kなどを備えている。以下では、ルーバー部7A,7Bと対応する部分については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0098】
(走行試験結果)
図32は、ルーバを装着した場合と装着しなかった場合の列車突入時に形成されるトンネル内の圧力の時間変化を一例として示すグラフである。
図32に示す縦軸は、トンネル内の圧力であり、横軸は時間である。図30及び図31に示すルーバー43A,43Bを先頭車両の前面に装着しないでトンネル内を走行した場合には、図32に示すように圧力勾配が徐々に増大して波形にピークが存在しており、先頭部からの流れのはく離が大きくなっている。一方、図30及び図31に示すルーバー43A,43Bを先頭車両の前面に装着してトンネル内を走行した場合には、図32に示すように圧力勾配が徐々に増大しているが波形にピークが存在せずなだらかになり、ルーバー43A,43Bを装着しない場合に比べて先頭部からの流れのはく離を抑制できることが確認された。
【0099】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、移動体が鉄道車両である場合を例に挙げて説明したが、自動車などの他の移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、はく離抑制部6を車体端面3aの両側及び上側に配置した場合を例に挙げて説明したが、これらのいずれか一方を省略したり、はく離抑制部6を車体端面3aの下側に配置したりすることもできる。さらに、この実施形態では、ルーバー部7,7A,7B及びフィン部19をはく離抑制部6が備える場合を例に挙げて説明したが、これらを任意に組み合わせることもできる。例えば、車体端面3aの両側にフィン部19を備えるはく離抑制部6を配置し、車体端面3aの上側にルーバー部7,7A,7Bを備えるはく離抑制部6を配置することもできる。この場合には、車両限界が車体側面3b,3c側よりも車体上面3d側のほうが広いため、車体上面3d側のはく離抑制部6の変位量や形状を大きくすることができる。同様に、車体端面3aの両側及び上側のはく離抑制部6の一部がルーバー部7,7A,7Bを備え、残部がフィン部19を備えるような構造にすることもできる。
【0100】
(2) この実施形態では、車体3の先頭部の形状が切妻形状である場合を例に挙げて説明したが、先頭部の形状が流線型の場合や車体端面の縁部に丸みを形成した場合などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、ルーバー部7,7A,7B及びフィン部19の表面形状が円弧状の板状部材である場合を例に挙げて説明したが、これらの表面形状が楕円形状、楕円形の一部、又は曲率を有する湾曲面状などの丸みを有する板状部材である場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この第1実施形態及び第2実施形態では、ルーバー部7の内側フィン部7aと外側フィン部7bとが同一形状である場合を例に挙げて説明したが、両者を異なる形状に形成することもできる。
【0101】
(3) この第1実施形態〜第3実施形態では、車両2の前側に他の車両2が連結されたときには、はく離抑制部6を車両2側に折り畳む場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部6を柔軟な可撓性部材によって形成し、前側の車両2のはく離抑制部6の先端部と後側の車両2のはく離抑制部6の先端部とを突き合せて密着させることもできる。また、この第1実施形態〜第3実施形態では、駆動部12が油圧シリンダ又は空気圧シリンダである場合を例に挙げて説明したが、駆動部12として電動モータなどを使用することもできる。さらに、この第1実施形態〜第3実施形態では、はく離抑制部6がX軸方向及びY軸方向に移動可能である場合を例に挙げて説明したが、いずれか一方のみ移動可能にすることもできる。
【0102】
(4) この第1実施形態〜第3実施形態では、はく離抑制部6を駆動部12が駆動する場合を例に挙げて説明したが、第4実施形態のようにはく離抑制部6を最適な位置に予め固定することもできる。また、この第1実施形態〜第3実施形態では、駆動部12を自動的に動作させてはく離抑制部6を駆動する場合を例に挙げて説明したが、駆動部12を手動操作してはく離抑制部6を駆動させることもできる。また、この第1実施形態〜第3実施形態では、はく離抑制部6の一部が透過部7c,7dを備える場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部6の全部を透明又は半透明にすることもできる。さらに、この第1実施形態〜第3実施形態では、ルーバー部7及びフィン部19の全部が湾曲面を備える場合を例に挙げて説明したが、ルーバー部7及びフィン部19の一部が湾曲面を備え、残部が平面を備える場合、ルーバー部7及びフィン部19が平板を複数箇所で折り曲げて形成した多角形である場合などについてもこの発明を適用することができる。
【0103】
(5) この第4実施形態では、ルーバー部7Aの内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長した場合を例に挙げて説明したが、ルーバー部7A,7Bの双方の内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長したり、ルーバー部7Bのみの内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長したりすることもできる。例えば、車体上面3d側の車両限界が狭いときには、ルーバー部7Bの内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長することもできる。また、この第4実施形態では、内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長する場合を例に挙げて説明したが、内側フィン部7a及び外側フィン部7bの先端部を平面板によって延長したり、外側フィン部7bのみの先端部を平面板によって延長したり、平面板に代えて湾曲板によって連続して同じ曲線半径で延長したりすることもできる。さらに、この第4実施形態では、ルーバー部7A,7Bが車体3に一定の姿勢で固定されている場合を例に挙げて説明したが、第1実施形態〜第3実施形態のような駆動部12によってルーバー部7A,7Bを任意の姿勢に変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の使用状態を概略的に示す横断面図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の折畳状態を概略的に示す横断面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造における駆動部の流体圧回路の回路図である。
【図7】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造における密封部の正面図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。
【図10】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。
【図11】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の使用状態を概略的に示す横断面図である。
【図12】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の折畳状態を概略的に示す横断面図である。
【図13】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。
【図14】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。
【図15】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。
【図16】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の使用状態を概略的に示す横断面図である。
【図17】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の折畳状態を概略的に示す横断面図である。
【図18】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図である。
【図19】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す平面図である。
【図20】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図である。
【図21】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図である。
【図22】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の一部を拡大して示す断面図であり、(A)は図20のXXIIA部分の断面図であり、(B)は図21のXXIIB部分の断面図である。
【図23】空気抵抗測定試験に使用した風洞試験装置の構成図であり、(A)は側面図であり、(B)は平面図であり、(C)は(B)のXVIII-XVIIIC線で切断した状態を示す断面図である。
【図24】空気抵抗の測定に使用した模型車両の外観図であり、(A)正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は側面図である。
【図25】空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状がつい立形である場合の外観図であり、(A)正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は側面図である。
【図26】空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状が1/2円又は1/4円である場合の外観図であり、(A)正面図であり、(B)は1/2円の場合の平面図であり、(C)は1/4円の場合の平面図であり、(D)は側面図である。
【図27】空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状がフィンである場合の外観図であり、(A)はフィンの形状及び変位量を示す平面図であり、(B)はフィンの固定状態を概略的に示す斜視図である。
【図28】空気抵抗測定試験に使用した模型車両の車両先頭部の形状がフィン又は2枚のフィンを組み合わせたルーバーである場合の平面図である。
【図29】模型車両の車両先頭部の形状毎の空気抵抗係数CD及び再付着を示すタフト番号を示すグラフである。
【図30】走行試験に使用したルーバーの装着状態を概略的に示す外観図であり、(A)はルーバーの装着状態を概略的に示す平面図であり、(B)はルーバーの装着状態を概略的に示す正面図である。
【図31】走行試験に使用したルーバーの装着状態を概略的に示す断面図であり、(A)は図30のXXX-XXXA線で切断した状態を示す断面図であり、(B)は図30のXXX-XXXB線で切断した状態を示す断面図であり、(C)は図30のXXX-XXXC線で切断した状態を示す断面図である。
【図32】ルーバを装着した場合と装着しなかった場合の列車突入時に形成されるトンネル内の圧力の時間変化を一例として示すグラフである。
【符号の説明】
【0105】
1 軌道
2 車両(移動体)
3 車体
3a 車体端面(前面)
3b,3c 車体側面(側面)
3d 車体上面(上面)
4 台車
5 気流はく離抑制構造
6 はく離抑制部
7,7A,7B ルーバー部
7a 内側フィン部
7b 外側フィン部
7c,7d 透過部
7g,7i 凹状湾曲面(湾曲面)
7h,7j 凸状湾曲面(湾曲面)
7m,7n 平面
8〜11,18 連結部
12 駆動部
12a〜12c,12n シリンダ部
12d〜12f,12p ピストンロッド
12g〜12i,12q 流体圧回路
13 密封部
14 操作部
15 設定部
16 記憶部
17 制御部
19 フィン部
19g 凹状湾曲面(湾曲面)
19h 凸状湾曲面(湾曲面)
19c 透過部
20 風洞試験装置
30 模型車両
30a 車両本体部
30b 車両先頭部
40 空気抵抗測定装置
41 突起物
43A,43B ルーバー
F 気流
Δ1,Δ21,Δ22,Δ3 間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造であって、
前記移動体の前面に衝突した気流をこの移動体の側面に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制するはく離抑制部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の側面と内側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の側面との間の間隙部に前記気流を通過させるフィン部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記内側フィン部及び前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項6】
請求項3に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面を備え、
前記内側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面と、この湾曲面の先端部から伸びる平面とを備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項7】
請求項4に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項8】
移動体が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造であって、
前記移動体の前面に衝突した気流をこの移動体の上面に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制するはく離抑制部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項9】
請求項8に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の上面と内側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項11】
請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の上面との間の間隙部に前記気流を通過させるフィン部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項12】
請求項9又は請求項10に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記内側フィン部及び前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項13】
請求項10に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記外側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面を備え、
前記内側フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面と、この湾曲面の先端部から伸びる平面とを備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項14】
請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記フィン部は、前記移動体の前面側に湾曲する湾曲面を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項15】
請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の上面の中心部に前記気流を導く部分がこの移動体の上面の両縁部に前記気流を導く部分よりも、この移動体の進行方向前側に突出していること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項16】
請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向の突出長さLxであり、前記移動体の移動方向と直交する方向の突出長さLYであり、前記移動体の幅Wであるときに、LX/W=0.0714以上であり、かつ、LY/W=0.0358以上であること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体側に着脱自在に装着可能であること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体側に折畳可能であること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項19】
請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向及び/又はこの移動方向と直交する方向に移動可能であること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項20】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の運転者が外部を看視するための透過部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−132361(P2009−132361A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85434(P2008−85434)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年12月4日〜7日 境線 後藤総合車両所内、山陰本線 米子〜鳥取、智頭急行線 智頭〜大原において試験
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)