説明

移動体の気流はく離抑制構造

【課題】簡単な構造によって移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することができる移動体の気流はく離抑制構造を提供する。
【解決手段】(B)に示すように、車両2の低速走行時には、復元力作用部10A,10Bの復元力に比べてはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力のほうが小さいため、はく離抑制部6が車体端面3a側に閉じている。一方、(A)に示すように、車両2の高速走行時には、復元力作用部10A,10Bの復元力に比べてはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力のほうが大きいため、はく離抑制部6が車体端面3a側から開く。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離抑制部6によって車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って流れるため、車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両は、車両走行時に車体側方における空気流の発生を抑制するために、先頭車両の妻面の両側部に車体中心側に向かって湾曲する板状部材を備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の鉄道車両では、先頭車両の妻面に衝突した気流を板状部材によって車体の上方及び下方に分離して導くことによって、車両走行時に車体側方に発生する気流を抑制し、プラットホーム上に発生する列車風を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-246265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速列車がトンネル入口側坑口に突入するとトンネル内に圧縮波が発生する。この圧縮波はトンネル内を伝播する。そして、圧縮波が出口側坑口に到達した時、パルス状の圧力波であるトンネル微気圧が外部へ放出される。一方、圧縮波は坑口や列車端で反射しトンネル内を往復し、列車に圧力変動を及ぼす。圧力変動は、車内におけるいわゆる「耳つん」現象などの原因となる。これらの現象には、列車突入時に形成される圧縮波の圧力の大きさ、および、圧力勾配(圧力の変化時間)が主に関係すると考えられる。
【0005】
近年、車両性能の向上や線形改良により在来線でも高速化が進み、特に先頭部端部に丸みのほとんど無い切妻型列車のトンネル突入時に形成される圧縮波について、その圧力の大きさおよび圧力勾配が増大する傾向にある。これらの増大の主原因は、列車の切妻型先頭部からの流れのはく離による見かけの車両断面積増大が考えられている。この圧縮波の圧力の大きさおよび圧力勾配が増大するのに伴い、耳つん、トンネル微気圧波などが増大する傾向にある。一方、先頭部からの流れのはく離が大きくなると、列車の空気抵抗も増大するという問題もあることが分かっている。
【0006】
しかし、従来の鉄道車両では、プラットホーム上に発生する列車風の低減を目的としており、先頭車両の妻面に衝突した気流を板状部材によって車体の上方及び下方に導くと、車体の上面及び下面で気流がはく離するおそれがある。その結果、従来の鉄道車両では、列車風を低減することは可能であっても、トンネル微気圧波が発生してしまう問題点がある。
【0007】
また、例えば、鉄道車両では、始発駅は同じであるが終着駅が異なる複数の列車を一つの列車として併合し、終着駅が異なるそれぞれの列車を途中駅で分割して終着駅まで運転することがあり、このような多層建て列車では先頭車両が中間車両になり先頭車両同士を互いに連結する必要がある。しかし、従来の鉄道車両では、板状部材を取り付けた先頭車両同士を連結して中間車両として編成中に組み込まれると、一方の車両の板状部材と他方の車両の板状部材とが干渉してしまうおそれがある、このため、従来の鉄道車両では、板状部材を取り付けた先頭車両同士を連結して編成中に組み込み、途中駅で列車を切り離して運用することができない問題点がある。
【0008】
この発明の課題は、簡単な構造によって移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することができる移動体の気流はく離抑制構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1〜図30に示すように、移動体(2)が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流(F)のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造であって、前記移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制するはく離抑制部(6)を備え、前記はく離抑制部は、前記移動体の速度に応じてこの移動体の前面(3a)から開閉することを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造(6)である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、前記はく離抑制部は、前記移動体の速度が所定値を越えるときにはこの移動体の前面から開き、前記移動体の速度が所定値以下であるときにはこの移動体の前面に閉じることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図3、図5、図9、図11、図15、図17、図21、図23、図27及び図29に示すように、前記はく離抑制部に復元力を作用させる復元力作用部(10A,10B)を備え、前記はく離抑制部は、このはく離抑制部が開く方向に作用する空気力が前記復元力よりも大きいときにはこの移動体の前面から開き、このはく離抑制部が開く方向に作用する空気力が前記復元力よりも小さいときにはこの移動体の前面に閉じることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図5、図11、図17、図23、図27及び図29に示すように、前記復元力作用部は、前記はく離抑制部に復元力を付与するばね部(10a,10d)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図3、図6、図9、図12、図15、図18、図21、図24、図28及び図30に示すように、前記はく離抑制部が開閉するときに発生する衝撃を緩和する衝撃緩和部(11A,11B)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図6、図12、図18、図24、図28及び図30に示すように、前記衝撃緩和部は、前記はく離抑制部に減衰力を付与するダンパ部(11a,11d)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図1(A)、図2(A)、図4(A)〜図8(A)、図10(A)〜図14(A)、図16(A)〜図18(A)、図26(A)、図29(A)及び図30(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の前面から開いたときには、この移動体の前面に衝突した気流をこの移動体の側面(3b,3c)に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図1(A)、図2(A)及び図4(A)〜図6(A)に示すように、前記はく離抑制部は、内側フィン部(7a)と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ1)に前記気流を通過させるルーバー部(7)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0017】
請求項9の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図7(A)、図8(A)、図10(A)〜図12(A)、図26(A)、図29(A)及び図30(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の側面と内側フィン部(7a)との間の間隙部(Δ21)に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ22)に前記気流を通過させるルーバー部(7;7A)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0018】
請求項10の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図13(A)、図14(A)、図16(A)〜図18(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の側面(3b,3c)との間の間隙部(Δ3)に前記気流を通過させるフィン部(13)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0019】
請求項11の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図1(A)〜図3(A)、図7(A)〜図9(A)、図13(A)〜図15(A)、図25(A)、図27(A)及び図28(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の前面から開いたときには、この移動体の前面に衝突した気流をこの移動体の上面(3d)に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0020】
請求項12の発明は、請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図1(A)〜図3(A)に示すように、前記はく離抑制部は、内側フィン部(7a)と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ1)に前記気流を通過させるルーバー部(7)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0021】
請求項13の発明は、請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図7(A)〜図9(A)、図25(A)、図27(A)及び図28(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の上面(3d)と内側フィン部(7a)との間の間隙部(Δ21)に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部(7a)と外側フィン部(7b)との間の間隙部(Δ22)に前記気流を通過させるルーバー部(7;7A)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0022】
請求項14の発明は、請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図13(A)〜図15(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の上面との間の間隙部(Δ3)に前記気流を通過させるフィン部(13)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0023】
請求項15の発明は、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図19(A)、図20(A)及び図22(A)〜図24(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の前面よりも前側で気流を衝突させこの衝突した気流をこの移動体の側面前端部に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0024】
請求項16の発明は、請求項15に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向に幅方向が一致し、前記移動体の左右方向に厚さ方向が一致する板状部(14a)を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0025】
請求項17の発明は、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、図19(A)〜図21(A)に示すように、前記はく離抑制部は、前記移動体の前面よりも前側で気流を衝突させこの衝突した気流をこの移動体の上面前端部に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【0026】
請求項18の発明は、請求項17に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向に幅方向が一致し、前記移動体の上下方向に厚さ方向が一致する板状部を備えることを特徴とする移動体の気流はく離抑制構造である。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、簡単な構造によって移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの斜視図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの正面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの正面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの縦断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの縦断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの横断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの横断面図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の復元力作用部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の減衰力発生部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの斜視図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの斜視図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの正面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの正面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの縦断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの縦断面図である。
【図10】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの横断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの横断面図である。
【図11】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の復元力作用部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図12】この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の減衰力発生部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図13】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの斜視図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの斜視図である。
【図14】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの正面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの正面図である。
【図15】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの縦断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの縦断面図である。
【図16】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの横断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの横断面図である。
【図17】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の復元力作用部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図18】この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の減衰力発生部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図19】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの斜視図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの斜視図である。
【図20】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す正面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの正面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの正面図である。
【図21】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの縦断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの縦断面図である。
【図22】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの横断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの横断面図である。
【図23】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の復元力作用部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図24】この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の減衰力発生部を概略的に示す平面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの平面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの平面図である。
【図25】この発明の第5実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す縦断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの縦断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの縦断面図である。
【図26】この発明の第5実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造を概略的に示す横断面図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの横断面図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの横断面図である。
【図27】図25に示すXXVII部分の復元力作用部の拡大図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの拡大図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの拡大図である。
【図28】図25に示すXXVII部分の減衰力発生部の拡大図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの拡大図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの拡大図である。
【図29】図26に示すXXIX部分の復元力作用部の拡大図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの拡大図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの拡大図である。
【図30】図26に示すXXIX部分の減衰力発生部の拡大図であり、(A)ははく離抑制部が開いたときの拡大図であり、(B)ははく離抑制部が閉じたときの拡大図である。
【図31】風洞試験に使用した風洞試験装置の構成図であり、(A)は側面図であり、(B)は平面図である。
【図32】風洞試験に使用した模型車両の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面図である。
【図33】風洞試験の結果を示す斜視図であり、(A)ははく離抑制部を開いた場合の試験結果を示す斜視図であり、(B)ははく離抑制部を閉じた場合の試験結果を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1〜図4に示す軌道1は、車両2が走行する通路(線路)であり、図3に示す車両2の車輪4aを案内する一対のレール1aなどを備えている。図1〜図4に示す車両2は、軌道1に沿って走行する移動体であり、電車、気動車又は機関車などの鉄道車両である。車両2は、図1〜図6に示す車体3と、図3に示す台車4と、図1〜図6に示す気流はく離抑制構造5などを備えている。図1〜図6に示す車両2は、列車の運転制御をするための運転室を備える先頭車両である。
【0030】
車体3は、乗客を積載し輸送するための構造物である。車体3は、図1〜図6に示す車体端面(車体前面)3aと、図2及び図4に示す車体側面3b,3cと、図1〜図3に示す車体上面3dと、図3に示す車体底面3eなどを備えている。車体端面3aは、車両2の妻構え(前構体)を構成する外板(妻板)であり先頭車両の先頭部である。車体端面3aは、量産が容易で低コストの切妻形状であり、妻板が平面であり側板と直角に形成されている。図1及び図2に示す車体端面3aは、車両2が中間車両として連結されたときに、前後の車両間を乗客及び乗務員が移動するときに使用する妻入口3fと、乗務員が前方を看視するために運転室前面に形成された前面窓(前面ガラス)3gなどを備えている。図2及び図4に示す車体側面3b,3cは、車両2の側構え(側構体)を構成する外板(側板)であり、図1及び図3に示すように乗務員が車外を看視するための側窓3hと、乗務員が乗降するときに使用する側出入口3iと、図3に示す乗客が乗降するときに使用する側出入口3jなどを備えている。図1〜図3に示す車体上面3dは、車両2の屋根構え(屋根構体)を構成する外板(屋根板)であり、車室内を空気調和するための空気調和装置などの屋根上機器が設置される。図3に示す車体底面3eは、車両2の床構造を構成する外板であり、台車4などの走行装置が設置されている。図3に示す台車4は、車体3を支持して軌道1上を走行する走行装置(走り装置)であり、レール1aと転がり接触する車輪4aなどを備えている。
【0031】
図1〜図6に示す気流はく離抑制構造5は、車両2が走行するときにこの車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する構造である。気流はく離抑制構造5は、車体端面3aに衝突した気流Fを車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、気流Fのはく離を抑制して車両2の空気抵抗を低減するとともに、車両2の先頭部の見かけの車両断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減する。また、気流はく離抑制構造5は、車両2のトンネル突入時に発生するトンネル内の圧力変動を抑制し、その結果、車体3が気密構造である場合に車体3に作用する繰り返し荷重によって発生する車体構造疲労を低減するとともに、この圧力変動に起因して車体3内の乗客に発生する耳の不快感や違和感である耳つん現象を低減する。気流はく離抑制構造5は、図1〜図6に示すはく離抑制部6と、図5に示す連結部8と、図6に示す連結部9と、図1及び図5に示す復元力作用部10A,10Bと、図1及び図6に示す衝撃緩和部11A,11Bなどを備えている。
【0032】
図1〜図6に示すはく離抑制部6は、車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する部分である。はく離抑制部6は、車両2の速度に応じてこの車両2の車体端面3aから開閉する。はく離抑制部6は、図1(A)〜図6(A)に示すように、車両2の速度が所定値を越えるときにはこの車両2の車体端面3aから開き、図1(B)〜図6(B)に示すように車両2の速度が所定値以下であるときにはこの車両2の車体端面3aに閉じる。また、はく離抑制部6は、車両2の車体端面3aが受ける風圧に応じてこの車体端面3aから開閉する。はく離抑制部6は、風圧増加時には車両2の車体端面3aから開き、風圧低下時にはこの車体端面3aに閉じる。はく離抑制部6は、例えば、トンネル区間の少ない線区を車両2が走行する場合や、車両2が中間車両として編成中に組み込まれる場合などには、車体端面3aに折り畳まれる。一方、はく離抑制部6は、例えば、トンネル区間の多い線区を車両2が走行する場合や、中間車両として編成中に組み込まれていた車両2が列車の切り離しによって先頭車両となる場合などには、車体端面3aから展開する。はく離抑制部6は、復元力作用部10A,10Bが発生する復元力によって車体端面3a側に常時付勢されている。はく離抑制部6は、図1(A)〜図6(A)に示すように、このはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力がこのはく離抑制部6に作用する復元力よりも大きいときには、この復元力に抗してこの空気力によって車体端面3aから開く。一方、はく離抑制部6は、図1(B)〜図6(B)に示すように、このはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力がこのはく離抑制部6に作用する復元力よりも小さいときには、この空気力に抗してこの復元力によって車体端面3aに閉じる。
【0033】
はく離抑制部6は、図1(A)〜図6(A)に示すように、車両2の車体端面3aから開いたときには、この車体端面3aに衝突した気流Fをこの車両2の車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する。はく離抑制部6は、図1及び図2に示すように、車体端面3aの側縁部及び上縁部に沿って、この車体端面3aを囲むように配置されており、車体端面3aの両側と車体端面3aの上側とに配置されている。はく離抑制部6は、いずれも同一構造であり、以下では進行方向前側から見て車体端面3aの右側縁部に配置されたはく離抑制部6を中心に説明し、車体端面3aの左側縁部及び上縁部に配置されたはく離抑制部6については詳細な説明を省略する。はく離抑制部6は、車両2側に着脱自在に装着可能であるとともに、図1(B)〜図6(B)に示すように車両2側に折畳可能であり、図4に示すように車両2の移動方向(X軸方向)及びこの車両2の移動方向と直交する方向(Y軸方向)に開閉可能である。はく離抑制部6は、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属、アクリル樹脂などの合成樹脂、繊維強化プラスチック(FRP) 又はゴムなどによって形成されている。はく離抑制部6は、図1〜図6に示すように、ルーバー部7などを備えている。
【0034】
図1〜図6に示すルーバー部7は、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1に気流Fを通過させる部分である。ルーバー部7は、図1及び図3〜図6に示す内側フィン部7aと、図1〜図6に示す外側フィン部7bと、図3に示す透過部7c,7dなどを備えている。
【0035】
図1及び図3〜図6に示す内側フィン部7aは、気流Fの向きを変える部分であり、図4〜図6に示すように車体3と外側フィン部7bとの間に配置されている。内側フィン部7aは、図5及び図6に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7e及び凸状湾曲面7fを備える羽根板状の部材であり、車両2と対向する側の表面に凹状湾曲面7eを備え、車両2と対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面7fを備えている。内側フィン部7aの先端部は、図4〜図6に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。内側フィン部7aの後端部は、車体端面3aと車体側面3b,3cとが交差する角部に回転自在に連結されており、車体側面3b,3cとの間に段差部が形成されないように、凸状湾曲面7fが車体側面3b,3c及び車体上面3dと同一高さ(同一面)で連続している。
【0036】
図1〜図6に示す外側フィン部7bは、内側フィン部7aとの間で気流Fの向きを変える部分であり、図1及び図3〜図6に示すように内側フィン部7aの外側に所定の間隔をあけて配置されている。外側フィン部7bは、図6に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hを備えており、内側フィン部7aと同様の羽根板状の部材である。外側フィン部7bは、内側フィン部7aと対向する側の表面に凹状湾曲面7gを備え、内側フィン部7aと対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面7hを備えている。外側フィン部7bの先端部は、車体端面3a側に湾曲しており、内側フィン部7aの先端部よりも僅かに前方に突出している。外側フィン部7bの後端部は、内側フィン部7aの後端部よりも僅かに前方に突出しており車体側面3b,3cよりも外側又は内側に変位可能である。
【0037】
図1及び図3に示す透過部7c,7dは、車両2の運転者が外部を看視するための部分である。透過部7c,7dは、車両2の運転室内の乗務員が外部を看視可能なように、図1及び図2に示す前面窓3g及び側窓3hと対向する部分に形成されている。透過部7c,7dは、図1に示すように、ルーバー部7が運転者の視界を遮らないように、運転者の視界領域内に形成された透明又は半透明な部分であり、図3に示すように透過部7cは内側フィン部7aの一部に形成されており、透過部7dは外側フィン部7bの一部に形成されている。透過部7cは、例えば、ポリカーボネートなどの合成樹脂又は強化ガラスなどによって形成されている。
【0038】
図6に示す連結部8は、はく離抑制部6を車両2に着脱自在に装着する部分である。連結部8は、トンネル区間の少ない線区の走行時にははく離抑制部6を取り外し、既存の車両2にはく離抑制部6を追加設置可能なように、内側フィン部7aと車体3とを回転自在に連結する。連結部8は、この連結部8を回転中心として内側フィン部7aが回転可能なように、内側フィン部7aの後端部と車体3とを回転自在にピン結合(ヒンジ結合)している。連結部8は、車両2側に取り付けられた車両側軸受部と、内側フィン部7a側に取り付けられたフィン側軸受部と、車両側軸受部とフィン側軸受部とに着脱自在に挿入されるピン部とを備えている。連結部8は、内側フィン部7aを車両2から取り外すときには、車両側軸受部とフィン側軸受部とからピン部を抜き取り、内側フィン部7aを車両2に取り付けるときには、車両側軸受部とフィン側軸受部とにピン部を挿入する。連結部8は、はく離抑制部6の回転角度を一定の範囲内に制限するストッパ機能を備えており、図1(B)〜図6(B)に示す折畳状態と、図1(A)〜図6(A)に示す展開状態とにはく離抑制部6が切り替わったときに、このはく離抑制部6の回転位置を所定の位置に規制する。連結部8は、図1(A)〜図6(A)に示すように、車体端面3aに衝突した気流Fのはく離を効果的に抑制可能なように、はく離抑制部6をこの連結部8を中心として車体端面3aから角度(開放角度)θ1まで開く。一方、連結部8は、図1(B)〜図6(B)に示すように、内側フィン部7aと車体端面3aとの間に隙間を形成しこの隙間に気流Fが流入してこの内側フィン部7aに空気力が作用するとともに、車体端面3aに衝突した気流Fのはく離を効果的に抑制可能なように、はく離抑制部6をこの連結部8を中心として車体端面3aから角度(閉鎖角度)θ2まで閉じる。
【0039】
図6に示す連結部9は、はく離抑制部6を車両2に着脱自在に装着する部分であり、内側フィン部7aの開閉動作に連動して外側フィン部7bも開閉動作するように、外側フィン部7bと内側フィン部7aとを回転自在に連結する。連結部9は、内側フィン部7aが連結部8を回転中心として車両2の車体端面3aから開くときに、外側フィン部7bもこの車両2の車体端面3aから開くように、この内側フィン部7aの開放動作に連動してこの外側フィン部7bも開放動作させる。一方、連結部9は、内側フィン部7aが連結部8を回転中心として車両2の車体端面3aに閉じるときに、外側フィン部7bもこの車両2の車体端面3aに閉じるように、この内側フィン部7aの閉鎖動作に連動してこの外側フィン部7bも閉鎖動作させる。連結部9は、リンク部材9a,9bとピン部材9c〜9fなどを備えている。連結部9は、内側フィン部7a及び外側フィン部7bをリンク部材9a,9b及びピン部材9c〜9fによって回転自在に連結したリンク機構を構成しており、図5に示すように内側フィン部7aに対して外側フィン部7bが略平行な直線を描く平行クランク機構(平行運動機構)である。連結部9は、内側フィン部7a及び外側フィン部7bの長さ方向の両端部にそれぞれ配置されている。
【0040】
リンク部材9a,9bは、内側フィン部7aと外側フィン部7bとを回転自在に連結する部材である。リンク部材9a,9bは、いずれも略同一長さであって平行運動及び回転運動が可能な板状又は棒状の部材であり、図5に示すように互に平行に配置された状態で内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間に回転自在に挟み込まれている。リンク部材9aは、図5に示すように、一方の端部が内側フィン部7aの後端部側と回転自在に連結されており、他方の端部が外側フィン部7bの後端部側と回転自在に連結されている。リンク部材9bは、一方の端部が内側フィン部7aの後端部よりも前側に回転自在に連結されており、他方の端部が外側フィン部7bの後端部よりも前側に回転自在に連結されている。
【0041】
ピン部材9c〜9fは、リンク部材9a,9bを回転自在に連結する部材である。ピン部材9cは、内側フィン部7aとリンク部材9aとを回転自在に連結し、ピン部材9dは外側フィン部7bとリンク部材9aとを回転自在に連結する。ピン部材9eは、内側フィン部7aとリンク部材9bとを回転自在に連結し、ピン部材9fは外側フィン部7bとリンク部材9bとを回転自在に連結する。ピン部材9c〜9fは、内側フィン部7a、外側フィン部7b及びリンク部材9a,9bを回転自在にピン結合(ヒンジ結合)する軸状の部材である。ピン部材9c〜9fは、リンク部材9a,9bを内側フィン部7a及び外側フィン部7bから取り外すときには、フィン側軸受部とリンク部材側軸受部とから抜き取られ、リンク部材9a,9bを内側フィン部7a及び外側フィン部7bに取り付けるときには、フィン側軸受部とリンク部材側軸受部とに挿入される。
【0042】
図3及び図5に示す復元力作用部10A,10Bは、はく離抑制部6に復元力を作用させる部分である。復元力作用部10A,10Bは、はく離抑制部6を車体端面3a側に付勢する付勢力(弾性力)を復元力としてこのはく離抑制部6に常時作用させる。復元力作用部10A,10Bは、図3(B)及び図5(B)に示すように、車両2の低速走行時にははく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が復元力よりも小さいため、この復元力によってはく離抑制部6が車体端面3aから開くのを禁止しこのはく離抑制部6をこの車体端面3aに閉じている。一方、復元力作用部10A,10Bは、図3(A)及び図5(A)に示すように、車両2の高速走行時にははく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が復元力よりも大きくなるため、この空気力によってはく離抑制部6が車体端面3aから開くのを許容している。復元力作用部10A,10Bは、いずれも同一構造であり、図3に示すように復元力作用部10Aは内側フィン部7aの長さ方向の両端部にそれぞれ配置されており、復元力作用部10Bは外側フィン部7bの長さ方向の両端部にそれぞれ配置されている。復元力作用部10Aは、図5に示すように、ばね部10aと連結部10b,10cなどを備えており、復元力作用部10Bは図5に示すようにばね部10dと連結部10e,10fなどを備えている。復元力作用部10A,10Bは、例えば、車両2の速度が60km/hを下回るときにはトンネル微気圧波が小さく、速度が80km/hを超えるとトンネル微気圧波が大きくなるため、車両2の速度が60km/h以上80km/h以下の範囲内であるときに、はく離抑制部6が開くようにばね定数が設定されている。
【0043】
ばね部10a,10dは、はく離抑制部6に復元力を付与する部分である。ばね部10a,10dは、はく離抑制部6を車体端面3aに向かって付勢する引張力を発生する引張コイルばねなどの弾性体である。ばね部10aは、図5(B)に示すように、圧縮状態では内側フィン部7aの凹状湾曲面7eと車体端面3aとの間の間隙部に収容されており、ばね部10dは図6(B)に示すように圧縮状態では外側フィン部7bの凹状湾曲面7gと内側フィン部7aの凸状湾曲面7fとの間の間隙部に収容される。連結部10bは、ばね部10aの一方の端部と車体端面3aとを連結する部分であり、連結部10cはばね部10aの他方の端部と内側フィン部7aとを連結する部分である。連結部10bは、ばね部10aの端部と車体端面3aとを着脱自在に固定し、連結部10cはばね部10aの端部と内側フィン部7aの凹状湾曲面7eとを着脱自在に固定する。連結部10eは、ばね部10dの一方の端部と内側フィン部7aとを連結する部分であり、連結部10fは、ばね部10dの他方の端部と外側フィン部7bとを連結する部分である。連結部10eは、ばね部10dと内側フィン部7aの凹状湾曲面7eとを着脱自在に固定し、連結部10fはばね部10dの端部と外側フィン部7bの凹状湾曲面7gとを着脱自在に固定する。
【0044】
図3及び図6に示す衝撃緩和部11A,11Bは、はく離抑制部6が開閉するときに発生する衝撃を緩和する部分である。衝撃緩和部11A,11Bは、はく離抑制部6が車体端面3aから完全に開いたときに発生する衝撃力と、このはく離抑制部6がこの車体端面3aに完全に閉じたときに発生する衝撃力とを吸収する粘性抵抗を減衰力としてこのはく離抑制部6に常時作用させる。衝撃緩和部11A,11Bは、車両2が低速走行から高速走行になって車体端面3aに作用する空気力が急激に増加したようなときに、この空気力によってはく離抑制部6が車体端面3aから急速に開くのを阻止しこのはく離抑制部6の回転速度を略一定の回転速度に維持する。一方、衝撃緩和部11A,11Bは、車両2が高速走行から低速走行になって車体端面3aに作用する空気力が急激に減少したようなときに、復元力によってはく離抑制部6が車体端面3aに急速に閉じるのを阻止しこのはく離抑制部6の回転速度を略一定の回転速度に維持する。衝撃緩和部11A,11Bは、いずれも同一構造であり、図3及び図4に示すように、衝撃緩和部11Aは内側フィン部7a側の復元力作用部10A間に配置されており、衝撃緩和部11Bは外側フィン部7b側の復元力作用部10B間に配置されている。図6に示すように、衝撃緩和部11Aはダンパ部11aと連結部11b,11cなどを備えており、衝撃緩和部11Bはダンパ部11dと連結部11e,11fなどを備えている。
【0045】
ダンパ部11a,11dは、はく離抑制部6に減衰力を付与する部分である。ダンパ部11a,11dは、シリンダ内に移動自在に収容されるピストンによってこのシリンダ内をヘッド側室とロッド側室とに区画しており、ヘッド側室とロッド側室との間で絞り部を通じてシリンダ内の流体が移動したときに発生する粘性抵抗力によって振動を減衰させる。ダンパ部11a,11dは、例えば、油又は空気などの流体を利用したピストン型のダッシュポット(減衰器)である。連結部11bは、ダンパ部11aのシリンダと車体端面3aとを回転自在に連結する部分であり、連結部11cはダンパ部11aのピストンロッドと内側フィン部7aとを回転自在に連結する部分である。連結部11bは、ダンパ部11aのシリンダと車体端面3aとを着脱自在に連結し、連結部11cはダンパ部11aのピストンロッドの先端部と内側フィン部7aの凹状湾曲面7eとを着脱自在に連結する。連結部11eは、ダンパ部11dのシリンダと内側フィン部7aとを回転自在に連結する部分であり、連結部11fはダンパ部11dのピストンロッドと外側フィン部7bとを回転自在に連結する部分である。連結部11eは、ダンパ部11dのシリンダと内側フィン部7aの凸状湾曲面7fとを着脱自在に連結し、連結部11fはダンパ部11dのピストンロッドの先端部と外側フィン部7bの凹状湾曲面7gとを着脱自在に連結する。
【0046】
次に、この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図1(B)〜図6(B)に示すように、車両2がX軸方向に低速で走行すると、気流Fが車体端面3aに衝突し車体端面3aとはく離抑制部6との間に気流Fが流入する。このため、図6に示す連結部8を回転中心としてはく離抑制部6が車体端面3aから開く方向に空気力が作用するが、車両2の走行速度が低速走行域であるときには、このはく離抑制部6に作用する空気力が比較的小さい。その結果、復元力作用部10A,10Bが発生する復元力に比べてはく離抑制部6に作用する空気力のほうが小さいため、はく離抑制部6が車体端面3a側に閉じており、はく離抑制部6が閉じた状態を維持する。
【0047】
一方、図1(A)〜図6(A)に示すように、車両2がX軸方向に高速で走行すると、車両2がX軸方向に低速で走行するときに比べて、車体端面3aとはく離抑制部6との間への気流Fの流入量が増大し、はく離抑制部6が開く方向に作用する空気力も増大する。このため、図5(A)及び図6(A)に示すように、連結部8を回転中心としてはく離抑制部6が車体端面3aから開く方向に空気力が作用し、車両2の走行速度が高速走行域であるときには、このはく離抑制部6に作用する空気力が比較的大きい。その結果、復元力作用部10A,10Bが発生する復元力に比べてはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力のほうが大きいため、はく離抑制部6が車体端面3a側から開き、はく離抑制部6が開いた状態を維持する。
【0048】
図1(A)〜図6(A)に示す状態で、車両2がX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fが内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増加するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。
【0049】
図1(A)〜図6(A)に示すように、X軸方向に走行する車両2の走行速度が低速走行域から高速走行域に変化すると車体端面3aとはく離抑制部6との間への気流Fの流入量が増大し、はく離抑制部6が開く方向に作用する空気力によってはく離抑制部6が折畳状態から展開状態に切り替わる。このとき、図6(A)に示すように、連結部8を回転中心としてはく離抑制部6が急激に開き、このはく離抑制部6が角度θ1まで回転して急停止したときにこのはく離抑制部6に衝撃力が作用する。同様に、図1(B)〜図6(B)に示すように、X軸方向に走行する車両2の走行速度が高速走行域から低速走行域に変化すると車体端面3aとはく離抑制部6との間への気流Fの流入量が減少し、はく離抑制部6が閉じる方向に作用する復元力によってこのはく離抑制部6が展開状態から折畳状態に切り替わる。このとき、図6(B)に示すように、連結部8を回転中心としてはく離抑制部6が急激に閉じ、このはく離抑制部6が角度θ2まで回転して急停止したときにこのはく離抑制部6に衝撃力が作用する。はく離抑制部6と車体端面3aとを衝撃緩和部11A,11Bが連結しているため、はく離抑制部6に衝撃力が作用すると、ダンパ部11a,11dのシリンダ内をピストンが移動する。このため、ダンパ部11a,11dの絞り部を通じてヘッド側室とロッド側室との間を流体が強制的に移動することによって、ピストンと一体となって移動するピストンロッドに粘性抵抗が作用し、はく離抑制部6に作用する衝撃が緩和される。
【0050】
この発明の第1実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、車両2の先頭部からの気流Fのはく離をはく離抑制部6が抑制し、この車両2の速度に応じてこのはく離抑制部6がこの車両2の車体端面3aから開閉する。このため、車両2の先頭部からの気流Fのはく離が小さくなる車両2の低速走行時には、はく離抑制部6を車体端面3aに閉じて非使用状態に簡単に切り替えることができる。また、車両2の先頭部からの気流Fのはく離が大きくなる車両2の高速走行時にははく離抑制部6を車体端面3aから開き使用状態に簡単に切り替えることができる。その結果、はく離抑制部6を開閉駆動するための駆動装置などが不要になって、気流はく離抑制構造5の構造が簡単になりこの気流はく離抑制構造5を安価に製造することができる。
【0051】
(2) この第1実施形態では、車両2の速度が所定値を越えるときには、この車両2の車体端面3aからはく離抑制部6が開き、この車両2の速度が所定値以下であるときには、この車両2の車体端面3aにこのはく離抑制部6が閉じる。このため、車両2の高速走行時にははく離抑制部6を開放状態に簡単に切り替えて、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制することができる。
【0052】
(3) この第1実施形態では、復元力作用部10A,10Bがはく離抑制部6に復元力を作用させ、このはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力がこの復元力よりも大きいときには車両2の車体端面3aからこのはく離抑制部6が開き、このはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力がこの復元力よりも小さいときにはこの車両2の車体端面3aにこのはく離抑制部6が閉じる。その結果、車両2の高速走行時には復元力に比べて空気力が大きくなるため、この空気力を利用してはく離抑制部6を開き、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離をこのはく離抑制部6によって抑制することができる。また、車両2の低速走行時には復元力に比べて空気力が小さくなるため、この復元力を利用してはく離抑制部6を閉じ、この車両2の先頭部にこのはく離抑制部6を格納することができる。
【0053】
(4) この第1実施形態では、はく離抑制部6に復元力を付与するばね部10a,10dを復元力作用部10A,10Bが備えている。このため、簡単な構造のばね部10a,10dによって、車両2の車体端面3aに閉じる方向の復元力をはく離抑制部6に常時作用させることができる。
【0054】
(5) この第1実施形態では、はく離抑制部6が開閉するときに発生する衝撃を衝撃緩和部11A,11Bが緩和する。このため、高速走行域と低速走行域との間で車両2の速度が変化したようなときに、はく離抑制部6が回転可能な範囲の限界位置で衝突して衝撃力が発生するのを可能な限り抑えることができる。
【0055】
(6) この第1実施形態では、はく離抑制部6に減衰力を付与するダンパ部11a,11dを衝撃緩和部11A,11Bが備えている。このため、簡単な構造のダンパ部11a,11dによって、はく離抑制部6が開閉するときにこのはく離抑制部6に粘性抵抗を付与することができ、はく離抑制部6の開閉時に発生する衝撃を抑制することができる。
【0056】
(7) この第1実施形態では、はく離抑制部6が車両2の車体端面3aから開いたときには、この車体端面3aに衝突した気流Fをこの車両2の車体側面3b,3c及び車体上面3dにこのはく離抑制部6が導くことによって、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離をこのはく離抑制部6が抑制する。このため、車両2の車体端面3aに衝突した気流Fを、車体側面3b,3c及び車体上面3dに向かってはく離抑制部6が誘導し、車体側面3b,3c及び車体上面3dからはく離する気流Fのはく離を効果的に抑制することができる。
【0057】
(8) この第1実施形態では、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ1に気流Fを通過させるルーバー部7をはく離抑制部6が備えている。このため、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離するのを抑制して、車両2の空気抵抗を低減することができるとともに、車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減することができる。また、車体3に作用する繰り返し荷重によって発生する車体構造疲労を低減することができるとともに、気圧変動に起因して車体3内の乗客に発生する耳つん現象を低減することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造について説明する。以下では、図1〜図6に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図7〜図12に示す気流はく離抑制構造5は、図7〜図12に示すはく離抑制部6と、図11に示す連結部9と、図9及び図11に示す復元力作用部10A,10Bと、図9及び図12に示す衝撃緩和部11A,11Bと、図11に示す連結部12などを備えている。図7〜図12に示すルーバー部7は、図9及び図10に示すように、車体側面3b,3c及び車体上面3dと内側フィン部7aとの間の間隙部Δ21に気流Fを通過させるとともに、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ22に気流Fを通過させる部分である。内側フィン部7aの後端部は、図9〜図12に示すように、車体側面3b,3c側及び車体上面3d側に湾曲してこれらの表面と平行に形成されており、これらの表面よりも僅かに突出している。外側フィン部7bの後端部は、内側フィン部7aに沿って湾曲しており、内側フィン部7aの後端部よりも僅かに前方に突出するとともに、この内側フィン部7aよりも外側に突出している。外側フィン部7bの後端部は、内側フィン部7aに沿って湾曲しており、内側フィン部7aの後端部よりも僅かに前方に突出するとともに、この内側フィン部7aよりも外側に突出している。
【0059】
図11に示す連結部12は、はく離抑制部6を車両2に着脱自在に装着する部分であり、外側フィン部7bの開閉動作に連動して内側フィン部7aも開閉動作するように、内側フィン部7aと車体端面3aとを回転自在に連結する。連結部12は、外側フィン部7bが車両2の車体端面3aから開くときに、内側フィン部7aもこの車両2の車体端面3aから開くように、この外側フィン部7bの開放動作に連動してこの内側フィン部7aも開放動作させる。一方、連結部12は、外側フィン部7bが車両2の車体端面3aに閉じるときに、外側フィン部7bもこの車両2の車体端面3aに閉じるように、この外側フィン部7bの閉鎖動作に連動してこの内側フィン部7aも閉鎖動作させる。連結部12は、図5に示す連結部8と同一構造であり、リンク部材12a,12bとピン部材12c〜12fなどを備えている。連結部12は、内側フィン部7a及び車体端面3aをリンク部材12a,12b及びピン部材12c〜12fによって回転自在に連結したリンク機構を構成しており、図11に示すように車体端面3aに対して内側フィン部7aが略平行な直線を描く平行クランク機構(平行運動機構)である。連結部12は、図7に示すように、内側フィン部7aの長さ方向の両端部にそれぞれ配置されている。
【0060】
リンク部材12a,12bは、内側フィン部7aと車体端面3aとを回転自在に連結する部材である。リンク部材12a,12bは、いずれも略同一長さであって平行運動及び回転運動が可能な板状又は棒状の部材であり、図11に示すように互に平行に配置された状態で内側フィン部7aと車体端面3aとの間に回転自在に挟み込まれている。リンク部材12aは、一方の端部が車体端面3aと回転自在に連結されており、他方の端部が内側フィン部7aの後端部側に回転自在に連結されている。リンク部材12bは、一方の端部が車体端面3aに回転自在に連結されており、他方の端部が内側フィン部7aの前端部側に回転自在に連結されている。
【0061】
ピン部材12c〜12fは、リンク部材12a,12bを回転自在に連結する部材である。ピン部材12cは、車体端面3aとリンク部材12aとを回転自在に連結し、ピン部材12dは内側フィン部7aとリンク部材12aとを回転自在に連結する。ピン部材12eは、車体端面3aとリンク部材12bとを回転自在に連結し、ピン部材12fは内側フィン部7aとリンク部材12bとを回転自在に連結する。ピン部材12c〜12fは、車体端面3a、内側フィン部7a及びリンク部材12a,12bをを回転自在にピン結合(ヒンジ結合)する軸状の部材である。ピン部材12c〜12fは、リンク部材12a,12bを内側フィン部7a及び車体端面3aから取り外すときには、車体側軸受部とリンク部材側軸受部とから抜き取られ、リンク部材12a,12bを内側フィン部7a及び車体端面3aに取り付けるときには、車体側軸受部とリンク部材側軸受部とに挿入される。
【0062】
次に、この発明の第2実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図7(A)〜図12(A)に示すように、車両2がX軸方向に高速で走行して、車体端面3aと内側フィン部7aとの間に気流Fが流入するとともに、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間にも気流Fが流入する。このとき、はく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が復元力作用部10A,10Bが発生する復元力よりも大きくなると、はく離抑制部6が折畳状態から展開状態に切り替わる。その結果、図7(A)〜図10(A)に示すように、車体端面3aに衝突した気流Fが車体側面3b,3c及び車体上面3dと内側フィン部7aとの間の間隙部Δ21を通過するとともに、内側フィン部7aと外側フィン部7bとの間の間隙部Δ22を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。一方、図7(B)〜図12(B)に示すように、車両2がX軸方向に低速で走行するときには、はく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が復元力作用部10A,10Bが発生する復元力よりも小さいため、はく離抑制部6が展開状態から折畳状態に切り替わる。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0063】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造について説明する。
図13〜図18に示す気流はく離抑制構造5は、図13〜図18に示すはく離抑制部6と、図17に示す復元力作用部10A,10Bと、図18に示す衝撃緩和部11A,11Bと、図17に示す連結部12などを備えている。はく離抑制部6は、フィン部13などを備えている。フィン部13は、図15(A)及び図16(A)に示すように、車体側面3b,3cとの間の間隙部Δ3に気流Fを通過させるとともに、車体上面3dとの間の間隙部Δ3に気流Fを通過させる部分である。フィン部13は、図13〜図15に示すように、図1〜図3及び図7〜図9に示す透過部7c,7dと同様の透過部13cを備えている。フィン部13は、図17及び図18に示すように、図3〜図6及び図9〜図18に示す凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hと同様に、凹状湾曲面13g及び凸状湾曲面13hを備えている。フィン部13は、図1〜図12に示す内側フィン部7a及び外側フィン部7bと同様の羽根板状の部材である。フィン部13の先端部は、図15(A)〜図18(A)に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。フィン部13の後端部は、車体側面3b,3c側及び車体上面3d側に湾曲してこれらの表面と平行に形成されており、これらの表面よりも僅かに突出している。
【0064】
次に、この発明の第3実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図13(A)〜図18(A)に示す状態で車両2がX軸方向に高速で走行すると、車体端面3aとフィン部13との間に気流Fが流入する。このとき、はく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が復元力作用部10A,10Bが発生する復元力よりも大きくなると、はく離抑制部6が折畳状態から展開状態に切り替わり、車体端面3aに衝突した気流Fが車体側面3b,3c及び車体上面3dとフィン部13との間の間隙部Δ3を通過する。このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。一方、図13(B)〜図18(B)に示すように、車両2がX軸方向に低速で走行するときには、はく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が復元力作用部10A,10Bが発生する復元力よりも小さいため、はく離抑制部6が展開状態から折畳状態に切り替わる。この第3実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果がある。
【0065】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造について説明する。
図19〜図24に示す気流はく離抑制構造5は、図19〜図24に示すはく離抑制部6と、図19及び図23に示す復元力作用部10Aと、図19及び図24に示す衝撃緩和部11Aと、図23及び図24に示す連結部15などを備えている。はく離抑制部6は、車両2の車体端面3aよりも前側で気流Fを衝突させこの衝突した気流Fをこの車両2の車体側面3b,3cの前端部及び車体上面3dの前端部に導くことによって、この車両2の先頭部からの気流Fのはく離を抑制する部分である。はく離抑制部6は、図19及び図20に示すように、車体端面3aの側縁部及び上縁部に沿って、この車体端面3aを囲むように配置されており、車体端面3aの両側と車体端面3aの上側とに配置されている。はく離抑制部6は、図19〜図24に示すように、突出部14などを備えている。
【0066】
突出部14は、車両2の車体端面3aの側縁部及び上縁部に沿ってこの車体端面3aから突出する部分である。突出部14は、図19〜図24に示すように、先端部に衝突してこの先端部からはく離した気流Fが車体側面3b,3cの前端部及び車体上面3dの前端部に再付着するように、車体端面3aの側縁部及び上縁部から距離Leだけ内側に配置されており、図19及び図21〜図24に示すように車体端面3aから先端部まで高さLfだけ突出している。ここで、距離Leは、116mmを下回る場合や232mmを超える場合にははく離抑制効果が低下するため116〜232mmの範囲内に設定することが好ましい。高さLfは、200mmを下回る場合や400mmを超える場合にははく離抑制効果が低下するため200〜400mmの範囲内に設定することが好ましい。突出部14は、図23及び図24に示すように、先端部が平坦面に形成されており、図19〜図21に示すように板状部14aと透過部14bなどを備えている。
【0067】
板状部14aは、気流Fの向きを変える部分である。板状部14aは、図19〜図24に示すように、車両2の移動方向(X軸方向)に幅方向が一致し、車両2の左右方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に厚さ方向が一致している。板状部14aは、図19に示すように、車体端面3aの側縁部及び上縁部を囲むように配置された平板状のつい立(突起部)であり、側縁部及び上縁部に沿って連続して同一形状で形成されている。図19〜図21に示す透過部14bは、図1〜図3及び図7〜図9に示す透過部7c,7d及び図13〜図15に示す透過部13cと同様の部材であり、板状部14aの一部に形成されている。
【0068】
図23及び図24に示す連結部15は、はく離抑制部6を車両2に着脱自在に装着する部分である。連結部15は、はく離抑制部6と車両2とを回転自在に連結すしており、車体端面3aの側縁部及び上縁部から距離Leだけ内側に配置されている。連結部15は、図23(A)及び図24(A)に示すように、車体端面3aに衝突した気流Fのはく離を効果的に抑制可能なように、はく離抑制部6をこの連結部8を中心として車体端面3aから略90度まで開く。一方、連結部15は、図23(B)及び図24(B)に示すように、板状部14aと車体端面3aとの間に隙間を形成し、この隙間に気流Fが流入してこの内側フィン部7aに空気力が作用するように、車体端面3aに対して微小角度分だけ閉じる。連結部15は、この連結部15を回転中心としてはく離抑制部6が回転可能なように、はく離抑制部6の後端部を車体3に回転自在にピン結合(ヒンジ結合)している。連結部15は、はく離抑制部6の回転角度を一定の範囲内に制限するストッパ機能を備えており、図23(B)及び図24(B)に示す折畳状態と、図23(A)及び図24(A)に示す展開状態とにはく離抑制部6が切り替わったときに、このはく離抑制部6の回転位置を所定の位置に規制する。連結部15は、車両2側に取り付けられた車両側軸受部と、はく離抑制部6側に取り付けられた抑制部側軸受部と、車両側軸受部と抑制部側軸受部とに着脱自在に挿入されるピン部とを備えている。連結部15は、はく離抑制部6を車両2から取り外すときには、車両側軸受部と抑制部側軸受部とからピン部を抜き取り、はく離抑制部6を車両2に取り付けるときには、車両側軸受部と突出部側軸受部とにピン部を挿入する。
【0069】
次に、この発明の第4実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造の作用を説明する。
図19(A)〜図24(A)に示すように、車両2がX軸方向に高速で走行すると、車体端面3aと板状部14aとの間に気流Fが流入する。このとき、図19(A)及び図21(A)〜図24(A)に示すように、復元力作用部10Aが発生する復元力よりもはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が大きくなると、はく離抑制部6が折畳状態から展開状態に切り替わる。はく離抑制部6の先端部に衝突した気流Fがこの先端部ではく離するが、このはく離した気流Fが車体側面3b,3cの前端部及び車体上面3dの前端部に導かれてこれらの前端部に再付着する。このため、はく離抑制部6の先端部から車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。また、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離抑制部6の内側側面によって方向が変えられて、この気流Fが車体端面3aからはく離するのを抑制される。その結果、はく離抑制部6の先端部に衝突した気流Fが大きくはく離して車両2の先頭部の見かけの断面積が増加するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に車両2が突入するときに発生する圧力変動が低減される。一方、図19(B)〜図24(B)に示すように、車両2がX軸方向に低速で走行すると、復元力作用部10Aが発生する復元力よりもはく離抑制部6が開く方向に作用する空気力が小さいため、はく離抑制部6が展開状態から折畳状態に切り替わる。この第4実施形態には、第1実施形態〜第3実施形態と同様の効果がある。
【0070】
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態に係る移動体の気流はく離抑制構造について説明する。
図25〜図30に示す車体3は、車体端面3aの全面が平面ではなく、車両2が他の車両と連結されて中間車両となったときにこの車両2が曲線通過時に他の車両の車体端面と干渉しないように、車体端面3aの側縁部及び上縁部が後方に後退した切妻形状である。車体端面3aは、図26に示すように、車体側面3b,3cに向かって後方に湾曲する湾曲面3m,3nと、図25に示すように車体上面3dに向かって後方に湾曲する湾曲面3pなどを備えている。はく離抑制部6は、図25に示すように、車体端面3aの形状に合わせて気流Fのはく離抑制効果を向上可能なように、車体上面3dの中心部(屋根中心部)に気流Fを導く部分がこの車体上面3dの両縁部に気流Fを導く部分よりも、車両2の進行方向前側(車体端面3aの前方)に突出している。はく離抑制部6は、図25及び図26に示すように、ルーバー部7A,7Bを備えている。
【0071】
ルーバー部7Aは、車体端面3aの側縁部に配置されており、ルーバー部7Bは車体端面3aの上縁部に配置されている。ルーバー部7Aは、図25及び図26に示すように、車体端面3aの側縁部に沿って2つに分割されて配置されており、車体3の腰部と側部とにそれぞれ対応して配置されている。ルーバー部7Bは、車体上面3dの前端部に沿って7つに分割されて配置されており、車体3の肩部、縁部、中央部及び縁部と中央部との間の中間部にそれぞれ対応して配置されている。ルーバー部7A,7Bは、図27及び図28に示すように、内側フィン部7aと外側フィン部7bなどを備えている。ルーバー部7Aは、図1〜図12に示すルーバー部7や図25、図28及び図29に示すルーバー部7Bとは内側フィン部7aの構造が相違する。一方、ルーバー部7Bは、図1〜図12に示すルーバー部7と同一構造であり、以下ではルーバー部7A側の部分を中心に説明しルーバー部7Bの部分については詳細な説明を省略する。
【0072】
内側フィン部7aは、図29及び図30に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hと、この凹状湾曲面7g及び凸状湾曲面7hの先端部から延びる平面7m,7nとを備えている。内側フィン部7aは、後端部から先端部に向かって車体端面3a側に湾曲する湾曲板(曲面板)部分と、この湾曲板部分から先端部に向かって伸びる平面板(平板)部分とによって一体に形成されている。内側フィン部7aは、車両2と対向する側の表面に凹状湾曲面7gと連続する平面7mを備え、車両2と対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面7hと連続する平面7nを備えている。内側フィン部7aは、車体端面3aから越えてはならない限界(車両限界)内で比較的余裕があるため、外側フィン部7bよりも長く形成されており、気流Fのはく離抑制効果を向上可能なように、湾曲板部分の先端に平面板部分を延長したような形状に形成されている。外側フィン部7bは、内側フィン部7aに比べて車両限界内で比較的余裕がないため、内側フィン部7aとは異なり先端部が平面に形成されておらず、車体端面3a側に湾曲している。外側フィン部7bの先端部は、内側フィン部7aの先端部よりも僅かに前方に突出しており、外側フィン部7bの後端部も内側フィン部7aの先端部よりも僅かに前方に突出している。この第5実施形態には、第1実施形態〜第4実施形態と同様の効果がある。
【実施例】
【0073】
次に、この発明の実施例について説明する。
図31は、風洞試験に使用した風洞試験装置の構成図であり、図31(A)は側面図であり、図31(B)は平面図である。図32は、風洞試験に使用した模型車両の外観図であり、図32(A)は平面図であり、図32(B)は側面図であり、図32(C)は正面図である。図33は、風洞試験の結果を示す斜視図であり、図33(A)ははく離抑制部を開いた場合の試験結果を示す斜視図であり、図33(B)ははく離抑制部を閉じた場合の試験結果を示す斜視図である。
【0074】
(風洞試験装置)
図31に示す風洞試験装置20は、模型車両30に向けて空気を流したときにこの模型車両30の表面の流れの様子を観察する装置である。風洞試験装置20は、空気を吹き出すノズル(吹出口)20aと、このノズル20aからの空気を模型車両30に流す風洞測定部20bと、床面上の昇降台に設置される地面板20cと、この地面板20c上に模型車両30を支持する支柱20dと、風洞測定部20bからの空気を吸い込む図示しない吸込部(コレクタ)などを備えている。この実験では、風洞測定部20bが開放型である財団法人鉄道総合技術研究所のH棟小型風洞(開放型)を使用した。地面板20cは、長さ1490mm×幅790mmの合板製であり、幅720mm×高さ600mmのノズル20aの底面とこの地面板20cの表面とが一致するように設置した。模型車両30は、断面が翼型形状の4本の支柱20dを利用して地面板20cに固定した。図31(A)に示すように、ノズル20aの先端から車両先頭部までの距離は150mm、地面板20cの表面から模型車両30の底面までの距離は62mm(実物のレール底面から車両底面までの距離に相当)であり、実験風速U=40m/sに設定した。模型車両30の幅W=140mmを代表長さとしたレイノルズ数Re=3.7×105(Re=UW/ν=40×0.14/(1.5×10-5)、空気の動粘性係数ν)である。図31(A)(B)に示すように、座標系は、車両先頭部の上端の幅方向の中心点を原点として、レール方向(流れ方向)をX軸、まくらぎ方向をY軸、これらの右手座標系で鉛直上方をZ軸として設定した。
【0075】
(模型車両)
図31及び図32に示す模型車両30は、実際の鉄道車両を模擬(縮小)した車両であり、車両本体部30aとフィン部30bとを備えている。模型車両30は、201系電車を参考に製作された20分の1縮尺模型である。模型車両30は、車両断面が矩形であって、屋根面が完全にフラットな板であり、側面と屋根面が接続する部分が角であり、先頭部形状も角である。模型車両30は、1両であり、4本の支柱20dを除き、床下機器類は一切無くフラットである。図31及び図32に示す模型車両30は、図13〜図18に示すはく離抑制部6を備えている。フィン部30bは、車両本体部30aの先頭部に着脱自在であり、図13〜図18に示すフィン部13に対応する。
【0076】
(タフト法による可視化)
図31に示す風洞試験装置20に模型車両30を設置し風洞試験を実施した。風洞試験は、図33(A)に示すようにフィン部30bを開いた場合と、図33(B)に示すようにフィン部30bを閉じた場合とについてそれぞれ実施した。模型車両30の周りの流れの様子を調べるため、図31及び図32に示すようにタフト法による可視化を実施した。ここで、タフト法とは、物体表面の流れの様子を糸や毛糸などの気流糸を用いて観察し、流れの方向、はく離域及び不安定域などを可視化したものである。図31及び図32に示すタフト40は、綿糸#40であり、車体表面(屋根面及び側面)に粘着テープで貼り付けた。図31(A)及び図32(A)に示すように、X軸方向には車両先頭部の先端から所定位置に1列目を貼り付け、所定のピッチで設置した。また、図31(A)及び図32(A)に示すように、Z軸方向には側面にそれぞれ3行分を貼り付けた。図31(B)及び図32(B)に示すように、Y軸方向には上面にそれぞれ2行分を貼り付けた。この実験では、タフト40の動きに応じて「はく離」、「はく離無し」の各領域を次のように定義した。「はく離」領域は、タフト40が流れと逆方向を向いている領域とし、「はく離無し」領域はタフト40が流れ方向(順方向)を向いている領域とした。流れは、「はく離」と「はく離無し」の間で「再付着」する。なお、全タフト40が順方向の場合であっても、タフト40が設置されていない車両先頭部の端部近傍で微小なはく離領域が存在する場合や3次元はく離の場合には、必ずしもはく離領域で逆流しているとは限らない場合が考えられる。しかし、この実験では、そのようなはく離領域は捉えることは困難なことから考慮せず、タフト40が順方向の場合は「はく離無し」とした。
【0077】
(実験結果)
図33(B)に示すように、フィン部30bを閉じた場合には、屋根面において先頭部から5列目までのタフト40の多くが流れと逆方向を向いており、流れのはく離領域が5列目付近まで存在することが確認された。一方、図33(A)(B)に示すように、フィン部30bを開いた場合には、先頭部以降の全てのタフト40が流れ方向を向いており、フィン部30bによって気流のはく離領域の大きさが効果的に抑制されることが確認された。
【0078】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、移動体が鉄道車両である場合を例に挙げて説明したが、自動車などの他の移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、はく離抑制部6を車体端面3aの両側及び上側に配置した場合を例に挙げて説明したが、これらのいずれか一方を省略したり、はく離抑制部6を車体端面3aの下側に配置したり、はく離抑制部6を左右いずれか一方の側縁部に配置したりすることもできる。さらに、この実施形態では、ルーバー部7,7A,7B、フィン部13及び突出部14をはく離抑制部6が備える場合を例に挙げて説明したが、これらを任意に組み合わせることもできる。例えば、車体端面3aの両側にフィン部13又は突出部14を備えるはく離抑制部6を配置し、車体端面3aの上側にルーバー部7,7A,7Bを備えるはく離抑制部6を配置することもできる。この場合には、車両限界が車体側面3b,3c側よりも車体上面3d側のほうが広いため、車体上面3d側のはく離抑制部6の変位量や形状を大きくすることができる。同様に、車体端面3aの両側及び上側のはく離抑制部6の一部がルーバー部7,7A,7Bを備え、残部がフィン部13又は突出部14を備えるような構造にすることもできる。
【0079】
(2) この実施形態では、車体3の先頭部の形状が切妻形状である場合を例に挙げて説明したが、先頭部の形状が流線型の場合や車体端面の縁部に丸みを形成した場合などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、ルーバー部7,7A,7B及びフィン部13の表面形状が円弧状の板状部材である場合を例に挙げて説明したが、これらの表面形状が楕円形状、楕円形の一部、又は曲率を有する湾曲面状などの丸みを有する板状部材である場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、車両2の前側に他の車両2を連結可能な場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部6を柔軟な可撓性部材によって形成し、前側の車両2のはく離抑制部6の先端部と後側の車両2のはく離抑制部6の先端部とを突き合せて密着可能な構造にすることもできる。
【0080】
(3) この実施形態では、高速走行時には車体端面3aの内側から外側にはく離抑制部6を開き、低速走行時には車体端面3aの外側から内側にはく離抑制部6を閉じる場合を例に挙げて説明したが、高速走行時には車体端面3aの外側から内側にはく離抑制部6を開き、低速走行時には車体端面3aの内側から外側にはく離抑制部6を閉じることもできる。また、この実施形態では、はく離抑制部6の一部が透過部7c,7d,13c,14dを備える場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部6の全部を透明又は半透明にすることもできる。さらに、この実施形態では、復元力作用部10A,10Bとして引張コイルばねを使用する場合を例に挙げて説明したが、ねじりばねを使用することもできる。同様に、この実施形態では、衝撃緩和部11A,11Bとしてダンパを使用する場合を例に挙げて説明したが、ゴムなどの弾性体を使用することもできる。
【0081】
(4) この実施形態では、復元力作用部10A,10Bによってはく離抑制部6に復元力を作用させているが、車体端面3aの上縁側のはく離抑制部6についてはこのはく離抑制部6の自重によって復元可能なときにはこれらの復元力作用部10A,10Bを省略することもできる。また、この実施形態では、衝撃緩和部11A,11Bによってはく離抑制部6に減衰力を作用させているが、これらの衝撃緩和部11A,11Bを省略することもできる。
【0082】
(5) この第1実施形態及び第2実施形態では、ルーバー部7の内側フィン部7aと外側フィン部7bとが同一形状である場合を例に挙げて説明したが、両者を異なる形状に形成することもできる。また、この第1実施形態及び第2実施形態では、外側フィン部7bと内側フィン部7aとの間に復元力作用部10B及び衝撃緩和部11Bを配置した場合を例に挙げて説明したが、外側フィン部7bと車体端面3aとの間に復元力作用部10B及び衝撃緩和部11Bを配置することもできる。さらに、この第1実施形態〜第3実施形態では、ルーバー部7及びフィン部13の全部が湾曲面を備える場合を例に挙げて説明したが、ルーバー部7及びフィン部13の一部が湾曲面を備え、残部が平面を備える場合、ルーバー部7及びフィン部13が平板を複数箇所で折り曲げて形成した多角形である場合などについてもこの発明を適用することができる。
【0083】
(6) この第5実施形態では、ルーバー部7Aの内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長した場合を例に挙げて説明したが、ルーバー部7A,7Bの双方の内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長したり、ルーバー部7Bのみの内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長したりすることもできる。例えば、車体上面3d側の車両限界が狭いときには、ルーバー部7Bの内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長することもできる。同様に、この第5実施形態では、内側フィン部7aの先端部を平面板によって延長する場合を例に挙げて説明したが、内側フィン部7a及び外側フィン部7bの先端部を平面板によって延長したり、外側フィン部7bのみの先端部を平面板によって延長したり、平面板に代えて湾曲板によって連続して同じ曲線半径で延長したりすることもできる。
【符号の説明】
【0084】
1 軌道
2 車両(移動体)
3 車体
3a 車体端面(前面)
3b,3c 車体側面(側面)
3d 車体上面(上面)
4 台車
5 気流はく離抑制構造
6 はく離抑制部
7,7A,7B ルーバー部
7a 内側フィン部
7b 外側フィン部
8,9 連結部
10A,10B 復元力作用部
10a,10d ばね部
11A,11B 衝撃緩和部
11a,11d ダンパ部
12 連結部
13 フィン部
14 突出部
14a 板状部
15 連結部
20 風洞試験装置
30 模型車両
30a 車両本体部
30b フィン部
F 気流
Δ1,Δ21,Δ22,Δ3 間隙部
θ1,θ2 角度
e 距離
f 高さ
X 移動方向
Y 左右方向
Z 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動するときにこの移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制する移動体の気流はく離抑制構造であって、
前記移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制するはく離抑制部を備え、
前記はく離抑制部は、前記移動体の速度に応じてこの移動体の前面から開閉すること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の速度が所定値を越えるときにはこの移動体の前面から開き、前記移動体の速度が所定値以下であるときにはこの移動体の前面に閉じること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部に復元力を作用させる復元力作用部を備え、
前記はく離抑制部は、このはく離抑制部が開く方向に作用する空気力が前記復元力よりも大きいときにはこの移動体の前面から開き、このはく離抑制部が開く方向に作用する空気力が前記復元力よりも小さいときにはこの移動体の前面に閉じること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項4】
請求項3に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記復元力作用部は、前記はく離抑制部に復元力を付与するばね部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部が開閉するときに発生する衝撃を緩和する衝撃緩和部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項6】
請求項5に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記衝撃緩和部は、前記はく離抑制部に減衰力を付与するダンパ部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の前面から開いたときには、この移動体の前面に衝突した気流をこの移動体の側面に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制すること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の側面と内側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項10】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の側面との間の間隙部に前記気流を通過させるフィン部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の前面から開いたときには、この移動体の前面に衝突した気流をこの移動体の上面に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制すること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項12】
請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項13】
請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の上面と内側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるととともに、この内側フィン部と外側フィン部との間の間隙部に前記気流を通過させるルーバー部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項14】
請求項11に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の上面との間の間隙部に前記気流を通過させるフィン部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の前面よりも前側で気流を衝突させこの衝突した気流をこの移動体の側面前端部に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制すること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項16】
請求項15に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向に幅方向が一致し、前記移動体の左右方向に厚さ方向が一致する板状部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の前面よりも前側で気流を衝突させこの衝突した気流をこの移動体の上面前端部に導くことによって、この移動体の先頭部からの気流のはく離を抑制すること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。
【請求項18】
請求項17に記載の移動体の気流はく離抑制構造において、
前記はく離抑制部は、前記移動体の移動方向に幅方向が一致し、前記移動体の上下方向に厚さ方向が一致する板状部を備えること、
を特徴とする移動体の気流はく離抑制構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−66686(P2012−66686A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212862(P2010−212862)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)