説明

移動体案内装置

【課題】低コストで実現可能で、安全に移動体の案内をすることが可能な移動体案内装置を提供する。
【解決手段】移動体案内装置62は、主表面110を有する基礎ブロック100と、稜線を形成するように互いに直角に組合せた2つの反射面を有する反射装置102と、稜線が主表面110に対する直交面内にあるように、かつ2つの鏡面がこの直交面を中心に面対称となるように、反射装置102を基礎ブロックに支持する支柱122とを含む。支柱122は、主表面110に対する垂線と、支柱102が支持する稜線とがなす角度の絶対値が、0度より大きくかつ5度よりも小さくなるように反射装置102を支持する。進入角度案内装置62はさらに、反射装置102と同様で主表面110となす角度が異なる反射装置104及び106を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の案内システムに関し、特に、電波を使わずに移動体を案内することができる案内システムで使用される、光を用いた移動体案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、世界各地の空港で旅客機などの航空機の着陸を支援するために、ILS(Instrument Landing System)と呼ばれる誘導システムが利用されている。
【0003】
ILSでは、グライドパス、ローカライザ及びマーカ・ビーコンにより、航空機に対して安全な着陸のための情報を与える。
【0004】
グライドパスは滑走路への適正(安全)な降下角度を示すものである。ローカライザは滑走路への適正(安全)な進入方位を示すものである。マーカ・ビーコン(アウター・マーカ、ミドル・マーカ、インナー・マーカ)は滑走路までの距離を示す。
【0005】
これらのうち、グライドパス及びローカライザについて図1にその概略を示す。図1を参照して、従来のILS20は、空港の滑走路22の端部付近から、航空機28が進入してくる方位及び角度に向けられた2つの電波24及び電波26を発生する図示しない発信装置を含む。これらのうち、電波24は150Hzの信号により変調されており、電波26は90Hzの信号により変調されている。航空機28から見ると、電波24は電波26より向かって右側で、かつ上方に向けられている。逆に電波26は電波24より向かって左側で、かつ下方に向けられている。
【0006】
電波26及び28の出力パワーは同じに設定されている。その結果、電波24の向けられた方向と電波26の向けられた方向との中間位置(上下及び左右の中間)では、航空機28が受信する信号レベルが両者で等しくなる。航空機28に設けられた操縦システムは、両者の信号レベルを測定し、両者の信号レベルが上下左右で等しくなるように、クロスポインタと呼ばれる表示方式によって航空機28の安全な進行方向を示す。
【0007】
このようにすることにより、図1(A)及び(B)に示されるように、航空機28は、電波24の向けられた方向と電波26の向けられた方向との中間のパス30を進行し、安全な角度で、空港の滑走路22への安全な進入方位に進むことができる。このパス30を、横から見たときにはグライドパス、上から見たときにはローカライザと呼ぶ。
【0008】
ILSはほぼ全ての空港で使用されており、関連する先行技術文献としては特許文献1がある。
【特許文献1】特開2006−107177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ILSは、電波を用いるもので、視界が良好でない状況でも、航空機を滑走路へ安全に誘導できるという利点がある。しかし、逆に、電波を用いるために、発信装置のメンテナンスが必要であるという大きな欠点がある。通常の空港の場合には、莫大なコストをかけてILSのための装置のメンテナンスを行なっている。しかし、将来、月面に着陸したり、軌道上に設けられた宇宙ステーションにドッキングしたりする場合には、そうした装置のためのコストは膨大なものとなり、メンテナンスのコストを下げるためには装置の信頼性を飛躍的に高めなければならず、その結果、装置そのもののコストが上昇してしまうという問題がある。
【0010】
さらに、電波を用いるために電力が必要であるという問題もある。停電時の自家発電設備があるとしても、停電発生時の電力の切替時に事故が発生する可能性もあるし、停電が長引けば空港の機能そのものを停止させなければならない場合もあり得る。停電発生の原因として何らかの事故又は災害だけではなく、意図的な破壊活動の可能性も排除できない。
【0011】
その上、電波を用いたシステムでは、特に空港の近くに高層ビルが存在している場合、航空機の受信する電波にはゴーストが生じることが多く、安全な誘導を行なうことが難しいという問題もある。かつてと異なり、現代では空港と市街地とが近接しつつあり、こうした問題は今後ますます深刻化するはずである。
【0012】
安全な航空輸送を実現するためには、このような問題は国家的に取り組むべき問題である。
【0013】
空港の着陸誘導システムとしては、ILS以外にMLS(Microwave Landing System)及びLDA(Localizer Type Directional Aids)方式もあるが、これらにも、上記した問題が共通に存在している。したがって、上記した問題を解決するような着陸誘導システムの開発が急務である。しかし、上記した特許文献1に記載の技術は電波を使用することを前提としており、こうした問題は解決できない。
【0014】
またこうした問題は航空機には限らない。既に述べたように、宇宙船の誘導についても同様の問題が生じ得るし、地上を走行する車両及び海上等を航行する船舶等、固定された軌道を持たない移動体の案内についても同じことが言える。特に自動車の場合には、事故を防ぐために電波を用いた車両間通信を使用することが考えられているが、そのための計器のメンテナンスにはやはりコストがかかる。すなわち、移動体を対象とする誘導システムの全てについて、上記した問題が生じ得る。
【0015】
それゆえにこの発明の目的は、低コストで実現可能で、安全に移動体の案内をすることが可能な移動体案内装置を提供することである。
【0016】
この発明の他の目的は、保守のためのコストが安く済み、安全に移動体の案内をすることが可能な移動体案内装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の局面に係る移動体案内装置は、移動体を案内するための移動体案内装置であって、主表面を有する基礎ブロックと、稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの反射面を有する第1の反射装置と、稜線が主表面に対する第1の直交面内にあるように、かつ2つの反射面が第1の直交面を中心に面対称となるように、第1の反射装置を基礎ブロックに支持するための第1の支持手段とを含み、第1の支持手段は、主表面に対する垂線と、稜線とがなす角度の絶対値が、0度より大きくかつ5度よりも小さい第1の値となるように第1の反射装置を支持する。
【0018】
このように第1の反射装置を設けると、例えば主表面が所定の基準面と一致するように基礎ブロックを地上施設などに設けた場合、移動体からこの反射装置に光をあてて反射光が戻ってくるか否かを調べることによって、上記した第1の値によって定められる境界線のどちら側にいるかを判定できる。この情報に基づき、移動体をこの境界線に沿って、又はこの境界線の一方側から他方側に出ないように、安全に案内することができる。しかもこの移動体案内装置の動作にはエネルギー源は不要であり、かつ可動部もないためメンテナンスが不要である。その結果、低コストで実現可能で、安全に移動体の案内をすることが可能な移動体の案内システム及びそのための案内装置を提供することができる。
【0019】
好ましくは、移動体案内装置はさらに、稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの反射面を有する第2の反射装置と、第2の反射装置の稜線が主表面に対する第2の直交面内にあるように、かつ当該第2の反射装置の2つの反射面が第2の直交面を中心に面対称となるように、第2の反射装置を基礎ブロックに支持するための第2の支持手段とを含み、第2の支持手段は、主表面に対する垂線と、第2の反射装置の稜線とがなす角度の絶対値が、0度より大きくかつ5度よりも小さく、かつ第1の値と異なる第2の値となるように第2の反射装置を支持する。
【0020】
このように第2の反射装置をさらに設けると、第1の値により定められる境界線と、第2の値により定められる境界線とにより、空間を3分割することができる。この情報を用い、例えばこれら3つの領域のうちの1つのみの内部に移動体が存在し、そこから外部には出ないように、移動体を案内することができる。案内することができる領域をより狭くすることができる。メンテナンスのコストも極めて低い。その結果、保守のためのコストが安く済み、安全に移動体の案内をすることが可能な移動体の案内システム及びそのための案内装置を提供することができる。
【0021】
より好ましくは、移動体案内装置はさらに、稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの反射面を有する第3の反射装置と、第3の反射装置の稜線が主表面に対する第3の直交面内にあるように、かつ当該第3の反射装置の2つの鏡面が第3の直交面を中心に面対称となるように、第3の反射装置を基礎ブロックに支持するための第3の支持手段とを含み、第3の支持手段は、主表面に対する垂線と、第3の反射装置の稜線とがなす角度の絶対値が、第2の値となるように、第3の反射装置を支持する。
【0022】
さらに好ましくは、第3の支持手段はさらに、第3の反射装置が、第1の直交面に関して第2の反射装置と面対称となるように、第3の反射装置を支持する
第2の反射手段と第3の反射手段とが第1の反射手段を中心として、左右に配置され、かつそれらが入射光を反射する限界角度が互いに等しくなるので、移動体からこれら反射手段に光をあてたときの反射光のパターンが分かりやすくなり、より安全に移動体を案内することができる。
【0023】
移動体案内装置はさらに、稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの鏡面を有する第2の反射装置と、第2の反射装置の稜線が第1の直交面内にあるように、かつ当該第2の反射装置の2つの鏡面が第1の直交面を中心に面対称となるように、かつ第2の反射装置が、主表面及び第1の直交面の双方と直交する第2の直交面に関し、第1の反射装置と面対称となるように、第2の反射装置を基礎ブロックに支持するための第2の支持手段とを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、移動体案内装置は、2つの上記移動体案内装置を、互いの基礎ブロックの主表面が同一面となるように、互いに背中合わせに組合せたものである。
【0025】
より好ましくは、2つの移動体案内装置のうち、一方の移動体案内装置に属する反射装置には、互いに異なる色の光透過性のフィルタが設けられており、他方の移動体案内装置に属する反射装置には、それぞれ一方の移動体案内装置に属する、同じ角度で主表面に取付けられた反射装置のフィルタと同じ色の光透過性のフィルタが設けられている。
【0026】
さらに好ましくは、反射装置には、互いに異なる色の光透過性のフィルタが設けられている。
【0027】
第1の反射装置には第1の色の光透過性フィルタが設けられており、第2及び第3の反射装置には、第1の色と異なる第2の色の光透過性フィルタが設けられていてもよい。
【0028】
第1の角度は例えば3度、第2の角度は例えば3.5度又は2.5度でもよい。
本発明の第2の局面に係る移動体案内装置は、稜線を形成するように互いに直角に組合わされ、かつ稜線を含む所定の対称面に関して互いに面対称な形状の2つの反射面を有する反射装置と、この反射装置に取付られ、少なくとも反射装置の稜線と平行な方向の長さが調整可能で、かつ所望の長さで反射装置に固定可能な長さ調整装置とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図2に、この発明の一実施の形態に係る案内システム50の概略構成を示す。この実施の形態は、航空機80に対し、滑走路60への安全な進入方位及び進入角度の情報を提供するためのものである。なお、以下の図面及び説明において、同一部品には同一の参照符号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
図2を参照して、案内システム50は、滑走路60の両端部付近に、滑走路60への進入方向を向いて設置され、稜線を形成するように互いに直角に組合せた2枚の反射面を持ち、所定の面に平行に入射する光のみを光源側に反射する反射装置(以下、このような反射装置を「平行反射装置」と呼ぶ。)を用いた進入角度案内装置62及び64と、滑走路60の両端部の両側付近に、滑走路60に進入しようとする航空機80の方向を向いて設置された、平行反射装置を用いた進入方向案内装置66,68,70及び72と、滑走路60の両側部に一定間隔で配置された複数の再帰反射装置74及び76とを含む。
【0031】
図2(B)に示すように、進入角度案内装置62は、一般的に安全な進入角度とされる、水平線に対して3度をなす進入線90と、その上下0.5度にある上限92及び下限94という、3つの角度のいずれかの位置に航空機80が存在しているときには航空機80からの光を航空機80に向けて反射し、それ以外の場合にはそれ以外の方向に光を反射する機能を持つ。進入角度案内装置64の機能も同様である。
【0032】
図3に、進入角度案内装置62の概略を斜視図で示す。図3を参照して、進入角度案内装置62は、互いに平行な主表面110及び下面(図示せず)を有する、扁平な直方体形状をなす基礎ブロック100と、基礎ブロック100の主表面110上に固定された3個の平行反射装置102,104及び106とを含む。平行反射装置102,104及び106は互いに全く同じものであるが、基礎ブロック100にそれぞれ支柱122,124及び126によって取付けられている角度と、それぞれの前面に貼付されている、光を透過するフィルタの色との点で互いに異なっている。
【0033】
平行反射装置102,104及び106はいずれも、稜線を形成するように互いに直角をなすように組合せた2枚の鏡面を含む。このような平行反射装置では、これら鏡面の双方に対して直角な面に平行な方向から入射する光は、その方向に反射され、それ以外の方向から入射する光は、別の方向に反射され、光源側には反射されない。なお、鏡面の裏面(外側を向いた面)は、光を通さないような塗装がされている。
【0034】
本実施の形態では、平行反射装置102、104及び106の前面にはそれぞれ、青、黄、赤の3色のフィルタが設けられている。
【0035】
図3において、支柱122は、主表面110に対して直交する面で、かつ平行反射装置102を構成する2つの鏡面の交線を含むような面内にあるように設けられる。このような面を以下平行反射装置102の「中心面」と呼ぶ。その結果、支柱122は、平行反射装置102を構成する2つの鏡面が、上記した中心面を中心に面対称となるように平行反射装置102を支持している。平行反射装置104及び106の支柱124及び126も同様である。ただし、それらの支柱により支持される稜線が主表面110となす角度がそれぞれ3.5度及び2.5度となっている点で平行反射装置104及び106の取付方は平行反射装置102と異なっている。
【0036】
以上の説明から明らかなように、平行反射装置102は仰角3度からの入射光のみをその光源側に反射し、平行反射装置104は仰角2.5度からの入射光のみをその光源側に反射し、平行反射装置106は仰角3.5度の入射光のみをその光源側に反射する。これら以外の角度で入射する光は、いずれも無関係な方向に反射され、光源側に反射されることはない。
【0037】
図4は、進入角度案内装置62の平面図である。図5(A)は図4の一点鎖線5Aで示される方向から見た進入角度案内装置62の側面図、図5(B)は図4の一点鎖線5Bで示す断面での断面図、図5(C)は図4の一点鎖線5Cで示す断面での断面図を、それぞれ示す。なお図5(A)及び図5(B)においては、図を明快にするために、背後に存在する平行反射装置102及び平行反射装置104は示していない。
【0038】
図4及び図5(B)を参照して、平行反射装置102は、その稜線(平行反射装置102を構成する2枚の鏡面の交線の背部に相当)が主表面110に対する垂線から3度だけ、後方に傾くように、支柱122により基礎ブロック100の主表面110に固定されている。したがって平行反射装置102の上面は図5(B)に示すように水平線より3度上を向く(基礎ブロック100は、主表面110が水平となるように地上に固定されるものとする。)。すなわち、平行反射装置102は、水平位置から3度上方を向いた方向から入射する光はその方向に反射し、それ以外の方向から入射する光は光源側には反射せず、別の方向に反射する。
【0039】
同様に、図4及び図5(A)を参照して、平行反射装置106は、その稜線が主表面110に対し垂直な位置から2.5度だけ後方に傾くように支柱126により基礎ブロック100の主表面110に固定されている。その結果、平行反射装置106は、仰角2.5度の方向から入射する光についてはその方向に反射する。それ以外の方向から入射する光は別の方向に反射され、光源側には反射されない。
【0040】
図4及び図5(C)を参照して、平行反射装置104は、その稜線が主表面110に対し垂直な位置から3.5度だけ後方に傾くように支柱124により基礎ブロック100の主表面110に固定されている。したがって平行反射装置104の上面は図5(C)に示すように水平線より3.5度上を向く。その結果、平行反射装置104は、仰角3.5度の方向との間から入射する光についてはその方向に反射し、それ以外の方向から入射する光は反射しない。
【0041】
例えば、図5(B)に示す、平行反射装置102への入射光128が仰角3度の面内で入射するものとする。すると、この光は平行反射装置102の2枚の反射面で反射され、光源側に反射される。一方、仰角が3度以外の面から入射する入射光129の場合、図5(B)に示すように、光源とは異なる方向に反射され、光源に戻ることはない。
【0042】
平行反射装置104及び106についても同様である。
以上に述べた進入角度案内装置62の構成についてまとめると、以下のようになる。図4を参照して、例えば平行反射装置102は、2つの反射面を互いに直角に組合せた、1つの稜線を有するものである。支柱122は、この稜線が、主表面110に対する直交面内にあるように、かつ図4から明らかなように、2つの鏡面がこの直交面(平行反射装置102の中心面)を中心に面対称となるように、平行反射装置102を基礎ブロックに支持している。支柱122は、主表面110と、稜線108(図5(B)参照)とがなす角度の絶対値が、3度となるように平行反射装置102を支持する。
【0043】
このように構成された進入角度案内装置62によれば、航空機80が着陸時に前方を照射するライトを点灯した場合、航空機80には進入角度案内装置62からの反射光が次のように見えることになる。
【0044】
航空機80が図2(B)に示す上限92より上方にいると、航空機80からの光は進入角度案内装置62に対し3.5度とも、3度とも、2.5度とも異なる角度で入射するため、平行反射装置102、平行反射装置104、及び平行反射装置106からの反射光の方向は航空機80とは別の方向となる。その結果、航空機80には進入角度案内装置62から全く光が反射して来ない。
【0045】
航空機80が上限92の仰角に位置している場合には、航空機80からの光は平行反射装置104のみによって反射され、航空機80の方向に戻る。平行反射装置102及び平行反射装置106からの反射光は航空機80には戻らない。その結果、航空機80からは反射光は1つだけ見える。航空機80に戻る光は平行反射装置104からのものであるから、黄色である。
【0046】
航空機80が進入線90と下限94との間にいる場合には、航空機80から平行反射装置102,104及び106への入射光の角度は3.5度、3度、2.5度のいずれとも異なるため、これらからの反射光は航空機80には戻らない。したがって航空機80から反射光は見えない。
【0047】
航空機80が進入線90上に位置している場合には、航空機80からの光は平行反射装置102のみによって反射され、航空機80の方向に戻る。平行反射装置104及び平行反射装置106からの反射光は航空機80には戻らない。その結果、航空機80からは反射光は1つだけ見える。これは平行反射装置102によるものであるから、青色である。
【0048】
航空機80が進入線90と下限94との間の位置にいる場合には、航空機80から平行反射装置102,104及び106への入射光の角度は3.5度、3度、2.5度のいずれとも異なるため、これらからの反射光は航空機80には戻らない。したがって航空機80から反射光は見えない。
【0049】
航空機80が下限94上に位置している場合には、航空機80からの光は平行反射装置102のみによって反射され、航空機80の方向に戻る。平行反射装置104及び平行反射装置106からの反射光は航空機80には戻らない。その結果、航空機80からは反射光は1つだけ見える。これは平行反射装置102によるものであるから、青色である。
【0050】
航空機80が下限94よりも下の位置にいる場合には、航空機80から平行反射装置102,104及び106への入射光の角度は3.5度、3度、2.5度のいずれとも異なるため、これらからの反射光は航空機80には戻らない。したがって航空機80から反射光は見えない。
【0051】
以上から、航空機80から見て、進入角度案内装置62から常に青色の反射光が見えるような角度で滑走路60に進入すれば、安全な降下角度であることが分かる。反射光が見えなくなって黄色い反射光が見えれば、高度が高すぎることが分かる。赤い反射光が冷えれば高度が低すぎて危険であることが分かる。航空機80では、この反射光をカメラで捉えて電気信号に変換することで自動着陸をすることが可能である。又は、反射光をカメラで捉えた映像を操縦室でモニタに表示することにより、パイロットが有視界で着陸を行なうことができる。このとき、これらの反射光の色を考慮することにより、より確実に進入角度を確認することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、航空機80において着陸時に照射する光線は白色光であり、照射範囲が絞られてはいるものの、ある広がりを持っているので、航空機80からの光が平行反射装置102,104及び106のいずれによって反射された場合も、進入角度が3.5度、3度、及び2.5度のいずれかであれば航空機80には確実に反射光が到達する。
【0053】
次に、航空機80を滑走路60への正しい進入方位に誘導するための、図2(A)に示す進入方向案内装置66について説明する。図2(A)に示す他の進入方向案内装置68,70,72についても同様の構成である。
【0054】
図6を参照して、進入方向案内装置66は、図3に示す進入角度案内装置62と同様、平行反射装置を用いたものであり、その案内方式も進入角度案内装置62と同様である。ただしここでは、進入方向案内装置66への進入角度ではなく進入方位を示すため、図6に示すような構成となっている。以下、進入方向案内装置66の構成について説明する。
【0055】
図6を参照して、進入方向案内装置66は、底面136、及び互いに直交し、かついずれも底面136に対して直角となるように設けられた3つの側壁160,162及び164を有する基礎ブロック130と、この基礎ブロック130の側壁160の内側面134に、稜線144が底面136の上面と平行になるように取付けられた平行反射装置140とを含む。底面136の上面と下面(図示せず)とは互いに平行で、かつ底面136はその上面が水平となるように地上に固定されるので、平行反射装置140の稜線144も水平となる。また、本実施の形態では、側壁164の内側面138を主表面とする。
【0056】
図7は、図6に示す進入方向案内装置66を基礎ブロック130の上方から見た平面図である。図7を参照して、平行反射装置140は、稜線144が水平となるように、かつ稜線144が面134となす角度が、面134に対する垂直線から所定角度αだけ、進入方向案内装置66の開口側に傾くよう面134に固定されている。そのため、平行反射装置140の鏡面は、面134に対して同じ角度だけ傾くことになる。その結果、線150に示されるように、平行反射装置140の2つの鏡面に直角でない面から平行反射装置140に入射する光はその光源側には反射されず、別な方向に反射される。一方、線152に示されるように2つの鏡面に直角な面(稜線144と直交する面)内で進入方向案内装置66に入射する光は平行反射装置140の2枚の鏡面で順次反射され、入射光と同じ面内の光源側に反射される。
【0057】
したがって、進入方向案内装置66の2枚の鏡面と直交する面内に航空機がいる場合には航空機からの光が平行反射装置140により反射されて航空機の方向に戻るが、そのような面以外に航空機がいる場合には、航空機からの光が平行反射装置140により反射されて航空機に戻ることはない。進入方向案内装置66の側壁164の外側面が滑走路の側部と平行となるように、かつ底面136が水平となるように進入方向案内装置66を地上に設置し、かつ安全な進行角度の限界位置となるように、角度αを決める。すると、進入方向案内装置66からの反射光が航空機に見えると、航空機は安全な進入方位を進みつつあることがわかる。つまり、航空機は、進入方向案内装置66からの反射光が見える位置まで進行方位を変更した後、その反射光が引き続いて見えるように進行方位を調整することで、航空機を安全な進入方位で進めることができる。滑走路が目視できる位置まで到達すれば、滑走路の両側に配置された再帰反射装置74及び76を目標に着陸を試みることができる。角度αは、0度より大きければよいが、あまり大きいと方向案内装置としての意味がなくなる。一方、横風の存在下では、航空機の着陸時には、風上側に向かってやや機首を向ける必要があり、そうした場合にも確実に進入方向案内装置66に着陸時の照明光が当たるようにするためには、照明の広がりも考慮してある程度の余裕を持っておく必要がある。それでも、30度程度までをカバーできれば実用上十分であると考えられる。したがって、0度<α<30度程度とすればよい。
【0058】
以上の進入方向案内装置66の構成についてまとめると以下のようになる。平行反射装置140は、1つの稜線を形成するように互いに直角に組合せた2つの反射面を有するものである。支柱148は、この稜線144が内側面132に対する直交面内にあり、かつ平行反射装置140を構成する2枚の鏡面が平行反射装置140の中心面を中心に面対称となるように、平行反射装置140を基礎ブロック130に支持している。さらに、図7に示されるように、支柱148は、内側面134及び138に対する垂線と、稜線144とがなす角度の絶対値が、αとなるように平行反射装置140を支持している。別の表現をすると、支柱148は、面134及び138と、稜線144に対する垂線149とがなす角度の絶対値がαとなるよう平行反射装置140を支持している。これはまた、支柱148は、稜線144と内側面132とがなす角度の絶対値がαとなるように平行反射装置140を支持しているということもできる。
【0059】
したがって、図2(A)に示すように、例えば側壁164の外側面が滑走路の側辺と平行となるように、基礎ブロック130の底部が水平となるように、かつ航空機の側から向かって右側に進入方向案内装置66を設置し、進入方向案内装置66と鏡像の関係になる進入方向案内装置68を向かって左側に設置すると、滑走路への安全な進入方位の両側の限界部分を航空機が容易に確認できる。
【0060】
進入角度案内装置62、進入方向案内装置66などに対して航空機から照射する光の光源としては、着陸時に点灯する地上照射用のライトを用いれば、光源を独立に設ける必要がなく都合がよい。ただし、この場合、平行反射装置の性質上、光は光源の近くに戻ってくるため、反射光の測定用のカメラを光源の近くに設置する必要がある。光源がランディング・ギアに取り付けられているような場合には、ランディング・ギアの構造が複雑になるおそれもある。こうした問題を解決するために、図8に示されるように、航空機170の機首下面に、所定方向を照射する光源と、進入角度案内装置62などからの反射光を撮影するためのカメラとを組合せた測定装置172を設けてもよい。
【0061】
[動作]
以上に構成を説明した案内システム50では、以下のようにして航空機の案内が行なわれる。
【0062】
図9(A)を参照して、構成の説明から明らかなように、滑走路60の端部の両側部に進入方向案内装置66及び68を配置し、かつ両者が互いに鏡像構造となっている場合を想定する。すると、進入方向案内装置66が光を反射する位置、すなわち安全な進入方位の限界は、たとえば線82により示されるものとなる。一方、進入方向案内装置68が光を反射する位置は、滑走路60の中心線を中心として線82に対し線対称な線84により示されるものとなる。
【0063】
図9(A)に示すように、線82より外側(図9(A)における上側)の領域210にいる航空機200から進入方向案内装置68に向けて光を照射しても、反射光は航空機200に戻ってこない。したがって、航空機200は安全な進行方向を向いていないことが分かる。線84より外側(図9における下側)の領域212に航空機がいる場合も同様である。
【0064】
線82により示される面内に航空機80が到達し、機首が進入方向案内装置66の方向を向いている場合、進入方向案内装置66からの反射光が航空機80に到達する。航空機80はこの光を検知することにより、安全な進入方位を進んでいることが判定できる。航空機80が線84により示される面内に到達した場合も同様である。
【0065】
一方、線82及び84ではさまれた領域にいる航空機80から進入方向案内装置66及び68に向けて光を照射しても、光は反射されず、航空機80に反射光が到達することはない。したがって航空機80は、一旦この位置に入った場合、進入方向案内装置66からの反射光も進入方向案内装置68からの反射光も受光しないように自身の進行方位を調製すればよい。
【0066】
一方、進入角度の案内は以下のように行なわれる。図9(B)を参照して、進入角度案内装置62の平行反射装置104(図3〜図5を参照)が光を反射する領域が上限92の位置であり、平行反射装置106が光を反射する領域が下限94により示されているものとする。上限92より上の領域240にいる航空機230には、自分が照射した光の反射光は全く届かない。したがって航空機230には、自分が、安全な進入角度範囲の外側にいることが分かる。一方、下限94より下の領域242にいる航空機232にも、反射光は全く戻らない。したがって、航空機232には、自分が安全な進入角度範囲の外側にいることが分かる。
【0067】
航空機230が上限92により示されるような角度で進入する姿勢となると、進入角度案内装置62からの黄色い反射光が航空機230に届く。したがって航空機230には、安全な進入角度範囲の上端に達したことが分かる。さらに航空機230の進入角度が小さくなり、航空機80により示される位置になると、進入角度案内装置62からの黄色い反射光は消え、青い反射光が見えるようになる。この青い反射光が見えるような進入角度で航空機80を降下させれば、航空機80は滑走路60に対する安全な進入角度を進んでいることになる。
【0068】
一方、航空機232が下限94で示されるような降下速度で滑走路60に進入しようとする場合、航空機232には平行反射装置106からの反射光が見える。この光は赤色である。その結果、航空機80には、自分が、安全な降下角度により決まる進入角度の領域の下限にいることが分かる。したがって、高度をもう少しあげ、進入角度を大きくする必要のあることが分かる。
【0069】
このように、滑走路60に着陸しようとする航空機から進入角度案内装置62並びに進入方向案内装置66及び68に対して光を照射し、その反射光の有無及び反射光の色を判定することによって、航空機の進入方向と進入角度とが安全な領域にあるか否かを判定することができる。この原理により、パイロットの目視により手動によって、又は電子的に反射光の有無及びその色を判定して自動的に、航空機が安全な進入方向及び進入高度で滑走路60に進入できるよう、航空機を操縦することができる。
【0070】
なお、滑走路60の両側には、前述したように再帰反射装置74及び76が一定間隔で複数個並べられている(図2(A)参照)。これらはその名前のとおり、入射方向がどの方向であってもその方向に入射光を反射する機能を持っている。したがって、これらからの光によって、夜間でも滑走路60の位置を確認し、安全に着陸することができる。この場合、これらからの反射光と進入角度案内装置62及び進入方向案内装置66などからの反射光とを区別するために、進入角度案内装置62、進入方向案内装置66などについてはそれぞれ別個の色のフィルタを設けることが望ましい。
【0071】
さらに、上記実施の形態では、平行反射装置を、支柱を用いて基礎ブロックに固定している。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、稜線144を、隣接する面に直接に、所定角度を持って接着するようにしてもよい。又は、平行反射装置を支持するステーを設け、平行反射装置140の姿勢が所望のものになるようにしてもよい。
【0072】
また、進入角度案内装置62と、滑走路60の反対側端部にある進入角度案内装置64についても、互いを区別するために個々の平行反射装置に装着するフィルムの色を別々にしてもよい。進入方向案内装置66、68、70及び72についても同様である。
【0073】
なお、このように平行反射装置を用いて案内装置を実現すると、次のような効果が得られる。第1に、平行反射装置は、可動部分を持たず動力も必要としない、完全にパッシブな装置である。したがってメンテナンスをする必要がないし、動作のための電力を供給する必要もない。運用に必要な費用がほぼゼロになる。また、上記した使用方法の場合、平行反射装置の再帰反射の精度は低くても十分である。そのため、たとえば反射鏡2枚を互いに直角に組合せることで容易に平行反射装置を実現することができ、コストを低く抑えることができる。もっとも、反射鏡2枚を組合せたものでなく、プリズムのような、より精度の高いものを用いてもよいことはもちろんである。
【0074】
上記実施の形態では、平行反射装置は互いにおおよそ同じ方向を向いて配置されている。しかし、空港の場合には、風向きによって滑走路を逆向きに使用する可能性がある。そうした場合のために、たとえば図3又は図6に示す装置をそれぞれ2つ、背中合わせに、すなわち平行反射装置が向いている方向が反対側となるように組合せて滑走路端部に配置することで、滑走路をどちらの方向で使用する場合も航空機で行なう処理は同じである。
【0075】
図10に、そのような進入角度案内装置260を示す。図10を参照して、この進入角度案内装置260は、底部ブロック270と、底部ブロック270の上面中央に、底部ブロック270の上面を第1の面280と第2の面282とに分割するように設けられた仕切部材272と、図3に示す平行反射装置102,104及び106と同様の順序及び設置形式で第1の面280の上に設けられた平行反射装置102,104及び106と、平行反射装置102,104及び106の配置に対し、仕切部材272の中央を中心として点対称となるような順序及び設置形式で第2の面282の上に設けられた平行反射装置292,294及び296とを含む。平行反射装置292,294及び296の稜線は、平行反射装置102,104及び106とそれぞれ同様で、第2の面282の垂線に対してそれぞれ3度、3.5度及び2.5度だけ傾いている。さらに、平行反射装置292,294及び296の前面にはそれぞれ、平行反射装置102,104及び106と同様、青、黄、赤のフィルタが設置されている。
【0076】
図10に示す進入方向案内装置260はちょうど図3に示す進入角度案内装置62の2つを、互いの基礎ブロック100の主表面110が同一面となるように、互いに組合せたものと同様の構成である。
【0077】
平行反射装置102,104及び106の組と、平行反射装置292,294及び296の組とは背中合わせに配置され、しかも点対称の位置にある平行反射装置の設置角度及びフィルタの色は互いに等しい。このようにすることにより、進入角度案内装置260を滑走路近傍に配置した場合、いずれの方向から航空機が滑走路に進入する場合も、航空機から見える反射光の角度及び色の条件が等しくなる。その結果、進入角度案内装置260を設置しておけば、滑走路の進入方向にあわせて進入角度案内装置の配置を入替えたりする必要がない。
【0078】
また、上記実施の形態は、航空機の着陸時の誘導についてのものである。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。一般的な移動体を案内するシステムにおいて、安全な進行方位及び角度と、安全でない進行方位及び角度との境界を明示するために、本発明を適用可能なことは、当業者には明らかであろう。例えば、車両及び船舶等、固定した軌道上を移動するのではない移動体に対する案内又は誘導を、このシステムを用いて行なうことができる。
【0079】
さらに、上記実施の形態の進入角度案内装置62は、3つの平行反射装置102、104及び106を備えており、進入方向案内装置66は1つの平行反射装置140のみを備えているが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。たとえば2つの平行反射装置を設けるようにしてもよい。この場合には、両者が光を反射する角度を互いに異ならせるようにすることで、空間を3つに分割して利用者に示すことができる。さらに、3つ以上の平行反射装置を使用する場合には、そのうちの2つが光を反射する角度を同じとなるようにしてもよい。3つ以上の平行反射装置を使用する場合には、それら平行反射装置を配置するパターンによって、案内装置を識別することが容易になる。
【0080】
図11に、そのような形式の進入角度案内装置320を示す。図11を参照して、進入角度案内装置320は、図3に示す基礎ブロック100と同様の、上面332を有する基礎ブロック330と、上面332に、図における左から順に配置された平行反射装置306、304、102、104及び106とを含む。
【0081】
平行反射装置102,104及び106は、図3に示すものと同じで、その配置の順番のみが異なっている。また平行反射装置102,104及び106はそれぞれ、図3において、主表面110に取付けられているのと同じ角度で上面332に取付けられている。またこれらの前面には、それぞれ青、黄、及び青のフィルムが設けられている。
【0082】
平行反射装置306は平行反射装置106と同じものであり、平行反射装置106と同じ角度で上面332に取付けられ、かつ平行反射装置106と同じく赤いフィルムがその前面に設けられている。平行反射装置304は平行反射装置104と同じものであり、平行反射装置104と同じ角度で上面332に取付けられ、かつ平行反射装置104と同じく黄色のフィルムがその前面に設けられている。
【0083】
この進入角度案内装置320では、図3に示すものと同様、平行反射装置102,104,106,304及び306からの反射光によって、航空機の進入角度が適正な値か否かが判定できる。さらに、進入角度案内装置320は左右対称となっているため、図3に示すものよりも航空機から視認することが容易で、反射光のパターンを電子的処理で認識することも容易である。
【0084】
上に述べた実施の形態では、いずれも基礎ブロックがあり、その上に平行反射装置が所定の角度を持って取付けられている。このようにしておくことにより、工場で平行反射装置を製造するときに、その取付角度をある精度で調整できるし、複数個の平行反射装置を組付けることができるので、設置現場では基礎ブロックごと所望の平坦な位置に装置を設置すればよい。
【0085】
なお、基礎ブロックの材質はアプリケーションによって適宜選択すればよい。例えば空港に設置する場合には、基礎ブロックはコンクリートとすればよい。宇宙ステーションに設置するような場合には、重量の軽い金属製で、かつ中空の筐体を用いればよい。磁石を採用すると設置が簡略になり、安定することが考えられる。
【0086】
しかし、場合によっては、設置の角度の精度がそれほど問題でない場合もあり得る。そうした場合には、設置現場で角度調節をしながら平行反射装置を適切な位置に設置できるようにしておくと便利である。
【0087】
図12に、平行反射装置の角度が調整できるような進入角度案内装置350の側面図を示す。図12を参照して、進入角度案内装置350は、稜線を形成するように互いに直角に組合わされた2枚の反射面を有する平行反射装置360を含む。平行反射装置360の2枚の反射面の下辺は、その先端側から稜線側に向かって直線的に切取られた形状をしている。反射面の下辺をこのような形状としておくことにより、平行反射装置360が自然に斜め上方を向くことになる。
【0088】
進入角度案内装置350はさらに、平行反射装置360の反射面を保護し、かつ平行反射装置360の姿勢を安定させるため、その下辺に装着される保護部材362と、平行反射装置360の反射面の稜線の後ろに平行反射装置360を支えるような形で設けられた、中空で、かつ後面下部に形成された開口部370を有する支持部材364を含む。支持部材364の下面には図示しない円形の開口が形成されている。進入角度案内装置350はさらに、支持部材364の下面の開口から上に向かって挿入され、支持部材364の内部の図示しない雌ねじと係合した調整ねじ368と、開口部370に、調整ねじ368と係合するように挿入され、調整ねじ368を上下させることで、地面352に対する進入角度案内装置350の設置角度を調整するための調整ナット366とを含む。
【0089】
調整ナット366を回転させることにより、調整ねじ368が支持部材364の下部から出入りする。その結果、調整ねじ368の、平行反射装置360の稜線に平行な方向の長さ成分が変化する。調整ナット366を回さないようにすることで、所望の長さで調整ねじを平行反射装置360に固定することができる。その結果、平行反射装置360の地面352に対する設置角度が調整ねじ368の出入り可能な長さ範囲内で自由に調整できる。
【0090】
このように平行反射装置360の取付角度を調整できるようにしておけば、簡略に、進入角度案内装置350を所望の場所に所望の角度で設置することができる。
【0091】
なお、上記した実施の形態では、反射板に入射する光は可視光線であることを前提としている。しかし、本発明はそのような実施の形態には限定されない。目視ではなく、電子機器によって反射光を検出する場合には、可視光線以外の光、例えば遠赤外線を用いることもできる。遠赤外線を用いる場合には、霧などで見通しが悪い場所であっても比較的明瞭に反射光を検出することができる。検出された遠赤外線を可視化してモニタに表示することなどにより、手動操縦に利用することもできる。
【0092】
上記した実施の形態は、空港などにおいて航空機の着陸時の航空機の案内に使用する場合についてのものである。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。飛行機に限らず、月面への着陸、宇宙空間に打ち上げられた宇宙ステーションへの宇宙船のドッキング、軌道に束縛されず自由に移動できる車両等の案内に利用することができる。そうした場合、平行反射装置の設置角度をどの程度にすべきかは、アプリケーションに依存する。例えば宇宙船又は船のように、大きく姿勢が変動することが予測される移動体の場合には、設置角度の比較的大きいものまで必要となることが予想される。したがって、複数個の平行反射装置を利用することが好ましい。
【0093】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】従来のILS20の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る案内システム50における地上設備の概略配置を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る案内システム50で用いられる進入角度案内装置62の斜視図である。
【図4】図3に示す進入角度案内装置62の平面図である。
【図5】図3に示す進入角度案内装置62の側面図及び側断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る案内システム50で用いられる進入方向案内装置66の斜視図である。
【図7】図6に示す進入方向案内装置66の平面図である。
【図8】航空機に設けられるライト及び反射光を撮影するカメラの配置を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る案内システム50によって空間がどのように分割され、航空機からどのように反射光が見えるかを説明するための図である。
【図10】案内システム50で利用可能な進入角度案内装置の他の例である進入角度案内装置260の斜視図である。
【図11】案内システム50で利用可能な進入角度案内装置のさらに他の例である進入角度案内装置320の斜視図である。
【図12】設置時に設置角度を調整可能な進入角度案内装置350の側面図である。
【符号の説明】
【0095】
50 案内システム、60 滑走路、62,64,260,320,350 進入角度案内装置、66,68,70,72 進入方向案内装置、80 航空機、90 進入線、92 上限、94 下限、102,104,106,292,294,296,304,306,360 平行反射装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を案内するための移動体案内装置であって、
主表面を有する基礎ブロックと、
稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの反射面を有する第1の反射装置と、
前記稜線が前記主表面に対する第1の直交面内にあるように、かつ前記2つの反射面が前記第1の直交面を中心に面対称となるように、前記第1の反射装置を前記基礎ブロックに支持するための第1の支持手段とを含み、
前記第1の支持手段は、前記主表面に対する垂線と、前記稜線とがなす角度の絶対値が、0度より大きくかつ30度よりも小さい第1の値となるように前記第1の反射装置を支持する、移動体案内装置。
【請求項2】
稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの反射面を有する第2の反射装置と、
前記第2の反射装置の前記稜線が前記主表面に対する第2の直交面内にあるように、かつ当該第2の反射装置の前記2つの反射面が前記第2の直交面を中心に面対称となるように、前記第2の反射装置を前記基礎ブロックに支持するための第2の支持手段とを含み、
前記第2の支持手段は、前記主表面に対する垂線と、前記第2の反射装置の前記稜線とがなす角度の絶対値が、0度より大きくかつ5度よりも小さく、かつ前記第1の値と異なる第2の値となるように前記第2の反射装置を支持する、請求項1に記載の移動体案内装置。
【請求項3】
稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの反射面を有する第3の反射装置と、
前記第3の反射装置の前記稜線が前記主表面に対する第3の直交面内にあるように、かつ当該第3の反射装置の前記2つの鏡面が前記第3の直交面を中心に面対称となるように、前記第3の反射装置を前記基礎ブロックに支持するための第3の支持手段とを含み、
前記第3の支持手段は、前記主表面に対する垂線と、前記第3の反射装置の前記稜線とがなす角度の絶対値が、前記第2の値となるように、前記第3の反射装置を支持する、請求項1に記載の移動体案内装置。
【請求項4】
前記第3の支持手段はさらに、前記第3の反射装置が、前記第1の直交面に関して前記第2の反射装置と面対称となるように、前記第3の反射装置を支持する、請求項3に記載の移動体案内装置。
【請求項5】
稜線を形成するように互いに直角に組合された2つの鏡面を有する第2の反射装置と、
前記第2の反射装置の前記稜線が前記第1の直交面内にあるように、かつ当該第2の反射装置の前記2つの鏡面が前記第1の直交面を中心に面対称となるように、かつ前記第2の反射装置が、前記主表面及び前記第1の直交面の双方と直交する第2の直交面に関し、前記第1の反射装置と面対称となるように、前記第2の反射装置を前記基礎ブロックに支持するための第2の支持手段とをさらに含む、請求項1に記載の移動体案内装置。
【請求項6】
請求項2に記載の2つの移動体案内装置を、互いの基礎ブロックの前記主表面が同一面となるように、互いに背中合わせに組合せた、移動体案内装置。
【請求項7】
前記2つの移動体案内装置のうち、一方の移動体案内装置に属する反射装置には、互いに異なる色の光透過性のフィルムが設けられており、他方の移動体案内装置に属する反射装置には、それぞれ前記一方の移動体案内装置に属する、同じ角度で前記主表面に取付けられた反射装置のフィルムと同じ色の光透過性のフィルムが設けられている、請求項6に記載の移動体案内装置。
【請求項8】
互いに異なる反射装置には、互いに異なる色の光透過性のフィルムが設けられている、請求項2〜請求項5のいずれかに記載の移動体案内装置。
【請求項9】
前記第1の反射装置には第1の色の光透過性フィルムが設けられており、
前記第2及び第3の反射装置には、前記第1の色と異なる第2の色の光透過性フィルムが設けられている、請求項4に記載の移動体案内装置。
【請求項10】
移動体を案内するための移動体案内装置であって、
稜線を形成するように互いに直角に組合わされ、かつ前記稜線を含む所定の対称面に関して互いに面対称な形状の2つの反射面を有する反射装置と、
前記反射装置に取付られ、少なくとも前記反射装置の前記稜線と平行な方向の長さが調整可能で、かつ所望の長さで前記反射装置に固定可能な長さ調整装置とを含む、移動体案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−252031(P2009−252031A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100585(P2008−100585)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年10月10日 社団法人日本航空宇宙学会、社団法人日本航空技術協会、社団法人日本気象学会発行の、「第45回飛行機シンポジウム講演集(CD−ROM)」に発表
【出願人】(397057809)株式会社津村総合研究所 (5)
【Fターム(参考)】