説明

移動体通信中継システムおよび通信装置

【課題】 移動体通信における屋内などの電波状態を改善するシステムを低コストで提供する。
【解決手段】 屋内通信補助装置12は、室内に備えられた接続口13を介して取り外し可能に既存の屋内配線14に接続され、移動体通信の移動端末11と無線で送受信する移動体通信信号を中継し、屋内配線14にて送受信する。外部通信補助装置15は、屋内配線14に接続されており、移動体通信のアンテナ塔16と無線で送受信する移動体通信信号を中継し、屋内配線14にて屋内通信補助装置12との間で送受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信の屋内での端末の利用を可能とするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信では、移動端末と基地局のアンテナ塔との間の電波状態が悪いと、電話がかからなかったり、通話が途切れたりなどの不都合が生じる。そのような場合の対応として、移動端末の利用者が電波状態の良い場所に移動して通信を行っており、電波状態の改善が望まれる。
【0003】
電波状態を改善する方法として、基地局を増設して不感地帯を少なくする方法がある。しかし、このような方法では、設備投資と採算との兼ね合いの問題があり、小規模な場所の電波状態の改善に限界がある。
【0004】
また、基地局のパラメータを調整して電波状態を改善する方法がある。しかし、このような方法では、基地局との間が完全に遮断された場所の電波状態を改善することはできない。
【0005】
また、電波の増幅を行う装置を設置して電波状態を改善する方法もあるが、これも同様に完全に遮断された場所の電波状態を改善できず、さらに人体への影響も懸念される。
【0006】
また、電波の中継を行う装置を設置して電波状態を改善する方法もある(例えば、特許文献1参照)。これによれば、比較的小規模な場所にも設置が可能であり、またケーブルの利用により完全に遮断された場所の改善も可能である。
【特許文献1】特開2004−72154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電波の中継を行う装置を設置して電波状態を改善する方法を用いる場合、装置の設置に伴って、建物の内部または外部にケーブルの敷設が必要となる。既存の建物に新たなケーブル配線を行うことになるので工事コストが高くなる。
【0008】
本発明の目的は、移動体通信における屋内などの電波状態を改善するシステムを低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の移動体通信中継システムは、移動体通信の電波状態を改善する移動体通信中継システムであって、
室内に備えられた接続口を介して取り外し可能に既存の屋内配線に接続され、前記移動体通信の移動端末と無線で送受信する移動体通信信号を中継し、前記屋内配線にて送受信する屋内通信補助装置と、
前記屋内配線に接続されており、前記移動体通信のアンテナ塔と無線で送受信する移動体通信信号を中継し、前記屋内配線にて前記屋内通信補助装置との間で送受信する外部通信補助装置とを有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屋内通信補助装置と外部通信補助装置が、既存の屋内配線を利用して、移動端末とアンテナ塔の間の移動体通信信号を中継するので、新たな配線を敷設することなく低コストで、屋内などの移動体通信の電波状態を改善し、良好な通信を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態による移動体通信中継システムの構成を示すブロック図である。図1を参照すると、屋内通信補助装置12および外部通信補助装置15を有している。
【0013】
屋内通信補助装置12と外部通信補助装置15は、屋内配線14によって相互に接続されている。屋内配線14は、既存の配線であり、例えば、電話配線、商用電源配線、光ファイバケーブル、テレビアンテナ用同軸ケーブルなどである。屋内通信補助装置12は、接続口として建物18の室内17に備えられたモジュラージャックまたはコンセントなどのコネクタ13を介して屋内配線14に接続されている。
【0014】
屋内通信補助装置12は、移動体通信の無線インタフェースで移動端末11と電波の送受信が可能である。また、外部通信補助装置15は、移動体通信の無線インタフェースで基地局のアンテナ塔16と電波の送受信が可能である。
【0015】
図2は、屋内通信補助装置の構成を示すブロック図である。図2を参照すると、屋内通信補助装置12は、移動体通信インタフェース21、変換部22、および屋内配線インタフェース23を有している。
【0016】
移動体通信インタフェース21は、移動体通信の無線インタフェースで、移動体通信の通信信号(以下、「移動体通信信号」という)を移動端末11との間で送受信する。移動体通信信号は、通話音声、通信データ、制御情報など、移動体通信の無線インタフェースで送受信される各種の信号を広く含むものとする。
【0017】
屋内配線インタフェース23は、外部通信補助装置15との間で、屋内配線14の物理インタフェースを利用して移動体通信信号を送受信する。
【0018】
変換部22は、移動体通信の無線インタフェースの移動体通信信号を、屋内配線14の物理インタフェースに適合するように必要に応じて変換する。屋内配線14が無線インタフェースの信号をそのまま疎通可能な特性を有していれば、変換部22は、バンドパスのフィルタリングとレベル変換の増幅を行う程度でよい。屋内配線14の疎通可能な周波数帯域が無線インタフェースと異なる場合には、変換部22は周波数変換を行う必要がある。また、屋内配線が光ファイバであれば、変換部22は、光電気変換および電気光変換を行う。
【0019】
図3は、外部通信補助装置の構成を示すブロック図である。図3を参照すると、外部通信補助装置15は、移動体通信インタフェース31、変換部32、および屋内配線インタフェース33を有している。
【0020】
移動体通信インタフェース31は、移動体通信の無線インタフェースで、移動体通信信号をアンテナ塔16との間で送受信する。
【0021】
屋内配線インタフェース33は、屋内通信補助装置12との間で、屋内配線14の物理インタフェースを利用して移動体通信信号を送受信する。
【0022】
変換部32は、屋内通信補助装置12の変換部22と対向しており、移動体通信の無線インタフェースの移動体通信信号を、屋内配線14の物理インタフェースに適合するように必要に応じて変換する。屋内配線14が無線インタフェースの信号をそのまま疎通可能な特性を有していれば、変換部32は、バンドパスのフィルタリングとレベル変換の増幅を行う程度でよい。屋内配線14の疎通可能あるいは利用可能な周波数帯域が無線インタフェースと異なる場合には、変換部32は周波数変換を行う必要がある。また、屋内配線が光ファイバであれば、変換部32は、光電気変換および電気光変換を行う。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の移動体通信中継システムによれば、屋内通信補助装置12と外部通信補助装置15が、既存の屋内配線14を利用して、移動端末11とアンテナ塔16の間の移動体通信信号を中継するので、新たな配線を敷設することなく低コストで、屋内などの移動体通信の電波状態を改善し、良好な通信を確保することができる。
【0024】
なお、本実施形態の移動体通信中継システムにおいて、屋内配線14を商用電源配線とし、屋内通信補助装置12を移動端末11用の充電器と一体に構成することとしてもよい。例えば、自宅室内の電波状態が悪い場合に、充電器をコンセントに差し込んでおけば、自宅室内での良好な通信が可能となる。
【0025】
また、本実施形態の移動体通信中継システムにおいて、屋内配線14をテレビアンテナ用同軸ケーブルとし、屋内通信補助装置12に、屋内配線14から受信したテレビ信号を無線送信する機能を追加してもよい。電波状態の悪い室内でテレビ受信機能付き携帯電話を使う場合に、良好な通信が可能になると共に良好なテレビ受信も可能になる。あるいは、外部通信補助装置15に、テレビ信号を受信し、屋内配線14の物理インタフェースで送信する機能を追加してもよい。屋内配線14がテレビアンテナ用同軸ケーブルでなくても、システムの設置が可能であり、テレビ受信受信機能つき携帯電話の良好なテレビ受信が可能となる。
【0026】
また、本実施形態の移動通信中継システムにおいて、屋内配線14を電話配線とし、屋内通信補助装置12をPSTNやISDNなどの固定電話機と一体に構成することとしてもよい。室内に固定電話機を設置するだけでよく、専用の装置を別途設置する必要がないので、室内あるいは卓上のスペースを有効に活用することができる。さらに、屋内通信補助装置12と一体に構成した固定電話機に、移動端末11を子機として用いる機能を追加してもよい。子機登録した移動端末11は一般電話回線により低料金で接続し、子機登録していない移動端末11は良好な移動体通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による移動体通信中継システムの構成を示すブロック図である。
【図2】屋内通信補助装置の構成を示すブロック図である。
【図3】外部通信補助装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
11 移動端末
12 屋内通信補助装置
13 コネクタ
14 屋内配線
15 外部通信補助装置
16 アンテナ塔
17 室内
18 建物
21、31 移動体通信インタフェース
22、32 変換部
23、33 屋内配線インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信の電波状態を改善する移動体通信中継システムであって、
室内に備えられた接続口を介して取り外し可能に既存の屋内配線に接続され、前記移動体通信の移動端末と無線で送受信する移動体通信信号を中継し、前記屋内配線にて送受信する屋内通信補助装置と、
前記屋内配線に接続されており、前記移動体通信のアンテナ塔と無線で送受信する移動体通信信号を中継し、前記屋内配線にて前記屋内通信補助装置との間で送受信する外部通信補助装置とを有する移動体通信中継システム。
【請求項2】
前記屋内通信補助装置は、前記移動端末と無線で送受信する前記移動体通信信号を、前記屋内配線で伝送可能な形式に変換して、前記屋内配線で前記外部通信補助装置と送受信し、
前記外部通信補助装置は、前記アンテナ塔と無線で送受信する前記移動体通信信号を、前記屋内配線で伝送可能な形式に変換して、前記屋内配線で前記屋内通信補助装置と送受信する、請求項1に記載の移動体通信中継システム。
【請求項3】
前記屋内配線は、電話配線、商用電源配線、光ファイバケーブル、またはテレビアンテナ用同軸ケーブルのいずれかである、請求項1または2に記載の移動体通信中継システム。
【請求項4】
前記屋内配線は商用電源配線であり、
前記屋内通信補助装置は、商用電源のコンセントに接続される移動端末用充電器と一体に構成されている、請求項1または2に記載の移動体通信中継システム。
【請求項5】
前記屋内配線はテレビアンテナ用同軸ケーブルであり、
前記屋内通信補助装置は、前記屋内配線から受信したテレビ信号を無線送信する機能をさらに有する、請求項1または2に記載の移動体通信中継システム。
【請求項6】
前記外部通信補助装置は、テレビ信号を受信し、屋内配線にて送信する機能をさらに有し、
前記屋内通信補助装置は、前記屋内配線から受信した前記テレビ信号を無線送信する機能をさらに有する、請求項1または2に記載の移動体通信中継システム。
【請求項7】
前記屋内配線は電話配線であり、
前記屋内通信補助装置は、前記電話配線のモジュラージャックに接続される固定電話機と一体に構成されている、請求項1または2に記載の移動体通信中継システム。
【請求項8】
前記屋内通信補助装置と一体に構成された前記固定電話機は、前記移動端末を子機として用いる機能をさらに有する、請求項1または2に記載の移動体通信中継システム。
【請求項9】
屋内と外部の通信装置による中継で移動体通信の電波状態を改善する移動体通信中継システムにおける屋内側の通信装置であって、
前記移動体通信の移動端末と移動体通信信号を無線で送受信する移動体通信インタフェースと、
移動体通信信号をアンテナ塔と無線で送受信する外部側の通信装置との間で既存の屋内配線を介して前記移動体通信信号を送受信するために、室内に備えられた接続口を介して取り外し可能に前記屋内配線に接続される屋内配線インタフェースと、
前記移動体通信インタフェースと前記屋内配線インタフェースの間で前記移動体通信信号の変換を行う変換部とを有する通信装置。
【請求項10】
屋内と外部の通信装置による中継で移動体通信の電波状態を改善する移動体通信中継システムにおける外部側の通信装置であって、
前記移動体通信のアンテナ塔と移動体通信信号を無線で送受信する移動体通信インタフェースと、
移動体通信信号を移動端末と無線で送受信する屋内側の通信装置との間で既存の屋内配線を介して前記移動体通信信号を送受信するために前記屋内配線に接続された屋内配線インタフェースと、
前記移動体通信インタフェースと前記屋内配線インタフェースの間で前記移動体通信信号の変換を行う変換部とを有する通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−80745(P2006−80745A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260884(P2004−260884)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】