説明

移動式土壌ガス調査孔作製装置

【課題】土壌ガス調査用のサンプルを採取するために、その調査地点が、被覆地であっても作業者に大きな肉体的負担をかけずに削孔でき、かつ沢山の地点での削孔を極めて効率的に行えるようにした移動式の土壌ガス調査孔作製装置を提供すること。
【解決手段】台車1には、柱1dが立設され、そこに、ハンマードリル5を取り付けた昇降部材2が、ハンドル操作によって、上下動可能かつ回転可能に取り付けられている。また、台車1には、エンジン発電機3と粉塵回収装置4が搭載されており、粉塵回収装置4のホース4aの先端には、カバー部材4bが取り付けられている。そして、ハンマードリル5には、コンクリートの削孔用ドリル刃6と、土壌削孔用バー7と、保護管打ち込み用バー8とを、選択的に取り付け得るようになっていて、コンクリートを削孔する場合には、発生する粉塵を粉塵回収装置4に回収しながら行えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調査の目的で土壌ガスを採取するのに先立って、被覆地及び裸地の削孔、及び土壌ガス採取用保護管の設置を行う移動式の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染が大きな社会問題となっており、土壌汚染については、土壌汚染対策法に基づき、土壌内に含まれている各種重金属や揮発性有機化合物の調査が行われているが、そのうち、土壌ガスを調査する場合には、サンプルとするガスは、対象地の表層土壌を削孔して採取すること、と定められている。そのため、対象地が、裸地の場合には、土壌削孔用バー(ボーリングバー)で削孔して、作業者が、そこに保護管を挿入しているが、コンクリートやアスファルト舗装などの被覆地の場合には、土壌削孔用バー(ボーリングバー)で土壌を削孔する前に、先ずそれらのコンクリートやアスファルトなどを、専用のドリル刃を用いたハンマードリル等で削孔していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来は、ハンマードリルでコンクリートやアスファルトを削孔する場合、ハンマードリルを手に持って行い、ドリル刃の引き抜きも人力で行っていたため、作業者の肩や腰に非常に大きな負担がかかるという問題点があった。また、場所によっては、電源を特別に用意しなければならない場合があった。また、操業が行われている工場内などの床コンクリートを削孔する場合には、削孔によって生じる粉塵が問題となるため、特別に粉塵の回収装置を用意する必要があった。また、最後に保護管を設置するときには、作業者が、地表下50cmまで挿入していたため、特に被覆地の場合には、簡単な作業とは言えなかった。しかも、このように、作業者に対する肉体的な負担が多く、かつ調査地点の種々な条件に個々に対応しなければならないため、広範囲な調査対象地に数多くの削孔を行う場合には、極めて非効率的であるという問題点があった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、土壌ガス調査用のサンプルを採取するに際し、その調査地点が、被覆地であっても裸地であっても、また工場内のようなところであっても屋外であっても、作業者に大きな肉体的な負担をかけることなく好適に削孔でき、かつ調査対象地が広範囲にわたっていても、沢山の地点での削孔を極めて効率的に行えるようにした移動式の土壌ガス調査孔作製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の移動式土壌ガス調査孔作製装置は、台車に、コンクリート,石材,アスファルト等の被覆地及び裸地を削孔するハンマードリルと、前記被覆地の削孔時に発生する粉塵の飛散を防止のために該粉塵を吸引して回収する粉塵回収装置と、前記ハンマードリルと前記粉塵回収装置を稼動させるためのエンジン発電機とを搭載しており、前記ハンマードリルは、少なくとも、前記被覆地の削孔用部品と、土壌削孔用部品と、土壌ガス採取用保護管の設置用部品とを選択的に取り付け得るようにする。また、前記台車には、移動時に用いる手押し部と、作業時に用いる車輪ストッパーと、前記ハンマードリルを上下動可能に取り付ける設置用支柱とが備えられているようにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の移動式土壌ガス調査孔作製装置は、台車に、ハンマードリルと、粉塵回収装置と、エンジン発電機とを搭載しているので、調査対象地の面積が大きい場合でも、それらの移動が容易に行え、かつ調査地が屋外の場合であっても電源確保の心配をする必要がなく、沢山の地点での削孔を効率的に行える。また、調査地点が、コンクリート、石材、アスファルト等の被覆地であったとしても、作業者は、ハンマードリルを手に持って作業する必要がないので、肉体的な負担は殆どない。更に、被覆地での削孔には粉塵回収装置を稼動すれば、周囲に粉塵をあげることもないし、その後、サンプルを採取しても、サンプル内に微細な粉塵が入っているようなこともないので、適正なサンプルを採取するまでの時間を短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の移動式土壌ガス調査孔作製装置は、台車に、コンクリート,石材,アスファルト等の被覆地及び裸地を削孔するハンマードリルと、被覆地の削孔時に発生する粉塵の飛散を防止のために粉塵を吸引して回収する粉塵回収装置と、ハンマードリルと粉塵回収装置を稼動させるためのエンジン発電機とを搭載していて、調査地点間でのそれらの移動を容易にし、調査地点が裸地の場合には、ハンマードリルに、土壌削孔用部品と、土壌ガス採取用保護管の設置用部品とを順に付け替えて作業を行い、調査地点が被覆地の場合には、その前に、ハンマードリルに被覆地の削孔用部品を取り付け、粉塵回収装置を稼動させながら削孔を行えるようにしたものである。そこで、そのような移動式の土壌ガス調査孔作製装置の実施例を、図1を用いて説明する。
【実施例】
【0008】
先ず、本実施例の構成を説明する。台車1は、手押し部1aと、四つの車輪1bとを有していて、それらの車輪1bの少なくとも二つには、車輪ストッパー1cが設けられている。本実施例の場合、この台車1は、人力で手押し部1aを押したり引いたりすることによってのみ、移動させることが可能になっているが、この台車1には、後述のエンジン発電機3が搭載されているので、モータによっても車輪1bを回転させることを可能にし、その操作スイッチを手押し部1aに設けるようにしても差し支えない。また、台車1の本体上には、柱1dが立設されていて、そこに、昇降部材2が上下動可能に取り付けられているが、この昇降部材2は、柱1dに対して回転させることも可能になっている。尚、図示していないが、本実施例の場合には、この昇降部材2は、ハンドル操作で上下動及び回転をさせられるようになっている。しかしながら、スイッチ操作による電動式にしても差し支えない。
【0009】
また、台車1の本体上には、エンジン発電機3と粉塵回収装置4が重ねて載せられており、エンジン発電機3は本体に対し、また、粉塵回収装置4はエンジン発電機3に対し、各々、削孔中の振動に耐え得るようにして分離可能に取り付けられている。そして、粉塵回収装置4は、ホース4aの先端に、植木鉢を伏せたような形状のカバー部材4bを取り付けていて、エンジン発電機3とは配線3aで電気的に接続されており、カバー部材4bのところから粉塵を吸引して回収し、貯蔵できるようになっている。また、昇降部材2には、回転・打撃の切り替えられるハンマードリル5が着脱可能に取り付けられ、エンジン発電機3とは配線3bで電気的に接続されている。そして、本実施例の場合、このハンマードリル5は、少なくとも、コンクリートやアスファルトなどの削孔用ドリル刃6と、土壌削孔用バー7と、保護管打ち込み用バー8とを選択して取り付けることが可能になっている。
【0010】
次に、実際に、調査孔を作製する場合について説明する。但し、既に説明したように、本発明の調査孔作製装置は、被覆地を削孔することも、裸地を削孔することもできる装置である。しかしながら、被覆地を削孔する場合には、被覆しているコンクリートなどを削孔した後は、裸地を削孔する場合と同じ作業をすることになる。そのため、以下においては、重複説明を避けるために、コンクリートで被覆されている地点で調査孔を作製する場合についてだけ説明することにする。
【0011】
先ず、車輪ストッパー1cを操作して、削孔地点の近傍位置に台車1を固定し、ハンマードリル5にコンクリートの削孔用ドリル刃6を取り付ける。また、粉塵回収装置4のホース4aを伸ばし、カバー部材4bを削孔地点の上に植木鉢を伏せたようにして置く。そして、昇降部材2を上下動及び回転させることによって、削孔用ドリル刃6の先端を、カバー部材4bに設けられた孔に上方から挿入する。このようにした後、一方では粉塵回収装置4を稼動させ、他方ではハンマードリル5によって削孔用ドリル刃6を回転させておき、ハンドル操作により、ハンマードリル5を徐々に下降させていくことによって、コンクリートに削孔する。このとき、コンクリートから粉塵が飛散するが、それらは、ホース4aに吸引されてゆき、粉塵回収装置4内に収容される。削孔後は、削孔用ドリル刃6を逆回転させながらハンマードリル5を上昇させ、削孔用ドリル刃6をカバー部材4bの上方へ引き抜く。そして、しばらくしてから、粉塵回収装置4の稼動を停止し、カバー部材4を取り除くようにするため、浮遊していた微細なものも含めて殆どの粉塵は粉塵回収装置4に収容されることになる。
【0012】
そこで、次に、ハンマードリル5から削孔用ドリル刃6を取り外し、代わりに土壌削孔用バー7を取り付けて、その先端を地表面まで下降させる。そして、ハンドル操作とハンマードリル5の打撃力により、深度1mまでバーを挿入した後、ハンマードリル5の作動を停止させて上昇させ、土壌削孔用バー7を引き抜く。次に、ハンマードリル5から土壌削孔用バー7を取り外し、代わりに保護管打ち込み用バー8を取り付け、ハンドル操作とハンマードリル5の打撃力により、深度50cmまでステンレス製の保護管を挿入する。その後は、ハンマードリル5の作動を停止させて上昇させ、保護管打ち込み用バー8を引き抜くことによって、その地点での調査孔の作製が終了する。
【0013】
このようにして、1箇所での調査孔の作製が終了すると、次の調査孔作製地点へ移動することになるが、その場合には、コンクリートの削孔用ドリル刃6と土壌削孔用バー7を台車1の上に載せ、車輪ストッパー1cによる回転止めを解除すれば、保護管打ち込み用バー8をハンマードリル5に取り付けたままの状態でも、手押し部1aを押すことによって敏速に、しかも楽に移動することができる。そのため、特に、広範囲な屋外領域において沢山の削孔作業を行う場合などは、極めて効率的に行え、かつ従来よりも作業に係わる人手及び労力を低減することが可能になる。
【0014】
尚、本実施例においては、ハンマードリル5に、コンクリートの削孔用ドリル刃6と、土壌削孔用バー7と、保護管打ち込み用バー8とを選択的に取り付ける場合で説明したが、それらに加えて、例えば石材の削孔用ドリル刃のように、それら以外のものを取り付けるようにしてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例の概略的な構成を示した図である。
【符号の説明】
【0016】
1 台車
1a 手押し部
1b 車輪
1c 車輪ストッパー
1d 柱
2 昇降部材
3 エンジン発電機
3a,3b 配線
4 粉塵回収装置
4a ホース
4b カバー部材
5 ハンマードリル
6 削孔用ドリル刃
7 土壌削孔用バー
8 保護管打ち込み用バー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に、コンクリート,石材,アスファルト等の被覆地及び裸地を削孔するハンマードリルと、前記被覆地の削孔時に発生する粉塵の飛散を防止のために該粉塵を吸引して回収する粉塵回収装置と、前記ハンマードリルと前記粉塵回収装置を稼動させるためのエンジン発電機とを搭載しており、前記ハンマードリルは、少なくとも、前記被覆地の削孔用部品と、土壌削孔用部品と、土壌ガス採取用保護管の設置用部品とを選択的に取り付け得るようにしたことを特徴とする移動式土壌ガス調査孔作製装置。
【請求項2】
前記台車には、移動時に用いる手押し部と、作業時に用いる車輪ストッパーと、前記ハンマードリルを上下動可能に取り付ける設置用支柱とが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の移動式土壌ガス調査孔作製装置。

【図1】
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