説明

移動航跡表示装置

【課題】移動航跡表示装置において、レーダ航跡を物標の大きさに関わらず且つ所要の時点で細線化して表示する。また、細線化された航跡表示を、所定の条件に従って、直線化して表示及びデータ蓄積を可能とすること。
【解決手段】原航跡情報を、細線化航跡情報に変換して表示することにより、同じ領域(海域)で複数の船舶等が漁を行っている場合などにも、表示画面の該当エリアがレーダ航跡での塗りつぶしを無くす。また、細線化航跡情報を、さらに直線化航跡情報に変換することにより、表示画面上の航跡表示をよりシンプルに表現できる。また、直線化航跡情報は、抽出化直線をその始点と終点の位置を表す数値データに変換して、保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、ソーナ装置等の物標探知装置における受信信号に基づいて、周囲に存在する物標の移動航跡を表示する移動航跡表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の安全且つ効率的な運行及び操業に役立てるために、従来から自船周囲における他船などの存在を検出しその位置などをPPI(Plan Position Indicator)等の型式で表示するレーダ装置が各種船舶に搭載されている。船舶に搭載されるレーダ装置の多くは一次レーダ装置であり、自船から探知信号を無線送信し他船などの反射物体(即ち、物標)による反射波(即ち、エコー)を受信して、当該物標の存在を表示装置上に表示する。また、レーダ装置またはこれに関連する船載機器に、物標の移動航跡を表示する機能を設けることが広く行われている(特許文献1)。
【0003】
図11に、船舶に搭載されるレーダ装置の従来の構成例を示す。但し、この図11において、レーダアンテナ、送信部、相関処理回路、グラフィックス表示制御回路など、航跡表示に直接関係しない構成に関しては、図示を省略している。
【0004】
船舶用レーダにおいては、通常、船舶上の見晴らしの良い箇所に設けたレーダアンテナにより、送信部から供給される探知信号が無線送信される。レーダアンテナは略水平の面内で所定速度で回転しつつこの送信を行い、他船などの物標からのエコーを受信する。
【0005】
レーダアンテナにより受信されたエコーは、受信部11において検波及び増幅され、A/D変換部12において、A/D変換され、バッファメモリ13により時系列的に一旦記憶される。
【0006】
このエコーデータは、探知信号の送信からエコーの受信までに要した時間(自船と物標との間の距離Rに対応する)と、探知信号及びエコーの送受信方向即ちレーダアンテナの角度位置(相対方位θ)とに対応づけられている極座標準拠のデータである。この極座標準拠のエコーデータを、バッファメモリ13から表示用メモリ16への転送格納の際に信号処理座標変換部14がアドレス制御によって、極座標から直交座標に座標変換する。
【0007】
さらに、直交座標型式に対応した記憶空間を提供する表示用メモリ16上のデータに基づき、ラスタスキャン方式の表示器17の画面上にエコーを含むレーダ映像がPPI表示される。
【0008】
また、船舶用レーダ装置には、航跡表示機能を設けることができる。航跡表示機能は、エコーデータを時系列的に蓄積することにより航跡データを作成し、作成した航跡データに基づき物標の航跡即ちその物標が過去所定時点から現在までにたどった道筋を示す映像を表示させる機能である。図11では、航跡処理部15によりバッファメモリ13上のエコーデータに基づき航跡データが作成され、表示用メモリに格納される。航跡表示させる旨の指示がスイッチ操作などにより使用者から与えられている場合にその航跡データが表示用メモリ16から読み出され、表示器17の画面上に航跡が表示される。
【0009】
このとき、表示用メモリ16上のエコーデータや、図示しない回路からのグラフィック系の情報をも利用して、表示器17の画面上にエコー/航跡/グラフィックスを表示させることができる。
【0010】
このように表示される航跡は、他船の進路、速度の判定や、底引き漁船などにおいては他船が漁を行った場所の特定に利用される。
【特許文献1】特開平5−281331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の航跡表示装置では、レーダ航跡は物標の大きさにしたがって太く表示されるので、同じ海域(エリア)で複数の船舶が漁を行っている場合などには、表示画面の該当エリアがレーダ航跡で塗りつぶされ、他船の操業状態や、その動向を監視することが困難になる。
【0012】
また、レーダ航跡は、通常、揮発性メモリにデータを蓄えるため、航跡表示装置の電源を切るとデータが失われることになる。これを避けるために、保存しておきたい他船の航跡などは、ライン描画機能などを利用してレーダ航跡をなぞるようにラインを描画し、不揮発性メモリに保存することが行われる。この場合、操作者が保存したい航跡を連続ラインとして入力する必要があり、操作者の負担が大きくなる。また、レーダ航跡を画像データで保存すると、不揮発性メモリの容量が大きくなってしまう。
【0013】
本発明は、物標探知装置における受信信号に基づいて、周囲に存在する物標の移動航跡を表示する移動航跡表示装置において、レーダ航跡を物標の大きさに関わらず且つ所要の時点で細線化して表示することを目的とする。
【0014】
また、細線化された航跡表示を、所定の条件に従って、直線化して表示及びデータ蓄積を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の移動航跡表示装置は、送信信号を送信し物標からの反射波を受信する探知装置による受信信号に基づいて、前記探知装置の周囲に存在する物標の位置が、過去所定時間から現在までにどのように変化したかを表す原航跡情報を作成する航跡処理部と、該航跡処理部からの原航跡情報を記憶し、表示部へ出力し得る表示用メモリとを備える移動航跡表示装置において、
細線化処理指令を受けて、前記表示用メモリから原航跡情報を入力し、原航跡情報の中央部分を残す細線化処理を施して細線化航跡情報を作成し、この細線化航跡情報を前記表示用メモリへ出力し、対応する原航跡情報に代えて記憶させるデータ変換部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2の移動航跡表示装置は、請求項1に記載の移動航跡表示装置において、前記データ変換部は、
さらに直線化処理指令を受けて、前記表示用メモリから細線化航跡情報を入力し、抽出した抽出化直線をその始点と終点の位置を表す数値データに変換する直線化処理を施して直線化航跡情報を作成し、この直線化航跡情報に基づく直線を前記表示メモリへ出力し、対応する細線化航跡情報に代えて記憶させることを特徴とする。
【0017】
請求項3の移動航跡表示装置は、請求項2に記載の移動航跡表示装置において、前記直線化処理は、
細線化された細線化航跡情報を含む対象画像をスキャンして、値を持つピクセルを対象ピクセルとして、隣接する対象ピクセルを順次検出し、
一番目の対象ピクセルとn番目(n≧2)の対象ピクセルとを結ぶ直線を中心として幅がmピクセル(m≧2)の直線抽出帯を形成し、
前記n番目の対象ピクセルから前記直線抽出帯と重ならない対象ピクセルの直前の対象ピクセルと、一番目の対象ピクセルとを結ぶ直線を抽出して抽出化直線とすることを特徴とする。
【0018】
請求項4の移動航跡表示装置は、請求項2または3に記載の移動航跡表示装置において、前記抽出化直線の始点と終点の位置を表す数値データを、不揮発性のメモリを有するデータ記憶部に読み出し可能に記憶することを特徴とする。
【0019】
請求項5の移動航跡表示装置は、請求項1に記載の移動航跡表示装置において、前記細線化処理は、原航跡情報の各ピクセルのデータを互いに範囲が重ならない複数のデータ範囲に区分し、その各データ範囲毎に細線化処理を行って、細線化された航跡情報を得ることを特徴とする。
【0020】
請求項6の移動航跡表示装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の移動航跡表示装置において、前記データ変換部には、処理範囲指定信号が入力され、前記直線化処理及びまたは細線化処理を行う範囲を指定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の移動航跡表示装置によれば、原航跡情報(原レーダ航跡)は物標の大きさにしたがって太く表示されるが、細線化航跡情報に変換して表示することにより、同じ領域(海域)で複数の船舶等が漁を行っている場合などにも、表示画面の該当エリアがレーダ航跡で塗りつぶされることがなくなり、他船の操業状態や、その動向を監視を適切に行うことができる。
【0022】
また、細線化航跡情報を、さらに直線化航跡情報に変換することにより、表示画面上の航跡表示をよりシンプルに表現できる。また、直線化航跡情報は、抽出化直線をその始点と終点の位置を表す数値データに変換されるから、その数値データをデータ記憶部のきわめて少ない記憶領域に記憶させることができる。
【0023】
また、細線化処理及びまたは直線化処理を行う範囲を、入力される処理範囲指定信号にしたがって指定するから、他船の操業データなどの所要の部分のみを細線化、直線化することができ、且つ、その部分のみを数値データとして、データ記憶部に読み出し可能に記憶させる。これにより、他船の操業データなどの所要の部分を、必要に応じて再現できる。
【0024】
また、原航跡情報の各ピクセルのデータを互いに範囲が重ならない複数のデータ範囲に区分し、その各データ範囲毎に細線化処理を行うから、同じ領域(海域)で複数の船舶等の原航跡情報同士が重なってしまった後でも、細線化された画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明に係る移動航跡表示装置の実施例を示す図である。以下の説明では、船舶用レーダ装置における他船の移動航跡の表示を例として説明する。勿論、船舶以外の移動物体(例えば、航空機や潜水艦など)の移動航跡にも適用できるし、レーダ装置以外の例えばソーナ装置などの無線探知装置でも実現できる。
【0026】
図1において、受信部11、A/D変換部12 、バッファメモリ13、信号処理座標変換部14、航跡処理部15、表示用メモリ16、表示器17は、従来例のそれらと、基本的には同様のものが使用される。ただ、表示用メモリ16については、記憶している航跡情報を、別途に読み出し及び書き込み可能となっている。
【0027】
データ変換部18は、細線化処理指令を受けて、表示用メモリ16から原航跡情報(表示用メモリ16から得られた航跡情報)を入力し、原航跡情報の中央部分を残す細線化処理を施して細線化航跡情報を作成し、この細線化航跡情報を表示用メモリ16へ出力し、対応する原航跡情報に代えて記憶させる。さらに、データ変換部18は、直線化処理指令を受けて、表示用メモリ16から細線化航跡情報を入力し、抽出した抽出化直線をその始点と終点の位置を表す数値データに変換する直線化処理を施して直線化航跡情報を作成し、この直線化航跡情報に基づく直線を表示メモリ16へ出力し、対応する細線化航跡情報に代えて記憶させる。
【0028】
また、データ変換部18には、処理範囲指定信号が入力され、直線化処理及びまたは細線化処理を行う範囲を指定する。
【0029】
データ記憶部19は、抽出化直線の始点と終点の位置を表す数値データを、読み出し可能に記憶する不揮発性のメモリである。
【0030】
また、作業用メモリ20は、データ変換部18の細線化処理や直線化処理に伴う一時的な記憶手段として所要のデータを記憶したり読み出したりするためのワークメモリである。
【0031】
図2は、原航跡情報Aをそのまま表示器17に表示した場合の表示例を示すものであり、航跡はかなり太い曲線で表示される。原航跡情報Aが、単独で表示される分には支障はないが、同じ海域(エリア)で複数の船舶が漁を行っている場合などには、表示画面の該当エリアがレーダ航跡で塗りつぶされ、他船の操業状態や、その動向を監視することが困難になる。
【0032】
図3は、原航跡情報Aを細線化した細線化航跡情報Bを表示器17に表示した場合の表示例を示すものであり、航跡は細い曲線で表示される。したがって、同じ海域(エリア)で複数の船舶が漁を行っている場合などにも、各船舶の航跡を明確に表示画面上で認識できる。
【0033】
図4は、細線化航跡情報Bを直線化した直線化航跡情報Cを表示器17に表示した場合の表示例を示すものであり、航跡は細い直線群で表示される。この直線化航跡情報Cの各直線は、各々の始点と終点の位置を表す数値データで表されるから、それらの始点と終点の位置を表す数値データをデータ記憶部19に読み出し可能に記憶させる。そして、移動航跡表示装置の電源断からの再起動時などに、データ記憶部19から読み出して直線化航跡情報Cを表示器17に再表示させる。
【0034】
その細線化の具体的方法について、図5、図6,図7を参照して、説明する。図5は、細線化処理指令に応じて、表示用メモリ16からデータ変換部18に読み込んだ原航跡情報Aを示している。数値はそのピクセルの航跡データを表し、数値が書いていないピクセルのデータは、ゼロとする。航跡データがゼロでないピクセルが細線化の対象ピクセルとなる。この原航跡情報Aが、細線化処理すべき対象画像である。
【0035】
図5において、まず、対象画像を左上から右下に向けて、一行ずつラスタスキャンを行っていく。次に、右下から左上に向けて、一行ずつラスタスキャンを行っていく。次に、右上から左下に向けて、一列ずつラスタスキャンを行っていく。次に、左下から右上に向けて、一列ずつラスタスキャンを行っていく。以上が、1サイクルであり、このサイクルが、細線化処理が終了するまで繰り返して行われる。
【0036】
図5の破線で描いた円に相当する箇所を取りだして示したものが、図6である。図6で、P0ないしP8が各ピクセルであり、各ピクセルに括弧内に示された数値がそのピクセルの数値データである。
【0037】
まず、対象画像を左上から右下に向けて、一行ずつラスタスキャンを行っていく。このときピクセルP0がゼロでないピクセルが対象ピクセルとなる。1ピクセルずつラスタスキャンを行っていくに際して、以下の条件(1)ないし(3)のうち1つでも満たす場合に、その対象ピクセルP0をゼロにするゼロ候補ピクセルとする。
条件(1)P1=0且つP2=0且つP8=0且つP4≠0且つP5≠0且つP6≠0
条件(2)P1=0且つP8=0且つP7=0且つP3≠0且つP4≠0且つP5≠0
条件(3)P6=0且つP7=0且つP8=0且つP2≠0且つP3≠0且つP4≠0
この条件(1)〜(3)でのスキャンが終了したときに、ゼロ候補ピクセルとなっているピクセルのデータをゼロにする。
【0038】
次に、対象画像を右下から左上に向けて、一行ずつラスタスキャンを行っていく。このときピクセルP0がゼロでないピクセルが対象ピクセルとなる。1ピクセルずつラスタスキャンを行っていくに際して、以下の条件(4)ないし(6)のうち1つでも満たす場合に、その対象ピクセルP0をゼロにするゼロ候補ピクセルとする。
条件(4)P4=0且つP5=0且つP6=0且つP1≠0且つP2≠0且つP8≠0
条件(5)P3=0且つP4=0且つP5=0且つP1≠0且つP8≠0且つP7≠0
条件(6)P2=0且つP3=0且つP4=0且つP6≠0且つP7≠0且つP8≠0
この条件(4)〜(6)でのスキャンが終了したときに、ゼロ候補ピクセルとなっているピクセルのデータをゼロにする。
【0039】
次に、対象画像を右上から左下に向けて、一列ずつラスタスキャンを行っていく。このときピクセルP0がゼロでないピクセルが対象ピクセルとなる。1ピクセルずつラスタスキャンを行っていくに際して、以下の条件(7)ないし(9)のうち1つでも満たす場合に、その対象ピクセルP0をゼロにするゼロ候補ピクセルとする。
条件(7)P2=0且つP3=0且つP4=0且つP6≠0且つP7≠0且つP8≠0
条件(8)P1=0且つP2=0且つP3=0且つP5≠0且つP6≠0且つP7≠0
条件(9)P8=0且つP1=0且つP2=0且つP4≠0且つP5≠0且つP6≠0
この条件(7)〜(9)でのスキャンが終了したときに、ゼロ候補ピクセルとなっているピクセルのデータをゼロにする。
【0040】
最後に、対象画像を左下から右上に向けて、一列ずつラスタスキャンを行っていく。このときピクセルP0がゼロでないピクセルが対象ピクセルとなる。1ピクセルずつラスタスキャンを行っていくに際して、以下の条件(10)ないし(12)のうち1つでも満たす場合に、その対象ピクセルP0をゼロにするゼロ候補ピクセルとする。
条件(10)P6=0且つP7=0且つP8=0且つP2≠0且つP3≠0且つP4≠0
条件(11)P5=0且つP6=0且つP7=0且つP1≠0且つP2≠0且つP3≠0
条件(12)P4=0且つP5=0且つP6=0且つP8≠0且つP1≠0且つP2≠0
この条件(10)〜(12)でのスキャンが終了したときに、ゼロ候補ピクセルとなっているピクセルのデータをゼロにする。
【0041】
このように対象画像を左上から右下、右下から左上、右上から左下、左下から右上、に向けてのラスタスキャンが1サイクルであり、このサイクルが、対象ピクセルの変換(ある数値データからゼロへの変換)が行われなくなるまで繰り返して行われる。この対象ピクセルの変換が行われなくなったときに、細線化処理が終了する。
【0042】
図7に、図5の原航跡情報Aに対して、細線化処理が行われた結果の細線化航跡情報Bを示している。図7に示すように、細線化航跡情報Bは1ピクセルの幅に細線化されている。この細線化航跡情報Bに基づく直線を表示メモリ16へ出力し、対応する原航跡情報Aに代えて記憶させ、表示器17に表示させる。
【0043】
以上の例では、直線の場合について示したが、原航跡情報Aが曲線であっても、同様に細線化処理が行われる。
【0044】
次に、直線化の具体的方法について、説明する。直線化処理指令に応じて、表示用メモリ16からデータ変換部18に細線化航跡情報Bを読み込む。
【0045】
まず、細線化航跡情報Bを含む対象画像を、例えば左上から右下に向けてラスタースキャンする。このスキャンにおいて、値を持ったピクセルを探して、対象ピクセルとする。対象となったピクセルは、スキャン済みとする。このスキャン済みであることは、そのピクセルに対応してフラグを立てることにより行う。
【0046】
その対象ピクセルの周囲8ピクセルをスキャンし、値を持ち且つスキャン済みでないピクセルを探す。値を持ち且つスキャン済みでないピクセルがあった場合、そのピクセルを対象ピクセルとする。以降、同様に隣接した対象ピクセルを順次検出していく。
【0047】
最初の対象ピクセルと、n番目(n≧2)の対象ピクセルとを結ぶ直線を得て、この直線と同じ傾きを持ち最初の対象ピクセルを始点とする幅がmピクセル(m≧2)の直線を、直線抽出ライン帯とする。なお、mピクセルは3ピクセル以上(m≧3)とすることがより望ましい。この直線抽出ライン帯の中心線は、最初の対象ピクセルと、n番目(n≧2)の対象ピクセルとを結ぶ直線であることが望ましい。
【0048】
そして、n番目の対象ピクセルから、直線抽出ライン帯と重ならない対象ピクセルがあるまで隣接した対象ピクセルを探し、最初の対象ピクセルと、直線抽出ライン帯と重ならない対象ピクセルの直前の対象ピクセルとを結ぶ直線を、抽出した直線とする。即ち、この抽出した直線が、直線化航跡情報Cの一部となる。この直線化の処理を、順番に行って、直線化航跡情報Cを得る。
【0049】
以上の直線化の処理を、図8の簡単なモデルを用いて、説明する。図8において、ピクセルP1〜P11は、直線化処理指令に応じて、表示用メモリ16からデータ変換部18に読み込んだ細線化航跡情報Bを示している。ピクセルP1〜P11によって曲線の細線化航跡情報Bを表しており、これらピクセルP1〜P11が直線化処理の対象ピクセルとなる。
【0050】
図8において、まず、細線化航跡情報Bを含む対象画像を、例えば左上から右下に向けてラスタースキャンする。このスキャンにおいて、値を持ったピクセルP1を探して、対象ピクセルとする。対象となったピクセルP1は、スキャン済みとする。
【0051】
その対象ピクセルP1から、隣接する対象ピクセルP2、P3、・・・を検出していく。最初の対象ピクセルP1とn番目(ここでは仮に3番目とする)の対象ピクセルP3とを結ぶ直線と同じ傾きを持ち、且つ対象ピクセルP1を始点とする幅mピクセル(ここでは仮に3ピクセルとする)の幅の直線を直線抽出ライン帯SBとする。
【0052】
引き続き、対象ピクセルP3から隣接する対象ピクセルP4〜P10を検出していき、直線抽出ライン帯SBと重ならなくなった対象ピクセルP11の直前の対象ピクセルP10と最初の対象ピクセルP1とを結ぶ直線を抽出した直線とする。
【0053】
以後、同様に、対象ピクセルP10を、最初の対象ピクセルとして、そのピクセルからn番目の対象ピクセルとの間に直線抽出ライン帯を作り、直線を抽出していく。
【0054】
また、隣接する対象ピクセルが無い場合には、その直前の対象ピクセルを直線の終点として、直線を抽出する。そして、再び、対象画像をスキャンし、値を持ち且つスキャン済みでないピクセルを探して対象ピクセルとし、直線を抽出していく。
【0055】
値を持ち、且つスキャン済みでないピクセルが無くなるまで、以上の操作を繰り返して、抽出した直線群を得る。これらの抽出した直線群を表示用メモリ16に書き込むことにより直線化航跡情報Cを、表示器17に表示する。
【0056】
直線化航跡情報Cを数値データ化する場合には、抽出した直線群の始点及び終点を、緯度、経度などの数値データに変換し、データ変換部18からデータ記憶部19に出力して、保存させる。
【0057】
航跡表示装置の電源オフの後に、再び表示器17に航跡表示を行いたい場合には、データ記憶部19に保存している直線群の始点及び終点のデータを読み出して、始点と終点とを結ぶ直線を表示用メモリ16に書き込むことにより、直線化航跡情報Cに基づく航跡表示を表示器17に表示させる。
【0058】
なお、隣接するピクセルの検出は、対象ピクセルの周囲8ピクセルに限定せずに、さらに1ピクセル外側まで範囲を拡げる等してもよい。こうすることにより、細線化航跡情報が途切れていても、直線の連続性が高まるし、また、数値データ化したときにより少ないデータで、航跡情報を蓄積できる。
【0059】
また、全ての航跡データを細線化、直線化、数値データ化するのではなく、それらの処理を施す範囲を、指定する処理範囲指定情報をデータ変換部18に外部から必要に応じて与えることにより、航跡情報を残す必要にないものについては処理を行わず、必要な他船の航跡のみの処理を行うようにできる。
【0060】
図9,図10は、原航跡情報が重畳してしまった場合の細線化処理を示すための図であり、図9は、原航跡情報が重畳した図であり、図10は、図9を細線化した細線化航跡情報を示している。
【0061】
既に、図5〜図7を用いて説明した細線化処理では、細線化を行う際にデータがある(データがゼロではない)ピクセルを対象として細線化を行っている。これに対して、図9、図10では、細線化処理は、原航跡情報の各ピクセルのデータを互いに範囲が重ならない複数のデータ範囲に区分し、その各データ範囲毎に細線化処理を行って、細線化された航跡情報を得るようにしている。
【0062】
図9のように、重なった2本の原航跡情報A1、A2があるとすると、1本目の航跡A1が引かれてから2本目の航跡A2が引かれるまでの間には、通常、ある程度の時間差がある。航跡情報は、時間とともにそのデータを減衰させる処理(例えば、グラデーション処理)を行うから、2つの航跡A1、A2の航跡データにはある程度の大きさの違いがある。
【0063】
この航跡データの大きさの違いに着目して、細線化に際して、原航跡情報の各ピクセルのデータを互いに範囲が重ならない複数のデータ範囲、例えば1>データ≧5と、6>データ≧10に区分し、その各データ範囲毎に細線化処理を行う。
【0064】
この処理を、図9の重なった2本の原航跡情報A1、A2に適用して、図5〜図7を用いて説明した細線化処理と同様に、細線化処理を行うと、図10に示されるように、重なった2本の原航跡情報A1、A2が、2本の細線化航跡情報B1、B2に分離される。
【0065】
これにより、同じ領域(海域)で複数の船舶等の原航跡情報同士が重なってしまった後でも、細線化された画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る移動航跡表示装置の実施例を示す図
【図2】原航跡情報Aを表示した場合の表示例
【図3】細線化航跡情報Bを表示した場合の表示例
【図4】直線化航跡情報Cを表示した場合の表示例
【図5】原航跡情報Aを示す図
【図6】対象ピクセルとその周囲のピクセルを示す図
【図7】細線化航跡情報Bを示す図
【図8】直線化の処理を説明する簡単なモデルを示す図
【図9】原航跡情報が重畳した図
【図10】重畳した原航跡情報を細線化した図
【図11】従来の船舶に搭載されるレーダ装置の構成例を示す図
【符号の説明】
【0067】
11 受信部
12 A/D変換部
13 バッファメモリ
14 信号処理座標変換部
15 航跡処理部
16 表示用メモリ
17 表示器
18 データ変換部
19 データ記憶部
20 作業用メモリ
A 原航跡情報
B 細線化航跡情報
C 直線化航跡情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を送信し物標からの反射波を受信する探知装置による受信信号に基づいて、前記探知装置の周囲に存在する物標の位置が、過去所定時間から現在までにどのように変化したかを表す原航跡情報を作成する航跡処理部と、該航跡処理部からの原航跡情報を記憶し、表示部へ出力し得る表示用メモリとを備える移動航跡表示装置において、
細線化処理指令を受けて、前記表示用メモリから原航跡情報を入力し、原航跡情報の中央部分を残す細線化処理を施して細線化航跡情報を作成し、この細線化航跡情報を前記表示用メモリへ出力し、対応する原航跡情報に代えて記憶させるデータ変換部を有することを特徴とする、移動航跡表示装置。
【請求項2】
前記データ変換部は、
さらに直線化処理指令を受けて、前記表示用メモリから細線化航跡情報を入力し、抽出した抽出化直線をその始点と終点の位置を表す数値データに変換する直線化処理を施して直線化航跡情報を作成し、この直線化航跡情報に基づく直線を前記表示メモリへ出力し、対応する細線化航跡情報に代えて記憶させることを特徴とする、請求項1に記載の移動航跡表示装置。
【請求項3】
前記直線化処理は、
細線化された細線化航跡情報を含む対象画像をスキャンして、値を持つピクセルを対象ピクセルとして、隣接する対象ピクセルを順次検出し、
一番目の対象ピクセルとn番目(n≧2)の対象ピクセルとを結ぶ直線を中心として幅がmピクセル(m≧2)の直線抽出帯を形成し、
前記n番目の対象ピクセルから前記直線抽出帯と重ならない対象ピクセルの直前の対象ピクセルと、一番目の対象ピクセルとを結ぶ直線を抽出して抽出化直線とすることを特徴とする、請求項2に記載の移動航跡表示装置。
【請求項4】
前記抽出化直線の始点と終点の位置を表す数値データを、不揮発性のメモリを有するデータ記憶部に読み出し可能に記憶することを特徴とする、請求項2または3に記載の移動航跡表示装置。
【請求項5】
前記細線化処理は、原航跡情報の各ピクセルのデータを互いに範囲が重ならない複数のデータ範囲に区分し、その各データ範囲毎に細線化処理を行って、細線化された航跡情報を得ることを特徴とする、請求項1に記載の移動航跡表示装置。
【請求項6】
前記データ変換部には、処理範囲指定信号が入力され、前記直線化処理及びまたは細線化処理を行う範囲を指定することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の移動航跡表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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