移動調整装置および検知装置の取付け装置
【課題】検知装置などの移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される移動調整装置または取付け装置を提供すること。
【解決手段】取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材51の移動調整装置であって、ブロック部材51には、ネジ穴517およびネジ穴517と連続して延びる装着穴521が設けられており、ネジ穴517には、ネジ回転工具60と係合する係合部518aを備えるネジ部材518が螺合しており、装着穴521には、弾性変形可能なリング部材602が装着されており、リング部材602は、ネジ部材518がネジ回転工具60により回転されリング部材602が配置されている側に移動したときに、ネジ部材518により押圧されて内側へ弾性変形することにより、リング部材602を貫通して挿入されているネジ回転工具60の外周面を把持する。
【解決手段】取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材51の移動調整装置であって、ブロック部材51には、ネジ穴517およびネジ穴517と連続して延びる装着穴521が設けられており、ネジ穴517には、ネジ回転工具60と係合する係合部518aを備えるネジ部材518が螺合しており、装着穴521には、弾性変形可能なリング部材602が装着されており、リング部材602は、ネジ部材518がネジ回転工具60により回転されリング部材602が配置されている側に移動したときに、ネジ部材518により押圧されて内側へ弾性変形することにより、リング部材602を貫通して挿入されているネジ回転工具60の外周面を把持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダなどの取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材の移動調整装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧シリンダなどのシリンダ装置におけるピストン位置を検知するために、ピストンに取り付けられた永久磁石による磁界を検知する検知装置が用いられている。
【0003】
検知装置には、磁界(磁束)によって動作する、MR素子、ホ−ル素子、またはリ−ドスイッチなどの素子が内蔵されている。
【0004】
ピストンに取り付けられる永久磁石としては、ピストンの外径よりも若干小さい径の環状のものが用いられる。シリンダ装置は、シリンダチューブの内径が種々異なるものが提供されるので、永久磁石も、それに対応して種々異なる径のものが用いられる。ここで、ピストンに取り付けられた永久磁石による磁界が検知装置において検知されるためには、永久磁石による磁界がシリンダチューブを貫通して外部にまで形成される必要がある。そこで、シリンダチューブは、非磁性材料であるアルミニウム合金などを用いて製作されることが多い。
【0005】
さて、検知装置をシリンダ本体に取り付けるための取付け装置として、シリンダ本体の外周面に設けられた断面略T字形の溝に挿入される取付けブロックを有する取付け装置が以前から提案され実施されている。
【0006】
そのような取付けブロックには、取付けブロックを前述の溝内に固定するためのセットネジがネジ穴に螺合して設けられている。作業者は、セットネジと係合する固定用の締付け工具を用いてセットネジを締め付けることにより、取付けブロックを前述の溝内に固定し、検知装置をシリンダ本体に取り付けることができる。
【0007】
そのような取付けブロックを有する取付け装置として、本出願人が提案した取付け装置がある(特許文献1)。
【0008】
一般に、シリンダ装置のメンテナンス時などには、検知装置の取付け、取外し、または取付け位置の調整が行われる。そのため、検知装置の取付け装置は、前述のセットネジを締め付けるための締付け工具を容易に挿入できるようにしておく必要がある。
【0009】
ところが、シリンダ装置は、スペースが十分に確保されていない場所に設置されることがある。特に、薄型の流体圧シリンダは、そのような場所に設置されることが多い。その場合には、締付け工具を挿入するスペースも十分に確保されないことがしばしばである。
【0010】
特許文献1の取付け装置は、セットネジの軸方向と取付け装置がシリンダ本体の外周面上を移動する方向とが一致しており、締付け工具を挿入するスペースとして取付け装置が移動する空間を利用できるようになっている。これにより、それ以前の取付け装置では、締付け工具を挿入するスペースを取付け装置の周囲に確保しておく必要があったのに対して、特許文献1の取付け装置では、そのようなスペースを取付け装置の周囲に確保しておく必要がなくなった。
【0011】
また、特許文献1の取付け装置が有する取付けブロックには、取付けブロックを前述の溝に沿って移動させる際に用いられる移動用の治具と係合するネジ穴が設けられている。この治具は、先端に雄ネジが設けられた棒状の治具であり、固定用の締付け工具とは別に用意される。作業者は、治具をネジ穴にねじ込んで取付けブロックに連結した後に、それを押したり引いたりして取付けブロックを移動させることにより、検知装置の取付け、取外し、または取付け位置の変更などの移動調整を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−063066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1の取付け装置を含めて従来の取付け装置においては、作業者は、スペースが十分に確保されていない場所などに取り付けられる検知装置の移動調整を行う際に、固定用の締付け工具および移動用の治具の両方を用いて作業を行う必要があった。例えば、検知装置の取付け位置を変更する際には、締付け工具を差し込んでセットネジを緩め、取付けブロックの固定が解除されたら締付け工具を引き抜く。そして、治具をねじ込んで取付けブロックに連結し、治具を押したり引いたりして取付けブロックを所望の位置に移動させ、治具をねじ戻して取付けブロックから取り外す。そして、締付け工具を差し込んでセットネジを締め付け、取付けブロックが固定されたら締付け工具を引き抜く。
【0014】
このように、従来の取付け装置においては、検知装置の移動調整を行う作業者にかかる手間が大きかった。
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、検知装置などの移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される移動調整装置または取付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る移動調整装置は、取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材の移動調整装置であって、前記ブロック部材には、前記軸方向に延びるネジ穴、および当該ネジ穴と連続して延び当該ブロック部材の外周面に開口する装着穴が設けられており、前記ネジ穴には、ネジ回転工具と係合する係合部を備えるネジ部材が螺合しており、前記装着穴には、弾性変形可能なリング部材が装着されており、前記リング部材は、前記ネジ部材が前記ネジ回転工具により回転され当該リング部材が配置されている側に移動したときに、当該ネジ部材により押圧されて内側へ弾性変形することにより、当該リング部材を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持する。
【0017】
なお、「ブロック部材の移動調整」とは、ブロック部材の取付け位置を変更するためにブロック部材を移動調整することのほか、ブロック部材を取り付けまたは取り外すためにブロック部材を移動調整することを含む。
【0018】
また、本発明に係る取付け装置は、検知装置をシリンダ本体の外周面の軸方向に移動可能に取り付けるための取付け装置であって、前記検知装置が保持されるものであって、前記シリンダ本体の軸方向に延びるネジ穴、および前記ネジ穴と連続して延びて外周面に開口する装着穴が設けられた取付けブロックと、前記ネジ穴に螺合し、ネジ回転工具と係合する係合部を備え、前記ネジ回転工具により締め付けられたときに前記取付けブロックを前記シリンダ本体に対して固定するための固定用ネジと、前記装着穴に装着され、前記固定用ネジが前記ネジ回転工具により緩められたときに、当該固定用ネジにより押圧されて内側へ弾性変形することにより、自身を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持するOリングと、を有する。
【0019】
好ましくは、前記Oリングを挟むようにその両側において前記装着穴に装着される2つのバックアップリングと、前記Oリングおよび2つの前記バックアップリングが前記装着穴から抜け出るのを防止するために前記装着穴の開口する側に装着される止め輪と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
検知装置などの移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される移動調整装置または取付け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】検知装置が取り付けられた流体圧シリンダの平面図である。
【図2】検知装置が取り付けられた流体圧シリンダの正面図である。
【図3】検知装置の正面図である。
【図4】検知装置の平面図である。
【図5】検知装置の右側面図である。
【図6】検知装置の左側面図である。
【図7】取付けブロックの断面平面図である。
【図8】取付けブロックの断面正面図である。
【図9】六角レンチの正面図である。
【図10】装着穴に装着される部材の分解斜視図である。
【図11】取付けブロックの断面平面図および断面正面図である。
【図12】取付けブロックの断面平面図および断面正面図である。
【図13】検知装置の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本実施形態に係る検知装置3が取り付けられた流体圧シリンダ1の平面図、図2は検知装置3が取り付けられた流体圧シリンダ1の正面図である。また、図3は検知装置3の正面図、図4は検知装置3の平面図、図5は検知装置3の右側面図、図6は検知装置3の左側面図である。また、図7は取付けブロック51の断面平面図、図8は図7のA−O−O´−A´線矢視断面図(取付けブロック51の断面正面図)である。また、図9は、T型の六角レンチ60およびL型の六角レンチの正面図である。また、図10は、装着穴521に装着される部材の分解斜視図である。
【0023】
なお、図7および図8などの部品図において、他の一部の部品が組み付けられた状態を示す場合がある。また、以下の説明における「軸方向」および「周方向」は、原則として、検知装置3がシリンダチューブ11に取り付けられた場合の方向をいい、例えば、「軸方向」は図1における左右方向であり、「周方向」は図1における上下方向である。
【0024】
図1および図2を参照して、流体圧シリンダ1は、シリンダチューブ11、ピストン、ピストンロッド13、検知装置3、およびシリンダブシュ15などから構成されている。ただし、ピストンは図中に示されていない。
【0025】
シリンダチューブ(シリンダ本体)11は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、または合成樹脂などの非磁性材料からなる。シリンダチューブ11の外周面には、軸方向に延びる断面形状が略T字形の溝111が形成されている。溝111には、平面状または略円周面状の底部112、底部112において周方向に広がる拡張溝113、および外方に向かって係合可能な係合突起114が設けられている。溝111には、検知装置3が取り付けられる。なお、溝111の断面形状は種々の形状とすることができる。
【0026】
ピストンは、アルミニウム合金またはステンレス鋼などの非磁性材料からなり、シリンダチューブ11の内部に納められている。ピストンには、シリンダチューブ11の内周面との間をシールするために、パッキンが設けられている。ピストンの外周には、環状の溝が設けられており、その溝には、環状の永久磁石が装着されている。永久磁石は、ピストンロッド13の軸方向にN極およびS極を有している。ピストンロッド13は、鋼材などからなり、端部に設けられているネジなどによってピストンと一体に連結されている。
【0027】
図3〜図6も参照して、検知装置3は、検知装置本体としての検知スイッチ31、保持部材41、および取付けブロック51などから構成されている。
【0028】
検知スイッチ(検知装置本体)31は、ケーシング32、磁気センサ、ケーブル34、回路が実装された基板、およびその他の部材から構成されている。ただし、磁気センサおよび基板は図中に示されていない。検知スイッチ31によって、ピストンに装着されている永久磁石による磁界(磁束)が検知され、ピストンの位置が検出される。
【0029】
ケーシング32は、合成樹脂などからなり、ほぼ直方体状の外形を有しており、上面には、2つの線状凸部311によって浅い溝312が形成されている。ケーシング32内の下面に近い位置には、磁気センサが単独でまたは基板に取り付けられた状態で配置されている。磁気センサとして、ホール素子、ホールIC、磁気抵抗効果素子(MR素子)、磁気トランジスタ、リードスイッチ、または近接センサなどが用いられる。ケーシング32の先端部の上面中央には、検知スイッチ31の動作状態を表示するための表示灯314が設けられている。
【0030】
ケーブル34は、基板への電源の供給、および磁気センサの動作に基づく出力信号の取出しなどを行うためのものである。ケーブル34には、通常、電源の供給と出力信号の取出しとを共通で行う場合には2本の電線が、それらを別個に行う場合には3本の電線が、それぞれ内蔵される。
【0031】
保持部材41は、検知スイッチ31を保持し、ネジ42によって取付けブロック51に取り付けるためのものである。保持部材41は、十分の数ミリメートル程度の厚さの金属板を板金加工することにより形成されており、適度な弾力性を有している。保持部材41の材料として、通常、ステンレス鋼板が用いられるが、他の金属材料であってもよい。
【0032】
具体的には、保持部材41は、検知スイッチ31を保持するためのスイッチ保持部41Aと、取付けブロック51を保持するためのブロック保持部41Bとから構成されている。スイッチ保持部41Aとブロック保持部41Bとは、略長方形の底面部411を介して互いに一体に繋がっている。
【0033】
スイッチ保持部41Aは、底面部411に対して直角に折り曲げられた側壁部412、側壁部412に対してさらに直角に折り曲げられた上壁部413、上壁部413に対してさらに直角に折り曲げられた長さの短い押さえ側壁部414、および押さえ側壁部414の先端部から折り返された操作部415を有している。また、底面部411の一方の端縁部は下方へ折り曲げられ、ガイド部417となっている。このように、検知スイッチ31のケーシング32は、スイッチ保持部41Aの各部411〜414に囲まれて保持される。
【0034】
ブロック保持部41Bは、底面部411に対して直角に折り曲げられた側壁部418、側壁部418に対してさらに直角に折り曲げられた上壁部419、上壁部419に設けられた長穴420、底面部411の延長上にある延長底面部421、延長底面部421の先端部において60〜80度程度に折り曲げられた長さの短い押さえ側壁部422、および延長底面部421の表面に溶接などで固定された補助板423を有している。なお、補助板423は、底面部411などとは別体で製作して溶着によってそれらと一体化する例を示したが、当初から一体的に製作してもよい。このように、取付けブロック51は、ブロック保持部41Bの各部411、418〜419、421〜422に囲まれて保持される。
【0035】
なお、スイッチ保持部41Aおよびブロック保持部41Bの構成に関する詳細については、特許文献1を参照されたい。
【0036】
取付けブロック51は、アルミニウム合金または合成樹脂などの非磁性材料からなり、シリンダチューブ11の外周面に形成されている溝111に挿入される。保持部材41の補助板423を溝111の底部112に密着させ、取付けブロック51を溝111内に固定することにより、検知装置3をシリンダチューブ11に取り付けることができるようになっている。
【0037】
以下、取付けブロック51の構造について詳細に説明する。なお、図3〜図6においては、図が煩雑になるのを避けるため、取付けブロック51の内部に設けられる部材の図示を一部省略している。
【0038】
図3〜図6において、取付けブロック51は、取付けブロック51を溝111内に固定するための固定ブロック51Aと、保持部材41を連結するための連結ブロック51Bとから構成されている。固定ブロック51Aと連結ブロック51Bとは、一体に形成されている。
【0039】
固定ブロック51Aの両側面には、底面に近い位置に、2つの係合突出部511が設けられている。各係合突出部511は、その上面が斜面512となっており、拡張溝113に入り込んで係合突起114と係合する。これにより、取付けブロック51は、溝111に挿入されているとき、溝111の長手方向に移動可能(スライド可能)であるが、それ以外の方向には溝111から抜け出ないようになっている。固定ブロック51Aの底面には、帯状の浅い溝が設けられ、この部分が凹面513となっている。
【0040】
図7および図8も参照して、固定ブロック51Aには、ピン穴514、ネジ付き穴517、装着穴521、および連結穴522が設けられている。
【0041】
ピン穴514は、溝111の底部112と対向する面である凹面513に対して垂直に延び凹面513に開口している。
【0042】
ネジ付き穴517は、溝111の長手方向と同一の方向であって、かつピン穴514の方向に対して直角の方向に延びている。
【0043】
装着穴521は、ネジ付き穴517に連続して延び、固定ブロック51Aの側面に開口している。装着穴521の穴径は、ネジ付き穴517の穴径よりも若干大きくなっている。これは、後述するように、装着穴521には各種の部材が装着されるためである。装着穴521の穴径は、組立ての際にそれらの部材を装着穴521の開口部から装着しやすい大きさとなるように設定される。
【0044】
連結穴522は、ピン穴514およびネジ付き穴517の両方向に対して直角の方向に延び、固定ブロック51Aの側面に開口している。連結穴522は、ピン穴514と奥側(ピン穴514が開口している側と反対側)で接続されている。また、接続部523を介してネジ付き穴517と奥側(装着穴521が設けられている側と反対側)で接続されている。
【0045】
ピン穴514には、ピン穴514の開口部から突出可能でかつピン穴514の方向に移動可能な押圧部材としての押圧ピン515が挿入されている。押圧ピン515は、金属材料または合成樹脂材料などからなる円柱状のものであり、両端面には面取りが施されている。
【0046】
ピン穴514には、第一のスチールボール516aが押圧ピン515の頂部と当接して配置されている。第一のスチールボール516aは、一部をピン穴514に納めた状態で、ピン穴514および連結穴522の間を移動可能になっている。図7および図8に示す例では、約半分がピン穴514に納まっており、約半分が連結穴522に進入している。
【0047】
連結穴522には、第二のスチールボール516bが第一のスチールボール516aと当接して配置されている。第二のスチールボール516bは、一部を連結穴522に納めた状態で、連結穴522および接続部523の間を移動可能になっている。図7および図8に示す例では、約半分がピン穴514に納まっており、約半分が接続部523に進入している。また、連結穴522の開口する側には、円柱状のスポンジゴム525が詰め部材として挿入されている。スポンジゴム525は、例えば、シリコーンゴムなどの材料からなる。連結穴522が開口している固定ブロック51Aの側面には、開口部を覆うようにラミネートシールが貼り付けられている。
【0048】
ネジ付き穴517には、尖り先六角穴付きネジである押圧ネジ518が螺合している。押圧ネジ518は、接続部523の側に移動したときに、先端部が接続部523に進入し、円錐状のテーパ面が第二のスチールボール516bに当接するようになっている。また、押圧ネジ518の頭部に設けられた六角穴518aは、押圧ネジ518に対応するネジ回転工具としての六角レンチ60と係合するようになっている。
【0049】
図9(a)に示すように、六角レンチ60は、押圧ネジ518を締め付けまたは緩めるためのT型の回転工具(T型レンチ)である。六角レンチ60は、押圧ネジ518の六角穴518aと係合する部分である係合部60a、柄の部分であるシャンク部60b、および作業者が作業時に手で掴む部分である手持ち部60cから構成されている。六角レンチ60は、装着穴521に装着された部材を貫通して係合部60aが押圧ネジ518の六角穴518aと係合するように、装着穴521に挿入される。なお、T型の六角レンチ60の代わりに種々の型の回転工具を用いることができ、例えば、図9(b)に示すようなL型の六角レンチ60B(L型レンチ)を用いることができる。
【0050】
図10も参照して、装着穴521には、ネジ付き穴517の側から順に、第一のバックアップリング601、Oリング602、第二のバックアップリング603、および止め輪604が隙間なく装着されている。
【0051】
第一のバックアップリング601および第二のバックアップリング603は、金属材料または合成樹脂材料などからなるリング状の部材であり、両リングでOリング602を挟むように配置されている。両バックアップリングの端面は、平坦になっている。両バックアップリングの内径は、六角レンチ60のシャンク部60bの外径よりもいくらか大きい寸法となっており、両バックアップリングの外径は、装着穴521の穴径とほぼ同じかそれよりも若干小さい寸法となっている。
【0052】
Oリング602は、フッ素系樹脂などの適度な弾性および摩擦性を有する材料からなるリング状の部材である。Oリング602の内径は、自由状態において、六角レンチ60のシャンク部60bの外径よりもわずかに小さい寸法となっている。そのため、六角レンチ60を装着穴521に差し込む際に、軽く押し込めば、自由状態にあるOリング602を貫通して挿入可能となっている。また、差し込まれた状態にある六角レンチ60は、その外周面がOリング602により軽く把持され、装着穴521からやや抜け難くなっている。Oリング602の外径は、装着穴521の穴径とほぼ同じかそれよりも若干小さい寸法となっている。
【0053】
なお、後述するように、Oリング602は、押圧ネジ518が装着穴521の側に移動したときに押圧ネジ518により押圧されるようにする必要があるが、押圧ネジ518の頭部の端面が平坦ではない場合に、押圧ネジ518の頭部が直接Oリング602に触れると、Oリング602が破損するおそれがある。また、押圧ネジ518の頭部が直接Oリング602を押圧すると、Oリング602全体が均等に押圧されないことも考えられる。そこで、第一のバックアップリング601が設けられており、Oリング602は第一のバックアップリング601を介して押圧ネジ518により押圧されるようになっている。
【0054】
止め輪604は、金属材料などからなる部材であり、その弾性力により外方に伸張して装着穴521の開口部の近辺に設けられたリング状の溝にはまり込むようにして装着される。止め輪604は、第一のバックアップリング601、Oリング602、および第二のバックアップリング603が装着穴521から抜け出るのを防止するためのものである。止め輪604として、例えば、C形リングなどが用いられる。
【0055】
図3および図4を参照して、連結ブロック51Bには、保持部材41を連結するためのネジ穴519が設けられている。保持部材41の上壁部419が連結ブロック51Bの上面近辺に配置された状態で、ネジ42がワッシャおよび長穴420を貫通してネジ穴519にネジ込まれる。これにより、検知スイッチ31は、保持部材41を介して取付けブロック51と連結されて保持される。
【0056】
図11(a)は検知装置3が取り付けられた(固定された)際の取付けブロック51の断面平面図、図12(a)は検知装置3が取り外された(固定が解除された)際の取付けブロック51の断面平面図である。図11(b)、図12(b)は、それぞれ図11(a)、図12(a)のA−O−O´−A´線矢視断面図(取付けブロック51の断面正面図)である。
【0057】
さて、作業者は、取付けブロック51を溝111内に固定する際には、装着穴521の開口部から六角レンチ60を差し込んで押圧ネジ518の六角穴518aと係合させ、六角レンチ60を用いて押圧ネジ518を締め付ける(ねじ込む)。ただし、後述するように、押圧ネジ518を緩めた後であって、六角レンチ60が取付けブロック51に保持されている状態にあるときは、その状態にある六角レンチ60をそのまま用いればよい。
【0058】
作業者が押圧ネジ518を締め付ける方向に回転させると、図11に示すように、押圧ネジ518が接続部523の側に移動していく。押圧ネジ518の先端部がネジ付き穴517から接続部523に所定程度進入するまで移動すると、押圧ネジ518の先端部が第二のスチールボール516bに当接し、第二のスチールボール516bを押圧する。そして、第二のスチールボール516bは、第一のスチールボール516aの側に移動し、第一のスチールボール516aを押圧する。第一のスチールボール516aは、押圧ピン515の側に移動し、押圧ピン515を押圧する。押圧ピン515は、ピン穴514の開口部から突出する方向に移動し、保持部材41の補助板423を介して間接的に溝111の底部112を押圧する。
【0059】
図11において、押圧ネジ518が締め付けられると、押圧ピン515が補助板423を介して溝111の底部112を押し、取付けブロック51が溝111内に固定される。すなわち、押圧ピン515が補助板423を介して溝111の底部112に押し付けられることにより、取付けブロック51が図11(b)における上方へ移動し、係合突出部511が溝111の係合突起114に押し当たる形で係合する。この結果、押圧ピン515のピン穴514の開口部から突出する部分の長さL1は、締め付ける前の長さL2(図12(b)参照)よりも長くなる。このようにして、取付けブロック51が溝111内に固定され、検知装置3がシリンダチューブ11に取り付けられる。このとき、六角レンチ60は、装着穴521から容易に引き抜くことができる状態となっている。
【0060】
なお、保持部材41の補助板423および底面部411などは、押圧ピン515の移動に伴って適当に撓んで弾性変形し、保持部材41に保持されている検知スイッチ31と溝111の底部112との間の隙間が小さくなるようになっている。
【0061】
さて、作業者は、溝111内に固定された取付けブロック51の固定を解除する際には、六角レンチ60を用いて押圧ネジ518を緩める(ねじ戻す)。
【0062】
作業者が押圧ネジ518を緩める方向に回転させると、図12に示すように、押圧ネジ518が装着穴521の側に移動していく。押圧ネジ518が移動すると、その分、押圧ピン515、第一のスチールボール516a、および第二のスチールボール516bは、保持部材41の補助板423の弾性力によって押し戻される。
【0063】
図12において、押圧ネジ518の先端部がネジ付き穴517に所定程度納まるまで緩められると、取付けブロック51の固定が解除される。すなわち、押圧ピン515が補助板423の弾性力によって押し戻されることにより、取付けブロック51が図12(b)における下方へ移動し、係合突起114に係合していた係合突出部511の係合が解除される。この結果、押圧ピン515のピン穴514の開口部から突出する部分の長さL2は、緩める前の長さL1(図11(b)参照)よりも短くなる。このようにして、取付けブロック51の固定が解除され、検知装置3をシリンダチューブ11の軸方向に沿って移動させたり、シリンダチューブ11から取り外したりすることが可能となる。
【0064】
他方で、押圧ネジ518の頭部がネジ付き穴517から装着穴521に進入するまで緩められると、押圧ネジ518が第一のバックアップリング601に当接し、第一のバックアップリング601を押圧する。これにより、第一のバックアップリング601と第二のバックアップリング603との間隔Tが狭まり、その間に挟まれたOリング602は、両リングから圧迫されて弾性変形する。その際、大部分が内側に撓み、内周面が縮径する。すなわち、Oリング602は、押圧ネジ518がある程度緩められたときに、両リングを介して間接的に押圧ネジ518により押圧されて弾性変形し、内周面が縮径する。例えば、押圧ネジ518が2〜3回転程度緩められると、Oリング602の内周面が縮径する。内周面が縮径したOリング602は、自身の内周面を貫通して挿入されている六角レンチ60のシャンク部60bの外周面を把持する。これにより、六角レンチ60は、Oリング602によって拘束され、取付けブロック51に連結された状態になる。そのため、このとき、六角レンチ60は、装着穴521から容易には引き抜くことができない状態となっている。また、このとき、第一のバックアップリングはOリング602の弾性力によって押し返されるので、作業者が押圧ネジ518をさらに緩めようとすると、それ以前よりも大きな回転力を与えなければならない。つまり、作業者は、押圧ネジ518を緩めるのに必要な力が増大した時点で、それ以上緩める必要がないことを認識することができる。
【0065】
その後、作業者は、Oリング602により把持された状態にある六角レンチ60を押したり引いたりして、取付けブロック51を検知スイッチ31および保持部材41共々に移動させることにより、検知装置3の取付け位置を調整することができる。
【0066】
なお、装着穴521に装着された各種の部材は、前述の通り、六角レンチ60を取付けブロック51に連結させるために設けられているが、押圧ネジ518が緩められ過ぎた際に装着穴521の開口部から抜け落ちるのを防止するための抜止めとしても作用する。
【0067】
次に、前述の検知装置3の使用方法を説明する。使用方法の一例として、既にシリンダチューブ11に取り付けられている検知装置3の位置を別の位置に移動させる場合を説明する。
【0068】
図13は、検知装置3の使用方法を説明するための図である。
【0069】
図13において、作業者は、六角レンチ60を装着穴521の開口部からM1方向に差し込む。そして、六角レンチ60をR1方向に回転させて押圧ネジ518を緩め始め、Oリング602が圧縮されるまで緩めていく。これにより、溝111内に固定されていた取付けブロック51は、固定が解除されることとなり、差し込んだ六角レンチ60は、取付けブロック51に連結されることとなる。
【0070】
次に、作業者は、六角レンチ60を押したり引いたりして、検知装置3を溝111に沿って所望の位置まで移動させる。すなわち、シリンダチューブ11の軸方向に沿って移動させる。
【0071】
次に、作業者は、六角レンチ60をR2方向に回転させて押圧ネジ518を締め付けることにより、取付けブロック51を溝111内に固定する。この段階で、取付けブロック51に連結されていた六角レンチ60は、連結が解除されている。そして、作業者は、六角レンチ60を装着穴521からM2方向に引き抜く。
【0072】
なお、作業者は、検知装置3をシリンダチューブ11に取り付ける場合や、検知装置3をシリンダチューブ11から取り外す場合にも、同様にして、検知装置3の移動調整を行うことができる。
【0073】
以上のように、検知装置3においては、作業者が取付けブロック51の固定を解除するために六角レンチ60を用いて押圧ネジ518をある程度緩めると、押圧ネジ518により押圧されたOリング602が内側に撓んで六角レンチ60を把持することにより、六角レンチ60は取付けブロック51に連結された状態になる。作業者は、連結された六角レンチ60を引き続き用いて検知装置3の移動調整を行うことができる。つまり、六角レンチ60は、検知装置3を固定するための固定用の締付け工具としての役割と、検知装置3の移動調整を行うための移動用の治具としての役割とを兼ね備えている。
【0074】
よって、従来は、検知装置の移動調整を行う際に、固定用の締付け工具および移動用の治具の両方を用いて作業を行う必要があったところ、その必要がなくなり、移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される。
【0075】
また、固定用の締付け工具および移動用の治具は、シリンダ装置のメンテナンスなどのために検知装置の移動調整を行う必要がある時以外は基本的に使用されることがないが、従来は、その間、両方の工具または治具を適切に管理しておくのが面倒であった。特に、薄型の流体圧シリンダなどに用いられる工具または治具は、小型のものが多いので、適切に管理されずに紛失してしまう恐れもあった。一方、検知装置3においては、管理すべき工具または治具は、六角レンチ60の1本のみで済むため、工具または治具の管理者にかかる手間も軽減される。
【0076】
前述の実施形態において、押圧ネジ518が緩められる過程で、取付けブロック51の固定が解除され始めるとただちに六角レンチ60がOリング602により把持され始めるようにしてもよいし、固定が解除され始めてしばらくしてから把持され始めるようにしてもよいし、固定が完全に解除された後に把持され始めるようにしてもよい。つまり、取付けブロック51の固定が解除され始めてから六角レンチ60がOリング602により把持され始めるまでの遊びの期間は、短くとっても長くとってもよい。押圧ネジ518が締め付けられる過程で、六角レンチ60におけるOリング602による把持が解除され始めてから取付けブロック51が固定され始めるまでの遊びの期間についても、同様である。
【0077】
この遊びの期間は、ネジ付き穴517の長さ、押圧ネジ518の長さ、または押圧ネジ518の先端部の形状などを変更することにより、適宜調整することができる。すなわちそれらを変更して、押圧ネジ518が、常に第二のスチールボール516bおよび第一のバックアップリング601の双方に当接するようにすることもできるし、移動の過渡期にのみ双方に当接するようにすることもできるし、一方に当接しているときは他方には当接しないようにすることもできる。
【0078】
また、前述の実施形態においては、ネジ付き穴517、押圧ネジ518、装着穴521、および装着穴521に装着される各種の部材などは、図4における取付けブロック51の右側面の側から六角レンチ60が挿入されて押圧ネジ518が回転させられることを前提とした配置になっていたが、取付けブロック51の他の側面の側から六角レンチ60を挿入して押圧ネジ518を回転可能なように配置にしてもよい。つまり、ネジ付き穴517に連続して延びる装着穴521は、どの側面に開口するように設けてもよい。また、取付けブロック51を平面視が矩形ではなく、台形、六角形、八角形、その他の多角形、または円形などとしてもよく、その場合にも、ネジ付き穴517に連続して延びる装着穴521は、それらの種々の側面または周面に開口するように設けることができる。
【0079】
また、前述の実施形態においては、取付けブロック51には、連結穴522および第二のスチールボール516bが設けられていたが、それらを省略し、押圧ネジ518が直接第一のスチールボール516aを押圧するように構成してもよい。つまり、特許文献1の前半に記述された実施形態のように構成してもよい。また、押圧ピン515を省略し、第一のスチールボール516aが保持部材41の補助板423を介して間接的に溝111の底部112を押圧するように構成してもよい。
【0080】
また、前述の実施形態においては、押圧ネジ518として、六角穴付きネジを用いたが、プラスネジ、マイナスネジ、またはその他のネジであってもよい。その場合には、六角レンチ60の代わりにそのネジに係合するネジ回転工具を用意することはもちろんである。
【0081】
また、前述の実施形態においては、検知装置3は、検知スイッチ31、保持部材41、および取付けブロック51の3つの部材が連結されて構成されていたが、これらの部材の全部または一部を一体的に構成してもよい。
【0082】
その他、流体圧シリンダ1、検知装置3、検知スイッチ31、保持部材41、および取付けブロック51の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、および材質などの構成は、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0083】
3 検知装置
11 シリンダチューブ(取付け対象部材、シリンダ本体)
51 取付けブロック(ブロック部材)
60 六角レンチ(ネジ回転工具)
111 溝
514 ピン穴
515 押圧ピン(押圧用ピン)
516a 第一のスチールボール(球体)
516b 第二のスチールボール(球体)
517 ネジ付き穴(ネジ穴)
518 押圧ネジ(ネジ部材、固定用ネジ)
518a 六角穴(係合部)
521 装着穴
522 連結穴
601 第一のバックアップリング
602 Oリング(リング部材)
603 第二のバックアップリング
604 止め輪
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダなどの取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材の移動調整装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧シリンダなどのシリンダ装置におけるピストン位置を検知するために、ピストンに取り付けられた永久磁石による磁界を検知する検知装置が用いられている。
【0003】
検知装置には、磁界(磁束)によって動作する、MR素子、ホ−ル素子、またはリ−ドスイッチなどの素子が内蔵されている。
【0004】
ピストンに取り付けられる永久磁石としては、ピストンの外径よりも若干小さい径の環状のものが用いられる。シリンダ装置は、シリンダチューブの内径が種々異なるものが提供されるので、永久磁石も、それに対応して種々異なる径のものが用いられる。ここで、ピストンに取り付けられた永久磁石による磁界が検知装置において検知されるためには、永久磁石による磁界がシリンダチューブを貫通して外部にまで形成される必要がある。そこで、シリンダチューブは、非磁性材料であるアルミニウム合金などを用いて製作されることが多い。
【0005】
さて、検知装置をシリンダ本体に取り付けるための取付け装置として、シリンダ本体の外周面に設けられた断面略T字形の溝に挿入される取付けブロックを有する取付け装置が以前から提案され実施されている。
【0006】
そのような取付けブロックには、取付けブロックを前述の溝内に固定するためのセットネジがネジ穴に螺合して設けられている。作業者は、セットネジと係合する固定用の締付け工具を用いてセットネジを締め付けることにより、取付けブロックを前述の溝内に固定し、検知装置をシリンダ本体に取り付けることができる。
【0007】
そのような取付けブロックを有する取付け装置として、本出願人が提案した取付け装置がある(特許文献1)。
【0008】
一般に、シリンダ装置のメンテナンス時などには、検知装置の取付け、取外し、または取付け位置の調整が行われる。そのため、検知装置の取付け装置は、前述のセットネジを締め付けるための締付け工具を容易に挿入できるようにしておく必要がある。
【0009】
ところが、シリンダ装置は、スペースが十分に確保されていない場所に設置されることがある。特に、薄型の流体圧シリンダは、そのような場所に設置されることが多い。その場合には、締付け工具を挿入するスペースも十分に確保されないことがしばしばである。
【0010】
特許文献1の取付け装置は、セットネジの軸方向と取付け装置がシリンダ本体の外周面上を移動する方向とが一致しており、締付け工具を挿入するスペースとして取付け装置が移動する空間を利用できるようになっている。これにより、それ以前の取付け装置では、締付け工具を挿入するスペースを取付け装置の周囲に確保しておく必要があったのに対して、特許文献1の取付け装置では、そのようなスペースを取付け装置の周囲に確保しておく必要がなくなった。
【0011】
また、特許文献1の取付け装置が有する取付けブロックには、取付けブロックを前述の溝に沿って移動させる際に用いられる移動用の治具と係合するネジ穴が設けられている。この治具は、先端に雄ネジが設けられた棒状の治具であり、固定用の締付け工具とは別に用意される。作業者は、治具をネジ穴にねじ込んで取付けブロックに連結した後に、それを押したり引いたりして取付けブロックを移動させることにより、検知装置の取付け、取外し、または取付け位置の変更などの移動調整を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−063066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1の取付け装置を含めて従来の取付け装置においては、作業者は、スペースが十分に確保されていない場所などに取り付けられる検知装置の移動調整を行う際に、固定用の締付け工具および移動用の治具の両方を用いて作業を行う必要があった。例えば、検知装置の取付け位置を変更する際には、締付け工具を差し込んでセットネジを緩め、取付けブロックの固定が解除されたら締付け工具を引き抜く。そして、治具をねじ込んで取付けブロックに連結し、治具を押したり引いたりして取付けブロックを所望の位置に移動させ、治具をねじ戻して取付けブロックから取り外す。そして、締付け工具を差し込んでセットネジを締め付け、取付けブロックが固定されたら締付け工具を引き抜く。
【0014】
このように、従来の取付け装置においては、検知装置の移動調整を行う作業者にかかる手間が大きかった。
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、検知装置などの移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される移動調整装置または取付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る移動調整装置は、取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材の移動調整装置であって、前記ブロック部材には、前記軸方向に延びるネジ穴、および当該ネジ穴と連続して延び当該ブロック部材の外周面に開口する装着穴が設けられており、前記ネジ穴には、ネジ回転工具と係合する係合部を備えるネジ部材が螺合しており、前記装着穴には、弾性変形可能なリング部材が装着されており、前記リング部材は、前記ネジ部材が前記ネジ回転工具により回転され当該リング部材が配置されている側に移動したときに、当該ネジ部材により押圧されて内側へ弾性変形することにより、当該リング部材を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持する。
【0017】
なお、「ブロック部材の移動調整」とは、ブロック部材の取付け位置を変更するためにブロック部材を移動調整することのほか、ブロック部材を取り付けまたは取り外すためにブロック部材を移動調整することを含む。
【0018】
また、本発明に係る取付け装置は、検知装置をシリンダ本体の外周面の軸方向に移動可能に取り付けるための取付け装置であって、前記検知装置が保持されるものであって、前記シリンダ本体の軸方向に延びるネジ穴、および前記ネジ穴と連続して延びて外周面に開口する装着穴が設けられた取付けブロックと、前記ネジ穴に螺合し、ネジ回転工具と係合する係合部を備え、前記ネジ回転工具により締め付けられたときに前記取付けブロックを前記シリンダ本体に対して固定するための固定用ネジと、前記装着穴に装着され、前記固定用ネジが前記ネジ回転工具により緩められたときに、当該固定用ネジにより押圧されて内側へ弾性変形することにより、自身を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持するOリングと、を有する。
【0019】
好ましくは、前記Oリングを挟むようにその両側において前記装着穴に装着される2つのバックアップリングと、前記Oリングおよび2つの前記バックアップリングが前記装着穴から抜け出るのを防止するために前記装着穴の開口する側に装着される止め輪と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
検知装置などの移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される移動調整装置または取付け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】検知装置が取り付けられた流体圧シリンダの平面図である。
【図2】検知装置が取り付けられた流体圧シリンダの正面図である。
【図3】検知装置の正面図である。
【図4】検知装置の平面図である。
【図5】検知装置の右側面図である。
【図6】検知装置の左側面図である。
【図7】取付けブロックの断面平面図である。
【図8】取付けブロックの断面正面図である。
【図9】六角レンチの正面図である。
【図10】装着穴に装着される部材の分解斜視図である。
【図11】取付けブロックの断面平面図および断面正面図である。
【図12】取付けブロックの断面平面図および断面正面図である。
【図13】検知装置の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本実施形態に係る検知装置3が取り付けられた流体圧シリンダ1の平面図、図2は検知装置3が取り付けられた流体圧シリンダ1の正面図である。また、図3は検知装置3の正面図、図4は検知装置3の平面図、図5は検知装置3の右側面図、図6は検知装置3の左側面図である。また、図7は取付けブロック51の断面平面図、図8は図7のA−O−O´−A´線矢視断面図(取付けブロック51の断面正面図)である。また、図9は、T型の六角レンチ60およびL型の六角レンチの正面図である。また、図10は、装着穴521に装着される部材の分解斜視図である。
【0023】
なお、図7および図8などの部品図において、他の一部の部品が組み付けられた状態を示す場合がある。また、以下の説明における「軸方向」および「周方向」は、原則として、検知装置3がシリンダチューブ11に取り付けられた場合の方向をいい、例えば、「軸方向」は図1における左右方向であり、「周方向」は図1における上下方向である。
【0024】
図1および図2を参照して、流体圧シリンダ1は、シリンダチューブ11、ピストン、ピストンロッド13、検知装置3、およびシリンダブシュ15などから構成されている。ただし、ピストンは図中に示されていない。
【0025】
シリンダチューブ(シリンダ本体)11は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、または合成樹脂などの非磁性材料からなる。シリンダチューブ11の外周面には、軸方向に延びる断面形状が略T字形の溝111が形成されている。溝111には、平面状または略円周面状の底部112、底部112において周方向に広がる拡張溝113、および外方に向かって係合可能な係合突起114が設けられている。溝111には、検知装置3が取り付けられる。なお、溝111の断面形状は種々の形状とすることができる。
【0026】
ピストンは、アルミニウム合金またはステンレス鋼などの非磁性材料からなり、シリンダチューブ11の内部に納められている。ピストンには、シリンダチューブ11の内周面との間をシールするために、パッキンが設けられている。ピストンの外周には、環状の溝が設けられており、その溝には、環状の永久磁石が装着されている。永久磁石は、ピストンロッド13の軸方向にN極およびS極を有している。ピストンロッド13は、鋼材などからなり、端部に設けられているネジなどによってピストンと一体に連結されている。
【0027】
図3〜図6も参照して、検知装置3は、検知装置本体としての検知スイッチ31、保持部材41、および取付けブロック51などから構成されている。
【0028】
検知スイッチ(検知装置本体)31は、ケーシング32、磁気センサ、ケーブル34、回路が実装された基板、およびその他の部材から構成されている。ただし、磁気センサおよび基板は図中に示されていない。検知スイッチ31によって、ピストンに装着されている永久磁石による磁界(磁束)が検知され、ピストンの位置が検出される。
【0029】
ケーシング32は、合成樹脂などからなり、ほぼ直方体状の外形を有しており、上面には、2つの線状凸部311によって浅い溝312が形成されている。ケーシング32内の下面に近い位置には、磁気センサが単独でまたは基板に取り付けられた状態で配置されている。磁気センサとして、ホール素子、ホールIC、磁気抵抗効果素子(MR素子)、磁気トランジスタ、リードスイッチ、または近接センサなどが用いられる。ケーシング32の先端部の上面中央には、検知スイッチ31の動作状態を表示するための表示灯314が設けられている。
【0030】
ケーブル34は、基板への電源の供給、および磁気センサの動作に基づく出力信号の取出しなどを行うためのものである。ケーブル34には、通常、電源の供給と出力信号の取出しとを共通で行う場合には2本の電線が、それらを別個に行う場合には3本の電線が、それぞれ内蔵される。
【0031】
保持部材41は、検知スイッチ31を保持し、ネジ42によって取付けブロック51に取り付けるためのものである。保持部材41は、十分の数ミリメートル程度の厚さの金属板を板金加工することにより形成されており、適度な弾力性を有している。保持部材41の材料として、通常、ステンレス鋼板が用いられるが、他の金属材料であってもよい。
【0032】
具体的には、保持部材41は、検知スイッチ31を保持するためのスイッチ保持部41Aと、取付けブロック51を保持するためのブロック保持部41Bとから構成されている。スイッチ保持部41Aとブロック保持部41Bとは、略長方形の底面部411を介して互いに一体に繋がっている。
【0033】
スイッチ保持部41Aは、底面部411に対して直角に折り曲げられた側壁部412、側壁部412に対してさらに直角に折り曲げられた上壁部413、上壁部413に対してさらに直角に折り曲げられた長さの短い押さえ側壁部414、および押さえ側壁部414の先端部から折り返された操作部415を有している。また、底面部411の一方の端縁部は下方へ折り曲げられ、ガイド部417となっている。このように、検知スイッチ31のケーシング32は、スイッチ保持部41Aの各部411〜414に囲まれて保持される。
【0034】
ブロック保持部41Bは、底面部411に対して直角に折り曲げられた側壁部418、側壁部418に対してさらに直角に折り曲げられた上壁部419、上壁部419に設けられた長穴420、底面部411の延長上にある延長底面部421、延長底面部421の先端部において60〜80度程度に折り曲げられた長さの短い押さえ側壁部422、および延長底面部421の表面に溶接などで固定された補助板423を有している。なお、補助板423は、底面部411などとは別体で製作して溶着によってそれらと一体化する例を示したが、当初から一体的に製作してもよい。このように、取付けブロック51は、ブロック保持部41Bの各部411、418〜419、421〜422に囲まれて保持される。
【0035】
なお、スイッチ保持部41Aおよびブロック保持部41Bの構成に関する詳細については、特許文献1を参照されたい。
【0036】
取付けブロック51は、アルミニウム合金または合成樹脂などの非磁性材料からなり、シリンダチューブ11の外周面に形成されている溝111に挿入される。保持部材41の補助板423を溝111の底部112に密着させ、取付けブロック51を溝111内に固定することにより、検知装置3をシリンダチューブ11に取り付けることができるようになっている。
【0037】
以下、取付けブロック51の構造について詳細に説明する。なお、図3〜図6においては、図が煩雑になるのを避けるため、取付けブロック51の内部に設けられる部材の図示を一部省略している。
【0038】
図3〜図6において、取付けブロック51は、取付けブロック51を溝111内に固定するための固定ブロック51Aと、保持部材41を連結するための連結ブロック51Bとから構成されている。固定ブロック51Aと連結ブロック51Bとは、一体に形成されている。
【0039】
固定ブロック51Aの両側面には、底面に近い位置に、2つの係合突出部511が設けられている。各係合突出部511は、その上面が斜面512となっており、拡張溝113に入り込んで係合突起114と係合する。これにより、取付けブロック51は、溝111に挿入されているとき、溝111の長手方向に移動可能(スライド可能)であるが、それ以外の方向には溝111から抜け出ないようになっている。固定ブロック51Aの底面には、帯状の浅い溝が設けられ、この部分が凹面513となっている。
【0040】
図7および図8も参照して、固定ブロック51Aには、ピン穴514、ネジ付き穴517、装着穴521、および連結穴522が設けられている。
【0041】
ピン穴514は、溝111の底部112と対向する面である凹面513に対して垂直に延び凹面513に開口している。
【0042】
ネジ付き穴517は、溝111の長手方向と同一の方向であって、かつピン穴514の方向に対して直角の方向に延びている。
【0043】
装着穴521は、ネジ付き穴517に連続して延び、固定ブロック51Aの側面に開口している。装着穴521の穴径は、ネジ付き穴517の穴径よりも若干大きくなっている。これは、後述するように、装着穴521には各種の部材が装着されるためである。装着穴521の穴径は、組立ての際にそれらの部材を装着穴521の開口部から装着しやすい大きさとなるように設定される。
【0044】
連結穴522は、ピン穴514およびネジ付き穴517の両方向に対して直角の方向に延び、固定ブロック51Aの側面に開口している。連結穴522は、ピン穴514と奥側(ピン穴514が開口している側と反対側)で接続されている。また、接続部523を介してネジ付き穴517と奥側(装着穴521が設けられている側と反対側)で接続されている。
【0045】
ピン穴514には、ピン穴514の開口部から突出可能でかつピン穴514の方向に移動可能な押圧部材としての押圧ピン515が挿入されている。押圧ピン515は、金属材料または合成樹脂材料などからなる円柱状のものであり、両端面には面取りが施されている。
【0046】
ピン穴514には、第一のスチールボール516aが押圧ピン515の頂部と当接して配置されている。第一のスチールボール516aは、一部をピン穴514に納めた状態で、ピン穴514および連結穴522の間を移動可能になっている。図7および図8に示す例では、約半分がピン穴514に納まっており、約半分が連結穴522に進入している。
【0047】
連結穴522には、第二のスチールボール516bが第一のスチールボール516aと当接して配置されている。第二のスチールボール516bは、一部を連結穴522に納めた状態で、連結穴522および接続部523の間を移動可能になっている。図7および図8に示す例では、約半分がピン穴514に納まっており、約半分が接続部523に進入している。また、連結穴522の開口する側には、円柱状のスポンジゴム525が詰め部材として挿入されている。スポンジゴム525は、例えば、シリコーンゴムなどの材料からなる。連結穴522が開口している固定ブロック51Aの側面には、開口部を覆うようにラミネートシールが貼り付けられている。
【0048】
ネジ付き穴517には、尖り先六角穴付きネジである押圧ネジ518が螺合している。押圧ネジ518は、接続部523の側に移動したときに、先端部が接続部523に進入し、円錐状のテーパ面が第二のスチールボール516bに当接するようになっている。また、押圧ネジ518の頭部に設けられた六角穴518aは、押圧ネジ518に対応するネジ回転工具としての六角レンチ60と係合するようになっている。
【0049】
図9(a)に示すように、六角レンチ60は、押圧ネジ518を締め付けまたは緩めるためのT型の回転工具(T型レンチ)である。六角レンチ60は、押圧ネジ518の六角穴518aと係合する部分である係合部60a、柄の部分であるシャンク部60b、および作業者が作業時に手で掴む部分である手持ち部60cから構成されている。六角レンチ60は、装着穴521に装着された部材を貫通して係合部60aが押圧ネジ518の六角穴518aと係合するように、装着穴521に挿入される。なお、T型の六角レンチ60の代わりに種々の型の回転工具を用いることができ、例えば、図9(b)に示すようなL型の六角レンチ60B(L型レンチ)を用いることができる。
【0050】
図10も参照して、装着穴521には、ネジ付き穴517の側から順に、第一のバックアップリング601、Oリング602、第二のバックアップリング603、および止め輪604が隙間なく装着されている。
【0051】
第一のバックアップリング601および第二のバックアップリング603は、金属材料または合成樹脂材料などからなるリング状の部材であり、両リングでOリング602を挟むように配置されている。両バックアップリングの端面は、平坦になっている。両バックアップリングの内径は、六角レンチ60のシャンク部60bの外径よりもいくらか大きい寸法となっており、両バックアップリングの外径は、装着穴521の穴径とほぼ同じかそれよりも若干小さい寸法となっている。
【0052】
Oリング602は、フッ素系樹脂などの適度な弾性および摩擦性を有する材料からなるリング状の部材である。Oリング602の内径は、自由状態において、六角レンチ60のシャンク部60bの外径よりもわずかに小さい寸法となっている。そのため、六角レンチ60を装着穴521に差し込む際に、軽く押し込めば、自由状態にあるOリング602を貫通して挿入可能となっている。また、差し込まれた状態にある六角レンチ60は、その外周面がOリング602により軽く把持され、装着穴521からやや抜け難くなっている。Oリング602の外径は、装着穴521の穴径とほぼ同じかそれよりも若干小さい寸法となっている。
【0053】
なお、後述するように、Oリング602は、押圧ネジ518が装着穴521の側に移動したときに押圧ネジ518により押圧されるようにする必要があるが、押圧ネジ518の頭部の端面が平坦ではない場合に、押圧ネジ518の頭部が直接Oリング602に触れると、Oリング602が破損するおそれがある。また、押圧ネジ518の頭部が直接Oリング602を押圧すると、Oリング602全体が均等に押圧されないことも考えられる。そこで、第一のバックアップリング601が設けられており、Oリング602は第一のバックアップリング601を介して押圧ネジ518により押圧されるようになっている。
【0054】
止め輪604は、金属材料などからなる部材であり、その弾性力により外方に伸張して装着穴521の開口部の近辺に設けられたリング状の溝にはまり込むようにして装着される。止め輪604は、第一のバックアップリング601、Oリング602、および第二のバックアップリング603が装着穴521から抜け出るのを防止するためのものである。止め輪604として、例えば、C形リングなどが用いられる。
【0055】
図3および図4を参照して、連結ブロック51Bには、保持部材41を連結するためのネジ穴519が設けられている。保持部材41の上壁部419が連結ブロック51Bの上面近辺に配置された状態で、ネジ42がワッシャおよび長穴420を貫通してネジ穴519にネジ込まれる。これにより、検知スイッチ31は、保持部材41を介して取付けブロック51と連結されて保持される。
【0056】
図11(a)は検知装置3が取り付けられた(固定された)際の取付けブロック51の断面平面図、図12(a)は検知装置3が取り外された(固定が解除された)際の取付けブロック51の断面平面図である。図11(b)、図12(b)は、それぞれ図11(a)、図12(a)のA−O−O´−A´線矢視断面図(取付けブロック51の断面正面図)である。
【0057】
さて、作業者は、取付けブロック51を溝111内に固定する際には、装着穴521の開口部から六角レンチ60を差し込んで押圧ネジ518の六角穴518aと係合させ、六角レンチ60を用いて押圧ネジ518を締め付ける(ねじ込む)。ただし、後述するように、押圧ネジ518を緩めた後であって、六角レンチ60が取付けブロック51に保持されている状態にあるときは、その状態にある六角レンチ60をそのまま用いればよい。
【0058】
作業者が押圧ネジ518を締め付ける方向に回転させると、図11に示すように、押圧ネジ518が接続部523の側に移動していく。押圧ネジ518の先端部がネジ付き穴517から接続部523に所定程度進入するまで移動すると、押圧ネジ518の先端部が第二のスチールボール516bに当接し、第二のスチールボール516bを押圧する。そして、第二のスチールボール516bは、第一のスチールボール516aの側に移動し、第一のスチールボール516aを押圧する。第一のスチールボール516aは、押圧ピン515の側に移動し、押圧ピン515を押圧する。押圧ピン515は、ピン穴514の開口部から突出する方向に移動し、保持部材41の補助板423を介して間接的に溝111の底部112を押圧する。
【0059】
図11において、押圧ネジ518が締め付けられると、押圧ピン515が補助板423を介して溝111の底部112を押し、取付けブロック51が溝111内に固定される。すなわち、押圧ピン515が補助板423を介して溝111の底部112に押し付けられることにより、取付けブロック51が図11(b)における上方へ移動し、係合突出部511が溝111の係合突起114に押し当たる形で係合する。この結果、押圧ピン515のピン穴514の開口部から突出する部分の長さL1は、締め付ける前の長さL2(図12(b)参照)よりも長くなる。このようにして、取付けブロック51が溝111内に固定され、検知装置3がシリンダチューブ11に取り付けられる。このとき、六角レンチ60は、装着穴521から容易に引き抜くことができる状態となっている。
【0060】
なお、保持部材41の補助板423および底面部411などは、押圧ピン515の移動に伴って適当に撓んで弾性変形し、保持部材41に保持されている検知スイッチ31と溝111の底部112との間の隙間が小さくなるようになっている。
【0061】
さて、作業者は、溝111内に固定された取付けブロック51の固定を解除する際には、六角レンチ60を用いて押圧ネジ518を緩める(ねじ戻す)。
【0062】
作業者が押圧ネジ518を緩める方向に回転させると、図12に示すように、押圧ネジ518が装着穴521の側に移動していく。押圧ネジ518が移動すると、その分、押圧ピン515、第一のスチールボール516a、および第二のスチールボール516bは、保持部材41の補助板423の弾性力によって押し戻される。
【0063】
図12において、押圧ネジ518の先端部がネジ付き穴517に所定程度納まるまで緩められると、取付けブロック51の固定が解除される。すなわち、押圧ピン515が補助板423の弾性力によって押し戻されることにより、取付けブロック51が図12(b)における下方へ移動し、係合突起114に係合していた係合突出部511の係合が解除される。この結果、押圧ピン515のピン穴514の開口部から突出する部分の長さL2は、緩める前の長さL1(図11(b)参照)よりも短くなる。このようにして、取付けブロック51の固定が解除され、検知装置3をシリンダチューブ11の軸方向に沿って移動させたり、シリンダチューブ11から取り外したりすることが可能となる。
【0064】
他方で、押圧ネジ518の頭部がネジ付き穴517から装着穴521に進入するまで緩められると、押圧ネジ518が第一のバックアップリング601に当接し、第一のバックアップリング601を押圧する。これにより、第一のバックアップリング601と第二のバックアップリング603との間隔Tが狭まり、その間に挟まれたOリング602は、両リングから圧迫されて弾性変形する。その際、大部分が内側に撓み、内周面が縮径する。すなわち、Oリング602は、押圧ネジ518がある程度緩められたときに、両リングを介して間接的に押圧ネジ518により押圧されて弾性変形し、内周面が縮径する。例えば、押圧ネジ518が2〜3回転程度緩められると、Oリング602の内周面が縮径する。内周面が縮径したOリング602は、自身の内周面を貫通して挿入されている六角レンチ60のシャンク部60bの外周面を把持する。これにより、六角レンチ60は、Oリング602によって拘束され、取付けブロック51に連結された状態になる。そのため、このとき、六角レンチ60は、装着穴521から容易には引き抜くことができない状態となっている。また、このとき、第一のバックアップリングはOリング602の弾性力によって押し返されるので、作業者が押圧ネジ518をさらに緩めようとすると、それ以前よりも大きな回転力を与えなければならない。つまり、作業者は、押圧ネジ518を緩めるのに必要な力が増大した時点で、それ以上緩める必要がないことを認識することができる。
【0065】
その後、作業者は、Oリング602により把持された状態にある六角レンチ60を押したり引いたりして、取付けブロック51を検知スイッチ31および保持部材41共々に移動させることにより、検知装置3の取付け位置を調整することができる。
【0066】
なお、装着穴521に装着された各種の部材は、前述の通り、六角レンチ60を取付けブロック51に連結させるために設けられているが、押圧ネジ518が緩められ過ぎた際に装着穴521の開口部から抜け落ちるのを防止するための抜止めとしても作用する。
【0067】
次に、前述の検知装置3の使用方法を説明する。使用方法の一例として、既にシリンダチューブ11に取り付けられている検知装置3の位置を別の位置に移動させる場合を説明する。
【0068】
図13は、検知装置3の使用方法を説明するための図である。
【0069】
図13において、作業者は、六角レンチ60を装着穴521の開口部からM1方向に差し込む。そして、六角レンチ60をR1方向に回転させて押圧ネジ518を緩め始め、Oリング602が圧縮されるまで緩めていく。これにより、溝111内に固定されていた取付けブロック51は、固定が解除されることとなり、差し込んだ六角レンチ60は、取付けブロック51に連結されることとなる。
【0070】
次に、作業者は、六角レンチ60を押したり引いたりして、検知装置3を溝111に沿って所望の位置まで移動させる。すなわち、シリンダチューブ11の軸方向に沿って移動させる。
【0071】
次に、作業者は、六角レンチ60をR2方向に回転させて押圧ネジ518を締め付けることにより、取付けブロック51を溝111内に固定する。この段階で、取付けブロック51に連結されていた六角レンチ60は、連結が解除されている。そして、作業者は、六角レンチ60を装着穴521からM2方向に引き抜く。
【0072】
なお、作業者は、検知装置3をシリンダチューブ11に取り付ける場合や、検知装置3をシリンダチューブ11から取り外す場合にも、同様にして、検知装置3の移動調整を行うことができる。
【0073】
以上のように、検知装置3においては、作業者が取付けブロック51の固定を解除するために六角レンチ60を用いて押圧ネジ518をある程度緩めると、押圧ネジ518により押圧されたOリング602が内側に撓んで六角レンチ60を把持することにより、六角レンチ60は取付けブロック51に連結された状態になる。作業者は、連結された六角レンチ60を引き続き用いて検知装置3の移動調整を行うことができる。つまり、六角レンチ60は、検知装置3を固定するための固定用の締付け工具としての役割と、検知装置3の移動調整を行うための移動用の治具としての役割とを兼ね備えている。
【0074】
よって、従来は、検知装置の移動調整を行う際に、固定用の締付け工具および移動用の治具の両方を用いて作業を行う必要があったところ、その必要がなくなり、移動調整を行う作業者にかかる手間が軽減される。
【0075】
また、固定用の締付け工具および移動用の治具は、シリンダ装置のメンテナンスなどのために検知装置の移動調整を行う必要がある時以外は基本的に使用されることがないが、従来は、その間、両方の工具または治具を適切に管理しておくのが面倒であった。特に、薄型の流体圧シリンダなどに用いられる工具または治具は、小型のものが多いので、適切に管理されずに紛失してしまう恐れもあった。一方、検知装置3においては、管理すべき工具または治具は、六角レンチ60の1本のみで済むため、工具または治具の管理者にかかる手間も軽減される。
【0076】
前述の実施形態において、押圧ネジ518が緩められる過程で、取付けブロック51の固定が解除され始めるとただちに六角レンチ60がOリング602により把持され始めるようにしてもよいし、固定が解除され始めてしばらくしてから把持され始めるようにしてもよいし、固定が完全に解除された後に把持され始めるようにしてもよい。つまり、取付けブロック51の固定が解除され始めてから六角レンチ60がOリング602により把持され始めるまでの遊びの期間は、短くとっても長くとってもよい。押圧ネジ518が締め付けられる過程で、六角レンチ60におけるOリング602による把持が解除され始めてから取付けブロック51が固定され始めるまでの遊びの期間についても、同様である。
【0077】
この遊びの期間は、ネジ付き穴517の長さ、押圧ネジ518の長さ、または押圧ネジ518の先端部の形状などを変更することにより、適宜調整することができる。すなわちそれらを変更して、押圧ネジ518が、常に第二のスチールボール516bおよび第一のバックアップリング601の双方に当接するようにすることもできるし、移動の過渡期にのみ双方に当接するようにすることもできるし、一方に当接しているときは他方には当接しないようにすることもできる。
【0078】
また、前述の実施形態においては、ネジ付き穴517、押圧ネジ518、装着穴521、および装着穴521に装着される各種の部材などは、図4における取付けブロック51の右側面の側から六角レンチ60が挿入されて押圧ネジ518が回転させられることを前提とした配置になっていたが、取付けブロック51の他の側面の側から六角レンチ60を挿入して押圧ネジ518を回転可能なように配置にしてもよい。つまり、ネジ付き穴517に連続して延びる装着穴521は、どの側面に開口するように設けてもよい。また、取付けブロック51を平面視が矩形ではなく、台形、六角形、八角形、その他の多角形、または円形などとしてもよく、その場合にも、ネジ付き穴517に連続して延びる装着穴521は、それらの種々の側面または周面に開口するように設けることができる。
【0079】
また、前述の実施形態においては、取付けブロック51には、連結穴522および第二のスチールボール516bが設けられていたが、それらを省略し、押圧ネジ518が直接第一のスチールボール516aを押圧するように構成してもよい。つまり、特許文献1の前半に記述された実施形態のように構成してもよい。また、押圧ピン515を省略し、第一のスチールボール516aが保持部材41の補助板423を介して間接的に溝111の底部112を押圧するように構成してもよい。
【0080】
また、前述の実施形態においては、押圧ネジ518として、六角穴付きネジを用いたが、プラスネジ、マイナスネジ、またはその他のネジであってもよい。その場合には、六角レンチ60の代わりにそのネジに係合するネジ回転工具を用意することはもちろんである。
【0081】
また、前述の実施形態においては、検知装置3は、検知スイッチ31、保持部材41、および取付けブロック51の3つの部材が連結されて構成されていたが、これらの部材の全部または一部を一体的に構成してもよい。
【0082】
その他、流体圧シリンダ1、検知装置3、検知スイッチ31、保持部材41、および取付けブロック51の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、および材質などの構成は、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0083】
3 検知装置
11 シリンダチューブ(取付け対象部材、シリンダ本体)
51 取付けブロック(ブロック部材)
60 六角レンチ(ネジ回転工具)
111 溝
514 ピン穴
515 押圧ピン(押圧用ピン)
516a 第一のスチールボール(球体)
516b 第二のスチールボール(球体)
517 ネジ付き穴(ネジ穴)
518 押圧ネジ(ネジ部材、固定用ネジ)
518a 六角穴(係合部)
521 装着穴
522 連結穴
601 第一のバックアップリング
602 Oリング(リング部材)
603 第二のバックアップリング
604 止め輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材の移動調整装置であって、
前記ブロック部材には、前記軸方向に延びるネジ穴、および当該ネジ穴と連続して延び当該ブロック部材の外周面に開口する装着穴が設けられており、
前記ネジ穴には、ネジ回転工具と係合する係合部を備えるネジ部材が螺合しており、
前記装着穴には、弾性変形可能なリング部材が装着されており、
前記リング部材は、前記ネジ部材が前記ネジ回転工具により回転され当該リング部材が配置されている側に移動したときに、当該ネジ部材により押圧されて内側へ弾性変形することにより、当該リング部材を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持する、
ことを特徴とするブロック部材の移動調整装置。
【請求項2】
検知装置をシリンダ本体の外周面の軸方向に移動可能に取り付けるための取付け装置であって、
前記検知装置が保持されるものであって、前記シリンダ本体の軸方向に延びるネジ穴、および前記ネジ穴と連続して延びて外周面に開口する装着穴が設けられた取付けブロックと、
前記ネジ穴に螺合し、ネジ回転工具と係合する係合部を備え、前記ネジ回転工具により締め付けられたときに前記取付けブロックを前記シリンダ本体に対して固定するための固定用ネジと、
前記装着穴に装着され、前記固定用ネジが前記ネジ回転工具により緩められたときに、当該固定用ネジにより押圧されて内側へ弾性変形することにより、自身を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持するOリングと、
を有することを特徴とする検知装置の取付け装置。
【請求項3】
前記Oリングを挟むようにその両側において前記装着穴に装着される2つのバックアップリングと、
前記Oリングおよび2つの前記バックアップリングが前記装着穴から抜け出るのを防止するために前記装着穴の開口する側に装着される止め輪と、
を有する、
請求項2記載の検知装置の取付け装置。
【請求項4】
前記取付けブロックは、前記シリンダ本体の外周面に当該シリンダ本体の軸方向に設けられた断面略T字形の溝に挿入され、当該溝の長手方向に移動可能になっており、
前記取付けブロックには、前記溝の底面と対向する面に開口するピン穴と、前記ネジ穴とは前記装着穴が設けられている側と反対側で接続され、前記ピン穴とは当該ピン穴が開口する側と反対側で接続されるように延びる連結穴と、が設けられ、
前記ピン穴には、当該ピン穴から突出可能でかつ当該ピン穴の軸方向に移動可能な押圧用ピンが挿入され、
前記連結穴には、前記押圧用ピンの頂部または前記固定用ネジの先端部と当接しかつ当該連結穴の軸方向に移動可能な1個または複数個の球体が挿入され、
前記固定用ネジが締め付けられたときに、前記球体が当該固定用ネジにより押圧され、前記押圧用ピンが当該球体により押圧されて前記ピン穴から突出し、前記溝の底面が当該押圧用ピンにより直接的にまたは間接的に押圧されることにより、前記取付けブロックが前記シリンダ本体に対して固定される、
請求項2または3のいずれかに記載の検知装置の取付け装置。
【請求項1】
取付け対象部材に対しその軸方向に移動可能に取り付けられるブロック部材の移動調整装置であって、
前記ブロック部材には、前記軸方向に延びるネジ穴、および当該ネジ穴と連続して延び当該ブロック部材の外周面に開口する装着穴が設けられており、
前記ネジ穴には、ネジ回転工具と係合する係合部を備えるネジ部材が螺合しており、
前記装着穴には、弾性変形可能なリング部材が装着されており、
前記リング部材は、前記ネジ部材が前記ネジ回転工具により回転され当該リング部材が配置されている側に移動したときに、当該ネジ部材により押圧されて内側へ弾性変形することにより、当該リング部材を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持する、
ことを特徴とするブロック部材の移動調整装置。
【請求項2】
検知装置をシリンダ本体の外周面の軸方向に移動可能に取り付けるための取付け装置であって、
前記検知装置が保持されるものであって、前記シリンダ本体の軸方向に延びるネジ穴、および前記ネジ穴と連続して延びて外周面に開口する装着穴が設けられた取付けブロックと、
前記ネジ穴に螺合し、ネジ回転工具と係合する係合部を備え、前記ネジ回転工具により締め付けられたときに前記取付けブロックを前記シリンダ本体に対して固定するための固定用ネジと、
前記装着穴に装着され、前記固定用ネジが前記ネジ回転工具により緩められたときに、当該固定用ネジにより押圧されて内側へ弾性変形することにより、自身を貫通して前記係合部と係合するように挿入されている当該ネジ回転工具の外周面を把持するOリングと、
を有することを特徴とする検知装置の取付け装置。
【請求項3】
前記Oリングを挟むようにその両側において前記装着穴に装着される2つのバックアップリングと、
前記Oリングおよび2つの前記バックアップリングが前記装着穴から抜け出るのを防止するために前記装着穴の開口する側に装着される止め輪と、
を有する、
請求項2記載の検知装置の取付け装置。
【請求項4】
前記取付けブロックは、前記シリンダ本体の外周面に当該シリンダ本体の軸方向に設けられた断面略T字形の溝に挿入され、当該溝の長手方向に移動可能になっており、
前記取付けブロックには、前記溝の底面と対向する面に開口するピン穴と、前記ネジ穴とは前記装着穴が設けられている側と反対側で接続され、前記ピン穴とは当該ピン穴が開口する側と反対側で接続されるように延びる連結穴と、が設けられ、
前記ピン穴には、当該ピン穴から突出可能でかつ当該ピン穴の軸方向に移動可能な押圧用ピンが挿入され、
前記連結穴には、前記押圧用ピンの頂部または前記固定用ネジの先端部と当接しかつ当該連結穴の軸方向に移動可能な1個または複数個の球体が挿入され、
前記固定用ネジが締め付けられたときに、前記球体が当該固定用ネジにより押圧され、前記押圧用ピンが当該球体により押圧されて前記ピン穴から突出し、前記溝の底面が当該押圧用ピンにより直接的にまたは間接的に押圧されることにより、前記取付けブロックが前記シリンダ本体に対して固定される、
請求項2または3のいずれかに記載の検知装置の取付け装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−87811(P2012−87811A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232190(P2010−232190)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000204240)株式会社TAIYO (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000204240)株式会社TAIYO (63)
【Fターム(参考)】
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