説明

移植における免疫応答の予防および治療のための肝臓間質細胞

本発明は、移植物の宿主による拒絶を減少させるか、または阻止するのに有効な量の肝臓間質細胞でレシピエントを処理することにより、該レシピエントにおける該移植物に対する免疫応答を減少させるための方法および組成物を包含する。また、肝臓間質細胞を用いる処理による、外来組織による宿主に対する免疫応答、すなわち、移植片対宿主疾患の減少を誘導する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
肝臓は、様々な生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす活動的な臓器である。肝臓の複雑な機能としては、代謝、貯蔵、排泄、アルブミンなどの血漿タンパク質の分泌およびシトクロムP-450系の酵素による有害物質の解毒が挙げられる。さらに、通常は静止期の肝臓は、特定の環境下では顕著な分裂活性を示すこともできる。肝臓の主要な細胞集団は、肝細胞としても知られる実質細胞である。肝臓はまた、内皮細胞、脂肪細胞、線維芽細胞およびクッパー細胞などのいくつかの他の細胞型も含む。肝臓が損傷されるか、または部分的に除去された場合に迅速な再生を引き起こす肝臓細胞の能力により、肝臓は幹細胞の起源となる可能性を有するようになる。
【0002】
肝臓は、腸、皮膚および造血系とのいくつかの類似点を有する幹細胞・系統系を有すると現在では考えられている(Sigalら、1993 Amer. J. Physiol., 263:139-148)。そのようなものとして、あらゆる年齢の動物の肝臓には前駆細胞集団が存在する。肝臓から単離された場合、これらの細胞は細胞治療のための潜在的な候補として役立ち得る。
【0003】
哺乳動物の免疫系は、感染性物質からの個体の保護および腫瘍増殖の予防において中心的な役割を果たす。しかしながら、同じ免疫系が、関連性のないドナーからの細胞、組織および臓器移植物の拒絶などの望ましくない作用をもたらしうる。免疫系は、有害である侵入物と、移植された組織などの有益な侵入物とを区別せず、かくして免疫系は移植された組織または臓器を拒絶する。移植された臓器の拒絶は、一般的には、ドナーの同種異系抗原または異種抗原を認識する宿主中に存在する同種反応性T細胞により媒介される。
【0004】
免疫学的寛容は、抗原により誘導された機能的不活化またはその抗原にとって特異的なリンパ球の死の結果として、特異的抗原に対して積極的に誘導される不応性である。そのような寛容性を誘導する抗原を「寛容原」と呼び、免疫応答を生じる抗原である免疫原とは区別される。B細胞寛容および抗体を産生しないことの1つの機構は、ヘルパーT細胞または他の抗原提示細胞による刺激(B細胞活性化における第2段階)の非存在下での、抗原と特異的B細胞との相互作用(B細胞活性化における第1段階)を含む。B細胞寛容の他の機構も提唱されてきた。例えば、B細胞は、T細胞の非存在下で、表面免疫グロブリンを介するシグナリングにおける遮断(「抗原競合」)に起因してアネルギーになり得る。さらに、抗原提示細胞による同時刺激の非存在下で、抗原によるB細胞表面免疫グロブリンの強力な架橋は、正常で成熟したB細胞のアポトーシスによる死を誘導することができるが、自己免疫抗体を産生するB細胞におけるアポトーシスは誘導しない可能がある(Tsubataら、1994, Curr. Biol. 4:8-17)。
【0005】
T細胞寛容は、1)自己ペプチドに対して反応性である胸腺細胞がクローン除去により排除される胸腺(中心的寛容)において、および2)寛容原性条件下での自己抗原に対する曝露により末梢(末梢寛容)において達成される。クローン除去はまた、抗原提示細胞上の細胞死分子の発現から生じ得る。細胞死分子の古典的な例は、Fasリガンド(FasL)および腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAILリガンド)であり、これらは活性化されたT細胞上で、それぞれ対応する受容体FasおよびDR4に結合し、そのT細胞のアポトーシスを誘導する。TNFRスーパーファミリーのメンバーであるCD27と、CD27リガンド(CD70)との相互作用もまた、T細胞のアポトーシスを誘導する。
【0006】
遺伝的に異なる個体間での細胞、組織、および臓器の移植は常に、移植片拒絶の危険性と関連している。ほとんど全ての細胞が、主要組織適合複合体の産物であるMHCクラスI分子を発現する。さらに、多くの細胞型は、炎症性サイトカインに曝露された場合にMHCクラスII分子を発現するように誘導されうる。さらなる免疫原性分子としては、雌性レシピエントにより認識されるY染色体抗原などの副組織適合抗原に由来するものが挙げられる。同種異系移植片の拒絶は主に、CD4とCD8の両方のサブクラスのT細胞により媒介される(Rosenbergら、1992, Annu. Rev. Immunol. 10:333)。同種反応性CD4 T細胞は、同種異系抗原に対する細胞溶解性CD8応答を悪化させるサイトカインを産生する。これらのサブクラス内では、それらが産生するサイトカインを特徴とする抗原刺激の後に競合するサブ細胞集団が生じる。IL-2およびIFN-γを産生するTh1細胞は主に、同種異系移植片拒絶に関与する(Mossmannら、1989 Annu. Rev. Immunol. 7:145)。IL-4およびIL-10を産生するTh2細胞は、IL-10を介してTh1応答を下方調節することができる(Fiorentinoら、1989 J. Exp. Med. 170:2081)。実際、望ましくないTh1応答をTh2経路へと転向させるために多くの努力が費やされてきた。患者における望ましくない同種反応性T細胞応答(同種異系移植片拒絶、移植片対宿主疾患)は、典型的には、プレドニゾン、アザチオプリン、およびシクロスポリンAなどの免疫抑制剤で治療される。あいにく、一般的には、これらの薬剤は患者の一生に渡って投与する必要があり、これらは全身的免疫抑制などの多くの危険な副作用を有する。
【0007】
臓器移植の主要な目標は、他の外来抗原に対してレシピエントの免疫能力を保存しながら、レシピエントにより生成される移植片拒絶免疫応答を誘導することなく、ドナーの臓器を永続的に移植することである。典型的には、宿主の拒絶応答を予防するために、シクロスポリン、メトトレキサート、ステロイドおよびFK506などの非特異的免疫抑制剤を用いる。これらの薬剤を連日投与しなければならず、投与を中止した場合、通常は移植片拒絶が起こる。しかしながら、非特異的免疫抑制剤を用いる際の主要な問題は、それらが、あらゆる態様の免疫応答を抑制することによって機能するため、感染および癌などの他の疾患に対するレシピエントの罹患性を大きく増加させるという点である。
【0008】
さらに、免疫抑制剤の使用にも拘らず、移植片拒絶は依然としてヒトの臓器移植において罹患および死亡の主要な原因のままである。多くのヒト移植物は永続的な移植片受容を示さずに、10年以内に機能を失う。5年間生存する心臓移植物は50%のみであり、10年生存する腎臓移植物は20%である(Opelzら、1981, Lancet 1:1223)。
【0009】
移植の成功は、ドナーの組織の宿主による拒絶を回避するための、免疫エフェクター細胞により媒介される移植物に対する宿主による望ましくない免疫応答の予防および/または減少に依存すると現在では考えられている。また、移植の成功にとっては、移植片対宿主疾患として知られる、レシピエントの組織に対するドナーの組織による望ましくない免疫応答を排除するか、または減少させるための方法も有利である。かくして、遺伝的に異なる個体間の細胞、組織、および臓器の移植に関連する望ましくない免疫応答を抑制するか、またはさもなければ予防する方法の長年に渡る必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たすものである。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、移植物の宿主による拒絶を減少させるか、または阻止するのに有効な量の肝臓の間質細胞(LSC)を用いてレシピエントを治療することにより、レシピエントにおける移植物に対する免疫応答を減少させる方法を含む。本発明はまた、LSCを用いる治療による、外来組織による宿主に対する免疫応答、すなわち、移植片対宿主疾患の低減を誘導する方法も含む。LSCを、移植の前、移植と同時に、または移植の後に投与することができる。
【0011】
本発明はまた、エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対するエフェクター細胞の免疫応答を減少させるのに有効な量のLSCを移植レシピエントに投与し、それにより、移植レシピエントにおいて、該エフェクター細胞が該同種異系抗原に対する低下した免疫応答を示すようになることを含む、レシピエントにおいてエフェクター細胞に対する同種異系抗原に対するエフェクター細胞の免疫応答を減少させるように移植レシピエントを治療する方法も含む。
【0012】
一実施形態においては、エフェクター細胞はT細胞である。
【0013】
別の実施形態においては、T細胞はドナーに由来するものであり、同種異系抗原はレシピエントに由来するものである。
【0014】
別の実施形態においては、T細胞はレシピエントに由来するものであり、同種異系抗原はドナーに由来するものである。
【0015】
さらに別の実施形態においては、T細胞は移植物中に存在する。
【0016】
さらなる実施形態においては、移植物は骨髄である。
【0017】
別の実施形態においては、移植物は造血幹細胞である。
【0018】
一実施形態においては、移植物は神経幹細胞である。
【0019】
さらなる実施形態においては、LSCを培養して増殖させた後、移植レシピエントに投与する。
【0020】
別の実施形態においては、エフェクター細胞は、T細胞を、レシピエントに由来する細胞または組織と接触させた後、移植して該T細胞を活性化させることにより、予め活性化されたドナー由来のそのT細胞であり、ここでさらにその免疫応答は該T細胞の再活性化である。
【0021】
別の実施形態においては、LSCを、レシピエントによる移植物拒絶を治療するために移植レシピエントに投与する。
【0022】
さらに別の実施形態においては、LSCはヒトLSCである。
【0023】
一実施形態においては、前記方法はさらに、レシピエントに免疫抑制剤を投与することを含む。
【0024】
一実施形態においては、移植物は固形臓器である。好ましくは、固形臓器は心臓、膵臓、腎臓、肺および肝臓からなる群より選択される。
【0025】
さらなる実施形態においては、LSCをレシピエントに静脈内投与する。
【0026】
別の実施形態においては、エフェクター細胞はドナー移植のレシピエントの細胞である。
【0027】
さらに別の実施形態においては、LSCは遺伝的に改変されている。
【0028】
本発明はまた、エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるのに有効な量のLSCで処理した移植物を移植レシピエントに移植し、それにより、移植レシピエントにおいて、該エフェクター細胞が該同種異系抗原に対する低下した免疫応答を示すようになることを含む、レシピエントにおいて、エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるように、移植レシピエントを治療する方法も含む。
【0029】
本発明はまた、エフェクター細胞をLSCで処理することを含む、同種異系細胞に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させる方法も含む。
【0030】
図面の簡単な説明
上記の概要、ならびに以下の発明の詳細な説明は、添付の図面と共に読む場合により良く理解されるであろう。本発明を例示する目的で、目下好ましい実施形態を図面中に示す。しかしながら、本発明は、示された正確な処置および手段に限定されるものではないことが理解されるべきである。
(図面の簡単な説明については別節を参照)
【0031】
詳細な説明
本発明は、肝臓由来の間質細胞(LSC)が新規な免疫学的特性を有し、従って、それらがレシピエント自身の免疫系による移植物に対する免疫応答を減少させること、および/もしくは排除することにより、例えば、生体適合性格子またはドナーの組織、臓器もしくは細胞などの移植物の移植において有用であり得るという発見に関する。以下により十分に記載するように、LSCは移植物の同種異系移植片拒絶の阻止および/または予防において役割を果たす。
【0032】
さらに、本明細書に開示されるデータはまた、LSCが、例えば、移植片対宿主疾患として知られるレシピエント組織に対する、生体適合性格子またはドナーの組織、臓器もしくは細胞などのドナーの移植物による望ましくない免疫応答の阻止および/または予防において有用であることを実証する。
【0033】
従って、本発明は、移植物の宿主による拒絶を減少させるか、もしくは阻止するのに有効な量のLSCで、レシピエントを処理することにより、該レシピエントにおける該移植物に対する免疫応答を減少させ、および/または排除するための方法および組成物を包含する。また、レシピエントに対するドナーの移植物による有害な応答を阻止するか、もしくは減少させるための、移植肝臓間質細胞のドナーの移植物および/またはレシピエントの処理により、宿主に対する外来移植物による該宿主における免疫応答、すなわち、移植片対宿主疾患を低減させ、および/または排除するための方法および組成物も包含される。
【0034】
定義
本明細書で用いる以下の用語の各々は、本節において関連づけた意味を有する。
【0035】
本明細書で用いられる冠詞「a」および「an」は、該冠詞の文法的目的語が1またはそれ以上(すなわち、少なくとも1)であることを指す。例えば、「an element」とは、1つのエレメントまたは1を超える数のエレメントを意味する。
【0036】
用語「約」は、当業者であれば理解できるはずであり、それが用いられる文脈上、ある程度まで変化するであろう。
【0037】
本明細書で用いる用語「自己(由来)」とは、後に個体に再導入されるのと同じ個体から誘導された任意の材料を指すことを意味する。
【0038】
本明細書で用いる用語「生体適合性格子」は、組織発達を助ける三次元構造への形成を容易にすることができる基質を指すことを意味する。かくして、例えば、細胞外マトリックス材料、合成ポリマー、サイトカイン、増殖因子などを含むものなどの、そのような生体適合性格子上で細胞を培養するか、またはその上に細胞を播種することができる。この格子を、組織型の発達を容易にするために所望の形状に成型することができる。また、細胞の培養中の少なくとも初期段階で、培地および/または基質に、好適な組織の型および構造の発達を容易にする因子(例えば、増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックス材料など)を補給する。
【0039】
本明細書で用いる用語「骨髄間質細胞」、「間質細胞」、「間葉系幹細胞」または「MSC」は互換的に用いられ、骨細胞、軟骨細胞、単球、および脂肪細胞の幹細胞様前駆体として働くことができる骨髄中の細胞の小画分を指す。骨髄間質細胞は幅広く研究されている(Castro-Malaspinaら、1980, Blood 56: 289-30125; Piersmaら、1985, Exp. Hematol 13: 237-243; Simmonsら、1991, Blood 78: 55-62; Beresfordら、1992, J. Cell. Sci. 102: 341-351; Liesveldら、1989, Blood 73: 1794-1800; Liesveldら、Exp. Hematol 19: 63-70; Bennettら、1991, J. Cell. Sci. 99: 131-139)。骨髄間質細胞を、任意の動物から誘導することができる。いくつかの実施形態においては、間質細胞は霊長類、好ましくはヒトに由来するものである。
【0040】
本明細書で用いる「肝臓間質細胞」または「LSC」は、肝臓から誘導された線維芽細胞型細胞の小画分を指す。LSCは、LSCを取得したのと同じ個体ではない個体に由来するT細胞と接触させた場合、T細胞応答を引き出さない。さらに、LSCは免疫応答の際に同種反応性T細胞増殖を抑制することができる。例えば、LSCは、同種異系T細胞と末梢血単核細胞(PBMC)との間の混合リンパ球反応(MLR)を抑制することができる。
【0041】
本明細書で用いる「神経幹細胞」または「NSC」とは、未分化であり、多能性の、自己再生神経細胞を指す。神経幹細胞は、分裂することができ、好適な条件下では自己再生能力を有し、最終的に神経細胞、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトに分化することができるクローン性多能性幹細胞である。従って、神経幹細胞は、幹細胞の子孫が複数の分化経路を有するため、「多能性」である。神経幹細胞は自己維持することができ、これはそれぞれの細胞分裂について、平均的に1個の娘細胞が同様に幹細胞であることを意味する。
【0042】
「移植片」とは、移植のための細胞、組織、臓器またはさもなければ任意の生物学的に適合性の格子を指す。
【0043】
「同種異系」は、同じ種の異なる動物個体に由来する移植片を指す。
【0044】
「異種」は、異なる種の動物から誘導された移植片を指す。
【0045】
「移植物」とは、移植しようとする生体適合性格子またはドナーの組織、臓器もしくは細胞を指す。移植物の例としては、限定されるものではないが、皮膚、骨髄、ならびに心臓、膵臓、腎臓、肺および肝臓などの固形臓器が挙げられる。
【0046】
本明細書で定義される「同種異系肝臓間質細胞(LSC)」は、レシピエントと同じ種の異なる個体から取得する。
【0047】
「ドナー抗原」とは、レシピエントに移植しようとするドナー組織により発現される抗原を指す。
【0048】
「同種異系抗原」は、レシピエントにより発現される抗原とは異なる抗原である。
【0049】
本明細書で用いる「エフェクター細胞」とは、抗原に対する免疫応答を媒介する細胞を指す。移植物をレシピエントに導入する状況においては、このエフェクター細胞は、ドナーの移植物中に存在する抗原に対する免疫応答を引き出すレシピエント自身の細胞でありうる。別の状況では、エフェクター細胞は移植物の一部であってよく、それによって該移植物のレシピエントへの導入は、該移植物のレシピエントに対する免疫応答を引き出す移植物中に存在するエフェクター細胞をもたらす。
【0050】
本明細書で用いる表現「移植レシピエントにおいてエフェクター細胞にとっての同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるように該移植レシピエントを治療する」とは、任意の方法、例えばレシピエントにLSCを投与することにより該レシピエントにおける同種異系抗原に対する内因性の免疫応答を、LSCで処理しなかったこと以外は同一の動物における内因性免疫応答と比較して、減少させることを意味する。内因性免疫応答の減少を、本明細書に開示された方法、または動物における内因性免疫応答を評価するための任意の他の方法を用いて評価することができる。
【0051】
本明細書で用いる用語「増殖培地」は、細胞の増殖を促進する培養培地を指すことを意味する。増殖培地は動物血清を含んでもよいが、該増殖培地が無血清であってもよいという点で、これは常に必要とされる成分ではない。
【0052】
本明細書で用いる用語「増殖因子産物」とは、細胞に対する成長作用、増殖作用、分化作用または栄養作用を有するタンパク質、ペプチド、マイトジェン、または他の分子を指す。例えば、CNS障害の治療において有用な増殖因子産物としては、限定されるものではないが、神経増殖因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン(NT-3、NT-4/NT-5)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、アンフィレグリン、FGF-1、FGF-2、EGF、TGFα、TGFβ、PDGF、IGF、およびインターロイキン;IL-2、IL-12、IL-13が挙げられる。
【0053】
本明細書で用いる細胞の「免疫表現型」とは、細胞の表面タンパク質プロフィールの点における細胞の表現型を指す。
【0054】
「単離された細胞」とは、他の成分から分離された細胞および/または組織もしくは哺乳動物中でその単離された細胞に天然に付随する細胞を指す。
【0055】
本明細書で用いる用語「モジュレートする」とは、生物学的状態の任意の変化、すなわち、増加、減少などを指すことを意味する。
【0056】
本明細書で用いる用語「非免疫原性」とは、LSCがMLRにおいてT細胞の増殖を誘導しないという発見を指すことを意味する。しかしながら、用語「非免疫原性」は、MLRにおけるT細胞増殖の誘導がされないことに限定されるべきではなく、むしろ動物へのLSCの投与後のin vivoでのT細胞増殖が無いことに適用されると解釈されるべきである。
【0057】
本明細書で用いる「増殖」とは、細胞の再生または複製を指す。すなわち、増殖は、より多い数の細胞を産生することを包含し、特に、単純に細胞数を計測すること、細胞への3H-チミジンの取込みを測定することなどにより測定することができる。
【0058】
本明細書で用いる用語「間質細胞培地」とは、LSCを培養するのに有用な培地を指す。間質細胞培地の非限定例は、DMEM/ハムF 12培地、10%ウシ胎仔血清、100 Uペニシリン/100μgストレプトマイシン/0.25μgフンギゾンを含む培地である。典型的には、間質細胞培地は基本培地、血清および抗生物質/抗真菌剤を含む。しかしながら、LSCを、抗生物質/抗真菌剤を含まずに少なくとも1種の増殖因子を補給した間質細胞培地中で培養することができる。好ましい基本培地はDMEM/F12(1:1)である。好ましい血清はウシ胎仔血清(FBS)であるが、ウマ血清またはヒト血清などの他の血清を用いてもよい。最大20%のFBSを上記培地に添加して、間質細胞の増殖を支持するのが好ましい。しかしながら、間質細胞増殖のためのFBS中の必要な増殖因子、サイトカイン、およびホルモンを同定し、増殖培地中で好適な濃度で提供する場合、規定の培地を用いることができる。追加成分を培養培地に添加することができることがさらに認識される。そのような成分としては、限定されるものではないが、抗生物質、抗真菌剤、アルブミン、増殖因子、アミノ酸、および細胞の培養のための当業界で公知の他の成分が挙げられる。培地に添加することができる抗生物質としては、限定されるものではないが、ペニシリンおよびストレプトマイシンが挙げられる。培養培地中のペニシリンの濃度は、1 mlあたり約10〜約200ユニットである。培養培地中のストレプトマイシンの濃度は、約10〜約200μg/mlである。しかしながら、本発明は、間質細胞を培養するためのいかなる1種の培地にも限定されるものと決して解釈されるべきではない。むしろ、組織培養において間質細胞を支持することができる任意の培地を用いることができる。
【0059】
本明細書で用いる「治療上有効量」は、LSCを投与する被験体に対して有益な効果を提供するのに十分であるLSCの量である。
【0060】
本明細書で用いる「内因性」とは、生物、細胞もしくは系に由来するか、またはその内部で産生される任意の材料を指す。
【0061】
「外因性」とは、生物、細胞、もしくは系に由来するか、またはその外部で産生される任意の材料を指す。
【0062】
「コードする」とは、所定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)もしくは所定のアミノ酸配列のいずれかおよびそれから生じる生物学的特性を有する他のポリマーおよび高分子の生物学的プロセスにおける合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどの、ポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性を指す。すなわち、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的な系においてタンパク質を産生する場合、そのタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり、通常は配列表中に提供されるヌクレオチド配列を有するコード鎖と、遺伝子もしくはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖の両方を、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると呼ぶことができる。
【0063】
別に記載しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含んでもよい。
【0064】
「単離された核酸」とは、天然の状態でそれにフランキングする配列から分離された核酸の部分または断片、例えば、通常はその断片に隣接する配列、例えば、天然に生じるゲノム中の断片に隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。この用語は、天然で核酸と共に存在する他の成分、例えば、細胞中で核酸と共に天然で存在するRNAもしくはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用される。従って、この用語は、例えば、ベクター中、自律複製するプラスミドもしくはウイルス中、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組込まれるか、または他の配列とは独立した別個の分子として(例えば、cDNA、またはPCRもしくは制限酵素消化により産生されたゲノム断片もしくはcDNA断片として)存在する組換えDNAを含む。また、それはさらなるポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0065】
本発明の文脈においては、共通して登場する核酸塩基に関する以下の省略語を用いる。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、および「U」はウリジンを指す。
【0066】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、細胞の内部にその単離された核酸を送達するのに用いることができる合成物である。限定されるものではないが、線状ポリヌクレオチド、イオン性もしくは両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスなどの多くのベクターが当業界で公知である。かくして、用語「ベクター」は、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。また、この用語は、細胞への核酸の導入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどのようなものを含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。
【0067】
「発現ベクター」とは、発現させようとするヌクレオチド配列に機能し得る形で連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシスに働くエレメントを含み、発現のための他のエレメントを宿主細胞によるか、またはin vitro発現系において供給することができる。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組込んだコスミド、プラスミド(例えば、裸のプラスミドまたはリポソーム中に含有されたプラスミド)およびウイルスなどの当業界で公知の全てのものを含む。
【0068】
本明細書で用いる用語「遺伝的改変」とは、外因性DNAの意図的な導入によるLSCの遺伝子型の安定な、または一過性の変更を指す。好ましくは、外因性DNAは単離された核酸である。このDNAは合成のものであっても、または天然由来のものであってもよく、遺伝子、遺伝子の一部、または他の有用なDNA配列を含んでもよい。本明細書で用いる用語「遺伝的改変」は、天然のウイルス活性、天然の遺伝的組換えなどを介して生じるものなどの天然の変更を含むことを意味しない。
【0069】
説明
本発明は、肝臓間質細胞(LSC)を、異なる個体から取得したT細胞(同種異系T細胞)と接触させた場合、該同種異系T細胞は増殖しないという発見に関する。先行技術の定説は、T細胞を任意の他の細胞と混合した場合、T細胞の増殖が確実に起こることを示唆している。この現象は混合リンパ球反応(MLR)として知られている。本明細書に開示されるデータは、個体に由来するT細胞は、異なる個体から取得されたLSCと反応しないことを示している。従って、本明細書に記載の開示に基づけば、LSCはT細胞応答の発現に関して、免疫系に対して免疫原性ではない。
【0070】
異なる個体中のTリンパ球に関するLSCの非免疫原性表現型に加えて、本発明はまた、LSCが、同種異系細胞間のMLR、例えば、個体に由来するT細胞と別の個体に由来する末梢血単核細胞(PBMC)との間のMLRを抑制することができるという新規な発見にも関する。これらの予期せぬ結果は、LSCが異なる個体に由来するT細胞とPBMCとの間のMLRにおける同種異系T細胞応答を積極的に減少させることができることを示している。さらに、本明細書の他の箇所により詳細に考察されるように、この減少は、用量依存的な様式で起こることが観察される。これは、LSCを、移植物の宿主による拒絶を阻止し、さらに、移植後の移植片対宿主疾患を予防またはさもなければ阻止するための治療として用いることができることを示す。
【0071】
当業者であれば、本明細書に提供された開示に基づいて、同種異系T細胞応答を抑制するLSCの能力は、別々の個体に由来するT細胞とPBMCとの間のMLRに限定されず、むしろ、T細胞と、異なる個体に由来する任意の型の細胞、例えば、神経幹細胞(NSC)、肝臓細胞、心臓細胞、軟骨細胞、腎臓細胞、脂肪細胞などとの間のMLRの抑制を含むようにLSCを利用できることを理解できるであろう。
【0072】
従って、本発明は、移植物の宿主による拒絶を減少させるか、もしくは阻止するのに有効な量のLSCを、該移植物のレシピエントに投与することにより、該レシピエントにおける該移植物に対する免疫応答を減少および/または排除するための方法を包含する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、該移植物のレシピエントに投与されるLSCは、レシピエントのT細胞の活性化および増殖を阻止する。
【0073】
I. LSCの単離および培養
本発明の方法において有用なLSCを、当業者には公知の様々な方法を用いて単離することができる。好ましい方法においては、LSCを哺乳動物被験体、好ましくはヒト被験者から単離する。
【0074】
本明細書に提供される開示に基づいて、LSCを、任意の起源、例えば、組織のドナー、移植物のレシピエントまたはさもなければ関連のない起源(全く異なる個体もしくは種)から取得することができる。LSCはT細胞(同じ宿主から取得されたもの)に関して自己由来のものであってよく、またはそのT細胞と同種異系のものであってもよい。LSCが同種異系である場合、LSCは、T細胞が応答する移植物に関して自己由来であってよく、またはT細胞の起源およびT細胞が応答する移植物の起源の両方に関して同種異系である個体からLSCを取得されるものであってもよい。さらに、LSCはT細胞(異なる種の動物から取得されたもの)に対して異種性であってよく、例えば、ラットLSCを用いて、MLRにおけるヒトT細胞の活性化および増殖を抑制することができる。
【0075】
さらなる実施形態においては、本発明で用いられるLSCを、限定されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、類人猿、テナガザル、ウシなどの任意の種の哺乳動物の肝臓から単離することができる。好ましくは、LSCは、マウスまたはラットから単離される。より好ましくは、LSCはヒトから単離される。
【0076】
本発明の開示に基づいて、LSCを単離し、培養して、すなわちin vitroで、増殖させて、本明細書に記載の方法における使用のために十分な数の細胞を取得することができる。例えば、LSCをヒトの肝臓から単離し、完全培地(4 mM L-グルタミン、10%FBS、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM低グルコース)中で培養することができる。しかしながら、本発明は、LSCを単離および培養するいずれか1つの方法に限定されると解釈されるべきでは決してない。むしろ、LSCを単離および培養するいかなる方法も本発明に含有されると解釈されるべきである。
【0077】
細胞培養物中で線維芽細胞を支持することができる任意の培地を用いてLSCを培養することができる。線維芽細胞の増殖を支持する培地製剤としては、限定されるものではないが、最小必須イーグル培地(Minimum Essential Medium Eagle)、ADC-1、LPM(ウシ血清アルブミン非含有)、F10(HAM)、F12(HAM)、DCCM1、DCCM2、RPMI 1640、BGJ培地(Fitton-Jackson改変を含むか、または含まない)、基本イーグル培地(Basal Medium Eagle)(アール塩の塩基を添加したBME)、ダルベッコ改変イーグル培地(血清を含まないDMEM)、Yamane、IMEM-20、グラスゴー改変イーグル培地(GMEM)、Leibovitz L-15 培地、マッコイ5A培地、培地M199(アール塩の塩基を含むM199E)、培地M199(ハンクス塩の塩基を含むM199H)、最小必須イーグル培地(アール塩の塩基を含むMEM-E)、最小必須イーグル培地(ハンクス塩の塩基を含むMEM-H)および最小必須イーグル培地(非必須アミノ酸を含むMEM-NAA)などが挙げられる。LSCを培養するための好ましい培地はDMEMである。
【0078】
in vitroでLSCを支持することができる任意の培地を用いて、LSCを培養することができる。LSCの増殖を支持することができる培地製剤としては、限定されるものではないが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α改変最小必須培地 (αMEM)、およびRoswell Park Memorial Institute 1640培地(RPMI Media 1640)などが挙げられる。典型的には、LSCの増殖を支持するため、0〜20%のウシ胎仔血清(FBS)または1〜20%のウマ血清を上記培地に添加する。しかしながら、LSCを培養するのに必要な増殖因子、サイトカイン、およびホルモンを、増殖培地中で好適な濃度で提供する場合、規定の培地を用いることもできる。本発明の方法において有用な培地は、限定されるものではないが、LSCの培養にとって有用な抗生物質、分裂促進化合物または分化化合物などの、1種以上の目的の化合物を含んでもよい。細胞を、27〜40℃、好ましくは31〜37℃の温度で、およびより好ましくは加湿インキュベーター中で増殖させることができる。二酸化炭素含量を2〜10%に、酸素含量を1〜22%に維持することができる。しかしながら、本発明は、LSCを単離および培養するいずれか1つの方法に限定されると解釈されるべきでは決してない。むしろ、LSCを単離および培養するいかなる方法も本発明に含まれると解釈されるべきである。
【0079】
本発明の方法において有用な培地のさらなる非限定例は、少なくとも1%〜約30%、好ましくは少なくとも約5%〜15%、最も好ましくは約10%の濃度のウシまたは他の種の胎仔血清を含む。ニワトリまたは他の種の胚抽出物が、約1%〜30%、好ましくは少なくとも約5%〜15%、最も好ましくは約10%の濃度で存在してもよい。
【0080】
培地に添加することができる抗生物質としては、限定されるものではないが、ペニシリンおよびストレプトマイシンが挙げられる。培養培地中のペニシリンの濃度は、1 mlあたり約10〜約200ユニットである。培養培地中のストレプトマイシンの濃度は、約10〜約200μg/mlである。
【0081】
単離後、LSCを一定期間、または細胞が集密に達するまで、培養装置中の培養培地中でインキュベートした後、該細胞を別の培養装置に渡す。最初のプレーティングの後、細胞を約6日間培養状態で維持して、継代0(P0)集団を得ることができる。細胞を不定回数、継代することができるが、継代の各世代は、そのうちの細胞の倍増時間が3〜5日の範囲である約6〜7日間、細胞を培養することを含む。培養装置はin vitroで細胞を培養するのに一般的に用いられる任意の培養装置であってよい。好ましい培養装置は培養フラスコであり、より好ましい培養装置はT-225培養フラスコである。
【0082】
LSCを、一定の期間または細胞が特定レベルの集密度に達するまで、間質細胞培地中で培養することができる。好ましくは、集密度のレベルは70%より大きい。より好ましくは、集密度のレベルは90%より大きい。一定期間は、in vitroでの細胞の培養にとって好適な任意の時間であってよい。間質細胞培地を、LSCの培養中に任意の時間で置換することができる。好ましくは、間質細胞培地を3〜4日毎に置換する。次いで、LSCを培養装置から回収し、その際、LSCをすぐに用いるか、またはそれらを凍結保存し、後の時間での使用のために保存することができる。LSCを、トリプシン処理、EDTA処理、または培養装置から細胞を回収するのに用いられる任意の他の手順により回収することができる。
【0083】
本明細書に記載のLSCを、日常的な手順に従って凍結保存することができる。好ましくは、約100〜1000万個の細胞を、液体窒素の気相中、10%DMSOを含む間質細胞培地中で凍結保存する。凍結された細胞を、37℃温浴中でかき混ぜることにより解凍し、新鮮な増殖培地中に再懸濁し、通常通り増殖させることができる。
【0084】
II. 治療法
本発明に包含されるように、典型的には、LSCをヒトから単離する。本発明の細胞をヒト被験者に移植しようとする場合、自己由来移植物を提供するために、同じ被験者からLSCを単離するのが好ましい。しかしながら、同種異系移植物も本発明により意図される。
【0085】
かくして、本発明の別の態様においては、投与されるLSCはレシピエントに関して同種異系であってよい。同種異系LSC細胞を、レシピエントと同じ種の異なる個体であるドナーから単離することができる。単離後、細胞を本明細書に開示される方法を用いて培養して、同種異系産物を産生させる。本発明はまた、レシピエントに関して異種性であるLSCも包含する。
【0086】
本発明の別の実施形態は、移植物のレシピエントにLSCを投与する経路を包含する。LSCを、移植物、すなわち、移植しようとする生体適合性格子またはドナーの組織、臓器もしくは細胞の配置にとって好適である経路により投与することができる。LSCを、全身的、すなわち、非経口的に、静脈内注入により投与するか、または骨髄などの特定の組織もしくは臓器に対して標的化することができる。LSCを、細胞の皮下埋込みにより、または結合組織内、例えば、筋肉内への該細胞の注入により、投与することができる。
【0087】
LSCを、約0.01〜約5 x 106細胞/mlの濃度で、好適な希釈剤に懸濁することができる。注入液のための好適な賦形剤は、緩衝生理食塩溶液または他の好適な賦形剤などの、LSCおよびレシピエントと生物学的および生理学的に適合するものである。投与のための組成物を、適切な滅菌性および安定性に適合する標準的な方法に従って製剤化、製造および保存することができる。
【0088】
LSCの用量は幅広い限界幅内で変化し、それぞれの特定の事例における個々の必要性に応じて調整することができる。用いる細胞数は、レシピエントの体重および状態、投与の数および/または頻度、ならびに当業者には公知の他の変数に依存する。
【0089】
体重100 kgあたり約105〜約1013個のLSCを、個体に投与することができる。いくつかの実施形態においては、体重100 kgあたり約1.5 x106〜約1.5 x 1012個の細胞を投与する。いくつかの実施形態においては、体重100 kgあたり約1 x 109〜約5 x 1011個の細胞を投与する。いくつかの実施形態においては、体重100 kgあたり約4 x 109〜約2 x 1011個の細胞を投与する。いくつかの実施形態においては、体重100 kgあたり約5 x 108〜約1 x 101個の細胞を投与する。
【0090】
III. 宿主による拒絶
本発明の別の実施形態においては、LSCを、移植物よりも前に、または移植物と同時に、レシピエントに投与して、該移植物の宿主による拒絶を減少および/または排除する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、移植物の移植の前に、またはそれと同時に、レシピエントに対してLSCを、該レシピエントのT細胞による移植物に対する免疫応答を減少させ、阻止し、または排除するのに有効な量で投与することにより、該移植物に対してレシピエントの免疫系を条件付けするのにLSCを用いることができる。LSCは、移植物と共に提供された場合にT細胞応答を減少させ、阻止し、または排除するように、レシピエントのT細胞に影響を与える。かくして、移植の前に、またはそれと同時に、LSCをレシピエントに投与することにより、移植物の宿主による拒絶を回避するか、またはその重篤度を減少させることができる。
【0091】
さらに別の実施形態においては、移植物の投与後に、LSCを該移植物のレシピエントに投与することができる。さらに、本発明は、移植物の宿主による拒絶としても知られる、移植物に対する免疫応答を減少させ、阻止し、または排除するのに有効な量で、LSCを患者に投与することにより、移植物に対する有害な免疫応答を受けている患者を治療する方法を含む。
【0092】
本発明は、LSCが同種異系T細胞増殖を刺激しないという発見に基づくものである。つまり本発明は、外因性の臓器、組織または細胞の移植物に応答したT細胞増殖を抑制するためのLSCの使用を包含する。本発明はまた、T細胞増殖に関する免疫応答を減少させるのに有効な量のLSCを患者に投与する方法も含む。
【0093】
当業者であれば、本明細書に提供された開示に基づいて、哺乳動物中に移植され、異なる個体から取得された任意の型の臓器、組織もしくは細胞に応答したT細胞増殖の抑制を含むようにLSCを利用することができることを理解できるであろう。例えば、限定されるものではないが、神経幹細胞(NSC)、肝臓細胞、心臓細胞、軟骨細胞、腎臓細胞、脂肪細胞などの細胞に応答したT細胞増殖を、LSCを用いて抑制することができる。
【0094】
本発明は、移植物の宿主による拒絶を減少させるか、もしくは阻止するのに有効な量のLSCを、移植物のレシピエントに投与することにより、レシピエントにおける移植物に対する免疫応答を減少させ、および/または排除する方法を包含する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、移植物のレシピエントに投与されるLSCは、レシピエントのT細胞の活性化および増殖を阻止する。
【0095】
移植物は、移植しようとする生体適合性格子またはドナーの組織、臓器もしくは細胞を含む。移植物の例としては、限定されるものではないが、幹細胞、皮膚の細胞または組織、骨髄、神経幹細胞、ならびに心臓、膵臓、腎臓、肺および肝臓などの固形臓器が挙げられうる。
【0096】
IV. 移植片対宿主疾患
移植物の宿主による拒絶を減少させ、および/または排除する方法に加えて、本発明はまた、そのレシピエントに対するドナーの移植物による免疫応答(すなわち、移植片対宿主反応)を減少させ、および/または排除する方法も提供する。従って、本発明は、ドナーの移植物、例えば、生体適合性格子またはドナーの組織、臓器もしくは細胞を、LSCと接触させた後、レシピエントに該移植物を移植する方法を包含する。LSCは、レシピエントに対するドナーの移植物による有害な応答を軽減し、阻止し、または減少させるのに役立つ。
【0097】
本発明は、LSCが同種異系T細胞増殖を刺激しないという発見に基づくものである。本明細書で示す開示に基づけば、LSCはMLR反応においてT細胞増殖を抑制することができる。本発明はまた、T細胞増殖に関して免疫応答を減少させるのに有効な量のLSCを哺乳動物に投与する方法も含む。
【0098】
本明細書の他の箇所に述べられるように、移植物のレシピエントに対する該移植物による望ましくない免疫応答の排除もしくは減少に使用するために、LSCを、任意の起源、例えば、組織のドナー、移植物のレシピエントまたはさもなければ関連のない起源(全く異なる個体もしくは種)から取得することができる。従って、LSCは組織のドナー、移植物のレシピエントまたはさもなければ関連のない起源に対して自己由来、同種異系または異種のものであってよい。
【0099】
本発明の一実施形態においては、移植物をLSCに曝露した後、該移植物をレシピエントに移植する。この状況では、任意の同種反応性レシピエント細胞により引き起こされた移植物に対する免疫応答を、該移植物中に存在するLSCにより抑制することができる。このLSCはレシピエントに対して同種異系であり、ドナー由来の、またはドナーもしくはレシピエント以外の起源由来のものであってよい。いくつかの事例においては、レシピエントに対して自己由来のLSCを用いて、前記移植物に対する免疫応答を抑制することができる。別の事例においては、LSCはレシピエントに対して異種性であってよく、例えば、マウスまたはラットのLSCを用いて、ヒトにおける免疫応答を抑制することができる。しかしながら、本発明においては、ヒトLSCを用いるのが好ましい。
【0100】
本発明の別の実施形態においては、レシピエントに対するドナー移植物の免疫原性を低下させ、それにより移植片対宿主疾患を減少および/または予防するために、レシピエントへの移植の前に該移植物を処理することにより、該ドナー移植物を「予備条件付け」または「予備処理」してもよい。該移植物と関連し得るT細胞を活性化するために、該移植物を、移植の前にレシピエントに由来する細胞または組織と接触させてもよい。レシピエントに由来する細胞または組織を用いた前記移植物の処理の後、この細胞または組織を該移植物から除去することができる。次いで、レシピエントに由来する細胞または組織の処理により活性化されたT細胞の活性を減少させ、阻害し、または排除するために、前記処理された移植物をさらにLSCと接触させる。LSCを用いた前記移植物のこの処理の後、LSCを該移植物から除去した後、レシピエントに移植することができる。しかしながら、いくらかのLSCは移植物に付着し、従って、該移植物を有するレシピエントに導入されうる。この状況では、レシピエントに導入されたLSCは、移植物に関連したいずれかの細胞により引き起こされたレシピエントに対する免疫応答を抑制することができる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、レシピエントへの移植物の移植前のLSCを用いた該移植物の処理は、活性化されたT細胞の活性を減少させ、阻害し、または排除し、それによって、レシピエントに由来する組織および/または細胞からのその後の抗原刺激に対する、T細胞の再刺激を予防するか、または低応答性を誘導するのに役立つ。当業者であれば、本発明の開示に基づいて、移植前の移植物の予備条件付けまたは予備処理は、移植片対宿主応答を減少させるか、または排除することができることを理解できるであろう。
【0101】
例えば、骨髄または末梢血幹細胞(造血幹細胞)移植の文脈においては、レシピエントに対する移植片の免疫原性を減少させるため、本明細書に開示される予備処理方法を用いてドナーの骨髄を予備条件付けすることにより、該移植片による宿主の攻撃を減少させ、阻害し、または排除することができる。本明細書の他の箇所に記載のように、ドナー骨髄を、in vitroで、任意の起源に由来するLSCで、好ましくは、レシピエントのLSCで予備処理した後、そのドナー骨髄を該レシピエントに移植することができる。好ましい実施形態においては、ドナー骨髄をまずレシピエントの組織または細胞に曝露した後、LSCで処理する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ドナー骨髄とレシピエントの組織または細胞との最初の接触は、ドナー骨髄中でT細胞を活性化するように機能すると考えられる。LSCを用いたドナー骨髄の処理は、その後の抗原刺激に対するT細胞の低応答性を誘導するか、もしくはその再刺激を防止し、それによってドナー骨髄によりレシピエントにおいて誘導される有害な影響を減少させ、阻害し、または排除する。
【0102】
本発明の一実施形態においては、移植片対宿主疾患に罹患した移植物のレシピエントを、移植片対宿主疾患を低減させるか、または排除するのに有効な量のLSCを投与した場合に移植片対宿主疾患に由来するその重篤度を減少させ、阻害し、または排除するように該LSCをレシピエントに投与することにより、治療することができる。
【0103】
本発明のこの実施形態においては、好ましくは、レシピエントのLSCを移植前にレシピエントから取得し、保存および/または培養して増殖させて、継続中の移植片対宿主反応を治療するのに十分な量のLSCの保存物を提供することができる。しかしながら、本明細書の他の箇所に述べられるように、LSCを、任意の起源、例えば、組織のドナー、移植物のレシピエントまたはさもなければ関連のない起源(全く異なる個体もしくは種)から取得することができる。
【0104】
V. LSCを用いる利点
本明細書の開示に基づいて、本発明のLSCを、ドナーの組織に対する宿主による拒絶または移植片対宿主疾患の治療のために、現在の方法と、例えば、免疫抑制剤治療の使用と組合わせて用いることができる。移植において免疫抑制剤と組合わせてLSCを用いる利点は、移植のレシピエントにおける免疫応答の重篤度を軽減するために本発明の方法を用いることによるものであり、用いる免疫抑制剤治療の量および/または免疫抑制剤治療の投与頻度を減少させることができる。免疫抑制剤治療の使用を減少させる利益は、全身的な免疫抑制および免疫抑制剤治療に関連する望ましくない副作用の緩和である。
【0105】
また、本発明の細胞を、ドナーの組織の宿主による拒絶または移植片対宿主疾患の治療のための「1回」治療として、レシピエントに投与することができることも意図される。移植物のレシピエントへのLSCの1回投与は、慢性的な免疫抑制剤治療の必要性を排除する。しかしながら、必要に応じて、複数回のLSCの投与を用いることもできる。
【0106】
本明細書に記載の本発明はまた、移植物の宿主による拒絶および/もしくは移植片対宿主疾患の予防、治療または軽減にとって予防上もしくは治療上有効な量のLSCを投与することにより、移植物拒絶および/もしくは移植片対宿主疾患を予防または治療する方法も包含する。本発明の開示に基づけば、LSCの治療上有効量は、LSCの投与の非存在下で活性化されたT細胞の数と比較した場合、活性化されたT細胞数を阻害するか、または減少させる量である。移植物が宿主により拒絶される状況では、LSCの有効量は、LSCの投与前にレシピエント中で活性化されたT細胞数と比較した場合、移植物のレシピエント中で活性化されたT細胞数を阻害するか、または減少させる量である。移植片対宿主疾患の場合、LSCの有効量は、移植物中に存在する活性化されたT細胞数を阻害するか、または減少させる量である。
【0107】
LSCの有効量を、LSCの投与前のレシピエントまたは移植物における活性化されたT細胞数と、LSCの投与後のレシピエントまたは移植物中に存在する活性化されたT細胞数とを比較することにより決定することができる。LSCの投与に関連する移植物のレシピエントもしくは移植物自身における活性化されたT細胞数の減少、または増加の不在は、投与されるLSCの数がLSCの治療上有効量であることを示唆している。
【0108】
遺伝的改変
本発明のさらに別の実施形態においては、哺乳動物における外因性遺伝子の発現のための遺伝子治療ビヒクルとして、LSCを用いることができる。現在用いられている細胞を超える、遺伝子治療のためのビヒクルとしてLSCを用いる利益は、遺伝子治療用途のために当業界で現在用いられている細胞と比較した場合、LSCがより長い時間生存することができるという新しい発見に基づく。
【0109】
特に記述しない限り、遺伝子操作をSambrookら(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)に記載のように実施する。本発明は、外因性遺伝子を発現するように操作された、遺伝的に改変されたLSCを包含する。外因性遺伝子は、例えば、内因性遺伝子の外因性変異型であってよい(例えば、同じ遺伝子の野生型のものを用いて、突然変異を含む欠損対立遺伝子を置換することができる)。外因性遺伝子は通常、1個以上の追加の遺伝子と共有結合(すなわち、「融合」)されているが必ずしもそれが必要ではない。「追加の」遺伝子の例としては、外因性遺伝子を組込んだ細胞を選択するための「陽性」選択にとって有用な遺伝子、および内因性遺伝子と同じ染色体座に外因性遺伝子を組込んだ細胞を選択するための「陰性」選択にとって有用な遺伝子、またはその両方が挙げられる。
【0110】
また、本発明の細胞を用いて、治療目的で、またはレシピエントにおけるその同化および/もしくは分化を追跡する方法において、外来のタンパク質もしくは分子を発現させることもできる。かくして、本発明は、LSC中での単離された核酸の同時的発現を伴う、LSCへの該単離された核酸の導入のための発現ベクターおよび方法を包含する。細胞中にDNAを導入し、発現させるための方法は当業者にはよく知られており、例えば、Sambrookら、2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New YorkおよびAusubelら、1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New Yorkに記載のものが挙げられる。
【0111】
単離された核酸は、一度、LSCがレシピエントに導入されれば、その遊走、同化、および生存を追跡するのに用いられる分子を、コードしてもよい。細胞を追跡するのに有用なタンパク質としては、限定されるものではないが、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、任意の他の蛍光タンパク質(例えば、増強された緑色、シアン色、黄色、青色および赤色の蛍光タンパク質;Clontech, Palo Alto, CA)、または他のタグタンパク質(例えば、LacZ、FLAG-タグ、Myc、His6など)が挙げられる。
【0112】
本発明のLSCの遊走および同化の追跡は、ベクターまたはウイルスにより発現された検出可能な分子の使用に限定されない。細胞の遊走および同化を、哺乳動物内での移植されたLSCの局在化を容易にする一連のプローブを用いて評価することもできる。さらに、LSC移植物の追跡を、抗体またはLSCと結合した細胞特異的マーカーのための核酸プローブを用いて達成することができる。
【0113】
単離された核酸を、ウイルスベクター(レトロウイルス、改変ヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスなど)を用いるか、または直接DNAトランスフェクション(リポフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーションなど)によりLSCに導入することができる。
【0114】
細胞の遺伝的改変の目的が生物活性物質の産生のためのものである場合、この物質は一般的には、所与の障害の治療にとって有用であるものであろう。例えば、細胞が特定の増殖因子産物を分泌するように、細胞を遺伝的に改変することが望まれるかもしれない。
【0115】
本発明の細胞を、単離された核酸を該細胞に導入することにより遺伝的に改変して、該細胞の培養にとって有益である栄養因子、増殖因子、サイトカインなどの分子を産生させることができる。さらに、この遺伝的に改変された細胞は、それを必要とする患者に移植した場合、この患者にさらなる治療効果を提供することができる。
【0116】
また、細胞を、限定されるものではないが、p75低親和性NGFr、CNTFr、ニューロトロフィン受容体のtrkファミリー(trk、trkB、trkC)、EGFr、FGFr、およびアンフィレグリン受容体などの特定の増殖因子受容体(r)を発現するように改変することもできる。細胞を操作して、セロトニン、L-ドーパ、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、タキキニン、P物質、エンドルフィン、エンケファリン、ヒスタミン、N-メチルD-アスパルテート、グリシン、グルタメート、GABA、AChなどの様々な神経伝達因子またはその受容体を産生させることができる。有用な神経伝達因子合成遺伝子としては、TH、ドーパ-デカルボキシラーゼ(DDC)、DBH、PNMT、GAD、トリプトファンヒドロキシラーゼ、ChAT、およびヒスチジンデカルボキシラーゼが挙げられる。CNS障害の治療において有用であると判明している種々の神経ペプチドをコードする遺伝子としては、P物質、神経ペプチドY、エンケファリン、バソプレッシン、VIP、グルカゴン、ボムベシン、コレシストキニン(CCK)、ソマトスタチン、カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどが挙げられる。
【0117】
本発明の細胞を、サイトカインを発現するように改変することもできる。サイトカインは、限定的ではないが、IL-12、TNFα、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-7、IL-2、IL-6、IL-15、IL-21およびIL-23からなる群より選択されるのが好ましい。
【0118】
本発明に従って、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を、LSC中に導入する。すなわち、この細胞を遺伝的に変更して、その発現が個体において治療効果を有する遺伝子を導入する。本発明のいくつかの態様に従って、治療しようとする個体もしくは別の個体、または非ヒト動物に由来するLSCを遺伝的に変更して、欠損遺伝子を置換し、および/またはその発現が治療される個体において治療効果を有する遺伝子を導入することができる。
【0119】
遺伝子構築物を細胞にトランスフェクトする全ての場合において、異種遺伝子を、細胞中での該遺伝子の発現を達成するのに必要な調節配列に機能し得る形で連結する。そのような調節配列は、典型的には、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む。
【0120】
前記遺伝子構築物を、ベクターを細胞にトランスフェクトする場合、そのコード配列が該細胞により発現されるように、必須調節配列に機能し得る形で連結された異種タンパク質のコード配列を含む発現ベクターとして提供するのが好ましい。コード配列を、細胞中でのその配列の発現にとって必要な調節エレメントに機能し得る形で連結する。前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAもしくはそのハイブリッドまたはmRNAなどのRNA分子であってよい。
【0121】
前記遺伝子構築物は調節エレメントに機能し得る形で連結された有益なタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、機能的細胞質分子、機能的エピソーム性分子として細胞中に存在するままであってもよく、またはそれは細胞の染色体DNA中に組込まれてもよい。単離された核酸を細胞中に導入して、プラスミドの形態で別の遺伝物質のまま保持することができる。あるいは、染色体中に組込むことができる線状DNAを細胞中に導入することもできる。細胞にDNAを導入する場合、染色体へのDNA組込みを促進する試薬を添加することができる。組込みを促進するのに有用なDNA配列を、該DNA分子中に含有させることもできる。あるいは、RNAを細胞中に導入することもできる。
【0122】
遺伝子発現のための調節エレメントとしては、プロモーター、開始コドン、終止コドン、およびポリアデニル化シグナルが挙げられる。これらのエレメントは、本発明の細胞において機能し得るのが好ましい。さらに、ヌクレオチド配列を細胞中で発現させ、かくして、そのタンパク質を産生させることができるように、該タンパク質をコードするヌクレオチド配列にこれらのエレメントを機能し得る形で連結するのが好ましい。開始コドンおよび終止コドンは、一般的には、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部であると考えられる。しかしながら、これらのエレメントは細胞中で機能的であるのが好ましい。同様に、用いるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルは、本発明の細胞内で機能的でなければならない。本発明を実施するのに有用なプロモーターの例としては、限定されるものではないが、サイトメガロウイルスプロモーター、SV40プロモーターおよびレトロウイルスプロモーターなどの、多くの細胞中で活性であるプロモーターが挙げられる。本発明を実施するのに有用なプロモーターの他の例としては、限定されるものではないが、組織特異的プロモーター、すなわち、いくつかの組織においては機能するが、他の組織においては機能しないプロモーター、また、特定の、もしくは一般的なエンハンサー配列を含むか、または含まない細胞中で正常に発現される遺伝子のプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態においては、エンハンサー配列を含むか、または含まない細胞中で遺伝子を構成的に発現するプロモーターを用いる。エンハンサー配列は、好適な場合、または望ましい場合、そのような実施形態において提供される。
【0123】
本発明の細胞を、当業界で通常の知識を有する者にとって容易に利用可能なよく知られた技術を用いてトランスフェクトすることができる。単離された核酸を、細胞が該遺伝子によりコードされるタンパク質を発現するように、標準的な方法を用いて該細胞中に導入することができる。いくつかの実施形態においては、細胞を、リン酸カルシウム沈降トランスフェクション、DEAEデキストラントランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム媒介導入、化合物媒介導入、リガンド媒介導入または組換えウイルスベクター導入によりトランスフェクトする。
【0124】
いくつかの実施形態においては、組換えアデノウイルスベクターを用いて、細胞中に所望の配列を有するDNAを導入する。いくつかの実施形態においては、組換えレトロウイルスベクターを用いて、細胞中に所望の配列を有するDNAを導入する。いくつかの実施形態においては、標準的なCaPO4、DEAEデキストランまたは脂質担体媒介トランスフェクション技術を用いて、分裂中の細胞中に所望のDNAを組込む。標準的な抗生物質耐性選択技術を用いて、トランスフェクトされた細胞を同定および選択することができる。他の実施形態においては、DNAを、マイクロインジェクションにより直接的に細胞に導入する。同様に、よく知られたエレクトロポレーションまたは粒子ボンバードメント技術を用いて、外来DNAを細胞中に導入することができる。通常、第2の遺伝子を同時トランスフェクトするか、または治療用遺伝子に連結する。第2の遺伝子は選択可能な抗生物質耐性遺伝子であることが多い。トランスフェクトされた細胞を、選択遺伝子を取り込まない細胞を殺傷する抗生物質中で該細胞を増殖させることにより選択することができる。2個の遺伝子を連結せず、同時トランスフェクトする場合の多くにおいては、抗生物質処理を生き残る細胞はその中に両方の遺伝子を有し、その両方を発現する。
【0125】
本明細書に記載の方法を、いくつかの様式で、当業界でよく知られる様々な改変およびその順列を用いて実行することができることが理解されるべきである。また、作用の様式または細胞型間の相互作用に関して説明されたいかなる理論も、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の方法をより完全に理解できるように提供されるものである。
【0126】
以下の実施例は、本発明の態様をさらに例示するものである。しかしながら、これらはいかなる意味でも本明細書に説明されるような本発明の教示または開示の限定ではない。
【実施例】
【0127】
実施例1:肝臓間質細胞の特性評価
LSCの産生
Hu027およびHu029と命名した異なるドナーに由来する成人死体ヒト肝臓を用いた。肝臓を、34℃でEGTA含有バッファーを用いて15分間、および0.06%コラゲナーゼ(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)を用いて30分間、門脈および肝動脈を通じて灌流した。次いで、細胞を1000、500、250および150μmのフィルターに通過させた。生細胞を、2段階(9%および17%;Hu027およびHu029細胞)または12.5%(H0107細胞)OptiPrep勾配(Axis-Shield PoC AS, Oslo, Norway)を用いるCOBE細胞プロセッサー(Gambro BCT, Lakewood, CO)を用いて500 x g下で分画した。細胞を、液体窒素中での保存のために80%Hypothermosol(Bio Life Solutions Inc, Binghamton, NY)、10%ヒトAB血清および10%ジメチルスルホキシド(Sigma)を含む培地中で凍結させた。
【0128】
培養のために、凍結保存した肝臓間質細胞を解凍し、計数した。培養物を、完全培地(4 mM L-グルタミン、10%FBS、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM低グルコース)中に約1.62 X 106細胞/cm2で播種した。LSCを培養し、以下でより完全に考察される実験において用いた。当業界で公知の方法を用いて、以下のようにAmerican Type Culture Collection (ATCC)から購入したBMSCおよび線維芽細胞系に関してLSCの表現型を特性評価した。
【0129】
フローサイトメトリー分析:
簡単に述べると、細胞を、5%FBSを含むPBS中で洗浄し、免疫グロブリンでブロックした後、蛍光色素タグ付き抗体を用いて染色した。アイソタイプが一致した蛍光色素標識免疫グロブリンと共に細胞をインキュベートすることにより、バックグラウンド染色を決定した。約50000個のイベント(細胞)を、Cell Quest獲得ソフトウェアを用いるBecton Dickinson FACSCaliberフローサイトメーター上でのLSCの分析に用いた。フロー分析の結果を表1にまとめる。表1中の記号「NEG」は0.01%未満の陽性染色を示す。表面マーカーCD14が、試験したBMSCおよび線維芽細胞系からLSCを区別することが観察された。さらに、CD133が、BMSCと比較してより低い濃度でLSC上に存在するマーカーであることが観察され、従って、BMSCからLSCを区別するためのマーカーとして用いることができる。
【表1】

【0130】
肝臓由来間質細胞に関する分化アッセイ:
ヒトBMSCおよびヒトLSCに対して分化アッセイを行った。このアッセイは、細胞の脂肪生成能および/または骨形成分化能を試験した。
【0131】
脂肪生成アッセイ:細胞を、増殖培地中に2 x 105細胞/ウェルでプレーティングした。集密時点で、脂肪細胞分化を3サイクルの誘導/維持培地中で行った。維持培地は10%FBS、10μg/mLインスリン、および1×抗生物質/抗真菌剤を補給したDMEMであった。誘導(分化)培地は、10-6Mデキサメタゾン、0.5 mMメチルイソブチルキサンチンおよび200μMインドメタシンを補給した維持培地であった。各サイクルは、脂肪細胞誘導培地を用いる3日間の培養およびその後の脂肪生成維持培地を用いる1日間の培養を含んでいた。この後、細胞をPBSで洗浄し、10%ホルマリンで固定し、Oil Red Oで染色し、およびヘマトキシリンで対比染色して、脂肪細胞分化を評価した。
【0132】
骨形成アッセイ:細胞を、増殖培地または分化培地(10%FBS、デキサメタゾン、β-グリセロリン酸およびアスコルビン酸-2-ホスフェートを含むDMEM)中に2 x 105細胞/ウェルでプレーティングした。対照および分化ウェルの両方の培地を、3週間に渡って3〜4日毎に交換した。この後、細胞をPBSで洗浄し、10%ホルマリンで固定した。骨形成分化を、アルカリホスファターゼ活性を評価し、ミネラル沈着に関するvon Kossa染色を用いることにより測定した。
【0133】
分化アッセイの結果を表2に示す。
【表2】

【0134】
BMSCは脂肪細胞(含脂肪細胞)および骨産生細胞(骨芽細胞)に分化するが、LSCはいずれの系列にも分化しないことが観察された。
【0135】
実施例2:肝臓間質細胞の免疫原性
本明細書に提示された実験により、LSCがin vitroで新規な免疫学的特性を示すことが証明された。例えば、LSCは同種異系T細胞と接触させた場合、同種異系PBMCと接触させた場合のT細胞の増殖量と比較してT細胞の増殖を誘導しないことが観察されたことから、LSCが同種異系T細胞と混合した場合は非免疫原性であることが認められた。また、LSCは同種反応性T細胞応答に関して免疫抑制的であることが発見された。同様の免疫学的特性が、様々な組織起源に由来する線維芽細胞集団の大多数についてではなく、間葉系幹細胞(MSC)について記載されている(Di Nicolaら、2002 Blood 99:3838; Tseら、2003 Transplantation 75:389; Le Blancら、2003 Scand. J. Immunol. 57:11)。
【0136】
本実施例で示す実験で用いられる材料および方法をここに記載する。
【0137】
MLRアッセイ
LSCの免疫原性を、応答細胞としてT細胞を、また刺激細胞として同種異系PBMCを用いる混合リンパ球反応(MLR)により評価した。T細胞を、単球(CD14)、B細胞(CD19)、MHCクラスII、およびNK細胞(CD56)に特異的なマウスモノクローナル抗体(Serotec, Raleigh, NC)を用いる陰性選択によりロイコフェレーシス(leukopheresis)・パック(AllCells, LLC, Berkeley, CA; Poietics, Rockville, MD)から精製し、モノクローナル抗マウスIgG抗体(Dynal Biotech, Inc, Lake Success, NY)でコーティングした磁性ビーズを用いて、除去のために非T細胞を標識した。枯渇後の細胞の残存集団は、典型的には、フローサイトメトリー分析により85%を超えてCD3陽性であった。T細胞を培養培地(ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、2-メルカプトエタノール、抗生物質/抗真菌剤、および5%ヒトAB血清(全ての補給物はGibco, Carlsbad, CAから取得したが、但しヒトAB血清はPelFreez, Brown Deer, WIから取得した)を補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中に懸濁した。T細胞を、同種異系刺激細胞と共に、96穴低蒸発性平底プレート(BD Falcon, Franklin Lakes, NJ)中のマイクロタイターウェル(2 x 105/ウェル)中に播種した。刺激細胞に、セシウム源(Isomedix Gammator B, Parsippany, NY)を用いて5000ラドのγ線を照射した後、それを実験に必要な数でプレーティングした(通常、5 x 104細胞/ウェルの高用量から漸減させる)。培養を1処理あたり3個のウェルで行った。同種異系抗原に対するT細胞の増殖を、培養の6日目に3H-チミジンを用いて培養物をパルスすることにより決定した。細胞を、96穴細胞回収器(Skatron, Molecular Devices Corp, Sunnyvale, CA)を用いて16時間後にフィルターマット上に回収し、フィルターマット上の細胞をMicrobetaシンチレーションカウンター(Perkin Elmer, Turku, Finland)を用いて計数した。
【0138】
免疫原性実験
一方向MLRアッセイを用いて、同種異系LSCに対するT細胞の増殖を評価した。簡単に述べると、T細胞(2 x 105/ウェル)を、照射した(5000ラドのγ線照射)同種異系LSC、自己PBMC、または同種異系PBMC(30,000細胞/ウェル)と共に、96穴マイクロタイター培養プレート中で培養した。LSCを、027および029と命名した2人の異なるドナーから取得した。T細胞を、002、004、005および006と命名した4人の異なるドナーから取得したPBMCから精製した。T細胞富化を、磁性ビーズ(Dynal, Inc)を用いて、陰性選択により達成して、非T細胞を除去した。マクロファージ/単球/樹状細胞(抗CD14)、B細胞(抗CD19)、NK細胞(抗CD56)、およびMHCクラスII抗原(抗DR)に特異的なマウスモノクローナル抗体(mAb)を用いて、これらの細胞を標識した。ヤギ抗マウスIgG抗体でコーティングした磁性粒子を用いて、磁場中で細胞を取り出した。通常、得られる細胞集団は、T細胞を検出するためのフルオレセイン化抗CD3 mAbを用いるフローサイトメトリー分析によれば、T細胞が90%を超えていた。用いた細胞培養培地は、5%ヒトAB血清、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、ペン-ストレップ/フンギゾン、および2-メルカプトエタノールを補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)であった。培養物を5%CO2の加湿雰囲気下、37℃にて6日間インキュベートし、3H-チミジン(1μCi/ウェル)で16時間パルスし、細胞を、自動96穴細胞回収器を用いて7日目に回収した。取り込まれた放射活性をシンチレーション計測により測定し、その結果を1分あたりのカウント(cpm)として報告する。
【0139】
試験細胞が免疫原性とみなされるためには、以下の3つの要件が満たされる必要がある:
1)試験細胞は自己応答を少なくとも750 cpm上回るT細胞増殖応答を誘導しなければならない;
2)刺激指数(T細胞+試験細胞cpm/T細胞+自己細胞cpm)は3.0以上でなければならない;および
3)T細胞+自己PBMCとT細胞+試験細胞(P<0.05、スチューデントt検定)の間には統計学的な有意差が存在しなければならない。
【0140】
非応答性の原因として遺伝的因子(すなわち、MHC類似性)を除外するために、各試験細胞を少なくとも2種(好ましくは3種)の異なるT細胞ドナーと共に培養した。いずれかのドナーが上記の陽性応答をもたらした場合、試験集団は免疫原性であると考えられた。これらの基準を用いて、皮膚、脾臓、肺、結合組織、および胎児材料に由来する線維芽細胞が免疫原性であると結論付けられた。
【0141】
応答因子としての4種の異なるT細胞ドナーおよび刺激因子としてのLSCを用いるMLR実験の結果は、LSCが免疫原性ではないことを示している(図1)。2人の異なるドナーに由来するLSCに対するT細胞応答が自己PBMCに対する応答と類似することが観察された。また、LSCに対するT細胞応答が同種異系PBMCに対する応答よりも有意に低いことも観察された。LSCは上記で考察された3つの基準により定めたところ、4種のT細胞ドナーのいずれからも有意な応答を誘導しなかった。
【0142】
抑制実験
LSCを一方向MLRアッセイに加えて、これらが同種反応性T細胞増殖を抑制することができるかどうかを決定した。簡単に述べると、2人の異なるドナー(027および029)に由来するLSCに照射し(5000R)、精製されたT細胞(応答細胞)および照射した同種異系PBMC(刺激細胞)を含む一方向MLR培養物にそれを添加した。T細胞の精製およびMLRのための培養条件は、本明細書の他の箇所に記載されている。結合組織、胎児組織、肺、皮膚および脾臓に由来する線維芽細胞もMLR培養物に添加して、その相対抑制特性を測定した。これらの一次細胞系は全て、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection; ATCC)から購入した。同様に、BMSCをその抑制特性について試験した。LSC、線維芽細胞、およびBMSCをそれぞれ、T細胞とPBMCの異なる組合せ間のMLR培養物に、30,000細胞/ウェルの用量で添加した。結果を、線維芽細胞/間質細胞を添加しなかった基礎MLR応答の抑制パーセントとして示す。各バーは、それぞれの細胞型による4つの異なるMLR培養物の平均抑制を表す(例外的に、肺の線維芽細胞では平均を3つの異なるMLR培養物から算出した)。抑制を、下記式:
抑制パーセント=[1-(試験細胞を含むMLR培養物のcpm/対照MLR培養物のcpm)] X 100
に従って、対照MLRに対して試験細胞を含む応答を比較することにより、決定した。
【0143】
結果は、両方のドナーに由来するLSCが、評価した他のいずれの細胞型よりも大きな程度で、MLR応答を抑制したことを示していた(図2)。示した結果は、4つの実験の平均であり、それぞれの実験はMLRのためにT細胞とPBMCの異なる組合せを用いたものである。また、結合組織の線維芽細胞、皮膚の線維芽細胞、および骨髄間質細胞は、MLR応答を抑制することが観察されたが、胎児の線維芽細胞、肺の線維芽細胞、および脾臓の線維芽細胞はMLR応答を増強した(負の「抑制パーセント」は、添加された試験細胞集団が対照レベルを超えてMLR応答を増強させたことを示す)。
【0144】
実施例3:移植における肝臓間質細胞
本明細書の他の箇所に考察するように、LSCが同種反応性T細胞応答を抑制するならば、LSCを免疫原性の細胞、組織、または臓器と共に同時移植して、移植された材料の免疫拒絶を予防することができる。当業界で現在用いられているものを超えるこの手法の利点は、細胞を用いて、宿主に対して有害であり得る免疫系の全身抑制をすることなく、移植領域に免疫権限のある限定された領域を確立できることである。
【0145】
LSCの免疫抑制特性を活用して、移植された細胞、組織、または臓器の生存を増強することができる。いかなる特定の理論によっても束縛されるものではないが、組織/臓器に送達されたLSCは、免疫抑制または免疫権限のある局在領域を作製し、それが細胞、組織、もしくは臓器の移植を補助することができると考えられる。これらの条件下で免疫寛容を誘導することができるが、LSCを成功裏に使用するために、移植レシピエント中の同種異系抗原に対するエフェクター細胞の免疫応答の減少および/または排除は必要でない。所望の部位に十分な数のLSCが長期間にわたり移植され、そこでLSCがその抑制的表現型を維持することが好ましい。
【0146】
ここで、本実施例に示される実験において用いられる材料および方法を説明する。
【0147】
LSCの単離:
本明細書の他の箇所で考察されるようにして、Hu027およびHu029と命名した成人死体ヒト肝臓からLSCを単離した。簡単に述べると、肝臓を門脈および肝動脈を通じて灌流し、その細胞を、1000、500、250および150μmのフィルターに通過させた。生細胞を2段階(9%および17%;Hu027およびHu029細胞)または12.5%(H0107細胞)OptiPrep勾配(Axis-Shield PoC AS, Oslo, Norway)を用いるCOBE細胞プロセッサー(Gambro BCT, Lakewood, CO)を用いて、500 x g下で分画した。
【0148】
ヒト胎児神経幹細胞の単離および培養
ヒト胎児の脳組織を、Advanced Bioscience Resources (Alameda, CA)から購入することができる。この組織をPBS/抗体で洗浄し、髄膜を除去した後、所望の脳組織を用いる。残りの組織を一対の鉗子を用いて裂き、パスツールピペットを用いる磨砕によりさらに分離させる。次いで、細胞を室温にて5分間、1000 rpmで遠心分離することによりペレット化する。細胞ペレットを、10 mlのNSC増殖培地(DMEM/F12、8 mMグルコース、グルタミン、20 mM重炭酸ナトリウム、15 mM HEPES、8μg/mlヘパリン、N2補給物、10 ng/ml bFGF、20 ng/ml EGF)中に再懸濁する。細胞を、通気キャップ付きのコーティングされた(15μg/mlポリオルニチンで一晩、次いで10μg/mlヒトフィブロネクチンで4時間以上)T-25 cm2フラスコ上にプレーティングし、37℃にて5%CO2インキュベーター中で増殖させる。白血病抑制因子(LIF)と共に増殖させた細胞を、bFGFおよびEGFのみの存在下で最初にそれらを増殖させた(1〜2回の継代)後、10 ng/mlのLIFを含む完全増殖培地中にプレーティングする。培地の50%を新鮮な完全増殖培地と交換することにより、培養物に一日おきに栄養補給する。PBS中の0.05%トリプシン-EDTAを用いて2〜3分間トリプシン処理することにより細胞を継代した後、大豆トリプシン阻害剤を添加してトリプシンを不活化する。細胞を室温にて5分間、1200 rpmでペレット化し、増殖培地中に再懸濁し、コーティングされたフラスコ上に1.0〜1.25 x 105細胞/cm2でプレーティングする。細胞を10%DMSO+90%完全増殖培地中で凍結保存する。
【0149】
ヒトMLRアッセイ:
幹細胞の免疫原性を、応答細胞としてのT細胞および刺激細胞としての同種異系PBMC、NSC、またはLSCを用いる混合リンパ球反応(MLR)により評価することができる。刺激細胞がT細胞に対して免疫原性である場合、刺激細胞はT細胞を活性化し、T細胞の増殖を誘導するであろう。これらの実験に用いられるT細胞を、本明細書の他の箇所に記載のロイコフェレーシス・パックから精製する。
【0150】
ラットMLRアッセイ:
このアッセイを、ヒトMLRと同様の様式で準備する。簡単に述べると、応答細胞を、頸部および腸間膜リンパ節細胞(LNC)を回収することにより生成する。その応答細胞を、6穴プレート中で細胞ストレーナー(BD Falcon)に対してシリンジプランジャを用いてそれらを粉砕することにより単細胞懸濁液へと分離させる。応答細胞を、血清が10%FBS (HyClone, Logan, UT)である以外はヒトMLR培地と同様の培養培地中に懸濁する。LNCを、実験に必要な数の同種異系刺激細胞と共に、マイクロタイターウェル中に播種する(4 x 105/ウェル)。刺激細胞は照射(5000 ラド)した後、プレーティングする。培養を1処理あたり3個のウェルを用いて行う。同種異系抗原に対するT細胞増殖を、本明細書の他の箇所に記載のようにして評価する。
【0151】
ヒトAlu PCRアッセイ:
ラット肝臓中のヒトNSCの数を、Walkerら(2003, Analytical Biochem. 315:122-128)により記載されたAlu内エレメントに基づくPCRアッセイを用いて定量することができる。ヒトDNA中に存在する天然の反復Alu配列により、単一コピーの配列/遺伝子よりも高い検出感度が得られる。かくして、ヒト起源のゲノムDNAを、ヒト特異的Alu反復配列についてリアルタイムPCRによって定量する。このアッセイに用いられるプライマーは、Yb8 Aluサブファミリー内の約200 bpのAlu内コア反復配列を増幅する。これらのプライマーの使用により、2 ngの混合種サンプルDNA中で少なくとも10 pg(約1細胞等量)までヒトDNAを特異的に検出することができるとWalkerら(2003, Analytical Biochem. 315:122-128)により報告された。Puregene DNA Isolationキット(Gentra Systems)を用いて、簡易凍結されたラット肝臓からゲノムDNAを単離する。ヒトDNAを、既知数のヒト細胞を用いてスパイクされた(10倍増加)ラット細胞の集団から作製されたAlu特異的DNA標準曲線との比較により定量する。
【0152】
NSCとのLSCの同時移植:
NSCは有意義な臨床用途を有する幹細胞の一代表であるため、NSCを以下の実験のために選択した。しかしながら、任意の細胞、組織または臓器を以下の実験で用いることができることが想定される。以下の実験は、レシピエントに移植されたNSCに対する免疫応答の抑制におけるLSCの役割を検討するものである。
【0153】
NSCはMHCクラスI抗原を発現する:
NSCを、当業界でよく知られた方法を用いてヒト胎児組織から調製し、約13代の継代数に渡って培養した。フローサイトメトリーを用いて免疫学的に関連する細胞膜分子について細胞を評価した。NSCの集団は造血マーカー(CD45、CD14、CD34)、共刺激分子(CD80、CD86)、またはMHCクラスII分子を発現しないことが観察された。しかしながら、NSCは幹細胞マーカーCD133、ならびにMHCクラスI抗原を発現した。クラスI分子の発現は通常、前記細胞が同種反応性T細胞により認識されるであろうこと、そしてそれが同種異系レシピエントに移植されれば拒絶されるであろうことを示す。本明細書に示される開示に基づけば、LSCはMLRにおいてT細胞に対して免疫原性ではないことが証明されたため、LSCはこの定説の例外である。
【0154】
NSCは同種異系T細胞の増殖を刺激する
NSCの免疫原性を、応答細胞としてのT細胞および刺激細胞としての照射されたNSCを用いて一方向混合リンパ球反応(MLR)により評価した。同種異系抗原に対するT細胞増殖応答を測定するMLRは、in vivoでの同種異系細胞の生存を予測するものである。NSCをヒト胎児組織から調製し、約13代の継代数に渡って培養した。約5 x 104細胞/ウェルの高用量から開始して、細胞を3倍ずつ漸減させたものを刺激細胞とした。関連のないドナー由来の精製T細胞(2 x 105細胞/ウェル)を応答細胞として調製した。自己PBMCを対照刺激細胞として用いた。図3に示されるように、NSCは、自己PBMCと比較して有意な程度のT細胞増殖を誘導したが、最も高い細胞用量でさえ有意な量のT細胞増殖を誘導しなかった(P<0.05、スチューデントt検定)。これらの結果は、同種異系NSCがT細胞により認識され、機能的免疫応答を誘導することを示している。
【0155】
LSCのin vivo拒絶からNSCを保護する能力を、異種モデルまたは同種異系モデルを用いて試験することができる。臨床モデルは細胞の異種移植および同種異系モデルを含んでもよいが、異種モデルは原則の証拠として役立つことが、本明細書に記載されている。この異種モデルは以下の基準を含む:
1)ドナー細胞としてのヒトNSC;
2)ラットLSC、これはヒトLSCが同種反応性T細胞応答に関して抑制的であることが示されたためである;ならびに
3)門脈を通じた細胞の投与の容易性、注入された細胞の免疫系へのアクセス可能性、および注入された細胞を回収する能力のため、移植部位として肝臓を選択した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、門脈内注入されたLSCは肝臓に留まるようになる。さらに、NSCはLSCとほぼ同じ大きさであるので、NSCも門脈送達後に肝臓中に捕捉されるようになる。このモデルにおける唯一のヒト細胞としてのヒトNSCの使用により、ヒトAlu DNA配列に特異的なPCR技術を用いて移植を評価することが可能になる。また、本明細書に記載のモデルを用いて、NSCおよびLSCを一方向MLRアッセイにおいて用いることにより、これらの細胞がレシピエント動物のリンパ節中でT細胞応答を誘導するかどうかを決定することができる。
【0156】
ラットLSCによる異種ラット対ヒトMLRの抑制
異種MLRを、ラットとヒトの細胞間で設定して、ラットLSCがこの応答を抑制できるかどうかを評価することができる。この実験においては、レシピエントに対して同種異系のラットLSCを用いるが、任意の起源に由来するLSCを用いてMLR応答を抑制することができる。例えば、レシピエントに対して自己由来のラットLSCを用いることもできる。
【0157】
Fisherのラットリンパ節(LN)を採取し、単細胞懸濁液へと分離させ、MLRにおける応答細胞としてマイクロタイターウェルにプレーティングする(4 x 105/ウェル)。ヒトNSCおよび同種異系PBMCに照射し、刺激細胞としてウェルあたり1 x 105細胞をプレーティングする。ACI系統のラットに由来するLSCおよび線維芽細胞を、5 x 104細胞/ウェルの高用量および3,125細胞/ウェルまで2倍ずつ減衰させた用量でMLRにおいて力価測定する。ラットMLRに関する培養条件は、本明細書の他の箇所に記載されている。対照MLR(LSCなし)と線維芽細胞またはLSCを含むMLRとを比較することにより、抑制を決定する。スチューデントt検定を用いて統計学的評価を行う。
【0158】
移植されたNSCの生存の決定
対照線維芽細胞またはLSCを用いる投与後のin vivoでのNSCの生存を評価するための実験を設計した。1:1の比のLSCとNSCを用いることができるが、これはin vitroでMLRを抑制するのに十分であるLSCと刺激因子PBMCの1:3の比を考慮すると、in vivoでの抑制にとって十分であるはずである。さらに、PBMCはNSCよりも強いT細胞刺激因子であると考えられ、従って、LSCとNSCの1:1の比は正当に理由付けられると考えられる。
【0159】
ヒトNSC(5 x 106細胞)をACI系統ラット皮膚線維芽細胞(5 x 106細胞)と混合し、25匹のFisherラットのそれぞれに200μlの用量で門脈内注入する。皮膚線維芽細胞をACIラットから取得した皮膚サンプルから生成し、本明細書の他の箇所に記載のようにして、LSCを増殖させるための同様の方法を用いてそれを増殖させる。25匹のFisherラットの別の群に、等しい数量のACI系統のラットLSC(5 x 106細胞/ラット)と混合したヒトNSC(5 x 106細胞/ラット)を門脈内注入する。各群に由来する5匹のラットを、注入後1、7、14、21、および28日目に犠牲にする。肝臓を取り出し、簡易凍結し、および本明細書の他の箇所に記載したAlu PCRアッセイに供して、ヒトNSCの移植を評価する。
【0160】
LSCはin vivoで、局在化された抑制を媒介し、肝臓中の異種細胞の生存を延長することができると考えられる。かくして、非抑制性の線維芽細胞と共にNSCを受容したラットからよりも、LSCを与えたラットからの方が、ずっと多い数のヒトNSCが回収される。これらの2群間の差異が最大になるのは、1〜2週間後、異種NSCに対する免疫応答が活性化される時に起こると予想される。PCRアッセイを用いて、ヒト特異的Alu反復配列を測定することにより、その移植を生き残ったヒトNSCを検出することができる。
【0161】
レシピエントラットにおける注入された細胞に対するT細胞プライミングの判定
ラット線維芽細胞、またはラットLSCと共に同時移植されたヒトNSCが、レシピエントラットの末梢リンパ節において反応性T細胞をプライミングしたかどうかを判定するための実験を設計する。一方向MLRを用いてそのようなプライミングを評価することができる。
【0162】
頸部および腸間膜リンパ節(LN)を、それぞれ注入の1ヶ月後である最終時点で犠牲にした各5匹のラットの2つの群(ヒトNSC+ラット線維芽細胞 対 ヒトNSC+ラットLSC)から取り出す。ラットに由来するLNを単細胞懸濁液へと分離させ、照射されたドナーヒトNSCを用いるMLRアッセイにおいて応答細胞として用いる。なおラット線維芽細胞およびラットLSCを、刺激細胞として用いる(5 x 104細胞/ウェル)。これらの実験において用いた対照群は、刺激細胞としての照射された同系Fisher株脾臓細胞(バックグラウンド)、培地中で培養されたLNC単独、および培地中で培養された照射された刺激細胞単独であってよい。それぞれの刺激集団に対する平均応答を、同系脾臓細胞に対するバックグラウンド応答と比較する。
【0163】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、異種ヒトNSCがレシピエントラットをプライミングする事象においては、レシピエントラット由来のT細胞は、MLRアッセイにおいて、刺激細胞としてのヒトNSCに対する二次応答をもたらすはずである。対照的に、移植物のレシピエントに投与されたLSCが、LSCおよびヒトNSCの同時投与後にヒトNSCに対する免疫応答を防止したならば、レシピエントのT細胞は一次MLR応答を与えるはずである。移植されたLSCが、LSCとNSCの同時移植後にNSCに対してレシピエントのT細胞を寛容化したならば、これらはMLRにおいて応答の減少を与えるはずである。
【0164】
実施例4:LSCと島細胞の同時投与:
糖尿病の治療のために、同種異系島細胞との同時投与にLSCを用いることができる。肝臓に細胞を運搬するレシピエントの門脈中に膵島と共にLSCを注入することにより、同種異系の膵島をレシピエントに導入すると、膵島は肝臓に住み着き、そこでグルコースに応答してインスリンを産生するように機能する。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、LSCと同種異系島細胞との同時移植は、免疫抑制剤を用いずに宿主による拒絶から膵島を保護するように機能し得る。LSCはまた、肝臓がその起源組織であるため、肝臓中で長時間生存することができる。
【0165】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の方法および組成物において種々の改変および変更を為すことができることが当業者には明らかであろう。かくして、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内になる限り本発明の改変および変更をカバーすることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、肝臓間質細胞(LSC)の免疫原性を示すグラフである。
【図2】種々の起源に由来する線維芽細胞および間質細胞による混合リンパ球反応(MLR)応答の抑制を示すグラフである。
【図3】神経幹細胞(NSC)が同種異系T細胞の増殖を刺激することを実証するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植レシピエントにおける、エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるために該レシピエントを治療する方法であって、
エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるのに有効な量の肝臓間質細胞を移植レシピエントに投与することによって、該移植レシピエントにおいて該エフェクター細胞が、該同種異系抗原に対する免疫応答を減少させる、前記方法。
【請求項2】
前記エフェクター細胞がT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞がドナーに由来するものであり、同種異系抗原が前記レシピエントに由来するものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞が前記レシピエントに由来するものであり、同種異系抗原がドナーに由来するものである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞が移植物中に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記移植物が骨髄である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記移植物が造血幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記移植物が神経幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
移植レシピエントに肝臓間質細胞を投与する前に、前記肝臓間質細胞を培養中で増殖っせる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エフェクター細胞が、前記T細胞をレシピエントに由来する細胞または組織と接触させた後に移植して、該T細胞を活性化させることにより以前に活性化されたドナーに由来するT細胞であり、さらに前記免疫応答が該T細胞の再活性化である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
肝臓間質細胞を移植レシピエントに投与して、該レシピエントによる該移植物の拒絶を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記肝臓間質細胞がヒトの肝臓間質細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記レシピエントに免疫抑制剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記移植物が固形臓器である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記固形臓器が心臓、膵臓、腎臓、肺および肝臓からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記肝臓間質細胞を前記レシピエントに投与した後、前記移植物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記肝臓間質幹細胞を、前記移植物と同時に前記レシピエントに投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記肝臓間質細胞を、前記移植物の一部として投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記肝臓間質細胞を前記レシピエントに投与した後、前記移植物を移植する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記肝臓間質細胞を前記レシピエントに静脈内投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記エフェクター細胞が前記ドナー移植物のレシピエントの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記肝臓間質細胞を遺伝的に改変する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
移植レシピエントにおいて、エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるために該移植レシピエントを治療する方法であって、
移植レシピエントに、エフェクター細胞に対する同種異系抗原に対する該エフェクター細胞の免疫応答を減少させるのに有効な量の肝臓間質細胞で処理された移植物を移植することによって、該移植レシピエントにおいて該エフェクター細胞が該同種異系抗原に対する免疫応答を減少させる、前記方法。
【請求項24】
前記エフェクター細胞がT細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
同種異系抗原に対するエフェクター細胞の免疫応答を減少させる方法であって、該エフェクター細胞を肝臓間質細胞で処理することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記エフェクター細胞がT細胞である、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−512464(P2008−512464A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531282(P2007−531282)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/031782
【国際公開番号】WO2006/031539
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(507077592)コグネート セラピューティクス,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】