説明

移植に好適な幹細胞、その調製およびそれらを含む医薬組成物

本発明は、移植に好適な幹細胞およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植に好適な幹細胞、およびそれらの調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床的、および実験的造血幹細胞(HSC)移植手法は、生涯を通じて、後期胚発達および成人における安定状態造血のあいだに起こる循環から骨髄(BM)へのHSC遊走の生理学的過程を模倣している1-3。ヒトHSCへの遺伝子伝達が、広い範囲の造血および遺伝子病の矯正における、見込みのあるツールとして役に立ちうる。HSC移植は、これらの遺伝的に改変した細胞を、BMに永続的に伝達するのに使用可能であり、言い換えれば、生涯を通じて、循環内へ、訂正された遺伝子を有する成熟細胞を放出する。
【0003】
幹細胞生着の効率の増強は、臨床的な移植、ならびに遺伝子治療プロトコールの成果を改善し、幹細胞の、レシピエントBMへ戻すおよび再増殖(repopulate)させる能力を改変することによって達成されうる。この目的のために、これらの過程を調節する機序のよりよい理解が必要である。
【0004】
CXCL12とも呼ばれるケモカイン ストロマ細胞由来因子−1(SDF−1)と、そのレセプターCXCR4との間の相互作用が、マウス胚発達中にBMの幹細胞播種において重要な役割をはたす10、11。先に、本発明者らは、免疫欠損NOD/SCIDマウスをレシピエントとして用いて、短期間のインビボ遊走(ホーミング)と、ヒトCD34+濃縮細胞による、マウス骨髄の、高レベルの多系統(multilineage)再増殖との両方が、SDF−1/CXCR4相互作用に依存していることを示すことができた12~15。これらのデータの裏付けとして、ヒトCD34+細胞上の高レベルのCXCR4発現、またはインビトロでの高SDF−1誘導指向性運動性のいずれかが、CD34+細胞の陽性選別での、同種異系および自己臨床移植療法におけるより早い回復と相関関係があることが示された16、17
【0005】
CXCR4発現は動的な過程であり、サイトカイン、ケモカイン、ストロマ細胞、接着分子およびタンパク質分解酵素などの環境因子によって調節される18。ヒト起源の造血幹細胞および前駆細胞において、CXCR4は、短時間(〜40時間)のインビトロサイトカイン培養13、19、またはMMP−2およびMMP−9などのタンパク質分解酵素による臍帯血(CB)CD34+の刺激20によって、細胞内プールからアップレギュレートされうる。これは続いて、SDF−1勾配に向かうそれらのインビトロ遊走13、ならびに移植NOD/SCIDおよび連続的に移植したβ2mnull NOD/SCIDマウスにおけるそのインビボ ホーミングおよび再増殖能を増強し、幹細胞自身の更新(renewal)と運動性を伴う発達とを連結する。最近の報告では、サイトカインカクテルでのより長い培養期間が、ヒトCB CD34+濃縮細胞上での、細胞表面CXCR4発現の減少をもたらすことが実証され22、さらに、より長期間インビトロで培養したヒト前駆細胞における再増殖の減少が証明された23。近年、本発明者らは、CB CD34+/CXCR4-ソート細胞が、低レベルの細胞内CXCR4を有し、インビトロでの短期間サイトカイン刺激につづいて、迅速に、細胞表面上で機能的に発現され、移植NOD/SCIDマウスのSDF−1依存ホーミングおよび再増殖を仲介可能であることを示した15
【0006】
ヒトおよびマウス幹細胞の指向性遊走を仲介することにおける、それらの中心的な役割24に加えて、SDF−1/CXCR4相互作用はまた、他の幹細胞機能にも関与する。重要なことに、SDF−1/CXCR4相互作用はまた、BMにおける、幹細胞および前駆細胞の保持に関与する10、32、33。この仮説はまた、マウスBM空洞内に直接注入したヒトHSCの固定に対するSDF−1/CXCR4相互作用の関与を示した他の研究によって確認されてきた34、35。これらの相互作用の干渉によって、ヒトおよびマウス前駆細胞の両方の、BMから循環への放出/移行が誘導される。
【0007】
そのCD4+ T細胞上で、ヒトCD4およびCXCR4を過剰発現しているトランスジェニックマウスでは、そのBMにてこれらの細胞のレベルが増加し、循環中では、非常に低いレベルである42。したがって、ヒトCD34+前駆細胞上のCXCR4の過剰発現が、それらのホーミングおよび再増殖の潜在能力を促進しうる。
【0008】
レンチウイルスベクターが、非分割細胞を形質導入するそれらの固有の能力のために、SCID再増殖細胞(SRCs)内にトランスジーンを誘導するために利用されてきた43~46。さらに、遺伝子治療における有意な臨床でのブレイクスルーが、ヒト重度複合免疫欠損(SCID)−X1を患う患者で起こり、遺伝子治療が実効をあげるという条件で、疾患表現型の完全なる修正を結果としてもたらした48、49。しかしながら、新たな証拠が、レトロウイルスで形質導入したヒトCD34+細胞のホーミングの低下8および低い生着9に関して存在する。
【0009】
低濃度のSDF−1が、他の早期に働くサイトカインとの相乗効果により、ヒトCD34+細胞ならびにマウス幹細胞および前駆細胞の増殖を増強し、前駆細胞生存におけるこのケモカインの役割を示唆しており25~29、一方、高レベルのSDF−1が、移植NOD/SCIDマウスの連続的に再増殖できる、ヒト長期間培養開始細胞(LTCIC)および始原ヒト胎児肝CD34+幹細胞の増殖の停止を誘導することが十分に立証されている30、31
【0010】
BM移植の不都合の1つは、健康な個体と比較して、移植患者のBMでは、長期間培養開始細胞(LTCIC)のような未熟な前駆細胞のレベルが長期間にわたり減少(1log減少)することである。
【0011】
長期間培養開始細胞(LTC−IC)は、骨髄(BM)ストロマ上の5〜8週間(35〜60日間)の培養の後、コロニー形成単位細胞(CFU)を産生し、インビトロで容易に検出可能な前駆細胞を意味する造血前駆細胞である。ヒトBMまたは臍帯血由来のCD34+CD38−細胞で開始した長期間の培養は、少なくとも100日間、すなわち、標準LTC−IC期間を超えて、CFUを産出し続けることが可能であることが報告されてきた。臍帯血由来の単細胞培養物を、CD34+CD38−細胞の亜集団が、60日を超えてCFUを産出可能であるかどうかを研究するために使用した(「超長期間培養開始細胞」またはELTC−IC)。LTC−IC臍帯血と対照的に、ELTC−ICは培養後半に増殖し、より静止した前駆細胞集団である。ELTC−ICは、LTC−ICよりも、三倍〜四倍より多い前駆細胞を産出する(P<.002)。これは、長期間培養中の前駆細胞の機能的ヒエラルキーであり、それらの静止レベルと比例する(Blood. 1996 Nov 1;88(9):3306-13 Crooks GM et al.)。
【0012】
幹細胞治療の利用がますます拡大していることを考慮すると、細胞置換治療の効率および成功率を改善するために、幹細胞の集団におけるCD34+38−細胞のレベルを増強することが非常に望ましい。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、多量の未熟な初期前駆細胞を有する幹細胞を含む細胞の集団を製造するための方法に関し、前記方法は、幹細胞を回収し、その細胞内に、CXCR4の配列を含むDNA断片を導入することを含む。
【0014】
本発明の1つの実施態様において、細胞の集団は、低濃度のSDF−1に応答して改善されたCXCR4シグナル伝達を示す。
【0015】
本発明の他の実施態様において、細胞の集団は、低濃度のSDF−1に応答して改善されたCXCR4シグナル伝達を示す。
【0016】
本発明のさらなる実施態様において、幹細胞は、造血幹細胞、とりわけCD34+濃縮幹細胞である。
【0017】
本発明のさらなる実施態様において、未熟な初期前駆細胞は、CD34+/CD38−/low系統のものである。
【0018】
本発明のさらなる実施態様において、幹細胞の回収は、幹細胞移行手法の後、および/または手術手法の後に実行する。
【0019】
本発明のさらなる実施態様において、回収の後、所定の閾値より上のCXCR4レベルを有する幹細胞をFACSによって単離する。
【0020】
本発明のさらなる実施態様において、本発明の幹細胞は、脊髄および赤血球系統へ分化可能である。
【0021】
本発明のさらなる実施態様において、CD34+/CD38−/low系統の未熟な初期前駆細胞は集団のおよそ1〜5%である。
【0022】
本発明のさらなる実施態様において、CD34+/CD38−/low系統の未熟な初期前駆細胞は幹細胞の約3%以上である。
【0023】
本発明のさらなる実施態様において、低濃度のSDF−1は約50ng/ml以下である。
【0024】
本発明のさらなる実施態様において、改善されたシグナル伝達は、低濃度のSDF−1によって仲介された細胞遊走の増強によって現れる。
【0025】
本発明のさらなる実施態様において、高濃度のSDF−1は、約1マイクログラム/ml以上である。
【0026】
本発明のさらなる実施態様において、改善されたシグナル伝達は、SDF−1による脱感作の減少によって現れる。
【0027】
1つの態様において、本発明は、多量の未熟な初期前駆細胞を含む幹細胞を含み、CXCR4配列を含むDNA断片を幹細胞に導入することによって製造される、低濃度および/または高濃度SDF−1に応答して改善されたCXCR4シグナル伝達能力を示す細胞の集団を提供する。
【0028】
本発明の1つの実施態様において、幹細胞は造血幹細胞である。
【0029】
本発明のさらなる実施態様において、細胞の集団は脊髄および赤血球系統へ分化可能である。
【0030】
本発明のさらなる実施態様において、造血幹細胞はCD34+濃縮幹細胞である。
【0031】
本発明のさらなる実施態様において、未熟な初期前駆細胞は、CD34+/CD38−/low系統のものである。
【0032】
本発明のさらなる実施態様において、CD34+/CD38−/lowの量は、集団の約1〜5%である。
【0033】
本発明の他のさらなる実施態様において、CD34+/CD38−/lowの量は、集団のおよそ3%以上である。
【0034】
本発明のさらなる実施態様において、低濃度のSDF−1は、約50ng/ml以下である。
【0035】
本発明のさらなる実施態様において、高濃度のSDF−1は、約1マイクログラム/ml以上である。
【0036】
他の態様において、本発明は、必要とする対象において標的組織への幹細胞のホーミングを増加させるための医薬の製造における本発明の細胞集団の使用を提供する。
【0037】
また、本発明は、必要とする対象において標的組織への細胞の再増殖を増強するための医薬の製造における本発明の細胞集団の使用を提供する。
【0038】
本発明の1つの実施態様において、標的組織は、骨髄、血管、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、神経系、皮膚、骨および骨格筋からなる群より選択される。
【0039】
本発明の1つの実施態様において、本発明の細胞集団は移植を促進するために使用される。
【0040】
本発明のさらなる実施態様において、移植は化学治療プロトコールにしたがう。
【0041】
本発明の他のさらなる実施態様において、移植は自家移植である。
【0042】
本発明の他のさらなる実施態様において、移植には自己細胞の移行を伴う。
【0043】
本発明の他のさらなる実施態様において、移植は移行した幹細胞で実施される。
【0044】
さらに、本発明は、対象における細胞または組織置換を必要とする疾病の治療方法を提供し、前記方法は、必要としている対象に、治療的に有効量の本発明による細胞集団を投与することを含む。
【0045】
また、本発明は、インタクトな6H8エピトープを有するCXCR4を発現している幹細胞を含む細胞の集団を製造するための方法を提供し、本方法は、幹細胞を回収すること、および幹細胞にCXCR4の配列を含むDNA断片を導入することを含む。
【0046】
他の態様において、本発明は、幹細胞にCXCR4の配列を含むDNA断片を導入することによって製造される、インタクトなCXCR4 6H8エピトープを含む幹細胞を含む細胞集団、および必要とする対象における移植のための医薬の製造におけるその細胞の集団の使用を提供する。
【0047】
本発明のさらなる態様は、細胞または組織置換を必要とする疾病を治療するための方法に関し、前記方法は、必要とする対象に、治療的に有効量の本発明による細胞集団を提供することを含む。
【0048】
また、本発明は、幹細胞にCXCR4の配列を含むDNA断片を導入することによって製造される、インタクトなCXCR4 6H8エピトープを発現している幹細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明は、未熟な初期前駆細胞を強化した幹細胞であって、低濃度および高濃度のSDF−1に応答して改善されたCXCR4シグナル伝達を示す幹細胞、ならびにその製造方法および使用方法に関する。より具体的には、本発明の細胞は、低濃度のSDF−1に応答可能であり、高濃度のSDF−1によって脱感作されにくい。とりわけ、本発明によって、細胞または組織置換を必要とする疾病の治療が可能になる。本発明は、CXCR4を過剰発現しているトランスジェニック幹細胞が、CD34+/CD38−/low細胞集団のレベルの増強を示し、および/または、低濃度および高濃度のSDF−1に応答してCXCR4シグナル伝達能力の改善を示し、かつインタクトなCXCR4 6H8エピトープを示すということを明示する結果に基づいている。
【0050】
本発明の原理および操作は、図面および付随する記述を参照して、よく理解されうる。
【0051】
本発明の少なくとも1つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、以下の記述で列記され、実施例により実証された詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施態様、または種々の方法で、実施または達成されうる。また、本明細書で用いられる表現および語句は、説明の目的のためであり、制限として見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0052】
細胞治療の利用が急速に広がっており、徐々に種々の疾病の治療における重要な治療手法になりつつある。造血幹細胞(HSC)(たとえば、脊髄、臍帯血または移行末梢血由来)移植は、日常的に実施される保険補償細胞治療の1つの例である。しかしながら、がんおよび感染疾患のための免疫治療、軟骨欠損のためのコンドロサイト治療、神経変性疾患のための神経細胞治療、および多数の適用のための幹細胞治療を含む多くの他の細胞治療が同様に発展いる[Forbes(2002) Clinical Science 103:355-369]。
【0053】
幹細胞治療に関する問題の1つは、標的組織において、細胞の長期にわたる生着の成功を達成することの難しさである。現在、首尾良く移植された患者は、所望の表現型を有する細胞を産生する幹細胞と未熟前駆細胞の非常に低いレベルを示す。
【0054】
CD34+前駆細胞の、HGFおよびMMPsなどのサイトカインでの処理は、CXCR4の発現をアップレギュレートし、SDF−1に対してよりよい応答を示すことが先に示されている。しかしながら、SDF−1の濃度が増加しているとき、CXCR4は内在化し、細胞はSDF−1に対する応答が低くなる。また、SDF−1レベルの増加は、移植NOD/SCIDマウスの連続再増殖を可能とする、ヒト長期間培養開始細胞(LTCIC)および初期ヒト胎児肝CD34+幹細胞の増殖の脱感作および静止を誘導する30、31
【0055】
BM移植の問題の1つは、健康な個体と比較して、移植患者のBMでは長期維持未熟前駆細胞のレベルが減少(1log減少)することである。
【0056】
本発明者らは、CXCR4を過剰発現しているトランスジェニック造血幹細胞が、予想しなかった高レベルのCD34+/CD38−/low細胞集団を示すことを発見した。
【0057】
得られた結果は、CBおよびMBP CD34+濃縮細胞などのトランスジェニック幹細胞が、高レベルのCXCR4トランスジーンを発現しているレンチウイルスベクターで首尾良く形質導入されることを示す。たとえば一つの実施態様では、形質導入細胞は細胞表面CXCR4発現に関して87±2.7%(CB)および80±4%(MPB)が陽性であり、一方でGFPベクター感染したCBおよびMPB CD34+細胞の両方はたった28±3.1%が内因性CXCR4を発現した。
【0058】
CXCR4を過剰発現しているトランスジェニック細胞は、脊髄および赤血球系統へ分化するその能力に影響を受けないことが示されている。本発明によれば、形質導入したCD34+細胞(対照およびCXCR4の両方)を、14日目に位相差顕微鏡により記録し、バースト形成赤血球(BFU−E)およびコロニー形成単位顆粒球、マクロファージ(CFU−GM)のような、GFP+ CFCコロニーへの多系統分化を表したことが示される(図3A)。
【0059】
予期しなかったことに、MPB CD34+ CXCR4形質導入細胞は、対照細胞における0.5%と比較して、より高い割合(2.9%)のCD34+/CD38−/low集団を示した。この効果は、CB CD34+細胞では観察されなかった(図3C)。CXCR4形質導入はしたがって、CD34+/CD38−/low初期集団の増殖および/または維持を支持する。
【0060】
これも予期しなかったことに、CXCR4形質導入幹細胞は、幹細胞の表面においてよりインタクトなCXCR4 6H8エピトープを示す。
【0061】
CXCR4を過剰発現しているトランスジェニック細胞は、対照ベクター−形質導入細胞と比較すると、SDF−1仲介走化性においてCBでは1.5±0.04(p<0.001)倍、MPBでは2.3±0.3(p=0.03)倍という、有意に増加した応答を示す(図4B)。CXCR4を過剰発現しているトランスジェニック細胞はさらに、アクチン重合化の増加および/またはSDF−1によって仲介された細胞運動性の増加を示す。本発明によれば、CXCR4を過剰発現しているCD34+細胞は、未刺激細胞と比較した場合、アクチン重合化において3±0.11(p<0.001)倍の増加を示し、それに対し対照細胞では1.5±0.07(p=0.002)倍の増加を示す(図4A)。
【0062】
したがって、ヒト前駆細胞でのCXCR4の過剰発現がSDF−1誘導シグナル伝達を増強させ、細胞運動性およびアクチン重合化の増加を導く。
【0063】
さらに、7日間にわたるCXCR4過剰発現細胞の増殖の評価で、CXCR4−形質導入CB CD34+細胞がほとんどその播種した数の二倍になり、一方対照細胞数は、播種した本来の量以下に減少したことが観察された。
【0064】
CXCR4−形質導入細胞は、対照細胞と比較して、CB CD34+細胞では4±0.07(p=0.001)までの生着の増加を示した(図6A)。さらに、CD19およびCD33モノクローナル抗体を用いた代表的なFACS染色によって、骨髄および赤血球集団への多分化造血が、それぞれCXCR4−形質導入細胞を移植したマウスにおいて、B−細胞リンパ球産出の傾向をより強めて(図6C)、形質導入細胞で維持された(図6B)ことが示され、これはおそらく、SDF−1がまた、Pre B細胞増殖因子でもあるからである。さらに、平均36%±19%(幅7.5%〜77%)のCD45+細胞がGFPを発現していることがわかった(図6B)。トランスジーン発現もまた、脊髄およびリンパ集団の両方において検出された(図6B)。CXCF4過剰発現細胞を形質導入したマウスは、対照ベクター−形質導入細胞を注射したマウスと比較して、BMにおける初期CD34+/CD38-/low細胞集団が4倍の増加を示し(図6D)、CXCR4−過剰発現細胞生着レベルの高まりが、より初期の細胞集団の再増殖の増加によることを示唆している。
【0065】
移植後2時間(CB)または16h(MPB)で、CXCR4−形質導入細胞は、それらの対照同等物と比較して、脾臓に対するホーミングにおいて2倍以上の増加を示したことが観察された(図6E)。しかしながら、BMへのホーミング能力に関するこれらの違いは検出されなかった(データは示していない)。これらの結果は、CXCR4−形質導入細胞が、先に示唆されたように(Papayannopoulou T. Curr Opin Hematol. 2003;10:214-219、Ref 18: Kollet O, Blood. 2001, 97:3283-3291)BMを再増殖する前(移植後5週間)に、まず短期間脾臓にホームし得ることを示唆している。
【0066】
本発見は、標的組織に対して効果的に補充され、それを再増殖させ得る幹細胞の産出を可能にし、そのようにして、肝障害の回復および肝臓または骨髄移植などの、多数の臨床適用に使用可能である。
【0067】
したがって、本発明の1つの観点によると、「延長長期培養開始細胞(extended long-term culture-initiating cells)」すなわちELTC−ICを得るための、または初期CD34+/CD38-/low細胞集団を増加させる方法が提供される。本発明の他の観点にしたがって、増加したSDF−1濃度に暴露したときでさえ、SDF−1に対して応答可能なELTC−IC細胞を得る方法が提供される。
【0068】
本明細書で使用される場合、語句「幹細胞」は、とりわけ特定の機能を有する他の細胞型(たとえば「完全に分化した」細胞)に分化可能な細胞を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「トランスジェニック細胞」は、形質導入した遺伝子または断片を有する細胞を意味する。
【0070】
本発明のこの観点により使用可能である幹細胞の非限定例は、任意の年齢の個体の骨髄組織から、または新生児個体の臍帯血から得られた、造血幹細胞(HSCs)および間葉幹細胞(MSCs)、妊娠期間後形成される胚性組織(たとえば胚盤胞)から得た胚幹(ES)細胞、または妊娠中の任意の時期、好ましくは妊娠の10週より前の胎児の生殖器組織から得た胎児胚(EG)細胞である。本発明のこの観点により使用可能な幹細胞のさらなる記述を以下に要約する。
【0071】
HSCs−造血幹細胞(HSCs)は、赤血球、リンパ球、マクロファージおよび巨核芽球などの造血または血液細胞の任意の特定の種類へ分化可能な、胎児肝臓、臍帯血、骨髄および末梢血中で見られる、発達多能性ブラスト細胞である。HSCsは、典型的には骨髄内で、器官の寿命が続く限りその能力を維持し、成熟した前駆細胞の適切にバランスのとれたアウトプットを産出するために、全ての必要な因子および接着特性を支える隙間内に存在する[Whetton (1999) Trends Cell Biol 9:233-238; Weissman (2000) Cell 100:157-168; Jankowska-Wieczorek (2001) Stem Cells 19:99-107; Chan (2001) Br. J. Haematol. 112:541-557]。
【0072】
本発明のこの観点によると、HSCsは、好ましくはCD34+細胞であり、より好ましくはCD34+/CD38−/low細胞であり、これらは、より初期の幹細胞の集団であり、それゆえ系統制限が少なく、主要な長期BM再増殖細胞であることが示された。
【0073】
MSCs−間葉幹細胞は、サイトカインのような、生物活性因子からの種々の影響に依存して、間葉性または結合組織の1つの特定の型(すなわち、脂肪、骨性、間質、軟骨性、弾性および線維性結合組織のような、特殊化した要素を支持する体の組織)へ分化可能な骨髄、血液、皮膚および骨膜中でみられる発達多能性ブラスト細胞である。
【0074】
可塑物に接着しているヒト骨髄穿刺液細胞のおよそ30%が、MSCsと考えられる。これらの細胞は、インビトロで展開でき、その後分化を誘導できる。成人MSCsはインビトロで展開可能であり、骨、軟骨、腱、筋肉または脂肪細胞を形成するように刺激できるという事実から、これらは組織エンジニアリングおよび遺伝子治療戦略にとって魅力的なものである。MSC機能をアッセイするために、インビボアッセイが発達してきた。循環系に注射したMSCsは上述の多数の組織になることができる。とりわけ、骨格筋および心筋は、5−アザシチジンに暴露することによって誘導可能であり、培養中のラットおよびヒトMSCsの神経への分化は、β−メルカプトエタノール、DMSOまたはブチル化ヒドロキシアニソールに暴露することによって誘導可能である[Tomita (1999) 100:11247-11256; Woodbury (2000) J. Neurosci. Res. 61:364-370]。さらに、MSC−由来細胞は、末梢への注射後ならびにラット脳内へのヒトMSCsの直接の注入後、脳内に、深く統合されるようにみられ、これらは、発達上で、神経性幹細胞の遊走中に使用される経路にそって遊走し、広く分散するようになり、HSC特殊化したマーカーを失い始める[Azizi (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:3908-3913]。間葉幹細胞および系統特異的細胞の増殖を促進する方法が米国特許第6,248,587号で開示されている。
【0075】
米国特許第5,486,359号にて記述されたSH2、SH3およびSH4などのヒト間葉幹細胞(hMSCs)の表面上のエピトープは、たとえば骨髄中に存在するような外来細胞集団から間葉幹細胞集団を選別して捕獲するための試薬として利用可能である。本発明の本観点によれば、種々の間葉性系統に分化可能であるため、CD45に対して陽性である前駆間葉幹細胞が使用されることが好ましい。
【0076】
本発明の本観点によれば、好ましい幹細胞はヒト幹細胞である。
【0077】
以下の表1は、本発明の本観点により、成体幹細胞の例を提供しており、対象の標的組織中で示された表現型を得るために使用可能である。
【0078】
【表1】

【0079】
以上で言及したように、本発明の本観点による幹細胞は、CXCR4トランスジーンを高発現するレンチウイルスベクターによって、首尾良く形質導入される。
【0080】
本明細書中の語句「ポリペプチドおよびタンパク質」は互換性がある。
【0081】
本発明はまた、本発明の上記CXCR4タンパク質のムテインにも関し、ムテインは本質的にCXCR4の天然に存在する配列のみを有する、CXCR4タンパク質と同一の生物学的活性を維持している。そのような「ムテイン」は、この種の変異が、本質的にタンパク質それ自身に関してタンパク質変異の生物学的活性を変化させないように、それぞれ、CXCR4タンパク質中、約20まで、好ましくは、10以内のアミノ酸残基が欠損、付加または他で置換されうるものでありうる。
【0082】
これらのムテインは、公知の合成によって、および/または部位特異的変異導入技術によって、またその他の好適な任意に公知の技術によって調製される。
【0083】
任意のそのような突然変異導入タンパク質は好ましくは、本質的にそれと同様の活性を有するように、CXCR4の基礎のものの、本質的に複製であるアミノ酸配列を有する。そこで、そのようなムテインを以下の実施例で列記した生物アッセイ試験にかけることを含む所定の実験方法によって、任意の該ムテインが、本質的に本発明の基礎タンパク質と同一の活性を有するかどうかを決定可能である。
【0084】
本発明により使用可能であるCXCR4のムテイン、またはそれをコードしている核酸には、本明細書で示した技術およびガイダンスに基づいて、過度の実験をすることなく当業者によって日常的にえられる代用ペプチドまたはポリヌクレオチドのような本質的にCXCR4相当配列の有限の組が含まれる。タンパク質の化学および構造の詳細な記述の代わりに、本明細書に参考文献によって組み込まれている、Schulz,G.E.et al., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag,New York,1978、およびCreighton,T.E. Proteins:Structure and Molecular Properties, W.H.Freeman & Co.,San Francisco,1983を参照のこと。コドン選択のような、ヌクレオチド配列置換の表示の代わりに、たとえば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publications and Wiley Interscience,New York,NY,1987-1995、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989を参照のこと。
【0085】
本発明によるムテインとして好ましい変化は、「保存的(conserative)」置換として知られるものである。本質的に天然に存在するCXCR4配列を有するタンパク質中の、これらの保存アミノ酸置換は、群のメンバー間の置換が分子の生物学的機能を保存することとなるような、十分に類似した物理化学的特性を有する、群内での同義アミノ酸を含みうる。Grantham,Science,Vol.185,pp.862-864(1974)を参照のこと。アミノ酸の挿入および欠損はまた、その機能を変更することなく上で定義した配列内で、とりわけ挿入または欠損が数個のアミノ酸、たとえば50以下、好ましくは20以下のCXCR4のみを含み、さらにたとえばシステイン残基のような、機能的な配座に重要であるアミノ酸を除去または置換しない場合に作成しうることが明らかである。Anfinsen, Principles That Govern The Folding of Protein Chains, Science,Vol.181,pp.223-230(1973)参照のこと。そのような欠損および/または挿入によって生じるムテインは、本発明の範囲内に入る。好ましくは、同義のアミノ酸群は、表Aで定義されたものである。より好ましい同義のアミノ酸群は、表Bで定義されたものであり、もっとも好ましい同義のアミノ酸群は、表Cで定義されたものである。
【0086】
【表A】

【0087】
【表B】

【0088】
【表C】

【0089】
本発明で使用するタンパク質のムテインを得るために利用できるタンパク質中のアミノ酸置換の産出の例には、Mark et alに付与された米国特許第RE33,653号、第4,959,314号、第4,588,585号および第4,737,462号、Koths et al.に付与された第5,116,943号、Namen et alに付与された第4,965,195号、Chong et alに付与された第4,879,111号、およびLee et alに付与された第5,017,691号で示されたような任意の公知の方法工程、および米国特許第4,904,584号(Straw et al)で示されたリジン置換タンパク質が含まれる。
【0090】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明で使用するCXCR4タンパク質の任意のムテインは、本発明の上記のCXCR4タンパク質と、本質的に相当するアミノ酸配列を有する。語句「本質的に相当する(essentially corresponding to)」は、特にCXCR4に対するその能力を考える限りでは、その基本的特性に影響を与えない基礎タンパク質の配列に対する軽微な変化を有するムテインを含むことを意図する。「本質的に相当する」語句内に含まれると一般的に考えられる変化の種類は、結果として、2、3の軽微な改変となる、本発明のCXCR4タンパク質をコードしているDNAの従来の変異導入技術、およびたとえば化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増加させるための、所望の活性に対するスクリーニングによって得られるものである。
【0091】
本発明はまた、CXCR4変異体も含有する。好ましいCXCR4変異体は、CXCR4アミノ酸配列に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するものであり、より好ましくは、CXCR4変異体は少なくとも90%の同一性を有するものであり、もっとも好ましい変異体は少なくとも95%同一性を有するものである。
【0092】
本明細書で使用するところの語句「配列同一性」は、アミノ酸配列が、ClustalW多重配列アラインメントプログラム(Thompson et al.,1994)用のウインドウズインターフェイスである、Clustal−Xプログラムを用いた低相同性領域の微調整により、Hanks and Quinn(1991)にしたがったアラインメントに基づいて比較されることを意味する。Clustal−Xプログラムは、ftp://ftp-igbmc.u-strasbg.fr/pub/clustalx/にてインターネット上で入手可能である。もちろん、このリンクが働かなくなっても、当業者は過度の試行をすることなく、標準的なインターネット検索技術を用いて他のリンクにより本プログラムのバージョンを見つけうることが理解されるべきである。特に言及しない限り、本願の有効出願日の時点で本明細書で引用された任意のプログラムのもっとも最近のバージョンが、本発明を実施するために利用されるものである。
【0093】
「配列同一性」を決定する他の方法を以下に示す。配列は、(最初のギャップゼロに対して)−12のギャップオープンペナルティー、および(ギャップ内の各さらなる連続ゼロあたり)−4のギャップ伸長ペナルティーで、デフォルト(BLOSUM62)マトリックス(値−4〜+11)を用いて、Genetic Computing Group’s GDAP(グローバルアラインメントプログラム)のバージョン9を使用しアラインメントする。アラインメントの後、請求項に記載したアミノ酸の数の割合として、割合同一性を、適合する数を表示することによって計算する。
【0094】
本発明におけるムテインには、CXCR4をコードする自然発生配列、および遺伝的コードの縮重に基づく天然由来のヌクレオチド配列とは異なる配列を本質的に全て含み、ストリンジェントな条件下でDNAまたはRNAにハイブリダイズする、そして本発明によるCXCR4タンパク質をコードするDNAまたはRNAなどの核酸によってコードされたものが含まれる、すなわち、いくらか異なる核酸配列は、その縮重により、同一のアミノ酸配列をまだコードしうる。
【0095】
本明細書で使用する場合、語句「ハイブリダイゼーション」は、核酸の鎖を塩基対合を介して相補的な鎖と結合する任意の工程を含むべきである(Coombs J, 1994, Dictionary of Biotechnology, stokton Press, New York NY)。「増幅」は、核酸配列のさらなるコピーの産出として定義され、一般的には本技術分野でよく知られているポリメラーゼ連鎖反応技術を用いて実施される(Dieffenbach and Dveksler, 1995, PCR Primer, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)。
【0096】
「ストリンジェンシー」は、典型的には約Tm−5℃(プローブの融解温度より5℃低い)〜Tmより約20℃〜25℃低い範囲でおこる。
【0097】
語句「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーションおよびそれに続く洗浄条件を意味し、当業者が「ストリンジェント」として従来言及するものである。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publications and Wiley Interscience, New York,NY,1987-1995, Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1989を参照のこと。
【0098】
本明細書で使用する場合、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション実験で使用した温度、ハイブリダイゼーション溶液中の一価のカチオンのモル濃度およびホルムアミドの割合の関数である。任意の所定の組の条件に関するストリンジェンシーの程度を決定するために、まず、DNA−DNAハイブリッドの融解温度Tmとして表した、100%同一性のハイブリッドの安定性を決定するためのMeinkoth et al.(1984)の等式を利用する。
Tm=81.5C+16.6(LogM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L
式中、Mは一価のカチオンのモル濃度であり、%GCはDNA中のGおよびCヌクレオチドのパーセンテージであり、%formはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合であり、Lは塩基対のハイブリッドの長さである。100%同一ハイブリッドに対して計算したものよりTmが減少された各1Cについて、許容されるミスマッチの量は、約1%まで増加する。したがって、特定の塩およびホルムアミド濃度での、任意の所定のハイブリダイゼーション実験に対して使用したTmが、Meinkothの等式にしたがって、100%ハイブリッドについて計算したTmよりも10C低い場合、約10%までのミスマッチが存在する場合でさえも、ハイブリッド形成が起こる。
【0099】
本明細書で使用するように、「高度にストリンジェントな条件(highly stringent conditions)」は、上記式によって計算されたか、または実際測定したかのいずれかで、標的配列を有する完全な二本鎖に対して存在するTmよりも10C以上低くはないTmを供するものである。「中程度にストリンジェントな条件」は、上記式によって計算されたか、または実際測定したかいずれかで、標的配列を有する完全な二本鎖に対して存在するTmよりも20C以上低くはないTmを供するものである。限定はしないが、高度にストリンジェントな条件(ハイブリッドの計算された、または測定されたTmよりも5〜10C低い)および中程度にストリンジェントな条件(ハイブリッドの計算された、または測定されたTmより15〜20C低い)の例では、ハイブリッドの計算されたTmより低い適切な温度で、2×SSC(標準クエン酸食塩水)および0.5% SDS(硫酸ドデシルナトリウム)の洗浄溶液を使用する。該条件の究極のストリンジェンシーは主に洗浄条件によるものであり、とりわけ、使用したハイブリッド形成条件は、安定性の低いハイブリッドを安定なハイブリッドにしたがって形成させるものである。ついで、より高度にストリンジェントな洗浄条件によって、安定性の低いハイブリッドを取り除く。上述した高度なストリンジェンシーから中程度の洗浄条件まで使用可能な一般的なハイブリダイゼーション条件は、Tmよりもおよそ20〜25C低い温度での、6× SSC(または6× SSPE(標準リン酸食塩水−EDTA)、5×Denhardt’s試薬、0.5%SDS、100&マイクロ;g/ml変性し、断片化サケ精子DNAの溶液中でのハイブリダイゼーションである。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりに塩酸テトラメチルアンモニウム(TMAC)を利用することが好ましい(Ausubel,1987,1999)。成体幹細胞は、骨髄吸引のような外科的手法を用いて入手可能であるか、またはNexell Therapeutics Inc.Irvine,CA,USAより入手できるもののような市販システムを用いて得られる。本発明で利用する幹細胞は、好ましくは、幹細胞移行手法を用いて回収(すなわち収穫)し、この方法ではHSCsを対象の循環系へ放出するために、化学治療またはサイトカイン刺激を用いる。移行が、脊髄手術よりも、より多くのHSCsおよび前駆細胞を産出することが知られているので、幹細胞は好ましくはこの手法を用いて回収する。
【0100】
幹細胞移行は、多数の分子によって誘導可能である。実施例には、顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン(IL)−7、IL−3、IL−12、幹細胞因子(SCF)およびflt−3リガンドのようなサイトカイン、IL−8、Mip−1α、Groβ、またはSDF−1のようなケモカイン、化学治療薬剤シクロホスファミド(Cy)およびパクリタキセルが含まれるが、限定されるものではない。しかしながら、これらの分子は、速度論および効果が異なることが認められるが、しかしながら、現在公知の実施態様にしたがって、G−CSFが単独でまたはシクロホスファミドとのような組み合わせで、幹細胞を移行するために、好ましく使用される。典型的には、G−CSFは5〜10μg/kgの用量で5〜10日間、毎日投与する。幹細胞を移行する方法は、米国特許第6,447,766号および第6,162,427号で開示されている。ヒト胚幹細胞はヒト胚盤胞より単離可能である。ヒト胚盤胞は典型的には、ヒトのインビボでの未着床胚から、またはインビトロでの受精(IVF)胚から得る。あるいは、単一細胞ヒト胚を胚盤胞期に広げることが可能である。ヒトES細胞の単離のために、透明帯を胚盤胞から取り除き、内部細胞塊(ICM)を免疫手術によって単離し、そこでは、栄養外胚葉細胞を溶解し、穏やかにピペッティングすることによって無損傷のICMより除去する。ついでICMを、その増殖を可能にする適切な培養を含む組織培養フラスコ中にプレートする。9〜15日後、機械的分解によって、または酵素的分解によってのいずれかで、増殖を誘導したICMをクランプ内に分離させ、ついで細胞を、新しい組織培地上に再プレートする。未分化形態を示しているコロニーをマイクロピペットによって個々に選別し、クランプ内に機械的に分離し、再プレートする。ついで、得られたES細胞を1〜2週間ごと定期的に分割する。ヒトES細胞の製造方法における、さらなる詳細に関しては、Thomson et al.,[米国特許第5,843,780号、Science 282:1145,1998;Curr.Top.Dev.Biol.38:133,1998;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7844,1995]、Bongso et al.,[Hum Reprod 4:706,1989]、Gardner et al.,[Fertil.Steril.69:84,1998]を参照のこと。
【0101】
市販されて入手可能な幹細胞はまた、本発明の本観点にしたがって使用可能であることが理解されるであろう。ヒトES細胞を、NIHヒト胚幹細胞登録(<http://escr.nih.gov>)より購入可能である。市販されて可能な幹細胞系統の非限定例は、BG01、BG02、BG03、BG04、CY12、CY30、CY92、CY10、TE03およびTE32である。
【0102】
ヒトEG細胞は、当業者に公知の研究技術を用いて妊娠の約8〜11週のヒト胎児より得た始原生殖細胞より回収可能である。生殖堤を分離し、小さな塊に切断し、その後、機械的分離によって、細胞をバラバラにする。ついで、EG細胞を、適切な培地で、細胞培養フラスコ中で増殖させる。細胞を、EG細胞と一致した細胞形態が観察されるまで、典型的には、7〜30日後、または1〜4継代、毎日培養液を交換して培養する。EG細胞を調製する方法における、さらなる詳細に関して、Shamblott et al.,[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726,1998]および米国特許第6,090,622号を参照のこと。
【0103】
多分化能を示している幹細胞集団の濃縮が、好ましく実施されうることが理解されるであろう。したがって、たとえば、本明細書以上で概略したように、本明細書以下でさらに記述するように、CD34+幹細胞はアフィニティーカラムまたはFACSを用いて濃縮可能である。
【0104】
幹細胞数が、治療に利用するために少なすぎる場合に、増殖条件下で幹細胞の培養もまた達成されうる。幹細胞の培養は、米国特許第6,511,958号、第6,436,704号、第6,280,718号、第6,258,597号、第6,184,035号、第6,132708号および第5,837,5739号で記述されている。
【0105】
一旦幹細胞を得たならば、CXCR4をコードしている配列を含むDNA、またはその活性部分をトランスフェクトする。
【0106】
「形質導入、トランスフェクトまたはトランスジェニック」細胞を、ポリヌクレオチドまたはDNAによってコードされたタンパク質を発現させる可能にする、好適な条件下で培養する。
【0107】
幹細胞に、CXCR4をコードする配列を含む組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターを形質導入可能であり、レンチウイルス系が、CXCR4またはその活性部分を発現するために好ましく使用される。どの場合でも、形質導入細胞をCXCR4の発現を可能にする効果的な条件下で培養する。効果的な培養条件には、限定はしないが、タンパク質産出を許容する効果的培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれる。効果的な培地とは、本発明の組換え体改変ポリペプチドを産出するために細胞を培養する任意の培地を意味する。そのような培地には、典型的に、同化炭素、窒素およびリン酸供給源を有する水溶液、およびビタミンのような、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養源が含まれる。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿内で培養可能である。培養は、組換え体細胞に好適な温度、pHおよび酸素含量で実施可能である。そのような培養条件は当業者の技能の範囲内である。
【0108】
そのような場合、発現構成体には、誘導可能で増殖特異的または組織特異的条件でありうる、哺乳動物細胞(上記の例)において活性であるシス−活性調節要素を含む。
【0109】
細胞特異的および/または組織特異的プロモーターの例には、肝臓特異的であるアルブミン[Pinkert et al.,(1987)Genes Dev.1:268-277]、リンパ球特異的プロモーター[Calame et al.,(1988)Adv.Immunol.43:235-275]、とりわけ、T−細胞レセプターのプロモーター[Winoto et al.,(1989)EMBO J.8:729-733]および免疫グロブリン[Banerji et al.(1983)Cell 33729-740]、神経フィラメントプロモーターのようなニューロン特異的プロモーター[Byrne et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473-5477]、膵臓−特異的プロモーター[Edlunch et al.(1985)Science 230:912-916]または乳漿プロモーターのような哺乳動物腺−特異的プロモーター(米国特許第4,873,316号および欧州特許第264,166号)のようなプロモーターが含まれる。本発明の核酸構築物はさらに、プロモーター配列に隣接可能であるか、または遠位でありうる、そして、それからの転写をアップレギュレートするように機能可能なエンハンサーを含みうる。
【0110】
好ましくは、誘導可能なシス−活性調節要素は、ホーミング−移植工程のあいだの幹細胞の環境の変化によって調節されうる。
【0111】
本発明の核酸構成は、さらにIRES要素、好ましくはEMCV IRESを含み得、これはCXCR4遺伝子とマーカーまたは選別遺伝子配列間に存在し得、マーカーまたは選別遺伝子の翻訳をアップレギュレートする際に機能可能である。
【0112】
一旦CXCR4またはその活性部分が過剰発現したならば、幹細胞はSDF−1に対する応答の増加を示す。
【0113】
本発明の本観点によると、CXCR4を過剰発現しているそのような細胞の同定および単離は、本技術分野でよく知られている多数の細胞学的、生化学的および分子的方法を用いて達成可能である。
【0114】
レセプターレベルの解析は、フローサイトメトリーによって達成可能である。このアプローチは、培養液中の励起供給源を通って流れる単一細胞をスキャンする器具を使用する。この技術は、可視および蛍光発光の測定に基づく、単一の生(または死)細胞の、迅速で、定量的、多パラメータ解析を提供可能である。この基礎プロトコールは、特異的な細胞結合分子に結合する蛍光−標識抗体およびリガンドによって産出される蛍光強度を測定することに焦点を当てている。蛍光活性化細胞ソーターを用いて細胞群を単離するために、本発明の幹細胞を、R&D,614 McKinley Place NE Minneapolis,MNから市販されて入手可能な抗CXCR4と接触させる。
【0115】
走化性レセプター発現のレベルを定量的に評価するための他の細胞学的または生化学的方法には、限定はしないが、標識化(たとえば放射活性標識化)ケモカインを用いる結合解析、ウエスタンブロット解析、細胞−表面ビオチン化および免疫蛍光染色が含まれる。レセプター発現レベルは、mRNAレベルによって決定することも可能であることが理解されるであろう。たとえば、CXCR4のmRNAは、特異的プローブとハイブリダイゼーションすることによって細胞内で検出しうる。そのようなプローブは、典型的には、インビトロでの転写によって作製するクローン化DNAまたはその断片、RNA、または通常固相合成によって生成するオリゴヌクレオチドプローブでありうる。特定ハイブリッド形成のために好適なプローブを生成し、利用するための方法は、本技術分野でよく知られており、使用されている。mRNAレベルの定量はまた、対象の走化性レセプターのmRNAに特異的にハイブリッド形成するプライマーを用いる増幅反応[たとえば、PCR、[PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications, Academic Press, San Diego, CA(1990)]を用いて実施することが可能である。
【0116】
mRNA検出アッセイにおける精度を改善するために、多様な対照を有効に利用しうる。たとえば、試料をハイブリダイゼーションの前にRNAse Aで処理して不適切なプローブでハイブリダイズさせ、誤りのハイブリダイゼーションを評価する。
【0117】
機能アッセイもまた、走化性レセプター発現を決定するために利用可能である。たとえば、走化性試薬(たとえばSDF−1)の勾配を用い、走化性試薬に向かって膜を通る幹細胞遊走を追う走化性アッセイは、走化性の増加を示している幹細胞を同定し、単離するために利用可能である。細胞が十分なレベルの走化性レセプター(たとえばCXCR4)を発現しない場合、細胞の大部分が膜上に残る。しかしながら、本発明の化学誘引物質レセプターの発現の増加に際し、細胞が膜を通って遊走し、走化性プレートのウェルの底に定着する(実施例項の実施例3を参照のこと)。機能的ホーミングアッセイもまた、本発明の方法によって利用可能であることが理解されるであろう。そのようなアッセイは、Kollet (2001) Blood 97:3283-3291で記述されている。
【0118】
低または高SDF−1濃度に対する応答における、CXCR4シグナル伝達能力の改善を示している幹細胞、および/またはCD34+/CD38−/low集団のような、未熟な初期前駆細胞のレベルの増加を示している幹細胞を、広範囲の臨床適用で使用可能である。
【0119】
したがって、本発明の他の観点によると、細胞または組織の置換を必要とする疾病を治療する方法が提供される。本方法は、それを必要とする対象に、治療的に有効量のCXCR4またはその活性断片を過剰発現しているトランスジェニック幹細胞を投与すること、それによってSDF−1の濃度が増加する環境中でさえ、SDF−1に対するよりよい応答をするCD34+/CD38−/low集団のような高レベルの未熟な初期前駆細胞を提供することによって実施され、それによって対象の細胞または組織の置換を必要とする疾病を治療する。細胞または組織の置換を必要とする疾病には、限定はしないが、リウマチ様関節炎のように、Tおよび/またはB−リンパ球のような種々の免疫不全または免疫疾病が含まれる。そのような免疫不全は、ウイルス感染、HTLVI、HTLVII、HTLVIII、放射線への重度の暴露、癌治療の結果、または他の医薬治療の結果でありうる。血液学的不全には、限定はしないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性非リンパ芽球性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)のような、白血病が含まれる。他のそのような血液学的不全は、限定はしないが、[たとえばアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損およびX−結合SCID(XSCID)のような]重度混合免疫不全(SCID)症候群、大理石骨病、再生不良性貧血、ゴーシュ病、地中海性貧血および他の先天性または遺伝的に決定された造血異常でありえ、細胞または組織の置換を必要とする他の疾病には、肝不全、膵臓不全、神経学的疾病に関連するものや、変形性関節症、骨粗鬆症、骨欠損、結合組織欠損、骨格欠損または軟骨欠損のような任意の結合組織が関与する外傷性または病的状態が含まれる。
【0120】
本発明にしたがった好ましい個々の対象は、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、および好ましくはヒトのような哺乳動物である。
【0121】
本発明の本観点にしたがった幹細胞は、治療すべき対象から得ることが好ましい。しかしながら、幹細胞はまた、同系、同種異系、そしてあまり好ましくはないが、異種ドナーから得て良い。
【0122】
同種異系または異種幹細胞を利用する場合、レシピエント対象および/または細胞を、好ましくは、移植片対宿主、および宿主対移植片拒絶を防止するために処置することが理解されるであろう。免疫抑制プロトコールは、本技術分野で公知であり、いくつかは米国特許第6,447,765号で開示されている。
【0123】
本発明の幹細胞は、米国特許第5,928,638号でさらに記述されている肝炎に対する抗ウイルス薬のような、任意の治療的遺伝子を発現するために、遺伝的に改変可能である。幹細胞を、レシピエント対象に移植する。これは一般的に、本技術分野でよく知られた方法を用いて実施され、通常当業者によく知られている臨床ツールを用いて、対象内に処理した幹細胞を注射または導入することが含まれる(米国特許第6,447,765号、第6,383,481号、第6,143,292号および第6,326,198号)。
【0124】
たとえば、本発明の幹細胞の導入は、静脈内または動脈内投与のような血管内投与、腹腔内投与などを介して、局所または全身で実施可能である。細胞は、無菌シリンジまたは他の無菌伝達機構を用いて、50mol Fenwall注入バッグに注射可能である。ついで細胞をすぐに、15分間程度の時間以上でにわたり、IV投与を介して、患者内のフリーフローIVライン内に注入可能である。いくつかの実施態様において、緩衝液または塩のようなさらなる試薬も同様に加えて良い。投与する組成物は、適切な無菌性および安定性を達成する標準の方法にしたがって、処方、生成および保存すべきである。
【0125】
幹細胞投与量は、指示された利用にしたがって決定可能である。一般的に、非経口投与の場合、レシピエントの体重1キログラムあたり、約0.01〜約5百万細胞を投与することが通例である。使用した細胞の数はレシピエントの体重および状態に依存し、投与の回数または頻度および他の変数は当業者に公知である。
【0126】
CXCR4過剰発現系のさらなる拡大は、遺伝子治療プロトコールに続く、損なわれたホーミングおよび生着を改善するために効果的なツールとして働き得る8、9。さらに、ヒトCD34+細胞のCXCR4過剰発現は、両方ともが低い細胞収率によって限定され得る化学治療処置に続く臨床CB CD34+移植の改善、ならびに自己移行PBL CD34+移植を促進しうる6。さらに、間葉性幹細胞のような他の細胞型は、種々の器官へ遊走する能力を有するが、しかしながら、それらの生着のレベルは特に低い。したがって、標的器官内でのSDF−1の発現または投与の誘導とともに、細胞表面の構造性または一過性CXCR4発現を促進する系の発展が、インビボでの指向性遊走ならびに器官回復の一部として患者の対象の器官の種々の細胞型の長期再増殖および発達のために有益であり得る。したがって、本発明者らは、多くの臨床プロトコールの結果を改善できる幹細胞の機能および発達を調節するための普遍的な系として、CXCR4の過剰発現を提案する。
【0127】
対象へ細胞を投与した後、もし望むなら、本技術分野で公知のように治療の効果を評価し得る。治療を必要であったりまたは必要とされるように繰り返して良い。
【0128】
本発明のさらなる目的、利点および新規の特徴が、限定する意図はないが、以下の実施例を試みることで当業者に明らかになるであろう。さらに、本明細書の以上で記述したような、そして以下の請求項の項目で請求したような、各種々の実施態様および観点は以下の実施例において実験的支持を見いだす。
【0129】
実施例
ここで前記記述とともに、非限定様式にて本発明を例示する以下の実施例に対し、参考文献を作製する。
【0130】
一般的に、本明細書で使用される用語および本発見で利用される実験手法には、分子学的、生化学的、微生物学的および組換え体DNA技術が含まれる。そのような技術は、文献にて、十分に説明されている。たとえば、「モレキュラークローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning:A laboratory Manual)」Sambrook et al.,(1989);「分子生物学のカレントプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,「分子生物学のカレントプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,「分子クローニングに対する実施ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」,John Wiley &Sons,New York(1988);Watson et al.,「組換え体DNA(Recombinant DNA)」,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)「ゲノム解析:研究室マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series)」,Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号および第5,272,057号で列記されたような方法論;「細胞生物学:研究室ハンドブック(Cell Biology:A Laboratory Handbook)」Volumes I-III Cellis J.E.,ed.(1994),"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J.E.,ed(1994);Stites et al.(eds),「基礎および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(8th Edition)、Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),「細胞免疫学における選別方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」,W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照のこと。利用可能な免疫アッセイは、特許および科学的文献にて広く記述され、たとえば、米国特許第3,791,932号、第3,839,153号、第3,850,752号、第3,850,578号、第3,853,987号、第3,867,517号、第3,879,262号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、第4,098,876号、第4,879,219号、第5,011,771号および第5,281,521号;「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」Gait,M.J.,ed.(1984);「核酸ハイブリッド形成(Nucleic Acid Hybridization)」Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1985);「転写および翻訳(Transcription and Translation)」Hames,B.D.,and Higgins S.J.,Eds.(1984);「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」Freshney,R.I.,ed.(1986);「固定化細胞および酵素(Immobilized Cells and Enzymes)」IRL Press,(1986);「分子クローニングへの実施ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」Perbal,B.,(1984)および「酵素学における方法論(Methods in Enzymology)」Vol.1-317,Academic Press;「PCRプロトコール:方法および適用へのガイド(PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications)」,Academic Press,San Diego,CA(1990);Marshak et al.,「タンパク質精製および特性化に関する戦略−研究室コースマニュアル(Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual)」CSHL Press(1996)を参照のこと。技術の全ては、本明細書で完全に列記したような参考文献に組み入れられている。他の一般的な参考文献が、本文書を通して提供される。本明細書内の手法は、本技術分野でよく知られていると信じられ、読者の利便性のために提供される。本明細書に含まれる全ての情報が、参考文献によって、本明細書に組み込まれている。
【実施例1】
【0131】
CXCR4−形質導入ヒトCD34+細胞は、表面CXCR4発現を増加させた
CXCR4を、HIV−由来レンチウイルス遺伝子伝達系を用いて、ヒトCBおよびMPB CD34+濃縮細胞上で過剰発現させた。形質導入細胞を、CXCR4表面発現に関して解析した。
【0132】
材料および実験手法
ヒト細胞−臍帯血(CB)細胞および成人移行末梢血(MPB)細胞を、インフォームドコンセントの後に得た。CD34+細胞濃縮を、先に記述された[Kollet(2001)Blood 97:3283-3291]ように、磁気ビーズ分離を用いて実施した。CXCR4発現を、精製した抗ヒトCXCR4(クローン12G5、R&D、ミネアポリス、MN)およびヤギ抗マウスIgG FITCの二次F(ab’)2断片(ジャクソン(Jackson)、ウエストグローブ、PA)を用いた、フローサイトメトリーによって促進した。
【0133】
ウイルスベクター構築および生産−ヒトCXCR4遺伝子レンチウイルス発現ベクターを、ヒトCB細胞から1.2kb CXCR4 cDNAを単離し、それを、内部リボソームエントリー部位(IRES)を介して、増強グリーンフルオレセントタンパク質(GFP)に連結することによって構築した。CXCR4−IRES−GFPを含む断片を、EF−1αプロモーターとライゲートし、EF−1α−CXCR4−IRES−GFPバイシストロン性カセットを含む断片を、親切にもDr.Didier Trono,Geneva,Switzerlandによって提供された、pHR’−SINベクター骨格内に挿入された(Woods et al.Blood.2000 Dec 1;96(12):3725-33.)、自己−不活性化(SIN)ベクターを生成した。対照ベクターは、CXCR4遺伝子を欠き、GFPのみを発現する(図1)。
【0134】
複製−欠損、自己−不活性化HIV−由来レンチウイルスベクターを、3プラスミド系:運搬ベクター、CD34+細胞に対してpHR’−EF1a−GFP−SIN(対照ベクター)またはpHR’−EF1a−CXCR4−IRES−GFP−SIN、hMSCsに対してpHR’−CMV−GFP(対照ベクター)またはpHR’−CMV−CXCR4−IRES−GFP(実験ベクター)、エンベロープコードプラスミドpMD.Gおよびパッケージング構築物pCMVR8.91(Zufferey R,Nat.Biotechnol.1997;15:871-875, Naldini L,Science.1996;272:263-267)を用いて、FuGENE 6トランスフェクション試薬(ロッシュ ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)、ミュンヘン ドイツ)の方法により、293Tパッケージング細胞株の一過性トランスフェクションにて産出した。トランスフェクション24時間後に、ウイルス上清を、2%BSA(シグマ(Sigma)、セントルイス、MO、USA)、10mg/ml インスリン(バイオロジカル インダストリーズ(Biological Industries)、Beit Haemek、イスラエル)、200mg/ml トランスフェリン(シグマ)、0.1mM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン(バイオロジカル インダストリーズ)、100mg/ml ストレプトマイシン(バイオロジカル インダストリーズ)、および10mM Hepes(バイオロジカル インダストリーズ)を含む血清不含培地で置換した。24時間後、ウイルス上清を回収し、濾過し(0.45μM Minisartフィルター、サルトリウス(Sartorius)、AG、ドイツ)、標的細胞の形質導入のために利用した。
【0135】
CD34+細胞の形質導入−CD34+細胞の形質導入を、HSC中の二重形質導入プロトコール50を用いて実施した。CD34+細胞(ウェルあたり4×105まで)を、12−ウェルプレート中で24時間、400μlの血清不含培地中、SCF(50ng/ml)で前刺激した。SCF(50ng/ml)およびFLT−3L(50ng/ml)(ともにR&Dシステムズ、ミネアポリス、MNから)、IL−6(50ng/ml;インターファーム ラボラトリーズ(Interpharm Laboratories)、アレス−セロノグループ(Ares-Serono Group)、Ness Ziona、イスラエル)を補足したウイルス上清(1.6ml/35mmウェル)を、2×107TU/ml程のウイルス負荷で、細胞に加えた(一次感染)。形質導入を24時間後に繰り返した(二次感染)。感染効率を、形質導入72時間後、フローサイトメトリー解析(Kollet 2002 Blood vol100、2778ページ)(FACSCalibur、ベクトン ディッキンソン(Becton Dickinson)(BD)、サンジョゼ、CA)によって、特異的抗ヒトCXCR4−PE(12G5、BD ファーミンゲン(Pharmingen)、サンディエゴ,CA)およびGFP(FL1チャンネル)を用いて、CXCR4の細胞発現により決定した。モック細胞を、レンチウイルスベクターへの暴露なしに、形質導入細胞と同様の条件で培養した。
【0136】
CBおよびMPB CD34+細胞両方が、フローサイトメトリーによって記録したところ、高い形質導入効果を示し、GFPベクター(対照)形質導入細胞では70% GFP陽性細胞に、CXCR4−形質導入細胞では50%に達した(図2A−上パネル)。さらに、CXCR4−感染CD34+細胞は、細胞表面CXCR4発現に関して、87±2.7%(CB)および80±4%(MPB)陽性であり、一方で、GFPベクターに感染したCBおよびMPB CD34+細胞両方では28±3.1%のみが内因性CXCR4を発現しており、非形質導入細胞(モック細胞)のレベルに類似していた(図2A−下パネル(それぞれ)およびB)。興味深いことに、CXCR4形質導入細胞は、GFPベクター形質導入細胞の10.2と比較して、89.4のより高い平均蛍光強度(MFI)を示した(図2C)。しかしながら、それらの細胞内CXCR4発現は、それらの対照(GFP)対応物より低かった(図2C)。とりわけ、CXCR4ベクターを形質導入した細胞は、GFP+細胞が少なく、IRESから下流に位置する遺伝子の発現レベルの減少を示している、先の報告51と一致する。
【0137】
これらの結果は、CBおよびMPB CD34+細胞の両方が、CXCR4トランスジーンを高発現するレンチウイルスベクターを用いて、首尾良く形質導入できることを示している。
【実施例2】
【0138】
CXCR4−過剰発現ヒトCD34+細胞は、インビトロでの分化可能性およびトランスジーン発現を維持する
幹細胞および前駆細胞は、適切なサイトカインカクテルを供した場合に、骨髄および赤血球系統にインビトロで多系統分化が可能である(cancer research1977 vol61 ページ1でのMetcalf dの最近の結果)。したがって、本発明者らは、分化した系統における、形質導入細胞の、インビトロでの分化する能力に対する、トランスジーン発現の効果を評価した。
【0139】
実験手法
CFUアッセイ−エクソビボ培養中の形質導入後の、ヒト前駆細胞のレベルならびにトランスジーン発現の維持を検出するために、半固体培養を、先に記述された52ように実施した。簡単に記すと、CB CD34+形質導入細胞(3×103細胞/ml)を、0.9% メチルセルロース(シグマ)、30%FCS、5×10-5M 2ME、50ng/ml SCF、5ng/ml IL−3、5ng/ml GM−CSF(R&D)、および2u/ml エリスロポエチン(オルソ バイオ テック(Orto Bio Tech)、Don Mills,Canada)中にプレートした。培養物を、5%CO2を含む加湿雰囲気中、37℃にてインキュベートし、14日後、GFP+に関しては、位相差顕微鏡を用いて、ならびに形態基準を用いて、骨髄または赤血球コロニーを記録した。
【0140】
トランスジーン発現が、細胞の、骨髄および赤血球系統への分化能力に影響を与えないことがわかった。形質導入CD34+細胞(対照およびCXCR4両方)は、14日目に位相差顕微鏡によって記録し、バースト−形成ユニット−赤血球(BFU−E)およびコロニー−形成ユニット−顆粒球、マクロファージ(CFU−GM)のようなGFP+ CFCコロニーへの多分化能分化を示した(図3A)。対照ベクターを形質導入したGFP+ CFCコロニーの数は、CXCR4ベクターを形質導入したGFP+ CFCコロニーより2倍多く、本ベクターでの形質導入の後のGFP+細胞のより低い割合と一致する(図3B)。興味深いことに、対照ならびにCXCR4−形質導入細胞両方が、同数のCFU−GMコロニーを産出する一方で、CXCR4−形質導入細胞より産出されるBFU−Eコロニーが、25%(p=0.004)減少し(図3B)、SDF−1/CXCR4相互作用が、赤血球系統分化を抑制することを示したGibellini et alの先の発見53を証明している。さらに、MPB CD34+ CXCR4形質導入細胞は、対照細胞での0.5%と比較して、より高い割合(2.9%)のCD34+/CD38−/low集団を示した。この効果は、CB CD34+細胞では観察されなかった(図3C)。CXCR4形質導入はしたがって、CD34+/CD38−/low始原集団をより保存および/または拡大しうる。
【実施例3】
【0141】
形質導入CD34+細胞で発現したCXCR4は機能的である
ケモカインは、細胞骨格配置、とりわけアクチン重合化を導く細胞内事象のカスケードを活性化することによって、細胞運動性を誘導する54。挿入したレセプターの機能性を決定するための方法として、本発明者らは、運動性機構のSDF−1誘導活性化に対するCXCR4過剰発現の効果を試験した。
【0142】
実験手法
アクチン重合化アッセイ−形質導入細胞を、示した時間、37℃にて、血清−不含RPMI中で、SDF−1α(300ng/ml、ペプロテック(Peprotech)、Rocky Hill、NJ)で刺激した。反応を、RTにて10分間、3容量の3.7%パラホルムアルデヒドを加えることによって停止させ、続いて、PBSで洗浄し、0.1% Triton−Hepes(20mM Hepes、300mMサッカロース、50mM NaCl、3mM MgCl2、0.1% Triton)で、2分間、氷上にて透過化処理をした。ついで細胞を、RTにて30分間、FITC−Phalloidin(2mg/ml、シグマ)で染色し、洗浄し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0143】
遊走アッセイ−125ng/ml SDF−1αを含む、10% FCS含有RPMI(600μl)を、Costar 24−ウェルトランスウェル(コーニング(Corning)(ポアサイズ5μm)、NY)の下部チャンバーに加えた。100μlの培地中の1×105形質導入CD34+細胞を、上部チャンバーにのせ、37℃にて4時間遊走をさせた。遊走している細胞を、下部チャンバーより回収し、FACSCaliburを用いて、30秒間計数した。対照自発遊走は、SDF−1αなしで、下部チャンバーで実施した。
【0144】
本発明者らは、CB CD34+細胞が、SDF−1での30秒の刺激後に、アクチン重合化のピークを示したことを発見した(図4A)。この時点で、刺激していない細胞と比較した場合、CXCR4過剰発現細胞はアクチン重合化において、3±0.11(p<0.001)倍増加、対して対照細胞において、1.5±0.07(p=0.002)倍増加を示した(図4A)。これらの結果を踏まえ、本発明者らは、トランスウェル遊走アッセイにて、SDF−1(125ng/ml)の勾配に対する、CXCR4−形質導入CBおよびMPB CD34+細胞の遊走潜在能力を調査した。CXCR4を過剰発現している細胞は、対照ベクター−形質導入細胞と比較した場合、CBについて1.5±0.04(p<0.001)倍、およびMPBについて2.3±0.3(p=0.03)倍の、SDF−1仲介走化への応答の有意な増加を示した(図4B)。全てこれらのデータは、ヒト濃縮CD34+前駆細胞上のCXCR4の過剰発現が、SDF−1誘導シグナル伝達の増強を示し、細胞運動性の増加を導くことを示唆している。
【実施例4】
【0145】
CXCR4形質導入CD34+細胞は、低SDF−1濃度に対して、より応答しやすい
CD34+細胞上のCXCR4の過剰発現が、低SDF−1濃度に対して、それらをより応答しやすくしうることが仮定された。これを検証するために、形質導入細胞のインビトロ遊走を、異なるSDF−1濃度に対して実施した。さらに、サイトカインとの相乗効果での低濃度のケモカインSDF−1が、ヒトCD34+細胞の増殖、ならびにヒトおよびマウス両方の前駆細胞の生存を増強することが示された25-28。したがって、CXCR4過剰発現細胞の増殖における、低濃度でのSDF−1の効果をモニタした。
【0146】
実験手法
遊走アッセイ−先に記述したのと同様(12)。簡単に記すと、10ng/mlまたは125ng/mlのいずれかのSDF−1αを含む、10% FCS含有RPMI(600μl)を、Costar 24−ウェルトランスウェル(コーニング(ポアサイズ5μm)、NY)の下部チャンバーに加えた。100μlの培地中の1×105形質導入CD34+細胞を上部チャンバーにのせ、37℃にて4時間遊走をさせた。遊走している細胞を下部チャンバーより回収し、FACSCaliburを用いて、30秒間計数した。対照自発遊走は、SDF−1αなしで下部チャンバーで実施した。
【0147】
増殖アッセイ−96時間の形質導入プロトコールの後、CB CD34+細胞を、SDF−1 50ng/mlの存在下、または非存在下で、SCF 50ng/ml、FLT−3L 50ng/mlおよびIL−6 50ng/mlを含む血清不含培地中で、二重に、7日間培養した。細胞を毎日計数し、生存を、トリパンブルー排除によって評価した。
【0148】
すでに、低濃度のSDF−1(10ng/ml)にて、CB CXCR4−形質導入細胞の遊走は、高SDF−1濃度(125ng/ml)でのこれらの細胞の遊走と同様に、25%のピークレベルに達することが見出された。図4Bで示すように、低濃度のSDF−1(10ng/ml)で、ヒトCBから単離したCXCR4−感染細胞が、それらの対照ベクター−形質導入同等物に比べて、遊走において2.5倍(p<0.05)までの増加を示し、一方で高SDF−1濃度(125ng/ml)ではこの増加は有意性が低かった(1.5倍)。同様に、遊走細胞の割合がCB CD34+細胞に関してよりも非常に低かったにも関わらず、CXCR4−形質導入MPB CD34+細胞は、125ng/ml SDF−1に対する2倍増加と比較して、10ng/ml SDF−1に対して、遊走に関して、2.6(p=0.05)倍の増加を示した(図4B)。さらに、7日にわたりCXCR4過剰発現細胞の増殖を評価したところ、CXCR4−形質導入CB CD34+細胞が、播種後48時間ですでに、その播種した量のほとんど二倍になることが観察され(p<0.05)、この効果は培養中7日までの間見られうる(p=0.001)。しかしながら、対照細胞は5日目に1.2±0.05倍までその細胞数が増加しただけで、7日までに、播種した本来の量以下にその数が減少した(図5A)。特に、このCXCR4過剰発現細胞の増殖効果の増強は、より高い(100ng/ml)SDF−1濃度では検出されなかった(データは示していない)。長期の培養が細胞分化を導き、レンチウイルス形質導入に続く細胞形質転換の可能性を除外する。総合すると、本発明者らの結果は、対照細胞と比較した場合に、CD34+細胞上のCXCR4の過剰発現が、低SDF−1濃度に対するそれらの応答を増強し、それらの運動性および増殖/生存の両方を増加させ、高濃度にはあまり応答しないことを示している。
【実施例5】
【0149】
CXCR4過剰発現細胞は、SDF−1誘導脱感作に対する応答性は低い
SDF−1は高濃度(1μg/mlおよびそれ以上)で最終的に細胞表面へ再循環されうる細胞表面CXCR4分子のエンドサイトーシスを介した脱感作および内部化を誘導することが記述されてきた55。したがって、本発明者らは、CXCR4を過剰発現している細胞における高SDF−1濃度の効果を試験した。
【0150】
実験手法
CXCR4細胞表面発現−CXCR4−形質導入CB CD34+細胞を、1μg/ml SDF−1とともに一晩インキュベートした。細胞表面CXCR4発現を、細胞を抗ヒトCXCR4−PE(12G5、BD ファーミンゲン、サンディエゴ、CA)で標識することにより特定し、フローサイトメトリー(FACSCalibur、ベクトン ディッキンソン(BD)、サンジョゼ、CA)によって解析した。
【0151】
遊走アッセイ−125ng/ml SDF−1αを含む、10% FCS含有RPMI(600μl)を、Costar 24−ウェルトランスウェル(コーニング(ポアサイズ5μm)、NY)の下部チャンバーに加えた。100μlの培地中の1×105形質導入CD34+細胞を、上部チャンバーにのせ、37℃にて4時間遊走をさせた。遊走している細胞を、下部チャンバーより回収し、FACSCaliburを用いて、30秒間計数した。対照自発遊走はSDF−1αなしで下部チャンバーで実施した。
【0152】
CXCR4−形質導入CB CD34+細胞を、1μg/ml SDF−1を加えて一晩インキュベートし、CXCR4細胞表面発現に関して解析した。予想外にも、CXCR4過剰発現細胞では、細胞表面レセプター発現が40%(p<0.05)減少しただけで、一方対照細胞では、90%(p<0.05)までレセプターが内部化した(図5Bi)。この脱感作につづき、細胞をSDF−1(125ng/ml)勾配に向かう指向性遊走に関して、インビトロで同様にアッセイした。対照細胞はSDF−1仲介遊走の有意な(p<0.05)減少を示し、一方でCXCR4−形質導入細胞の遊走はほとんど影響を受けなかった(図5Bii)。このことは、CXCR4の内部化が、継続して機能的であるレセプターの持続的過剰発現によって補償されることを示唆している。
【実施例6】
【0153】
CXCR4過剰発現は、NOD/SCIDマウスのSRC生着を改善する
ヒトCB CD34+細胞のSDF−1/CXCR4−依存生着におけるCXCR4過剰発現の効果を評価するために、形質導入前駆細胞をNOD/SCIDマウスに移植した。
【0154】
実験手法
マウス NOD/LtSz−Prkdcscid(NOD/SCID)マウスを、先に18に記述したように、交配し、維持した。すべての実験はワイズマン インスティチュート(Weizmann Institute)の動物ケア委員会によって許可された。8〜10週齢のマウスに亜致死的放射をし(375cGy、60Co供給源より)、放射24時間後に、示した[2×105細胞/マウス(生着)および5×105細胞/マウス(ホーミング)]ように、ヒト細胞を移植した。
【0155】
ヒト細胞生着およびホーミング−マウスを、移植後5週間後あたりで犠牲死させ、骨髄および脾臓細胞を回収し、単一細胞懸濁液に再懸濁させた。ヒト細胞生着を、特異的抗ヒトCD45−APC mAb(BD ファーミンゲン)を用いて、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD)によってアッセイした。系統解析は抗−CD19−PE(BD ファーミンゲン)または抗−CD33−PE(BD)で染色することによって実施した。より前駆的な細胞集団を、抗−CD38−PE(BD)と一緒にCD34−APC mAb(BD ファーミンゲン)を用いて解析した。ヒト細胞もまた、GFP発現(FL1チャネル)に関して解析した。ヒト血漿およびマウスIgGを使用して、Fcレセプターをブロックした。アイソタイプ対照抗体、および移植を受けなかったマウスから得た細胞を、陰性対照として使用し、ヒトCB CD34+細胞を陽性対照として使用した。
【0156】
本発明者らは、対照細胞と比較した場合、CXCR4−形質導入細胞が、CB CD34+細胞に関して、4±0.7(p=0.001)倍までのマウスBMにおけるヒト細胞の生着の増加を示したことを発見した(図6Ai)。同様に、CXCR4−形質導入細胞は、脾臓の再増殖を2.7±0.8(p=0.05)倍増加することを示した(図6Aii)。興味深いことに、対照またはCXCR4−形質導入細胞を移植したマウスにおいて、循環ヒト細胞の数に有意差は観察されなかった(図6Aiii)。さらに、CD19およびCD33モノクローナル抗体での代表的なFACS染色により、それぞれリンパ球および骨髄集団への多系統造血が、もっともおそらく、SDF−1はPreB細胞増殖因子でもあるので、CXCR4−形質導入細胞を移植したマウスで、よりB−細胞リンパ造血の傾向を有して(図6C)、マウスBM中で維持される(図6B)ことを示している。さらに、CD45+細胞の平均36%±19%(範囲7.5%〜77%)がGFPを発現することがわかった(図6B)。トランスジーン発現もまた、骨髄およびリンパ集団の両方で検出された(図6B)。CXCR4過剰発現細胞を移植したマウスは、対照ベクター−形質導入細胞を注射したマウスと比較して、前駆CD34+/CD38-/low細胞集団の4倍の増加を示し(図6D)、これはCXCR4−過剰発現細胞のより高い生着レベルがより前駆的な細胞集団の再増殖の増加によることを示唆している。
【0157】
未熟ヒトCD34+CD38−/lowCXCR4+細胞の、マウスBMおよび脾臓へのホーミングは、CXCR4/SDF−1相互作用に依存することが先に示された18。したがって、ヒトCD34+細胞上のCXCR4の過剰発現が、亜致死的放射NOD/SCIDマウスの、BMおよび脾臓へのそれらのホーミングを改善できるかどうかをさらに試験した。移植2時間(CB)および16h(MPB)後のCXCR4−形質導入細胞が、それらの対照同等物と比較して、脾臓へのホーミングにおいて2倍以上の増加を示した(図6E)。しかしながら、これらの差は、BMへのそれらのホーミング能力では検出されなかった(データは示していない)。これらの結果は、先に示唆されたように18、CXCR4−形質導入細胞がBMの再増殖前に短期間で脾臓にホーミングすることを示唆している(移植後5週間)。
【実施例7】
【0158】
過剰発現CXCR4の抗原決定基
最初の一組の実験で、本発明者らは、対照GFP形質導入臍帯血CD34+細胞、またはCXCR4過剰発現CD43+細胞のいずれかに対して、CXCR4の最初のN−末端細胞外ドメイン内に局在する(図7)、ヒトCXCR4−a位の残基22〜25に特異的なmAb 6H8の結合を解析した。本発明者らは、内因性CXCR4のみを発現しているGFP(対照)形質導入CB CD34+細胞が、ヒトCXCR4の第二細胞外ドメインに結合するmAb 12G5に結合する(データは示していない)にもかかわらず、mAb 6H8に結合せず、一方でCXCR4過剰発現CB CD34+細胞は、抗体12G5および6H8の両方で陽性に染色されたことを発見した。これらのデータは、CXCR4の過剰発現が、CXCR4走化性機能において部分的に役割を果たすことが示された6H8エピトープの変質または開裂を妨げることを示唆している(Brelot et al, J Biol.Chem.275:23736-23744)。
【0159】
第二組の実験では、本発明者らは、対照またはCXCR4過剰発現CB CD34+細胞いずれかを移植したNOD/SCIDマウスのBMから単離したヒト細胞への6H8および12G5 mAbsの結合を追った(図8)。本発明者らは、ヒトCXCR4過剰発現細胞を有するキメラマウスBMから単離したヒト細胞が、ヒト対照細胞を有するキメラマウスBMにおいてよりも、6H8および12G5の両方に関してより高い割合の陽性細胞を示したことを発見した。さらに、対照GFPを有する細胞が6H8エピトープの明らかな変質を示した一方で、GFPを有するCXCR4過剰発現細胞において変質は見られず、これは過剰発現細胞中の6H8エピトープのインビボにおける変質も少ないことを示唆している。
【0160】
本発明はその特定の実施態様に関連して記述されてきているが、多くの変更、改変および変化が当業者に理解されるであろうことが明らかである。したがって、付随する請求項の精神および広い目的の範囲内である、すべてのこれらの変更、改変および変化が包含されることが意図されている。本明細書内で言及されたすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、参考文献によって本明細書に組込まれていると具体的におよび個々に示唆されたのと同様の程度で、本明細書内の参考文献によって、そのすべてがここに組込まれている。さらに、本明細書内の任意の参考文献の引用または同定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを承認したとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0161】
本発明を、添付の図面を参照しながら、例示のためのみで本明細書において記載する。図面に対する詳細な以下の具体的な言及により、示される特定の内容は、例示のため、および本発明の好ましい実施形態の実例の検討を目的とするにすぎず、本発明の原理および概念的態様の最も有用かつ容易に理解される記載と考えられるものを提供する過程において示されたことを強調する。これに関連し、本発明の構造的詳細を、本発明の基本的な理解に必要とされる以上に詳細に示す試みはしておらず、本記載内容は、図面と合わせると、本発明のいくつかの形態がどのようにして実際に具現化され得るかが当業者に自明となる。
【図1】レンチウイルスベクター構築物の略図的表示を示す。統合プロウイルスの相当する部分のみを描写している。EF1−αプロモーターを利用して、対照ベクターにおける緑色蛍光タンパク質(GFP)cDNA(上パネル)または実験ベクターのCXCR4−IRES−GFPバイシストロン性カセット(下パネル)のいずれかの発現を駆動する。SD=スプライス ドナー、SA=スプライス アクセプター、pA=ポリアデニル化シグナル、SIN=自己−不活性化ベクター。
【図2】レンチウイルス−形質導入ヒトCD34+細胞における、細胞表面CXCR4発現を示す。モック−またはレンチウイルス感染に続いて、臍帯血(CB)および移行末梢血(MPB)CD34+細胞を、GFP発現のみ、または抗−hCXCR4−PE抗体を用いたCXCR4発現に付随するGFPのいずれかに関して、フローサイトメトリーによって解析した。A.データは、CB CD34+細胞の代表的なFACS解析を示す。数字は総CD34+細胞の割合を示す。フォワード スカッタード(FSC)は細胞サイズの指標である。B.結果は、CXCR4を発現しているCBおよびMPB CD34+細胞の割合を示し、7回の独立した実験の平均値±SEを示している。対照GFP−感染細胞と比較して、*p<0.01。C.GFP形質導入(GFP)、CXCR4形質導入(CXCR4)またはアイソタイプ対照細胞の細胞表面(上パネル)および細胞内(下パネル)CXCR4発現の免疫蛍光検出。
【図3】形質導入CB CD34+細胞のコロニー形成前駆細胞含量を示す。レンチウイルス形質導入CB CD34+細胞を、半固体メチルセルロース培地中に播種した。A.GFP+コロニー形成細胞(CFC)コロニーを、14日目に位相差顕微鏡によって解析した。上パネルは対照ベクター形質導入細胞から得たBFU−E(a)およびCFU−GM(b)を示す。下パネルはCXCR4形質導入細胞から得たBFU−E(c)およびCFU−GM(d)を示す。代表的な実験を示す。B.データは、CFU−GMおよびBFU−Eコロニーの総数を示す。棒の上の数字は、総コロニーに対するGFP+コロニーの割合を示す。棒は、3回の独立した実験の平均値±SEを示す。GFP−形質導入細胞のBFU−Eコロニーと比較して*p=0.004。C.CBおよびMPB CD34+細胞を、ヒト抗−CD34および抗−CD38 mAbによって標識化した。数字は、全集団から得た陽性細胞の割合を示す。3回のうち、代表的な実験を示す。
【図4】形質導入CD34+細胞において発現したCXCR4の機能を示す。A.CXCR4−形質導入CB CD34+細胞を、示した時間SDF−1(300ng/ml)で刺激し、細胞内F−アクチン含量をFACSによって測定した。データは、未刺激細胞と比較して、SDF−1での刺激後にF−アクチン含量が倍増加したことを示唆している。データは、3回の独立した実験の平均値±SEを表す。B.示したようにCXCR4−形質導入CBおよびMPB CD34+細胞を異なるSDF−1濃度に向かうそれらの遊走に関して、トランスウェル遊走アッセイにて試験した。データはSDF−1への遊走細胞の割合を示す。棒は5回の独立した実験の平均値±SEを表す。125ng/ml SDF−1での対照GFP−形質導入細胞と比較して、*p<0.04(CB)、*p=0.03(MPB)。10ng/ml SDF−1での対照GFP−形質導入細胞と比較して、*p<0.05(CB)、*p<0.05(MPB)。
【図5】異なるSDF−1濃度に対するCXCR4−過剰発現CB CD34+細胞の応答を示す。A.レンチウイルス形質導入CB CD34+細胞を、SCF(50ng/ml)、FLT−3L(50ng/ml)およびIL−6(50ng/ml)との組み合わせで、SDF−1(50ng/ml)を含む血清不含条件中で7日間インキュベートした。結果は、SDF−1の存在しない状態でインキュベートした細胞と比較して、生細胞の数の倍増加として表している。結果は、二重で実施した3回の独立した実験の平均値±SEを表す。B.レンチウイルス形質導入CB CD34+細胞を、1μg/ml SDF−1とともに一晩インキュベートし、(i)免疫染色によってCXCR4発現を、および(ii)トランスウェル遊走系を用いてSDF−1(125ng/ml)誘導インビトロ中の遊走を試験した。棒は、二重で実施した2回の独立した実験の平均値±SEを表す。未処理細胞と比較して*p<0.05(黒棒)。
【図6】CXCR4過剰発現SCID再生細胞(SRC)のインビボでの多系統分化再構築およびGFP発現を示す。CXCR4−形質導入CB CD34+細胞を、亜致死的放射NOD/SCIDマウスに注射した。移植の5週間後のマウスを、対照GFP−形質導入細胞と比較して、ヒト再増殖細胞の存在に関して試験した。A.マウスBM(i)、脾臓(ii)および末梢血(PB)(iii)を、ヒトCD45+細胞の%を検出するFACS解析によって、ヒト細胞生着に関して解析した。棒は、二重または三重で実施した9回の独立した実験の平均値±SEを表す。対照GFP−形質導入細胞と比較して*p<0.005。B.代表的なNOD/SCID移植レシピエントにおけるヒトSRCのリンパおよび骨髄分化を、それぞれCD19およびCD33抗体染色によって示す。数字は、総生集団に対する陽性細胞の割合を表す。C.BM細胞を、ヒト特異的パン白血球マーカーCD45およびB細胞系統分化マーカーCD19で染色し、FACSによって解析した。数字は、総CD45集団から計算したCD19細胞の割合を示す。データは代表的な実験を示す。D/生着マウスBM細胞をヒト特異的抗−CD34および抗−CD38 mAbsで染色し、フローサイトメトリーによって解析した。数字は、始原、未分化CD34+/38−/low細胞の割合を示す。データは代表的な実験を示す。E.濃縮、未熟CD34+細胞の、脾臓へのホーミングを、ヒト特異的抗−CD34および抗−CD38 mAbsでの染色によって、移植16時間(MPC)後または2時間(CB)後に決定した。棒は二重で実施した3回の独立した実験の平均値±SEを表す。対照細胞と比較して*p<0.05。
【図7】CXCR4の略図的実例を示す。
【図8】CB CD34+細胞におけるCXCR4過剰発現がインビボで6H8エピトープの変質を防止することを示す。A.形質導入CD34+細胞を亜致死的(375R)放射NOD/SCIDマウスに移植した。移植の5週間後、マウスBMを回収し、CXCR4の12G5または6H8エピトープに対して陽性に染色されたヒト細胞の存在を解析した。数字は平均CXCR4蛍光を表す。B.GFP(対照)およびCXCR4過剰発現細胞の12G5および6H8 mAbsでの染色に続く、Aのような平均CXCR4蛍光の代表的なヒストグラムFACS解析。
【0162】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
多量の未熟な初期前駆細胞を有する幹細胞を含む細胞の集団を製造するための方法であって、幹細胞を回収し、その細胞内に、CXCR4の配列を含むDNA断片を導入することを含む方法。
【請求項2】
細胞の集団が、低濃度のSDF−1に応答してCXCR4シグナル伝達の改善を示す請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞の集団が、高濃度のSDF−1に応答してCXCR4シグナル伝達の改善を示す請求項1記載の方法。
【請求項4】
幹細胞が、造血幹細胞である請求項1記載の方法。
【請求項5】
造血幹細胞が、CD34+濃縮されている請求項4記載の方法。
【請求項6】
未熟な初期前駆細胞が、CD34+/CD38-/low系統のものである請求項1記載の方法。
【請求項7】
幹細胞を回収することが、幹細胞の移行手法を誘導した後に実行され、および/または手術手法を含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
所定の閾値以上のCXCR4レベルを有する幹細胞をFACSにより単離することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
幹細胞が、脊髄および赤血球系統へ分化可能である請求項1記載の方法。
【請求項10】
CD34+/CD38-/low系統の未熟な初期前駆細胞の量が、集団の約1〜5%である請求項6記載の方法。
【請求項11】
CD34+/CD38-/low系統の未熟な初期前駆細胞が、集団の約3%以上の量である請求項6記載の方法。
【請求項12】
低濃度のSDF−1が、約50ng/ml以下である請求項2記載の方法。
【請求項13】
改善されたシグナル伝達が、低濃度のSDF−1によって仲介される細胞遊走の増強として現れる請求項2または12記載の方法。
【請求項14】
改善されたシグナル伝達が、低濃度のSDF−1によって仲介される細胞増殖の増強として現れる請求項2または12記載の方法。
【請求項15】
高濃度のSDF−1が、約1マイクログラム/ml以上である請求項3記載の方法。
【請求項16】
改善されたシグナル伝達が、SDF−1による脱感作の減少によって現れる請求項3または15記載の方法。
【請求項17】
幹細胞内にCXCR4の配列を含むDNA断片を導入することによって製造され、多量の未熟な初期前駆細胞を発現し、低濃度および/または高濃度のSDF−1に応答して改善されたCXCR4シグナル伝達能力を示す幹細胞を含む集団。
【請求項18】
幹細胞が、造血幹細胞である請求項17記載の幹細胞の集団。
【請求項19】
脊髄および赤血球系統へ分化可能である請求項17または18記載の細胞の集団。
【請求項20】
造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項19記載の細胞の集団。
【請求項21】
未熟な初期前駆細胞が、CD34+/CD38-/low系統のものである請求項17記載の細胞の集団。
【請求項22】
多量のCD34+/CD38-/lowが、集団の約1〜5%である請求項21記載の細胞の集団。
【請求項23】
多量のCD34+/CD38-/lowが、集団の約3%以上である請求項21記載の細胞の集団。
【請求項24】
低濃度のSDF−1が、約50ng/ml以下である請求項17記載の細胞の集団。
【請求項25】
高濃度のSDF−1が、約1マイクログラム/ml以上である請求項17記載の細胞の集団。
【請求項26】
必要とする対象の標的組織に対する幹細胞のホーミングを増加させるための医薬の製造における請求項17〜25のいずれか記載の細胞の集団の使用。
【請求項27】
必要とする対象の標的組織の再増殖を増加させるための医薬の製造における請求項17〜25のいずれか記載の細胞の集団の使用。
【請求項28】
前記標的組織が、骨髄、血管、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、神経系、皮膚、骨および骨格筋からなる群より選択される請求項26または27記載の細胞の集団の使用。
【請求項29】
移植を促進するための請求項26または27記載の細胞の集団の使用。
【請求項30】
移植が化学治療プロトコールにしたがう請求項29記載の細胞の集団の使用。
【請求項31】
移植が自家移植である請求項29記載の細胞の集団の使用。
【請求項32】
移植が、自系細胞の移行を伴う請求項31記載の細胞の集団の使用。
【請求項33】
移植が異種移植である請求項29記載の細胞の集団の使用。
【請求項34】
移植が移行幹細胞で実施される請求項29に記載の細胞の集団の使用。
【請求項35】
細胞または組織置換が必要な対象における疾患の治療方法であって、それを必要とする対象に、治療的に有効量の請求項17〜25のいずれか記載の細胞の集団を提供することを含む方法。
【請求項36】
インタクトな6H8エピトープを含むCXCR4を発現している幹細胞を含む、細胞の集団を製造する方法であって、幹細胞を回収すること、および細胞にCXCR4の配列を含むDNA断片を導入することを含む方法。
【請求項37】
CXCR4の配列を含むDNA断片を導入することによって製造される、インタクトなCXCR4 6H8エピトープを含む幹細胞を含む細胞の集団。
【請求項38】
必要とする対象における移植のための医薬の製造における請求項37記載の細胞の集団の使用。
【請求項39】
細胞または組織置換を必要とする疾病を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療的に有効量の請求項37記載の細胞の集団を提供することを含む方法。
【請求項40】
CXCR4の配列を含むDNA断片を細胞に導入することによって製造されるインタクトなCXCR4 6H8エピトープを示している幹細胞を含む幹細胞の集団を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−511219(P2007−511219A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539071(P2006−539071)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001018
【国際公開番号】WO2005/047494
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】