説明

移植機

【課題】作業者が通常の作業姿勢で容易に変速レバーの位置確認や操作をすることができ、しかも、操作パネルを走行機体の後部の左右方向に亘って設けることができる移植機を提供する。
【解決手段】駆動機構18を備えた走行機体2の後部に、左右一対の延出部31を有するハンドル4と、複数の操作具を配するパネル面50を有する操作パネル51とを配備している移植機において、操作パネルをハンドル4の左右一対の延出部31に亘って設け、該操作パネル51のパネル面50上に、駆動機構18に連結されて走行機体2の変速操作するための変速レバー42を回動自在に配備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、玉葱、レタス、キャベツ、タバコ等のソイルブロック苗を、苗トレイのポットから1つずつ取り出して移植する移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機は、走行機体に、縦横に多数のポットを備えた苗トレイを載置する苗供給機構と、畝に苗を植え付ける植付機構と、苗供給機構の苗トレイから苗を1つずつ取り出して植付機構へと供給する苗取出機構とを備えて構成されている。
この種の移植機においては、走行機体の後部にハンドルを備えた歩行型のものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の移植機においては、走行機体の後部に配備されたハンドルの下方に、植付機構の覆土ローラの高さを調整する植付深さ調節機構の操作レバーと、畝の植付面の高さ位置を検出する検知ローラ(整地ローラ)の高さを調整する上下調節機構の操作レバーと、走行機体の前後進及び走行速度を操作するための変速レバーとが互いに左右方向に並んで配備されている。また、各レバーは、左右軸回りに揺動自在に配備されると共に、揺動に必要なストロークが確保されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の移植機においては、左右一対のハンドルの前方に主クラッチレバーや機体昇降レバーを配した操作パネルが配備されると共に、一方のハンドルの外側方に変速レバーが左右軸心回りに揺動自在に配備されている。
【特許文献1】特開平10−178821号公報
【特許文献2】特開2001−314107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の移植機によれば、変速レバーがハンドルの下方に配備されているため、ハンドルを把持して走行機体の後方又は後側方に位置する作業者からは変速レバーの揺動位置を確認し難いものとなる。これにより、上記移植機においては、作業者が変速レバーの位置確認や操作をする度に通常の作業姿勢からハンドルの下方に向けて屈み込まなければならない場合があった。そこで、特許文献2の移植機の操作パネル上に特許文献1の移植機に配備された変速レバーを配備することが考えられるが、この場合、変速レバーの揺動させるストロークを得るためのスペースによって操作パネルが主クラッチレバー側と機体昇降レバー側に分断されて複数に分かれ、操作パネルの部品点数が増加すると共に該操作パネルの取付けが手間となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、作業者が通常の作業姿勢で容易に変速レバーの位置確認や操作をすることができ、しかも、操作パネルを走行機体の後部の左右方向に亘って設けることができる移植機を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、駆動機構を備えた走行機体の後部に、左右一対の延出部を有するハンドルと、複数の操作具を配するパネル面を有する操作パネルとが配備されている移植機において、
前記操作パネルは、前記ハンドルの左右一対の延出部に亘って設けられており、該操作パネルのパネル面上に、前記駆動機構に連結されて走行機体の変速操作するための変速レバーが回動自在に配備されていることを特徴としている。
【0008】
これによれば、変速レバーは操作パネルのパネル面上に他の操作具と共に配備される。したがって、作業者は、通常の作業姿勢で変速レバーの位置確認や操作を行うことができるばかりでなく、変速レバーの操作を容易に他の操作具に連動させて行うことができる。
また、変速レバーは操作パネルのパネル面上を回動することとなり、作業者は、該変速レバーの回転角度を容易に確認することができると共に、より正確に変速レバーの切替操作を行うことができる。これによって、変速レバーの位置ずれに伴う走行機体の前後進及び/又は変速の切替ミスが抑制されることとなる。
【0009】
また、変速レバーの軸体を揺動させる構成ではないため、軸体を揺動させるためのストローク等を必要としない。これによって、該ストロークを設けるために操作パネルが分断される虞はなく、操作パネルはハンドルの左右一対の延出部に亘って架け渡された状態で走行機体に配備される。また、変速レバーを操作するためのスペースの狭小化が図られ、ひいては操作パネルの省スペース化が図られる。
【0010】
また、前記変速レバーの後方には第1操作レバーが配備され、前記変速レバーは、前記操作パネルのパネル面を貫通する軸体と、パネル面上にて軸体の径外方向に伸びる把持部とを備え、該軸体は、前記把持部を前記第1操作レバーとの干渉を避ける軌道上を揺動させるべく、後向き傾斜状且つ内向き傾斜状とされてその軸心回りに回転自在に支持されていることが好ましい。
【0011】
これによれば、変速レバーを第1操作レバーに当接することなく回動させることができる。また、軸体の軸心を中心として把持部を時計回り又は反時計回りに揺動させた場合、該把持部はハンドル手前側から奥方、即ち走行機体の前方に向かうにつれて上方に移動する。したがって、変速レバーの把持部の軌道は、ハンドルの後方に位置する作業者から見て手前側よりも奥方側を高位とする後向き傾斜状となり、これによって変速レバーを回動させて把持部を前記奥方側まで移動させた場合にも、前記作業者は容易に把持部を把持することができ、変速レバーの操作性が向上することとなる。
【0012】
また、前記パネル面は、前記変速レバーの軸体の軸心に垂直となる面に平行若しくは略平行なレバー角度案内面を備えていることが好ましい。
これによれば、レバー角度案内面も前記後向き傾斜状となる。これにより、ハンドルの後方に通常の作業姿勢で位置する作業者の視線とレバー角度案内面の法線方向とを一致若しくは略一致させることができる。したがって、作業者は、パネル面上に覆い被さることなく該レバー角度案内面を正確に視認することができ、これによって変速レバーの操作性がさらに向上することとなる。
【0013】
さらに、操作パネルのパネル面の左右一方の側部に前記第1操作レバーが配備されると共に、他方の側部に第2操作レバーが配備され、第1操作レバーよりもやや内側且つ前上方となる位置に変速レバーが配備されると共に、第1操作レバーと第2操作レバーの間の領域に株間調節装置及び表示部が配備されていることが好ましい。
これにより、操作パネルのパネル面上のレバー配置が整理される。また、ハンドル後方に位置する作業者の正面位置に変速レバー、株間調節装置及び表示部が位置することとなり、変速レバー及び株間調節装置の操作性及び表示部の視認性が向上することとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業者が通常の作業姿勢で容易に変速レバーの位置確認や操作をすることができ、しかも、操作パネルを走行機体の後部の左右方向に亘って設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図10に示す如く、本実施の形態の移植機1は、走行機体2の後部に移植装置3及びハンドル4を備えている。また、該移植機1は、畝Rを跨いだ状態で該畝Rの伸びている方向(図10の左右方向)に前進走行しながら、ソイルブロック苗(根鉢付きの苗。以下、苗Nという)を畝Rに所定間隔毎に植え付ける。
【0016】
走行機体2は、ミッションケース5の前部に架台6を前方突出状に固定し、該架台6にエンジン、機体昇降装置8、燃料タンク、バッテリー等の車両機器を搭載している。また、該走行機体2は、操向輪としての左右一対の前輪9及び駆動輪としての左右一対の後輪10を縣架している。
左右一対の前輪9はそれぞれ、架台6の前部に枢支された前輪支軸11の左右端部に支持アーム12を介して支持されている。また、左右一対の後輪10は、ミッションケース5の左右両側から外方に突出している後輪支軸13の左右端部に伝動ケース14を介して支持されている。
【0017】
左右同側に位置する前輪支軸11の端部と後輪支軸13の端部とは、連動ロッド15及びアームを介して連動連結されている。また、架台6には、後輪支軸13に連結された連動部材17を動作させるアクチュエータ(油圧シリンダ)16が配備されている。該アクチュエータ16を作動させることにより、連動部材17及び連動ロッド15等を介して前輪支軸11と後輪支軸13とが連動して回動する。これによって左右一対の前後輪9、10が同時に昇降し、走行機体2の畝Rに対する高さ調整が可能となる。
【0018】
エンジンの動力はミッションケース5から左右の後輪支軸13内の伝動軸及び伝動ケース14内の伝動手段等を介して後輪10に伝動されている。
また、ミッションケース5は、内部に主クラッチ、変速切替手段からなる駆動機構18を配備している。また、ミッションケース5に伝達されたエンジンからの動力は、該ミッションケース5から突出する複数のPTO軸から取り出すことができる。
【0019】
移植装置3は、走行機体2の後部に装着された移植フレーム21に設けられており、苗Nを畝Rに植え付ける植付機構22と、苗トレイTを載置して該苗トレイTを縦横に送る苗供給機構23と、該苗供給機構23に載置された苗トレイTから苗Nを取り出して植付機構22へ供給する苗取出機構24とを備えている。
移植フレーム21は、ミッションケース5に固定された固定フレーム21aと、左右軸心回りに回動自在に取り付けられた可動フレーム21bとを有している。固定フレーム21aに苗供給機構23と苗取出機構24とが配備されると共に、可動フレーム21bに植付機構22が配備されている。
【0020】
該植付機構22は、植付カップ25を上下動させるための植付装置26と、畝Rの植付面を整地すると共に畝高さを判断する整地ローラ27と、植付装置26によって畝に植え付けられた苗に覆土するための覆土ローラ28とを備えている。
また、図3及び図4に示す如く、左右一対の固定フレーム21aは、後部が走行機体2の後上方に向けて屈曲して形成されている。また、図5に示す如く、該左右一対の固定フレーム21aの後端は、ハンドル4を介して連結されている。該ハンドル4は、固定フレーム21aの後端に連結される左右一対の延出部31を横架部32によって連結して構成されている。
【0021】
図1及び図5に示す如く、ハンドル4の前方に操作部40が設けられている。
また、該操作部40は、ミッションケース5内に設けられた前記駆動機構18の主クラッチを操作するための主クラッチレバー41(第1操作レバー)と、駆動機構18の変速切替手段を操作するための変速レバー42と、前記機体昇降装置8を操作するための機体昇降レバー43(第2操作レバー)と、前記植付機構22の覆土ローラ28の高さを調整して植付装置26による苗の植付深さを調整するための植付深さ調整レバー44と、前記植付機構22の整地ローラ27の上下高さを調整するための整地ローラ高さ調整レバー45と、植付機構22によって植え付けられる苗Nの間隔を調節する株間調節装置46と、緊急時にエンジンを停止させるためのプッシュ式のエンジン緊急停止スイッチ47とを備えている。
【0022】
操作部40は、ハンドル4の横架部32の前上方であって且つ左右一対の延出部31の間に、パネル面50をハンドル4の後上方に向けてなる操作パネル51を備えている。また、該操作パネル51のパネル面50上に、主クラッチレバー41と、変速レバー42と、機体昇降レバー43と、株間調節装置46と、エンジン緊急停止スイッチ47とが配備されている。
【0023】
また、図3に示す如く、操作パネル51及びハンドル4の下方となる位置に、植付深さ調整レバー44と、整地ローラ高さ調整レバー45とが配備されている。
図1に示す如く、操作パネル51は、ハンドル4の左右一対の延出部31に架け渡されて配備されている。パネル面50は、ハンドルの後方に位置する作業者から見て手前側がハンドルと略同じ高さ位置に位置していると共に、該手前側よりも奥方側、即ち走行機体前方側が高位となる後ろ向き傾斜状に傾斜している。また、パネル面50は、ハンドル4の後方からみてハンドル手前側となる位置に第1操作部52を備えると共に、ハンドル4の後方からみて第1操作部52の奥方となる位置、即ち該第1操作部52の前上方となる位置に第2操作部53を備えている。
【0024】
第1操作部52の左右方向の一方の端部(本実施の形態においては左端部)に主クラッチレバー41が配備され、他方の端部(本実施の形態においては右端部)に機体昇降レバー43が配備されている。
主クラッチレバー41は、操作パネル51の裏面側にて前後方向及び左右方向に揺動自在に枢支された状態で第1操作部52に設けられたガイド孔54に挿通されており、該ガイド孔54による案内に沿って揺動することができる。
【0025】
また、機体昇降レバー43は、主クラッチレバー41と同様に、操作パネル51の裏面側にて前後方向及び左右方向に揺動自在に枢支された状態で第1操作部52に設けられたガイド孔55に挿通されており、該ガイド孔55による案内に沿って揺動することができる。
エンジン緊急停止スイッチ47は、主クラッチレバー41と機体昇降レバー43の略中間となる位置に配備されており、該エンジン緊急停止スイッチ47をパネル面50に向けて押すことにより、エンジンは停止する。
【0026】
第2操作部53には、一方の端部(本実施の形態においては左端部)に変速レバー42が配備され、他方の端部(本実施の形態においては右端部)から中央部に亘って株間調節装置46と表示部57とが配備されている。
変速レバー42は、主クラッチレバー41の前上方であって且つ左右方向やや内側となる位置に配備されている。また、変速レバー42は、図3及び図5に示す如く、パネル面50の第2操作部53を貫通する軸体61と、該軸体61のパネル面50上に突出している端部を走行機体後方側に屈曲して形成される把持部62とを備えている。また、該変速レバー42の軸体61は、その軸心を回転軸として操作パネル51の裏面側にて回転自在に支持されている。これにより、変速レバー42は、軸体61は、前記軸心を中心として把持部62を揺動させることにより回動する。
【0027】
また、図4及び図5に示す如く、変速レバー42の軸体61は、走行機体2に対し後ろ向き傾斜状且つ内向き傾斜状に傾斜した状態で回転自在に配備されており、これにより、把持部62は、図2(a)及び図2(b)に示す如く、ハンドル4の後方側に位置する作業者から見て手前側よりも奥方側が高位となり、且つ、左右方向内側よりも左右方向外側が高位となる軌道M上を移動することとなる。これによって、該軌道Mは主クラッチレバー41の揺動軌道に交差することはなく、変速レバー42を主クラッチレバー41に干渉させることなく回動させることが可能となっている。
【0028】
また、図2(a)に示す如く、変速レバー42の軸体61には、パネル面50からの突出位置に軸体61の回転状態を示す指示部材63が配備されている。該指示部材63は、軸体61の径外方向に突出する一頂部を有して形成されている。
また、第2操作部53には、変速レバー42の突出位置を包囲して該変速レバー42の設定位置を示すレバー角度案内面59が設けられている。図2に示す如く、該レバー角度案内面59は、変速レバー42の軸体61に垂直な平面に平行又は略平行に設けられており、複数のレンジ表示部59aが該軸体61の軸心から放射状に設けられている。変速レバー42の把持部62を揺動させてレンジ表示部59aに指示部材63の先端を合わせることにより、走行機体2は該レンジ表示部59aに設定された変速段に設定されることとなる。
【0029】
また、図4及び図5に示す如く、該変速レバー42の軸体61は、中間機構65を介して前記ミッションケース5に連動連結されている。該中間機構65は、操作パネル51下方に設けられた第1操作力伝達部66と、ミッションケース5の側方に設けられた第2操作力伝達部67と、該第1操作力伝達部66と第2操作力伝達部67とを連結するロッド68とを備えている。
【0030】
図6及び図7に示す如く、第1操作力伝達部66は、軸体61のパネル裏面側の端部にヒンジ機構を介して連結されたアーム70と、アーム70の下端部から該アーム70の径外方向に伸びるプレート71と、該プレート71の先端にピンを介して連結されたボールジョイント72とを備え、該ボールジョイント72が前記ロッド68の一端に連結されている。
【0031】
また、アーム70は、上下方向に軸心を有する筒体73に挿通されており、該筒体73はブラケット74を介して前記固定アーム21aに支持されている。
図8及び図9に示す如く、第2操作力伝達部67は、前記ロッド68の他端に取り付けられたボールジョイント80と、該ボールジョイント80に連結される連結部材81とを備えている。
【0032】
該連結部材81は、筒部82と、筒部82の下端部から該筒体82の径外方向に突出する第1アーム部83及び第2アーム部84とを備えている。該第1アーム部83と第2アーム部84とは、それぞれ異なる方向に向けて突出しており、該第1アーム部83の先端がピンを介してボールジョイント80に揺動自在に連結されている。また、第2アーム部84の先端部には長孔85が開設されている。
【0033】
また、ミッションケース5には、該ミッションケース5に出退自在に支持されたフォークロッド90が配備されており、該フォークロッド90の径外方向に向けて突設されたピン91が長孔85に挿通されている。
また、連結部材81は、ブラケット86を介してミッションケース5に筒部82の軸心を回転軸として回転自在に支持されている。
【0034】
本発明は以上の構成からなるものであり、図2(a)に示す如く作業者が変速レバー42の把持部62を把持して該把持部62を揺動させると、図6に示す変速レバー42の軸体61が回転する。これにより、該軸体61に連結されたアーム70も回転することとなり、該アーム70の回転に伴ってプレート71が揺動する。これにより、ロッド68はプレート71によって軸心方向に押し引きされることとなり、該ロッド68の動作に伴って図8に示す連結部材81は回転する。
【0035】
該連結部材81の回転により、第1アーム部83及び第2アーム部84が揺動することとなり、該第2アーム部84の揺動により、ピン91が長孔85の外周面に当接して押圧される。これにより、フォークロッド90がミッションケース5から出退することとなり、該フォークロッド90の出退によってミッションケース5内の駆動機構18の変速切替手段が切り替えられることとなるのである。
【0036】
本実施の形態においては、図2(a)に示す如く、変速レバー42を揺動させて把持部62を最もハンドル側となる位置させた状態が中立状態に設定されている。該中立状態においては、前記ミッションケース5内の駆動機構18は中立状態とされ、エンジンからの動力は後輪10に伝達されることはない。
この状態から把持部62を反時計回りに揺動させて、変速レバー42を「遅い」レンジに移動させると、前記フォークロッド90がミッションケース5内に入り込み、該フォークロッド90の動作に伴って、前記駆動機構18の変速切替手段が前進第1速に設定され、これによって、走行機体2は、「遅い」として設定された速度によって前進する。
【0037】
また、この状態からさらに把持部62を反時計回りに揺動させて、変速レバー42を「速い」レンジに移動させると、フォークロッド90がミッションケース5内にさらに入り込み、該フォークロッド90の動作に伴って、駆動機構18の変速切替手段が前進第1速から前進第2速に切り替えられ、これによって、走行機体2は、「速い」として設定された速度によって前進する。
【0038】
なお、ここで、「遅い」又は「速い」として設定された速度は、何れも苗植付け時の走行機体2の速度についてのものであって、本実施形態においては、植え付ける苗の種類や該苗の植付け状況において「遅い」と「速い」の2つの速度が用意されている。
また、この状態からさらに把持部62を反時計回りに揺動させて、変速レバー42を「移動」レンジに移動させると、フォークロッド90がミッションケース5内にさらに入り込み、該フォークロッド90の動作に伴って、駆動機構18の変速切替手段が前進第2速から前進第3速に切り替えられ、これによって、走行機体2は、「移動」として設定された速度によって前進する。
【0039】
なお、該「移動」として設定された速度は、車庫から畝まで移動する場合等、苗植付け時以外の走行機体2の速度についてのものであって、走行機体2の速度としては最も高速なものとして設定されている。
一方、中立状態から把持部62を時計回りに揺動させて、変速レバー42を「後進」レンジに移動させると、フォークロッド90が第1アーム部84によってミッションケース5から引き出され、該フォークロッド90の動作に伴って、駆動機構18の変速切替手段が後進に設定され、これによって、走行機体2は後進することとなる。
【0040】
本実施の形態によれば、ハンドル4の前上方に位置する操作パネル51のパネル面50上に変速レバー42が配備されているので、作業者は、移植機1を運転する通常の姿勢にて該変速レバー42の操作を行うことができ、該移植機1の操縦性の向上が図られる。しかも、該パネル面50上に主クラッチレバー41、機体昇降レバー43、株間調節装置46等の他のレバーが配備されているので、作業者は上述の如き通常の姿勢でこれら操作具と変速レバー42との操作を連動させることができ、これによって、操作部40の操作性の向上が図られる。
【0041】
また、操作パネル51がハンドル4の左右一対の延出部31の一方から他方に亘って形成されているため、操作パネル51の部品点数の削減化及び該操作パネル51の取付の容易化が図られている。
また、変速レバー42は、パネル面50上にて把持部62を揺動させることにより、軸体61が軸心を不動として回動する構成とされている。このため、操作パネル51上に変速レバー42の軸体61を揺動させるためのガイド溝等を設けるスペースは必要なく、変速レバー42をパネル面50上に配備するために必要なスペースの狭小化が図られ、パネル面50上に変速レバー42を配備することによって他のレバーの操作に必要とされるスペースや動作が妨げられてしまう虞もない。
【0042】
また、変速レバー42の把持部62の揺動によってミッションケース5内の駆動機構18が切り替えられる構成となっており、変速レバーを揺動させて駆動機構を切り替える構成よりも変速レバー42の切替位置をより正確に確認することができ、これにより変速レバー42の切替操作ミスが抑制されることとなる。
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、変速レバー42の把持部62を、中立状態でハンドル側とは反対側となる走行機体前方側に向けて突出させる構成とすることも可能である。
【0043】
また、主クラッチレバー41と機体昇降レバー43の配置位置を変更した構成とすることも可能であり、変速レバー42と株間調節装置46の配置位置を変更する構成とすることももちろん可能である。
また、操作パネル51上には、走行機体2の水平揺動機構を入切するための水平揺動レバーやチョークボタンを配備することも可能である。
【0044】
また、ハンドル4の構成を横架部32によって連結せずに左右一対の延出部31のみとする構成する場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】操作パネル及びハンドルを示す斜視図である。
【図2】(a)は、変速レバーとその周囲を示す平面図であり、(b)は、変速レバーとその周囲を示す背面図である。
【図3】ミッションケース、植付機構等を示す左側面図である。
【図4】ミッションケース、操作部及び中間機構を示す左側面図である。
【図5】ミッションケース、操作部及び中間機構を示す平面図である
【図6】第1操作力伝達部を示す左側面図である。
【図7】第1操作力伝達部を示す平面図である。
【図8】第2操作力伝達部を示す左側面図である。
【図9】第2操作力伝達部を示す平面図である。
【図10】移植機の左側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 移植機
2 走行機体
3 移植装置
4 ハンドル
5 ミッションケース
9 前輪
10 後輪
31 延出部
40 梁材
41 主クラッチレバー
42 変速レバー
43 機体昇降レバー
46 株間調節装置
50 パネル面
51 操作パネル
59 レバー角度案内面
61 軸体
62 把持部
65 中間機構
90 フォークロッド
R 畝
N 苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構(18)を備えた走行機体(2)の後部に、左右一対の延出部(31)を有するハンドル(4)と、複数の操作具を配するパネル面(50)を有する操作パネル(51)とが配備されている移植機において、
前記操作パネル(51)は、前記ハンドル(4)の左右一対の延出部(31)に亘って設けられており、該操作パネル(51)のパネル面(50)上に、前記駆動機構(18)に連結されて走行機体(2)の変速操作するための変速レバー(42)が回動自在に配備されていることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記変速レバー(42)の後方には第1操作レバー(41)が配備され、前記変速レバー(42)は、前記操作パネル(51)のパネル面(50)を貫通する軸体(61)と、パネル面(50)上にて軸体(61)の径外方向に伸びる把持部(62)とを備え、該軸体(61)は、前記把持部(62)を前記第1操作レバー(41)との干渉を避ける軌道(M)上を揺動させるべく、後向き傾斜状且つ内向き傾斜状とされてその軸心回りに回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記パネル面(50)は、前記変速レバー(42)の軸体(61)の軸心に垂直となる面に平行若しくは略平行なレバー角度案内面(59)を備えていることを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
操作パネル(51)のパネル面(50)の左右一方の側部に前記第1操作レバー(41)が配備されると共に、他方の側部に第2操作レバー(43)が配備され、第1操作レバー(41)よりもやや内側且つ前上方となる位置に変速レバー(42)が配備されると共に、第1操作レバー(41)と第2操作レバー(43)の間の領域に株間調節装置(46)及び表示部(57)が配備されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−189971(P2007−189971A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12665(P2006−12665)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】