説明

移植機

【課題】回動軸を介してマーカアームを回動自在に支持することなく、回転マーカを機体の進行方向に良好に追従させることにより、構造の簡略化やコストダウンを図る。
【解決手段】植付部3から外側方に張り出す支持アーム9の先端に、後下方に延出するマーカアーム10を設けると共に、該マーカアーム10の先端に、次の植付行程の指標を圃場面に形成する回転マーカ11を支持した乗用型田植機において、マーカアーム10を、支持アーム9の先端に固設される板バネ10aと、該板バネ10aの先端に固設され、回転マーカ11の支軸11bを内外両方から両持ち状に支持する軸支部材10bとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機などの移植機に関し、特に、次の植付行程の指標を圃場面に形成する回転マーカを備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用型田植機などの移植機は、次の植付行程の指標を圃場面に形成するマーカを備えている。マーカは、通常、植付部又は走行機体から外側方に張り出す支持アームの先端に、マーカアームを介して取付けられている。
近年、マーカとしては、圃場面に線状の指標を形成する棒状のものだけでなく、円板状の回転マーカも普及してきている。この回転マーカは、外周部に土掬い上げ用の複数の爪を備える接地回転体で構成され、該接地回転体が回転すると、前記爪で掬い上げられた土が圃場面に一塊ずつ落ち、この落ちた土の盛り上がりが機体の進行方向に沿って一定の間隔で列状に形成されて次の植付行程の指標となる。このような指標によれば、圃場に水が深く張られていても、土の盛り上がりをオペレーターが容易に認識することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、図6に示すように、上述したものは、圃場面に対する回転マーカ100の回転抵抗や、支持アーム101の基端部のガタなどにより、支持アーム101自体が後方に撓み易く、しかも、マーカアーム102は、支持アーム101の先端から平面視で略直角に延設されているので、支持アーム101の撓みに伴い、回転マーカ100の支軸が平面視で機体の進行方向に対して大きく傾き、回転マーカ100が円滑に回転しなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、マーカアームを支持アームと直交する軸線を中心として所定の角度範囲で回動可能に支持し、機体の進行方向に対する回転マーカの所定量の揺動を許容することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このようにすると、圃場面に対する回転マーカの抵抗や、支持アーム基端部のガタなどにより、支持アーム自体が機体の後方に撓んでも、回転マーカは、機体の進行方向に常時追従して揺動可能であることから、円滑に回転して次の植付行程の指標を良好に形成することができる。
【特許文献1】特許第3519889号公報
【特許文献2】特開2006−34109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載される移植機では、回動軸を介してマーカアームを支持アームで回動自在に支持するだけでなく、マーカアームの回動範囲を規制するために、ストッパピンなども設けられているので、マーカ装置の構造が複雑になるだけでなく、コストアップを招来するという問題があった。
しかも、特許文献2の移植機では、回転マーカの圃場面に対する追従性を高めるために、回転マーカの上下動を許容する回動軸や、回転マーカを下方に付勢する捻りバネも別途設けられているので、構造がさらに複雑になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、植付部又は走行機体から外側方に張り出す支持アームの先端に、後下方に延出するマーカアームを設けると共に、該マーカアームの先端に、次の植付行程の指標を圃場面に形成する回転マーカを支持した移植機において、前記マーカアームを、支持アームの先端に固設される板バネと、該板バネの先端に固設され、回転マーカの支軸を内外両方から両持ち状に支持する軸支部材とで構成したことを特徴とする。
このようにすると、圃場面に対する回転マーカの抵抗や、支持アーム基端部のガタなどにより、支持アーム自体が機体の後方に撓んでも、板バネの捻れ変形を利用して、回転マーカを機体の進行方向に良好に追従させることができる。その結果、回動軸を介してマーカアームを回動自在に支持する必要がなくなるので、構造の簡略化やコストダウンが図れる。
しかも、回転マーカの支軸を内外両方から両持ち状に支持するので、マーカアームに対する回転マーカの倒れも防止できる。
また、板バネは、回転マーカの上下動を許容すると共に、回転マーカを圃場面に向けて付勢するので、回転マーカを圃場面に良好に追従させることができる。その結果、回転マーカの上下動を許容する回動軸や、回転マーカを下方に付勢する捻りバネも不要になり、更なる構造の簡略化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付部3が連結されている。植付部3は、マット苗を載置する苗載台4、苗載台4から苗を掻取って圃場面に植付ける植付機構5、圃場面を滑走するフロート6などを備えて構成されており、走行機体1から伝動される植付動力によって植付作業を行うようになっている。
【0008】
植付部3の左右両側には、次の植付行程の指標を圃場面に形成するマーカ装置8が設けられている。図3及び図4に示すように、左右の各マーカ装置8は、植付部3から外側方に張り出す支持アーム9と、該支持アーム9の先端から後下方に延出するマーカアーム10と、該マーカアーム10の先端に支持される回転マーカ11とを備えて構成されている。支持アーム9の基端は、植付部3の左右両側部に起倒自在に支持されており、植付部3から外側方に張り出す指標形成姿勢と、植付部3の側面部に沿って起立する格納姿勢とに姿勢が切り換えられるようになっている。
【0009】
回転マーカ11は、外周部に土掬い上げ用の複数の爪11aを備える接地回転体で構成され、走行時の接地に応じて回転すると、爪11aで掬い上げられた土が圃場面に一塊ずつ落ち、この落ちた土の盛り上がりが機体の進行方向に沿って一定の間隔で列状に形成されて次の植付行程の指標となる。このような指標によれば、圃場に水が深く張られていても、土の盛り上がりをオペレーターが容易に認識することができる。
【0010】
この種のマーカ装置8では、圃場面に対する回転マーカ11の回転抵抗や、支持アーム9の基端部のガタなどにより、支持アーム9自体が後方に撓み易く、しかも、マーカアーム10は、支持アーム9の先端から平面視で略直角に延設されているので、支持アーム9の撓みに伴い、回転マーカ11の支軸11bが平面視で機体の進行方向に対して大きく傾き、回転マーカ11が円滑に回転しなくなるという問題がある。このような問題は、マーカアーム10を支持アーム9と直交する軸線を中心として所定の角度範囲で回動可能に支持し、機体の進行方向に対する回転マーカ11の所定量の揺動を許容することにより解決可能であるが、この場合には、回動軸を介してマーカアーム10を支持アーム9で回動自在に支持するだけでなく、マーカアーム10の回動範囲を規制するために、ストッパピンなども設ける必要があるので、構造が複雑になり、コストアップを招来してしまうことになる。
【0011】
本発明に係るマーカ装置8では、上記の問題を解決するために、マーカアーム10を、支持アーム9の先端に固設される板バネ10aと、該板バネ10aの先端に固設され、回転マーカ11の支軸11bを内外両方から両持ち状に支持する軸支部材10bとで構成している。このようにすると、圃場面に対する回転マーカ11の抵抗や、支持アーム9の基端部のガタなどにより、支持アーム9自体が機体の後方に撓んでも、図2や図5に示すような板バネ10aの捻れ変形を利用して、回転マーカ11を機体の進行方向に良好に追従させることができる。
【0012】
つまり、支持アーム9の後方への撓みに伴い、回転マーカ11の支軸11bが平面視で機体の進行方向に対して傾くと、回転マーカ11の牽引負荷が大きくなり、これが板バネ10aに作用する。板バネ10aは、この負荷を捻れ変形や曲げ変形により吸収するので、回転マーカ11は、図2に示すように外側に傾くものの、支軸11bは、平面視で進行方向に対して略垂直な状態を保ち、回転マーカ11を円滑に回転させることになる。その結果、回動軸を介してマーカアーム10を回動自在に支持する必要がなくなり、構造の簡略化やコストダウンが図れる。しかも、回転マーカ11の支軸11bを内外両方から両持ち状に支持するので、マーカアーム10に対する回転マーカ11の倒れも防止し、回転マーカ11をより円滑に回転させることが可能になる。
【0013】
また、板バネ10aは、回転マーカ11の上下動を許容すると共に、回転マーカ11を圃場面に向けて付勢するので、回転マーカ11を圃場面に良好に追従させることができる。その結果、回転マーカ11の上下動を許容する回動軸や、回転マーカ11を下方に付勢する捻りバネも不要になり、更なる構造の簡略化を実現することができる。
【0014】
具体的に説明すると、支持アーム9の先端には、取付板12が一体的に溶着されており、ここに上下一対のボルト13を介して板バネ10aの基端が一体的に固設されるようになっている。軸支部材10bは、冂字状に曲げ加工したプレート部材からなり、その下端部対向部間において、回転マーカ11の支軸11bを内外両方から両持ち状に支持するようになっている。また、軸支部材10bの上端にも、取付板14が一体的に溶着されており、この取付板14が上下一対のボルト15を介してマーカアーム10の先端に一体的に固設されるようになっている。そして、板バネ10aは、表裏の板面がそれぞれ前下方及び後上方を向くように取付けられているので、その捻れ変形によって回転マーカ11の左右傾動を許容しつつ、曲げ変形によって回転マーカ11の上下動を許容し、さらには、回転マーカ11を圃場面に向けて付勢することが可能となる。
【0015】
また、本実施形態のマーカ装置8では、マーカアーム10及びマーカ11を左右方向にスライドさせることにより、指標の形成位置を調節できるようになっている。具体的に説明すると、本実施形態の支持アーム9は、パイプ部材9aと、該パイプ部材9aにスライド自在に挿通される棒状部材9bとによって伸縮自在に構成されており、支持アーム9aの長さ調節に応じて指標の形成位置が調節されるようになっている。支持アーム9aの伸縮は、パイプ部材9aに形成される単一のピン孔9cを介して、棒状部材9bに形成される複数のピン孔9dのいずれかにピン(図示せず)を差し込むことによりロックされ、差し込むピン孔9dの選択により支持アーム9aの長さが調節されるようになっている。このようにすると、板バネ10aの捻れにより指標の形成位置が左右方向にずれることが懸念される場合、予め逆の方向に回転マーカ11の位置を調節しておくことにより、板バネ10aの捻れによる指標形成位置のずれを補正することが可能になる。
【0016】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、植付部3から外側方に張り出す支持アーム9の先端に、後下方に延出するマーカアーム10を設けると共に、該マーカアーム10の先端に、次の植付行程の指標を圃場面に形成する回転マーカ11を支持した乗用型田植機において、マーカアーム10を、支持アーム9の先端に固設される板バネ10aと、該板バネ10aの先端に固設され、回転マーカ11の支軸11bを内外両方から両持ち状に支持する軸支部材10bとで構成したので、圃場面に対する回転マーカ11の抵抗や、支持アーム9の基端部のガタなどにより、支持アーム9自体が機体の後方に撓んでも、板バネ10aの捻れ変形を利用して、回転マーカ11を機体の進行方向に良好に追従させることができる。その結果、回動軸を介してマーカアーム10を回動自在に支持する必要がなくなるので、構造の簡略化やコストダウンが図れる。しかも、回転マーカ11の支軸11bを内外両方から両持ち状に支持するので、マーカアーム10に対する回転マーカ11の倒れも防止できる。
【0017】
また、板バネ10aは、回転マーカ11の上下動を許容すると共に、回転マーカ11を圃場面に向けて付勢するので、回転マーカ11を圃場面に良好に追従させることができる。その結果、回転マーカ11の上下動を許容する回動軸や、回転マーカ11を下方に付勢する捻りバネも不要になり、更なる構造の簡略化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】マーカ装置の側面図である。
【図4】マーカ装置の背面図である。
【図5】マーカ装置の作用説明図である。
【図6】従来例に係る乗用型田植機の平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 走行機体
3 植付部
8 マーカ装置
9 支持アーム
10 マーカアーム
10a 板バネ
10b 軸支部材
11 回転マーカ
11b 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付部又は走行機体から外側方に張り出す支持アームの先端に、後下方に延出するマーカアームを設けると共に、該マーカアームの先端に、次の植付行程の指標を圃場面に形成する回転マーカを支持した移植機において、
前記マーカアームを、支持アームの先端に固設される板バネと、該板バネの先端に固設され、回転マーカの支軸を内外両方から両持ち状に支持する軸支部材とで構成したことを特徴とする移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−54639(P2008−54639A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238669(P2006−238669)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】