説明

移送装置、及び移送方法

【課題】分析装置おける試料や試薬を混合部及び分析部へ移送する際に、押し出し水を補充する必要がなく、脈流を低減させ、低消費電力化が可能な移送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の気体を吐出する気体吐出部と、液体と、第2の気体とを有する室であって、前記気体吐出部が該液体に向かって前記第1の気体を吐出することにより、該液体が該第2の気体を押し、該液体に押された該第2の気体が吐出する室と、を備え、前記室は、所定の物質を収容する収容部と接続され、前記室から吐出した前記第2の気体によって前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送装置、及び移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定場所を選ばずに生体物質の所定情報を分析することが可能な携帯型分析装置が開発されている。携帯型分析装置内の試料と試薬を混合させる方法として、マイクロポンプにより駆動液を試薬収容部側へ供給することによって、試薬収容部から試薬を流路へ押し出して反応を開始する検査方法が開発されている(特許文献1から3を参照)。また、ポンプの性能データに基づいてポンプの駆動を制御することにより、マイクロポンプの特性バラツキを補正し、所定の流量で駆動液をマイクロチップに送液する技術が開発されている(特許文献4を参照)。また、プランジャーポンプが少なくとも2基設けられ、該プランジャーポンプの吸排液周期が補足し合うように設定されており、該プランジャーポンプの排液管が1本の共通配管に接続され、吐出することにより、送液の脈流を除去することが可能な液体分析装置が開発されている(特許文献5を参照)。他には、サンプルと試薬の混合部や分析セルをマイクロマシーニングにより形成し、ポンプなどその他の要素はできる限り小型のものを使用し、セルの外部に吸引ポンプと吐出ポンプを並列につないでサンプルの流れを制御するマイクロ化学分析システムが開発されている(非特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−68413号公報
【特許文献2】特開2008−209281号公報
【特許文献3】特開昭58−108462号公報
【特許文献4】特開2009−62911号公報
【特許文献5】実開平5−23129号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】庄子習一、[マイクロ化学分析システム]、電子情報通信学会 論文誌、社団法人 電子情報通信学会、1998年7月、Vol.J81−C-I No.7、p.385−393
【非特許文献2】Shuichi Shoji、「Fluids For Sensor Systems」、ドイツ、Topics in Current Chemistry、Vol.194、Springer Verlag Berlin Heidelberg、1998、p.163−188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、測定場所を選ばずに生体物質等の試料の所定情報を分析することが可能な携帯型分析装置が開発されている。分析装置内の試料や試薬を移送する移送装置には、流速変動±3%以下となる送液安定性、移送装置の小型化、及び省電力化が求められる。
【0006】
図1は、携帯型分析装置200内の試料や試薬を混合部204へ移送する、従来の移送装置100を示す概略図である。図2は、一般的な携帯型分析装置200のカートリッジ210内を示す概略図である。カートリッジ210内は、図2に示すように、試料収容部201と、試薬X収容部202と、試薬Y収容部203と、混合部204と、分析部205と、廃液貯蔵部206を有する。試料収容部201は試料を収容する室であり、試薬X収容部202は試薬Xを収容する室であり、試薬Y収容部203は試薬Yを収容する室で
ある。混合部204は、試料収容部201と、試薬X収容部202と、試薬Y収容部203と各々繋がっており、試料と試薬を混合する。分析部205は、試料と試薬が混合した混合溶液から所定情報を分析する。廃液貯蔵部206は、分析部205で分析が終了した混合溶液の廃液を貯蔵する。また、吐出ポンプ103からカートリッジ210内の混合部204に繋がる管115が設けられ、管115を通って混合部204へ空気が送られ、混合部204の空気置換やバブリング攪拌が行われる。尚、管115は、吐出ポンプ103からカートリッジ210内の分析部205に繋がるように設けられてもよく、分析部205の空気置換が行われる(不図示)。
【0007】
従来の移送装置100は、図1に示すように、水を供給するための機構として、ウォータータンク101と、吐出ポンプ102と、流量センサ105を主な構成とする。ウォータータンク101は、吐出ポンプ102の吸引側に配置される。吐出ポンプ102は、バルブ110及びバルブ111が開状態において、ウォータータンク101の水を管107から吸い込み、バルブ110を介して水を吐出する事により、分析装置200内のカートリッジ210側へ水を流す。流量センサ105は、吐出ポンプ102とカートリッジ210を繋ぐ管109に設けられ、管109を流れる水の流量や流速を検知する。バルブ110、111は、開状態によりカートリッジ210側に水が流れ、閉状態によりカートリッジ210側に流れる水を遮断することが可能である。一方、空気を供給するための機構としては、空気フィルタ113と、吐出ポンプ103と、バルブ112と、エアー挿入孔108を主な構成とする。吐出ポンプ103は、バルブ112が開状態において、空気フィルタ113によって塵埃の取り除かれた空気をエアー挿入孔108から吸引し、カートリッジ210側に空気を吐出する事が可能である。
【0008】
従来の移送装置100が分析装置200内の試料と試薬を混合部204へ移送する移送行程について説明する。先ず、吐出ポンプ102が水をウォータータンク101から吸引し、カートリッジ210側に吐出し、カートリッジ210側に水が流れることにより、試薬X収容部202、試薬Y収容部203、試料収容部201に水が流れ、試薬X、試薬Y、試料を混合部204へ移送することが可能となる。尚、試薬X、試薬Y、試料のうち、どの流体を混合部204へ移送するかは、バルブ207によって切りかえられる。混合部204で試料と試薬が混合する。混合する試料と試薬によっては、混合部204内で所定の反応が起こる。混合部204で試料と試薬が混合された混合溶液が分析部205へ流れ、分析部205が混合溶液の所定情報を分析する。分析が終了すると、混合溶液が廃液貯蔵部206へ流れ、その後カートリッジを廃棄する。更に、試料の所定情報を分析する際は、新たなカートリッジを設置し、再び吐出ポンプ102によって水をウォータータンク101から吸引し、カートリッジ210側へ水が流れ、上述した移送行程が繰り返される。
【0009】
また、従来の移送装置100にてバブリング攪拌や空気置換工程が必要な場合は吐出ポンプ103がエアー挿入孔108から空気フィルタ113を介して空気を吸引し、カートリッジ210側に吐出し、カートリッジ210側に空気が流れることにより、混合部204に空気が流れ、空気置換やバブリング攪拌が行われる。
【0010】
この従来の移送装置100は、カートリッジ210に水を供給するため、移送装置100に対して定期的に水を補充する必要がある。また装置環境の温度変化により管109が有する水の溶存空気が気泡発生する恐れがあり、吐出ポンプ102がカートリッジ210に水を供給する際の送液精度が悪化する。
【0011】
また、従来の移送装置100がカートリッジ210に水を供給する際に、吐出ポンプ102にシリンジポンプを用いた場合では、送液速度の安定化が可能ではあるが、パルスモータを使用しなければならないため、消費電力が大きくなり、電池駆動により駆動する携
帯型分析装置に用いる場合には不適当である。
【0012】
また、ダイアフラム式ポンプは、低消費電力ではあるが、空気で駆動すると、通常、流速精度±10%以上の脈流が発生していまい、測定誤差が起きてしまう恐れがある。ダイアフラム式ポンプを水で駆動し、流路抵抗の最適化やポンプを複数使用して切替送液をする事で脈流を流速精度±3%程度に低減する事が可能ではあるが、その場合、バイオセンサをカートリッジ化又はディスポーザブル化した場合に、移送装置100とバイオセンサとの結合部分に水が流れるため、異物や不純物の混入、水漏れ等のリスク回避のための構成が複雑化してしまう。
【0013】
更に、従来の移送装置100において、吐出ポンプ102を空気のみで駆動した場合、カートリッジ210に供給される空気を制御するために風速センサが必要となるが、100〜500μl/min範囲で風速精度±3%以内の電池駆動可能且つ片手で持つことが可能な風速センサは実用化されていない。
【0014】
そこで、本発明では、上記した問題に鑑み、分析装置内の試料や試薬を混合部へ移送する際に、水を補充する必要がなく、脈流を低減させ、低消費電力化が可能な移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述した課題を解決するために、気体が液体を押し、該液体に押された該気体が、所定の物質を、該所定の物質を収容する収容部の内部から外部へ移送する点を工夫した。
【0016】
詳細には、本発明に係る移送装置は、第1の気体を吐出する気体吐出部と、液体と、第2の気体とを有する室であって、前記気体吐出部が該液体に向かって前記第1の気体を吐出することにより、該液体が該第2の気体を押し、該液体に押された該第2の気体が吐出する室と、を備え、前記室は、所定の物質を収容する収容部と接続され、前記室から吐出した前記第2の気体によって前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送する。
【0017】
本発明に係る移送装置は、気体吐出部と、室とを備える。気体吐出部は、第1の気体を吐出する。第1の気体は、例えば、空気であり、液体溶存性が低い気体である事が望ましい。尚、第1の気体は空気に限定されない。室は、液体と第2の気体を有する。気体吐出部が液体に向かって第1の気体を吐出することにより、液体に圧力が加わり、圧力が加わった液体が第2の気体を押す。液体に押された第2の気体に圧力が加わり、第2の気体が、収容部に収容されている所定の物質を、該収容部の内部から外部へ移送することが可能である。液体は、例えば、水であり、流動性が高く気体透過性が低い液体である事が望ましい。第2の気体は、例えば、第1の気体と同様に、空気である。尚、液体は水に限定されず、第2の気体も空気に限定されない。第1の気体と第2の気体は同じでも異なっても良い。所定の物質は、液体、気体、固体の試料や試薬等であるが、試料や試薬に限定されない。
【0018】
以上により、本発明に係る移送装置は、収容部に第2の気体が流れ、収容部に液体が流れないため、該移送装置内の液体が減少しない。その結果、本発明に係る移送装置は、液体を該移送装置へ補充する必要がなく、異物や不純物の混入、液体漏れ等を簡易な構成で防ぐことが可能である。更に、本発明に係る移送装置は、第2の気体が所定の物質を収容部から所定の部屋へ移送する際、第1の気体、液体、第2の気体の順に第2の気体が押されるため、気体のみで第2の気体が押されることに比べ、脈流を低減させることが可能である。
【0019】
また、本発明に係る移送装置において、前記液体が移動する状態を流量検知部により監視し該第2の気体の吐出量または吐出速度を調節する制御部を、更に備えてもよい。本発明に係る移送装置は、気体吐出型でありながら、液体の移送する状態を監視及び制御することが可能であるため、確実に、所定の物質を収容部の内部から外部へ移送することが可能である。液体が移動する状態を流量検知部により監視するとは、好ましくは液体の流量や流速を流量検知部により監視する事である。また、流量検知部としては、公知のセンサを使用することができる。例えば、流量センサ、圧力センサ、光学センサ、電気抵抗センサ、重量センサ等が挙げられる。いずれも流量又は流速を検知することが可能であるが、流量センサは検知感度や精度が高いので好ましい。
【0020】
更に、本発明に係る移送装置は、前記室が、前記気体吐出部と接続されて前記液体を有する第3の室と、前記第3の室と接続されて前記液体を有する第1の室と、前記第1の室と前記収容部と接続されて前記第2の気体を有する第2の室と、を有し、前記気体吐出部から前記第3の室へ前記第1の気体が導入される気体導入部分が、前記第1の室及び前記第3の室に有する前記液体部分よりも高い位置にあってもよい。本発明に係る移送装置は、気体吐出部が吐出した第1の気体が直接液体に向けて吐出されず、液体中の気泡混入を防止することが可能である。更に、本発明に係る移送装置は、液体中の気泡混入が防止されるため、液体が第1の室を移動する流量又は流速の変動を低減することが可能である。
【0021】
また、本発明に係る移送装置は、前記第2の室が、前記第2の気体が吐出する第2の気体吐出部を有し、前記第2の気体吐出部が、前記第1の室及び前記第3の室に有する前記液体部分よりも高い位置にあってもよい。本発明に係る移送装置は、第1の気体に押された液体が、第1の室から第2の室に移動した際、液体は第2の気体よりも重いため、液体が第2の室の下方に位置し、第2の気体が液体の上方に位置する。つまり、第2の室が有する第2の気体吐出部は、第1の室及び第3の室に有する液体部分よりも高い位置にあるため、第2の気体吐出部には、液体を有さず、第2の気体のみを有する。従って、本発明に係る移送装置は、気体吐出部が第1の気体を吐出した際に、確実に、液体が第2の気体を押し、第2の気体が収容部に供給される。更に、本発明に係る移送装置は、液体が収容部に供給されることを防ぐことが可能である。また、本発明に係る移送装置は、液体に気泡が混入した場合であっても、気泡が第2の室または第3の室の上方に移動し第2の気体または第3の気体と混ざるため、液体に気泡が混入した状態が維持されない。
【0022】
更に、本発明に係る移送装置において、前記第1の室と前記流量検知部が前記第3の室及び前記第2の室よりも低い位置にあってもよい。本発明に係る移送装置は、第1の室や流量検知部に気泡が混入した場合であっても、気泡が第3の室及び第2の室に移動するため、液体に気泡が混入した状態が維持されない。
【0023】
また、本発明に係る移送装置は、前記第1の室と前記第2の室と前記第3の室が、筒状であり、前記第1の室の筒の径が、前記第3の室の筒の径より小さくすることにより、脈流をより低減させることが可能である。更に、本発明に係る移送装置は、前記第2の室と前記第3の室が、筒状であり、該筒の径が5mm以上でもよい。第1の室が有する液体が第3の室に移動した際や、移送装置に振動が加わった際に、第2の室及び3の室の筒の径が過小であると、第2の室及び第3の室の側面に液体が付着し、十分に第2の気体、第3の気体を押すことができなくなってしまう。更に、液体中に気泡が混入した際に気泡も残留しやすい。そこで、本発明に係る移送装置は、第2の室と第3の室の筒の径を5mm以上とすることにより、第2の室と第3の室の側面に液体が残留しにくく、更に、液体中の気泡は上昇するため、液体中の気泡が残留しにくい。
【0024】
また、本発明に係る移送装置は、前記収容部が、複数設けられ、前記第2の室と前記複数の収容部との間に各々設けられ、前記第2の気体が該収容部へ流れないように遮断自在
な開閉部と、を更に備えてもよい。発明に係る移送装置は、複数の収容部に収容された複数の所定の物質を各々独立に収容部の内部から外部へ移送することが可能であるため、移送装置側の第2の室と、収容部側との接続を変更する必要がない。その結果、本発明に係る移送装置は、移送装置の外部からの異物や不純物の混入を防ぐことが可能である。更に、本発明に係る移送装置は、移送装置側に開閉部が設けられるため、収容部側に第2の気体が流れるか遮断するかを調整するバルブ機構が不要となる。
【0025】
本発明に係る移送装置は、前記開閉部の開閉を制御する開閉制御部と、を更に備えてもよい。本発明に係る移送装置は、開閉制御部によって、開閉部の開閉を切りかえるタイミングを適正化する事が可能である。
【0026】
また、本発明に係る移送装置は、前記気体吐出部が、空気を吸引して吐出するポンプであり、前記ポンプが空気を吸引する吸引側に該空気の塵埃を取り除く空気フィルタを更に備えてもよい。本発明に係る移送装置は、気体吐出部が塵埃の取り除かれた第1の空気を吐出し、室内に有する液体を押すため、移送装置内に塵埃が混入することを防ぐことが可能である。また、本発明に係る移送装置は、気体吐出部が吐出する気体が空気であるため、気体を収容するボンプ等が必要なく、軽量化が可能である。
【0027】
本発明に係る移送装置は、前記第2の気体が前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送した後、前記第2の室内の圧力を開放する圧力解放部と、を更に備えてもよい。第2の気体が所定の物質を収容部の内部から外部へ移送した際、第2の室内は高圧になる。そこで、本発明に係る移送装置は、圧力解放部が第2の室内の圧力を開放することにより、収容部の内部から外部への所定の物質の移送を停止するまでの時間を短縮することが可能である。
【0028】
本発明に係る移送装置において、前記第3の室は、前記気体吐出部が該第3の室に向かって前記第1の気体を吐出することにより、前記第1の気体に押され前記液体を押す第3の気体を更に有し、前記液体の体積は、前記第2の気体と前記第3の気体とのうち少なくとも何れか一方の体積の0.5〜2倍でもよい。本発明に係る移送装置は、安定した状態で、効率よく、且つ短時間で、所定の物質を収容部の内部から外部へ移送することが可能である。本発明に係る移送装置は、液体を、収容部の内部から外部へ所定の物質を移送するのに必要な合計液量より多くする必要がある。第3の気体は、第1の気体あるいは第2の気体と同様な性質を有する。なお、第3の気体は、第1の気体あるいは第2の気体と同じでも異なっても良いが、第1の気体と同じである方が好ましい。
【0029】
本発明に係る移送装置において、前記気体吐出部は、ダイアフラム式ポンプでもよい。ダイアフラム式ポンプは、低消費電力で駆動することが可能である。従って、本発明に係る移送装置は、電池駆動が可能であり、携帯型の装置に用いることが適している。尚、ダイアフラム式ポンプは、圧電型ポンプ、又はモータ等によりダイアフラムを駆動したポンプである。
【0030】
本発明に係る移送装置は、前記第2の気体が前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送した後、前記液体を前記第1の室へ引き戻す気体吸引部を更に備えてもよい。本発明に係る移送装置は、繰り返し、所定物質を、収容部の内部から外部へ移送することが可能である。
【0031】
また、本発明に係る移送装置は、試薬と混合した試料から所定情報を分析する分析装置に用いられ、前記所定の物質は、前記試料と、前記試薬と、該試薬と混合された該試料とのうち何れか一方を含み、前記収容部は、前記試料を収容する試料収容部と、前記試薬を収容する試薬収容部と、該試料と該試薬を混合する混合部とのうち何れか一方を含んでも
よい。分析装置が分析する所定情報とは、電流値、電圧値、抵抗値等の電気的情報、発光量、吸光量、反射量等の光学的情報、吸着力、極性等の化学的情報、重量や分子量等の物理的情報である。本明細書における「分析」には、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」と、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」とが含まれる。
【0032】
本発明に係る移送装置は、所定の物質が試料であり、収容部が試料収容部であり、該試料収容部が混合部又は所定情報を分析する分析部と接続されている場合、試料収容部に収容されている試料を、混合部又は分析部へ移送することが可能である。また、本発明に係る移送装置は、所定の物質が試薬であり、収容部が試薬収容部であり、該試薬収容部が混合部又は分析部と接続されている場合、試薬収容部に収容されている試薬を、混合部又は分析部へ移送することが可能である。また、本発明に係る移送装置は、所定の物質が試薬と混合された試料であり、収容部が混合部であり、該混合部が分析部と接続されている場合、混合部に収容されている試薬と混合された試料を、分析部へ移送することが可能である。
【0033】
また、本発明に係る移送方法は、第1の気体を吐出し、該第1の気体が液体を押し、該第1の気体に押された該液体が第2の気体を押し、該液体に押された該第2の気体が、所定の物質を該所定の物質を収容する収容部の内部から外部へ移送してもよい。本発明に係る移送方法は、第2の気体が所定物質を収容部の内部から外部へ移送する際、第1の気体、液体、第2の気体の順に第2の気体が押されるため、気体のみで第2の気体が押されることに比べ、脈流を低減させることが可能である。
【0034】
また、本発明に係る移送システムは、試料と混合された試料から所定情報を分析する分析装置と、第1の気体を吐出する気体吐出部と、液体と、第2の気体とを有する室であって、前記気体吐出部が該液体に向かって前記第1の気体を吐出することにより、該液体が該第2の気体を押し、該液体に押された該第2の気体が吐出する室と、を備え、前記室は、前記試料を収容する試料収容部と、前記試薬を収容する試薬収容部と、該試料と該試薬を混合する混合部とのうち何れか一方と接続され、前記室から吐出した前記第2の気体によって、前記試料、前記試薬、又は前記試薬と混合された前記試料を、前記試料収容部、前記試薬収容部、前記混合部とのうち何れか一方の内部から外部へ移送する、移送装置と、を有してもよい。本発明に係る移送システムは、分析装置側に第2の気体が流れ、分析装置側に液体が流れないため、該移送装置内の液体が減少しない。その結果、本発明に係る移送装置は、液体を該移送装置へ補充する必要がなく、異物や不純物の混入、液体漏れ等を簡易な構成で防ぐことが可能である。更に、本発明に係る移送システムは、第1の気体、液体、第2の気体の順に第2の気体が押されるため、気体のみで第2の気体が押されることに比べ、脈流を低減させることが可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、所定物質を収容部の内部から外部へ移送する際に、水を補充する必要がなく、脈流を低減させ、低消費電力化が可能な移送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の移送装置を示す概略図である。
【図2】携帯型分析装置のカートリッジ内を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例に係る移送装置と、分析装置を示す概略図である。
【図4】分析装置内の混合部におけるバブリング撹拌を示す断面概略図である。
【図5】分析装置内の分析部と廃液貯蔵部を示す断面概略図である。
【図6】本発明の実施例に係る移送装置と接続された分析装置内の流速と時間の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例に係る移送装置を用いた移送行程を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例に係る移送装置を用いた移送行程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例に係る移送装置を用いた移送行程を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に係る移送装置を用いた移送行程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここで、本発明の実施例に係る移送装置1について、図面に基づいて説明する。以下に示す実施例は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<分析装置の構成>
まず、分析装置50について説明する。分析装置50は、図3に示すように、試料収容部51と、試薬収容部52と、混合部55と、分析部56と、標識捕捉機構57と、廃液貯蔵部58を主な構成とする。尚、分析装置50は、新しい分析装置50に取り替えるカートリッジ型と、1回使用する度に新しい分析装置50に取り替えるディスポーサブル型のどちらでもよい。また、分析装置50は、例えば、国際公開番号WO 2009/116534A1に公開されている、装置及び方法を用いてもよい。また、分析装置50は、測定場所を選ばすに試料の所定情報を分析することが可能な携帯型分析装置である。尚、分析装置50は、携帯型分析装置に限定されない。以下、各構成について具体的に説明する。
【0039】
試料収容部51は、試料挿入孔59から試料が挿入され、試料を収容する。また、試料収容部51は、混合部55と接続されており、混合部55と接続される側と反対側に、後述する移送装置1と結合部60で繋がる管61が接続されている。そして、移送装置1により試料収容部51内の試料が混合部55へ移送される。また、試料収容部51が収容する試料は、血液(全血、血漿、血清)、リンパ液、唾液、尿、大便、粘液、涙等の生体液の他に、食品、土壌、植物の抽出液や破砕液等の溶液、河水、温泉水、飲料類、汚染水等を含むほとんど全ての液体試料が用いられる。尚、試料収容部51は一つに限定されず、更に、試料は液体に限定されない。液体でない例としては、気体が挙げられ、例えば、呼気、大気、エンジン排気ガス、発酵ガスが挙げられる。また、試料間のコンタミネーション回避の為に試料挿入孔に開閉蓋を設ける事が望ましい。
【0040】
試薬収容部52は、試薬A収容部53と試薬B収容部54を有する。試薬A収容部53は、例えば、磁性粒子を含む試薬Aを収容する。試薬B収容部54は、例えば、洗浄液、緩衝液、基質液の複数の特徴を有する試薬Bを収容する。試薬収容部が保存安定性やPH調整等の理由により試薬を更に複数に分けた方が良い場合は、その分の試薬収容部が用意される。また、試薬A収容部53と試薬B収容部54は、試薬挿入孔62、63から試薬を挿入する。試薬A収容部53と試薬B収容部54は、各々、混合部55と接続されており、混合部55と接続される側と反対側に移送装置1と結合部60で繋がる管64、65が接続されている。そして、移送装置1により試薬Aと試薬Bを混合部55へ移送することが可能である。尚、試薬収容部52は2つに限定されず、更に収容される試薬は試薬A及び試薬Bに限定されない。また、試薬収容部52に予め試薬を収容しておいても良い。予め収容する場合には、溶液状でも凍結乾燥品等でも良い。長期間、安定に保存できるため、凍結乾燥品である方が好ましい。
【0041】
混合部55は、試料収容部51と、試薬A収容部53と、試薬B収容部54と接続されており、試料収容部51に収容された試料と、試薬A収容部53に収容された試薬Aと、試薬B収容部54に収容された試薬Bとのうち少なくとも何れかを混合する。更に、混合
部55の上方には、図3から図5に示すように、分析装置50の外部と繋がるエアー抜き孔1を有する管66が接続されていても良い。管66には開閉部18(バルブ)が設けられる。開閉制御部27が開閉部18の開閉を制御することによって、管66の開閉が調整される。また、混合部55は、図4に示すように、下方に移送装置1内の第2の室6と接続されている管67が接続されており、管67から空気が供給されることにより、試料と試薬を泡で攪拌するバブリング攪拌を行うことが可能である。図4(a)は、バブリング攪拌前の混合部55内の様子を示し、図4(b)は、バブリング攪拌中の混合部55内の様子を示す。バブリング攪拌前は、図4(a)に示すように、混合部55の下方に試料と試薬の混合溶液の粒子が集まっていることが分かる。一方、バブリング攪拌中は、図4(b)に示すように、混合部55の下方から空気が供給され、空気が混合部55の上方に移動され、エアー抜き孔1から空気が放出されるため、混合部55の下方に集まっていた試料と試薬の混合溶液の粒子を混合することが可能である。従って、混合部55は、試料と試薬が粘性の高いものである場合や沈降しやすい粒子を含む溶液であっても混合することが可能である。また、混合部55は、バブリング攪拌時に、試料や試薬の液性によっては、ドーム状の大きい気泡が発生し、該気泡、試料、試薬が混合部55の外に出てしまい、混合部55の高さを十分に確保しなければならない場合がある。その場合、混合部55への消泡剤の添加、試料と試薬の親水性疎水性樹脂性質の選択により、気泡を低減することが可能である(不図示)。また、管67から供給された空気により、溶液を移動させた後に空気置換を行うこともできる。
【0042】
標識捕捉機構57は、分析部56の試料と試薬が混合された混合溶液から対象物質と特異的に反応する標識物質を捕捉する。代表的な標識捕捉機構は、磁石や電圧印加等である。
【0043】
分析部56は、標識捕捉機構57において捕捉された標識物質から、所定情報である電気的情報、物理的情報、化学的情報を分析する。分析部56で行われる分析方法は、分析部56内の感知部表面における電荷の変化を電流の変化として捉える方法、感知部表面における電荷の変化を電圧(電位)として捉える方法、感知部表面の電気的抵抗の変化として捉える方法等がある。分析部56での具体的な分析として、金電極を用いたB型肝炎表面抗原(HBs抗原)の測定、グルコースオキシダーゼ(GOD)によるグルコースの測定、クロマトグラフィーによるHBs抗原の測定等が挙げられる。詳細な分析方法については、本明細書では割愛するが、国際公開番号WO2009/116534A1を参考にする。分析部56の上方には、図5に示すように、分析装置50の外部と繋がるエアー抜き孔2を有する管68が接続されている。管66には開閉部19(バルブ)が設けられる。開閉制御部27が開閉部19の開閉を制御することによって、管68の開閉が調整される。
【0044】
廃液貯蔵部58は、分析部56と接続されており、分析部56で分析が終わった試料と試薬が混合された混合溶液や、分析部56において分析する際に余分な混合溶液等の廃液を貯蔵する。また、廃液貯蔵部58と分析部56との間の流量検知部に流量センサ69が設けられ、分析部56から廃液貯蔵部58に流れる廃液の流量を検知し、移送装置1内の制御部21が、移送装置1内の吐出ポンプ2が吐出する第1の空気を吐出する速度を調整することによって、移送装置内の流量センサ22により更に高精度に流量を制御することも可能である。また、廃液貯蔵部58には吸収パッドが配置されてもよい(不図示)。吸収パッドが配置されている事により廃液貯蔵部に溶液の移動時、液滴状になった後に液が落下し、混合部及び分析部での送液速度が変動してしまう事が抑制出来る。また試料が人にウイルスや病原体等を感染させる恐れがある場合に、吸収パッドに試料を吸収させることにより、感染を防ぐことが可能である。更に、廃液貯蔵部58の上方には、図5に示すように、分析装置50の外部と繋がるエアー抜き孔3を有する管70が接続されている。廃液が廃液貯蔵部58に流れた際に、吸収パッドが配置されていることにより、エアー抜
き孔3から廃液が飛散することを防ぐことが可能である。尚、管70には開閉部20(バルブ)が設けられる。開閉制御部27が開閉部20の開閉を制御することによって、管70の開閉が調整される。
【0045】
また、分析装置50は、試料、試薬A、試薬Bが試料収容部51、試薬A収容部53、試薬B収容部54に各々収容され、各々が本発明の実施例に係る移送装置1により混合部55へ移送されるが、試料又は試薬を予め混合部55に入れ、本発明の実施例に係る移送装置1により、試薬又は試料を混合部55へ移送するようにしてもよい。他に、試料収容部51、試薬A収容部53、試薬B収容部に各々別の移送装置1が接続される構成としてもよい。更に、分析装置50は、混合部55を備えず、分析部56に試料が直接挿入され、試薬収容部52から試薬が分析部56に移送され、分析部56で試薬と混合された試料を分析する構成でもよい。また、分析装置50は、混合部55を備えず、分析部56に試薬が直接挿入され、試料収容部51から試料が分析部56に移送され、分析部56で試薬と混合された試料を分析する構成でもよい。また、分析装置50は、混合部55、試薬収容部52を備えず、試料収容部51から試料が分析部56に移送され、分析部56で試料を分析する構成でもよい。また、分析部56が、試料収容部51あるいは試薬収容部52あるいは混合部55を兼ねる場合もある。
【0046】
<移送装置の構成>
次に、本発明の実施例に係る移送装置1について説明する。本発明の実施例に係る移送装置1は、分析装置50内の試料収容部51に収容されている試料と、試薬収容部52に収容されている試薬を混合部55へ移送することが可能である。また、本発明の実施例に係る移送装置1は、結合部60で分析装置50と結合される。本発明の実施例に係る移送装置1は、図3に示すように、吐出ポンプ2(気体吐出部)と、室3と、制御部21と、吸引ポンプ23(気体吸引部)と、開閉部と、開閉制御部27と、圧力解放部を主な構成とする。以下、各構成について具体的に説明する。
【0047】
先ず、吐出ポンプ2について説明する。吐出ポンプ2は、大気中の空気をエアー挿入孔7から吸い込み、該空気を第3の室4に向かって吐出する。吐出ポンプ2が大気中の空気を吸い込む管8には空気フィルタ9が設置され、吐出ポンプ2は、大気中の異物や不純物等の塵埃が取り除かれた綺麗な空気を吸引吐出することが可能である。吐出ポンプ2が吐出する空気を第1の空気とする。尚、吐出ポンプ2が吐出する気体が空気であることによりボンベ等が不要であり、移送装置1の軽量化が可能である。また、本発明の実施例に係る移送装置1は、吐出ポンプ2にダイアフラム式ポンプを用いることにより、低消費電力で駆動することが可能である。その結果、本発明の実施例に係る移送装置1は、電池駆動が可能となり、携帯型の分析装置に適している。尚、ダイアフラム式ポンプは、圧電型ポンプ、又はモータ等によりダイアフラムを駆動したポンプである。また、吐出ポンプ2は、流量検知部にある流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、後述する制御部21によって、吐出する空気の量及び流速が制御される。
【0048】
室3について説明する。室3は、第3の空気及び水を有する第3の室4と、水を有する管5(第1の室)と、第2の空気を有する第2の室6とを有する。吐出ポンプ2が第3の室4に向かって第1の空気を吐出することにより、第3の室4が有する第3の空気に圧力が加わり、圧力が加わった第3の空気が、第3の室4の下方に有する水を押し、該水が管5の中の水を押す。第3の空気に押された水が移動する事により、水が第2の室6が有する第2の空気を押す。水に押された第2の空気に圧力が加わり、第2の空気が分析装置50内の試料や試薬を混合部55へ移送する。すなわち、第2の室6は、第2の空気と水を有する場合もある。以下、各室について説明する。
【0049】
第3の室4は、図3に示すように、筒状であり、第3の室4の上方で吐出ポンプ2と接
続され、第3の室4の下方で管5と接続され、第3の空気を有する。第3の室4の下方には、管5から溢れた水が存在する。水は空気よりも重いため、水は第3の室4の下方に位置し、第3の空気は少なくとも水の上方に位置する。つまり、吐出ポンプ2と接続されている第3の室4の上方には、水を有さず、第3の空気のみを有し、吐出ポンプ2から第3の室4へ第1の空気が導入される気体導入部分が、第3の室4及び管5に有する水よりも高い位置にある。その結果、吐出ポンプ2が吐出した第1の空気が確実に第3の空気を押し、第1の空気に押された第3の空気が水を押すことが可能である。仮に、水に気泡が混入した場合であっても、気泡が第3の室4の上方に移動し第3の空気と混ざるため、水中に気泡が混入した状態が維持されないため、水が第2の空気を押す際の送液量の変動を低減することが可能である。また、本発明の実施例に係る移送装置1は、水が吐出ポンプ2側へ移動することを防ぐことが可能である。
【0050】
また、第3の室4の筒及び第2の室6の筒の径が5mmより小さい場合、筒の側面に水が付着し、空気と水を押すことができなくなってしまい、更に、水中の気泡が上昇せず、水中に気泡が残留しやすい。そこで、本発明の実施例に係る移送装置1は、第3の室4及び第2の室6の筒の径を5mm以上とすることにより、筒の側面に水が付着した場合であっても、空気と水を確実に押すことが可能となり、更に、水中の気泡が残留しにくい。
【0051】
管5は、図3に示すように、一端が第3の室4の下方と接続され、他端が第2の室6の下方と接続され、水を有する。第3の室4の下方と第2の室6の下方には、管5から溢れた水が存在する。第3の空気が水を押した際は、第3の室4の下方に存在する水が管5へ流れ、管5の中の水が第2の室6の下方へ流れるため、第3の室4の下方に存在する水の水位が下がり、第2の室6の下方に存在する水の水位が上がる。一方、後述する吸引ポンプ23によって、第2の空気を分析装置50から第2の室6に引き戻した際は、第2の空気が水を押し、第2の空気に押された水が第3の空気を押すため、第2の室6の下方に存在する水の水位が下がり、第3の室4の下方に存在する水の水位が上がる。水の量は、試料収容部51に収容されている試料、又は試薬収容部52に収容されている試薬とのうち少なくともどちらか一方を混合部55へ1回移送するために必要な水の量よりも多い。
【0052】
管5の径について説明する。本発明の実施例に係る移送装置1は、管5の径を第3の室4の径より小さくすることにより、脈流をより低減することが可能である。また、管5の径が0.1mmよりも小さい場合、管5内の圧力が大きくなり、吐出ポンプ2に圧電ポンプを用いた場合では駆動することができない。一方、管5の径が1.6mm以上の場合、水が重力により移動してしまい、適していない。更に、管5の径が0.5mm以上の場合は、管5内を水が安定して流れ、層流が支配的であるが、管5の径が0.2mm以下の場合は、管5内を水が不規則に流れ、乱流が支配的である。従って、層流と乱流の中間的な性質を持つ径は適していない。以上により、本発明の実施例に係る移送装置1における管5の径は、0.4mm〜1.6mmが適している。本発明の実施例に係る移送装置では、管5に1.0mmの径のものを用いるものとする。
【0053】
管5が有する液体について説明する。管5が有する液体は、水に限定されず、移送装置1が分析装置50内の試料又は試薬を混合部55へ移送することが可能であれば良い。水以外に使用可能な液体の例としては、エチレングリコール溶液、水銀、エンジンオイル、ブレーキオイル等が挙げられる。前記液体に、所望の添加剤を加えることもでき、例えば、生理食塩水や、アザイド水等の防腐剤含有の水が挙げられる。また、液体は、空気透過性がなく、液中に気泡が混入した場合、重力により気泡が上昇するものが望ましい。更に、液体は、0.5kPAから30kPAの低圧ポンプにおいても、φ0.5以上の内径の配管内を1ml/minまでの流量が確保できる粘度を有するものが望ましい。このような例としては、水の4倍の粘度を持つエチレングリコール50%溶液が挙げられる。また、液体は、エチレングリコール、水銀等の−10℃以下でも凍結しない液体が望ましい。
尚、仮に液体が凍結しても第3の室4と後述する第2の室6が気体を保持することにより、室3、室2、室5、流量センサ22全体が破壊されることはない。更に、液体は、加圧変形しにくいものが望ましい。当業者であれば、上記の望ましい態様に合わせて、適宜液体を調製することが可能である。一方、アルコール等の揮発性液は不適である。
【0054】
第2の室6は、図3に示すように、筒状であり、該第2の室6の下方で管5と接続され、該第2の室6の上方で分析装置50と接続する結合部60と接続され、第2の空気を有する。第2の室6の下方には、管5から溢れた水が存在する。水は空気よりも重たいため、水は第2の室6の下方に位置し、第2の空気は少なくとも水の上方に位置する。つまり、分析装置50と接続されている第2の室6の上方には、水を有さず、第2の空気のみを有し、第2の室6から分析装置50側へ第2の空気が吐出する気体吐出部が、管5及び第3の室4に有する水よりも高い位置にある。その結果、水が確実に第2の空気を押し、水に押された第2の空気が、分析装置50側の試料又は試薬を混合部55へ移送することが可能である。従って、本発明の実施例に係る移送装置1は、分析装置50側に第2の空気が流れ、分析装置50側に水が流れないため、移送装置1内に有する水の量が減少しない。その結果、本発明の実施例に係る移送装置1は、水を移送装置1に補充する必要がなく、異物や不純物の混入、水漏れ等を簡易な構成で防ぐことが可能である。また、本発明の実施例に係る移送装置1は、水中に気泡が混入することを防ぐことが可能であり、仮に、水中に気泡が混入した場合であっても、気泡が第2の室6の上方に移動し第2の空気と混ざるため、水中に気泡が混入した状態が維持されない。尚、第2の室が有する気体は、空気に限定されないが、分析装置の試薬収容部が収容する試薬と試料収容部が収容する試薬とは反応しない気体が望ましい。
【0055】
また、本発明の実施例に係る移送装置1は、水の体積を、第3の空気の体積の0.5〜2倍にすることにより、安定した状態で、効率よく、短時間で、分析装置50における試料又は試薬を混合部55へ移送することが可能である。
【0056】
更に、本発明の実施例に係る移送装置1は、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出し、第3の空気、水、第2の空気が押される方向に、第3の室4、管5、第2の室6が位置する。
【0057】
次に、制御部21について説明する。制御部21は、CPU、メモリ等を含むコンピュータと、コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現することができる。吐出ポンプ2が第1の空気を吐出する量が小さい程、水の流速又は流量が小さくなり、水が第2の空気を押す量が小さくなるため、第2の空気が試料収容部51に収容されている試料や試薬収容部52に収容されている試薬を混合部55へ移送する量が小さくなる。一方、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出する量が大きい程、水の流速又は流量が大きくなり、水が第2の空気を押す量が大きくなるため、第2の空気が試料収容部51に収容されている試料や試薬収容部52に収容されている試薬を混合部55へ移送する量が大きくなる。吐出ポンプ2の気体量不足により、試料や試薬が混合部55へ移送されない問題が生じ、吐出ポンプ2の気体量過大により、試料と試薬が混合部55において混合される前に、試料や試薬が混合部55から分析部56まで移送される問題が生じる。そこで、本発明の実施例に係る移送装置1は、制御部21が、試料と試薬が第2の空気によって混合部55へ移送される量を制御し、試料と試薬を確実に混合部55へ移送することが可能である。具体的に説明すると、管5内に流量センサ22が設けられ、流量センサ22が管5内を流れる水の流速又は流量を検知する。そして、制御部21が流量センサ22から流速又は流量を取得し、流量センサ22が取得した流速又は流量が既定値を上回る場合は、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出する量を下げ、流量センサ22が取得した流速又は流量が既定値を下回る場合は、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出する量を上げる。その結果、本発明の実施例に係る移送装置1は、第2の空気を適切な量または速度で分析装置50における試料や試薬を混合部55まで移送することが可能である。
【0058】
吸引ポンプ23は、第2の空気が試料収容部51に収容されている試料又は試薬収容部52に収容されている試薬を混合部55へ移送した際、第2の空気を第2の室6に引き戻す。それに伴い、第2の室6に移動した水は、第1の室5及び第3の室4に引き戻される。その結果、本発明の実施例に係る移送装置1は、繰り返し、試料収容部51に収容されている試料と試薬収容部52に収容されている試薬とのうち少なくとも何れか一方を混合部55へ移送することが可能である。また、吸引ポンプ23は、分析装置50が行う一連の分析行程に対して、移送装置1が行う一連の移送行程が終了した際に、第2の空気を第2の室6に引き戻しても良い。尚、吸引ポンプ23は、吐出ポンプ2が吸い込む空気の方向を空気フィルタ9側から第3の室4側にバルブ(不図示)により切りかえることにより、吐出ポンプ2と同じポンプを用いることが可能である。また、本発明の実施例に係る移送装置1は、制御部21が、流量センサ22によって検知される流量又は流速に基づき、吸引ポンプ23が吸引する量を制御し、吸引する空気の量及び流速を調整する。
【0059】
また、第2の室6から分析装置50側へ第2の気体が吐出する気体吐出部と分析装置50の間に第4の気体を吸引可能な開閉部30を有しても良い。更に、開閉部30と吸引するための第4の気体の間に空気フィルタ31を配置すると良い。このようにすることで、吸引ポンプ23が、上記のような一連の移送工程が終了した際の第2の空気を第2の室6に引き戻す際に、分析装置50内などの使用された気体が使用前の第2の気体と混合することを防ぐことができる。第4の気体は、例えば、第2の気体と同様に、空気であるが、これに限定されるものではない。なお、第4の気体は、第1の気体あるいは第2の気体あるいは第3の気体と同じでも異なっても良いが、第2の気体と同じである方が好ましい。
【0060】
開閉部15は、第2の室6と試料収容部51を繋ぐ管24に設けられ、開閉部16は、第2の室6と試薬A収容部53を繋ぐ管25に設けられ、開閉部17は、第2の室6と試薬B収容部54を繋ぐ管26に設けられる。試料収容部51と試薬収容部52が更に複数設けられる場合は、各々の試料収容部又は試薬収容部と第2の室6を繋ぐ管に開閉部が設けられる。吐出ポンプ2が第1の空気を吐出し、圧力の加わった水が第2の空気を押した際に、開閉部が開かれている管に第2の空気が流れ、開状態の開閉部と繋がっている試料収容部51又は試薬収容部52に第2の空気が流れ、試料又は試薬を混合部55へ移送する。また、開閉部が閉状態の管には第2の空気が流れないため、閉状態の開閉部と繋がっている試料収容部51又は試薬収容部52に第2の空気が流れず、試料又は試薬が混合部55へ移送されない。従って、本発明の実施例に係る移送装置1は、第2の室6と各々の試料収容部51又は試薬収容部52を繋ぐ管61、64、65に開閉部15、16、17が設けられることにより、移送装置1の外部からの異物や不純物の混入を防ぎ、試料と試薬を各々独立に混合部55へ移送することが可能である。更に、本発明の実施例に係る移送装置1は、移送装置1側に開閉部15、16、17が設けられるため、分析装置50側に第2の空気が試料収容部51又は試薬収容部52へ流れるか遮断するかを調整するバルブ機構が不要となる。尚、開閉部14、15、16、17はバルブ等である。
【0061】
圧力解放部は、開閉部30が開状態であることにより、第2の室6内の圧力を開放することが可能である。その結果、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出し、第2の空気が試料収容部51に収容されている試料や試薬収容部52に収容されている試薬を混合部55へ移送した後に、第2の室6内が高圧であるため、開閉部30が開状態であることにより、第2の室6内の圧力が開放し、第2の室6内が安定するまでの時間や、第2の空気が試料収容部51に収容されている試料や試薬収容部52に収容されている試薬を混合部55へ移送停止する時間を短縮することが可能である。尚、開閉部30はバルブ等である。
【0062】
開閉制御部27は、CPU、メモリ等を含むコンピュータと、コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現することができる。開閉制御部27は、開閉部11から開閉
部20、及び開閉部30の開閉を制御する。開閉制御部27は、各々の開閉部の開閉を切りかえるタイミングを適正化することによって、試料、試薬A及び試薬Bを吐出する際の立ち上がり時間を短縮することが可能である。
【0063】
図6は、流量センサ69が検知した、時間と流速の関係を示すグラフである。図6に示す結果は、第3の室4及び第2の室6に内径13mmのものを用い、管5に内径1.0mmのものを用いたものである。図6のグラフに示す(1)は、管5に水を有さず、空気のみであり、分析装置50側に50μLの試薬Aを配置した場合の流量センサ69の流速モニタ結果である。(1)に示すように、測定開始から測定終了まで、流量センサ69が設けられた管内の流速は、約100μl/minから約120μl/minの間を上下する。図6のグラフに示す(2)は、管5に水を有さず、空気のみであり、分析装置50側に3mLの試薬Aを配置した場合の流量センサ69の流速モニタ結果である。(2)に示すように、測定開始から測定終了まで、流量センサ69が設けられた管内の流速は、約20μl/minから約120μl/minの間を上下しており、流速が不安定である。図6のグラフに示す(3)は、管5に水0.5mL、第3の室の空気0.5mL、第2の室の空気0.5mLを有し、吐出ポンプ2で第1の空気を吐出し、分析装置50側に300μLの試薬Aを配置した場合の流量センサ69の流速モニタ結果である。(3)に示すように、測定開始から約13秒までに160μl/minの流速まで上昇し、その後、測定終了まで160μl/minから170μl/minの間を維持しており、流速が安定している。以上の結果から、管5に水を有する場合の方が、管5に水を有さず空気のみである場合よりも、流速が安定する。従って、本発明の実施例に係る移送装置1は、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出し、第2の空気が分析装置50内の試薬及び試料を混合部55へ移送する際、第3の空気、水、第2の空気の順に第2の空気が押されるため、空気のみで第2の空気が押されることに比べ、流速を安定にし、脈流を低減させることが可能である。
【0064】
本発明の実施例に係る移送装置1は、管5及び流量センサ22が、第3の室4及び第2の室6より下部に位置する姿勢で使用される。仮に、管5及び流量センサ22が、第3の室4及び第2の室6より上部に位置する姿勢で使用されると、管5及び流量センサ22に混入した気泡が抜けずに流速精度が悪化する可能性がある。また、分析装置50は、試料を分析する際に決められている所定の方向を位置するように設置される。仮に、分析装置50が上下逆又は90度傾けて設置されると、重力で分析装置50内を溶液が移動してしまい、廃液が漏れてしまう可能性がある。尚、本発明の実施例に係る移送装置1は、分析装置50と接続する部分に全て開閉部が設置されているため、分析装置50内の溶液が該移送装置1側へ逆流することを防ぐ事が可能である。
【0065】
<移送行程の流れ>
次に、分析装置50に本発明の実施例に係る移送装置1を用いる際の移送行程について説明する。図7から図10は、本発明の実施例に係る移送装置1を用いた移送行程を示すフローチャートである。尚、ここで説明する移送行程は、試料が、免疫分析において固相に磁性粒子を用いて標識化された試薬と混合される。そして、免疫反応によって同じく標識化された磁性粒子と結合させる磁性粒子補足手段により、必要な物質のみを電気化学法、化学発光法等の化学的手段で補足し、電気的情報、化学的情報、物理的情報を分析するものとする。分析装置50が試料の所定情報を分析する初期条件は、試薬Aが磁性粒子を含む試薬であり、試薬Bが洗浄液、緩衝液、基質液の複数の特徴を有する試薬である。また、試薬Aが予め試薬挿入孔62から挿入され、試薬A収容部53に収容され、試薬Bが予め試薬挿入孔63から挿入され、試薬B収容部54に収容されているものとする。開閉部11から開閉部20、及び開閉部30が全て閉状態である。また、第3の室4及び管5は、少なくとも、全移送行程において第2の空気を押すために必要な水量を有する。以下、図3から図5を用いて説明する。
【0066】
先ず、第1の行程(S1)として、試料が試料挿入孔59から適量分注入される。分析装置50と移送装置1が結合部60で結合され、接続される。第1の行程(S1)が完了すると、第2の行程(S2)へ進む。第2の行程(S2)として、開閉制御部27が開閉部11、開閉部13、開閉部15、開閉部18を開状態とする。吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押し、第2の空気が分析装置50内の試料収容部51に流れる。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吐出ポンプ2が吐出する量が制御され、第1の空気の流量又は流速が調整され、所定量の試料が混合部55へ移送される。次に、吐出ポンプ2の空気の吐出が停止され、開閉制御部27が開閉部15を閉状態とする。第2の行程(S2)が完了すると、第3の行程(S3)へ進む。
【0067】
次に、第3の行程(S3)として、開閉制御部27が開閉部16を開状態とする。吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押し、第2の空気が分析装置50内の試薬A収容部53に流れる。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吐出ポンプ2が吐出する量が制御され、第1の空気の流量又は流速が調整され、所定量の試薬Aが混合部55へ移送される。吐出ポンプ2の空気の吐出が停止され、開閉制御部27が開閉部16を閉状態とする。ここで、試料と試薬Aの液性により交互に混合部55へ送液を行った方が十分に混合される場合は、第2の行程(S2)と第3の行程(S3)を交互に繰り返し、混合部55での試料と試薬Aの混合を促進させてもよい。第3の行程(S3)が完了すると、第4の行程(S4)へ進む。
【0068】
次に、第4の行程(S4)として、開閉制御部27が開閉部14を開状態とする。吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押し、第2の空気が管29、67を通り混合部55の下方から流れる。そして、混合部55内の試料と試薬Aがバブリング攪拌される(図4を参照)。混合部55の上方に設けられたエアー抜き孔1から混合部55内の気泡が抜ける。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吐出ポンプ2が吐出する量が制御され、第1の空気の流量又は流速が調整され、所定量の第2の空気を混合部55へ移送させ、バブリング攪拌後、吐出ポンプ2の空気の吐出が停止される。試料と試薬Aが反応するために、所定時間放置される。ここで、試料と試薬Aの反応を促進する為に放置中もバブリング攪拌をさせてもよい。第4の行程(S4)が完了すると、第5の行程(S5)へ進む。
【0069】
次に、第5の行程(S5)として、開閉制御部27が開閉部14と開閉部18を閉状態とし、開閉部17と開閉部19を開状態とする。吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押し、第2の空気が分析装置50の試薬B収容部54に流れる。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吐出ポンプ2が吐出する量が制御され、第1の空気の流量又は流速が調整され、所定量の試薬Bが混合部55へ移送され、混合部55内の試料と試薬Aの混合液を分析部56に押し出す。所定量の試薬Bが流れた後、吐出ポンプ2の空気の吐出が停止される。第5の行程(S5)が完了すると、第6の行程(S6)へ進む。
【0070】
次に、第6の行程(S6)として、分析部56に押し出された試料と試薬Aの混合液から、標識捕捉機構57により定量分析に必要な標識物質を捕捉する。開閉制御部27が開閉部17と開閉部19を閉状態とし、開閉部14と開閉部20を開状態とする。標識物質が捕捉された状態で、吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押
し、第2の空気が管29、67を通って混合部55を介して分析部56へ流れる。そして、分析部56の不要な溶液を廃液貯蔵部58へ排出し、分析部56内を空気に置換する。空気置換をすることによって、分析部56内の洗浄効率が向上する。吐出ポンプ2の空気の吐出が停止される。第6の行程(S6)が完了すると、第7の行程(S7)へ進む。
【0071】
次に、第7の行程(S7)として、開閉制御部27が開閉部14、開閉部20を閉状態とし、開閉部17と開閉部19を開状態とする。吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押し、第2の空気が試薬B収容部54に流れ、試薬Bが混合部55を介して、分析部56に移送される。尚、試薬Bが分析部56に移送される際に、試薬に混入した気泡が分析部56に残留することを避けるために、分析部56の上方で接続された管68のエアー抜き孔2から不要な空気が排出される。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吐出ポンプ2が吐出する量が制御され、第1の空気の流量又は流速が調整され、所定量の試薬Bが分析部56に移送された後、吐出ポンプ2の空気の吐出が停止される。次に、開閉制御部27が開閉部30を開状態とし、第2の室6の空気と試薬B収納部54の液間の高圧状態を開放し、短時間で試薬Bの送液を停止させる。なお、分析部56で分析される試料の所定情報、試料と試薬の混合溶液の性質によっては、吐出ポンプ2が停止された後に、標識捕捉機構57が標識物質の捕捉を解除した方が好適な場合や、標識捕捉機構57により標識物質が捕捉された状態で、吐出ポンプ2が停止されずに試薬Bが分析部56に移送され続けた方が好適な場合もある。第7の行程(S7)が完了すると、第8の行程(S8)へ進む。
【0072】
次に、第8の行程(S8)として、分析部56にて標識物質の電気的情報、化学的情報、物理的情報を分析する。分析部56で分析する方法によっては、吐出ポンプ2が第1の空気を吐出し続け、試薬Bが分析部56に移送され続けてもよい。第8の行程(S8)が完了すると、第9の行程(S9)へ進む。
【0073】
次に、第9の行程(S9)として、開閉制御部27が開閉部19、開閉部30を閉状態とし、開閉部20を開状態とする。吐出ポンプ2が第1の空気を第3の室4に向かって吐出し、第1の空気に押された第3の空気が水を押し、第3の空気によって押された水が第2の空気を押し、第2の空気が試薬B収容部54に流れ、試薬Bが混合部55と分析部56を介して廃液貯蔵部58に移送されることにより、分析部56で分析が終わった試料と試薬の混合溶液を廃液貯蔵部58に排出する。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吐出ポンプ2が吐出する量が制御され、第1の空気の流量又は流速が調整され、混合溶液が廃液貯蔵部58へ排出される流速又は流量が調整される。廃液貯蔵部58に吸収パッドが設置される場合は、該吸収パッドに混合溶液を吸収させる。尚、予め、使用した溶液量などに合わせて、廃液に必要な流量を設定しておけば、流量センサ69を設置しなくても良い。第9の行程(S9)が完了すると、第10の行程(S10)へ進む。
【0074】
次に、第10の行程(S10)として、開閉制御部27が開閉部11、開閉部13、開閉部17、開閉部20を閉状態とし、開閉部12、開閉部30を開状態とする。吸引ポンプ23が第3の室4に向かって空気フィルタ31、開閉部30を介して空気を吸引する。流量センサ22が検知する流量又は流速に基づき、制御部21によって吸引ポンプ23が吸引する量が制御され、吸引する空気の流量又は流速が調整され、分析装置50側に流れた第2の空気が第2の室6に戻るまで、吸引ポンプ23が所定量を吸引する。これに伴い、第2の室6に移動した水が第1の室5及び第3の室4に移動される。吸引ポンプ23の空気の吐出が停止される。開閉制御部27が全ての開閉部を閉状態とし、移送行程が終了する。
【0075】
以上により、本発明の実施例に係る移送装置は、水を補充する必要がなく、脈流を低減させ、省電力化が可能な、携帯型分析装置内の試薬及び試料を混合部へ移送する移送装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・移送装置
2・・・吐出ポンプ
4・・・第3の室
5・・・管(第1の室)
6・・・第2の室
21・・・制御部
22・・・流量センサ
23・・・吸引ポンプ
27・・・開閉制御部
28・・・圧力解放部
50・・・分析装置
51・・・試料収容部
53・・・試薬A収容部
54・・・試薬B収容部
55・・・混合部
56・・・分析部
57・・・標識捕捉機構
58・・・廃液貯蔵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の気体を吐出する気体吐出部と、
液体と、第2の気体とを有する室であって、前記気体吐出部が該液体に向かって前記第1の気体を吐出することにより、該液体が該第2の気体を押し、該液体に押された該第2の気体が吐出する室と、を備え、
前記室は、所定の物質を収容する収容部と接続され、
前記室から吐出した前記第2の気体によって前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送する、
移送装置。
【請求項2】
前記液体が移動する状態を流量検知部により監視し該第2の気体の吐出量または吐出速度を調節する制御部を、更に備える、
請求項1に記載の移送装置。
【請求項3】
前記室は、
前記気体吐出部と接続されて前記液体を有する第3の室と、
前記第3の室と接続されて前記液体を有する第1の室と、
前記第1の室と前記収容部と接続されて前記第2の気体を有する第2の室と、を有し、
前記気体吐出部から前記第3の室へ前記第1の気体が導入される気体導入部分が、前記第1の室及び前記第3の室に有する前記液体部分よりも高い位置にある、
請求項1又は2に記載の移送装置。
【請求項4】
前記第2の室は、前記第2の気体が吐出する第2の気体吐出部を有し、
前記第2の気体吐出部は、前記第1の室及び前記第3の室に有する前記液体部分よりも高い位置にある、
請求項3に記載の移送装置。
【請求項5】
前記第1の室と前記流量検知部が前記第3の室及び前記第2の室よりも低い位置にある、
請求項3又は4に記載の移送装置。
【請求項6】
前記第1の室と前記第2の室と前記第3の室は、筒状であり、
前記第1の室の筒の径が、前記第3の室の筒の径より小さい、
請求項3から5の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項7】
前記第2の室と前記第3の室は、筒状であり、該筒の径が5mm以上である、
請求項3から5の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項8】
前記収容部は、複数設けられ、
前記第2の室と前記複数の収容部との間に各々設けられ、前記第2の気体が該収容部へ流れないように遮断自在な開閉部と、を更に備える、
請求項3から7の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項9】
前記開閉部の開閉を制御する開閉制御部と、を更に備える、
請求項8に記載の移送装置。
【請求項10】
前記気体吐出部は、空気を吸引して吐出するポンプであり、
前記ポンプが空気を吸引する吸引側に該空気の塵埃を取り除く空気フィルタを更に備える、
請求項1から9の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項11】
前記第2の気体が前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送した後、前記第2の室内の圧力を開放する圧力解放部と、を更に備える、
請求項3から10の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項12】
前記第3の室は、前記気体吐出部が該第3の室に向かって前記第1の気体を吐出することにより、前記第1の気体に押され前記液体を押す第3の気体を更に有し、
前記液体の体積は、前記第2の気体と前記第3の気体とのうち少なくとも何れか一方の体積の0.5〜2倍である、
請求項3から11の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項13】
前記気体吐出部は、
ダイアフラム式ポンプである、
請求項1から12の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項14】
前記第2の気体が前記所定の物質を前記収容部の内部から外部へ移送した後、前記液体を前記第1の室へ引き戻す気体吸引部を更に備える、
請求項3から13の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項15】
前記移送装置は、試薬と混合した試料から所定情報を分析する分析装置に用いられ、
前記所定の物質は、前記試料と、前記試薬と、前記試薬と混合された前記試料とのうち何れか一方を含み、
前記収容部は、前記試料を収容する試料収容部と、前記試薬を収容する試薬収容部と、該試料と該試薬を混合する混合部とのうち何れか一方を含む、
請求項1から14の何れか一項に記載の移送装置。
【請求項16】
第1の気体を吐出し、該第1の気体が液体を押し、該第1の気体に押された該液体が第2の気体を押し、該液体に押された該第2の気体が所定の物質を収容する収容部の内部から外部へ該所定物質を移送する、
移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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