説明

稚貝計量分配方法及び稚貝計量分配装置

【課題】 稚貝を自動で正確に、かつ、効率よく計量し、育成篭に分配することを可能とする方法及び装置を提供する。
【解決手段】 本方法は、稚貝を水とともに稚貝供給部から稚貝堆積部まで移動させ、稚貝堆積部に堆積した稚貝の少なくとも一部を複数の搬送容器内に移動させて複数の第1の稚貝群に分配し、分配された複数の第1の稚貝群を複数の搬送容器を用いて計量容器への投入部まで搬送し、投入部まで搬送された複数の第1の稚貝群を水とともに搬送容器から計量容器内に移動させて各々が所定量からなる複数の第2の稚貝群に分配し、複数の第2の稚貝群を水とともに計量容器から育成容器に排出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稚貝を計量するための方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、所定量の稚貝を正確に計量し、計量された稚貝を育成容器に連続的に収容するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝の養殖漁業においては、出荷までに、採苗、中間育成、及び本養殖の作業が行われる。採苗は稚貝を採取する作業であり、採苗ための採苗器が、5〜6月に養殖施設において海中に垂下される。用いられる採苗器は地域によって異なるが、例えば北海道のオホーツク海におけるホタテ貝養殖では、目合いの異なるネトロンネットを重ねて構成されたものが用いられている。採苗器で数mmに成長した稚貝は、7〜8月に採取される。採取された稚貝は、ネット状の育成籠に収容されて海中に垂下される。育成篭は、通常、パールネット篭(いわゆる、座布団篭と呼ばれる)又は丸篭が用いられる。育成篭は、通常、複数個が連続的につなげられて用いられる。この作業は9〜10月までに数回行われ、これを中間育成という。中間育成された稚貝は、翌年の3〜6月に本養殖が行われる。本養殖は、貝の耳状部に穴をあけ、その穴に通した紐によってロープに固定し、ロープごと養殖施設において海中に垂下することによって行われる。これは耳づり方式と呼ばれる。本養殖は、丸篭を用いて行われる場合もある。成長した貝は、12〜4月にかけて出荷される。
【0003】
採苗器から採取された稚貝は、中間育成において育成篭に収容されて海中に垂下される(この作業は、「分散作業」といわれる)が、稚貝の成長に応じて1つの育成篭に収容される稚貝の数を変えることが必要であるため、分散作業は、通常、中間育成の期間を通して2回〜3回行われる。育成篭に収容される稚貝の個数は、例えば、当初は1つの育成篭あたり80〜100個程度であり、最終的には1つの育成篭あたり20〜30個程度である。本養殖が丸篭を用いて行われる場合には、中間育成を終えた稚貝をさらに1つの育成篭あたり10個程度収容する作業が行われる。
【0004】
稚貝を育成篭に収容する作業は、従来、養殖業者の手作業によって行われてきた。通常、この作業は、以下のように行われる。まず、採苗器から採取された稚貝を、海水を入れたタライなどの容器に収容する。次に、計量容器によって、稚貝を1つの計量容器あたり例えば80〜100個となるようにタライなどの容器からすくい取る。計量容器には稚貝を通さない程度の大きさの穴が設けられており、稚貝をすくい取ったときに、計量容器に設けられた穴から海水が排出される。最後に、1つの計量容器によってすくい取った稚貝を、1つの育成篭に投入する。すべての稚貝について、この作業を繰り返す。この作業によって育成篭に投入することが必要な稚貝の個数は極めて多く、例えばオホーツク海沿岸における養殖の場合には1シーズンで1,000万個以上になることもある。したがって、例えば採苗された1,000万個の稚貝を1つの育成篭あたり100個に分散する場合は、上述の手作業が、単純計算で100,000回程度繰り返されることになる。
【0005】
このように大量の稚貝を手作業で育成篭に投入する作業は、以下のように、極めて煩雑であるため稚貝を計量分配する作業の効率が低下するという課題が存在する。稚貝は、採苗器から採取されて最初に育成篭に収容される際には、殻長が10mm以下である。その後成長して中間育成が終了する時点でも、稚貝の殻長は25mm程度である。本発明者らの調査によれば、稚貝の大きさ及び重さは、例えば殻長約9mmの稚貝で厚さ約1.8mm、重さ約0.1gであり、殻長15mmの稚貝で厚さ約3.2mm、重さ約0.3gである。このように、中間育成の段階では小さく極めて軽い稚貝は、水の表面張力の影響や稚貝の触手によって、あらゆる場所に容易に付着するため、取り扱いに手間がかかる。例えば、容器に入った稚貝を計量容器を用いて計量する際には、タライなどの容器に入れられた稚貝を計量容器ですくったときに作業者の手や計量容器に多くの稚貝が付着するため、付着した稚貝をその都度水で流さなければならない。また、一旦付着した稚貝は、付着後に水を流しても容易に剥がれないことも多い。さらに、稚貝を計量容器から育成篭に投入する際には、計量容器の内部に稚貝が付着して育成篭に投入できないことがあり、付着した稚貝を水で流さなければ正確な計量が不可能となる場合がある。
【0006】
こうした手作業による計量分配作業の煩雑さを軽減するための従来技術として、これまでに以下に示す技術が提案されてきた。特許文献1及び特許文献2は、所定数の稚貝を順次分配することを目的とした稚貝分配用ホッパ装置及び稚貝分配機を開示する。特許文献1の稚貝分配用ホッパ装置では、ホッパ本体内を満たす海水とともに収容されている稚貝を、搬送ベルトに着脱自在に取り付けられている稚貝計量カップに取り込み、搬送ベルト上端から案内装置を介して稚貝を落下させることによって、養殖篭内に所定量の稚貝を収容する。特許文献2の稚貝分配機は、海水とともに稚貝が収容されたホッパと該ホッパに一部が突入したケーシングとを有し、該ケーシング内が容量調整可能な複数のバケットによって構成されている。ケーシング内部は、海水で満たされている。この装置においては、ホッパとケーシング内のバケットとが開口を介して連通しており、稚貝は、この開口からバケット内に海水とともに取り込まれる。稚貝が収容されたバケットは、ケーシング内を円周方向に進み、ケーシングに設けられたシュート接続口から排出される。稚貝がシュート接続口から排出されるときには、ケーシング内に充満した海水がシュート接続口から流出して、稚貝を押し流すように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−31320号明細書
【特許文献2】特開平8−12091号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの従来技術には、以下のような課題が存在する。
特許文献1の技術においては、計量カップに取り込まれた稚貝は、上方から自然落下によってシュート内に投入される。しかしながら、上述のように小さく極めて軽い稚貝は表面張力の影響や触手の作用によって計量カップ内に容易に付着し、一旦付着した稚貝は計量カップの開口を下に向けただけでは簡単には剥がれないため、計量された稚貝の一部が計量カップ内に残ってシュートに落下しない可能性がある。特許文献1の図1には、シャワーからシート内に向けられた海水の噴射が記載されているが、この噴射は、計量カップからシュート内に落下した稚貝のぬめりによって生じるシュート内部の詰まりや汚染等を防止するためのものであり、計量カップ内の稚貝を計量カップから排出させるためのものではない。
【0009】
また、本技術においては、稚貝はホッパ内に海水とともに収容されており、海水中で計量カップに取り込まれ、その後、計量カップの開口縁部と当接する掻き取り手段によって所定量に計量するとしている。しかしながら、海水中を移動する計量カップによって稚貝を取り込む際に、稚貝が海水とともにカップの上部から逃げる可能性がある。また、本技術においては、稚貝を計量するための計量カップによって稚貝をすくい、その稚貝がそのままシュートユニットから育成篭に投入される構成となっている。したがって、計量カップによってすくい取られた稚貝の量が所定量に満たない場合でも、その量がその後の工程で修正されることなく養殖篭に投入される。したがって、養殖篭に投入される稚貝の量が安定せず、量を手作業で補正しようとすると作業効率が低下する可能性がある。なお、ホッパ内においては稚貝が海水中に収容されているが、このように静止液体中に収容された稚貝は、酸素を求めて移動し、その際に稚貝同士の噛み合いが生じる可能性がある。稚貝同士の噛み合いが生じた場合は、複数の稚貝が互いに塊状に集合するため正確な計量ができなくなるとともに、噛み合いに起因する稚貝の損傷が発生するおそれがある。
【0010】
特許文献2の技術においては、稚貝は、ホッパとケーシングとを連通する開口から海水とともに回転するバケット内に取り込まれるため、バケットごとに一定の量とはならない可能性がある。それにもかかわらず、稚貝は、最初にバケットに取り込まれた量のままシュートまで搬送されて育成篭に投入され、バケットに取り込まれた稚貝の量を後に補正する機構は存在しない。したがって、特許文献1の技術同様、養殖篭に投入される稚貝の量が安定せず、作業効率が低下する可能性がある。また、稚貝をバケットに取り入れるためのホッパの開口と、ケーシング内で回転するバケットの第1仕切部材の第1壁との間に稚貝が挟まれて損傷するおそれがある。
【0011】
本発明は、上述の従来技術の課題を解決して、稚貝を自動で正確かつ効率よく計量し育成篭に分配することを可能とする方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、本発明に係る稚貝計量分配方法及び装置によって達成される。すなわち、本発明に係る稚貝計量分配方法及び装置は、堆積した稚貝から一定の量の稚貝を取り入れて搬送するための容器と、搬送された稚貝を計量するための容器とを別の構成とし、2段階のステップを経て稚貝を計量することによって、より正確な計量が可能となる。ただし、上述したような稚貝の取り扱いの困難性を解消する必要があるため、複数の段階のステップを経て計量することは、作業を煩雑にするおそれがある。そこで、本発明においては、稚貝の自動計量分配において大きな課題であった、稚貝が容器に付着することによる取り扱いの煩雑さを、稚貝が供給され計量されて育成容器に分配されるまでの工程において稚貝を移動させる必要がある場合には必ず水の流れを介在させることによって克服した。すなわち、本発明に係る方法及び装置は、稚貝の取り扱いの煩雑さと正確な計量の困難さとを同時に解決するものである。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、稚貝供給部から供給される稚貝から所定量の稚貝を連続的に計量し、計量された所定量の稚貝を育成容器に順次収容するための稚貝計量分配方法を提供する。本方法は、稚貝を水とともに稚貝供給部から稚貝堆積部まで移動させ、稚貝堆積部において水と稚貝とを分離することによって稚貝を堆積させる堆積ステップと、稚貝堆積部に堆積した稚貝を複数の第1の稚貝群に分配する分配ステップと、複数の第1の稚貝群を水又は海水とともに移動させて、各々が所定量からなる複数の第2の稚貝群に分配する計量ステップと、複数の第2の稚貝群を水又は海水とともに移動させて、複数の育成容器に排出する排出ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
本方法は、分配された複数の第1の稚貝群を計量ステップにおいて複数の第2の稚貝群に分配するための位置まで搬送する第1の稚貝群搬送ステップをさらに含むことが好ましい。この第1の稚貝群搬送ステップは、分配された複数の第1の稚貝群と水とを分離するステップを含むことが好ましい。また本方法は、分配された前記複数の第2の稚貝群を前記排出ステップにおいて前記複数の育成容器に排出するための位置まで搬送する第2の稚貝群搬送ステップをさらに含むことが好ましい。この第2の稚貝群搬送ステップは、分配された複数の第2の稚貝群と水とを分離するステップを含むことが好ましい。
【0015】
本方法においては、分配ステップにおいて分配される複数の第1の稚貝群の各々の量は、計量されるべき所定量より少ないことが好ましい。本方法においては、複数の第2の稚貝群として分配されなかった稚貝堆積部に堆積した稚貝の一部を水又は海水と共に稚貝堆積部に循環させるステップをさらに含むことが好ましい。
【0016】
本方法においては、排出ステップにおいて複数の第2の稚貝群が計量容器から複数の育成容器に排出されることは間欠的に行われることが好ましい。複数の育成容器への排出が停止されたときには、分配ステップにおける分配及び計量ステップにおける分配のいずれか又は両方が停止されることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、稚貝供給部から供給される稚貝から所定量の稚貝を連続的に計量し、計量された所定量の稚貝を育成容器に順次収容するための稚貝計量分配装置を提供するものである。本装置は、水又は海水とともに稚貝を内部に取り入れるための第1の開口部と計量された稚貝を内部から搬出するための第2の開口部とを有する筐体と、水又は海水を排出するための1つ又は複数の排水口を有し、筐体の内部において第1の開口部の下方に位置することによって第1の開口部から水又は海水とともに筐体の内部に取り入れられた稚貝が堆積する、稚貝堆積部と、各々が1つ又は複数の排水口を有し、稚貝堆積部において堆積した稚貝のうちの少なくとも一部を収容することによって稚貝を複数の第1の稚貝群に分配して搬送するための複数の搬送容器と、複数の搬送容器から複数の第1の稚貝群が排出される際に、複数の搬送容器内に水又は海水を供給するための第1の注水口と、各々が1つ又は複数の排水口を有し、複数の搬送容器から水又は海水とともに排出された複数の第1の稚貝群の少なくとも一部を収容することによって複数の第1の稚貝群を各々が所定量からなる複数の第2の稚貝群に分配するための複数の計量容器と、複数の計量容器を第2の開口部を通して筐体の外部に搬送するための計量容器搬送装置と、複数の計量容器から複数の第2の稚貝群が排出される際に、複数の計量容器内に水又は海水を供給するための第2の注水口と、複数の計量容器から水とともに排出された複数の第2の稚貝群を複数の育成容器に案内するための案内装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
本装置においては、筐体は、水平軸線を中心として回転可能な円筒形状を有することが好ましい。この場合には、複数の搬送容器は、筐体の内壁面に固定又は一体化されて、筐体の回転によって水平軸線を中心とする円の円周上を移動するように構成されることが好ましい。稚貝堆積部において複数の搬送容器に収容された複数の第1の稚貝群は、円周の上部に達したときに複数の搬送容器から複数の計量容器に向けて排出される。
【0019】
本装置においては、複数の計量容器の各々と計量容器搬送装置とは、一端が複数の計量容器の各々に固定され、他端が計量容器搬送装置に固定された連結手段を介して連結されていることが好ましい。
【0020】
本装置はさらに、複数の搬送容器から排出された複数の第1の稚貝群のうち複数の計量容器に収容されなかった稚貝を稚貝堆積部に戻すための水又は海水を放出する1つ又は複数の第3の注水口をさらに備えることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、稚貝が供給容器から本装置に投入されてから、投入された稚貝が分配されて計量され、育成容器に投入されるまでの間において、搬送容器と計量容器とが別の構成として設けられる。このように構成することによって、計量されるべき量の稚貝が常に計量容器に収容され、正確な計量が可能となる。また、1つの実施形態において、1つの搬送容器に収容される稚貝の量を1つの計量容器に収容される稚貝の量より少なくし、複数の搬送容器のうちの幾つかに収容された稚貝によって1つの計量容器を満たすようにすることによって、搬送容器から排出された稚貝のうち計量容器に収容されない稚貝を少なくすることができるため、より効率的な稚貝の計量が可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、稚貝は、供給容器から水の流れとともに装置の筐体内部における稚貝堆積部に供給される。稚貝堆積部において搬送容器内に収容され、計量容器への投入部まで搬送された稚貝は、水の流れとともに搬送容器から計量容器内に収容される。さらに、計量容器に収容され、案内装置への投入部まで搬送された稚貝は、水の流れとともに計量容器から案内装置を経て育成容器に排出される。このように、少なくとも稚貝がある容器から別の容器に移し替えられるとき、又は、少なくとも稚貝の位置を移動させるときには、稚貝の移動に伴って常に水の流れが存在する。したがって、本発明の方法及び装置によれば、稚貝が容器の壁に付着することを防止することができるため、計量の正確性が向上し、作業の効率が高まる。
【0023】
本発明によれば、稚貝堆積部に堆積した稚貝は、稚貝の供給と同時に流れ込んだ水が稚貝堆積部に設けられた1つ又は複数の排水口から流出することによって、水と分離される。また、搬送容器によって搬送されるときには、搬送容器に設けられた1つ又は複数の排水口から水が流出する。さらに、計量容器に稚貝が投入されるときには、稚貝と同時に流れ込んだ水が計量容器に設けられた1つ又は複数の排水口から流出する。このように、筐体、搬送容器、及び計量容器のそれぞれに水の排水口を設けることによって容器から水が排出され、容器の内容積すべてを稚貝の収容に利用できるため、1つの搬送容器が搬送する稚貝の量をより多くすることができ作業効率が向上するとともに、正確な計量が可能となる。
【0024】
また、本発明によれば、搬送容器から計量容器に投入された稚貝のうち計量容器に収容されなかった稚貝は、水の流れとともに筐体の稚貝堆積部に戻り、再び搬送容器によって計量容器への投入部まで搬送される。このような構成とすることによって、稚貝の供給容器から供給された稚貝は、短時間で必ずそのすべてが計量され、育成容器に投入されることになる。したがって、稚貝の生育に悪影響を及ぼす可能性が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る稚貝分配計量装置の外観図である。
【図2】本発明の1つの実施形態に係る稚貝分配計量装置の内部の構造を表す図である。
【図3】本発明の1つの実施形態に係る稚貝分配計量装置の搬送容器を表す図である。
【図4】本発明の1つの実施形態に係る稚貝分配計量装置の計量容器及び無端コンベアを表す図である。
【図5】本発明の1つの実施形態に係る稚貝分配計量装置の計量容器と無端コンベアとの連結部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の1つの実施形態に係る稚貝計量分配装置を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の1つの実施形態に係る稚貝計量分配装置1の外観図であり、図2は、装置1の内部の構成が分かるように示した図である。稚貝計量分配装置1は、上部から稚貝H1が投入される稚貝投入部20と、下部に稚貝H1の堆積部35を含む筐体30と、稚貝堆積部35に堆積した稚貝H1のうちの一部の稚貝H2を各々が収容して搬送する複数の搬送容器40と、複数の搬送容器40の各々によって搬送された稚貝H2のうちの少なくとも一部の稚貝H3を収容する複数の計量容器50と、複数の計量容器50を順次搬送する無端コンベア60と、計量容器50から落下する稚貝H4を育成容器70に案内する案内装置65と、装置1の各所において用いられる水又は海水等の適切な液体(以下「水」という。)を供給するための注水ユニット80と、これらの装置を載置する架台90とを備える。
【0027】
筐体30は、稚貝投入部20から水とともに稚貝H1を取り入れるための第1の開口部31と、計量された稚貝が収容された計量容器50を筐体30の外に搬出するための第2の開口部32とを有する。筐体30は、支持体(例えば、回転するローラ97)により架台90上に支持され、チェーンなどの駆動部材を介して筐体30の外部に設けられたモータ100と連結されており、モータ100の駆動力によって水平軸線30Aを中心として回転可能に構成されている。筐体30の回転、注水等のオン/オフ、無端コンベア60の駆動を始めとする装置1の動作は、制御ボックス95の各種スイッチによって行われる。筐体30は、図1(b)に示されるように、水平軸線30Aと直交する断面の円の直径が、第1の開口部31を有する端部から筐体30の中央部に向かって徐々に大きくなり、概ね筐体30の中央部で最大になり、そこから第2の開口部32を有する端部に向かって徐々に小さくなる円筒形状を有する。回転可能な筐体30をこうした形状にすることにより、第1の開口部31から取り入れられた稚貝及び後述されるように計量容器50に入りきらなかった稚貝は、筐体30の回転に伴い筐体30の傾斜した内壁面に沿って水とともに下方に移動し、最終的には必ず、直径が最大となる中央部付近の下部に堆積することになる。この位置が、稚貝堆積部35である。
【0028】
稚貝H1が投入される稚貝投入部20の下部には、複数のホース89のうちの1つによって注水ユニット80のヘッダ81とつながれた第1の注水口82が設けられている。注水口82からは、ヘッダ81から送られた水が稚貝投入部20の内部に供給される。供給された水は、稚貝投入部20から第1の開口部31を通り、筐体30の傾斜した内壁面に沿って、第1の開口部31より低い場所に位置する稚貝堆積部35に達する。この水の流れによって、稚貝投入部20内に投入された稚貝H1は、稚貝投入部20及び筐体30の内壁面に付着することなく稚貝堆積部35まで移動する。
【0029】
筐体30の概ね中央部、すなわち水平軸線30Aと直交する断面の円の直径が最大となる部分には、図2に示されるように、その円周全体にわたって、筐体30の内壁から凹んだ凹部36が形成されている。図3には、凹部36の拡大図が示される。筐体30の外側からみると、凹部36の位置する部分は、図1(b)に示されるように外壁から外側に突出している。筐体30に凹部36を設けたことによって、稚貝が筐体30内の一定の位置に堆積しやすくなる。凹部36の形状は、本実施形態においては図3に示されるように断面コの字状であるが、これに限定されるものではい。
【0030】
図3に示されるように、凹部36の面36´には、筐体30の外部と連通する1つ又は複数の排水口37が設けられる。凹部36に設けられた排水口37は、筐体30の稚貝堆積部35に稚貝H1とともに移動してきた水を筐体30の外部に排出する排出経路を構成し、凹部36は、稚貝堆積部35の一部を構成する。このように構成することにより、稚貝堆積部35において稚貝と水とを分離して稚貝のみを効率的に堆積させることができる。凹部36の外面の外側には、少なくとも凹部36の幅より広い幅のカバー75を設けることが好ましい。カバー75は、凹部36の排水口37から筐体30の外に排出された水が周囲に飛び散らないようにする効果を有する。
【0031】
凹部36には、図3に示されるように、稚貝堆積部35に堆積した稚貝H1のうちの少なくとも一部の稚貝H2を収容して順次搬送する、カップ状の複数の搬送容器40が一定間隔で設けられている。搬送容器40が凹部36内に設けられることによって、稚貝堆積部35において凹部36内に稚貝が堆積するため、稚貝堆積部35を通過する搬送容器40が稚貝を収容しやすくなり、その結果、効率的な稚貝の搬送が可能となる。搬送容器40の数は、特に限定されるものではない。搬送容器40には、1つ又は複数の排水口43が設けられており、搬送容器40内に入った水はこの排水口43から排出することができる。したがって、1つの搬送容器40あたりの稚貝の搬送量をより多くすることが可能となる。排水口43は、図3においては搬送容器40の一部にのみ設けられているが、搬送容器の他の面にも設けてもよい。搬送容器40の容積は、搬送容器40の各々に収容される稚貝H2の量が、後述される計量容器50の各々に収容される稚貝H3の量より少なくなるように設定されることが好ましい。このように設定することによって、搬送容器40から排出された稚貝H2のうち計量容器50に収容されない稚貝を少なくすることができるため、効率的な稚貝の計量が可能となる。搬送容器40は、図3に示されるように横断面が扇型の形状を有するが、これに限定されるものではなく、稚貝堆積部35から稚貝H2を収容し、収容した稚貝を計量容器50への投入部まで搬送するのに適した形状であればよい。
【0032】
本実施形態においては、複数の搬送容器40は、凹部36の排水口37が設けられた面36´、及び/又は、凹部36の側面36´´に固定されており、筐体30が水平軸線30Aを中心として回転することによって、水平軸線30Aを中心とする円の円周上を移動する。本発明の別の実施形態においては、複数の搬送容器40が筐体30の内壁に沿って筐体30とは独立に回転するように構成することもできる。例えば、凹部36の面36´の幅と概ね同一の幅を有し、筐体30とは独立に水平軸線30Aを中心として回転する帯状リングを凹部36の相当部位に設け、この帯状リングの内壁面に複数の搬送容器40を固定するようにしてもよい。このような構成の場合には、筐体30を回転させずに、複数の搬送容器40が設けられたこの帯状リングを回転させることによって、筐体30の稚貝堆積部35に堆積した稚貝H1を搬送容器40に収容することができる。ただし、このように帯状リングと筐体30とが独立に回転する構成とすると、両者の摺動部に稚貝が挟まって損傷するおそれがある。したがって、搬送容器40は、本実施形態のように、凹部36に固定又は一体化してこれらとともに回転するように構成されることが好ましい。
【0033】
複数の搬送容器40によって搬送された稚貝H2は、複数の搬送容器40の各々が筐体30内部において上部に達したときに、複数の搬送容器40の各々から、後述する案内部33に向かって落下する。カバー75の最上部には、ホース89の1つによって注水ユニット80のヘッダ81とつながれた第2の注水口83が設けられる。注水口83からは、ヘッダ81から送られた水が供給される。注水口83から供給された水は、凹部36の排水口37及び筐体30内部において上部に達した搬送容器40の各々の排水口43を通って、搬送容器40の内部に入る。この水によって、搬送容器40内の稚貝H2は、搬送容器40が上部に達したときに搬送容器40の内部に付着して残ることなく、排出される。
【0034】
搬送容器40と計量容器50との間の稚貝落下経路の途中には、図2(a)〜(c)に示されるように、上部に達した数個の搬送容器40から排出された稚貝を計量容器50の内部に効率的に案内するために、上部及び下部に開口を有し上部の開口が下部の開口より大きくなるように形成された案内部33が設けられる。案内部33をこのような形状としても、上述のように搬送容器40の各々の容量が計量容器50の各々の容量より小さく設定されており、数個の搬送容器40の稚貝によって1つの計量容器50が満たされるようになっているため、搬送容器40から排出された稚貝が案内部33に詰まることはない。
【0035】
装置1には、筐体30の水平軸線30Aに沿って、筐体30内部から第2の開口部32を通り筐体30の外部まで伸びる計量容器搬送装置が設けられる。本実施形態においては、計量容器搬送装置は、水平に設けられた無端コンベア60である。無端コンベア60の一方の駆動ローラ61は、図2に示されるように、筐体30の内部において、搬送容器40が移動する平面と第1の開口部31との間に位置することが好ましい。また、無端コンベア60の他方の駆動ローラ62は、筐体30の外部に設けられることが好ましい。
【0036】
図4は、無端コンベア60及び複数の計量容器50の部分を拡大したものである。図2(b)及び図4に示されるように、無端コンベア60上には、複数の計量容器50が所定の間隔で固定される。複数の計量容器50の各々は、無端コンベア60の移動に伴って水平軸線30Aと平行に図4に示される矢印の方向に移動し、案内部33の下部開口の真下に位置したときに、数個の搬送容器40から落下する稚貝の少なくとも一部を収容する(この時点で計量容器50に収容された稚貝は、稚貝H3とする)。本実施形態においては、計量容器50は、底壁及び側壁を有し上面が開放された円柱形状の容器であるが、形状はこれに限定されるものではなく、例えば角柱形状とすることもできる。計量容器50には、1つ又は複数の排水口51が設けられている。排水口51は、搬送容器40から落下する稚貝H2とともに計量容器50内に入った水(この水は、第2の注水口からの水である)を排出するために設けられる。このように、稚貝とともに水が計量容器50に入り、入った水が1つ又は複数の排水口51から排出されるように構成することによって、搬送容器40から落下する稚貝が搬送容器40及び案内部33に付着せず、かつ、正確に稚貝を計量することが可能となる。なお、1つ又は複数の排水口51の大きさ、形状及び個数は特に限定されるものではなく、計量容器50に入った水を内部に溜めることなく排出させることができるとともに、内部の稚貝が通らないような大きさ、形状及び個数であればよい。また、計量容器50は、中間育成の段階に応じて必要な大きさ及び個数の稚貝が計量できるように、必要に応じてより大きな計量容器やより小さな計量容器に交換することができる。
【0037】
図5は、1つの計量容器50と無端コンベア60との連結部分を拡大したものである。図5に示されるように、本実施形態においては、計量容器50は、その底壁と無端コンベア60とが連結部材を介して連結されている。本実施形態においては、連結部材は板状の連結プレート52である。連結プレート52は、その一方の端部52´が計量容器50の底壁に固定され、他方の端部52´´が無端コンベア60に固定されている。すなわち、連結プレート52は、無端コンベア60に対して、両端のうちの一端52´´が固定され、かつ、他端52´が自由に動くことができる、「片持ち梁」構成である。このように構成することによって、仮に計量容器50の底壁又は連結プレート52の下面と無端コンベア60との間に稚貝が挟まった場合でも、計量容器50が無端コンベア60の折り返し部分(無端コンベア60が駆動ローラ62の外周に沿って曲がる部分)に達したときに計量容器50の底壁又は連結プレート52の下面と無端コンベア60の表面とが離れ、挟まった稚貝が排出される。したがって、稚貝の損傷を防止することができる。
【0038】
本実施形態においては、複数の計量容器50の各々と無端コンベア60とを連結する部材は板状体であるが、これに限定されるものではなく、例えば棒状の部材とすることもできる。また、連結プレート52の一端52´は、計量容器50の底壁に固定されているが、この固定位置は、例えば計量容器50の側壁であってもよい。
【0039】
搬送容器40から落下した稚貝のうち、計量容器50に収容されなかった稚貝は、一部は無端コンベア60を超えて落下し、一部は無端コンベア60上に留まることになる。無端コンベア60上に留まった稚貝を無端コンベア60上から取り除くために、本実施形態においては、ホース89のうちの1つによって注水ユニット80のヘッダ81とつながれた注水口84及び85を設け、これらの注水口から供給される水が無端コンベア60上の稚貝を流すように構成される。無端コンベア60を超えて落下した稚貝と、注水口84及び85から供給された水によって無端コンベア60上から流された稚貝は、再び稚貝堆積部35に堆積することになる。
【0040】
稚貝H3を収容した複数の計量容器50は、無端コンベア60上を第2の開口部32に向かって、図4に示される矢印の方向に進む。複数の計量容器50は、第2の開口部32から筐体30の外部に出る前に、無端コンベア60の上方に設けられたすり切り部34の下を通過するように構成されることが好ましい。すり切り部34の下端は、複数の計量容器50の直上に位置しており、計量容器50の上端から稚貝がはみ出している場合には、はみ出した稚貝は、すり切り部34によって計量容器50から取り除かれる。このように構成することによって、より正確な稚貝の量H4の計量が可能となる。
【0041】
無端コンベア60を超えて落下した稚貝、注水口84及び85からの水で無端コンベア60上から流された稚貝、及び計量容器50からはみ出して取り除かれた稚貝は、筐体30の内部で落下することになるが、これらの稚貝の一部は、筐体30の内壁面に付着する可能性がある。内壁面に付着した稚貝を残さず稚貝堆積部35に戻すために、ホース89のうちの1つによってヘッダ81とつながれた注水口86から供給される水を筐体30の内部に流すようにすることが好ましい。注水口86にはヘッダ105が設けられ、ヘッダ105の複数の注水口の各々にはホース106が接続される。これらのホース106の一部の先端は、ホース106から供給される水が筐体30の内壁面に沿って流れるような位置に配置される。また、ホース106の残りの一部の先端は案内部33の内部に配置され、ホース106から供給される水が案内部33の内壁に付着した稚貝を流すように構成される。
【0042】
計量容器50は、筐体30に設けられた第2の開口部32を通って無端コンベア60の端部の駆動ローラ62の位置まで達すると、図4に示されるように、無端コンベア60が駆動ローラ62の外周に沿って曲がるのにともなって、上端の開口が下方を向く。このときに、計量容器50内部の稚貝H4は、案内装置65内部に排出される。本実施形態においては、ホース89のうちの1つによってヘッダ81とつながれた注水口87及び88が案内装置65に設けられており、案内装置65の内部に向けて水が供給される。注水口88は、下向きになった計量容器50の内部に向けて注水口88からの水が供給されるように構成される。また、注水口87は、計量容器50の外壁面及び無端コンベア60に向けて注水口87からの水が供給されるように構成される。これらの注水口87及び88から供給される水によって、計量容器50及び無端コンベア60に付着した稚貝が流されることになる。
【0043】
計量容器50から案内装置65内に排出された稚貝H4は、案内装置65の側部に設けられた注水口87及び88から放出される水とともに、シュータ67を通って育成容器70内に落下する。案内装置65は、稚貝をシュータ67に排出するための稚貝排出口を有する稚貝受け部66と、稚貝受け部66の稚貝排出口と摺動可能に組み合わされたシュータ67と、シュータ67の側部に設けられたレバー68とを備える。本実施形態においては、シュータ67は、シュータ67に固定されたレバー68を上下させることによって上下し、無端コンベア60の移動は、この上下動と同期して間欠的に行われるように構成されている。したがって、レバー68によってシュータ67を下に降ろすと、それと同時に無端コンベア60が図4の矢印方向に進んで、その端部に達した計量容器50が下方に移動し、その後無端コンベア60が停止する。その結果、計量容器50内の稚貝H4が案内装置65内に落下し、シュータ67の下部開口69から稚貝H4が排出される。
【0044】
シュータ67の上下動と無端コンベア60との同期を実現するために、本実施形態においては、例えば以下の機構が用いられるが、同期を実現するための機構はこれらに限定されるものではない。本実施形態においては、無端コンベア60の裏面に一定間隔で横溝などの凹部(又は凸部)が設けられ、駆動ローラ62の表面には無端コンベア60の凹部(又は凸部)と噛み合う凸部(又は凹部)が設けられる。こららの凹部及び凸部の噛み合いによって、無端コンベア60は、駆動ローラ62の回転に伴って図4に示される矢印方向に移動する。駆動ローラ62は、チェーンなどの駆動部材を介してモータ110と連結されており、モータ110の駆動力によって回転する。駆動ローラ62には、例えば、互いに180°の角度を成すように2か所にカムが設けられ、駆動ローラ62は、カムスイッチからの信号によって1/2回転で停止するように制御される。稚貝受け部66には、シュータ67の上止点及び下止点を検出するリミットスイッチが設けられており、リミットスイッチがレバー68によって下げられたシュータ67の下止点を検出すると、駆動ローラ62は1/2回転して停止する。計量容器50は、駆動ローラ62の回転に伴って移動し、案内装置65内部において開口部が真下を向いて停止する。シュータ67と稚貝受け部66とは、例えばバネなどの弾性部材111で連結されている。シュータ67が下止点に達した後、弾性部材111の作用によってシュータ67が戻り、リミットスイッチがシュータ67の上止点を検出すると、装置1は、稚貝1工程が終了したと認識する。本実施形態に係る本装置1では、無端コンベア60が停止したときに、無端コンベア60上の計量容器50のうちの1つが案内部33の下部の開口の真下に位置するように、複数の計量容器50の間隔、無端コンベア60の長さ及び移動距離が設定されている。
【0045】
本発明の別の実施形態においては、シュータ67は、レバー68を上下させることによって上下し、搬送容器40の移動(すなわち筐体30の回転)及び無端コンベア60の移動が、この上下動と同期して間欠的に行われるように構成することもできる。この構成によれば、シュータ67を下に降ろしたときに、停止していた無端コンベア60が進んで、その端部に位置する計量容器50が下方に移動し、その後再び無端コンベア60が停止する。その結果、計量容器50内の稚貝H4が案内装置65内に落下する。この場合に、無端コンベア60が停止している状態のときには、筐体30の回転を停止させ、案内部33の真下に1つの計量容器50が位置するように構成されることが好ましい。これは、例えば、リミットスイッチがシュータ67の上止点を検出した後、一定時間以上経過してもシュータ67が動作しない場合に、筐体30を回転させる駆動モータ100を停止させることによって実現することができる。このように、稚貝H2が計量容器50への投入部まで搬送されるタイミングと、稚貝H2が計量容器50内に入るタイミングと、稚貝H4が育成容器70に排出されるタイミングとが互いに連動するように、筐体30の回転、複数の計量容器50の間隔、無端コンベア60の長さ及び移動距離を制御することによって、稚貝堆積部35に戻る稚貝の量をできるだけ少なくすることができる。その結果、筐体30内部で稚貝が落下する際に構成部材の各所に衝突して稚貝が損傷するのを最小限にすることが可能となる。
【0046】
次に、本発明の1つの実施形態に係る稚貝計量分配装置1を用いて稚貝の計量分配を行う方法を説明する。まず、水の入った容器(稚貝供給部)の稚貝H1を、装置1の稚貝投入部20内に水とともに投入する。稚貝投入部20に投入された稚貝H1は、装置1の筐体30に設けられた第1の開口部31を通り、筐体30の内壁面の傾斜に沿って、凹部36の一部を含む稚貝堆積部35まで移動する。稚貝投入部20には注水口82が設けられており、注水口82から供給された水と、稚貝H1と一緒に投入された水の流れとによって、投入された稚貝H1が稚貝投入部20及び筐体30の内壁面に付着することなく、稚貝堆積部35まで移動することが可能になる。
【0047】
稚貝堆積部35には、水とともに移動してきた稚貝H1が堆積する。稚貝堆積部35において、水は、筐体30の凹部36に設けられた1つ又は複数の排水口37から筐体30の外部に排出される。すなわち、稚貝堆積部35では、稚貝投入部20から投入された稚貝H1と稚貝投入部20及び注水口82からの水とが分離されるため、稚貝堆積部35、特に凹部36には、稚貝のみを効率的に堆積させることができる。
【0048】
稚貝堆積部35に堆積した稚貝H1は、筐体30の回転に伴って回転する複数の搬送容器40に収容される。複数の搬送容器40の各々は、筐体30の回転に伴って順次、稚貝堆積部35を通過し、その際に、稚貝堆積部35の凹部36に堆積した稚貝H1の少なくとも一部H2を収容する。このようにして、稚貝H1は、複数の第1の稚貝群H2に分配される。
【0049】
複数の搬送容器40の各々に収容された複数の第1の稚貝H2は、筐体30の回転に伴い、筐体30の円周に沿って上部まで搬送される。搬送容器40内には、稚貝堆積部35において堆積した稚貝のうちの少なくとも一部の稚貝H2と、稚貝堆積部35に移動してきた水とが取り込まれることになるが、搬送容器40に取り込まれた水は、搬送の過程において、搬送容器40に設けられた1つ又は複数の排水口43から排出される。
【0050】
搬送容器40によって搬送された稚貝H2は、筐体30の上部(前述のとおり、筐体30の上部は計量容器50への投入部を構成する)に達すると、搬送容器40から下方に落下する。このとき、稚貝H2の一部が、水の表面張力及び稚貝の触手の影響によって搬送容器40の内部の壁面に付着して落下しないおそれがある。これを防止する目的で、注水口83から水を供給する。この水は、搬送容器40の排水口43を通って搬送容器40の内部に入り、内部に付着した稚貝を排出させる。
【0051】
注水口83から供給された水とともに搬送容器40から落下した稚貝H2は、筐体30の水平軸線30Aと平行に移動する複数の計量容器50の1つに収容される。前述のとおり、1つの搬送容器40に収容される稚貝H2の量は、1つの計量容器50に収容される稚貝の量H3より少なく、1つの計量容器50は、数個の搬送容器40の稚貝によって満たされることが好ましい。搬送容器40から排出された稚貝のうち計量容器50に入りきらなかった稚貝は、無端コンベア60上に落下するか、又は、無端コンベア60を超えて下方に落下することになる。計量容器50に入った水は、計量容器50に設けられた1つ又は複数の排水口51から排出される。このようにして、複数の計量容器50の各々には、搬送装置40から落下した稚貝が順次収容されていく。
【0052】
各々に稚貝H3が収容された複数の計量容器50は、無端コンベア60の移動によって筐体の第2の開口部32方向に順次移動する。計量容器50に入った稚貝H3の量が多い場合に計量容器50からはみ出している稚貝は、計量容器50の移動経路上に設けられたすり切り部34によって取り除かれる。この結果、計量容器50内には、計量されるべき所定量の稚貝H4が残る。このようにして、複数の第1の稚貝群H2は、所定量からなる複数の第2の稚貝群H4に分配される。なお、稚貝H2の量が稚貝H3の量と同じ場合には、複数の第2の稚貝群はH3である。稚貝H4の量は、中間育成の段階に応じて異なり、中間育成の当初は80〜100個程度、最終的には20〜30個程度である。
【0053】
搬送容器40から落下した稚貝のうち計量容器50に収容されなかった稚貝と、計量容器50からすり切り部34によって取り除かれた稚貝は、注水口84、85、及び86から供給される水の流れによって、筐体30内部を下方に移動して稚貝堆積部35に堆積し、搬送容器40によって再び搬送される。
【0054】
計量容器50によって筐体30の第2の開口32を通り、無端コンベア60の端部まで搬送された稚貝H4は、計量容器50が駆動ローラ62の外周に沿って下方に移動すると、計量容器50から下方に落下し、案内装置65内に投入される。案内装置65内に投入された稚貝H4は、注水口87及び88から案内装置65内部に供給される水とともにシュータ67を通り、育成容器70に投入される。
【0055】
以上のようにして、稚貝供給部から供給される稚貝から所定量の稚貝を連続的に計量し、計量された所定量の稚貝を育成容器に順次収容することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 稚貝計量分配装置
20 稚貝投入部
30 筐体
31 第1の開口部
32 第2の開口部
33 案内部
35 稚貝堆積部
40 搬送容器
50 計量容器
52 連結プレート
60 無端コンベア
61、62 駆動ローラ
65 案内部
66 稚貝受け部
67 シュータ
68 レバー
70 育成容器
80 注水ユニット
82〜88 注水口
89 ホース
90 架台
100、110 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の稚貝を連続的に計量し、複数の育成容器に順次収容するための稚貝計量分配方法であって、
稚貝を水又は海水と共に稚貝堆積部まで移動させ、前記稚貝堆積部において水又は海水と稚貝とを分離することによって稚貝を堆積させる堆積ステップと、
前記稚貝堆積部に堆積した稚貝を複数の第1の稚貝群に分配する分配ステップと、
前記複数の第1の稚貝群を水又は海水とともに移動させて、各々が前記所定量からなる複数の第2の稚貝群に分配する計量ステップと、
前記複数の第2の稚貝群を水又は海水とともに移動させて、前記複数の育成容器に排出する排出ステップと、
を含むことを特徴とする稚貝計量分配方法。
【請求項2】
分配された前記複数の第1の稚貝群を前記計量ステップにおいて前記複数の第2の稚貝群に分配するための位置まで搬送する第1の稚貝群搬送ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項3】
分配された前記複数の第2の稚貝群を前記排出ステップにおいて前記複数の育成容器に排出するための位置まで搬送する第2の稚貝群搬送ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項4】
前記第1の稚貝群搬送ステップは、分配された前記複数の第1の稚貝群と水とを分離するステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項5】
前記第2の稚貝群搬送ステップは、分配された前記複数の第2の稚貝群と水とを分離するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項6】
分配ステップにおいて分配される前記複数の第1の稚貝群の各々の量が、前記所定量より少ないことを特徴とする、請求項1に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項7】
前記稚貝堆積部に堆積した稚貝のうち前記複数の第2の稚貝群として分配されなかった稚貝を水又は海水とともに前記稚貝堆積部に循環させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項8】
前記排出ステップにおいて前記複数の第2の稚貝群が前記複数の育成容器に排出されることは間欠的に行われ、前記複数の育成容器への排出が停止されたときには、前記分配ステップにおける分配及び前記計量ステップにおける分配のいずれか又は両方が停止されることを特徴とする、請求項1に記載の稚貝計量分配方法。
【請求項9】
所定量の稚貝を連続的に計量し、複数の育成容器に順次収容するための稚貝計量分配装置であって、
水又は海水とともに稚貝を内部に取り入れるための第1の開口部と計量された稚貝を内部から搬出するための第2の開口部とを有する、筐体と、
水又は海水を排出するための1つ又は複数の排水口を有し、前記筐体の内部において前記第1の開口部の下方に位置することによって前記第1の開口部から水又は海水とともに前記筐体の内部に取り入れられた稚貝が堆積する、稚貝堆積部と、
各々が1つ又は複数の排水口を有し、前記稚貝堆積部において堆積した稚貝のうちの少なくとも一部を収容することによって稚貝を複数の第1の稚貝群に分配して搬送するための複数の搬送容器と、
前記複数の搬送容器から前記複数の第1の稚貝群が排出される際に、前記複数の搬送容器内に水又は海水を供給するための第1の注水口と、
各々が1つ又は複数の排水口を有し、前記複数の搬送容器から水又は海水とともに排出された前記複数の第1の稚貝群の少なくとも一部を収容することによって前記複数の第1の稚貝群を各々が前記所定量からなる複数の第2の稚貝群に分配するための複数の計量容器と、
前記複数の計量容器を前記第2の開口部を通して前記筐体の外部に搬送するための計量容器搬送装置と、
前記複数の計量容器から前記複数の第2の稚貝群が排出される際に、前記複数の計量容器内に水又は海水を供給するための第2の注水口と、
前記複数の計量容器から水又は海水とともに排出された前記複数の第2の稚貝群を前記複数の育成容器に案内するための案内装置と、
を備えることを特徴とする稚貝計量分配装置。
【請求項10】
前記筐体は、水平軸線を中心として回転可能な円筒形状を有し、前記複数の搬送容器は、前記筐体の内壁面に固定又は一体化されて、前記筐体の回転によって前記水平軸線を中心とする円の円周上を移動し、前記稚貝堆積部において前記複数の搬送容器に収容された前記複数の第1の稚貝群は、前記円周の上部に達したときに前記複数の搬送容器から前記複数の計量容器に向けて排出されることを特徴とする、請求項9に記載の稚貝計量分配装置。
【請求項11】
前記複数の計量容器の各々と前記計量容器搬送装置とは、一端が前記複数の計量容器の各々に固定され、他端が前記計量容器搬送装置に固定された連結手段を介して連結されたことを特徴とする、請求項9に記載の稚貝計量分配装置。
【請求項12】
前記複数の搬送容器から排出された前記複数の第1の稚貝群のうち前記複数の計量容器に収容されなかった稚貝を前記稚貝堆積部に戻すための水又は海水を放出する1つ又は複数の第3の注水口をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の稚貝計量分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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