説明

種籾直播用均平板装置及び種籾直播機並びに種籾直播移動装置

【課題】落水した田圃に直接播いた種籾が、水を張った後においても、浮き上がりや根上がりを起こすことのない均平板装置及び種籾直播機並びに播種直播移動装置を提供する。
【解決手段】前後方向に複数設けたフロート3の前端部下面に、田圃の地表面Eを均す均平板21を左右方向に架設し、複数のフロート3の前後方向略中間部上方に、当該複数のフロート3間の解放部Pに種籾を落下させる種籾ホッパー11を設け、複数のフロート3の後端部の前記解放部Pに、当該解放部Pに播かれた種籾を上から擦って地中に埋め込む擦込みシート24または擦込板28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲の種籾を、直接、落水した田圃に播くことのできる種籾直播用均平板装置、その均平板装置を備えた種籾直播機、及び当該種籾直播機を備えた種籾直播移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
稲は、一般に、田圃とは別の場所に種籾を播いて苗に育て、その苗を田圃に植え付けて発育させている。
【0003】
この場合、種籾を播いて苗に育てる作業と、その苗を田圃に植え付ける作業の両方を必要とする。これを、種籾を、落水した状態の田圃に直接播いて、そのまま稲に育てることができれば、作業を大幅に削減することができるので便利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、代掻きした田圃は、落水しても完全に水を排除することはできず、至る所に水たまりができる。従って、その水たまりに種籾を播くと、種籾は浮き上がり、水面上で移動する。また、代掻きした田圃の地表面は硬軟があるため、その上に種籾を播いただけでは地表面に密着する度合いが異なる。種籾を田圃の地表面に均等かつ適度に密着させないと、浮き苗、根上がり苗、あるいは不発芽の原因となり、稲の良好な生育の妨げとなる。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、落水した田圃に直接播いた種籾が、水を張った後においても、浮き上がりや根上がりを起こすことのない種籾直播用均平板装置及び種籾直播機並びに播種直播移動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図1乃至図10を参照して説明する。請求項1に記載の発明に係る種籾直播機は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2の後端部に取付ける種籾直播機であって、前後方向に複数設けたフロート3の前端部下面に、田圃の地表面Eを均す均平板21を左右方向に架設し、前記複数のフロート3の前後方向略中間部上方に、当該複数のフロート3間の解放部Pに種籾を落下させる種籾ホッパー11を設け、 前記複数のフロート3の後端部の前記解放部Pに、当該解放部Pに播かれた種籾を上から擦って地中に埋め込む擦込みシート24または擦込板28を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明に係る種籾直播機は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2の後端部に取付ける種籾直播機であって、前後方向に複数設けたフロート3の前端部下面に、田圃の地表面Eを均す均平板21を左右方向に架設し、前記複数のフロート3の前後方向略中間部上方に、当該複数のフロート3間の解放部Pに種籾を落下させる種籾ホッパー11を設け、 前記複数のフロート3の後端部の前記解放部Pに、当該解放部Pに播かれた種籾を上から擦って地中に埋め込む擦込板28を設けてなり、前記擦込板28を、側面円弧状の弾性材で形成し、その前端部を、前記複数のフロート3の後端部に左右方向に架設した横軸29に固定し、前記種籾を擦る部分である後端擦込部14aを、前記横軸より後方に左右方向に架設した横桁30に挿通する縦ボルト31の下端部に固定し、前記縦ボルトの前記横桁より上位に調整ナット33を螺合すると共に、前記横桁より下位に前記後端擦込部を下方に付勢する渦巻きバネ32を嵌装し、前記後端擦込部を上下位置変更自在にして設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明に係る種籾直播用均平板装置20は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2の後端部に取付ける種籾直播機10を構成するものであって、田圃の地表面Eを均すべく左右方向に設けた均平板21の後端部に、複数の切込み凹部22を形成し、前記切込み凹部22を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、前記播種誘導枠23に、当該播種誘導枠23を通して播かれた種籾Sを、上から擦って地中に埋込む擦込みシート24または擦込板28を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明に係る種籾直播機10は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2の後端部に取付けるものであって、田圃の地表面Eを均す均平板21を左右方向に設け、前記均平板21の後端部に複数の切込み凹部22を形成し、前記切込み凹部22を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、前記均平板21の上方に種籾ホッパー11を設け、前記播種誘導枠23に、前記種籾ホッパー11から前記播種誘導枠23を通して播かれた種籾Sを、上から擦って地中に埋込む擦込みシート24または擦込板28を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明に係る種籾直播移動装置1は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2のフロート3の下側に、または当該フロート3を排除した状態で、種籾直播機10の均平板21を取付けたものであって、前記種籾直播機10を、田圃の地表面Eを均す前記均平板21を左右方向に設け、前記均平板21の後端部に複数の切込み凹部22を形成し、前記切込み凹部22を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、前記均平板21の上方に種籾ホッパー11を設け、前記播種誘導枠23に、前記種籾ホッパー11から前記播種誘導枠23を通して播かれた種籾Sを、上から擦って地中に埋込む擦込みシート24または擦込板28を設けて構成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載の発明に係る種籾直播用均平板装置は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2の後端部に取付ける種籾直播機10を構成する均平板装置であって、田圃の地表面Eを均すべく左右方向に設けた均平板21の後端部に、複数の切込み凹部22を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、前記播種誘導枠に、該播種誘導枠を通して播かれた種籾を、上から擦って地中に埋込む擦込板28を設け、前記擦込板の前端部を、播種誘導枠23に左右に架設した支持棒35で回動自在に支持し、前記擦込板の中間部から縦棒36を揺動自在に立設し、前記縦棒の上部を、前記播種誘導枠に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通し、前記擦込板が軽量の場合には、前記縦棒の、前記擦込板と支持プレートとの間に、前記擦込板を下方に押圧するバネ材38を嵌装してなるものである。
【0012】
請求項7に記載の発明に係る種籾直播機は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2の後端部に取付ける種籾直播機10であって、田圃の地表面Eを均す均平板21を左右方向に設け、前記均平板の後端部に複数の切込み凹部22を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、前記均平板の上方に種籾ホッパー11を設け、前記播種誘導枠に、前記種籾ホッパーから前記播種誘導枠を通して播かれた種籾を、上から擦って地中に埋込む擦込板28を設け、前記擦込板の前端部を、播種誘導枠23に左右に架設した支持棒35で回動自在に支持し、前記擦込板の中間部から縦棒36を揺動自在に立設し、前記縦棒の上部を、前記播種誘導枠に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通し、前記擦込板が軽量の場合には、前記縦棒の、前記擦込板と支持プレートとの間に、前記擦込板を下方に押圧するバネ材38を嵌装してなるものである。
【0013】
請求項8に記載の発明に係る種籾直播移動装置は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用動力移動機2のフロート3の下側に、または該フロートを排除した状態で、種籾直播機10の均平板21を取付けた種籾直播移動装置であって、前記種籾直播機を、田圃の地表面Eを均す前記均平板を左右方向に設け、前記均平板の後端部に複数の切込み凹部22を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、前記均平板の上方に種籾ホッパー11を設け、前記播種誘導枠に、前記種籾ホッパーから前記播種誘導枠を通して播かれた種籾を、上から擦って地中に埋込む擦込板28を設けて構成し、擦込板28の前端部を、播種誘導枠23に左右に架設した支持棒35で回動自在に支持し、前記擦込板の中間部から縦棒36を揺動自在に立設し、前記縦棒の上部を、前記播種誘導枠に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通し、前記擦込板が軽量の場合には、前記縦棒の、前記擦込板と支持プレートとの間に、前記擦込板を下方に押圧するバネ材38を嵌装してなるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の種籾直播機10は、落水した田圃に播いた種籾Sが、水を張った後、浮き上がりや根上がりを生じさせることがない。すなわち、フロート3の前端部下面に設けた均平板21が、種籾Sを播くに先だって、田圃の地表面Eを平ら面とする。そして、その上に、種籾ホッパー11から種籾Sを解放部P(地表面E)に落下させて播いた後、擦込板28によってその種籾Sを上から擦りつけて地中に擂り込む。これにより、全ての種籾Sを良好な状態に直播きすることができるので、稲作に要する作業を大幅に削減することができる。
【0015】
請求項2に記載の種籾直播機10は、請求項1に記載の発明と同様に、種籾Sを、落水した田圃に良好な状態に直播きすることができる。また、擦込板28の種籾Sを擦って地中に埋め込む部分である後端擦込部14aを、上下位置変更自在に設定しているので、種籾Sを適度な深さ擂りに込むことができる。これにより、田圃の土質や種籾Sの種類に応じて押し込み深さを調節することができるので、あらゆる種類の種籾Sを良好に発育させることができる。
【0016】
請求項3に記載の種籾直播用均平板装置20は、田圃の地表面Eを均すべく左右方向に設けた均平板21の後端部に、複数の切込み凹部22を形成し、その切込み凹部22を囲むようにして播種誘導枠23を立設し、さらに、その播種誘導枠23に、当該播種誘導枠23を通して播かれた種籾Sを、上から擦って地中に埋込む擦込みシート24を設けたので、落水した田圃に播いた種籾Sが、水を張った後においても、浮き上りや根上がりを起こさない。
【0017】
すなわち、均平板21が、種籾Sを播くに先立って、田圃の地表面Eを平ら面とすると同時に水を排除する。そして、その上に、種籾Sを、種籾ホッパー11等から播種誘導枠23を通して地表面Eに播いた後、擦込みシート24によって直ちに上から擦り付けるようにして地中に埋め込む。これにより、全ての種籾Sを、地中に良好な状態で直播きすることができるので、種籾Sの浮き上がりや根上がりを防止できる。また、稲作に要する作業を大幅に削減できる。
【0018】
請求項4に記載の種籾直播機10も、請求項1に記載の発明と同様に、均平板装置20のはたらきによって、落水した田圃に種籾ホッパー11から播いた種籾Sが、水を張った後においても、浮き上りや根上がりを起こさない。また、この種籾直播機10は、種籾ホッパー11を備えているので、種籾Sを自動的に直播することができ、作業のさらなる軽減化を図ることができる。
【0019】
請求項5に記載の種籾直播移動装置1も、均平板装置20のはたらきによって、種籾Sが浮き上がりや根上がりを起こすことがない。また、この種籾直播移動装置1は、種籾直播機10を、フロート3の下位に取付けるので、既存の田植機などを利用して製造することができ、従って製造が容易となる。
【0020】
請求項6に記載の種籾直播用均平板装置20は、擦込板28の前端部を播種誘導枠23に左右に架設した支持棒35で回動自在に支持し、当該擦込板28の中間部から縦棒36を揺動自在に立設し、前記縦棒36の上部を、前記播種誘導枠23に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通したので、バネ材38を設けない場合は、擦込板28を、自重によって、その前端部を軸として上下方向に自在に回動させることができる。これにより、田圃の地表面Eを平滑に均すことができると共に、播かれた種籾Sを地中に確実に埋め込むことができる。
【0021】
また、擦込板28が軽量で、その自重のみで、地表面Eを良好に均すことができず、また、播かれた種籾Sを地中に確実に埋め込むことができない場合には、縦棒36の、擦込板28と支持プレート37との間にバネ材38を設けるが、それにより、当該バネ材38の弾力によって擦込板28を下方に強く押圧するので、田圃の地表面Eを円滑に均すことができると共に、種籾Sを地中に確実に埋め込むことができる。
【0022】
請求項7に記載の種籾直播機10は、擦込板28の前端部を播種誘導枠23に左右に架設した支持棒35で回動自在に支持し、当該擦込板28の中間部から縦棒36を揺動自在に立設し、前記縦棒36の上部を、前記播種誘導枠23に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通したので、バネ材38を設けない場合は、擦込板28の自重によって地表面Eを均し、種籾Sを地中に埋め込むことができる。また、バネ材38を設けた場合は、その弾力によって、地表面Eをより円滑に均すことができると共に、種籾Sを地中に確実に埋め込むことができる。
【0023】
請求項8に記載の種籾直播移動装置1は、擦込板28の前端部を播種誘導枠23に左右に架設した支持棒35で回動自在に支持し、当該擦込板28の中間部から縦棒36を揺動自在に立設し、前記縦棒36の上部を、前記播種誘導枠23に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通したので、請求項6および7に記載の発明と同様に、バネ材38を設けない場合は、擦込板28の自重によって地表面Eを均し、種籾Sを地中に埋め込むことができる。また、バネ材38を設けた場合は、その弾力によって、地表面Eをより円滑に均すことができ、また、種籾Sを地中に確実に埋め込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る種籾直播機10の第一実施形態を、図1乃至図3に示す。これは、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きすべく、農業用トラクター等の農業用動力移動機2の後端部に取付けるものであり、均平板21、種籾ホッパー11および擦込板28を備えることを特徴としている。
【0025】
均平板21は、前後方向に三本設けたフロート3の前端部下面に左右方向に架設したものであり、田圃の地表面Eを均一に均す役目を担う。種籾ホッパー11は、複数のフロート3の前後方向の略中間部上方に設けられ、当該三本のフロート3間に形成される解放部Pに種籾Sを落下させるものである。また、擦込板28は、複数のフロート3後端部の解放部Pに配置され、その解放部Pに播かれた種籾Sを上から擦って地中に押し込むはたらきをする。
【0026】
なお、本実施形態においては、擦込板28を、弾性金属板を湾曲させて側面円弧状とし、その前端部を、複数のフロート3後端部に左右方向に架設した横軸29に固定している。横軸29は、L型鋼を横設して形成した支持部材34で支持している。また、擦込板28のうち、種籾Sを擦る部分である後端擦込部14aを、横軸29より後方に左右方向に架設した横桁30に挿通する縦ボルト31の下端部に固定し、縦ボルト31の横桁30から上方に突出している上端部に調整ナット(蝶ナット)33を螺合すると共に、横桁30と後端擦込部14aとの間に、後端擦込部14aを下方に付勢する渦巻きバネ32嵌装している。これによって、擦込板28の後端擦込部14aを、上下位置変更自在に設定している。
【0027】
この種籾直播機10の作用について説明する。落水した田圃にトラクター1を走行させることによって、均平板21で地表面Eを均一に均しながら、種籾Sを、種籾ホッパー11から解放部P(地表面E)に落下させる。このとき、地表面Eは平らに均されているので、落下した種籾Sは凸凹のない水平面上に位置する。この状態から、擦込板28で種籾Sをその上から擦り、当該種籾Sを地中に擂り込む。このとき、種籾Sは均平板21によって平らに均された地表面Eに播かれ、かつ、擦込板28によって均等な力で押されるので、地中に均一な深さで埋められる。これにより、水を張ったのち、押し込み量の不足による種籾Sの浮き上がりや、根上がり、或いは過度な押し込み量に基づく発芽不能が確実に避けられ、当該種籾Sは良好に発育することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、擦込板28の後端擦込部14aを上下位置変更自在に設定している。従って、例えば、後端擦込部14aを上方に移動させたい場合は、調整ナット33を時計回り方向へ回転させる。これによって縦ボルト31は上昇し、それに伴い後端擦込部14aも撓みながら上昇する。逆に、後端擦込部14aを下方に移動させたい場合は、調整ナット33を反時計回り方向へ回転させる。なお、縦ボルト31の横桁30と後端擦込部14aとの間には渦巻きバネ32を嵌装しているので、その弾力で後端擦込部14aを常に充分な力で下方に押圧して、種籾Sを地中に確実に埋め込むことができる。
【0029】
本発明に係る種籾直播機10は、既存の田植機を改良して製作することができる。この場合、均平板21と擦込板28およびそれに付属する部材(横軸29や横桁30など)を、ボルトやナットなどの締結部材によって着脱自在に取付ける。また、種籾ホッパー11は、既存の肥料ホッパーを使用する。これにより、農業機械への投資を大幅に削減することができる。
【0030】
本発明に係る種籾直播機10の第二実施形態を、図4乃至図6に示す。この種籾直播機10は、稲の種籾Sを、落水した田圃に直播きするために、トラクターなどの農業用動力移動機2の後端部に取付けるものであり、同じく本発明に係る均平板装置20と種籾ホッパー11を備える。
【0031】
均平板装置20は、田圃の地表面Eを均すべく左右方向に設けられた均平板21の後端部に複数(本実施形態では六つ)の切込み凹部22を形成し、その各切込み凹部22を囲むようにして平面コ字状の播種誘導枠23を立設し、さらに、この播種誘導枠23に、当該播種誘導枠23を通して播かれた種籾Sを、上から擦って地中に埋込む擦込みシート24を設けて構成される。なお、均平板21は、中央部21aと本体部21bとで構成し、少なくとも、中央部21aの一箇所と本体部21bの二箇所に設けた連結部Cで、農業用動力移動機2(フロート3を含む)に連結する。
【0032】
また、種籾ホッパー11は、均平板21の直上に設けられ、所定数の種籾Sを連続的に播種誘導枠23内に供給する。この種籾ホッパー11は、種籾Sをこぼすことなく播種誘導枠23内に供給するための送りホース12を備える。
【0033】
この種籾直播機10の作用について説明する。落水した田圃に農業用動力移動機(トラクター)2を走行させることによって、均平板21で地表面Eを均一に均すと同時に水を排除しながら、種籾Sを、種籾ホッパー11から播種誘導枠23内を通して地表面Eに落下させる(通常、1m当たり100粒程度)。このとき、地表面Eは、均平板21によって平らに均され、かつ、水が排除されているので、落下した種籾Sは凸凹のない地表面E上に播かれる。また、種籾Sは、播種誘導枠23によってガイドされるため、周囲に散らばることなく、所定の箇所に落下する。
【0034】
この状態から、擦込みシート24で種籾Sをその上から擦るようにして押圧して地中に埋め込む。このとき、種籾Sは均平板21によって平らに均された地表面Eに播かれ、かつ、擦込みシート24によって均等な力で押されるので、地中に均一な深さで埋め込まれる。これにより、種籾Sの浮き上がりや、根上がりが確実に防止され、当該種籾Sは良好に発育することができる。
【0035】
なお、本実施形態における擦込みシート24は、その前端部を播種誘導枠23に左右に架設した第一支持軸25で支持し、その中間部を同じく播種誘導枠23に左右に架設した第二支持軸26に、長さ調節自在の鎖片27を介して支持している。こうして、擦込みシート24の取付け姿勢を調整自在とし、種籾Sに対する押圧力を調整できるようにしている。
【0036】
本発明に係る種籾直播移動装置1の実施形態を、図7に示す。これは、既存の田植機を利用したもので、その後端部に設けられているフロート3の下側に、本発明に係る種籾直播機10の均平板21を、ボルトやナットなどの締結部材によって着脱自在に取付けたものである。また、種籾ホッパー11は、田植機の側条施肥機を利用して構成したものであり、そこから均平板21に取付けた播種誘導枠23へ種籾Sを落下させるようにしている。
【0037】
この種籾直播移動装置1においても、その均平板装置20のはたらきによって、播かれた種籾Sが、浮き上がりや根上がりを起こさない。また、この種籾直播移動装置1は、種籾直播機10を、フロート3の下側に取付けるので、既存の田植機などを利用して容易に製造することができる。
【0038】
なお、均平板装置20は、上記した構成に代えて、次のような構成とすることができる。すなわち、図8乃至図10に示すように、斜めに配置した擦込板28の前上端部を、播種誘導枠23に左右に水平に架設した支持棒35で回動自在に支持し、その擦込板28のほぼ中間部から縦棒36を揺動自在に立設する。そして、縦棒36の上部を、播種誘導枠23に左右に架設した支持プレート37の挿通孔37aに挿通する。また、縦棒36の上端部に、ナットなどの挿通孔37aより大径の位置決め部材40を取付け、擦込板28の下限位置を設定することができる。
【0039】
こうした構成において、擦込板28を軽量な材料で肉薄に形成した場合には、その自重のみでは地表面Eを強く押圧することができないので、縦棒36の、擦込板28と支持プレート37との間に、擦込板28を下方に押圧するバネ材(渦巻きバネ)38を嵌装すると良い。その逆に、擦込板28が充分な重量を有している場合には、バネ材38を設ける必要はない。
【0040】
なお、本実施形態においては、種籾誘導枠23の前壁に分散板39を設けている。この分散板39は、種籾誘導枠23の左右幅を広く(10cm程度)設定して、種籾誘導枠23の前壁と支持棒35との間に、種籾ホッパー11から投入された種籾Sを四方へ分散して地表面Eに散在させた状態で播くためのものである。従って、種籾誘導枠の左右幅を狭く(3cm程度)に設定して、種籾Sを、直線状のいわゆるすじ播きする場合には、この分散板39を設ける必要はない。
【0041】
こうした構造の均平板装置20は、本発明に係る種籾直播機10や種籾直播移動装置1に取付けることができる。その場合、当該均平板装置20の構造が簡素であるため、それら製品の製造コストを抑えることができる。
【0042】
なお、本発明に係る均平板装置20は、農業用動力移動機2のフロート3に取付けて種籾直播機10および種籾直播移動装置1を構成することもできるし(図1参照)、また、フロート3を外した状態の農業用動力移動機2に取付けて種籾直播機10および種籾直播移動装置1を構成することもできる(図4参照)。後者の場合、均平板21がフロート3の役目を担う。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る種籾直播機を農業用動力移動装置の1つであるトラクターに連結した状態を示す側面図である。
【図2】本発明に係る種籾直播機の第一実施形態を示す部分断面側面図である。
【図3】図2に示す種籾直播機の平面図である。
【図4】本発明に係る種籾直播機の第二実施形態を示す側面図である。
【図5】図4に示す種籾直播機の要部拡大側面断面図である。
【図6】図4に示す種籾直播機の要部拡大平面図である。
【図7】本発明に係る種籾直播移動装置を示す側面図である。
【図8】本発明に係る均平板装置の実施形態を示す要部側面断面図である。
【図9】図8に示す近辺板装置の平面図である。
【図10】図8に示す均平板装置の背面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 種籾直播移動装置
2 農業用動力移動機
3 フロート
10 種籾直播機
11 種籾ホッパー
12 送りホース
20 均平板装置
21 均平板
21a 中央部
21b 本体部
22 切込み凹部
23 播種誘導枠
24 擦込みシート
25 第一支持軸
26 第二支持軸
27 鎖片
28 擦込板
28a 後端擦込部
29 横軸
30 横桁
31 縦ボルト
32 渦巻きバネ
33 調整ナット
34 支持部材
35 支持棒
36 縦棒
37 支持プレート
37a 挿通孔
38 バネ材
39 分散板
40 位置決め部材
C 連結部
E 地表面
P 解放部
S 種籾

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)の後端部に取付ける種籾直播機であって、
前後方向に複数設けたフロート(3)の前端部下面に,田圃の地表面(E)を均す均平板(21)を左右方向に架設し、
前記複数のフロートの前後方向略中間部上方に,該複数のフロート間の解放部(P)に種籾を落下させる種籾ホッパー(11)を設け、
前記複数のフロートの後端部の前記解放部に,該解放部に播かれた種籾を上から擦って地中に埋め込む擦込みシート(24)または擦込板(28)を設けたことを特徴とする種籾直播機。
【請求項2】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)の後端部に取付ける種籾直播機であって、
前後方向に複数設けたフロート(3)の前端部下面に,田圃の地表面(E)を均す均平板(21)を左右方向に架設し、
前記複数のフロートの前後方向略中間部上方に,該複数のフロート間の解放部(P)に種籾を落下させる種籾ホッパー(11)を設け、
前記複数のフロートの後端部の前記解放部に,該解放部に播かれた種籾を上から擦って地中に埋め込む擦込板(28)を設けてなり、
前記擦込板を,側面円弧状の弾性材で形成し,その前端部を,前記複数のフロートの後端部に左右方向に架設した横軸(29)に固定し,前記種籾を擦る部分である後端擦込部(14a)を,前記横軸より後方に左右方向に架設した横桁(30)に挿通する縦ボルト(31)の下端部に固定し,前記縦ボルトの前記横桁より上位に調整ナット(33)を螺合すると共に,前記横桁より下位に前記後端擦込部を下方に付勢する渦巻きバネ(32)を嵌装し,前記後端擦込部を上下位置変更自在にして設けたことを特徴とする種籾直播機。
【請求項3】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)の後端部に取付ける種籾直播機(10)を構成する均平板装置であって、田圃の地表面(E)を均すべく左右方向に設けた均平板(21)の後端部に,複数の切込み凹部(22)を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠(23)を立設し、前記播種誘導枠に,該播種誘導枠を通して播かれた種籾を,上から擦って地中に埋込む擦込みシート(24)または擦込板(28)を設けたことを特徴とする種籾直播用均平板装置。
【請求項4】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)の後端部に取付ける種籾直播機(10)であって、田圃の地表面(E)を均す均平板(21)を左右方向に設け、前記均平板の後端部に複数の切込み凹部(22)を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠(23)を立設し、前記均平板の上方に種籾ホッパー(11)を設け、前記播種誘導枠に,前記種籾ホッパーから前記播種誘導枠を通して播かれた種籾を,上から擦って地中に埋込む擦込みシート(24)または擦込板(28)を設けたことを特徴とする種籾直播機。
【請求項5】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)のフロート(3)の下側に,または該フロートを排除した状態で、種籾直播機(10)の均平板(21)を取付けた種籾直播移動装置であって、前記種籾直播機を、田圃の地表面(E)を均す前記均平板を左右方向に設け、前記均平板の後端部に複数の切込み凹部(22)を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠(23)を立設し、前記均平板の上方に種籾ホッパー(11)を設け、前記播種誘導枠に,前記種籾ホッパーから前記播種誘導枠を通して播かれた種籾を,上から擦って地中に埋込む擦込みシート(24)または擦込板(28)を設けて構成したことを特徴とする種籾直播移動装置。
【請求項6】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)の後端部に取付ける種籾直播機(10)を構成する均平板装置であって、田圃の地表面(E)を均すべく左右方向に設けた均平板(21)の後端部に,複数の切込み凹部(22)を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠(23)を立設し、前記播種誘導枠に,該播種誘導枠を通して播かれた種籾を,上から擦って地中に埋込む擦込板(28)を設け、
前記擦込板の前端部を,播種誘導枠(23)に左右に架設した支持棒(35)で回動自在に支持し、
前記擦込板の中間部から縦棒(36)を揺動自在に立設し,前記縦棒の上部を,前記播種誘導枠に左右に架設した支持プレート(37)の挿通孔(37a)に挿通し、
前記擦込板が軽量の場合には,前記縦棒の,前記擦込板と支持プレートとの間に,前記擦込板を下方に押圧するバネ材(38)を嵌装してなる種籾直播用均平板装置。
【請求項7】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)の後端部に取付ける種籾直播機(10)であって、田圃の地表面(E)を均す均平板(21)を左右方向に設け、前記均平板の後端部に複数の切込み凹部(22)を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠(23)を立設し、前記均平板の上方に種籾ホッパー(11)を設け、前記播種誘導枠に,前記種籾ホッパーから前記播種誘導枠を通して播かれた種籾を,上から擦って地中に埋込む擦込板(28)を設け、
前記擦込板の前端部を,播種誘導枠(23)に左右に架設した支持棒(35)で回動自在に支持し、
前記擦込板の中間部から縦棒(36)を揺動自在に立設し、
前記縦棒の上部を,前記播種誘導枠に左右に架設した支持プレート(37)の挿通孔(37a)に挿通し、
前記擦込板が軽量の場合には,前記縦棒の,前記擦込板と支持プレートとの間に,前記擦込板を下方に押圧するバネ材(38)を嵌装してなる種籾直播機。
【請求項8】
稲の種籾(S)を,落水した田圃に直播きすべく,農業用動力移動機(2)のフロート(3)の下側に,または該フロートを排除した状態で、種籾直播機(10)の均平板(21)を取付けた種籾直播移動装置であって、前記種籾直播機を、田圃の地表面(E)を均す前記均平板を左右方向に設け、前記均平板の後端部に複数の切込み凹部(22)を形成し、前記切込み凹部を囲むようにして播種誘導枠(23)を立設し、前記均平板の上方に種籾ホッパー(11)を設け、前記播種誘導枠に,前記種籾ホッパーから前記播種誘導枠を通して播かれた種籾を,上から擦って地中に埋込む擦込板(28)を設けて構成し、
擦込板(28)の前端部を,播種誘導枠(23)に左右に架設した支持棒(35)で回動自在に支持し、
前記擦込板の中間部から縦棒(36)を揺動自在に立設し、
前記縦棒の上部を,前記播種誘導枠に左右に架設した支持プレート(37)の挿通孔(37a)に挿通し、
前記擦込板が軽量の場合には,前記縦棒の,前記擦込板と支持プレートとの間に,前記擦込板を下方に押圧するバネ材(38)を嵌装してなる種籾直播移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−42603(P2006−42603A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216717(P2004−216717)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(592070834)
【Fターム(参考)】