説明

種蒔き器

【課題】野菜、花等の小粒な種子を、容易に蒔くことのできる種蒔き器を提供する。
【解決手段】中空軸の先端側端面に、下方を開放した菱形開口部を有する仕切り板を設け、この仕切り板下方前方に、前記下部枠と連続するV字形の送り出し溝を設け、この送り出し溝の内面と前記仕切り板の菱形開口部に内接するそろばん玉状の弾性部材からなる回転体を設けて、前記仕切り板の下方に種子通過可能な大きさの流出口と、前記送り出し溝との接点に種子より小さい送り出し口を形成し、更に前記送り出し溝の先端下方に、樋状の仮受皿を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小粒で摘まみ難く、蒔くことが困難な野菜、花等の種子を、容易に蒔くことのできる種蒔き器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小粒種子の種蒔きは、作業者が掌に種子を広げて粒数を数え、指で摘まみ取り、所定の位置に蒔く手法が採られている。しかしながら、小粒な種子を必要粒数だけ摘まみ取ることは難しく、作業効率も悪い。必然的に、多めに蒔いて発芽後間引く方法が採られている。この方法は、発芽して葉芽が育った時に、間引いて株間を空ける必要がある。
また、高価な種子が無駄になるため、一箇所にばら蒔きし、育苗後、畑に移植する方法も行なわれている。この方法は、移植の手間を要すると共に、直播きより苗の生育遅れが発生しやすい。また、地下茎を利用する作物、例えば人参、ごぼう、大根等の根菜類は移植ができない。
【0003】
これらの問題点を克服する目的で、例えば特許文献1には、アウターケーシングとインナーケーシングンの間に種子ポケットを設けた回転キャリヤからなる小型の種蒔き器が提案されている。
【特許文献1】特開2007−82410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で提案の前記技術には、次のような問題点がある。
(イ)二個のケーシングの間で回転キャリヤを回転させるため、種子がケーシングの種子通過孔、種子排出孔と回転キャリヤの種子ポケットの出入口に挟まり潰れる恐れがある。
(ロ)排出される種子数は、種子ポケットの大きさにより決まるため、種子の大小により蒔き数のバラツキ、欠落が発生する。
(ハ)種子の形状、水分含有等によりケーシングや、回転キャリヤ内に種子が付着した場合、処置対策がなく密封されているため復旧が困難である。
(ニ)種子数が多く排出された場合、播種個数の修正ができずそのまま畑にまかれる。
本発明は、以上のような従来の構成が有していた問題点を解決するためなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明である種まき器は、上部枠とV字形の下部枠で構成する中空軸の先端側端面に、下方を開放した菱形開口部を有する仕切り板を設け、この仕切り板下方前方に、前記下部枠と連続するV字形の送り出し溝を設け、この送り出し溝の内面と前記仕切り板の菱形開口部に内接するそろばん玉状の弾性部材からなる回転体を設けて、前記仕切り板の下方に種子通過可能な大きさの流出口と、前記送り出し溝との接点に種子より小さい送り出し口を形成したことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明である種まき器は、前記送り出し溝の先端下方に、樋状の仮受皿を設けたことを特徴とする。
【0006】
(イ)前記の種子が挟まり潰れる恐れがある課題を達成するための本発明第1の解決手段は、請求項1に記載するように、そろばん玉状の弾性部材からなる回転体を設けて、前記回転体の外周と、前記送り出し溝の内面底で種子を挟んで送り出すことを特徴とする。
(ロ)前記の種子の大小により蒔き数のバラツキ、欠落が発生する課題を達成するための本発明第2の解決手段は、請求項1に記載するように、前記そろばん玉状の弾性部材からなる回転体により、前記仕切り板の下方に種子通過可能な大きさの流出口と、前記送り出し溝との接点で種子より小さい送り出し口を形成したことを特徴とする。
(ハ)前記のケーシングや、回転キャリヤ内に種子が付着した場合、処置対策がなく密封されているため復旧が困難である課題を達成するための第3の解決手段は、請求項1に記載するように、中空軸の先端側端面に、下方を開放した菱形開口部を有する仕切り板を設け、そろばん玉状の弾性部材からなる回転体の外周側の一部が前記中空軸側に部分的にはみ出るように設けたことを特徴とする。
(ニ)前記の、種子数が多く排出された場合、播種個数の修正ができずそのまま畑にまかれる課題を達成するための本発明の第4の解決手段は、請求項2に記載するように、前記送り出し溝の先端下方に、送り出した種子を受け取る樋状の仮受皿を設けたことを特徴とする。
【0007】
(イ)前記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、弾性部材からなる回転体は、柔軟なため、種子の形状、大きさに順応して変形する。
(ロ)前記第2の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、中空軸内の種子は、中空軸を前側に傾けると、種子の大きさより若干大きい流出口より少しずつ流れ出るため、先端側に設けられたV字形底面の送り出し溝で1列に並ぶ。そして並んだ種子は、弾性部材からなるそろばん玉状の回転体を指で回すことにより、回転体の外周と送り出し溝の内面底に挟まれて一粒ずつ前方に送り出される。
(ハ)前記第3の解決手段による作用は次の通りである。すなわち、中空軸内の種子は、前記回転体の外周側が、種子を収納する中空軸端面の仕切り板より中空軸側に部分的にはみ出ているため、回転体が回転するたびに動かされる。
(ニ)前記第4の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、送り出された種子は、畑に蒔く前、一旦仮受皿に仮置きされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のような構成及び作用であるから、以下のような効果を発揮できる。
(イ)種子が、弾性部材からなるそろばん玉状の回転体で送り出されるため、潰れない。また、種子形状や大きさの影響が少なく、あらゆる種子が蒔ける。
(ロ)種子が一粒ずつ送り出されるため、計数が容易で、任意の粒数が選べる。
(ハ)種子が、回転体により動かされるため、中空軸内に付着しない。また、万一中空軸内で固まっても、回転体を逆回転させれば簡単に崩れる。
(ニ)送り出された種子は、蒔く前に、仮受皿に一旦仮置きされるため、個数の把握と調整ができ、必要種子数を正確に蒔くことができる。そして、種子が無駄にならず、間引き作業も不要となり作業者の負担が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態を、図1〜図5に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の構成を示す外観図である。(31)は断面菱形又は楕円形の中空軸で種子収納容器の役割を果たすと共に、種蒔き器を持つ部分である。(32)は送り出し部で、種子を一つずつ送り出す部分である。(33)は種蒔き部で、種子個数を確認し、所定の位置に払い出し、播種し、土を被せる部分である。外観的に見える主な構成は、上部枠(6)、回転体(1)、仮受皿(4)、土寄せ板(12)、バンド(13)である。中空軸(31)の材質は、透明な硬質プラスチック等で、内部の様子が確認できる。
【0010】
図2は、本発明の実施の要部の構成と動作を説明する図で、うち図2の(a)は要部の配置を示すための部分断面を含む側面図である。
図2の(a)では、破断面のため取付アーム(10)は表示されてないが、図3の(b)のように中空軸(31)の上部枠(6)の前側には取付アーム(10)がある。そして、軸(11)を介してスポンジ等の弾性材からなる回転体(1)が指操作で回転可能に中空軸(31)の上側より突出して取付けられている。また、図3の(c)のように、上部内枠(7)の先端は、回転体(1)の外周側の一部が入り込むように菱形の開口部を有した
仕切り板(2)になっている。そして図2の(a)のように、仕切り板(2)は下部枠(9)側に曲がり流出口(21)を形成する。更に、下部枠(9)の先には、下部枠(9)を延長したV字形の送り出し溝(3)が設けてあり、送り出し口(22)を形成する。送り出し溝(3)の先には種子の落ちる切り出し口(17)が設けてある。
【0011】
なお、上部枠(6)と下部枠(9)の材質は、硬質プラスチック等のため若干のたわみが発生し、流出口(21)と送り出し口(22)の大きさが変わる。その対策として、図2の(a)のように、上部枠(6)の外面を先端側ほど高くし、上部枠(6)と下部枠(9)に跨るバンド(13)の位置を前後に変えることにより、上部枠(6)と下部枠(9)、回転体(1)と送り出し溝(3)の隙間が調整できるようにしている。なお、この現象は種子(20)の大きさ変化に対応するための有効な手段ともなる。例えば人参のような極小の種子を蒔く時には、バンド(13)を回転体(1)の方向へ移動さすことにより、仕切り板(2)の菱形の開口部は送り出し溝(3)のV字形側面に押し付けられるため狭くなり、流出口(21)が小さくなる。また、回転体(1)の外周と送り出し溝(3)の内面の隙も狭くなり、送り出し口(22)も小さくなる。このため小さな種子も正確に、1粒ずつ送り出すことができる。
【0012】
更に図2の(a)のように、切り出し口(17)の先端には種子(20)が飛び出さないように板状のストッパー(16)を設け、このストッパー(16)の下側に土寄せ板(12)を設け、中間位置に容器ホルダー(5)を内側に設けている。そして、種子の落ちる切り出し口(17)の下に仮受皿(4)を設けている。この仮受皿(4)は、図3の(d)のように、上端にフックを有しており、送り出し溝(3)の縁にこのフックを掛け、容器ホルダー(5)に載せて装着する。これにより仮受皿(4)が着脱可能になり、作業者の利き手に合わせて払い出し方向が左右自由に選べる。
【0013】
図2の(b)は、図2(a)中の(B−B)線上に沿った回転体、送り出し溝の形状を示す断面図である。上部枠(6)の先の部分を二又にした取付アーム(10)に設けた通し穴(19)に、軸(11)を通し回転体(1)を上部枠(6)に固定するものである。また、送り出し溝(3)はV字形の溝で中心部が最も深い形状である。
【0014】
図3は、本発明の実施の構成を部品別に説明する分解図である。うち図3の(a)は、回転体と上部枠の取り付け方法を示す。上部枠(6)の先端取付アーム(10)の通し穴(19)に回転体(1)の中心を合わせ、軸(11)を差し込み、リング(18)で留める。図3の(b)は、組み立てた状態を示す。
【0015】
図3の(c)は、仕切り板を備えた上部内枠の外観図であり、仕切り板(2)を中空軸(31)の先端側端面に設けるための上部内枠(7)を示す。この上部内枠(7)は、前後スライド可能で、上部枠(6)の内側に重ねて設け、回転体(1)と仕切り板(2)の菱形開口部内面の隙間の調整をする。形状は上部枠(6)と同形で、下部枠(9)と対をなし、種子を収納する中空軸(31)の内面空間を形成する。なお、隙間調整後、上部枠(6)と上部内枠(7)はセロハンテープや両面テープ等でずれないように固定する。上部枠(6)と下部枠(9)の固定も同様にセロハンテープ等で固定する。
【0016】
図3の(d)は、下部枠と送り出し溝と種蒔き部の構成を説明する分解図と、バンド(13)、栓(14)、キャップ(15)の配置順を示す分解図である。下部枠(9)を延長して、下部枠(9)の内面より少し低い位置に送り溝(3)を設けている。この送り溝(3)の先端に送り出した種子が落ちる切り出し口(17)を設け、その先に、ストッパー(16)、容器ホルダー(5)、土寄せ板(12)を一体に設け、更に、切り出し口(17)の下に、落下した種子を受ける樋状の仮受皿(4)を脱着可能に設けた構造である。そして、中空軸(31)の付属品、菱形中空のバンド(13)、中空軸(31)の後端面を塞ぐ栓(14)と中空軸(31)に被せるキャップ(15)を、図のような順に設けている。
【0017】
本発明の使用方法を以下図2、図3、図5に基づいて説明する。
種蒔き器へ種子(20)を補充する方法は、図2の(a)に示す中空軸(31)の後端面のキャップ(15)を外し、図3の(d)に示す内側の栓(14)を抜き、中空軸(31)に種子(20)を注ぎ込む。
【0018】
播種種子(20)の計数方法は、図5の(a)のように中空軸(31)を掌で持ち、種蒔き器の先端側を下げ、仮受皿(4)を水平に保ち、人差し指で回転体(1)を矢印の方向に少しずつ回し、一粒ずつ種子(20)を仮受皿(4)に落として行う。もし、図2の(a)で示す、仕切り板(2)の近くで種子の詰まりが発生した場合は、回転体(1)を反矢印方向に少し逆回転させれば、固まりは容易に崩れ、正常に戻る。
【0019】
仮受皿(4)より、所定の位置に種子(20)を蒔く方法は、図5の(b)のように手首を捻ることにより、仮受皿(4)を傾け、種子(20)を払い出す。この時、仮受皿(4)の傾き具合により、仮受皿(4)内に種子(20)を残すこともできる。 また、種子をばら蒔きする時きは、前記のように仮受皿(4)を傾けた状態で、回転体(1)を少しずつ回しながら、蒔く位置を変えていく。
そして、蒔いた種子(20)に土寄せ板(12)で土を被せて種蒔き作業が終る。
【0020】
次に、本発明の上記実施形態以外の変形形態について図3、図4に基づいて説明する。
実施例では図3の(d)のように送り出し溝(3)が下部枠(9)の先に切り込まれているが、図4の(a)のような下部内枠(8)を別に設けることにより、図4の(b)のような変形下部枠(23)にすることができる。これにより、送り出し溝(3)を別に切り込む必要がなくなり、加工が容易になる。このようにして、下部内枠(8)と変形下部枠(23)を重ねた状態が図4の(c)に示す外観図で、上記本発明の実施例図3の(d)の下部枠(9)と同様になる。
【0021】
なお、上記の以外の変形形態として、図4の(a)の下部内枠(8)を設けず、図4の(b)の変形下部枠(23)のみの形態も実施可能である。
また、図4の(d)のように、丸、又は楕円形のキャップ(15)を長くして、バンド(13)を省略すると共に、菱形の中空軸(31)を握りやすくした変形形態も実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
中空軸部(31)、送り出し部(32)を用いて、小粒な薬品、ベアリング等の計数、送り出し用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の構成を示す外観図である。
【図2】本発明の実施の要部の構成と動作を説明する図で、(a)は要部の配置を示すための部分断面を含む側面図であり、(b)は図2(a)中の(B−B)線上に沿った回転体、送り出し溝の形状を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の構成を部品別に説明する分解図で、(a)は回転体と上部枠の分解図であり、(b)は回転体と上部枠の組み立て図であり、(c)は仕切り板を備えた上部内枠の外観図であり、(d)は下部枠と送り出し溝と種蒔き部の構成を説明する分解図と、バンド、栓、キャップの配置順を示す分解図である。
【図4】本発明の変形形態を示す図で、(a)は下部内枠の外観図であり、(b)は変形下部枠の外観図であり、(c)は下部内枠と変形下部枠の組み立て外観図であり、(d)はキャップの長い変形形態を示す外観図である。
【図5】本発明の種蒔き器使用状況を示す図で、(a)は種子送り出し時の使用状態を示す外観側面図であり、(b)は種子払い出し時の使用状態を示す外観図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・回転体 2・・・仕切り板 3・・・送り出し溝 4・・・仮受皿 5・・・容器ホルダー 6・・・上部枠 7・・・上部内枠 8・・・下部内枠 9・・・下部枠
10・・・取付アーム 11・・・軸 12・・・土寄せ板 13・・・バンド 14・・・栓 15・・・キャップ 16・・・ストッパー 17・・・切り出し口 18・・・リング 19・・・通し穴 20・・・種子 21・・・流出口 22・・・送り出し口
23・・・変形下部枠 31・・・中空軸 32・・・送り出し部 33・・・種蒔き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部枠とV字形の下部枠で構成する中空軸の先端側端面に、下方を開放した菱形開口部を有する仕切り板を設け、この仕切り板下方前方に、前記下部枠と連続するV字形の送り出し溝を設け、この送り出し溝の内面と前記仕切り板の菱形開口部に内接するそろばん玉状の弾性部材からなる回転体を設けて、前記仕切り板の下方に種子通過可能な大きさの流出口と、前記送り出し溝との接点に種子より小さい送り出し口を形成したことを特徴とする種蒔き器。
【請求項2】
前記送り出し溝の先端下方に、樋状の仮受皿を設けたことを特徴とする請求項1記載
の種蒔き器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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