説明

稲作に施用するためのベンゾイルシクロヘキサンジオン群からの相乗的作物耐性除草剤の組み合わせ

ベンスルフロン−メチル、ベンゾビシクロン、ブロモブチド、シハロホップ−ブチル、エトキシスルフロン、フェノキシプロップ−P−エチル、フェントラザミド、ピラゾリナート、ピリミスルファン、スルコトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオン、及び場合によりイソキサジフェン−エチルを含む除草剤の組み合わせが開示されている。該組み合わせは、個々に施用される除草剤と比較して驚くべき効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望ましくない植物の生育に対して使用することができ、そして活性物質として少なくとも2つの除草剤の組み合わせを含む、植物保護組成物の技術分野に関する。
【0002】
より特別には、本発明は、活性物質として、少なくとも1つの更なる除草剤と組み合わせた、ベンゾイルシクロヘキサンジオンから成る群から選択される除草剤を含む、イネに使用する除草剤の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0003】
ベンゾイルシクロヘキサンジオン類の上記の群からの除草剤は多くの文献により公知である。このように、例えば、多くのそのような化合物の除草作用は特許文献1に記載されている。その特許に記載の幾つかのベンゾイルシクロヘキサンジオン類は、稲作で発生する有害植物に対して十分な除草作用を呈する。
【0004】
しかしながら、実際には、これらの文献により公知のベンゾイルシクロヘキサンジオン類の使用に伴なう欠点が頻繁に見られる。このように、除草活性は必ずしも十分ではないか又は、十分な除草活性を有してもイネへの望ましくない被害が見られる。
【0005】
除草剤の有効性は、とりわけ、使用する除草剤のタイプ、その施用量、組成物、それぞれの場合防除すべき有害植物、気候及び土壌条件などによって決まる。更なる基準は、除草剤の作用期間又は分解速度である。適切な場合、相対的に長期使用時又は地理的に制限された区域で起こり得る、活性物質に対する有害植物の感受性の変化も考慮すべきである。このような変化は程度の差はあれ活性の重大な損失として表わされ、高い除草剤施用量によっても、限られた程度にしか補償されない可能性がある。
【0006】
多数の可能な影響因子ゆえに、実際上、特に有害植物種及び気候帯に関して、異なる要求に対して求められる特徴をそれ自体兼ね備えた個々の活性物質はない。加えて、常に低い除草剤施用量で効果を実現するという普遍の課題がある。低い施用量は、施用に必要な活性物質量を減少させるだけでなく、必要な製剤助剤をも一般的に減少させる。両者は経済コストを低減し、そして除草剤処理の生態的適合性を向上させる。
【0007】
除草剤の施用プロファイルを向上させるために頻用される1つの方法は、活性物質を、所望する更なる特徴に寄与する1つ又はそれ以上の他の活性物質と組み合わせることである。しかしながら、数種の活性物質の併用は、物理的及び生物的不適合性の現象、例えば、組み合わせ製剤の安定性の欠如、活性物質の分解又は活性物質のアンタゴニズムをしばしばもたらす。他方で、望まれることは、組み合わせる活性物質の個々の施用と比べて施用量の減少を可能にする、好適な活性プロファイル、高い安定性及び最大に可能な相乗的活性強化を有する活性化合物の組み合わせである。
【0008】
特許文献2及び3は、特定のベンゾイル−1,3−シクロヘキサンジオンと種々の除草剤との除草性混合物を記載している。特許文献4は、特定のベンゾイル−1,3−シクロヘキサンジオンと薬害軽減剤との除草性混合物を記載している。しかしながら、実際上、これらの混合物には重大な欠点がある。即ち、有用植物、特にイネに対するそれらの適合性は必ずしも十分ではなく、そして有害植物に対するそれらの活性は、同じように必ずしも十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報第00/21924号
【特許文献2】国際公開公報第02/089582号
【特許文献3】国際公開公報第02/085118号
【特許文献4】国際公開公報第02/085120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、当該技術の現状と比較して改良された特徴を有する、特に稲作に使用される除草剤の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
A)農業に通常使用される化合物のテンボトリオン、及びまたその塩(成分A);
B)ベンゾビシクロン、ピラゾリナート、スルコトリオン、テフリルトリオン及びブロモブチドから成る群から選択される1つの化合物(成分B);及び、
C)適切な場合、薬害軽減剤のイソキサジフェン−エチル(成分C);
の有効量を含む、除草剤の組み合わせに関する。
【0012】
本発明は、同様に、
A)農業に通常使用される化合物のテンボトリオン、及びまたその塩(成分A);
B)テフリルトリオン、シハロホップ−ブチル、フェノキサプロップ−P−エチル、フェノキサプロップ−エチル、ベンスルフロン−メチル、エトキシスルフロン、フェントラザアミド及びピリミスルファンから成る群から選択される少なくとも2つの化合物(成分B);及び、
C)適切な場合、薬害軽減剤のイソキサジフェン−エチル(成分C);
の有効量を含む、除草剤の組み合わせに関する。
【0013】
本発明は更に、
A)農業に通常使用される化合物のテフリルトリオン、及びまたその塩(成分A);
B)シハロホップ−ブチル、フェノキサプロップ−P−エチル、フェノキサプロップ−エチル、ベンスルフロン−メチル、エトキシスルフロン及びフェントラザアミドから成る群から選択される少なくとも2つの化合物(成分B);及び、
C)適切な場合、薬害軽減剤のイソキサジフェン−エチル(成分C);
の有効量を含む、除草剤の組み合わせに関する。
【0014】
本発明の組み合わせは、a:b:cの質量比で成分A、B及びCを含み、ここで、a及びbは、いずれの場合も互いに独立に、1〜200の値、好ましくは1〜100の値を取ることができ、そしてcは0〜200の値、好ましくは0〜100の値を取ることができる。
【0015】
用語「成分A」、「除草剤A」及び「活性物質A」は、本明細書の文脈において同義語と解釈されるべきものである。同じことが、用語「成分B」、「除草剤B」及び「活性物質B」、そしてまた「成分C」、「薬害軽減剤C」及び「活性物質C」にも当てはまる。
【0016】
本発明の組み合わせでは、一般的に、10〜1,000g、好ましくは10〜500gの範囲の成分Aの1ヘクタール当り活性成分(ai/ha)、及び1〜1,000g、好ましくは5〜500gの成分Bの施用量を有することが必要である。成分Cは、通常、0〜500g、好ましくは0〜400gの範囲の1ヘクタール当り活性成分(ai/ha)の施用量で使用される。
【0017】
最適質量比は、施用するそれぞれの田畑、雑草スペクトル及び使用する活性物質の組み合わせに依存し、そして予備実験で決めることができる。
【0018】
それぞれ一般名を有する上記の活性物質は、例えば、「除草剤便覧」(The Pesticide Manual), 14th edition, 2006, British Crop Protection Council, and the website “http://www.alanwood.net/pesticides/により公知である。本明細書の文脈において、活性物質の一般名の短縮形が使用される場合、これは、それぞれの場合、エステル及び塩、並びに異性体、特に光学異性体、特に市販の形態又は複数の形態のような、全ての一般的なルーター(routers)を含む。エステル及び塩が一般名によって記載される場合、これは、そのぞれの場合、他のエステル及び塩、遊離酸及び中性化合物、及び異性体、特に光学異性体、特に市販形態又は複数の形態などのような、全ての他の一般的な誘導体を含む。所定の化合物名は、一般名の下に含まれる少なくとも1つの化合物、しばしば好ましい化合物を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
下記の活性化合物の組み合わせを含む除草剤の組み合わせが好ましい:
テンボトリオン+ベンゾビシクロン、
テンボトリオン+ピラゾリナート、
テンボトリオン+スルコトリオン、
テンボトリオン+テフリルトリオン、
テンボトリオン+ブロモブチド、
テンボトリオン+ベンゾビシクロン+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+ピラゾリナート+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+スルコトリオン+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+テフリルトリオン+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+ブロモブチド+イソキサジフェン−エチル;
【0020】
テンボトリオン+テフリルトリオン+フェントラザミド、
テンボトリオン+テフリルトリオン+シハロホップ−ブチル、
テンボトリオン+テフリルトリオン+ピリミスルファン;
【0021】
テンボトリオン+テフリルトリオン+フェントラザミド+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+テフリルトリオン+シハロホップ−ブチル+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+テフリルトリオン+ピリミスルファン+イソキサジフェン−エチル;
【0022】
テンボトリオン+ベンスルフロン−メチル+フェントラザミド、
テフリルトリオン+ベンスルフロン−メチル+フェントラザミド、
テンボトリオン+エトキシスルフロン+シハロホップ−ブチル、
テンボトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−P−エチル、
テンボトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−エチル、
テフリルトリオン+エトキシスルフロン+シハロホップ−ブチル、
テフリルトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−P−エチル、
テフリルトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−エチル;
テンボトリオン+ベンスルフロン−メチル+フェントラザミド+イソキサジフェン−エチル、
テフリルトリオン+ベンスルフロン−メチル+フェントラザミド+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+エトキシスルフロン+シハロホップ−ブチル+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−P−エチル+イソキサジフェン−エチル、
テンボトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−エチル+イソキサジフェン−エチル、
テフリルトリオン+エトキシスルフロン+シハロホップ−ブチル+イソキサジフェン−エチル、
テフリルトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−P−エチル+イソキサジフェン−エチル、
テフリルトリオン+エトキシスルフロン+フェノキサプロップ−エチル+イソキサジフェン−エチル。
【0023】
本発明の組み合わせは、稲作における有害植物の選択的防除に非常に好適である。
【0024】
本発明の組み合わせは、イネの除草剤に対し一般的な全てのタイプの施用法で使用し得る。それらは噴霧施用及び水面施用で特に有利に使用される。水面施用では、田面水は施用時には既に30mmまで地面を覆っている。次いで、本発明の組み合わせは直接田面水に、例えば、顆粒剤の形態で入れられる。世界的には、専ら種蒔きしたイネに噴霧施用が使用され、そして水面施用は専ら田植え後のイネに使用される。
【0025】
本発明の組み合わせは、広い雑草スペクトルを含む。それらは、例えば、イチビ(Abutilon)、イネ科(Alopecurus)、カラスムギ属(Avena)、アカザ(Chenopodium)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カヤツリグサ科(Cyperus)、イネ科(Digitaria)、イネ科(Echinochloa)、イネ科(Elymus)、アカネ科(Galium)、サツマイモ属(Ipomoea)、シソ科(Lamium)、カミツレ(Matricaria)、ウキヤガラ(Scirpus)、エノコログサ属(Setaria)、モロコシ属(Sorghum)、 キク科(Veronica)、スミレ科(Viola)及びオナモミ(Xanthium)、特にイネ科(Echinochloa spp.)、イネ科(Leptochloa spp.)、カヤツリグサ科(Scirpus spp.)、カヤツリグサ科(Cyperus spp.、オモダカ科(Sagittaria spp.)、ミズアオイ科(Monochoria spp.)、ゴマノハグサ科(Lindernia spp.)、カヤツリグサ科(Eleocharis spp.)及びマメ科(Sesbania spp.)などの、例えば、一年生及び多年生有害植物の防除に好適である。
【0026】
本発明の除草剤の組み合わせは、組み合わせて使用される成分A及びBの有効用量が個々の用量について減少し、その結果、活性物質の必要な施用量の減少が可能となる点においても優れている。
【0027】
本発明の除草剤の組み合わせは、好ましい実施態様において、同時に、栽培植物に関して高い適合性との相乗効果を呈する。例えば、成分A、B及びCの組み合わせ施用により、栽培植物に関して相乗効果及び高い適合性を認めることができる;しかしながら、そのことは、活性物質を異なる時点に施用した場合(分割施用)も、しばしば認めることができる。また、個々の除草剤及び薬害軽減剤又は除草剤と薬害軽減剤の組み合わせを何回かに分けて施用すること(体系施用)、例えば、発芽前施用に続く発芽後施用、又は早期発芽後施用に続く中間若しくは後期の発芽後施用も可能である。これに関連して、本発明の除草剤の組み合わせの活性物質の併用、又は実質的な同時施用が好ましい。
【0028】
相乗効果は、個々の活性物質の施用量の低減、同じ施用量でのより大きな効果、これまで含まれなかった種の防除(ギャップ)、施用期間の延長及び/又は必要な個々の施用数の減少、及び使用者向けの結果として、経済的及び生態学的により有利な雑草防除システムを可能にする。
【0029】
本発明は、また、成分A、B及びCに加えて、適切な場合、除草剤、殺虫剤、殺菌剤又は薬害軽減剤など、種々の構造を有する1つ又はそれ以上の更なる農業用化学薬剤の活性物質を含む除草剤の組み合わせをも含む。上記で説明した及び以下に説明する好ましい条件は、そのような組み合わせに対しても同様に有効である。これらの更なる農業用化学薬剤の活性物質は、別々に製剤化し又は一部別々に製剤化した成分を一緒に希釈することにより「レディミックス」及び「タンクミックス」として、いずれも本発明の組み合わせで施用することができる。
【0030】
同じように本発明は、また、特に、成分A、B及びCに加えて、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、硝酸カリウム及びそれらの混合物などの肥料をも含むそれらの組み合わせを含む。上記で説明した及び以下に説明する好ましい条件は、そのような組み合わせに対しても同じように有効である。
【0031】
更に本発明は、また、成分A、B及びCに加えて、乳化剤、分散剤、尿素、ミネラル及び植物油、並びにそれらの混合物などの補助剤をも含むそれらの組み合わせを含む。上記で説明した及び以下に説明する好ましい条件は、そのような組み合わせに対しても同じように有効である。
【0032】
本発明の組み合わせは、除草剤A、B及び薬害軽減剤C、並びに適切な場合更なる従来の製剤助剤の混合製剤として、いずれも存在することができ、これらは、次いで、水で希釈して従来の方法で使用され、又は、例えば、水又は上記したような肥料の水溶液を用いて、別々に製剤化された又は一部別々に製剤化された成分を一緒に希釈することにより、「タンクミックス」として調製することができる。
【0033】
本発明の組み合わせは、有害植物、特に稲作における有害植物の防除に非常に好適である。従って、本発明の別の主題は、望ましくない植物生育を防除する方法であり、この方法は、1つ又はそれ以上の本発明の組み合わせを、有害植物、その植物の部分又は耕作中の区域に施用することを含む。
【0034】
成分A、B、及び適切な場合Cは、種々の方法で製剤化することができ、その方法に依存して生物学的及び/又は化学的/物理的パラメータが規定される。例えば、以下が一般的な製剤候補として可能である:水和剤(WP)、乳剤(EC)、水性液剤(SL)、水中油及び油中水などの乳剤(EW)、噴霧可能液剤又は乳剤、油性又は水性の分散剤、懸濁乳剤、散粉剤(DP)、種子粉衣、土壌施用又は散布用顆粒剤、水分散性顆粒剤(WG)、ULV製剤、マイクロカプセル又はろう剤。
【0035】
個々の製剤タイプは原理的に公知であり、そして、例えば、以下の文献に記載されている:Winnacker-Kuechler,「化学技術」(Chemische Technologie) [Chemical Technology], Volume 7, C. Hauser Verlag, Munich, 4th edition, 1986; van Valkenburg, 「農薬製剤」(Pesticide Formulations), Marcel Dekker, N.Y., 1973; K. Martens, 「噴霧乾燥ハンドブック」(Spray Drying Handbook), 3rd Ed., 1979, G. Goodwin Ltd., London。不活性物質、界面活性剤、溶媒及び他の添加剤など必要な製剤助剤は公知であり、そして、例えば、以下の文献に記載されている:Watkins,「殺虫剤粉末希釈剤及び担体ハンドブック」(Handbook of Insecticide Dust Diluents and Carriers), 2nd Ed., Darland Books, Caldwell, N.J.; H.v. Olphen, 「粘土コロイド化学概論」(Introduction to Clay Colloid Chemistry), 2nd Ed., J. Wiley & Sons, N.Y.; Marsden, 「溶媒ガイド」(Solvents Guide), 2nd Ed., Interscience, N.Y., 1950; McCutcheon's, 「界面活性剤及び乳化剤年鑑」(Detergents and Emulsifiers Annual), MC Publ. Corp., Ridgewood, N.J.; Sisley and Wood, 「界面活性剤事典」(Encyclopedia of Surface Active Agents), Chem. Publ. Co. Inc., N.Y., 1964; Schoenfeldt, 「界面活性エチレンオキシドアダクト」(Grenzflaechenaktive Aethylenoxidaddukte) [Surface-active Ethylene Oxide Adducts], Wiss. Verlagsgesellschaft, Stuttgart, 1976; Winnacker-Kuechler, 「化学技術」(Chemische Technologie) [Chemical Technology], Volume 7, C.
Hauser Verlag Munich, 4th Ed., 1986。
【0036】
これらの製剤に基づき、他の除草剤、殺菌剤又は殺虫剤、及びまた薬害軽減剤、肥料及び/又は成長調節剤などの農薬活性物質との組み合わせも、また、例えば、レディミックスの形態で又はタンクミックスとして製造し得る。
【0037】
水和剤は、水に均一に分散することができ、且つ、活性物質に加えて、イオン性又は非イオン性界面活性剤(湿潤剤、分散剤)、例えば、ポリオキシエチル化アルキルフェノール、ポリエトキシル化脂肪族アルコール又は脂肪族アミン、アルカンスルホナート又はアルキルベンゼンスルホナート、リグノスルホン酸ナトリウム、2,2’−ジナフチルメタン−6,6’−ジスルホナート、ジブチルナフタレンスルホナート又はオレイルメチルタウリン酸ナトリウムを、希釈剤又は不活性物質に加えて含む製剤である。
【0038】
乳剤は、有機溶媒、例えば、ブタノール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、キシレン又は高沸点の芳香族化合物又は炭化水素に、1つ又はそれ以上のイオン性及び/又は非イオン性界面活性剤(乳化剤)と共に、活性化合物を溶解することにより製造される。乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなどのアルキルアリールスルホン酸カルシウム、又は脂肪酸ポリグリコールエステル、アルキルアリールポリグリコールエーテル、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、プロピレンオキシド/エチレンオキシド縮合物、アルキルポリエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトールエステルなどの非イオン性乳化剤を使用してもよい。
【0039】
散粉剤は、活性化合物を微粉砕固体物質、例えば、タルク、カオリン、ベントナイト及び葉ろう石などの自然粘土、又は珪藻土と粉砕することにより得られる。
【0040】
顆粒剤は、吸着性顆粒化不活性物質上へ活性物質を噴霧することによるか、又は活性物質濃縮物を、砂若しくはカオリナイトのような担体又は顆粒化不活性物質の表面に、結合剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム又は他に鉱油を用いて、塗布することにより製造し得る。好適な活性物質は、必要に応じて肥料との混合物として、肥料顆粒剤の製造の標準的方法で顆粒化することもできる。水分散顆粒剤は、一般的に噴霧乾燥、流動床造粒、ディスク造粒、高速混合機による混合及び固体不活性物質なしの押し出しなどの方法に従って製造される。
【0041】
農業用化学薬剤組成物は、一般的に0.1〜99質量%、特に0.2〜95質量%の活性物質A、B、及び適切な場合C、並びにまた、植物保護において慣例的な99.8〜5質量%の製剤化薬剤を含むが、以下の濃度が製剤のタイプにより標準となる:水和剤では、活性物質の濃度は、例えば、およそ10〜95質量%であり、100質量%の残りは、標準的な製剤成分から成る。乳剤では、活性物質濃度は、5〜80質量%である。粉末の形態での製剤は、大部分5〜20質量%の活性物質を含み、噴霧溶液はおよそ0.2〜25質量%の活性物質を含む。分散顆粒剤などの顆粒剤では、活性物質含量は、活性化合物が液体又は固体形態で存在するかどうか、そしてどのような造粒助剤及び増量剤が使用されているかに一部依存する。水分散顆粒剤では、その含量は一般的に10〜90質量%の間である。加えて、上記の活性物質製剤は、適切な場合、それぞれの場合標準となる粘着付与剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、保存剤、不凍剤、溶媒、増量剤、着色剤、担体、消泡剤、蒸発抑制剤、pH調節剤又は粘度調整剤を含む。
【0042】
使用のために、市販剤形で存在する製剤は、適切な場合、標準的な方法で、例えば、水和剤、乳剤、分散剤及び水分散顆粒剤では水を用いて希釈される。粉末、土壌顆粒剤、散布顆粒剤及び噴霧性液剤の形態の組成物は、通常使用前に更なる不活性物質で更に希釈されない。
【0043】
活性物質は、植物、植物部分、植物種子又は耕作区域(耕地)に、好ましくは緑色植物及び植物部分、並びに適切な場合追加して耕地に施用し得る。
【0044】
1つの使用の可能性は、タンクミックスの形態における活性物質の共同施用であり、この場合、個々の活性物質の最適に製剤化された濃縮製剤は、タンク内で水と共に混合され、そして得られた噴霧用混合物が施用される。
【0045】
成分A、B及び適切な場合Cの本発明の組み合わせの共同除草製剤は、成分の量が既に互いに正しい比に調整されていることから、より容易に施用し得るという利点を有する。更に、製剤中の助剤は互いに最適に適合し得るのに対して、異なる製剤のタンクミックスは、望ましくない助剤の組み合わせを与え得る。
【0046】
〔A製剤実施例〕
a)散粉剤(WP)は、活性物質/活性物質混合物(10質量部)、及び不活性物質としてタルク(90質量部)を混合し、そしてハンマーミル中で微粉化して得た。
b)水に直ちに分散可能な水和剤(WG)は、活性物質/活性物質混合物(25質量部)、不活性物質としてカオリン含有石英(64質量部)、リグノスルホン酸カリウム(10質量部)、及び湿潤剤及び分散剤としてオレイルメチルタウリン酸ナトリウム(1質量部)を混合し、そしてピンミル中で粉砕することによって得た。
c)水に直ちに分散可能な分散剤は、活性物質/活性物質混合物(20質量部)を、アルキルフェノールポリグリコールエーテル(Triton X 207)(6質量部)、イソトリデカノールポリグリコールエーテル(8EO)(3質量部)、及びパラフィン系鉱油(沸点範囲、例えば、およそ255〜277℃)(71質量部)と混合し、そして摩擦ボールミル中で5ミクロン未満の粉末度まで粉砕することによって得た。
d)乳剤(EC)は、活性物質/活性物質混合物(15質量部)、溶媒としてシクロヘキサノン(75質量部)、及び乳化剤としてオキシエチル化ノニルフェノール(10質量部)から得た。
e)水分散顆粒剤は、以下の成分:
活性物質/活性物質混合物(75質量部);
リグノスルホン酸カルシウム(10質量部);
ラウリル硫酸ナトリウム(5質量部);
ポリビニルアルコール(3質量部);及び
カオリン(7質量部);
を混合し、ピンミル中で粉砕し、そして造粒液として水を噴霧し、その粉末を流動床中で粒状することにより得た。
f)水分散顆粒剤は、また、以下の成分:
活性物質/活性物質混合物(25質量部);
2,2’−ジナフチルメタン−6,6’−ジスルホン酸ナトリウム(5質量部);
オレイルメチルタウリン酸ナトリウム(2質量部);
ポリビニルアルコール(1質量部);
炭酸カルシウム(17質量部);及び
水(50質量部);
をコロイドミル中で均質化して予備微粉化し、続いてビーズミルで粉砕し、そしてこのようにして得られた懸濁液を、単一物質ノズルを用いて噴霧塔内で微粒子化し乾燥することにより得た。
【0047】
〔B生物学的実施例〕
発芽後雑草除去作用
単子葉及び双子葉有害植物の種子又は根部分を、ポット中の砂壌土に入れ、覆土し、そして良好な生育条件(温度、空気湿度、給水)下、温室で管理した。播種後およそ3週で、除草活性物質又は本発明の組み合わせで、植物を2〜3葉期に処理した。噴霧施用では、水和剤又は乳剤として製剤化した本発明の組み合わせを、600〜800l/ha(換算して)の水散布量により異なる用量で緑色植物に噴霧した。施用の数日後直ちに、試験容器には地表面から30mmまで水を溜めた。他方、水散布(水面施用)では、閉鎖した試験容器の地面は、施用時に30mmまで田面水で既に覆われていた。製剤化活性物質は、ここで、田面水に直接加えられた。試験植物を最適生育条件下に更に3〜4週間温室にて曝露した後、製剤の効果を未処理対照と比較して目視で評価した。本発明の組み合わせは、発芽後でも広い範囲の経済的に重要な有害植物に対して非常に良好な除草活性を示した。これに関連して、個々に施用した場合の除草作用の形式的な総和を超える本発明の組み合わせの作用がしばしば認められた。試験で認められた値は、好適な低用量で、コルビーによる期待値を上回る組み合わせの作用を示した。
【0048】
本発明の組み合わせを使用した場合、単独施用の場合に存在する除草剤の作用の形式的な総和を超える、有害植物種に対する除草作用がしばしば認められた。或いはまた、除草剤の組み合わせに対する低い施用量が、個々の製剤と比べて、有害植物種で同じ作用を達成するために必要とされることが、多くの場合に認めることができた。このような作用の向上若しくは有効性の改善又は施用量における経済性は、相乗効果の強力な指標であった。
【0049】
観察された活性値が個々の施用による試験値の形式的な総和を既に超える場合、それらは同じように、以下の式に従って計算され、そして同じように相乗効果の指標と見なされるコルビーの期待値 ( S.R. Colby in Weeds, 15 (1967) pp. 20-22を参照):
【数1】

【0050】
なお、
A、B = a又はbグラムai/haの薬量におけるパーセント表示の成分A又はBの作用;
E = a+bグラムai/haの薬量における%表示の期待値;
を超える。
【0051】
下記の試験例の実測値は、コルビーの期待値より大きい(有害植物)又は低い(栽培植物)。
【0052】
略号は以下の通りである。
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
【表11】

【0063】
【表12】

【0064】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)農業に通常使用される化合物のテンボトリオン、及びまたその塩(成分A);
B)ベンゾビシクロン、ピラゾリナート、スルコトリオン、テフリルトリオン及びブロモブチドから成る群から選択される1つの化合物(成分B);及び、
C)適切な場合、薬害軽減剤のイソキサジフェン−エチル(成分C);
の有効量を含む、除草剤の組み合わせ。
【請求項2】
A)農業に通常使用される化合物のテンボトリオン、及びまたその塩(成分A);
B)テフリルトリオン、シハロホップ−ブチル、フェノキサプロップ−P−エチル、フェノキサプロップ−エチル、ベンスルフロン−メチル、エトキシスルフロン、フェントラザアミド及びピリミスルファンから成る群から選択される少なくとも2つの化合物(成分B);及び、
C)適切な場合、薬害軽減剤のイソキサジフェン−エチル(成分C);
の有効量を含む、除草剤の組み合わせ。
【請求項3】
A)農業に通常使用される化合物のテフリルトリオン、及びまたその塩(成分A);
B)シハロホップ−ブチル、フェノキサプロップ−P−エチル、フェノキサプロップ−エチル、ベンスルフロン−メチル、エトキシスルフロン及びフェントラザアミドから成る群から選択される少なくとも2つの化合物(成分B);及び、
C)適切な場合、薬害軽減剤のイソキサジフェン−エチル(成分C);
の有効量を含む除草剤の組み合わせ。
【請求項4】
成分A、B及びCがa:b:cの質量比で存在し、ここで、a及びbは、いずれの場合も互いに独立に1〜200の値を取ることができ、そしてcは0〜200の値を取ることができる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の除草剤の組み合わせ。
【請求項5】
a及びbは、いずれの場合も互いに独立に1〜100の値を取ることができ、そしてcは0〜100の値を取ることができる、請求項4に記載の除草剤の組み合わせ。
【請求項6】
成分Aは10〜1,000gの施用量で使用され、成分Bは1〜1,000gの施用量で使用され、そして成分Cは0〜500gの施用量で使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の除草剤の組み合わせ。
【請求項7】
成分Aは10〜500gの施用量で使用され、成分Bは5〜500gの施用量で使用され、そして成分Cは0〜400gの施用量で使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の除草剤の組み合わせ。
【請求項8】
0.2〜95質量%の活性物質A、B及び適切な場合C、並びにまた99.8〜5質量%の植物保護において慣例的な製剤化薬剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の除草剤の組み合わせ。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の1つ又はそれ以上の組み合わせの、除草剤の有害植物、その植物部分又は耕作区域への施用を含む、稲作における望ましくない植物の生育を防除する方法。
【請求項10】
稲作における望ましくない植物の生育の防除における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の除草剤の組み合わせの使用。

【公表番号】特表2010−530382(P2010−530382A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512557(P2010−512557)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004517
【国際公開番号】WO2008/155027
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】