説明

穀類添加うどんの製造方法及び穀類添加うどん

【課題】うどん本来の食感を損なうことなく、発芽玄米粉末などの穀類粉末を使用することにより栄養価が強化された穀類添加うどんの製造方法、及びその製造方法により製造された穀類添加うどんを提供する。
【解決手段】小麦粉と、少なくとも発芽玄米粉末を含む穀類粉末とを含む混合粉末に食塩水を加え、混練してうどんに製麺するものであり、穀類粉末は、混合粉末中に15〜25質量%含まれ、小麦粉は、中力粉55〜65質量%と強力粉45〜35質量%とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽玄米粉末などの穀類粉末を使用することにより栄養価が強化された穀類添加うどんの製造方法、及びその製造方法により製造された穀類添加うどんに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康食品に関する需要が伸びており、栄養価に富んだ様々な食材・食品が市場を賑わせている。特に、発芽玄米は、通常の玄米よりもγ−アミノ酪酸(GABA)やビタミン類などの栄養成分を豊富に含んでいるため、そのまま市販され、炊飯時に白米と混ぜるなどして用いられているほか、発芽玄米餅など発芽玄米を使用することにより栄養価が強化された食品も市販されている。また、食物繊維、カルシウム、鉄分、ビタミン類などの栄養価を強化するため、米以外にハト麦、大麦といった麦や粟・稗などを混合したものも、いわゆる五穀米として市販されている。
【0003】
このような背景から、うどんについても、発芽玄米入りうどん(特許文献1参照)など、小麦粉以外の穀類粉末を使用したものが提案されている。この特許文献1に記載の発芽玄米入りうどんは、発芽玄米を膨化処理した材料を粉末化して得られた発芽玄米加工粉末を小麦粉と混合し、この混合粉末に水を加えて混練した後、うどんに製麺することにより製造される。なお、発芽玄米加工粉末は、混合粉末中に10〜40質量%使用される。
【特許文献1】特開2004−194543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発芽玄米入りうどんは、従来のうどん用の小麦粉の一部を発芽玄米加工粉末で置き換えただけのものであるため、置き換えた分だけ、うどん本来の食感が損なわれてしまっていた。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、うどん本来の食感を損なうことなく、発芽玄米粉末などの穀類粉末を使用することにより栄養価が強化された穀類添加うどんの製造方法、及びその製造方法により製造された穀類添加うどんを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、通常は中力粉が使用される小麦粉の一部を強力粉とすることにより、小麦粉の一部を発芽玄米粉末などの穀類粉末に置き換えてもうどん本来の食感が維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0007】
(1)小麦粉と、少なくとも発芽玄米粉末を含む穀類粉末とを含む混合粉末に食塩水を加え、混練してうどんに製麺する穀類添加うどんの製造方法であって、前記穀類粉末は、前記混合粉末中に15〜25質量%含まれ、前記小麦粉は、中力粉55〜65質量%と強力粉45〜35質量%とからなることを特徴とする穀類添加うどんの製造方法。
【0008】
(1)の発明によれば、小麦粉と、少なくとも発芽玄米粉末を含む穀類粉末とを含む混合粉末に食塩水を加え、混練してうどんに製麺する際に、中力粉と強力粉とが所定割合で配合された小麦粉を使用することにより、うどん本来の食感を損なうことなく、栄養価が強化された穀類添加うどんを製造することができる。
【0009】
(2)前記穀類粉末は、きな粉及び大麦粉末の少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする(1)記載の穀類添加うどんの製造方法。
【0010】
(2)の発明によれば、穀類粉末として、きな粉及び大麦粉末の少なくとも一種をさらに含めることにより、製造されるうどんの栄養価をさらに強化することができる。
【0011】
(3)前記混合粉末は、コーンスターチをさらに含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の穀類添加うどんの製造方法。
【0012】
(3)の発明によれば、混合粉末にコーンスターチを含めることにより、製造されるうどんに適度にしなやかさを補うことができる。
【0013】
(4)前記混合粉末は、小麦粉70〜80質量%、発芽玄米粉末5〜15質量%、きな粉3〜7質量%、大麦粉末3〜7質量%、及びコーンスターチ3〜7質量%からなることを特徴とする(3)記載の穀類添加うどんの製造方法。
【0014】
(4)の発明によれば、小麦粉以外に、発芽玄米粉末、きな粉、大麦粉末、及びコーンスターチを上記割合で混合することにより、うどん本来の味を損なうことなく、栄養価が強化された穀類添加うどんを製造することができる。
このような穀類は、栄養価が高いものの、例えば炊飯時に白米と混ぜていわゆる五穀米としても、穀類の味が際立ち白米よりも味が劣るため、日常的に食するには向かないものであった。これに対し、これらの穀類を粉末化し、上記割合で小麦粉に混合した混合粉末を用いて製造した穀類添加うどんは、穀類粉末が15〜25質量%と比較的多く含まれているにも関わらず、本来の食味が損なわれていないため、日常的に食するのに好適である。
【0015】
(5)(1)〜(4)のいずれか記載の穀類添加うどんの製造方法によって製造されたことを特徴とする穀類添加うどん。
【0016】
(5)の発明によれば、本発明の製造方法に従って製造することにより、うどん本来の食感を損なうことなく栄養価が強化された穀類添加うどんを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、うどん本来の食感を損なうことなく、発芽玄米粉末などの穀類粉末を使用することにより栄養価が強化された穀類添加うどんを製造することができ、そのような栄養価が強化された穀類添加うどんを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<混合粉末>
本発明の栄養強化うどんの製造方法に用いられる混合粉末は、基本的には、小麦粉と、少なくとも発芽玄米粉末を含む穀類粉末とを含むものである。
【0019】
小麦粉は、タンパク質(グリアジン、グルテニン)の含有量により、強力粉(タンパク質含有量:11.5〜13.0%)、中力粉(同:7.5〜10.5%)、薄力粉(同:6.5〜9.0%)に大別される。うどんには通常、中力粉が用いられるが、本発明の場合、中力粉と強力粉とを所定割合で配合する。
【0020】
中力粉と強力粉との配合割合は、小麦粉全量に対して、中力粉55〜65質量%、強力粉45〜35質量%とすることが好ましい。強力粉をこの配合割合で混合することにより、穀類粉末を使用することによるコシや粘りの低下が抑えられ、うどん本来の食感を維持することができる。
【0021】
小麦粉以外に使用される穀類粉末には、少なくとも発芽玄米粉末が含まれる。
発芽玄米粉末の元となる玄米としては、うるち米玄米、もち米玄米、及び青米玄米が挙げられ、いずれも発芽することによりγ−アミノ酪酸(GABA)やビタミン類などの栄養成分が有意に増える。したがって、穀類粉末中に含めることにより、うどんの栄養価を強化することができる。さらに、もち米玄米は、使用することによりうどんに粘りが生まれるという特長があり、青米玄米は、他の玄米よりも発芽したときのγ−アミノ酪酸の含有量が多いという特長がある。
【0022】
これらの玄米は、1種のみを使用してもよいが、2種以上を混合して使用することにより、それぞれの特長を活かすことができる。ただし、もち米玄米、青米玄米は、風味の点でうるち米玄米よりも劣るため、少なくともうるち米玄米を使用することが好ましい。
【0023】
発芽玄米を得るには、例えば玄米を25〜40℃の温水に20〜30時間浸漬するなど、公知の方法が使用可能であるが、発芽したものでなく、その内部で発芽の兆しが見られた発芽寸前の玄米であっても構わない。このような発芽寸前の玄米も、γ−アミノ酪酸やビタミン類などの栄養成分が有意に増えている。本明細書では、このように発芽の兆しが見られた発芽寸前の玄米も含めて、発芽玄米と称する。
【0024】
発芽玄米粉末以外の穀類粉末としては、きな粉及び大麦粉末を使用することができる。きな粉を穀類粉末中に含めることにより、大豆タンパク質を有効に摂取することができる。なお、大豆粉末を使用した場合には、うどんが生臭くなるという問題があるが、きな粉を使用することで、そのような問題を生じさせることなく、うどんの栄養価をさらに強化することができる。また、大麦は、食物繊維、カルシウム、鉄分、ビタミン類などの栄養成分が豊富であるという特長があるため、穀類粉末中に含めることによりうどんの栄養価をさらに強化することができる。きな粉及び大麦粉末は、いずれか1種のみを使用してもよいが、2種を混合することが好ましい。
【0025】
これらの穀類粉末の配合割合は、混合粉末中、15〜25質量%である。穀類粉末をこの範囲で混合することにより、うどんの味・食感を保ちながら、栄養価を強化することができる。
【0026】
なお、発芽玄米粉末以外にきな粉及び大麦粉末の2種を混合する場合には、混合粉末中、発芽玄米粉末5〜15質量%、きな粉3〜7質量%、大麦粉末3〜7質量%となるように混合することが好ましい。このような配合割合で混合することにより、15〜25質量%という比較的多い割合でありながら、それぞれの穀類粉末の味を際立つことがない。
【0027】
さらに、混合粉末には、コーンスターチを含めることが好ましい。コーンスターチをさらに含める場合、その配合割合は、混合粉末中3〜7質量%であることが好ましい。この配合割合で加えることにより、うどんに適度にしなやかさを補うことができる。
【0028】
<穀類添加うどんの製造方法>
本発明の穀類添加うどんの製造方法は、上記のような混合粉末に食塩水を加え、混練してうどんに製麺するものである。
【0029】
食塩水の濃度は、7〜10質量%であることが好ましい。また、食塩水の量は、混合粉末100質量部に対して40〜50質量部であることが好ましい。なお、食塩水の量は、製造するうどんの種類や季節によっても異なり、例えば生麺では上記範囲内で少なめに、茹麺では上記範囲内で多めに調整される。
【0030】
混練した生地からうどんを製麺する方法は、従来から公知の方法でよく、特に限定されるものではない。なお、製造するうどんは生麺、茹麺、乾麺のいずれであってもよい。
【0031】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではないことは勿論である。
【実施例】
【0032】
<実施例1>
小麦粉(中力粉60質量%、強力粉40質量%)75質量部、発芽玄米粉末10質量部、きな粉5質量部、大麦粉末5質量部、コーンスターチ5質量部を混合し、混合粉末を得た。この混合粉末100質量部に対して7.5質量%食塩水を40質量部加えながら、70回転/分で10分間、加水ミキシングを行って粗成生地を得た。この粗成生地を複合ロール圧延機にかけ、最終的に厚さ3〜4mmの麺帯を成形した。この麺帯を切歯を用いて巾4mmの麺線状に切断し、10℃で一晩寝かして生麺を得た。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、本来のうどんとほぼ同様の食感が得られていた。また、穀類の味は際立っておらず、食味も良好であった。
【0033】
<実施例2>
小麦粉として、中力粉65質量%と強力粉35質量%とを混合したものを使用したほかは、実施例1と同様にして生麺を製造した。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、麺のコシは実施例1より弱いものの、本来のうどんとほぼ同様の食感が得られていた。また、穀類の味は際立っておらず、食味も良好であった。
【0034】
<実施例3>
小麦粉として、中力粉55質量%と強力粉45質量%とを混合したものを使用したほかは、実施例1と同様にして生麺を製造した。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、麺のコシは実施例1より強いものの、本来のうどんとほぼ同様の食感が得られていた。また、穀類の味は際立っておらず、食味も良好であった。
【0035】
<実施例4>
小麦粉(中力粉60質量%、強力粉40質量%)70質量部、発芽玄米粉末13質量部、きな粉6質量部、大麦粉末6質量部、コーンスターチ5質量部を混合し、混合粉末を得たほかは、実施例1と同様にして生麺を製造した。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、本来のうどんとほぼ同様の食感が得られていた。また、穀類の味は際立っておらず、食味も良好であった。
【0036】
<実施例5>
小麦粉(中力粉60質量%、強力粉40質量%)80質量部、発芽玄米粉末7質量部、きな粉4質量部、大麦粉末4質量部、コーンスターチ5質量部を混合し、混合粉末を得たほかは、実施例1と同様にして生麺を製造した。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、本来のうどんとほぼ同様の食感が得られていた。また、食味も良好であった。
【0037】
<比較例1>
小麦粉として、中力粉70質量%と強力粉30質量%とを混合したものを使用したほかは、実施例1と同様にして生麺を製造した。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、麺のコシ、弾力性が弱く、うどんの食感が損なわれていた。
<比較例2>
小麦粉として、中力粉50質量%と強力粉50質量%とを混合したものを使用したほかは、実施例1と同様にして生麺を製造した。
この生麺を100℃で6分間茹でて試食したところ、麺のコシが強く、スパゲッティーのような食感となり、うどんの食感が損なわれていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉と、少なくとも発芽玄米粉末を含む穀類粉末とを含む混合粉末に食塩水を加え、混練してうどんに製麺する穀類添加うどんの製造方法であって、
前記穀類粉末は、前記混合粉末中に15〜25質量%含まれ、
前記小麦粉は、中力粉55〜65質量%と強力粉45〜35質量%とからなることを特徴とする穀類添加うどんの製造方法。
【請求項2】
前記穀類粉末は、きな粉及び大麦粉末の少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の穀類添加うどんの製造方法。
【請求項3】
前記混合粉末は、コーンスターチをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載の穀類添加うどんの製造方法。
【請求項4】
前記混合粉末は、小麦粉70〜80質量%、発芽玄米粉末5〜15質量%、きな粉3〜7質量%、大麦粉末3〜7質量%、及びコーンスターチ3〜7質量%からなることを特徴とする請求項3記載の穀類添加うどんの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の穀類添加うどんの製造方法によって製造されたことを特徴とする穀類添加うどん。