説明

積層ゴムの非破壊検査治具

【課題】超音波探触子で発信された超音波をゴム層へ入射し、かつ、ゴム層で反射された超音波を受信できる、積層ゴムの非破壊検査治具を提供する。
【解決手段】積層ゴムの非破壊検査治具10は、樹脂又はゴム材料で成形された箱形状の保持体12を備えている。保持体12を検査対象である積層ゴム22に当てたとき、外側を向く背面12Aの中央部には、円形状の凹部16が形成されている。凹部16は、超音波探触子24の円柱状の発信部24Lが挿入される大きさとなっている。発信部24Lが挿入されると、先端面24Sと底部16Sが面で接触する。凹部16の底部16Sのゴム層18側には、超音波伝播部14が一体成形されている。超音波伝播部14は、断面が矩形状の柱体であり、ゴム層18に沿って延出し、保持体12の外側へ張り出している。超音波伝播部14のゴム層18と対面する側面14Bは、ゴム層18の外周面に沿って円弧状に凹んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム層の非破壊検査に用いる積層ゴムの非破壊検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
免震建築物に用いられ、建築物を支持し免震機能を発揮する積層ゴムは、鋼板とゴム層の積層構造とされ、ゴム層で振動を吸収している。このため、ゴム層については、地震による損傷の程度や経年劣化による損傷の程度等を正確に把握しておき、いつでも免震機能を発揮できる状態に維持する必要がある。
【0003】
しかし、ゴム層は、上下面を積層された鋼板で挟まれており、外部に露出しているのはゴム層の外周面のみである。このため、ゴム層内部の損傷の程度を直接に目視で確認することはできず、簡易な非破壊検査法の確立が求められている。
【0004】
積層ゴムの非破壊検査法としては、例えば、X線CT装置を利用する方法(特許文献1)や超音波検査装置を利用する方法が考えられる。
【0005】
X線CT装置を利用する方法は、ゴム層にX線を透過させる必要があり、ゴム層の径や測定場所が制限される問題がある。更に、検査をする者が、X線を取り扱う資格を有する者に限定されるという問題もある。
一方、超音波検査装置を利用する方法は、上記問題点をクリアできる長所がある。
【0006】
しかし、超音波を発生させる超音波探触子は、超音波をゴム層の外周面から内部へ入射させ、更に、ゴム層の内部を透過させる性能が要求される。
【0007】
現在、金属や鉄筋コンクリートの非破壊検査用に超音波が利用されているが、ゴム層は、金属や鉄筋コンクリートに比べ、超音波を入射させる際の入射抵抗、内部を透過させる際の透過抵抗がいずれも大きく、ゴム層用の超音波探触子は大きな出力が必要とされる。
具体的には、超音波探触子の改良を見越しても、超音波探触子の径は、現在、鉄筋コンクリート用として使用されているものとほぼ同等の50mm程度の円柱となる。
【0008】
一方、広く使用されている積層ゴムに使用されているゴム層の厚さは4mm〜10mm程度である。このため、このままでは、超音波探触子で発生させた超音波を、効率よく被検査体であるゴム層に入射させることができない。
【0009】
また、多くの積層ゴムの構造は、ゴム層の外径が鋼板の外径より一回り小さく、ゴム層の外周面は、上下の鋼板の外周面より奥側にあり、超音波探触子を鋼板の外周面に当てて超音波を入射した場合、超音波は、入射抵抗の小さい鋼板にすべて入射し、ゴム層に超音波を入射させることはできない。
【0010】
そこで、超音波探触子で発生させた超音波を効率よくゴム層に入射させ、ゴム層で反射した超音波を受信できる非破壊検査治具が求められている。
【特許文献1】特開2001−33402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事実に鑑み、超音波探触子で発信された超音波をゴム層へ入射し、かつ、ゴム層で反射された超音波を受信できる、積層ゴムの非破壊検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明に係る積層ゴムの非破壊検査治具は、ゴム層と鋼板を積層した積層ゴムの前記鋼板の外周面に取付けられる保持体と、前記保持体に設けられ、前記鋼板の間へ入り込み前記ゴム層の外周面と対面する超音波伝播部と、前記保持体の外面に形成され、超音波を発信する超音波発信部又は超音波を受信する超音波受信部を前記超音波伝播部へ接触させる凹部と、を有することを特徴としている。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、保持体に設けられた超音波伝播部が、鋼板と鋼板の間へ入り込み、ゴム層の外周面と対面する。また、保持体に設けられた凹部において、超音波伝播部と、超音波を発信する超音波発信部又は超音波を受信する超音波受信部が接触する。
【0014】
即ち、2つの積層ゴムの非破壊検査治具を用いれば、超音波伝播部を介して、超音波発信部とゴム層の間、及びゴム層と超音波受信部の間で超音波を伝播させることができる。
【0015】
これにより、ゴム層の径が鋼板の径より小さく、ゴム層の外周面が鋼板と鋼板の間へ入り込んでいても、超音波伝播部を介して、凹部に接触させた超音波発信部から発信した超音波をゴム層に伝播させることができる。同様に、ゴム層の内部で反射されて戻ってきた超音波を、超音波伝播部を介して超音波受信部で受信できる。
【0016】
請求項2の発明に係る、請求項1に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記保持体と前記超音波伝播部を、一体成形したことを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、保持体と超音波伝播部が一体で成形されている。
これにより、超音波伝播部を介して、超音波発信部からゴム層へ伝播される超音波、若しくはゴム層から超音波受信部へ伝播される超音波が、保持体と超音波伝播部の境目で減衰されない。
【0017】
請求項3の発明に係る、請求項1又は2に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記超音波伝播部に、前記ゴム層の外周面と前記超音波伝播部との隙間を埋める接触触媒を注入可能とする貫通孔を形成したことを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、貫通孔から接触触媒を注入して、ゴム層の外周面と超音波伝播部との隙間を接触触媒で埋めることができる。
【0018】
接触触媒を介することにより、超音波の減衰を抑えて、超音波伝播部からゴム層へ超音波を伝播することができる。同様に、超音波の減衰を抑えて、ゴム層から超音波伝播部へ超音波を伝播することができる。
【0019】
請求項4の発明に係る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記保持体を、磁石で前記鋼板の外周面に取付けたことを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、保持体が、磁石で鋼板の外周面に取付けられる。
これにより、保持体を、鋼板の外周面に容易に着脱でき、非破壊検査の作業性が向上する。
【0020】
請求項5の発明に係る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記鋼板の外周面と対面する前記保持体の対向面と、前記鋼板の外周面との隙間が、前記超音波伝播部の周囲に形成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、保持体の超音波伝播部の周囲には、隙間が形成されている。この隙間は、鋼板の外周面と保持体の対向面の間の隙間である。
これにより、超音波発信部から発信され、超音波伝播部を伝播する超音波を、鋼板に入射させることなくゴム層に入射させることができる。
【0022】
請求項6の発明に係る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記ゴム層の外周面と対面する前記超音波伝播部の対向面は、前記ゴム層の外周面に沿って円弧状に凹んでいることを特徴としている。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、ゴム層の外周面と対面する超音波伝播部の対向面が、ゴム層の外周面に沿って円弧状に凹んでいる。
これにより、超音波伝播部とゴム層を密着させ、かつ、超音波伝播部からゴム層への超音波の入射面積を増大させ、超音波の入射量を増やすことができる。また、同様に、ゴム層から超音波伝播部への超音波の入射面積を増大させ、超音波の入射量を増やすことができる。
【0024】
請求項7の発明に係る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、円弧状に凹んだ前記超音波伝播部の上下面に、弾性部材を取付けたことを特徴としている。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、弾性部材が、超音波伝播部の上下面に取付けられている。
これにより、超音波伝播部を、鋼板と鋼板の間に入り込ませ、ゴム層の外周面と対面させたとき、鋼板と鋼板の間の中間位置で超音波伝播部を保持でき、安定した状態で超音波が伝播される。また、超音波伝播部の上面又は下面と、上下にある鋼板が直接に接触するのを防止でき、超音波が、超音波伝播部から鋼板に入射されるのを防止できる。更に、ゴム層の外周面と超音波伝播部の間に注入された接触触媒が、超音波伝播部の上下面と鋼板の間から、外へ漏れ出るのを防止できる。
【0026】
請求項8の発明に係る、請求項7に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記超音波伝播部の上下面に、前記弾性部材を着脱可能に係止する係止部を設けたことを特徴としている。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、弾性部材を着脱可能に係止する係止部を、超音波伝播部の上下面に設けている。
これにより、超音波伝播部への弾性部材の着脱が容易となり、弾性部材をゴム層の厚さに応じて交換することで、多様な厚さのゴム層に広く対応できる。
【0028】
請求項9の発明に係る、請求項4〜8のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記磁石には、ボルトが螺合するナットが接合され、前記保持体には、前記ボルトが貫通する貫通孔が設けられ、前記ナットと前記保持体の間に、前記超音波伝播部を前記ゴム層の外周面へ押し当てる力を調整するバネを設けたことを特徴としている。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、保持体が、超音波伝播部をゴム層の外周面へ押し当てる力を調整するバネを介して、磁石に接合されたナットにボルト接合されている。
これにより、超音波伝播部をゴム層の外周面へ押し当てる力を一定に調整でき、超音波伝播部からゴム層への超音波の入射条件、及びゴム層の外周面から超音波伝播部への超音波の入射条件を一定にでき、安定した超音波の伝播ができる。
【0030】
請求項10の発明に係る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、1つの保持体に、前記超音波発信部用の前記凹部と前記超音波受信部用の前記凹部を、前記ゴム層の周方向に並べて設けたことを特徴としている。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、超音波発信部用の凹部と超音波受信部用の凹部が、ゴム層の周方向に並べられ、それらが1つの保持体に設けられている。
【0032】
これにより、超音波を発信する超音波発信部と超音波を受信する超音波受信部の位置が固定され、検査の信頼性が向上する。また、1つの保持体の取付け作業で、超音波発信部と超音波受信部を取付けることができ、取付け作業の手間が省ける。
【0033】
請求項11の発明に係る、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、1つの保持体に、前記超音波伝播部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設け、1つの前記凹部で複数の前記超音波伝播部に前記超音波発信部又は前記超音波受信部を接触させることを特徴としている。
【0034】
請求項11に記載の発明によれば、ゴム層の積層方向に超音波伝播部が複数個設けられ、1つの凹部で複数の超音波伝播部に、超音波発信部又は超音波受信部を接触させることができる。
【0035】
これにより、1つの超音波発信部から発信された超音波を、複数の超音波伝播部を介して、複数のゴム層に同時に伝播できる。同様に、複数のゴム層からの超音波を、複数の超音波伝播部を介して、1つの超音波受信部に、同時に伝播できる。
【0036】
請求項12の発明に係る、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、1つの保持体に、前記超音波伝播部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設け、複数の前記超音波伝播部に対応して、前記凹部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設けたことを特徴としている。
【0037】
請求項12に記載の発明によれば、1つの保持体に、超音波伝播部がゴム層の積層方向に複数個設けられ、かつ、ゴム層の積層方向に凹部が複数設けられている。
複数設けられた凹部に、超音波発信部又は超音波受信部を順次差し替えることで、超音波発信部又は超音波受信部の位置を容易に移動させることができる。
【0038】
請求項13の発明に係る、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、1つの保持体に、前記超音波伝播部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設け、前記凹部を、前記ゴム層の積層方向に延設して長凹部とし、前記長凹部内で、前記超音波発信部又は前記超音波受信部を挟持してスライドさせ、前記超音波伝播部の位置で保持する挟持手段を設けたことを特徴としている。
【0039】
請求項13に記載の発明によれば、ゴム層の積層方向に連続して開口された長凹部に、超音波発信部又は超音波受信部が挟持される。このとき、超音波発信部又は超音波受信部は、挟持された位置で保持され、かつ、保持された状態で、ゴム層の積層方向にスライドできる。
【0040】
これにより、超音波発信部又は超音波受信部を、検査対象であるゴム層の位置へスライドさせて移動できる。また、移動した位置で保持できるため、超音波発信部又は超音波受信部の移動操作が容易となり、検査の効率が向上する。
【0041】
請求項14の発明に係る、請求項1〜3、5〜8、10〜13のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記積層ゴムの上部及び下部のフランジの外周面に沿って、それぞれ取り付けられた回動用ガイド部材と、上下に配置された前記回動用ガイド部材に案内され、前記積層ゴムの外周面に沿って移動する鉛直ガイド部材と、前記鉛直ガイド部材に取付けられ、前記鉛直ガイド部材に沿って前記保持体を移動可能とする昇降手段と、を有することを特徴としている。
【0042】
請求項14に記載の発明によれば、回動用ガイド部材が積層ゴムの上部及び下部のフランジの外周面に沿って取り付けられ、回動用ガイド部材には、鉛直ガイド部材が取付けられている。鉛直ガイド部材は、上下に配置された回動用ガイド部材に案内されて、積層ゴムの外周面に沿って移動できる。また、鉛直ガイド部材には昇降手段が取付けられ、昇降手段には保持体が取付けられ、保持体を鉛直ガイド部材に沿って移動可能としている。
【0043】
これにより、保持体を、積層ゴムの外周面に沿って任意の位置に移動できる。更に、積層ゴムの積層方向に沿って任意の位置に移動できる。
また、治具の位置を変更する際の手間が省け、検査時間が短縮される。
【0044】
請求項15の発明に係る、請求項14に記載の積層ゴムの非破壊検査治具は、前記回動用ガイド部材、前記鉛直ガイド部材又は前記昇降手段の少なくとも1つに取付けられ、前記保持体の基準位置からの移動方向と移動量を計測する計測手段を有することを特徴としている。
【0045】
請求項15に記載の発明によれば、回動用ガイド部材、鉛直ガイド部材又は昇降手段の少なくとも1つに、保持体の基準位置からの移動方向及び移動量を計測する計測手段が設けられている。
【0046】
これにより、保持体に設けられた、超音波発信部及び超音波受信部の位置を正確に把握でき、検査の自動化が図れると共に、検査結果の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、上記構成としてあるので、超音波探触子で発信された超音波をゴム層へ入射し、かつ、ゴム層で反射された超音波を受信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1の実施の形態)
図1、2に示すように、第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具10は、積層ゴム22のゴム層18の損傷具合を検査するための治具として使用される。
【0049】
ここで、積層ゴム22について説明する。
【0050】
積層ゴム22は、ゴム層18と鋼板20の積層構造とされ、免震建築物(図示せず)を支持している。ゴム層18の径は鋼板20の径より小さく、ゴム層18の外周面は鋼板の外周面より奥に位置している。積層ゴム22の中央には、軸部を貫通する貫通孔19(図5参照)が形成されており、後述する超音波は、貫通孔19の空気層との境界面で反射する。
【0051】
図1、2に示すように、積層ゴムの非破壊検査治具10は、樹脂又はゴム材料で成形された箱形状の保持体12を備えている。
保持体12を検査対象である積層ゴム22に当てたとき、外側を向く背面12Aの中央部には、円形状の凹部16が形成されている。凹部16は、超音波発信部である超音波探触子24の円柱状の発信部24Lが挿入される大きさとなっている。発信部24Lが挿入されると、発信部24Lの先端面24Sと凹部16の底部16Sが面で接触する構成である。
【0052】
凹部16の底部16Sのゴム層18側には、超音波伝播部14が一体成形されている。超音波伝播部14は、断面が矩形状の柱体であり、ゴム層18に沿って延出し、保持体12の外側へ張り出している。また、超音波伝播部14のゴム層18と対面する側面14Bは、ゴム層18の外周面に沿って円弧状に凹んでいる(ゴム層18の外周面と等しい径の円弧)。
【0053】
さらに、保持体12の側壁12C、12Dは、保持体12の外側へ張り出した超音波伝播部14が保持体12と接触しない幅と高さで切り欠かれている。これにより、超音波伝播部14は、上下方向及び積層ゴム22の径方向において、保持体12と非接触状態とされ、発信部24Lから発信された超音波は、凹部16を介して殆んどが、超音波伝播部14へ伝播される。
【0054】
また、超音波伝播部14の厚さtcは、鋼板20と鋼板20の間に入り込ませ、鋼板20とは接触せずにゴム層18の外周面と対向させるため、ゴム層18の厚さtgより小さくされている。
【0055】
これにより、超音波を、超音波伝播部14を介してゴム層18に伝播できる。また、保持体12と超音波伝播部14を一体成形してあり、保持体12と超音波伝播部14の境目で超音波が減衰することがない。
【0056】
保持体12の角部には、磁石取付座38が形成され、磁石取付座38には磁石26が接合されている。磁石26で保持体12を鋼板20の外周面へ着脱することで、保持体12の移動作業が容易となり、検査の作業性が向上する。
【0057】
以上説明したように、積層ゴムの非破壊検査治具10を用いることで、超音波探触子24で発生させた超音波を、超音波伝播部14を経由して、ゴム層18に伝播させることができる。
【0058】
図3に示すように、ゴム層18の貫通孔19(図5参照)で反射された超音波(反射波)も、同じ積層ゴムの非破壊検査治具10を利用して、凹部16に超音波を受信する超音波波探触子25を挿入すれば受信できる。
【0059】
即ち、積層ゴムの非破壊検査治具10を、同じゴム層18の周方向に2つ並べてセットし、超音波伝播部14をゴム層18の外周面に対面させ、超音波発信側の凹部16に超音波波探触子24を挿入し、超音波受信側の凹部16に超音波波探触子25を挿入すれば、ゴム層18の外周部から超音波を入射し、ゴム層18の貫通孔19で反射された超音波をゴム層18の外周面で受信できる。
【0060】
次に、積層ゴムの非破壊検査治具10を用いた非破壊検査装置について説明する。
図4に示すように、非破壊検査装置46は、建物44を積層ゴム22が支持した状態で、積層ゴム22のゴム層18の損傷の有無を検査する。ゴム層18は、1つの積層ゴム22に複数枚が積層されており、1枚ずつ、かつ全周囲に渡り検査を行う。
【0061】
非破壊検査装置46は、設定した検査順序に従い検査内容を制御する制御ソフトや、超音波の検出結果を読み込んで解析する解析ソフト等を内蔵した制御装置(パソコン)40と、制御装置40からの指示に従い、超音波発生用のパルスを発生させるパルス発生装置42と、パルス発生装置42からのパルスに基づき超音波を発生させる超音波探触子24と、超音波探触子24で発生させた超音波をゴム層18に伝播させる積層ゴムの非破壊検査治具10と、ゴム層18の貫通孔19で反射された超音波を超音波探触子25に伝播させる積層ゴムの非破壊検査治具10と、伝播された超音波を受信してパルス発生装置42を経由し、制御装置40に送信する超音波探触子25と、を有している。
【0062】
非破壊検査装置46を用いて、次の手順で検査を行う。
先ず、2つの積層ゴムの非破壊検査治具10を、検査するゴム層18に、定められた間隔で取付ける。このとき、ゴム層18の外周面に超音波伝播部14の対向面14Bを密着させ、鋼板20の外周面に磁石26を用いて取付ける。その後、超音波発信側の凹部16に超音波探触子24を、超音波受信側の凹部16に超音波探触子25を挿入する。
【0063】
次に、制御装置40から超音波の発生指示を出す。指示を受けて、パルス発生装置42は、発生させる超音波に対応したパルスを発生させ、ケーブル28を介して超音波探触子24に送る。超音波探触子24がパルスに基づき超音波を発生させる。
【0064】
発生させた超音波は、超音波探触子24から超音波伝播部14を介して、ゴム層18に直接伝播される。ゴム層18の外周面から入射された超音波は、ゴム層18の内部を直進し、損傷部位等で反射される。反射した超音波は、ゴム層18の外周面から超音波伝播部14を介して超音波探触子25に伝播される。
【0065】
最後に、超音波探触子25で検出された超音波が制御装置40に送られ、制御装置40は送られた超音波を分析し、ゴム層18の損傷具合を判断する。
【0066】
ここで、超音波でゴム層18の損傷位置を検出するメカニズムを説明する。
図5に示すように、損傷のない正常な部位X1では、超音波探触子24で、ゴム層18の外周面から貫通孔19へ向けて入射された超音波W1は、直進して貫通孔19に到達後、空気層との境界面で反射して超音波W2となり、ゴム層18の外周面から超音波探触子25に伝播される。
【0067】
この時の波形は、図6(A)に示すように、超音波W1を入射して時間Tsが経過した後に、波形振幅値のピークP1、P2が発生している。
即ち、損傷のない正常な部位X1では、超音波W1、W2のゴム層18の内部での減衰は少なく、検出された超音波W2の波形振幅値のピークP1、P2は高い。
【0068】
また、時間Tsは、超音波W1を入射してから超音波W2が受信されるまでの経過時間であり、既知のゴム層18の外周面から貫通孔19までの距離と、ゴム層18中での超音波W1の伝播速度から、予め算出できる。
【0069】
一方、図5に示すように、超音波W1の通路の途中に損傷27がある部位X2では、超音波探触子24で、ゴム層18の外周面から貫通孔19へ向けて入射された超音波W1は、損傷27で反射され、一部は超音波W2となり、ゴム層18の外周面で超音波探触子25に伝播される。
【0070】
この結果、波形は、図6(B)に示すように、超音波W1を入射後、時間Tfで最初の波形振幅値のピークP3、P4が見られる。時間Tfは時間Tsより短く、貫通孔19に至る途中にある損傷27で反射した超音波W2であることが推定される。
【0071】
ここに、損傷27で反射された波形振幅値のピークP3、P4は、損傷27の反射面の形状に左右される。即ち、損傷27の反射面で乱反射をしたり、反射の方向が超音波W2の計測位置と逆方向となる場合等では、波形振幅値のピークP3、P4は小さくなる。
【0072】
なお、時間Ts経過時に、第2のピークである波形振幅値のピークP5、P6が見られる。これは、超音波W1の一部が貫通孔19で反射した超音波である。
超音波W2とノイズを区別するため、予め波形振幅値の閾値Qを設定しておき、閾値Qより高い波形振幅値のみを超音波W2として扱うのが望ましい。
【0073】
(第2の実施の形態)
図7(A)〜(C)に示すように、第2の実施の形態の積層ゴムの非破壊検査治具58は、保持体29の背面29Aに貫通孔30を設けている。さらに、超音波伝播部33にも、貫通孔30の軸線上に貫通孔32が設けられている。他の構成は、第1の実施の形態と同じであるので、異なる点について説明する。
【0074】
貫通孔30と貫通孔32は、保持体29の背面29Aからゴム層18の外周面と超音波伝播部33の対向面33Bの間に、接触触媒36を注入するチューブ34を挿入する通路となっている。
【0075】
ここに、接触触媒36は、ゲル状の油であり、代表例としてグリセリンが挙げられる。接触触媒36は、ゴム層18の外周面と超音波伝播部33の対向面33Bの間に充填され、超音波が、ゴム層18の外周面と超音波伝播部33の対向面33Bの間を伝播する際の減衰を抑制する。さらに、接触触媒36を注入することで、ゴム層18の外周面に凹凸があっても、超音波伝播部33の対向面33Bを密着させて、超音波を効率よく伝播させることができる。
【0076】
なお、図7(D)に示すように、貫通孔30と貫通孔32に、予めチューブ34を挿入し、チューブ34を利用して、矢印P方向から接触触媒36を注入してもよい。接触触媒36の注入が容易になる。
【0077】
このように、貫通孔30と貫通孔32を設けることで、保持体29を積層ゴム22に取付けた後に、ゴム層18の外周面と超音波伝播部33の対向面33Bの間に、接触触媒36を注入することができる。
【0078】
(第3の実施の形態)
図8(A)〜(E)に示すように、第3の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具60は、超音波伝播部35の上面と下面に弾性部材37を取付けている。他の構成は、第1の実施の形態と同じであるので、異なる点について説明する。
【0079】
超音波伝播部35の上面及び下面には、全幅に渡り深さH1、幅D1で溝が設けられ、弾性部材37の係止部48とされている。弾性部材37は、例えばゴム材であり、係止部48の溝幅D1より広い幅D2で形成され、弾性部材37を圧縮して係止部48に挿入できる。これにより、弾性部材37の弾性力で係止部48に係止できる。
【0080】
弾性部材37は、溝の深さH1より大きい高さH2とされ、弾性部材37の一部が超音波伝播部35の上面及び下面から突き出ている。
【0081】
これにより、超音波伝播部35の対向面35Bを、鋼板20と鋼板20の間に入り込ませ、ゴム層18の外周面と対向させたとき、弾性部材37が上側及び下側の鋼板20と当接し、超音波伝播部35の位置を保持できる。
【0082】
同時に、超音波伝播部35の上面が上側の鋼板20と、又は下面が下側の鋼板20と直接に接触するのを防止でき、超音波が、超音波伝播部35から鋼板20に入射されるのを防止できる。
【0083】
更に、ゴム層18の外周面と超音波伝播部35の側面35Bの間に注入された接触触媒36が、超音波伝播部35の上面と上側の鋼板20の間、又は下面と下側の鋼板20の間から、外へ漏れ出るのを防止できる。
【0084】
また、弾性部材37が係止部48に着脱可能とされているため、厚さの異なる弾性部材38を用意しておけば、ゴム層18の厚さに応じて弾性部材37を交換でき、多様な厚さのゴム層18に対応できる。
【0085】
なお、超音波伝播部35の対向面35Bの端面35Cは、鋼板20の間に入り込ませるのを容易とすべく、面取りがされている。
【0086】
(第4の実施の形態)
図9に示すように、第4の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具62は、磁石26と保持体12の接合部に、バネ52を挿入している。他の部分は、第1の実施の形態と同じであるので、異なる点について説明する。
【0087】
磁石26の側面26Aには、接合用のボルト56と螺合するナット50が接合されている。また、保持体12の側壁の角部は、側面12Aの角部を残して切り欠かれ、側面12Aの角部には、接合用のボルト56が挿入される貫通孔58が設けられている。ナット50と保持体12の間には、超音波伝播部14をゴム層18の外周面へ押し当てる力を調整する、圧力調整用のバネ52がボルト56に挿通されている。
【0088】
これにより、保持体12を鋼板20の外周面に取付けた状態で、ボルト56のねじ込み量を調整することで、圧力調整用のバネ52の圧縮量が変化し、超音波伝播部14をゴム層18の外周面へ押し当てる力を調整できる。
【0089】
このように、保持体12の四隅の締付力を調整することで、超音波伝播部14の全面をゴム層18の外周面へ均等に密着させ、各測定部において、超音波伝播部14からゴム層18への超音波の入射量、ゴム層18から超音波伝播部14への超音波の受信量を一定にでき、検査の信頼性が向上する。
【0090】
(第5の実施の形態)
図10(A)に示すように、第5の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具64は、ゴム層18の方向に幅が広い保持体66を有している。
【0091】
保持体66の背面66Aには、超音波探触子24が挿入される凹部16と、超音波探触子25が挿入される凹部16が2つ並べて設けられている。超音波伝播部14もそれぞれの凹部16に対応して一体成形されている。2つの超音波伝播部14は、保持体66の内部で所定の距離を開けて配置されている。保持体66及び超音波伝播部14の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0092】
図10(B)に示すように、保持体66をゴム層18の周方向に取付け、一方の凹部16には超音波を発信する超音波探触子24を挿入し、他方の凹部16には超音波を受信する超音波探触子25を挿入すれば、1つの積層ゴムの非破壊検査治具64で超音波W1の発信と超音波W2の受信ができる。これにより、超音波探触子24と超音波探触子25の位置が一定に維持され、同じ条件で検査ができる。
【0093】
また、1つの積層ゴムの非破壊検査査治具64を取付けるだけで検査の準備が終えるため、準備作業の手間が省ける。
【0094】
(第6の実施の形態)
図11(A)に示すように、第6の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具68の超音波伝播部72には、ゴム層74の周方向にスリット状に溝72Cが設けられ、溝72Cで分割された細い凸部が、ゴム層74の外周面との対向面72Bとされている。溝72Cは、超音波伝播部72の周方向の全幅に渡って設けられている。
【0095】
具体的には、対向面72Bの厚さt1は、ゴム層74の厚さt2より薄く、鋼板76と接触せずに鋼板76の間に入り込んでゴム層74の外周面と対向する厚さとされている。また、溝72Cの深さD1は、鋼板76の外周面とゴム層74の外周面との距離D2より大きい値とされている。
【0096】
これにより、超音波伝播部72の対向面72Bをゴム層74の外周面と密着させ、かつ、鋼板76の外周面と超音波伝播部72の溝72Cが接触するのを防止できる。
図11(B)に示すように積層ゴム22は、一般的には厚さが4mm〜10mm程度である。一方、超音波探触子24の径は50mm前後である。
【0097】
これにより、1つの超音波探触子24から発信された超音波を、凹部16から超音波伝播部72の複数の対向面72Bを介して、複数のゴム層74に同時に伝播でき、検査の効率が向上する。
【0098】
同様に、超音波受信部においても、先端が分割された超音波伝播部72の複数の対向面72Bを介して、複数のゴム層74からの超音波を、1つの超音波探触子25に同時に伝播できる。
【0099】
(第7の実施の形態)
図12に示すように、第7の実施の形態に係る積層ゴム非破壊検査治具78は、保持体80をゴム層18の積層方向に延長させた構成である。
【0100】
保持体80は、ゴム層18の積層方向に長く形成され、保持体80の背面80Aには凹部16が積層方向に複数設けられている。
また、凹部16のゴム層18側には、それぞれの凹部16に対応させて、超音波伝播部14が、ゴム層18の周方向に複数設けられている。
【0101】
これにより、検査対象のゴム層18の位置に、容易に超音波探触子24を移動させることができる。
なお、ゴム層18からの超音波の受信は、超音波探触子24に替えて超音波探触子25を挿入することで、可能となる。
【0102】
(第8の実施の形態)
図13に示すように、第8の実施の形態に係る積層ゴム非破壊検査治具82は、保持体83に長凹部84を設けている。
保持体83は、ゴム層18の積層方向に長く成形され、背面83Aには、ゴム層18の積層方向に長凹部84が設けられている。
【0103】
長凹部84は、超音波探触子24が挿入され、ゴム層18の積層方向にスライド可能な寸法で形成されている。
【0104】
長凹部84の底面には、ゴム層18の周方向に複数の超音波伝播部85が一体成形され、超音波伝播部85のゴム層18の外周面と対面する対向面85Bは、円弧状に形成されている。
【0105】
図示は省略するが、長凹部84の両壁面には、超音波探触子24を挿入したとき、挿入位置で超音波探触子24を挟持する挟持手段としての板バネが取付けられている。
この板バネは、超音波探触子24を挟持した状態で、超音波探触子24に上下方向の力を加えれば、長凹部84の内部を上下方向にスライドできる構成とされている。
これにより、超音波探触子24の移動操作が容易となり、検査の効率が向上する。
【0106】
なお、ゴム層18からの超音波の受信は、超音波探触子24に替えて超音波探触子25を挿入することで、可能となる。
【0107】
(第9の実施の形態)
図14に示すように、第9の実施の形態に係る積層ゴム非破壊検査治具86は、積層ゴム22のフランジ88を囲む、回動用ガイド部材90を有している。回動用ガイド部材90は、3つの円弧状のフレームで構成されており、このフレームをそれぞれ連結することでフランジ88に取付く、円形のガイドを構成する。
【0108】
積層ゴム22の上部にはフランジ88が、下部にはフランジ89が設けられている。フランジ88の外周面には、外周面に沿って回動用ガイド部材90が全周に渡り取り付けられ、フランジ89の外周面には、外周面に沿って回動用ガイド部材91が全周に渡り取り付けられている。
【0109】
回動用ガイド部材90には下向きに溝90Aが設けられ、この溝90Aには、上側の車輪92が回転可能に配置されている。また、回動用ガイド部材91には上向きの溝91Aが設けられ、この溝91Aには、下側の車輪93が回転可能に配置されている。
【0110】
車輪92、93にはそれぞれ車軸94、95が取付けられ、車軸94、95は、片側が積層ゴム22の径方向に向けて外側に延出している。
【0111】
車軸94は、後述する鉛直ガイド部材96と交差され、交点において、上側の車軸固定具98で鉛直ガイド部材96と接合され、車軸95は、下側の車軸固定具99で鉛直ガイド部材96と接合されている。
【0112】
鉛直ガイド部材96は、円形断面の鋼材で形成され、回動用ガイド部材90と回動用ガイド部材91の間に鉛直方向に配置されている。鉛直ガイド部材96は、2本が並行して設けられ、これらの上端部は車軸固定具98と接合され、下端部は車軸固定具99と接合されている。
【0113】
これにより、鉛直ガイド部材96は、上部を車輪92で支持され、下部を車輪93で支持され、鉛直状態を維持している。車輪92、93を走行させれば、回動用ガイド部材90に沿って、積層ゴム22の周囲を移動できる。
【0114】
鉛直ガイド部材96の中間部には、鉛直ガイド部材96を囲み上下に移動可能な、昇降部材100が取付けられている。昇降部材100は、任意の位置で鉛直ガイド部材96に固定用ネジ102でネジ止めされる。
【0115】
また、昇降部材100には、中空の筒部を有する保持体ガイド104が、筒部を水平方向にして取付けられている。
【0116】
一方、保持体108の両側の側面には、位置決め金具106が水平方向(ゴム層の径方向)に取付けられている。位置決め金具106は、円形断面の鋼材で形成され、片持ち状態で、保持体108に取付けられている。
【0117】
位置決め金具106の開放端側を、保持体ガイド104の中空部に挿入させ、保持体108を保持する。保持体ガイド104の中空部は位置決め金具106が摺動可能な寸法とされており、保持体108をゴム層18の径方向にスライド可能としている。ゴム層18の外周面と超音波伝播部14の隙間を最適な位置にスライドさせた後、ネジ110で保持体108を固定する。
【0118】
このような構成とすることにより、保持体108を、ゴム層18の外周面に沿って、全周囲を移動させることができる。また、ゴム層18の積層方向に沿って、鉛直方向に移動させることができる。更に、ゴム層18の径方向に沿って、ゴム層18の外周面との距離を調整できる。
【0119】
これにより、検査位置を変更する際の、保持体108の着脱の手間が省け、検査時間が短縮される。このとき、第5の実施の形態に示すように、保持体108を、超音波探触子24と超音波探触子25を一体とすれば、より効率的な検査ができる。
【0120】
(第10の実施の形態)
図15に示すように、第10の実施の形態に係る積層ゴム非破壊検査治具116は、第9の実施の形態に、保持体108の移動方向と移動量を計測する、移動量計測手段を追加している。他は、第9の実施の形態と同じであるので、異なる点について説明する。
【0121】
鉛直ガイド部材96の上部に取付けられた車軸固定具98には、フランジ88の基準位置からの鉛直ガイド部材96の、移動方向と移動量を計測する、位置センサ112が取付けられている。
【0122】
位置センサ112は、回動ガイド部材90の溝部に配置された車輪92の回転数と回転方向を計測して、結果を制御手段であるパソコン40へ送る。具体的には、車輪92の外周部に所定の間隔で孔を設け、レーザー光を車輪92に当て、反射光の有無をカウントし、結果をパソコン40に送る。
【0123】
パソコン40は、計測された車輪92の走行方向と走行距離から、鉛直ガイド部材96の、フランジ88に設けた基準位置からの移動量と移動方向を算出する。これにより、保持体108の、ゴム層18の周方向における位置を把握できる。なお、この構成に限らず、車輪92の回転数をエンコーダーで計測してもよい。
【0124】
また、昇降部材100には、鉛直ガイド部材96の基準位置からの、昇降部材100の移動量と移動方向を計測する位置センサ114が取付けられている。具体的には、鉛直ガイド部材96の外周部に所定の間隔で孔を設け、レーザー光を鉛直ガイド部材96に当て、反射光の有無をカウントし、結果をパソコン40へ送る。
【0125】
パソコン40は、計測結果から、昇降部材100の基準位置からの昇降方向と移動量を算出する。これにより、保持体108の、ゴム層18の鉛直方向における位置を把握できる。
このように、積層ゴム22の外周に配置した保持体108の位置を、パソコン40で周
方向、及び厚さ方向に把握でき、検査の自動化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の検査装置の概要を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の検査概念を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の検査概念を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図13】本発明の第8の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図14】本発明の第9の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【図15】本発明の第10の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査治具の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
10 積層ゴムの非破壊検査治具
12 保持体
14 超音波伝播部
16 凹部
18 ゴム層
20 鋼板
22 積層ゴム
24 超音波発信部(超音波探触子)
25 超音波受信部(超音波探触子)
26 磁石
36 接触触媒
37 弾性部材
48 係止部
50 ナット
52 バネ
56 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層と鋼板を積層した積層ゴムの前記鋼板の外周面に取付けられる保持体と、
前記保持体に設けられ、前記鋼板の間へ入り込み前記ゴム層の外周面と対面する超音波伝播部と、
前記保持体の外面に形成され、超音波を発信する超音波発信部又は超音波を受信する超音波受信部を前記超音波伝播部へ接触させる凹部と、
を有する積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項2】
前記保持体と前記超音波伝播部を、一体成形した請求項1に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項3】
前記超音波伝播部に、前記ゴム層の外周面と前記超音波伝播部との隙間を埋める接触触媒を注入可能とする貫通孔を形成した請求項1又は2に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項4】
前記保持体を、磁石で前記鋼板の外周面に取付けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項5】
前記鋼板の外周面と対面する前記保持体の対向面と、前記鋼板の外周面との隙間が、前記超音波伝播部の周囲に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項6】
前記ゴム層の外周面と対面する前記超音波伝播部の対向面は、前記ゴム層の外周面に沿って円弧状に凹んでいる請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項7】
円弧状に凹んだ前記超音波伝播部の上下面に、弾性部材を取付けた請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項8】
前記超音波伝播部の上下面に、前記弾性部材を着脱可能に係止する係止部を設けた請求項7に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項9】
前記磁石には、ボルトが螺合するナットが接合され、
前記保持体には、前記ボルトが貫通する貫通孔が設けられ、
前記ナットと前記保持体の間に、前記超音波伝播部を前記ゴム層の外周面へ押し当てる力を調整するバネを設けた請求項4〜8のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項10】
1つの保持体に、前記超音波発信部用の前記凹部と前記超音波受信部用の前記凹部を、前記ゴム層の周方向に並べて設けた請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項11】
1つの保持体に、前記超音波伝播部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設け、1つの前記凹部で複数の前記超音波伝播部に、前記超音波発信部又は前記超音波受信部を接触させる請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項12】
1つの保持体に、前記超音波伝播部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設け、複数の前記超音波伝播部に対応して、前記凹部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設けた請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項13】
1つの保持体に、前記超音波伝播部を、前記ゴム層の積層方向に複数個設け、前記凹部を、前記ゴム層の積層方向に延設して長凹部とし、前記長凹部内で、前記超音波発信部又は前記超音波受信部を挟持してスライドさせ、前記超音波伝播部の位置で保持する挟持手段を設けた請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項14】
前記積層ゴムの上部及び下部のフランジの外周面に沿って、それぞれ取り付けられた回動用ガイド部材と、
上下に配置された前記回動用ガイド部材に案内され、前記積層ゴムの外周面に沿って移動する鉛直ガイド部材と、
前記鉛直ガイド部材に取付けられ、前記鉛直ガイド部材に沿って前記保持体を移動可能とする昇降手段と、
を有する請求項1〜3、5〜8、10〜13のいずれか1項に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。
【請求項15】
前記回動用ガイド部材、前記鉛直ガイド部材又は前記昇降手段の少なくとも1つに取付けられ、前記保持体の基準位置からの移動方向と移動量を計測する計測手段を有する請求項14に記載の積層ゴムの非破壊検査治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−25690(P2010−25690A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185978(P2008−185978)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】