説明

積層シート

【課題】機能の充実・安全性・簡潔な構成・製作易化・低コスト・廃棄処理性などを満足させることのできる積層シートを提供する。
【解決手段】積層シート11は表面シート層21と裏面シート層31と形状保持部材51とを備えている。表面シート層21は吸水性および/または通水性を有する面状素材からなる。裏面シート層31は吸水性と通水性と防水性とのうちのから選択されるいずれか一つの物性を有する面状素材あるいは吸水性と通水性とを有する面状素材からなる。形状保持部材51は変形自在な線状素材からなる。表面シート層21と裏面シート層31とが、少なくともその縁12の一部に部材埋め込み用の接着部13を形成するという条件を満足させて積層一体化されている。形状保持部材51が部材埋め込み用接着部13の長さ方向に沿ってその内部に埋め込み保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分の拭き取り・汚れ防止・汚れ落とし・防水・保温・保冷など広範囲に適用することのできる積層シートに関する。より詳しくは日常生活・労務・その他においてタオル・バスタオル・手拭き・エプロン・ナプキン・涎掛け・防水カバー・防寒シート(保温シート)・保温カバー・保冷カバー・シーツ・テーブルクロス・マット・ダスター・クリーナ・包装用シートなどに用いて好適な使い捨てタイプの積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活などで用いられる使い捨て用品の一つにペーパータオルがある。これについては紙製の吸水シートからなるものが多い。具体的にはカットシート紙や切り取り式のロール巻きシート紙がよく用いられる。このようなペーパータオルの場合、濡れた手や水分の付着した器具を拭いたりする程度であれば、とくに問題なく使用することができる。とはいえ、洗顔や洗髪の際に普通に用いられる布製のタオルなどに比べると、ペーパータオルには、つぎのような難点がある。その一つは紙の強ばりによる触感の悪さである。他の一つは水分吸収能の不足に起因した拭き取り不良である。さらにペーパータオルの場合は、強度不足にともなうタオル破損も起こりがちである。
【0003】
下記の特許文献1〜4に開示された吸水シートは、上記のような課題を解消することができるものである。それは吸水シートが積層構造であるため、水分の吸収量や強度が大きいからである。もちろんこれら従来品の場合、柔軟で触感のよい素材を表面層や裏面層として採用することにより、使い心地のよさも確保することができる。
【0004】
【特許文献1】実開平03−123457号公報
【特許文献2】実用新案登録第3071674号公報
【特許文献3】特開2002−326229号公報
【特許文献4】特開2004−210359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に開示された吸水シートは、触感・吸水性・強度などを改善した点で望ましいものである。しかしながら各種の使用態様に応じて使い勝手をよくするというときは、下記(01)〜(06)に指摘するような課題について、新たな創意や工夫が要求される。
(01)積層構造にしたことで吸水シートの厚みが増す。そのため、吸水シートを所要面にあてがったりその状態を保持したりするのが容易でない。
(02)上記の対策として吸水シートに接着部(接着剤層)を形成したり紐を付けたりすることが実施されているが、これらの手段をしても、吸水シートを所望状態に保持できないことがある。
(03)厚みのある吸水シートは、また、何らかの手段を講じないかぎり折り畳み状態を安定保持するのが容易でなく、これを三角形のような尖鋭形状に折り曲げ保持して角部の汚れ落とし等を行うのも難しい。
(04)水分付着量が多いときなどは、シート表面からオーバフローする付着水によって防水機能やカバー機能が損なわれる。
(05)既述の特許文献技術は、このような課題に対する意識がなく、それを解決するための手段も開示していない。したがってこの種のシート製品では、かかる課題を解決するための新しい技術が必要となる。
(06)上記の各課題を解決するとき、機能の充実をはじめ、できるだけ多くの要求を満足させるのが望ましいが、シート状の構造物にすぎない製品に多くの要求を課した場合には、技術難度が高くなる一方で、目的とする効果の一部が欠落したりする。
【0006】
本発明はこのような技術課題に鑑み、機能の充実・安全性・簡潔な構成・製作易化・低コスト・廃棄処理性などを満足させることのできる積層シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(11)本発明に係る積層シートは、所期の目的を達成するための第一の課題解決手段として下記の技術内容を特徴とするものである。すなわち第一課題解決手段としての積層シートは、表面部側を形成するための表面シート層と裏面部側を形成するための裏面シート層と細長い変形自在な形状保持部材とを備えていること、および、表面シート層が吸水性および/または通水性を有する面状素材からなり、裏面シート層が吸水性と通水性と防水性とのうちから選択されるいずれか一つの物性を有する面状素材あるいは吸水性と通水性とを有する面状素材からなり、かつ、形状保持部材が変形自在な線状素材からなること、および、表面シート層と裏面シート層とが、少なくともその縁の一部に部材埋め込み用の接着部を形成するという条件を満足させて積層一体化されていること、および、形状保持部材が部材埋め込み用接着部の長さ方向に沿ってその内部に埋め込み保持されていることを特徴とする。
(12)本発明に係る積層シートは、所期の目的を達成するための第二の課題解決手段として下記の技術内容を特徴とするものである。すなわち第二課題解決手段としての積層シートは、上記(11)に記載されたものにおいて、吸水性および/または断熱性を有する内部介在層が表面シート層と裏面シート層との間に介在されていることを特徴とする。
(13)本発明に係る積層シートは、所期の目的を達成するための第三の課題解決手段として下記の技術内容を特徴とするものである。すなわち第三課題解決手段としての積層シートは、上記(11)または(12)に記載されたものにおいて、縁の部分に表面シート層側に向けて隆起する突堤部が形成されていることを特徴とする。
(14)本発明に係る積層シートは、所期の目的を達成するための第四の課題解決手段として下記の技術内容を特徴とするものである。すなわち第四課題解決手段としての積層シートは、上記(11)ないし(14)のいずれかに記載されたものにおいて、形状保持部材を取り除くためのノッチが部材埋め込み用接着部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る積層シートはつぎのような効果を有する。
(21)積層シートは、所定の物性を有する表面用と裏面用のシート層が積層一体化されたものであるから、水分の拭き取り用・汚れ防止用・汚れ落とし用・防水用・保温用・保冷用などとして提供されている既成のシート製品と同様、タオル・バスタオル・手拭き・エプロン・ナプキン・涎掛け・防水カバー・防寒シート(保温シート)・保温カバー・保冷カバー・シーツ・テーブルクロス・マット・ダスター・クリーナ・包装用シートなどのように多用途化し、しかも低廉な素材を積層するだけでよいから、使い捨て可能な低コストに仕上がる。
(22)表面シート層と裏面シート層との接着部内に埋め込み保持された変形自在な形状保持部材は、少なくとも当該両層の縁の一部にあって接着部の長さ方向に沿うものであり、しかも変形後の形状をそのまま自己保持するものである。一例として、形状保持部材が積層シートの折り畳みにともなって変形したりするときは、当該形状保持部材が自己の変形形状に依存してシート折り畳み状態を保持する。積層シートを身体に添わせたり器物に添わせたりしたときの形状も、それに応じて変形する形状保持部材が保持する。さらに形状保持部材の埋め込み箇所を利用して積層シートの一部を三角形のような尖鋭形状に折り曲げたときも、形状保持部材がその折り曲げ形状を保持する。これは積層シートをそれぞれの使用目的や使用条件に合わせて変形させたとき、それが形状保持部材によって保持されるということである。ゆえにシート使用時の利便性が格段に向上し機能的にも充実する。
(23)形状保持部材は変形自在な線状素材であって小さな力で変形するから、これが人や物に傷害を与えたりすることは通常のケースにおいてあり得ない。加えて形状保持部材は、表面シート層と裏面シート層との接着部内にあって完全包被されているから皆目といってよいほど危険性がない。したがって積層シートの使用や取り扱い上の安全性が十分に確保される。
(24)形状保持部材が埋め込まれるところの接着部は、払拭その他の使用に際してほとんど影響のないシートの縁にある。したがって、形状保持部材によって使用を阻害されることもほとんどない。
(25)表面シート層と裏面シート層についてはこれらを積層一体化するだけのもの、形状保持部材についてはこれを接着部内に埋め込み保持するだけのものであるから、シート構成が簡潔であり、その製作も容易に行える。とくに有効といえるのは、表面シート層と裏面シート層との接着部を利用して形状保持部材を保持していることである。このような兼用構成によるときは、形状保持部材の保持手段を別途要求されることがないので、構成の簡潔化や製作の易化がより顕著になる。
(26)素材が低廉である上、構成が簡潔で製作も容易であるため、総じて積層シートの低コスト化をはかることができる。
(27)吸水性および/または断熱性(保温性・保冷性)を有する内部介在層が表面シート層と裏面シート層との間に介在されている積層シートの場合は、その内部介在層に依存して吸水性および/または断熱性を高めることができる。
(28)縁の部分に表面シート層側に向けて隆起する突堤部が形成されている積層シートの場合は、シート表面からシート外へオーバフローしようとする付着水をその突堤部により阻止することができるので、防水機能やカバー機能がより高まる。
(29)形状保持部材を取り除くためのノッチが部材埋め込み用接着部に形成されている積層シートの場合は、これを処分する上で望ましい。すなわち使用済み積層シートの処分時、ノッチを利用して形状保持部材を他部分から切り離し、それらを分別することによって、積層シートの廃棄処理性を向上させることができる。とくに形状保持部材がリサイクルやリユースできる材質のものであるときは、このような処理が資源ゴミの回収にも通じるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る積層シートの各実施形態について、はじめに図1〜図2の実施形態を説明する。
【0010】
図1〜図2に例示された積層シート11において、21は表面部側を形成するための表面シート層、31は裏面部側を形成するための裏面シート層、41は表面シート層21と裏面シート層31との間に介在される内部介在層、51は細長い変形自在な形状保持部材をそれぞれ示す。
【0011】
表面シート層21は、吸水性と通水性のうちのいずれか一方または両方の物性を有する面状素材からなる。この場合の面状素材についていえば、それは面状の繊維集合体であってシート層状になっているものである。ここでの吸水性は周知のとおり、繊維集合体を水に浸したときに水分が内部に付着し、繊維間空間を占める空気が水で置換されるという現象をいう。これに対する通水性は、たとえば水平状態に保持された繊維集合体の上面に水を置いたとき、その水が繊維間空間を経由して繊維集合体下へ通り抜ける現象をいう。親水性の面状素材(繊維集合体)からなる表面シート層21は吸水性と通水性との両方を具備するものが多く、疎水性の面状素材(繊維集合体)からなる表面シート層21は通水性のみのものが多い。表面シート層21の具体的一例をあげると、これは紙(再生紙や合成紙を含む)、布(天然繊維製や合成繊維製のものを含む)、不織布(天然繊維製・化学繊維製・混合繊維製のものを含む)のいずれかをシート層状にしたものからなる。さらにいうと、面状素材(繊維集合体)を形成する繊維などは、親水性のものとして、綿などの天然系繊維、レーヨンなどの再生繊維、親水加工が施されたその他の合成繊維、吸水ポリマ等々をあげることができ、疎水性のものとして、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリイミド(ナイロン)繊維等々をあげることができる。こような素材からなる表面シート層21については、同種または異種の面状素材が複数積層されたものであってもよい。表面シート層21は、また、これが身体の表面(皮膚など)に直接接触するものであるとき、柔軟で触感のよいものが採用される。
【0012】
裏面シート層31は、吸水性・通水性・防水性のうちから選択されるいずれか一つの物性を有する面状素材、または、吸水性と通水性とを有する面状素材からなる。したがって裏面シート層31は、吸水性のみを有していたり、通水性のみを有していたり、防水性のみを有していたり、さらには、吸水性と通水性とを有していたりする。ここでの吸水性や通水性は上記と同じである。防水性は裏面シート層31の一面(片面)から他面(片面)にわたり水を通さない現象をいう。裏面シート層31が吸水性や通水性を有するものであるとき、それは上記と同様の面状素材(繊維集合体)からなる。これに対し防水性を有する裏面シート層31は、代表的一例としてプラスチック製の無孔の面状素材からなる。裏面シート層31が編地や織地のような有孔の面状素材であっても、その孔がきわめて微小で大気圧下で水を通さないものであれば、防水性裏面シート層31として有効である。他の具体的な裏面シート層31として、紙とプラスチックフィルムとが貼り合わされたラミネート紙や、編地・織地・不織布のいずれかとプラスチックフィルムとが貼り合わされた複合シートをあげることができる。表面シート層21と相対接着したり一部を折り曲げ接着したりする場合の裏面シート層31については、ヒートシールやホットメルトが可能なプラスチック素材からなるのが望ましく、または、そのようなプラスチック素材が基材の片面あるいは両面に付着しているのが望ましい。さらに裏面シート層31も、典型的な実施形態において柔軟で触感のよいものが採用される。
【0013】
内部介在層41も自明のとおり層状化されてシート層状を呈しているものである。内部介在層41は前記編地・前記織地・前記不織布の単体または複合体のいずれであってもよいが、代表例ではパルプを主体にしたものからなる。その場合の一例ではパルプのみが層状化される。他の一例では、パルプが編地・織地・不織布のいずれか一つ以上で包被されて層状化される。これらいずれの例でも内部介在層41は吸水性を有するほか、保水性を兼備することがある。内部介在層41が前記編地・前記織地・前記不織布の単体または複合体からなる場合もこれと同じく吸水性を有し、場合により保水性も有する。
【0014】
形状保持部材51は変形自在な線状素材からなる。形状保持部材51の代表例は曲げの容易な金属線である。材質面で保持部材51は銅製であったり鉄製であったりする。保持部材51は、通常、断面円形であるが、断面多角形(例:偏平四角形)や断面異形のものもある。保持部材51が金属製の撚り線からなることもあり、保持部材51がプラスチック製のシースで被覆されていることもある。このような形状保持部材51は、これに力を加えて曲げ変形させたとき、その塑性変形によって曲げ形状を自己保持する。したがって新たに力が作用しないかぎり形状保持部材51の曲げ形状は保持されるものである。
【0015】
図1〜図2に例示された長方形を呈している積層シート11は、それぞれ長方形をなす表面シート層21と裏面シート層31との間に内部介在層41が介在されてこれらが積層されたものである。したがって積層シート11の四辺部であるところの各縁12では、表面シート層21と裏面シート層31とが互いに重なり合っている。この場合において、これら縁12の一部すなわち積層シート11の一辺部が部材埋め込み用の接着部13として設定され、その内部には当該接着部13の長さ方向に沿うように形状保持部材51が介在されている。積層シート11で表面シート層21と裏面シート層31は、接着部13(縁12の一部)を含めた各縁12が接着されているものである。一例として、裏面シート層31がヒートシールやホットメルトが可能なものであるときは、熱接着手段で両シート層21・31の接着部13や他の縁12が相対接着される。他の一例では接着部13を含めた各縁12の内面に接着剤が塗布されてこれらが相対接着される。かくて積層シート11の全周囲部が封じられたとき、内部介在層41は両シート層21・31の間に密封され、形状保持部材51は接着部13内に埋め込み保持される。積層シート11は、さらに、表面シート層11側に向けて隆起する突堤部14が縁12の部分に形成される。具体的には各縁12(接着部13も含む)が表面シート層11側へ折り込まれて接着されることにより突堤部14が形成される。この場合の接着も上記と同じ熱接着手段か接着剤による接着手段で行われる。形状保持部材51は使用済みの積層シート11を廃棄するときに当該積層シート11から分離回収されるのがリサイクルやリユースの点で望ましい。それで、積層シート11には、これの所定部を切り裂いて形状保持部材51を分離するのを容易にするため、すなわち、形状保持部材51の介在する接着部13(縁12)を切り裂くのを容易にするため、図1における接着部13の端部にシート切り裂き用のノッチ15が形成されている。
【0016】
このほか、積層シート11の表面シート層21および/または裏面シート層31には、単数または複数の紐61が必要に応じて取り付けられたり、単数または複数の対物接着層62が必要に応じて設けられたりする。具体的一例として図1〜図2の実施形態では、複数の紐61が図1のごとく裏面シート層31の縁12の近辺に取り付けられているとともに、複数のスポット状をなす対物接着層62が図2のごとく裏面シート層31に点在して設けられている。この場合の各対物接着層62の接着面には、使用時に剥離される剥離紙63が付されている。
【0017】
図1〜図2に例示された積層シート11については下記(31)〜(37)のような実施形態もある。
(31)表面シート層21・裏面シート層31・内部介在層41のうちのいずれか一つ以上が図1〜図2の例よりも増数される。
(32)図1〜図2の積層シート11において内部介在層41が省略される。
(33)図1〜図2の積層シート11において内部介在層41が省略されるとともに表面シート層21および/または裏面シート層31が図1〜図2の例よりも増数される。
(34)図1〜図2の積層シート11において、平行する二辺の縁12内に形状保持部材51がそれぞれ埋め込み保持されたり、直角なす二辺の縁12内に形状保持部材51がそれぞれ埋め込み保持されたり、三辺の縁12内に形状保持部材51がそれぞれ埋め込み保持されたり、全周囲の縁内に形状保持部材51がそれぞれ埋め込み保持されたりする。
(35)図1〜図2の積層シート11において、表面シート層21側の突堤部14が全周囲の縁12に形成されるのでなく一部の縁12にだけ形成される。具体的には、平行する二辺の縁12に沿って突堤部14が形成されたり、直角なす二辺の縁12に沿って突堤部14が形成されたり、三辺の縁12に沿って突堤部14が形成されたりする。
(36)図1〜図2の積層シート11において、紐61は裏面シート層31および/またはか表面シート層21いずれの辺に取り付けられても構わないものである。その場合の紐61の本数も単数であったり複数であったりする。したがって裏面シート層31には、図示例よりも本数の多い紐61が取り付けられることがある。具体的には、各縁12に対して一本あてとか複数本あてとかで取り付けられる。紐61は、また、裏面シート層31のほか表面シート層21にも取り付けられ、あるいは、裏面シート層31に代えて表面シート層21に取り付けられることがある。積層シート11の紐61は、さらに、すべて省略されることがある。
(37)図1〜図2の積層シート11において、対物接着層62は、多数または複数のものが表面シート層21にも設けられ、または、裏面シート層31に代えて表面シート層21にのみ設けられる。積層シート11の対物接着層62がすべて省略されることもある。
【0018】
本発明に係る積層シートの各実施形態について、つぎに図3の実施形態を説明する。
【0019】
図3(A)の積層シート11は外形が三角形、図3(B)の積層シート11は外形が正方形、図3(C)の積層シート11は外形が台形(等脚台形)、図3(D)の積層シート11は外形が五角形である。図3(E)の積層シート11は外形が真円形、図3(F)の積層シート11は外形が楕円形、図3(G)の積層シート11は外形が半円形である。さらに、図3(H)の積層シート11は外形が十字型でその一部に半円状の凹みがある。この場合の凹みがV字形・U字形・多角形(例:四角形)のときもある。これらの積層シート11を外形の類似した形状ごとにグループ分けすると、図3の(A)〜(D)は多角形グループ、図3の(E)〜(G)は円形グループ、図3(H)は上記二つのグループに属さない異形グループということになる。異形グループには、図示しない鼓形や紡錘形の外形なども含まれる。すでに説明された積層シート11やここで説明された積層シート11の任意の辺(縁12)に、半円形・V字形・U字形・多角形などの凹みが設けられることもある。図3(A)〜(H)の図示例や図示以外のものも含め、ここで説明された各積層シート11については、図1〜図2の実施形態で述べたあらゆる事項が、技術的な互換性の範囲内ですべて実施できるものである。
【0020】
図1〜図2や図3(B)に例示した外形の積層シート11については、ロール巻きの長尺物で1シートごとに切目(例:ミシン目)の入れたものをつくれば、積層シート11を一単位(一品)ごとに切り取り使用することができる。
【0021】
図1〜図2の積層シート11(ただし紐61や対物接着層62のないもの)について、これを「ヘアタオル」として用いるときは図4を参照して以下のようになる。はじめは図4(A)のように、形状保持部材51のある縁12を上にした積層シート11が首とその下の部位にわたって巻き掛けられる。このとき形状保持部材51を内包した縁12は首の周りに緩く巻かれてループ形状になる。このループ形状は、変形形状を保持する形状保持部材51によって保持される。つぎも図4(A)を参照して明らかなように、上の縁12の両端部12a・12bが、これらと重なり合う縁12の内側・外側に引っ掛けられ、形状保持部材51も含めてその引っ掛け部分が捩られる。この捩りで形状保持部材51が撚り合わせ変形してクランプ機能を奏するので、積層シート11は解けることなく身体の所定部に保持される。この後は下の縁12が把持され、把持された積層シート11が表裏を反転されながら引き上げられる。このようにすることで積層シート11は頭髪を覆い囲うような筒状になり、しかも形状保持部材51を内包した縁12が頭髪の生え際に沿うようになる。積層シート11がこうなる理由はそのように取り扱われるからである。この筒状のときに積層シート11で濡れた頭髪を拭いたりする。つぎは筒状の積層シート11で頭髪を覆うためにこれが頭頂や前頭などで折り畳まれ、その最終的な折り畳み片が前頭側で束ねられた後、形状保持部材51を内包した縁12の一部が図4(B)のように前頭側から頭頂側へと蔓巻状に巻き込まれる。かくて頭髪に被された積層シート11は引き締められ、頭髪にフィットするようになる。さらに、蔓巻状に変形にした形状保持部材51がその変形後の形状を自己保持するので、積層シート11による頭髪包被状態がそのまま保持される。
【0022】
図5は積層シート11について他の使用例を二つ示したものである。この二例のうちで積層シート11を食事の際のナプキンとして用いる図5(A)の場合は、積層シート11が胸腹部に掛けられる。具体的には図4(A)の説明内容に準じ、形状保持部材51のある縁12を上側にした積層シート11が首とその下の部位にわたって巻き掛けられる。この場合も、上の縁12の両端部が前例と同様に引っ掛けられたり捩られたりすることがある。ただし積層シート11の両端部は背中側で重なり合うように配慮される。このほか、対をなす紐61が背中側で結ばれたり、積層シート11の裏面シート層31が対物接着層62を介して胸腹部の着衣に隔離可能にスポット止め(接着)されたりする。図5の使用例で積層シート11は、食事の際の食べこぼしやその他で着衣の汚れるのを防止する。このケースで望ましいのは液状の食べこぼしに対する突堤部14の機能である。それは液状物の食べこぼし量(1回の食べこぼし量)が多く、それが表面シート層21を伝って流れ落ちるというとき、その食べこぼし液が積層シート11外にまで漏れ出すのを突堤部14が堰き止めるからである。堰き止められた食べこぼし液もすぐに積層シート11内に浸透して吸収されることとなる。
【0023】
図5(B)では、同図(A)のよりもサイズの大きい積層シート11がエプロンとして使用される例を示している。さらにいえば上半身用のエプロンとして用いられている。この使用例も前例と同様、形状保持部材51のある縁12・紐61・対物接着層62などを介して積層シート11が身体の所定部に装着される。積層シート11を下半身用のエプロンとしてするときは、それを下半身に巻き付けるようして着用すればよい。サイズの大きい積層シート11であれば、上半身の前面から下半身の前面までを覆うことのできるエプロンになる。積層シート11を外套式の防寒シート(保温シート)として着用するときも図5(B)のようにすればよい。その場合の積層シート11の着用態様は、図5(B)との比較で前後が反対なることもある。
【0024】
図6は積層シート11について上記以外の使用例を三つ示したものである。この三例のうち、布団で就寝するときのネックウォーマ(首周りから肩先までの保温シート)として積層シート11を用いる図6(A)の場合は、所定の部分を覆うように積層シート11が掛けられる。この上から上布団などを掛けたとき、首周りや肩先などからの隙間風の侵入を積層シート11が防ぐことになるので、それらの部分を保温することができる。この場合も、形状保持部材51のある縁12を変形させながら積層シート11の上部側を首周りや肩先などにフィットさせることで防寒や保温の効果がより高まる。
【0025】
図6(B)で積層シート11は、これを払拭タイプの清掃用具(ダスター・クリーナなど)として用いるため、使い勝手のよい大きさに折り畳まれたものである。この例において縁12の接着部13内に埋め込み保持された形状保持部材51は、積層シート11の折り畳みにともない、U字状に折り曲げられてその形状を保持している。そしてこの状態の形状保持部材51によって積層シート11は折り畳み状態を保持される。また、折り畳み状態における積層シート11の面の広がり状態も形状保持部材51によって維持しやすくなる。
【0026】
図6(C)で積層シート11は、これを払拭タイプの清掃用具として用いるため、使い勝手のよい形状に折り畳まれたものである。すなわちこの例での積層シート11は、形状保持部材51を内包した縁12で三角形のような尖鋭形状をつくるため、これが3回程度折り込まれている。こうして形成された積層シート11の尖鋭部は、コーナ部分や狭小部分などの汚れ落としに都合よいのはもちろん、尖鋭部の形状が形状保持部材51により強度的に安定支持されるのでそれらの箇所を力強くしっかり拭うことができる。
【0027】
積層シート11についてさらにいうと、既述の内容に基づいて適当な積層数の積層構造にしたり、適当な大きさの表面積にしたり、適当な材質にしたりにすることで、タオル・手拭き・涎掛け・防水カバー・保温カバー・保冷カバー・シーツ・テーブルクロス・マット・ダスター・クリーナ・包装用シートなどの所望製品も得ることができる。これらは人または物に対して「あてがう」「被せる」「巻く」「敷く」「拭く」「包む」など周知の用法で用いられる。このような用途の積層シート11も、縁12の一部に部材埋め込み用の接着部13が形成され、そこに形状保持部材51が埋め込まれているから、その形状保持機能を活用することで使用上ないし取り扱い上の利便性を高めることができる。
【0028】
積層シート11は使用を終えるごとに廃棄される。通常は1回使用するごとに捨てられる。その場合において、形状保持部材51を内包した縁12はこれを切り裂き、そこから形状保持部材51を取り出すのがよい。理由は積層シート11の廃棄処理性が高まる一方で、形状保持部材51がリサイクルやリユースに活用できるからである。この取り出し作業を容易にするため、接着部13(縁12)の端部にシート切り裂き用のノッチ15が形成されている。したがって形状保持部材51を取り出すときは、ノッチ15を通じて接着部13(縁12)を切り裂けばよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る積層シートは、日常生活・労務・その他において適用できるなど広範な用途をもつものであり、しかもそれが、機能の充実・安全性・簡潔な構成・製作易化・低コスト・廃棄処理性などを満足させるものが提供できる。したがって産業上の利用可能性が高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る積層シートの一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】本発明に係る積層シートの他の実施形態を示したそれぞれ正面図である。
【図4】本発明係る積層シートの一使用例を略示した説明図である。
【図5】本発明係る積層シートの他の各使用例を略示した説明図である。
【図6】本発明係る積層シートの別の各使用例を略示した説明図である。
【符号の説明】
【0031】
11 積層シート
12 縁
13 接着部
14 突堤部
15 ノッチ
21 表面シート層
31 裏面シート層
41 内部介在層
51 形状保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部側を形成するための表面シート層と裏面部側を形成するための裏面シート層と細長い変形自在な形状保持部材とを備えていること、および、表面シート層が吸水性および/または通水性を有する面状素材からなり、裏面シート層が吸水性と通水性と防水性とのうちから選択されるいずれか一つの物性を有する面状素材あるいは吸水性と通水性とを有する面状素材からなり、かつ、形状保持部材が変形自在な線状素材からなること、および、表面シート層と裏面シート層とが、少なくともその縁の一部に部材埋め込み用の接着部を形成するという条件を満足させて積層一体化されていること、および、形状保持部材が部材埋め込み用接着部の長さ方向に沿ってその内部に埋め込み保持されていることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
吸水性および/または断熱性を有する内部介在層が表面シート層と裏面シート層との間に介在されている請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
縁の部分に表面シート層側に向けて隆起する突堤部が形成されている請求項1または2に記載の積層シート。
【請求項4】
形状保持部材を取り除くためのノッチが部材埋め込み用接着部に形成されている請求項1ないし3いずれかに記載の積層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−188853(P2008−188853A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25166(P2007−25166)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(591184563)
【Fターム(参考)】