説明

積層セラミック電子部品

【課題】積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極の引出し部の露出端の幅が、内部電極の対向部の幅より狭く形成され、そのため、引出し部の両側であって、引出し部の側辺と部品本体の側面との間に、マージン領域が形成されるとき、デラミネーションが生じやすい。
【解決手段】マージン領域33に、ダミー電極34を形成する。ダミー電極34は、内部電極10の対向部24の、部品本体2の側面5に対向する側辺22の延長線36と内部電極10の引出し部25の、側面5に対向する側辺37との間に挟まれた領域において、側面5に対向する側辺22の延長線36上にかからないように配置される。ダミー電極34は、側面5と平行な方向に線状に延びる複数の電極片40からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミック電子部品に関するもので、特に、セラミック層の薄層化および多層化に適した構造を有する積層セラミック電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルオーディオ機器等の小型携帯電子機器の市場が拡大している。これらの携帯電子機器では、小型化が進んでいる一方で、高性能化も同時に進んでいる。これらの携帯電子機器には多数の積層セラミック電子部品が搭載されているが、積層セラミック電子部品についても高性能化が要求されており、たとえば、積層セラミックコンデンサにおいては大容量化が要求されている。これを受けて、積層セラミックコンデンサでは、セラミック層の薄層化が進められており、これによりセラミック層の積層枚数も増加する傾向にある。
【0003】
通常、積層セラミック電子部品を製造する際には、焼成後にセラミック層となるセラミックグリーンシート上に内部電極パターンを印刷し、内部電極パターンを所定方向にずらすようにセラミックグリーンシートを積層してマザーブロックを積層し、マザーブロックを所定寸法にカットしてグリーンチップを切り出すことが行なわれる。
【0004】
この製造方法では、積層ずれやカットずれの影響によりグリーンチップ側面に内部電極パターンが露出しないように、グリーンチップ側面と内部電極パターンの側辺との間のサイドギャップ領域のマージンを確保する必要がある。しかし、積層セラミック電子部品の小型化を進めた場合、内部電極の面積に対してサイドギャップ領域の面積の占める割合が大きくなり、その分だけ積層セラミックコンデンサの容量が低下せざるを得なかった。
【0005】
これを受けて、特許文献1では、内部電極の両側端縁が積層体側面に露出した積層体を用意し、この積層体側面にセラミックグリーンシートを貼り付けることによりサイドギャップ領域を形成するため、積層コンデンサの小型化および大容量化を実現することができると記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術では、セラミックグリーンシートを貼り付ける前の積層体において、サイドギャップ領域がないため、積層方向にセラミック層同士が密着する箇所が少なくなってしまい、これが原因で、デラミネーションが生じやすくなる。そして、本件発明者は、なかでも、外層(内部電極が形成されていない上下のセラミック層)付近における内部電極の引出し部のコーナー(カット後にグリーンチップのコーナー部に露出する部分)において、デラミネーションが生じやすくなることを発見した。
【0007】
これは、マザーブロックを所定の寸法に切断する際に応力が集中しやすく、接着面積の小さいコーナー部がデラミネーション発生の起点となりやすいためであると推測される。
【0008】
なお、同様の問題は、積層セラミックコンデンサに限らず、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品においても、遭遇し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−349669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る、積層セラミック電子部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、互いに対向する1対の主面と、互いに対向する1対の側面と、互いに対向する1対の端面とを有し、側面と端面との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部が形成され、主面方向に延びかつ主面に直交する方向に積層された複数のセラミック層と、セラミック層間の界面に沿って形成されかつ1対の端面のいずれかに露出する露出端を持つが、側面には露出しない複数対の内部電極とを有する、部品本体と、内部電極の各露出端に電気的に接続されるように、部品本体の少なくとも1対の端面上に形成された、外部電極とを備える、積層セラミック電子部品に向けられる。
【0012】
上記内部電極は、側面に対して平行な1対の側辺を有するとともに、セラミック層を介して別の内部電極と対向する、対向部と、対向部から端面に引き出され、その端部に露出端を形成する、引出し部とを有している。
【0013】
この発明は、前述した技術的課題を解決するため、側面間を結ぶ幅方向で見て、上記引出し部の露出端の幅は、上記対向部の幅より狭く形成されており、それによって、引出し部の両側であって、引出し部の側辺と側面との間に、マージン領域が形成され、この各マージン領域に、ダミー電極が形成され、ダミー電極は、対向部の、側面に対向する側辺の延長線と引出し部の、側面に対向する側辺との間に挟まれた領域において、側面に対向する側辺の延長線上にかからないように配置されていることを特徴としている。
【0014】
ダミー電極の側面側の側辺とこれに対向する側面との間隔は、ダミー電極の引出し部側の側辺とこれに対向する引出し部の側辺との間隔より広いことが好ましい。
【0015】
また、各ダミー電極は、側面と平行な方向に線状に延びる複数の電極片からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、内部電極の引出し部の幅を対向部の幅より狭くすることにより、内部電極の引出し部のコーナー(カット後にグリーンチップのコーナー部に露出する部分)を内側に退避させることができる。よって、切断時の応力集中の影響によるデラミネーションを抑制することができる。
【0017】
また、内部電極の引出し部の両側に形成されたマージン領域において、セラミック層が互いに密着するため、このこともデラミネーションの抑制に寄与する。
【0018】
他方、上記のマージン領域は内部電極が形成されない領域となり、再び段差の問題に直面する。しかし、この発明によれば、マージン領域にはダミー電極が形成されるので、上記の段差の問題はダミー電極によって解消または低減される。
【0019】
この発明において、ダミー電極の側面側の側辺とこれに対向する側面との間隔が、ダミー電極の引出し部側の側辺とこれに対向する引出し部の側辺との間隔より広くされること、あるいは、各ダミー電極が、側面と平行な方向に線状に延びる複数の電極片からなることが、段差抑制とデラミネーション抑制との双方をバランス良く実現することに有効に働く。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ1の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う断面図である。
【図3】図1に示した積層セラミックコンデンサ1に備える部品本体2の内部構造を示す平面図である。
【図4】図3の左上部分の拡大図である。
【図5】図1に示した積層セラミックコンデンサ1に備える部品本体2の端面図である。
【図6】図1に示した積層セラミックコンデンサ1を製造するために用意されるもので、内部電極パターン42を形成したセラミックグリーンシート41を示す平面図である。
【図7】図6に示したセラミックグリーンシート41が積層された状態を拡大して示す平面図である。
【図8】図6および図7に示したセラミックグリーンシート41を積層してなるマザーブロック48を切断して得られたグリーンチップ49の外観を示す斜視図である。
【図9】図8に示したグリーンチップ49にセラミック側面層13および14を形成した状態を示す斜視図である。
【図10】この発明の第2の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサに備える部品本体2の内部構造を示す、図3に対応する平面図である。
【図11】この発明の第3の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサに備える部品本体2の内部構造を示す、図3に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明を実施するための形態を説明するにあたり、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示する。
【0022】
図1ないし図9は、この発明の第1の実施形態を説明するためのものである。
【0023】
まず、図1ないし図5に示すように、積層セラミックコンデンサ1は、部品本体2を備えている。部品本体2は、互いに対向する1対の主面3および4と、互いに対向する1対の側面5および6と、互いに対向する1対の端面7および8とを有する、ほぼ直方体状をなしている。
【0024】
部品本体2は、図2および図5に示すように、主面3および4の方向に延びかつ主面3および4に直交する方向に積層された複数のセラミック層9と、セラミック層9間の界面に沿って形成された複数対の第1および第2の内部電極10および11とをもって構成された積層構造を有する積層部12を有する。また、部品本体2は、図5に示すように、前述した1対の側面5および6をそれぞれ与えるように積層部12の各側面上に配置される1対のセラミック側面層13および14を有している。セラミック側面層13および14は、好ましくは、互いに同じ厚みとされる。
【0025】
なお、図2および図5では、他の図面に比べて、厚み方向寸法が誇張されている。
【0026】
内部電極10および11の形状の詳細については後述するが、第1の内部電極10は、第1の端面7に露出する露出端15を持ち、第2の内部電極11は、第2の端面8に露出する露出端16を持っている。しかし、前述したセラミック側面層13および14がサイドギャップ領域を構成するため、内部電極10および11は、部品本体2の側面5および6には露出しない。
【0027】
積層セラミックコンデンサ1は、さらに、内部電極10および11の各々の露出端15および16にそれぞれ電気的に接続されるように、部品本体2の少なくとも1対の端面7および8上にそれぞれ形成された、外部電極17および18を備えている。
【0028】
部品本体2には、図3および図4に示すように、側面5および6の各々と端面7および8の各々との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部19が形成され、また、図1および図5に示すように、主面3および4の各々と側面5および6の各々との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部20が形成され、さらに、図2に示すように、主面3および4の各々と端面7および8の各々との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部21が形成されている。
【0029】
図3によく示されているように、第1の内部電極10は、側面5および6に対して平行な1対の側辺22および23を有するとともに、セラミック層9を介して第2の内部電極11と対向する、対向部24と、対向部24から第1の端面7に引き出され、その端部に前述の露出端15を形成する、引出し部25とを有している。図5には、第1の端面7に露出する第1の内部電極10の露出端15が図示されている。
【0030】
第1の内部電極10の平面形状に関して、側面5および6間を結ぶ幅方向で見て、引出し部25の露出端15の幅は、対向部24の幅より狭くされている。特に、この実施形態では、引出し部25が長方形状であり、引出し部25全体の幅が、対向部24の幅より狭くされており、対向部24の、引出し部25へと連なる領域では、引出し部25の幅と等しくなるように、幅が次第に狭くなっている。なお、引出し部25は、端面7に向かって次第に狭くなる幅方向寸法を有する台形状であってもよい。
【0031】
図3において破線で示した第2の内部電極11についても、同様に、側面5および6に対して平行な1対の側辺26および27を有するとともに、セラミック層9を介して第1の内部電極10と対向する、対向部28と、対向部28から第2の端面8に引き出され、その端部に前述の露出端16を形成する、引出し部29とを有している。第2の内部電極11は、上述した第1の内部電極10と対称の平面形状を有している。
【0032】
上述したように、第1の内部電極10の対向部24と第2の内部電極11の対向部28とがセラミック層9を介して互いに対向していることによって、これら対向部24および28間に電気的特性が発現する。すなわち、この積層セラミックコンデンサ1の場合には、静電容量が形成される。
【0033】
第1の内部電極10の対向部24は、側辺22および23を結ぶ方向で見て、実質的に平坦である。すなわち、対向部24は、側辺22および23の近傍で薄くなったり、積層方向に湾曲したりすることはない。第2の内部電極11の対向部28についても同様である。
【0034】
第1および第2の内部電極10および11の各々の引出し部25および29は、それぞれ、端面7および8に引き出される。このとき、露出端15および16が前述した面取り部19の曲面形成範囲にかからないようにされる。すなわち、図4に示すように、対向部24の側辺22から部品本体2の側面5までのギャップ寸法をWgとし、面取り部19の曲面の曲率半径をRdとし、対向部24の側辺22から露出端15の端部までの距離をDとしたとき、Rd<Wg+Dを満足するようにされる。露出端15および16が面取り部19の曲面形成範囲にかかってしまうと、内部電極10および11のコーナー部が削られてしまい、その部分を起点として剥離が生じやすくなるおそれがあるためである。
【0035】
内部電極10および11のための導電材料としては、たとえば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。
【0036】
内部電極10および11の各厚みは、0.3〜2.0μmであることが好ましい。なお、引出し部25および29の各厚みは、対向部24および28の各厚みに比べて厚くされてもよい。これにより、引出し部25および29に関連して生じやすい積層部12の段差を減少させることができる。
【0037】
前述したように、内部電極10および11は、側面5および6間を結ぶ幅方向で見て、引出し部25および29の露出端15および16の各幅は、対向部24および28の各幅より狭くされており、それによって、引出し部25および29の各々の両側であって、引出し部25および29の各側辺と側面5および6との間に、マージン領域33がそれぞれ形成されている。
【0038】
各マージン領域33には、端面7または8に露出するダミー電極34および35が形成される。ダミー電極34は、第1の内部電極10と同一面上に位置され、ダミー電極35は、第2の内部電極11と同一面上に位置される。なお、ダミー電極34および35は端面7または8に必ずしも露出している必要はないが、露出することにより、外部電極17および18の部品本体2に対する接合強度を高めることができる。
【0039】
図4において図示されたダミー電極34について説明すると、ダミー電極34は、対向部24の、側面5に対向する側辺22の延長線36と引出し部25の、側面5に対向する側辺37との間に挟まれた領域において、側面5に対向する側辺22の延長線36上にかからないように配置されている。すなわち、ダミー電極34の側面5側の側辺38とこれに対向する側面5との間隔をE、内部電極10および11の対向部24および28の各々の側辺22および26から部品本体2の側面5までのギャップ寸法をWg、としたとき、E>Wgを満足する。なお、延長線36は、後述する積層部12とセラミック側面層13との界面30上に位置している。
【0040】
好ましくは、ダミー電極34の側面5側の側辺38とこれに対向する側面5との間隔Eは、ダミー電極34の引出し部25側の側辺39とこれに対向する引出し部25の側辺37との間隔Fより広くされる。
【0041】
また、好ましくは、ダミー電極34は、側面5と平行な方向に線状に延びる複数の電極片40から構成される。この実施形態では、電極片40は引出し部25の両脇に3個ずつ配置されているが、1個ずつ、2個ずつ、または4個以上ずつ配置されていてもよい。電極片40の印刷性を考慮すれば、電極片40は2〜3個ずつ配置されることが好ましい。
【0042】
また、ダミー電極34が端面7に露出する場合、好ましくは、Rd<Eとされる。ダミー電極34が面取り部19の曲面形成範囲にかかってしまうと、ダミー電極34のコーナー部が削られてしまい、その部分を起点として剥離が生じやすくなるおそれがあるためである。
【0043】
図4において図示されたダミー電極34以外のダミー電極34および35についても同様の構成を有している。
【0044】
ダミー電極34および35は、実質的に容量形成に寄与しない。ただし、異電位の内部電極とわずかに対向する場合があり、この場合には、微小容量を形成することもある。よって、ダミー電極34および35が容量を形成する場合を除外する意図ではない。
【0045】
ダミー電極34および35は、内部電極10および11と同じ材料により構成されることが好ましい。なお、ダミー電極34および35の構成材料、厚みなどの条件については、内部電極10および11の場合と同様である。
【0046】
セラミック層9ならびにセラミック側面層13および14を構成するセラミック材料としては、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどを主成分とする誘電体セラミックを用いることができる。誘電体セラミックには、必要に応じて、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類元素化合物などの副成分が添加される。
【0047】
セラミック側面層13および14を構成するセラミック材料は、セラミック層9を構成するセラミック材料と少なくとも主成分が同じであることが好ましい。この場合、最も好ましくは、同じ組成のセラミック材料が、セラミック層9とセラミック側面層13および14との双方に用いられる。
【0048】
なお、この発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。積層セラミック電子部品が、たとえば、圧電部品の場合には、PZT系セラミックなどの圧電体セラミック、サーミスタの場合には、スピネル系セラミックなどの半導体セラミックが用いられる。
【0049】
外部電極17および18は、前述したように、部品本体2の少なくとも1対の端面7および8上にそれぞれ形成されるが、この実施形態では、主面3および4ならびに側面5および6の各一部にまで回り込んだ部分を有している。
【0050】
外部電極17および18は、図示しないが、下地層と下地層上に形成されるめっき層とで構成されることが好ましい。下地層のための導電材料としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。下地層は、導電性ペーストを未焼成の部品本体2上に塗布して部品本体2と同時焼成するコファイア法を適用することによって形成されても、導電性ペーストを焼成後の部品本体2上に塗布して焼き付けるポストファイア法を適用することによって形成されてもよい。あるいは、下地層は、直接めっきにより形成されてもよく、熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂を硬化させることにより形成されてもよい。
【0051】
下地層の厚みは、最も厚い部分で、10〜150μmであることが好ましい。
【0052】
下地層上に形成されるめっき層を構成する金属としては、たとえば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、BiおよびZnからなる群から選ばれる1種の金属または当該金属を含む合金を用いることができる。めっき層は複数層から構成されていてもよい。このようにめっき層が複数層から構成される場合、好ましくは、Niめっきおよびその上のSnめっきの2層構造とされる。また、めっき膜の厚みは、1層あたり、1〜15μmであることが好ましい。
【0053】
下地層とめっき層との間に、応力緩和用の導電性樹脂層が形成されていてもよい。
【0054】
図4によく示されているように、内部電極10の対向部24の側辺22は、積層部12とセラミック側面層13との界面30上に位置している。同様に、内部電極11の対向部28の側辺26についても、積層部12とセラミック側面層13との界面30上に位置している。したがって、内部電極10および11の対向部24および28の各々の側辺22および26から部品本体2の側面5までのギャップ寸法Wgは、セラミック側面層13の厚みに相当する。
【0055】
上述のギャップ寸法Wgは、面取り部19の曲面の曲率半径Rdとの関係で、Wg<Rdを満足するようにされることが好ましい。すなわち、ギャップ寸法Wgより曲率半径Rdの方が大きく、それゆえ、積層部12とセラミック側面層13との界面30と、部品本体2の外表面との交線32が、面取り部19の曲面形成範囲内に位置するようにされることが好ましい。
【0056】
同様の状況が、図4では図示しない、部品本体2の図3における右上、左下および右下の各面取り部19においても達成されることが好ましい。
【0057】
上述のように、Wg<Rdを満足すれば、セラミック側面層13および14が積層部12から剥離するのを十分に防止することができる。
【0058】
ギャップ寸法Wgについては、15μm≦Wgを満足することが好ましい。Wgが15μm以上であれば、ギャップ部分で生じ得る亀裂(ギャップ部分を構成するセラミックグリーンシートが破れることに起因する線状のキズ)を防止することができる。なお、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化に応え得るためには、Wg≦35μmを満足することが好ましい。
【0059】
面取り部19の曲面の曲率半径Rdについては、55μm≦Rdを満足することが好ましい。Rdが55μm以上であれば、部品本体2において割れや欠けが生じることを防止することができる。また、面取り部19上に形成される外部電極17および18の下地層が局所的に薄くなってしまうことをより確実に防止するためには、Rd≦95μmであることが好ましい。これにより、耐湿性が低下することを防止することができる。
【0060】
対向部24の側辺22から露出端15の端部までの距離Dについては、90μm≦Dを満足することが好ましい。Dが90μm以上であれば、外部電極17の端部と部品本体2との間から浸入し得る水分が露出端15まで到達しにくくなるため、耐湿性が低下することを防止することができる。
【0061】
ダミー電極34の側面5側の側辺38とこれに対向する側面5との間隔Eについては、100μm≦Eを満足することが好ましい。Eが100μm以上であれば、カットずれなどが生じた場合でも、ダミー電極34が延長線36上に確実にかからないようにすることができる。
【0062】
ダミー電極34の引出し部25側の側辺39とこれに対向する引出し部25の側辺37との間隔Fについては、50μm≦Fを満足することが好ましい。Fが50μm以上であれば、印刷時の滲みやプレス時の歪みの影響により、ダミー電極34と引出し部25とがつながってしまうのを防止することができる。
【0063】
完成品としての積層セラミックコンデンサ1からWg、Rd、D、E、およびFを測定する際には、部品本体2を高さ寸法の1/2程度で切断して現れた、主面3および4に平行な面において、4つのコーナー部における曲率半径Rdと、2つのギャップ領域についてのギャップ寸法Wgと、内部電極の対向部の側辺から露出端の端部までの距離Dとを測定すればよい。そして、各コーナー部において、E>Wgを満足すること、または各種寸法の関係を確認すればよい。
【0064】
次に、図6ないし図9をさらに参照しながら、上述した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0065】
まず、セラミック層9となるべきセラミックグリーンシート、内部電極10および11ならびにダミー電極34および35のための導電性ペースト、セラミック側面層13および14のためのセラミックグリーンシート、ならびに、外部電極17および18のための導電性ペーストがそれぞれ準備される。これらセラミックグリーンシートおよび導電性ペーストには、バインダおよび溶剤が含まれるが、これらバインダおよび溶剤としては、それぞれ、公知の有機バインダおよび有機溶剤を用いることができる。
【0066】
次に、図6に示すように、セラミックグリーンシート41上に、たとえばスクリーン印刷法などにより所定のパターンをもって導電性ペーストが印刷される。これによって、内部電極10および11の各々となるべき内部電極パターン42が形成されたセラミックグリーンシート41が得られる。
【0067】
この実施形態では、セラミックグリーンシート41上に、帯状の内部電極パターン42が複数列形成される。図6において、帯状の内部電極パターン42が延びる長手方向(図6による上下方向)の仮想切断線43およびこれに対して直交する幅方向(図6による左右方向)の仮想切断線44が図示されている。帯状の内部電極パターン42は、2つ分の内部電極10および11が各々の引出し部25および29同士で連結されたものが、長手方向に沿って連なった形状を有している。
【0068】
帯状の内部電極パターン42は、上記長手方向に沿って直線状に延びる1対の側辺45および46を有する。また、各帯状の内部電極パターン42では、その幅方向中央において、内部電極パターンが形成されない長手の六角形状の穴あき部47が、長手方向に沿って所定のピッチで分布している。これは、前述した引出し部25および29の形態に由来するものである。
【0069】
さらに、穴あき部47の中には、複数の線状のダミー電極パターン52が形成されている。これは、ダミー電極34および35となるべきもので、内部電極パターン42と同時に印刷される。
【0070】
次に、上述のように内部電極パターン42およびダミー電極パターン52が形成されたセラミックグリーンシート41を所定の順序でかつ所定枚数積層し、その上下に導電性ペーストが印刷されていない外層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層することによって、図7にその一部を示したマザーブロック48が作製される。図7において、マザーブロック48は、内部電極パターン42およびダミー電極パターン52が形成されたセラミックグリーンシート41の上にある外層用セラミックグリーンシートが除去された状態で図示されている。
【0071】
上述の積層工程において、図6(A)と同(B)とに示すように、帯状の内部電極パターン42の幅方向に沿って、セラミックグリーンシート41を所定間隔、すなわち内部電極パターン42の幅方向寸法の半分ずつ、ずらされながら積層される。
【0072】
次に、マザーブロック48は、必要に応じて、静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされる。
【0073】
次に、マザーブロック48は、図6に示した長手方向の仮想切断線43および幅方向の仮想切断線44に沿って切断され、図8に示すようなグリーンチップ49が得られる。図7において、マザーブロック48におけるグリーンチップ49となるべき箇所が破線で囲まれて示されている。
【0074】
図6および図7からわかるように、長手方向の仮想切断線43は、一方では、帯状の内部電極パターン42を幅方向において2等分するように、すなわち、穴あき部47を幅方向において2等分するように位置しており、他方では、隣接する内部電極パターン42の側辺45および46間を幅方向において2等分するように位置している。
【0075】
図8に示すように、グリーンチップ49は、部品本体2の側面5および6の各々の内側に位置しかつ側面5および6に平行な面である平行側面50および51を有する。これら平行側面50および51は、上述した幅方向の仮想切断線44に沿う切断面によって与えられたものである。グリーンチップ49は、前述した積層部12の未焼成の段階にあるものに相当し、未焼成の複数のセラミック層9と未焼成の複数対の内部電極10および11とをもって構成された積層構造を有している。
【0076】
前述したように、露出端15および16の幅を対向部24および28の幅より狭くして、マージン領域33を形成することにより、内部電極10および11の引出し部25および29のコーナーを内側に退避させことができるとともに、マージン領域33においてセラミック層9を互いに密着されることができる。よって、デラミネーションを生じにくくすることができる。
【0077】
次に、図9に示すように、グリーンチップ49の平行側面50および51上に、部品本体2の側面5および6を与えるべき未焼成のセラミック側面層13および14が形成され、それによって、研磨前の未焼成の部品本体2が得られる。
【0078】
そのため、グリーンチップ49の平行側面50および51上に未焼成のセラミック材料が付与される。この未焼成のセラミック材料の付与には、前述したセラミックグリーンシートが用いられ、このセラミックグリーンシートが、グリーンチップ49の平行側面50および51上に付与される。この他に、たとえば、スクリーン印刷法等の印刷法、インクジェット法、グラビアコート法等のコート法、噴霧法等によって、グリーンチップ49の平行側面50および51上にセラミックペーストを付与してもよい。これらの付与方法において、セラミックグリーンシートを貼り付ける方法は、別体として独立した物体を接着する分、他の付与方法に比べて接着力が弱くなりやすいため、Wg<Rdとすることの効果が特に期待できる。これらセラミック側面層13および14の形成によって、平行側面50および51に露出した未焼成の内部電極10および11が被覆される。
【0079】
次に、未焼成の部品本体2に対して研磨工程が実施される。研磨手段としては、バレル研磨などを用いることができる。この研磨によって、前述した面取り部19〜21が形成される。
【0080】
この研磨工程において、グリーンチップ49と未焼成のセラミック側面層13および14の各々の界面(積層部12とセラミック側面層13および14の各々の界面30および31に相当。図3〜図5参照)と、未焼成の部品本体2の外表面との交線32が、面取り部19の曲面形成範囲内に位置するようにされることが好ましい。言い換えれば、未焼成のセラミック側面層13および14により形成されたギャップ領域の寸法(前述のギャップ寸法Wgに相当)が、面取り部19の曲面の曲率半径Rdよりも小さくなるようにされることが好ましい。
【0081】
上述した条件を満足させるように研磨工程を実施することにより、グリーンチップ49ならびに/またはセラミック側面層13および14を構成する未焼成のセラミック材料が、グリーンチップ49とセラミック側面層13および14の各々との界面を埋めるように伸ばされた結果、この未焼成のセラミック材料が言わば「パテ」のような役割を果たし、グリーンチップ49とセラミック側面層13および14との間の接着力が高められる。
【0082】
この研磨工程において、未焼成の部品本体2の端面7および8に露出した未焼成の内部電極10および11の露出端15および16は、前述したように、面取り部19の曲面形成範囲にかからないようにされる。
【0083】
次に、未焼成の部品本体2が焼成される。焼成温度は、セラミックグリーンシート41ならびにセラミック側面層13および14に含まれるセラミック材料や内部電極10および11に含まれる金属材料にもよるが、たとえば900〜1300℃の範囲に選ばれることが好ましい。
【0084】
次に、焼成後の部品本体2の両端面7および8に導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって、外部電極17および18の下地層が形成される。焼き付け温度は、700〜900℃であることが好ましい。
【0085】
そして、必要に応じて、外部電極17および18の上記下地層表面にめっきが施され、図1に示した積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0086】
上述した第1の実施形態において、穴あき部47の形状を変更することにより、内部電極10および11の引出し部25および29の形状を種々に変更することができる。
【0087】
次に、図10を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。なお、図10は図3に対応する。図10において、図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0088】
第2の実施形態では、第1の実施形態の場合と同様、内部電極10および11の引出し部25および29は、対向部24および28より狭い幅を有し、かつ一定の幅をもって延びている。しかし、対向部24および28の、引出し部25および29へと連なる領域で幅が次第に狭くなる構成は採用されていない。
【0089】
次に、図11を参照して、この発明の第3の実施形態について説明する。なお、図11は図3に対応する。図11において、図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0090】
第3の実施形態では、図11に示すように、内部電極10および11は、第1の実施形態の場合と実質的に同様の形態を有している。
【0091】
第3の実施形態の特徴となるところは、第2のダミー電極69および70が、それぞれ、端面8および7に露出するように形成されることである。ダミー電極69は、第1の内部電極10と同一面上に位置され、ダミー電極70は、第2の内部電極11と同一面上に位置される。
【0092】
これら第2のダミー電極69および70についても、実質的に容量形成に寄与しない。また、ダミー電極69および70は、内部電極10および11と同じ材料により構成されることが好ましい。なお、ダミー電極69および70の構成材料、厚みなどの条件については、内部電極10および11の場合と同様である。
【0093】
この実施形態のように、第2のダミー電極69および70を形成することにより、引出し部25および29に関連して生じやすい積層部12またはグリーンチップ49における段差をより減少させることができるとともに、外部電極17および18の部品本体2に対する接合強度をより高めることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 積層セラミックコンデンサ
2 部品本体
3,4 主面
5,6 側面
7,8 端面
9 セラミック層
10,11 内部電極
12 積層部
13,14 セラミック側面層
15,16 露出端
17,18 外部電極
19〜21 面取り部
22,23,26,27 対向部の側辺
24,28 対向部
25,29 引出し部
33 マージン領域
34,35 ダミー電極
36 対向部の側辺の延長線
37 引出し部の側辺
38,39 ダミー電極の側辺
40 電極片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の主面と、互いに対向する1対の側面と、互いに対向する1対の端面とを有し、前記側面と前記端面との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部が形成され、前記主面方向に延びかつ前記主面に直交する方向に積層された複数のセラミック層と、前記セラミック層間の界面に沿って形成されかつ前記1対の端面のいずれかに露出する露出端を持つが、前記側面には露出しない複数対の内部電極とを有する、部品本体と、
前記内部電極の各前記露出端に電気的に接続されるように、前記部品本体の少なくとも前記1対の端面上に形成された、外部電極と
を備え、
前記内部電極は、
前記側面に対して平行な1対の側辺を有するとともに、前記セラミック層を介して別の前記内部電極と対向する、対向部と、
前記対向部から前記端面に引き出され、その端部に前記露出端を形成する、引出し部と
を有し、
前記側面間を結ぶ幅方向で見て、前記引出し部の前記露出端の幅は、前記対向部の幅より狭く形成されており、それによって、前記引出し部の両側であって、前記引出し部の側辺と前記側面との間に、マージン領域が形成され、
各前記マージン領域には、ダミー電極が形成され、
前記ダミー電極は、前記対向部の、前記側面に対向する側辺の延長線と前記引出し部の、前記側面に対向する側辺との間に挟まれた領域において、前記側面に対向する側辺の延長線上にかからないように配置されている、
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記ダミー電極の前記側面側の側辺とこれに対向する前記側面との間隔は、前記ダミー電極の前記引出し部側の側辺とこれに対向する前記引出し部の側辺との間隔より広い、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
各前記ダミー電極は、前記側面と平行な方向に線状に延びる複数の電極片からなる、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−94820(P2012−94820A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174928(P2011−174928)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】