説明

積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法

【課題】
保存性に優れる積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも片面に印刷された部分を有する印刷フィルムの前記印刷された部分に保護層が積層されてなる積層フィルム。
片面が表面改質層である基材フィルムの表面改質層とは異なる面に印刷インクを用いて印刷した後、該印刷した部分に保護層材料を塗工して保護層を形成する積層フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料、電子・電器部材、光学部材、建築資材、農林水産資材などに用いられるフィルムは、意匠性付与等を目的として、印刷された層を表面に有しているものが一般的である。また各種用途に応じて、防曇性、帯電防止性、導電性、滑性、粘・接着性、防汚性、反射防止性、光散乱性等を有する表面改質層を表面に有するフィルムも一般的に知られている。例えば特許文献1には、意匠性に加えて、水分の多い食品をフィルム包装したときに内面が結露する現象を防ぐべく、片面が防曇剤を含む層であり、他面が印刷された層である防曇性包装フィルムが開示されている。
【特許文献1】特開平6−171035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常フィルムは長尺で製造してロール状に巻き取って保存し、使用時に前記ロール状フィルムから必要量を繰出して所望の大きさや形状に加工して用いる。しかしながら前記のように片面が表面改質層であり、他面が印刷された層であるフィルムをロール状にして保管した場合には、表面改質層と印刷された層とが接触してしまい、表面改質層の一部または該表面改質層に含まれる表面改質のための有効成分が印刷された層の印刷された部分に移行してしまい、使用時に表面改質層が機能しないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、保存性に優れる積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法を提供するものである。
すなわち本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に印刷された部分を有する印刷フィルムの前記印刷された部分に保護層が積層されてなる積層フィルムである。また本発明は、片面が表面改質層である基材フィルムの表面改質層とは異なる面に印刷インクを用いて印刷した後、該印刷した部分に保護層材料を塗工して保護層を形成する積層フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の積層フィルムは、保存性、とくにロール状に巻いて保存した場合の保存性に優れる積層フィルムである。また本発明の積層フィルムの製造方法は、保存性に優れる積層フィルムの製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における基材フィルムを構成する材料としては特に限定されるものではなく、セラミック、ガラス、金属、木材、繊維、紙、樹脂などが挙げられるが、これらは単層であっても、同種、異種を問わず多層であってもよい。単層の場合は、表面改質層に印刷を施す。基材フィルムは樹脂からなるフィルムであることが好ましい。
【0007】
本発明の基材フィルムを構成する樹脂に限定はないが、好ましくは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂があげられる。熱硬化性樹脂は、光硬化性樹脂も含み、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂などがある。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のオレフィンの単独重合体およびその変性体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂などのオレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、さらには、エチレン/スチレン共重合体などのオレフィンとビニル基含有芳香族系重合単量体との共重合体、エチレン/ノルボルネン共重合体、エチレン/スチレン/ノルボルネン共重合体などのオレフィンと環状重合単量体との共重合体などのオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素含有樹脂;66ナイロン、6ナイロン、12ナイロン、メタキシレンジアミン/アジピン酸重縮合体などのポリアミド系樹脂;液晶系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂は単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
基材フィルムが熱可塑性樹脂から構成される場合、フィルム厚みは5〜200μmが好ましく、さらに7〜50μmが好ましい。200μmを超えると柔軟性、透明性が損なわれる。また5μmに満たないとフィルム強度が十分でない。
【0009】
本発明の基材フィルムの形成方法に限定はないが、通常のインフレーションフィルム成形、Tダイキャスト成形などが用いられる。さらにはインフレーションフィルム成形、Tダイキャスト成形されたのちに、テンター法二軸延伸成形、チューブラー法二軸延伸成形などにより、延伸やヒートセットを行なうこともできる。とりわけ、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクストレッチフィルムには好適な形成方法である。またフィルムの層構成は、単層であっても三層、五層などの多層構成のいずれでもよい。
【0010】
本発明の基材フィルムは表面改質層を有する。基材フィルムは表面改質層のみからなる単層フィルムでもよく、表面改質層とそれ以外の層を有する多層フィルムであってもよいが、多層フィルムの場合、少なくとも片面が表面改質層からなる。
本発明における表面改質層とは、各種添加剤の添加およびまたは各種表面改質法によりフィルム原料由来の表面特性が変化したものを指す。この変化があれば、特性の種類には、特に限定はない。これら改質された表面特性として、例えば、防曇性、帯電防止性、導電性、滑性、粘・接着性、防汚性、反射防止性、光散乱性などがあげられる。
【0011】
表面特性の改質方法として、各種添加剤の添加によるものと各種表面改質方法によるものとの2法がある。例えば、非イオン性界面活性剤など防曇剤をフィルム表面層を構成する樹脂に添加したのちフィルムを製膜することにより、フィルム表面に防曇性が発現する、といったものは前者に相当し、フィルムを製膜後、フィルム表面に非イオン性界面活性剤など防曇剤を塗布することにより、フィルム表面に防曇性が発現する、といったものは後者に相当する。
【0012】
本発明のフィルムにおける表面改質層が防曇剤を含有する場合の好ましい防曇剤とは、特開2004−216825号公報、特開2003−182007号公報、特表平11−510556号公報などに記載の非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド等の単独あるいは併用系があげられる。食品包装など水分の多いものを包装する場合には、防曇性の即効性が必要であり、常温で液体の非イオン性界面活性剤を少なくとも一部含むことが好ましい。防曇剤の添加量はフィルム全体に対して、0.1〜5重量%程度が好ましく、特に0.5〜3重量%が好ましい。添加量が5重量%を超えると表面へのブリードが激しくなり、手触りにべとつき感がでて好ましくない。また、0.1重量%に満たないと十分な防曇性が発現しにくい。
【0013】
具体例としては、グリセリンオレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンセスキオレート、ジグリセリンセスキラウレート、ジグリセリンセスキステアレート、ジグリセリンセスキパルミテート、ジグリセリンセスキベヘネート、ジグリセリンジオレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンジベヘネート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオレイン酸エステル、ポリエチレングリコールラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリルエーテル等があげられる。これらのうちの1種または2種以上の混合物として用いることが好ましい。
【0014】
本発明における印刷フィルムとは、前記基材フィルムの少なくとも片面に印刷された部分を有するフィルムである。印刷された部分は、一部であってもよく、全面であってもよい。印刷された部分には、必要な情報が認識可能なように印刷されていればよい。印刷された部分とは、印刷インクが保持されてなる部分である。
印刷フィルムは、両面に印刷された部分を有していてもよい。基材フィルムが単層フィルムである場合や、多層フィルムであって両面が表面改質層である場合、片面のみに印刷された部分を有していてもよく、両面に印刷された部分を有していてもよい。基材フィルムが多層フィルムであり、片面が表面改質層である場合には、印刷性の観点から表面改質層とは異なる面に印刷を行い印刷された部分を設けることが好ましい。
【0015】
印刷に用いる印刷インクは特に限定されるものではなく、着色剤のような可視領域に吸収を持つ材料、紫外線吸収剤、金属のような可視光を反射する材料などが挙げられる。印刷インクは、水性、油性、紫外線硬化タイプなど多様である。これらの印刷インクは、例えば、通常の無機または有機顔料にバインダーとしてアルコール可溶性樹脂のメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂に、皮膜形成性と脱溶媒性を改善する意味で硝化綿を加え、必要によっては接着を強固にする酢酸エチルを溶剤に追加したベヒクルでインクを構成する。または水性のスチレン・アクリル酸アンモニウム塩、スチレン・マレイン酸アンモニウム塩の0.1μm以下の粒子で構成されるマイクロエマルジョンにアルコールを加えた所謂水性インクで構成することもある。印刷厚みは特に限定されないが、0.1〜5μm、特に0.2〜2μmが好ましい。厚みが5μmを超えると、印刷フィルムが凸凹となり好ましくない。また0.1μm未満では印刷外観にかすれなどがでやすく好ましくない。
【0016】
印刷の方法としては、特に限定されないが、グラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法など多種多様のものが用いられる。なかでもグラビア印刷法、フレキソ印刷法は、特にストレッチフィルム、シュリンクフィルム、シュリンク性ストレッチフィルムなどの軟質かつ薄いフィルムに適した方法である。フレキソ印刷法は、インキの使用量が少なく、これらフィルムにはより好ましい。また、印刷面は、インキ接着を安定化するため、必要によっては前処理を行う。前処理はプライマーとして、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂を使用することもあるが、物理的なコロナ放電処理が好ましい。
【0017】
本発明の積層フィルムとは、前記印刷された部分に保護層が積層されてなるフィルムである。このような構成の本発明のフィルムは、ロール状に巻き取った場合に印刷された部分が基材フィルムの反対面と直接接触することがないため、印刷インクによる汚れが生じない。またロール状に巻き取った場合に印刷された部分と接触する面が表面改質層である場合には、表面改質層と印刷された部分とが直接接触することがないため、表面改質層の一部または該表面改質層に含まれる表面改質のための有効成分が印刷された部分に移行してしまうことがなく、使用時に表面改質層が所望の機能を発揮することができるものである。
【0018】
保護層の組成は特に限定されるものではないが、無機化合物、高水素結合性樹脂、無機化合物の中でも無機層状化合物、無機化合物および高水素結合性樹脂無機層状化合物、無機化合物の中でも無機層状化合物および高水素結合性樹脂、が含有されてなる層であることが好ましい。
【0019】
本発明の保護層に好ましく用いられる無機化合物としては、シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、水酸化アルミなどの酸化物、水酸化物、さらには無機層状化合物などが好ましい。無機層状化合物としては、例えば、特開平7−247374号公報に記載された無機層状化合物を使用することができる。無機層状化合物の具体例としては、例えば、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、粘土鉱物、ハイドロタルサイト類化合物等を挙げることができる。上記カルコゲン化物とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)およびVI族(Mo,W)のジカルコゲン化物であって、化学式MX2 (但し、式中、Mは上記IV族およびVI族の元素を表し、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を表す) で示される化合物である。無機層状化合物は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を組み合せて用いてもよい。なかでも、モンモリロナイトなどの粘土鉱物が好ましく用いられる。
【0020】
本発明の保護層に好ましく用いられる高水素結合性樹脂とは、架橋性官能基である水素結合性基またはイオン性基を有する樹脂である。該高水素結合性樹脂中の水素結合性基またはイオン性基の含有量(両者を含む場合には両者の合計量)は、通常は20モル%〜60モル%の範囲内であり、好ましくは30モル%〜50モル%の範囲内である。これら水素結合性基およびイオン性基の含有量は、核磁気共鳴(例えば、1 H−NMR、13C−NMR等)によって測定することができる。
【0021】
上記高水素結合性樹脂が有する水素結合性基とは、水素結合が可能な基であり、具体的には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基などが挙げられる。また、イオン性基とは、イオン結合が可能な基であり、具体的には、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基などが挙げられる。これら水素結合性基およびイオン性基の中でも特に好ましいのは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、アンモニウム基などである。
【0022】
上記高水素結合性樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、多糖類、エチレン/ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリル酸およびそのエステル類、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその4級アンモニウム塩、ポリビニルチオール、ポリグリセリン、ポリグリコール酸、等が挙げられる。
【0023】
上記のPVAとしては、例えば、ビニルアルコールと酢酸ビニルとの共重合体であり、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしはエステル交換(けん化)して得られるポリマー;トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、tert−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等をけん化して得られるポリマー等が挙げられる。PVAの詳細については、例えば、ポバール会編の「PVAの世界」(1992年、株式会社高分子刊行会)および「ポバール」(1981年、株式会社高分子刊行会、長野等著)に記載されている。
【0024】
PVAのけん化率は、70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることが特に好ましく、完全けん化物であることが最も好ましい。また、PVAの重合度は、100〜5,000の範囲内であることが好ましく、200〜3,000の範囲内であることがより好ましい。また、PVAは、PVAが少量の共重合モノマーで変性されてなる変性体(以下、PVAの変性体と称する)であってもよい。
【0025】
上記多糖類とは、種々の単糖類の縮重合によって合成される高分子であり、本発明では、該高分子に化学修飾を施したものも含まれる。かかる多糖類としては、セルロース、セルロース誘導体(ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサンなどが挙げられる。
【0026】
また、上記のエチレン/ビニルアルコール共重合体(EVOH)としては、ビニルアルコール分率が40モル%〜80モル%の範囲内のものが好ましく、ビニルアルコール分率が45モル%〜75モル%の範囲内ものが特に好ましい。該EVOHのメルトインデックス(MI)は、特に限定されるものではないが、温度190℃、荷重2,160gの条件下で、0.1g/10分〜50g/10分であることが好ましい。EVOHは、EVOHが少量の共重合モノマーで変性されてなる変性体(以下、EVOHの変性体と称する)であってもよい。
【0027】
これら樹脂は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を組み合せて用いてもよい。これらの樹脂の中でも、PVAおよびその変性体が特に好適である。特開平3−93542号公報に記載された分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種で変性されたポリビニルアルコール系樹脂も好ましい。
【0028】
上記高水素結合性樹脂は、勿論それ単独で用いられてもよいが、混合可能な他の樹脂化合物と併用することができる。併用可能な樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0029】
保護層を構成する材料としては、特開平7−276576号公報に記載の方法で無機層状化合物と高水素結合性樹脂とを混合したものを用いることができる。たとえば、攪拌機を備えた分散釜に、高水素結合樹脂と溶媒を仕込み、低速攪拌下で所定温度に昇温・攪拌して溶解させて溶液に、無機層状化合物を所定量添加し攪拌・分散して得られる。これは方法の一例であって、限定されるものではない。
無機層状化合物としては粘土鉱物が好ましく、高水素結合性樹脂との比は、無機層状化合物/高水素結合性樹脂=1/99〜99/1が好ましい。下限を下回ると無機層状化合物の遮断性が不十分となり、上限を上回ると靭性などが悪化する。これら高水素結合性樹脂と無機層状化合物は、溶媒に分散(高水素結合性樹脂は溶解させてもよい)させ、必要に応じて添加剤などを加えて塗料とし、各種コーティング法、印刷法などにより、保護層を形成できる。
【0030】
保護層の形成方法としては、既述の各種印刷方法が好適に用いられる。保護層は少なくとも印刷部分の上部にあればよく、フィルム面全体に形成してもかまわない。フィルム面全体に形成する場合も印刷方法に類似した各種方法、グラビアコーティング法などを用いればよい。保護層の厚みに限定はないが、0.01〜5μmが好ましく、さらに0.02〜1μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。
【0031】
本発明の積層フィルムは、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクストレッチフィルムなどであることが好ましく、特にシュリンクストレッチフィルム、さらには表面改質層の機能として少なくとも防曇性を有するもの、であることが好ましい。特に食品包装用トレーシュリンクストレッチ包装に好適に用いられる。水分の多い食品を包装するシュリンクストレッチフィルムの場合、ショーケースと外気との温度差で結露を極めて生じやすいため、防曇剤として即効性のある液状非イオン性界面活性剤(ジグリセリンオレートなど)が多用される。しかしながら、防曇剤は移行性に富んでいるため、ロール形状での保管時に印刷された部分と接触すると該印刷された部分に移行しやすい。実施例にあげた保護層は物質遮断性(例えば特開平7−276576号公報)に富んでおり、上記防曇剤の印刷された部分への移行を遮断しているのではないかと推定している。本発明は、シュリンクストレッチフィルムに限定されるものではもちろんないが、印刷による意匠の付与と防曇性を両立したシュリンクストレッチフィルムを初めて提供できるものとして有効である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例にもとづき説明する。はじめに、以下の実施例および比較例における物性値の測定方法を説明する。
【0033】
[防曇性評価方法]
幅180mm×長さ230mm×深さ35mmのPSPトレーに、約100mm×150mm角に折畳んだガーゼと20℃の水を30cc入れ、フィルムの防曇性測定面(防曇剤含有層)が内側になるようにトレーを密封包装した後、温度5℃に調整された冷蔵ショーケースに入れて、1時間後の防曇性を目視評価した。防曇性評価は下記の基準に従った。
なお、フィルムの両面共防曇剤含有層の場合は、印刷をした面の反対面が内側になるようにして、前記トレーを密封包装した。
<5段階評価>
1 : 微小な水滴が付着し、トレーの内部が全く見えない。
2 : 濡れムラ、水滴付着が目立ち、内容物が見えにくい。
3 : 濡れムラ、水滴付着がある。
4 : 濡れムラは判るが、内容物はよく見える。
5 : 濡れムラがほとんどない。
【0034】
実施例および比較例において用いた材料は以下のとおりである
[基材フィルムを構成する樹脂]
EVA : エチレン-酢酸ビニル共重合体、住友化学工業(株)製H2011、酢酸ビニル含有量:15wt%
LL1 : 直鎖状低密度ポリエチレン、住友化学工業(株)製 FV203
PP : ポリプロピレン、住友化学工業(株)製 FS2011
EVOH: エチレン-ビニルアルコール共重合体、日本合成化学(株)製 AT4406
Ny6・66:ポリアミド、宇部興産(株)製 5034B
ADPO: 接着性樹脂、三井化学(株)製 NF550
[防曇剤]
ジグリセリンモノオレート。防曇剤含有層中に2.5重量%となるように配合した。
[印刷インク]
印刷インク1: サカタインクス(株)製 XA-55(藍)RE-28 ニトロセルロース系
印刷インク2: サカタインクス(株)製 XA-55(白)110H ニトロセルロース系
印刷インク3: サカタインクス(株)製 XPS-208 (透明)OPニス ニトロセルロース系
印刷インク4: サカタインクス(株)製 ラミオール マークIII(青) ポリウレタン系
印刷インク5: 紀州技研工業(株)製 S3-PFX(青色) ニトロセルロース/ポリアミド樹脂系
[保護層材料]
保護層材料1:攪拌機を備えた分散釜に、ポリビニルアルコール(PVA117 クラレ(株)製)500gと水9000gを仕込み、低速攪拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温し、1時間攪拌して溶解させた後、室温まで温度が下がったところで、攪拌しながらイソプロピルアルコール1000gを添加、10分間攪拌混合して得られるポリビニルアルコール濃度5wt%溶液。
保護層材料2: 攪拌機を備えた分散釜に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(F101 クラレ(株)製)300gと水5000g、n-プロピルアルコール5000gを仕込み、低速攪拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温し、1時間攪拌・溶解して得られる、エチレン−ビニルアルコール濃度3wt%溶液。
保護層材料3: 攪拌機を備えた分散釜に、ポリビニルアルコール(PVA117H クラレ(株)製、ケン化度=99.6%;重合度=1700)128gとイオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1860gを仕込み、低速攪拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温し、1時間攪拌して溶解させて溶液(A)を得た。一方、1−ブタノール125gとイソプロピルアルコール375gとを混合した後、更に非イオン性界面活性剤(商品名:SH3746;東レ・ダウコーニング(株)製)0.25gを添加して混合液(B)を得た。次に、前記分散釜内の溶液(A)を攪拌したまま60℃まで温度を下げた後、該溶液(A)に予め調整した前記の混合液(B)を添加して混合液(C)を得た。次いで、攪拌乳化装置に、前記混合液(C)1969g仕込み、更に無機化合物としてのモンモリロナイト(商品名:クニピアG; クニミネ工業(株)製)を粉末のまま50g添加し、モンモリロナイトが液中にほぼ沈殿したことを確認後、600mmHg、5000rpmで10分間高速攪拌して得られる、ポリビニルアルコール/無機化合物両固形分濃度7.5wt%混合液。
【0035】
[実施例1]
インフレーション成形によって、EVA/PP/防曇剤含有EVAの構成の、厚さ25μmの三層フィルムを成形した。防曇剤を含有しないEVA層に、印刷インク1を用いてフレキソ印刷法により印刷を施し、さらに印刷された部分を覆うように保護層材料1を用いてフレキソ印刷法で印刷を行い、ドライヤーにより60℃で乾燥した後ロール状に巻き取った。該ロール状巻取り品からフィルムを繰出してスリッターにて幅500mmにスリットし、1000mをロール状に巻き取った。印刷インク層および保護層の乾燥後の厚みは各々約1μmであった。1000mに巻き取ったロール状製品を室温にて五日間保管した後、フィルムを繰出して印刷部が接触していた部位を含む箇所を使用し、前記した方法で防曇性を測定した。結果は表1に示したとおり、優れた防曇性を保持していた。
【0036】
[実施例2]
チューブラー延伸法によって、防曇剤含有LL/ADPO/PP/ADPO/防曇剤含有LLの構成の、厚さ15μmの五層熱収縮性ストレッチフィルムを成形した。防曇剤を含有するLL層の一方の面に印刷インク1を用いてフレキソ印刷法により印刷を施し、さらに印刷された部分を覆うように保護層材料2を用いてフレキソ印刷法で印刷を行い、ドライヤーにより60℃で乾燥した後ロール状に巻き取った。実施例1と同様に幅500mmにスリット加工を行い、2000mのロール状製品に巻き取った。実施例1と同様に保管後フィルムを繰出して使用し、前記した方法で防曇性を測定した。結果は表1に示したとおり、優れた防曇性を保持していた。
【0037】
[実施例3]
保護層材料として保護層材料3を用いた以外は実施例2と同様にして防曇性を評価した。
【0038】
[実施例4]
印刷インクとして印刷インク5を用いた以外は実施例2と同様にして防曇性を評価した。
【0039】
[実施例5]
印刷インクとして印刷インク5を用い、保護層材料として保護層材料3を用いた以外は実施例2と同様にして防曇性を評価した。
【0040】
[実施例6]
チューブラー延伸法によって、Ny6・66/EVOH/ADPO/防曇剤含有LLの構成の、厚さ20μmの四層熱収縮性ガスバリアストレッチフィルムを成形した。Ny6・66面にフレキソ印刷法により印刷インク2を用いて印刷を施し、次いで印刷インク1を用いて印刷を施し2色印刷した後、印刷インク1および2で印刷された部分を覆うように保護層材料1を用いてフレキソ印刷法で印刷を行い、ドライヤーにより60℃で乾燥した後ロール状に巻き取った。実施例1と同様に幅500mmにスリット加工を行い、2000mのロール状製品に巻き取った。実施例1と同様に保管後フィルムを繰出して使用し、前記した方法で防曇性を測定した。結果を表1に示した。
【0041】
[実施例7]
保護層材料として保護層材料2を用いた以外は実施例6と同様にして防曇性を評価した。
【0042】
[実施例8]
LL/ADPO/PP/ADPO/防曇剤含有LLの構成の、厚さ20μmの四層熱収縮性ストレッチフィルムを使用し、防曇剤を含有しないLL層に印刷インク4を用いてグラビア印刷法(グラビア彫刻#175)により印刷を施し、さらに印刷された部分を覆うように保護層材料3を用いてグラビア印刷法で印刷を行い、ドライヤーで60℃で乾燥した後ロール状に巻き取った。乾燥後の印刷層は約2μm、保護層は約0.5μmであった。実施例1と同様に幅500mmにスリット加工を行い、2000mのロール状製品に巻き取った。実施例1と同様に保管後フィルムを繰出して使用し、前記した方法で防曇性を測定した。結果を表1に示した。
【0043】
[実施例9]
実施例6のNy6・66/EVOH/ADPO/防曇剤含有LLの構成の熱収縮性ガスバリアストレッチフィルムを使用し、Ny6・66層に印刷インク4を用いてグラビア印刷法(グラビア彫刻#175)でにより印刷し乾燥した後、印刷された部分の覆うように保護層材料3を用いてグラビア印刷法で印刷を行い、乾燥した後ロール状に巻き取った。実施例1と同様に幅500mmにスリット加工を行い、2000mのロール状製品に巻き取った。実施例1と同様に保管後フィルムを繰出して使用し、前記した方法で防曇性を評価した。結果を表1に示した。
【0044】
[比較例1]
保護層材料1を用いない以外は実施例1と同様にして、防曇性測定を行った。結果を表1に示した。
[比較例2]
保護層材料2を用いない以外は実施例2と同様にして、防曇性測定を行った。結果を表1に示した。
[比較例3]
保護層材料2を用いない以外は実施例4と同様にして、防曇性測定を行った。結果を表1に示した。
[比較例4]
保護層材料1を用いない以外は実施例6と同様にして、防曇性測定を行った。結果を表1に示した。
[比較例5]
実施例6の保護層材料1に替えて印刷インク3を用いた以外は実施例6と同様にして、防曇性測定を行った。結果を表1に示した。
[比較例6]
保護層材料を用いない以外は実施例9と同様にして、防曇性測定を行った。結果を表1に示した。
【0045】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の積層フィルムの模式図である(断面図)。
【図2】本発明の積層フィルムの他の模式図である(断面図)。
【図3】本発明の積層フィルムの他の模式図である(断面図)。
【符号の説明】
【0047】
1 基材フィルム
2 表面改質層
3 印刷された部分
4 保護層
5 印刷フィルム
6 積層フィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に印刷された部分を有する印刷フィルムの前記印刷された部分に保護層が積層されてなる積層フィルム。
【請求項2】
表面改質層からなる基材フィルムである請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
片面が表面改質層である基材フィルムの、表面改質層とは異なる面に印刷された部分を有する印刷フィルムである請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
両面が表面改質層である基材フィルムの少なくとも一方の表面改質層上に印刷された部分を有する印刷フィルムである請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
表面改質層に防曇剤が含有されてなる請求項2〜4いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
保護層に無機化合物およびまたは高水素結合性樹脂が含有されてなる請求項1〜5いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
印刷された部分がフレキソ印刷法により印刷されてなる請求項1〜6いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
シュリンクストレッチフィルムである請求項1〜7いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
片面が表面改質層である基材フィルムの表面改質層とは異なる面に印刷インクを用いて印刷した後、該印刷した部分に保護層材料を塗工して保護層を形成する積層フィルムの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−88520(P2006−88520A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276787(P2004−276787)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】