説明

積層体への排煙カバー取付け構造

【課題】安全弁から電池の外部に放出されたガスが排煙カバーと積層体との間の隙間および/または積層体の構成部品間の隙間から漏れ出ることを、従来に比べて抑制できる、積層体への排煙カバー取付け構造の提供。
【解決手段】積層体20と、排煙カバー60と、シール部材70と、を有し、積層体20は、安全弁を備える電池と、樹脂枠とが、交互に積層されて構成されており、排煙カバー60は、安全弁を覆って積層体20の積層方向に延びて設けられており、積層体20との間に安全弁から放出されるガスが流れる排煙ガス流路Rを形成しており、シール部材70は、積層体20と排煙カバー60との間の隙間をシールしており、安全弁から電池の外部に放出されたガスからの熱および/または電池自体からの熱で溶融する熱可塑性樹脂あるいはゴムにより構成される、積層体への排煙カバー取付け構造10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の安全弁から放出されるガスを車外に排出するための排煙ガス流路を形成する排煙カバーを、電池と樹脂枠とが交互に積層された積層体に取付ける、積層体への排煙カバー取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−262733号公報は、複数の電池の積層体に、電池の積層方向に延びる排煙カバー(排気カバー)を、電池の安全弁を覆うようにして電池に直接接触させて設ける技術を開示している。
【0003】
しかし、上記公報開示の技術には、つぎの問題点がある。
排煙カバーの公差や積層体の公差等により、安全弁から電池の外部に放出されたガスが、排煙カバーによって形成される排煙ガス流路を流れずに、排煙カバーと積層体との間の隙間および/または積層体を構成する電池間に存在する微小隙間等から漏れ出るおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−262733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安全弁から電池の外部に放出されたガスが排煙カバーと積層体との間の隙間および/または積層体の構成部品間の隙間から漏れ出ることを、従来に比べて抑制できる、積層体への排煙カバー取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 積層体と、排煙カバーと、シール部材と、を有し、
前記積層体は、電池温度が上昇して電池内圧が所定値以上になったときにガスを電池外部に放出する安全弁を備える電池と、樹脂枠とが、交互に積層されて構成されており、
前記排煙カバーは、前記安全弁を覆って前記積層体の積層方向に延びて設けられており、前記積層体との間に前記安全弁から放出されるガスが流れる排煙ガス流路を形成しており、
前記シール部材は、前記積層体と前記排煙カバーとの間に配置されており、前記積層体と前記排煙カバーとの間の隙間をシールしており、
前記シール部材は、前記安全弁から前記電池の外部に放出されたガスからの熱および/または前記電池自体からの熱で溶融する熱可塑性樹脂、あるいはゴムにより構成される、積層体への排煙カバー取付け構造。
(2) 前記シール部材は、前記電池に接触して配置されている、(1)記載の積層体への排煙カバー取付け構造。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の積層体への排煙カバー取付け構造によれば、つぎの効果を得ることができる。
シール部材が、積層体と排煙カバーとの間に配置されており、積層体と排煙カバーとの間の隙間をシールしているため、シール部材が弾性変形することにより、積層体や排煙カバーの公差を吸収できる。そのため、シール部材が設けられていない場合(従来)に比べて、安全弁から電池外部に放出されたガスが積層体と排煙カバーとの間の隙間および/または積層体の構成部品間の隙間から漏れ出ることを抑制できる。
また、シール部材が、安全弁から電池の外部に放出されたガスからの熱および/または電池自体からの熱で溶融する熱可塑性樹脂、あるいはゴムにより構成されるため、電池温度が上昇して電池内圧が所定値以上になって電池の安全弁が開弁したときに、シール部材が、安全弁から電池外部に放出されるガスからの熱および/または電池自体からの熱で溶融し、積層体と排煙カバーとの間の隙間および/または積層体の構成部品間の隙間に流入する。そのため、シール部材が設けられていない場合(従来)に比べて、安全弁から電池外部に放出されたガスが積層体と排煙カバーとの間の隙間および/または積層体の構成部品間の隙間から漏れ出ることを抑制できる。
【0008】
上記(2)の積層体への排煙カバーの取付け構造によれば、シール部材が電池に接触して配置されているため、シール部材が電池に接触して配置されていない場合に比べて、シール部材が電池からの熱を受けやすくなる。そのため、シール部材が電池に接触して配置されていない場合に比べて、早期に、シール部材を電池自体からの熱で溶融させて積層体と排煙カバーとの間の隙間および/または積層体の構成部品間の隙間に流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例の、積層体への排煙カバーの取付け構造の、積層体のみの模式側面図である。
【図2】本発明実施例の、積層体への排煙カバーの取付け構造の、電池の概略斜視図である。
【図3】本発明実施例の、積層体への排煙カバーの取付け構造の、排煙カバーとシール部材の斜視図である。
【図4】本発明実施例の、積層体への排煙カバーの取付け構造の、電池と排煙カバーとシール部材との位置関係を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、積層体への排煙カバーの取付け構造(装置)を、図1〜図4を参照して説明する。
本発明実施例の、積層体への排煙カバーの取付け構造(装置)10は、たとえば電気自動車に搭載される。積層体への排煙カバーの取付け構造10は、図3に示すように、積層体20と、排煙カバー60と、シール部材70と、を有する。
【0011】
積層体20は、図1に示すように、発熱体である電池30と樹脂枠(樹脂プレート)40が交互に積層されたものである。
積層体20は、樹脂枠30と電池40に加えて、さらに、積層体20の積層方向の両端部に設けられるエンドプレート50を備えている。積層体20の積層方向の両端部のエンドプレート50どうしは、積層体20の積層方向に延びる図示略の拘束バンドを用いてつながれている。積層体20は、図示略の拘束バンドにより拘束されている。
【0012】
電池30は、図2に示すように、角形電池からなる。電池30は、上部(上面)に設けられる正極端子31および負極端子32を除いて、正面視(積層体20の積層方向から見たとき)ほぼ矩形の板状である。電池30は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池である。各電池30は電気的に直列接続されている。
【0013】
電池30の上部(上面)には、電池30の内部短絡等により電池30の温度が上昇して電池30の内圧が所定値以上になったときに、電池30内のガスを電池30の外部に放出する、安全弁33が設けられている。
安全弁33は、正極端子31と負極端子32の中央部(その近傍含む)に設けられている。安全弁33は、たとえば、電池30の内部と外部とを連通する図示略の孔(スリットを含む)を図示略の膜で覆うことにより形成されている。電池30の温度が上昇して電池30の内圧が所定値以上になったときに、図示略の膜が破れ、電池30内のガスが図示略の孔を通って電池30から放出される。安全弁33からのガスは、安全弁33が設けられる電池30の面(上面)の面直方向に(上方に)向って放出される。
【0014】
樹脂枠40は、図1に示すように、積層体20の積層方向で、隣り合う電池30の間に配置されている。樹脂枠40は、樹脂製で絶縁材(たとえばポリプロピレン製)からなる。樹脂枠40は、射出成形品であり一部品構成である。ただし、樹脂枠40は複数部品構成であってもよい。樹脂枠40は、正面視(積層体20の積層方向から見たとき)ほぼ矩形の板状である。樹脂枠40の表裏一側面は、凹凸面とされており該一側面と対向する位置にあり接触する電池30との間に冷媒流路を形成している。樹脂枠40の表裏他側面は、積層体20の積層方向距離を小にして積層体20のコンパクト化を図るために、平面とされており該他側面と対向する位置にある電池30と面接触している。ただし、樹脂枠40の表裏他側面も、樹脂枠40の表裏一側面と同様に凹凸面とされていてもよい。
【0015】
排煙カバー60は、電気的絶縁を可能にするとともにコストダウンを図るために、金属製ではなく、樹脂製で絶縁材からなる。排煙カバー60は、型成形品である。排煙カバー60は、複数部品構成であってもよいが、図3に示すように、部品点数削減のために一部品構成であることが望ましい。排煙カバー60は、積層体20の積層方向に延びて設けられており、安全弁33を上方から覆っている。排煙カバー60は、延び方向一端部(その近傍を含む)で、積層体20の積層方向の一端部のエンドプレート50に図示略のクリップ、リベット、ネジ、ビス、ボルト等を用いて固定して取付けられており、延び方向他端部(その近傍を含む)で、積層体20の積層方向の他端部のエンドプレート50に図示略のクリップ、リベット、ネジ、ビス、ボルト等を用いて固定して取付けられている。排煙カバー60の延び方向一端部には、内部流路が車外に連通するチューブ61が連結されている。
【0016】
排煙カバー60は、図4に示すように、積層体20との間に安全弁33から放出されるガスが流れる排煙ガス流路Rを形成している。排煙ガス流路Rは、排煙カバー60の延び方向である積層体20の積層方向に延びている。排煙ガス流路Rは、図3に示すように、延び方向の一端のみが開放端R1とされており、排煙ガス流路Rの延び方向の他端は閉塞端R2とされている。排煙ガス流路Rは、チューブ61内流路に連通している。
安全弁33から電池30の外部に放出されたガスは、排煙ガス流路Rに流入し、排煙ガス流路Rを流れて開放端R1からチューブ61内流路に流入し、チューブ61内流路を流れて車外に排出される。
【0017】
シール部材70は、積層体20と排煙カバー60との間に圧縮変形した状態で双方に面接触させて配置されており、積層体20と排煙カバー60との間の隙間をシールしている。シール部材70は、積層体20および排煙カバー60とは別体に形成されている。シール部材70は、複数部品構成であってもよいが、部品点数削減のために一部品構成であることが望ましい。シール部材70の、積層体20に接触する面は、樹脂枠40だけでなく、電池30にも接触している。
【0018】
シール部材70は、電気的絶縁を可能にするとともにコストダウンを図るために、金属製ではなく、非金属材料製であり絶縁材からなる。シール部材70は、弾性変形可能で加熱されると軟化(溶融)する材料で構成されており、たとえば、熱可塑性樹脂(スポンジ含む)、ゴムなどで構成されている。シール部材70が熱可塑性樹脂で構成される場合、熱可塑性樹脂は、たとえば、付加重合系のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチルなど、重縮合系のポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、重付加系の熱可塑性ポリウレタン、開環重合系のポリアセタールなどである。また、シール部材70がゴムで構成される場合、ゴムは、たとえば、エチレン−プロピレンゴム(EPM,EPDM)である。シール部材70は、安全弁33から電池30の外部に放出されるガスの温度より低い温度で軟化(溶融)する材料であり、安全弁33が開弁する際の電池30の表面温度より低い温度で軟化(溶融)する材料であり、さらに、排煙カバー60の融点よりも低い温度で軟化(溶融)する材料で、構成されている。
【0019】
シール部材70は、積層体20の積層方向を長手方向とする板状(ほぼ板状を含む)形状とされている。シール部材70には、シール部材70で安全弁33を覆ってしまい安全弁33から放出されるガスの排煙ガス流路Rへの流れを阻害することを抑制するために、シール部材70を厚み方向に貫通する貫通孔71が設けられている。貫通孔71は、1つの貫通穴71で1つの安全弁33に対応できるように安全弁33と同数設けられていてもよく、1つの貫通孔71で複数の安全弁33に対応できるように積層体20の積層方向に延びる長穴形状にすることで安全弁33より少数設けられていてもよい。なお、図示例では、貫通孔71が1つの貫通穴71で1つの安全弁33に対応できるように安全弁33と同数設けられている場合を示している。
【0020】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
(A) 本発明実施例では、シール部材70が、積層体20と排煙カバー60との間に配置されており、積層体20と排煙カバー60との間の隙間をシールしているため、つぎの作用を得ることができる。
シール部材70が弾性変形することにより、積層体20や排煙カバー60の公差(寸法誤差、組付誤差を含む)を吸収できる。そのため、シール部材70が設けられていない場合(従来)に比べて、安全弁33から電池30の外部に放出されたガスが積層体20と排煙カバー60との間の隙間および/または積層体20の構成部品間の隙間(たとえば電池30と樹脂枠40との間の隙間)から漏れ出ることを抑制できる。
【0021】
(B) シール部材70が、安全弁33から電池30の外部に放出されたガスからの熱および/または電池30自体からの熱で溶融する熱可塑性樹脂、あるいはゴムにより構成されるため、つぎの作用を得ることができる。
電池30の温度が上昇して電池30の内圧が所定値以上になって電池30の安全弁33が開弁したときに、シール部材70が、安全弁33から電池30の外部に放出されるガスからの熱および/または電池30自体からの熱で溶融し、ガス流れとともに流れて積層体20と排煙カバー60との間の隙間および/または積層体20の構成部品間の隙間に流入し該隙間を埋める。そのため、シール部材70が設けられていない場合(従来)に比べて、安全弁33から電池30の外部に放出されたガスが積層体20と排煙カバー60との間の隙間および/または積層体20の構成部品間の隙間から漏れ出ること(量)を抑制できる。
【0022】
(C) シール部材70が電池30に接触して配置されているため、つぎの作用を得ることができる。
シール部材70が電池30に接触して配置されていない場合に比べて、シール部材70が電池30からの熱を受けやすくなる。そのため、シール部材70が電池30に接触して配置されていない場合(樹脂枠40のみに接触して配置されている場合)に比べて、早期に、シール部材70を電池30自体からの熱で溶融させて積層体20と排煙カバー60との間の隙間および/または積層体20の構成部品間の隙間に流入させることができる。
【0023】
(D) 積層体20が電池30だけでなく樹脂枠40を備えているため、樹脂枠40を、安全弁33から電池30の外部に放出されるガスの温度より低い温度で軟化(溶融)する材料であって、安全弁33が開弁する際の電池30の表面温度より低い温度で軟化(溶融)する材料で構成することにより、つぎの作用を得ることができる。
樹脂枠40が、安全弁33から電池30の外部に放出されるガスからの熱および/または電池30自体からの熱で溶融し、ガス流れとともに流れて積層体20と排煙カバー60との間の隙間および/または積層体20の構成部品間の隙間に流入し該隙間を埋める。そのため、積層体20が電池30のみで構成されており樹脂枠40を備えていない場合に比べて、安全弁33から電池30の外部に放出されたガスが積層体20と排煙カバー60との間の隙間および/または積層体20の構成部品間の隙間から漏れ出ること(量)を、さらに抑制できる。
【0024】
(E) シール部材70や樹脂枠40などが軟化(溶融)するため、溶融時の潜熱により熱エネルギーを吸収して発煙の規模を低減できる。
【符号の説明】
【0025】
10 積層体への排煙カバーの取付け構造
20 積層体
30 電池
31 正極端子
32 負極端子
33 安全弁
40 樹脂枠
50 エンドプレート
52 拘束バンド
60 排煙カバー
61 チューブ
70 シール部材
71 貫通孔
R 排煙ガス流路
R1 排煙ガス流路の開放端
R2 排煙ガス流路の閉塞端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、排煙カバーと、シール部材と、を有し、
前記積層体は、電池温度が上昇して電池内圧が所定値以上になったときにガスを電池外部に放出する安全弁を備える電池と、樹脂枠とが、交互に積層されて構成されており、
前記排煙カバーは、前記安全弁を覆って前記積層体の積層方向に延びて設けられており、前記積層体との間に前記安全弁から放出されるガスが流れる排煙ガス流路を形成しており、
前記シール部材は、前記積層体と前記排煙カバーとの間に配置されており、前記積層体と前記排煙カバーとの間の隙間をシールしており、
前記シール部材は、前記安全弁から前記電池の外部に放出されたガスからの熱および/または前記電池自体からの熱で溶融する熱可塑性樹脂、あるいはゴムにより構成される、積層体への排煙カバー取付け構造。
【請求項2】
前記シール部材は、前記電池に接触して配置されている、請求項1記載の積層体への排煙カバー取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98101(P2013−98101A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241813(P2011−241813)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】