説明

積層剥離容器

【課題】 ボトルの内層と外層との間内に水が浸入し難く、仮に水が浸入したとしても水の排出が容易な積層剥離容器を提供することにある。
【解決手段】 剥離容易な外層と内層を有し、かつ底部でピンチオフし、該ピンチオフ5の内外両層間に外気導入孔を設けた積層剥離容器において、胴部載置面から底部を上方へ離間させるための脚筒20を胴部3の下部へ嵌合させ、脚筒を嵌合させた胴部部分外面に、該胴部と脚筒との間隙から流入した水を胴部下端から滴下させることで外気導入孔へ到達することを防止するための下端開口の排水溝10を縦設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離容易な外層と内層とからなる積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
外層上端から起立する口頸部に、外層と内層との間に外気を導入する外気導入孔を設けた積層剥離容器が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−320596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載の発明では、使用者の使用状況、使用環境、輸送環境により、ボトル底部のピンチオフに割れが生じ、そこから水が外層と内層との間に浸入することがあり、また口頸部にポンプを装着したものでは、ポンプとボトルとの間隙に浸入した水は表面張力によって保持されるが、その水が口頸部に設けられた外気導入孔から吸込まれて外層と内層との間に浸入することがあり、これらの場合には外層を圧搾することでピンチオフの割れから水を排出することが可能であるが、圧搾時にピンチピンチオフの割れ以外の部分(外気導入孔)から圧縮空気が漏れるため、ボトルからの水の排出が困難であった。
【0004】
本発明の目的は、ボトルの内層と外層との間に水が浸入し難く、仮に水が浸入したとしても水の排出が容易な積層剥離容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、剥離容易な外層と内層を有し、かつ底部でピンチオフし、該ピンチオフ5の内外両層間に外気導入孔を設けた積層剥離容器において、
胴部載置面から前記底部を上方へ離間させるための脚筒20を胴部に設けたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記脚筒は、筒部21を前記胴部3の下部へ嵌合させていることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、前記脚筒を嵌合させた前記胴部部分外面に、該胴部と脚筒との間隙から流入した水を胴部下端から滴下させることで前記外気導入孔へ到達することを防止するための下端開口の排水溝10を縦設したことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記排水溝10は前記ピンチオフ5に関して線対称の位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記脚筒20の筒部21内面に、前記排水溝10内に位置して水を胴部下方へ導く導水板22を設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記脚筒内に撓み変形防止用の補強部30を設けたことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記脚筒20を嵌合させた前記胴部部分外面を縮径して小外径部6に形成し、該小外径部へ前記脚筒を嵌合させることで、該脚筒外径と前記胴部大外径部の外径とをほぼ同一にして、前記脚筒と胴部との境界部を無段差に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、胴部載置面からボトル底部を上方へ離間させるための脚筒を備えているので、胴部載置面に使用水が流れてきたりしてもその水がピンチオフに形成された外気導入孔からボトルの内層と外層との間に浸入することが防止される。
【0013】
また、本発明は、外気導入孔はピンチオフにのみ形成され、他には形成されていないので、胴部を圧搾しても空気がピンチオフ以外の部分から漏れることがなく、したがって、仮に水がボトルの内層と外層との間に浸入したとしても胴部圧搾によりピンチオフの外気導入孔から容易に排出することができる。
【0014】
さらに、本発明は、脚筒を嵌合させた胴部部分外面に排水溝を設けたので、胴部と脚筒との間隙から流入した水は排水溝下端、すなわち胴部下端から滴下することとなり、したがって、その間隙に水が滞留することなく速やかに排出されるとともに、胴部下端を伝ってピンチオフに到達することが阻止されるため、ボトル表面を濡らす水の浸入をも防止することができる。
【0015】
さらに、本発明は、脚筒と胴部との境界部を無段差に形成したので、両者間の間隙から浸入する水の量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施の形態を参照しながら説明する。
図1において、1は積層剥離容器で、外殻を形成する外層2の内面には、柔軟な可撓性を有する内層(図示せず)が剥離可能に接着されている。
【0017】
積層剥離容器1の胴部3上端には肩部を介して口頸部4が形成されている。該積層剥離容器は胴部底面でピンチオフし、該ピンチオフ5の内外両層間に外気導入孔5aが設けられている。ピンチオフ5は底面の外周縁を除いた部分に形成されており、かつ底面の直径に沿うように一直線状に形成されている。
【0018】
胴部3の下端部外面は縮径されて小外径部6に形成されており、該小外径部6の上下方向中間部には環状突条7が周設されている。
【0019】
10は小外径部6の外面に形成された排水溝で、環状突条7上端から胴部3下端にかけて形成されている。このような排水溝はピンチオフ5に関し線対称の位置に二箇所設けられている。一方の箇所に設けられた排水溝10aは一対の細幅の縦溝からなり、他方の箇所に設けられた排水溝10bは広幅の一本の縦溝から構成されている。排水溝の深さは1mm程度に、また幅は1〜5mm程度に、それぞれ設定する。
【0020】
なお、排水溝10の位置は、ピンチオフ5の両端から90度だけ離間した上記の位置が好ましいが、これに限らず90度から30度の範囲内であれば任意の位置を選択することができる。
【0021】
20は脚筒で、筒部21の上部を胴部3の小外径部6外面へ嵌合させている。筒部21内面には排水溝10aa、10bと対応する二箇所に導水板22が設けられている。導水板22は排水溝10a、10b内に位置して、排水溝内の水を筒部21内へ流下させる役割を果たすとともに、排水溝内へ係合することで積層剥離容器に対する脚筒20の位置合わせの役割を果たすことが可能である。
【0022】
導水板22は、例えば、排水溝10aに対応するものは各溝内に一枚の板が位置し、また、排水溝10bに対応するものは一本の縦溝内に二枚の板が位置するように設けられている。導水板22の下端は筒部21の底板23に固着され、また下端は排水溝10a、10bの上端へ達している。なお、導水板22は省略することも可能である。
【0023】
脚筒20は、胴部3の下端部を縮径して形成した小外径部6へ嵌合されることで、小外径部6より上方の胴部部分と脚筒20との間に段差が生じないようにしている。
【0024】
30は脚筒撓み変形防止用の補強部で、所定の間隔をおいて平行状に配置された一対の垂直板31を備えている。該縦板は脚筒20の底板23へ固着されて筒部21内に横架されていて、これら垂直板31上には環状板32が載置固着されている。環状板32の上面には両端開口の一対の凹溝33が形成されている。凹溝33は環状板32の上面に滞留した水がピンチオフ5に達しないようにするためのもので、ピンチオフ5両端の下方に形成されている。凹溝33は省略することも可能である。
【0025】
環状板32は、胴部3底面が接する程度か、またはやや下方の位置に設ける。より具体的には、環状板32は、筒部21下端から8〜10mmの高さに位置させる。脚筒20内へ流入した水は表面張力によって盛り上がり、その高さは3〜5mmになるため、胴部底面に水が達しないようにするためである。環状板32は省略することも可能である。なお、環状板に代えて円板を使用することも可能である。このようにすることにより積層剥離容器載置面から跳ね上がる水が外気導入孔に達するのを防止することができる。
【0026】
40は導水突条で、垂直板31の中央部外面に複数縦設されている。導水突条40は環状板32の上面に滞留した水を流下させるためのものである。
【0027】
一対の垂直板31間の底板23部分と筒部21部分とは切除されて、それぞれ開口部41、42に形成されている。これら開口部により積層剥離容器1が置かれる床面等に流れてきた水が脚筒20内を通り抜け可能にしている。また、両垂直板31間と筒部21との間の底板32部分には排水孔50が形成されている。
【0028】
脚筒20の材質には特に限定はないが、表面張力により水の表面を凹状の弯曲面にするポリプロピレンが好ましい。
【0029】
図1および図2は本発明をポンプ付きの積層剥離容器に適用した例を示すもので、胴部3内へ垂下された図示しないシリンダ上端を口頸部外面へ螺合された装着筒60で固定するとともに、シリンダから上下動自在に起立する図示しないステム上端へノズルヘッド61を嵌合させている。
【0030】
次に、作用について説明する。
脚筒20を装着しない状態で積層剥離容器を使用する場合、積層剥離容器置かれた床面等に水が滞留すると、その水がピンチオフ5の外気導入孔から積層剥離容器の内外層間へ浸入するが、脚筒20を装着すると、積層剥離容器の底面が底上げされて床面等から上方へ離間するため、水が外気導入孔から内部へ浸入することが防止される。
【0031】
一方、積層剥離容器に上方から水がかかった場合、積層剥離容器表面を流下する水の一部は胴部3と脚筒20との間隙へ浸入し、排水溝10を通って脚筒20内へ流下する。排水溝10は上記のようにピンチオフ5の両端から所定距離だけ離れた位置にあるから、排水溝10の下端を流出した水の一部が胴部3の下端周縁を伝って移動することはあってもピンチオフ5の両端に達することはない。
【0032】
導水板22が設けられている場合には、水は導水板に沿って流下するから、水が胴部3の下端周縁を伝って移動することは殆どなく、したがって、水がピンチオフ5の両端に達することはほぼ完全に防止される。導水板22に沿って脚筒20底面から流出する。
【0033】
なお、仮に、外気導入孔5aから水が積層剥離容器の内外層間へ浸入した場合には、胴部3を圧搾すれば外層と内層との間に浸入した水は外気導入孔から容易に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明をポンプ付き積層剥離容器に適用した例を示す側面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】胴部の下部を示す側面図である。
【図4】胴部の底面図である。
【図5】脚筒の底面図である。
【図6】脚筒の平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 積層剥離容器
2 外層
3 胴部
5 ピンチオフ
6 小外径部
10 排水溝
20 脚筒
21 筒部
22 導水板
30 補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離容易な外層と内層を有し、かつ底部でピンチオフし、該ピンチオフ5の内外両層間に外気導入孔を設けた積層剥離容器において、
胴部載置面から前記底部を上方へ離間させるための脚筒20を胴部に設けたことを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記脚筒は、筒部21を前記胴部3の下部へ嵌合させていることを特徴とする請求項1記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記脚筒を嵌合させた前記胴部部分外面に、該胴部と脚筒との間隙から流入した水を胴部下端から滴下させることで前記外気導入孔へ到達することを防止するための下端開口の排水溝10を縦設したことを特徴とする請求項2記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記排水溝10は前記ピンチオフ5に関して線対称の位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載の積層剥離容器。
【請求項5】
前記脚筒20の筒部21内面に、前記排水溝10内に位置して水を胴部下方へ導く導水板22を設けたことを特徴とする請求項3記載の積層剥離容器。
【請求項6】
前記脚筒内に撓み変形防止用の補強部30を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の積層剥離容器。
【請求項7】
前記脚筒20を嵌合させた前記胴部部分外面を縮径して小外径部6に形成し、該小外径部へ前記脚筒を嵌合させることで、該脚筒外径と前記胴部大外径部の外径とをほぼ同一にして、前記脚筒と胴部との境界部を無段差に形成したことを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の積層剥離容器。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−105727(P2010−105727A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282236(P2008−282236)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】