説明

積層型反射表示パネル

【課題】白表示と黒表示の品質を向上した反射型表示パネルの実現。
【解決手段】積層した複数枚の反射表示パネル10と、積層した複数枚の反射表示パネルの背面に配置された光吸収層15と、を備え、各反射表示パネルは、対向するように配置された2枚の基板11,12と、2枚の基板の対向する表面に、観察方向から見た時に交差するように形成された2組の透明電極13,14と、2組の透明電極の交差部を画素として、画素を囲むように格子状に形成され、2枚の基板間の距離を規定するスペーサ部材30と、対向する2枚の基板間に封止され透明電極間に印加する電圧により反射状態が変化する反射材料層17と、を備え、格子状のスペーサ部材により規定される開口率が、少なくとも一部の反射表示パネルで異なる積層型反射表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型反射表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
今後、電源が無くても表示の保持が可能で、表示内容を電気的に書き換え可能な電子ペーパーが急速に普及するものと予想されている。電子ペーパーは、電源を切断してもメモリ表示可能な超低消費電力と、目に優しく、疲れない反射型の表示と紙のような可撓性があるフレキシブルで薄型の表示体の実現を目指して研究が進められている。電子ペーパーの応用としては、電子ブック、電子新聞、電子ポスター等などが考えられている。
【0003】
電子ペーパーは、表示方式の違いにより、電気泳動方式、ツイストボール方式、電気化学方式、液晶表示ディスプレイ、有機EL表示ディスプレイなどに分類される。電気泳動方式は、帯電粒子を空気中や液体中で移動させる方式である。ツイストボール方式は、二色に色分けされた帯電粒子を回転させる方式である。電気化学方式は、電界を印加した際に電気化学反応により着色、消色、変色するような材料を電極間に挟んだ構造の表示素子である。有機EL表示ディスプレイ(有機エレクトロ・ルミネッセンス表示ディスプレイ)は、有機材料からなる複数の薄膜を陰極と陽極で挟み込んだ構造の自発光型のディスプレイである。液晶ディスプレイは、液晶層をそれぞれ画素電極と対向電極で挟み込んだ構造を有する非自発光型のディスプレイである。
【0004】
電子ペーパーのカラー表示において有利な方式は液晶方式と電気化学方式である。これらは、反射モードと透過モードとにスイッチングすることが可能なため、積層型の表示素子に適用することができる。たとえば、RGB3色の表示パネルを積層すれば、画素面積を最大限活用できるため、明るく、コントラストが高く、発色の良い表示が可能となる。他の方式では、光を透過モードにすることはできないため、カラー表示を行う場合は、表示面に3色に塗り分けたカラーフィルタを配置して、各画素を分割する必要がある。このため、積層型と比較すると、明度や彩度が低くなることが避けられない。
【0005】
液晶方式の積層型反射表示パネルでは、干渉反射により特定の波長領域の光を選択的に反射するコレステリック液晶がよく用いられる。コレステリック液晶表示パネルは、各画素のコレステリック液晶を、入射光を反射するプレーナ状態と、入射光を透過するフォーカルコニック状態と、およびそれらの状態の液晶が混在した状態にすることにより画像表示を行う。カラー表示を行う場合には、プレーナ状態における反射主波長が青色(B)の青色パネルと、反射主波長が緑色(G)の緑色パネルと、反射主波長が赤色(R)の赤色パネルと、を積層する。積層順は、一般に、観察側から順に、青色パネル、緑色パネル、赤色パネルの順である。青色を表示する時には青色パネルをプレーナ状態とし、緑色を表示する時には緑色パネルをプレーナ状態とし、赤色を表示する時には赤色パネルをプレーナ状態とする。白色を表示する時には、青色、緑色および赤色の3枚のパネルをすべてプレーナ状態にする。
【0006】
さらに、上記の積層型反射表示パネルでは、1層目の青色パネルを通過した青色の光は、表示に寄与しない光であり、表示品質を低下させる。同様に、2層目の緑色パネルを通過した緑色の光は、表示に寄与しない光であり、表示品質を低下させる。そこで、1層目の青色パネルと2層目の緑色パネルの間に青カットフィルタを設け、2層目の緑色パネルと3層目の赤色パネルの間に緑カットフィルタを設け、表示に寄与しない不要な光を除去して表示品質を向上することが行われている。
【0007】
各パネルは、反射波長以外は類似の構成を有する。各パネルは、平行に複数の透明電極を形成した2枚の透明基板を、観察面から見た時に透明電極が互いに直交するように、透明電極を形成した面を対向して配置する。電極の交差部分が画素に対応する。2枚の透明基板は、全面で所定のギャップになるように貼り合わされ、基板間にコレステリック液晶材料が充填される。全面で所定のギャップになるように、2枚の基板は、ギャップに対応する直径を有する微粒子を一方の基板上に散布した後貼り合わされる。この微粒子のような基板間の距離を所定のギャップにするための材料をスペーサ部材と称する。スペーサ部材には、微粒子の他に、隣接する電極の間に設けられ、画素に対応する部分に開口を有する格子状の構造物である柱状スペーサが利用される場合もある。
【0008】
上記のように、積層型反射表示パネルでは、白表示で表示される白色は、3層の反射光の波長成分を合成した色になる。コレステリック液晶パネルは、反射波長帯が広く、反射光は、余計な波長領域の光を含むため、白色は無彩色でなく、色味を帯びた色になる。また、積層型反射表示パネルでは、黒表示で表示される黒色は、各層の散乱光の波長成分を合成した色になる。
【0009】
コレステリック液晶パネルを積層した表示素子(電子ペーパー)では、表示面の明るさ及びコントラスト比の向上とともに色純度の向上、特に白(W)表示と黒(Bk)表示における無彩色化が求められている。
【0010】
図1の(A)は、一般的な積層型コレステリック液晶パネルでの白(W)表示と黒(Bk)表示の色度をCIE色空間で示した図である。図1の(B)は、色表示における原色である青色(B)、緑色(G)、赤色(B)、シアン色(C)、黄色(Y)およびマゼンタ色(M)を、CIE色空間で示した図である。CIE色度図は、色を定量的に表したもので、原点からの距離が彩度を表し、その方向が色相を表している。
【0011】
図示のように、白(W)表示の色は、a*およびb*が共に正の空間にあり、ゼロで示す原点からかなり離れた位置にある。これは、白(W)表示の色は、緑色を帯びたかなり大きな彩度の色であることを意味する。同様に、黒(Bk)表示の色は、a*およびb*が共に負の空間にあり、ゼロで示す原点からあまり離れていない位置にある。これは、黒(Bk)表示の色は、マゼンタ色を帯びた彩度の小さい色であることを意味する。
【0012】
上記のように、一般的な積層型コレステリック液晶パネルでは、白(W)表示の色は、緑色を帯びた大きな彩度の色であり、適切な白表示が行えないという問題があった。
【0013】
この問題を解決するために、広く使用されている色フィルタを利用することが考えられる。そこで、1層目の青色パネルと2層目の緑色パネルの間に、緑色を吸収するフィルタ(G吸収フィルタ)を導入し、緑色パネルで反射される光をフィルタで吸収することで、白表示の無彩色化を行う。
【0014】
図2の(A)は、G吸収フィルタの波長透過特性の例を示す図であり、図2の(B)は、一般的な積層型コレステリック液晶パネルに図2の(A)のG吸収フィルタを導入した場合の、白(W)表示と黒(Bk)表示の色度をCIE色空間で示した図である。
【0015】
図2の(A)に示すように、2種類のG吸収フィルタPおよびQを導入する。G吸収フィルタPは、500nm〜600nmの波長範囲の光を吸収し、最大吸収波長は約550nmで、最小透過率84%(最大吸収率16%)である。G吸収フィルタPは、500nm〜600nmの波長範囲の光を吸収し、最大吸収波長は約550nmで、最小透過率68%(最大吸収率32%)である。言い換えれば、G吸収フィルタPは、500nm〜600nmの波長範囲において、G吸収フィルタPの約2倍の吸収率を有する。
【0016】
図2の(B)において、OWはG吸収フィルタを導入していない場合の白表示の色の位置を示し、OBkはG吸収フィルタを導入していない場合の黒表示の色の位置を示す。言い換えれば、OWおよびOBkは、図1の(A)のWおよびBkと同じ位置である。PWはG吸収フィルタPを導入した場合の白表示の色の位置を示し、PBkはG吸収フィルタPを導入した場合の黒表示の色の位置を示し、QWはG吸収フィルタQを導入した場合の白表示の色の位置を示し、QBkはG吸収フィルタQを導入した場合の黒表示の色の位置を示す。
【0017】
図2の(B)に示すように、G吸収フィルタを導入することにより、白表示および黒表示の色の位置は、OWおよびOBkから、図1の(B)の緑色Gの色相と平行な方向に移動し、その移動量は、G吸収フィルタの吸収率に応じた量であることが分かる。具体的には、G吸収フィルタPを導入した場合には、白表示の色PWは、黄色を帯びた色になり、彩度が低下し、黒表示の色PBkは、マゼンタ色を帯びた色のままで、彩度が増加する。G吸収フィルタQを導入した場合には、白表示の色QWは、オレンジ色を帯びた色になり、彩度がさらに低下し、黒表示の色QBkは、マゼンタ色を帯びた色のままで、彩度がさらに増加する。
【0018】
図2の(B)に示すように、G吸収フィルタを導入することで、白表示の色は無彩色化が進むが、黒表示の色の彩度が大きくなるという問題が生じる。
【0019】
また、G吸収フィルタの僅かな濃度の違いによって、色度が大きく変化するため、表示の色味の微調整を行うためのG吸収フィルタ開発が必要であり、容易に実現できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2001−305551号公報
【特許文献2】国際公開(WO)2007/004286A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
実施形態によれば、無彩色に近い白表示と黒表示の反射型表示パネルが実現される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の観点によれば、積層した複数枚の反射表示パネルと、積層した複数枚の反射表示パネルの背面に配置された光吸収層と、を有し、各反射表示パネルは、対向するように配置された2枚の基板と、2枚の基板の対向する表面に、観察方向から見た時に交差するように形成された2組の透明電極と、2組の透明電極の交差部を画素として、画素を囲むように格子状に形成され、2枚の基板間の距離を規定するスペーサ部材と、対向する2枚の基板間に封止され透明電極間に印加する電圧により反射状態が変化する反射材料層と、を有し、格子状のスペーサ部材により規定される開口率が、少なくとも一部の反射表示パネルで異なる積層型反射表示パネルが提供される。
【発明の効果】
【0023】
実施形態によれば、白表示と黒表示の品質を向上した反射型表示パネルが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、一般的な積層型コレステリック液晶パネルでの白(W)表示と黒(Bk)表示の色度のCIE色空間で位置、および色表示における原色である青色(B)、緑色(G)、赤色(B)、シアン色(C)、黄色(Y)およびマゼンタ色(M)を、CIE色空間での軌跡を示した図である。
【図2】図2は、G吸収フィルタの波長透過特性の例、および一般的な積層型コレステリック液晶パネルに吸収フィルタを導入した場合の、白(W)表示と黒(Bk)表示の色度をCIE色空間で示した図である。
【図3】図3は、実施形態の積層型表示パネルを使用した表示装置の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、実施形態の積層型表示パネルの断面構造およびスペーサの形状を示す図である。
【図5】図5は、実施形態の積層型表示パネルにおける白(W)表示と黒(Bk)表示の色度をCIE色空間で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図3は、実施形態のコレステリック液晶を用いた表示装置(デバイス)の概略構成を示す図である。実施形態の表示装置は、コレステリック液晶を用いた表示パネル10と、走査電極駆動回路41と、データ電極駆動回路42と、を有する。
【0026】
また、図4は、実施形態で使用される表示パネル10の断面構造を示す図である。
【0027】
まず、図3および図4を参照して、コレステリック液晶を用いた表示パネル10およびそれを使用した表示装置の概略構成を説明する。
【0028】
表示パネル10は、コレステリック液晶を用いた表示パネルを3枚積層し、背面側に光吸収層15を設け、観察面側に透明粘着層18で表面側機能層50を接着した構成を有する。表面側機能層50は、AG(Anti Glare)層および保護膜として機能する。
【0029】
積層した3枚のパネルは、同じ構成を有し、反射主波長が、それぞれ480nm(青色)、550nm(緑色)および650nm(赤色)であることが異なる。3枚のパネルは、観察側から順に青色パネル、緑色パネルおよび赤色パネルの順に積層される。
【0030】
図3は、表示パネル10を基板に垂直な方向から見た場合を示している。上記のように、3枚のパネルは、反射波長以外は同じ構成を有するので、図3においては、パネルの各部を、B,G,Rを付さない参照符号で共通に示しており、共通の要素についてはB,G,Rを付さずに説明する。
【0031】
表示パネル10は、複数の平行な走査電極13を形成した上側基板11と、複数の平行なデータ電極14を形成した下側基板12を対向して配置し、基板間に液晶を充填した構造を有する。
【0032】
複数の走査電極13と複数のデータ電極14は、透明電極で、基板に垂直な方向から見た場合に、直交するように配置され、走査電極13とデータ電極14が交差する領域が画素領域になる。したがって、複数の画素電極はマトリクス状に配置される。上側基板11と下側基板12の間に、画素領域を囲むようにシール材16が設けられ、シール材16で囲まれた内部空間にコレステリック液晶材料が充填され、液晶層17が形成される。参照番号20は、シール材16で囲まれた内部空間にコレステリック液晶材料を充填するための注入口であり、コレステリック液晶材料の注入後に封止される。
【0033】
走査電極駆動回路41は、例えばTCP(テープキャリアパッケージ)構造の汎用のSTN用ドライバICなどを搭載し、複数の走査電極13を駆動する。走査電極駆動回路41の出力端子は、フレキシブル回路に形成された配線43により、複数の走査電極13に接続される。データ電極駆動回路42は、TCP構造の汎用のSTN用ドライバICなどを搭載し、複数のデータ電極14を駆動する。データ電極駆動回路42の出力端子は、フレキシブル回路に形成された配線44により、複数の走データ電極14に接続される。なお、走査電極駆動回路41およびデータ電極駆動回路42に電源および制御信号を供給する回路が設けられるが、図示は省略している。3枚のパネルに応じて、3個の走査電極駆動回路41を設けることも可能であるが、1個の走査電極駆動回路41を設け、3枚のパネルの走査電極13を共通に駆動することも可能である。
【0034】
また、上側基板11にデータ電極14を形成し、下側基板12に走査電極13を形成する変形例も可能である。
【0035】
液晶材料は、ネマティック液晶混合物にカイラル材を10〜40重量%添加したコレステリック液晶である。カイラル材0添加率は、ネマティック液晶成分とカイラル材との合計量を100重量%とした時の値である。ネマティック液晶成分とカイラル材との配合比により、反射する光の色や、その他の各種特性が決定される。
【0036】
ネマティック液晶成分としては、公知のものを用いることができるが、液晶層22の駆動電圧を比較的低くするには、誘電率異方性Δεが20≦Δε≦50であることが望ましい。また、コレステリック液晶の屈折率異方性Δnが0.18≦Δn≦0.24であることが望ましい。屈折率異方性Δnがこの範囲より小さいと、プレーナ状態での液晶層17の反射率が低くなる。一方、屈折率異方性Δnがこの範囲より大きいと、フォーカルコニック状態での液晶層17の散乱反射が大きくなり、さらに粘度も高くなるため応答速度が低下する。
【0037】
上側基板11および下側基板12は、透明基材で形成される。このような基板としては、ガラスまたは樹脂基材を挙げることができる。例えば、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリサルフォン(PSF)、ゼオノア、ゼオネックス(以上日本ゼオン製)、アートン(JSR製)といった製品銘柄に代表されるシクロオレフィン系樹脂類を使用することができる。
【0038】
走査電極13およびデータ電極14は、公知の材料で形成でき、例えばインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide;ITO)が代表的であるが、その他インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide;IZO)、酸化錫等の酸化物系の透明導電膜、細長い繊維状にした銀などの金属を網目構造に配した電極、アルミニウムあるいはシリコン等の金属電極、またはアモルファスシリコン等の光導電性膜等を用いることができる。
【0039】
また、コレステリック液晶を反射層に用いた表示パネルの場合は、透明電極の上に機能膜として、それぞれ絶縁膜や液晶分子の配列を制御するための配向膜(いずれも不図示)がコーティングされていることが好ましい。絶縁膜は、対向する電極間の短絡を防止したり、ガスバリア層として表示パネルの信頼性を向上させたりする機能を有している。また、配向膜には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびアクリル樹脂等の有機膜や、酸化シリコン、酸化アルミニウム等の無機材料を用いることができる。
【0040】
実施形態の表示パネル10では、液晶層17は、走査電極13とデータ電極14間に電圧を印加することにより、画素ごとに、入射光を反射するプレーナ状態と、入射光を透過するフォーカルコニック状態に、設定することができる。
【0041】
したがって、図4の(A)に示すように、青色パネルは、複数の平行な走査電極13Bを形成した上側基板11Bと、複数の平行なデータ電極14Bを形成した下側基板12Bを対向して配置し、基板間に液晶を充填して液晶層17Bを形成した構造を有する。上側基板11Bと下側基板12Bの間に、画素領域を囲むようにシール材16Bが設けられ、シール材16Bで囲まれた内部空間にコレステリック液晶材料が充填され、青色用液晶層17Bが形成される。後述するように、青色用液晶層17Bは、柱状スペーサ30Bで区切られる。
【0042】
同様に、緑色パネルは、複数の平行な走査電極13Gを形成した上側基板11Gと、複数の平行なデータ電極14Gを形成した下側基板12Gを対向して配置し、基板間に液晶を充填して液晶層17Gを形成した構造を有する。上側基板11Gと下側基板12Gの間に、画素領域を囲むようにシール材16Gが設けられ、シール材16Gで囲まれた内部空間にコレステリック液晶材料が充填され、緑色用液晶層17Gが形成される。
【0043】
さらに、赤色パネルは、複数の平行な走査電極13Rを形成した上側基板11Rと、複数の平行なデータ電極14Rを形成した下側基板12Rを対向して配置し、基板間に液晶を充填して液晶層17Rを形成した構造を有する。上側基板11Rと下側基板12Rの間に、画素領域を囲むようにシール材16Rが設けられ、シール材16Rで囲まれた内部空間にコレステリック液晶材料が充填され、赤色用液晶層17Rが形成される。
【0044】
青色パネル、緑色パネルおよび赤色パネルは、反射状態にすることにより、それぞれ青色、緑色、赤色の反射スペクトルを呈し、それぞれの反射主波長は、480nm(青色)、550nm(緑色)および650nm(赤色)である。
【0045】
1層目の青色パネルと2層目の緑色パネルは、接着機能を有する青カットフィルタ21で接着される。2層目の緑色パネルと3層目の赤色パネルは、接着機能を有する緑カットカットフィルタ22で接着される。
【0046】
前述のように、液晶層17の厚さ(セルギャップ)を均一に保持するため、樹脂製または無機酸化物製の球状スペーサを表示面の全面に散布することが行われるが、実施形態のパネルでは、図4の(B)に示すような柱状スペーサ(スペーサ部材)30を層内に形成する。各パネルの柱状スペーサ30B、30Gおよび30Rは、図4の(B)に示す柱状スペーサ30と類似の形状を有するが、少なくとも1枚のパネルの開口率が異なる。
【0047】
柱状スペーサ30は、セルギャップに対応する高さを有し、画素領域を囲む壁として形成される。言い換えれば、柱状スペーサ30は、走査電極13の間とデータ電極14の間に伸びる壁である。柱状スペーサ30は、例えば、リソグラフィで形成される。
【0048】
柱状スペーサ30は、壁の一部に切り欠き31を有し、この切り欠き31を介して隣接する画素とつながっている。液晶材料の充填は、2枚の基板間の空間を真空にした上で、注入口20を容器に保持された液晶材料に浸漬して、液晶材料を基板間の空間に充填する汲み上げ方式で行われる。切り欠き31は、画素領域を液晶材料が通過するために設けられる。なお、液晶材料を滴下式で充填する場合には、切り欠き31を設ける必要はない。
【0049】
液晶層17のセルギャップdは2μm≦d≦8μmの範囲であることが好ましい。セルギャップdがこの範囲より小さいとプレーナ状態での液晶層17の反射率が低くなり、この範囲より大きいと駆動電圧を高くする必要がある。
【0050】
一般に、1画素当たりの面積に対する、柱状スペーサ30により囲まれる面積の比率を、開口率と称する。これまでの積層型コレステリック液晶パネルでは、3枚のパネルの柱状スペーサ30は、同じ形状を有し、同じ開口率を有していた。
【0051】
これに対して、実施形態のパネル10では、緑色パネルの開口率を、青色パネルおよび赤色パネルの開口率より小さくする。具体的には、青色パネルおよび赤色パネルの開口率を87%とし、緑色パネルの開口率を80%とする。これにより、緑色パネルの液晶材料をプレーナ状態とした場合の緑色の反射光が少なくなり、白表示時の緑色の光が減少する。柱状スペーサ30に入射した光はそのまま透過して光吸収層15に吸収されるので、緑色パネルの液晶材料をフォーカルコニック状態とした場合と同等であり、白表示時の緑色の光は変化しない。
【0052】
図5は、実施形態の積層型表示パネルにおける白(W)表示と黒(Bk)表示の色度をCIE色空間で示した図である。図2の(B)と比較して明らかなように、白(W)表示の色度は、G吸収フィルタPを導入した時の色度PWと同程度であるが、黒(Bk)表示の色度は、G吸収フィルタを導入しない場合の色度OBkと同程度である。言い換えれば、白(W)表示の色は、黄色を帯びた低彩度の色であり、黒(Bk)表示の色は、マゼンタ色を帯びた低彩度の色である。したがって、実施形態の積層型表示パネルは、白(W)表示と黒(Bk)表示の色度が共に低彩度であり、高い表示品質のカラー表示が行える。
【0053】
白(W)表示の色が緑色の大きな彩度の場合の例を説明したが、白(W)表示の色が他の色を呈する場合にも、実施形態の構成は同様に適用可能である。例えば、白(W)表示の色が青色または赤色を呈する場合には、青色パネルまたは赤色パネルの開口率を他のパネルの開口率より小さくする。さらに、白(W)表示の色が黄色を呈する場合には、緑色パネルおよび赤色パネルの開口率を青色パネルの開口率より小さくする。この場合、緑色パネルの開口率を赤色パネルの開口率より小さくするなど、緑色パネルと赤色パネルで開口率を異ならせてもよい。白(W)表示の色がシアン色を呈する場合には、緑色パネルおよび青色パネルの開口率を赤色パネルの開口率より小さくする。また、白(W)表示の色がマゼンタ色を呈する場合には、赤色パネルおよび青色パネルの開口率を緑パネルの開口率より小さくする。
【0054】
以上、コレステリック液晶を利用する表示パネルを例として説明したが、光を透過する状態と反射する状態の間で切り換えて表示を行う反射材料層であれば、ほかの材料を使用することが可能である。具体的には、コレステリック液晶以外の反射型液晶材料、エレクトロクロミック材料、エレクトロデポジション材料などが使用できる。このような材料の中でも、液晶材料は光を透過した時に散乱が大きいので、複数舞の表示パネルを張り合わせた積層型表示パネルにおいて、大きな効果が得られる。
【0055】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0056】
11 上側基板
12 下側基板
13 走査電極
14 データ電極
15 光吸収層
16 シール材
17 液晶層
30 柱状スペーサ(スペーサ部材)
41 走査電極駆動回路
42 データ電極駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層した複数枚の反射表示パネルと、
前記積層した複数枚の反射表示パネルの背面に配置された光吸収層と、を備え、
各反射表示パネルは、
対向するように配置された2枚の基板と、
前記2枚の基板の対向する表面に、観察方向から見た時に交差するように形成された2組の透明電極と、
前記2組の透明電極の交差部を画素として、前記画素を囲むように格子状に形成され、前記2枚の基板間の距離を規定するスペーサ部材と、
対向する前記2枚の基板間に封止され前記透明電極間に印加する電圧により反射状態が変化する反射材料層と、を備え、
前記格子状のスペーサ部材により規定される開口率が、少なくとも一部の前記反射表示パネルで異なることを特徴とする積層型反射表示パネル。
【請求項2】
積層した3枚の前記反射表示パネルを備え、
前記3枚の反射表示パネルの前記反射材料層の反射主波長は、観察面側から順に青色、緑色、赤色であり、
反射主波長が緑色の前記パネルの前記開口率は、反射主波長が青色および赤色の前記パネルの前記開口率より小さい請求項1記載の積層型反射表示パネル。
【請求項3】
反射主波長が青色と緑色の前記パネルの間に配置された青色カットフィルタ層と、
反射主波長が緑色と赤色の前記パネルの間に配置された緑色カットフィルタ層と、を備える請求項1または2記載の積層型反射表示パネル。
【請求項4】
前記格子状のスペーサ部材は、隣接する画素を連絡する切り欠き部を有する請求項1から3のいずれか1項記載の積層型反射表示パネル。
【請求項5】
前記反射材料層は、コレステリック液晶を含む請求項1から4のいずれか1項記載の積層型反射表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220832(P2012−220832A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88308(P2011−88308)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】