積層型固体電解コンデンサ
【課題】外部に輻射される電磁波、および外部から飛来する電磁波による影響を低減できる積層型固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】一方側に陽極部P1〜P4、他方側に陰極部N1〜N4を備えた複数のコンデンサ素子C1〜C4を、陰極部の位置を整合させ、陽極部の突出方向が交互に反対になるように積み重ねた積層体と、複数の陰極部からなる陰極体の一側面に接続された陰極リードフレームと、陰極体の一方側に突出した陽極部に接続された一方側陽極リードフレーム8と、陰極体の他方側に突出した陽極部に接続された他方側陽極リードフレーム8’を備える。陰極リードフレームに接続され、陰極体の側面の少なくとも一部を覆う導電性シールド部材12をさらに備え、陰極リードフレーム、一方側および他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させて、各リードフレームの残余部分、積層体およびシールド部材を絶縁性封止材13で封止する。
【解決手段】一方側に陽極部P1〜P4、他方側に陰極部N1〜N4を備えた複数のコンデンサ素子C1〜C4を、陰極部の位置を整合させ、陽極部の突出方向が交互に反対になるように積み重ねた積層体と、複数の陰極部からなる陰極体の一側面に接続された陰極リードフレームと、陰極体の一方側に突出した陽極部に接続された一方側陽極リードフレーム8と、陰極体の他方側に突出した陽極部に接続された他方側陽極リードフレーム8’を備える。陰極リードフレームに接続され、陰極体の側面の少なくとも一部を覆う導電性シールド部材12をさらに備え、陰極リードフレーム、一方側および他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させて、各リードフレームの残余部分、積層体およびシールド部材を絶縁性封止材13で封止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型固体電解コンデンサに関するものであり、特に陰極端子の両側に陽極端子を有する多端子構造の積層型固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解コンデンサには、通常の2端子構造の他に、陽極端子と陰極端子の引き出し方向が互いに直交するように配置される多端子構造のものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また一般に、固体電解コンデンサは、アルミニウム、タンタルなどの弁作用金属を陽極とし、その上に形成した酸化皮膜層を誘電体とし、さらに、その上に固体電解質層を形成して陰極を構成したものが多く使われている。この固体電解質としては二酸化マンガンの他、TCNQ錯体、導電性高分子などが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
近年、電子機器の小型・高周波化が進み、コンデンサに対しても高周波領域での低インピーダンス化が要求されるようになり、高導電率の導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサが商品化されている。この固体電解コンデンサは、固体電解質に高導電率の導電性高分子を用いているため、二酸化マンガンを用いた固体電解コンデンサに比べて低ESR化を実現する事ができることからさまざまな改良がなされている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
また、コンピュータのCPUの低電圧化と高速化に伴い、コンデンサに流れる電流が飛躍的に大きくなっているため、コンデンサのESRが高いと、その発熱量が大きく、コンデンサの故障の原因となる。従って各コンデンサは低ESRである事が必須の条件となりつつある。
【0006】
この低ESR化を実現するための一つの方法として、コンデンサ素子を積層構造とし、その積層枚数を増やす手法がある。
積層型固体電解コンデンサの積層構造としては、陽極部と、固体電解質層からなる陰極部を備えた単板コンデンサ素子を、その陽極部は陽極部同士、陰極部は陰極部同士が互いに重なり合うように複数枚積層し、各電極にそれぞれ電位取り出し用リードフレーム(端子板)を接続した構成のものが知られている(例えば、特許文献6参照)。
また、本願出願人は、単板コンデンサ素子を陽極部が陰極部を中心に対向するように交互に積層し、陽極部及び陰極部を複数に分岐して引き出すことで磁界を打ち消し、さらにESLを下げる構造を提案した(例えば、特許文献7参照)。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−155607号公報
【特許文献2】実開昭63−188937号公報
【特許文献3】特開平06−120088号公報
【特許文献4】特許第2969692号公報
【特許文献5】特開2003−45753号公報
【特許文献6】特開2000−68158号公報
【特許文献7】特開2007−180327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、電子機器の高周波領域での使用に伴い、高周波回路で使用される多端子構造の積層型固体電解コンデンサに、数MHz〜数GHzの高周波電流が流れる。このため、積層型固体電解コンデンサ本体から発生し、外部に向けて輻射される電磁波、および外部から積層型固体電解コンデンサに飛来する電磁波による機器に対するノイズの影響が問題となっている。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜7に記載の技術では、上記積層型固体電解コンデンサから外部に向けて輻射される電磁波、および外部から積層型固体電解コンデンサに飛来する電磁波による影響に関しては十分に考慮されておらず、これら電磁波ノイズの影響により機器が誤動作を引き起こすおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外部に向けて輻射される電磁波、および外部から飛来する電磁波による影響を低減することができる積層型固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、一方側に陽極部、他方側に陰極部を備えた平板状のコンデンサ素子を複数枚、前記陰極部の位置を整合させ、前記陽極部の突出方向が交互に反対になるように積み重ねた積層体と、前記複数個の陰極部からなる陰極体の一側面に電気的に接続された陰極リードフレームと、前記陰極体の一方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された一方側陽極リードフレームと、前記陰極体の他方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された他方側陽極リードフレームと、を備えた積層型固体電解コンデンサであって、前記陰極リードフレームに電気的に接続されるとともに、前記陰極体の側面の少なくとも一部を覆う導電性のシールド部材をさらに備え、前記陰極リードフレーム、前記一方側陽極リードフレームおよび前記他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させながら、各リードフレームの残余部分、前記積層体および前記導電性のシールド部材を絶縁性封止材で封止したことを特徴としている。
【0012】
また、前記シールド部材は、前記陰極体のうち、前記陰極リードフレームが接続された一側面および前記陽極部の突出面を除く側面のすべてを覆う、断面がコ字状のシールド板を有することを特徴とする積層型固体電解コンデンサである。
【0013】
このように構成された発明では、積層型固体電解コンデンサは、複数個の陰極部からなる陰極体の一側面に電気的に接続された陰極リードフレームと、陰極体の一方側に突出した陽極部に電気的に接続され、陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された一方側陽極リードフレームと、陰極体の他方側に突出した陽極部に電気的に接続され、陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された他方側陽極リードフレームとを備える。そして、陰極リードフレームに電気的に接続された導電性のシールド部材により、陰極体の側面の少なくとも一部が覆われている。
このため、外部から陰極体に飛来する電磁波のみならず、陰極体から外部に向けて輻射される電磁波についても遮蔽することができ、これら電磁波による影響を低減することができる。
しかも、陰極リードフレーム、一方側陽極リードフレームおよび他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させながら、各リードフレームの残余部分、積層体および導電性のシールド部材を絶縁性封止材で封止している。つまり、シールド部材は絶縁性封止材内に埋め込まれている。このため、絶縁性封止材の外側をシールド部材で覆う場合に比較してコンデンサ全体の体積を小さくしながら、電磁波による影響を低減することが可能となっている。
【0014】
ここで、陰極体のうち、陰極リードフレームが接続された一側面および陽極部の突出面を除く側面のすべてを覆う、断面がコ字状のシールド板を有するように構成すると、陰極体に向けて外部から飛来する電磁波および陰極体から外部に向けて輻射される電磁波を確実に遮蔽することができ、機器へのノイズの影響を効果的に抑制することができる。
さらに、断面がコ字状のシールド板で積層体(陰極体)を覆うことで、コンデンサ本体の機械的強度を高めることができる。
【0015】
さらに、コ字状のシールド板が、陽極部の少なくとも一部を覆う庇部を有するように構成すると、陰極体のみならず、陽極部に対して陽極リードフレームおよび他方側陽極リードフレームと反対側から外部に向けて輻射される電磁波および飛来する電磁波を庇部が遮蔽する。これにより、積層体に対する電磁波耐性を高め、積層体からの電磁波の放射を抑制することができる。
【0016】
また、コ字状のシールド板が、陽極部の突出方向と直交する方向において陽極部を挟むように陽極部を覆うように構成すると、積層体に対する電磁波耐性、積層体からの電磁波の放射抑制性能をさらに高めることができる。また、コンデンサ本体のさらなる機械的強度の向上を図ることができる。
【0017】
なお、コ字状のシールド板は銅板であることが好ましい。これにより、上記した電磁波に対するシールド性、機械的強度を確保しながらも、積層体からの放熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層型固体電解コンデンサにおいて、外部に向けて輻射される電磁波、および外部から飛来する電磁波による影響を低減することができる。しかも、コンデンサ全体の体積を小さくしながら、電磁波に対するシールド性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の1実施例による積層型固体電解コンデンサを構成する1つのコンデンサ素子の構成を説明するための上面図であり、図2は、図1のA−A’線に沿った拡大断面図である。
図2を参照して、コンデンサ素子Cは、アルミニウム、タンタル等を粗面化した薄板からなる弁作用金属板1を備える。弁作用金属板1の全面に、誘電体となる酸化皮膜層2が形成される。弁作用金属板1の一方側は陽極部Pを構成し、弁作用金属板1の他方側には酸化皮膜層2上に固体電解質層3が、その上にカーボン層4が、さらにその上に銀層5が順次形成されて、陰極部Nを構成する。固体電解質層3は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)などの導電性高分子を含む電解質を化学重合もしくは電解重合によって形成した層である。
【0021】
この実施例では、機能的にみると、弁作用金属板1全体が陽極であるが、上記固体電解質層3、カーボン層4、銀層5からなる部分を総称して陰極部Nと称する一方、弁作用金属板1の陰極部Nが構成されていない部分、即ち、図2の左側に突出している部分(陽極露出部)を便宜上陽極部Pと称する。
【0022】
弁作用金属板1における陽極部Pおよび陰極部Nの間の適切な位置には、弁作用金属板1の酸化皮膜層2の表面上に、絶縁性のマスキング部材6が設けられて、陽極部Pと陰極部Nとは完全に絶縁隔離される。
【0023】
次に、コンデンサ素子の作製方法を、弁作用金属板として、アルミニウムを用いた場合の作製例について以下に説明する。
表面を電気化学的に粗面化した厚さ0.1mmの長尺のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム水溶液中において10Vの電圧を印加しながら、約60分間陽極酸化し、表面に誘電体となる酸化皮膜層を形成する。酸化皮膜層が形成されたアルミニウム箔を、図1に示すように、すなわち、アルミニウム箔を幅(w)10mm、長さ(l)15mmの平面サイズに裁断する。
次に、図2に示すように、適切な位置に絶縁性樹脂等のマスキング部材6を周方向に塗布することにより、左右の領域(陽極部Pと陰極部N)を区分する。
その後、前述の裁断によって露出した弁作用金属板1の側面部を、再度アジピン酸アンモニウム水溶液中において7Vの電圧を印加しながら、約30分間酸化処理し、裁断された側面部にも誘電体となる酸化皮膜層を形成する。その後、マスキング部材6より右側部分に、固体電解質層3、カーボン層4、銀層5を設けて陰極部Nを構成し、コンデンサ素子Cを作製する。
【0024】
次に、この平板状のコンデンサ素子を積層した積層型固体電解コンデンサの作製方法を説明する。
【0025】
図3および図4は、それぞれ、上述の方法で作製した4枚の平板状のコンデンサ素子C1、C2、C3、C4を積み重ねた積層体の上面図および側面図である。
図3および図4に示すように、陰極部N1、N2、N3、N4の位置が整合し、陽極部P1、P2、P3、P4の突出方向が、陰極部N1〜N4の積層体を中心に交互に反対となるように、コンデンサ素子C1〜C4を順次積み重ねる。さらに、陰極部N1〜N4を、導電性接着剤7を介して密に、電気的に接合する。なお、積み重ねた陰極部N1〜N4により形成された陰極部全体を陰極体と称する。
ここで、陰極部N1〜N4の内部構造(固体電解質層3、カーボン層4、銀層5)は、図2に示した構造と同一である。
【0026】
図5は、コンデンサ素子C1〜C4の積層体の陽極部P1〜P4および陰極部N1〜N4を、それぞれ、該積層体下側に配置された端子部材となる陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9に接続した状態を示す側面図である。
図5に示すように、陰極体の一方側(左側)に突出した陽極部P1およびP3と、他方側(右側)に突出した陽極部P2およびP4とを、それぞれ、陰極リードフレーム9と離間しながら同一平面に配置された2つの陽極リードフレーム8、8’、つまり一方側陽極リードフレーム8と他方側陽極リードフレーム8’に電気的に接続する。より具体的には、これら陽極リードフレーム8および8’は陰極リードフレーム9の左右に設けられ、陽極部P1およびP3を一方側陽極リードフレーム8に、陽極部P2およびP4を他方側陽極リードフレーム8’に抵抗溶接等によって電気的に接続する。さらに、最も下部に位置する陰極部N1と、その下面に配置された陰極リードフレーム9とを、導電性接着剤7を介して、密に電気的に接続する。
そして、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9のそれぞれの少なくとも一部を露出させて、各リードフレーム8、8’、9の残余部分、積層体および後述する銅板12(導電性のシールド部材)を、絶縁性封止材(絶縁性樹脂)で封止(パッケージング)して、多端子構造の積層型固体電解コンデンサを作製する。なお、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9として、銅系合金を使用するのが好ましいが、金、銀、銅、ニオブ、タンタル、アルミニウムおよび導電性高分子のうちのいずれか、またはそれを複数組み合わせたものを使用してもよい。
【0027】
図6、図7、図8、および図9は、陽極リードフレーム8および8’の間を、このリードフレームと同じ材質の橋渡し部材10で橋渡しして接続した一例で、積層した平板状のコンデンサ素子C1〜C4の左右両側の陽極部P1およびP3と、陽極部P2およびP4とを、それぞれ、陽極リードフレーム8および8’に抵抗溶接等により電気的に接続し、最も下部に位置する陰極部N1を、陰極リードフレーム9および9’に導電性接着剤7により電気的に接続し、コンデンサ素子C1〜C4の積層体をリードフレームにマウントした状態を示した図である(絶縁性封止材の図示は省略する)。
【0028】
なお、陽極部P1〜P4同士を最短の距離で接続するために、図6に示すように、2分割した陰極リードフレーム9および9’の間の空隙部gに、橋渡し部材10を配置したH形リードフレームを使用した。
図8は、図7のB−B’線に沿った断面図である。図8に示すように、陽極リードフレーム8、8’の断面は両側付近が厚く、橋渡し部材10の部分が薄くなっている。
また、図9は図7のC−C’線に沿った断面図である。
なお、陽極リードフレームの橋渡し部材10がコンデンサ素子の陰極部N1の表面に接してショートしないように、予め絶縁性樹脂などのマスキング部材11を、陰極部N1の下面側に該橋渡し部材10の幅より広く塗布するか、橋渡し部材10に巻き付けるように塗布しておく。
【0029】
次に本発明の実施例について説明する。
【0030】
(実施例1)
図10は、陰極リードフレーム9、9’に導電性接着剤7を介して電気的に接続した厚さ0.3mmの断面がコ字状の銅板12(シールド部材)を、コンデンサ素子C1〜C4の積層体の陰極体の全体を覆うように形成した状態を示す断面図であり、図11は、図10のC−C’線に沿った断面図である。銅板12は、陰極体のうち、陰極リードフレーム9、9’が接続された一側面および陽極部P1〜P4の突出面を除く側面のすべてを覆うように形成されている。この積層型固体電解コンデンサの製品寸法は、16.7mm×12.1mm×2.5mmである。図10および図11に示すように、銅板12は、積層体の陰極体に接触しないように、積層体の陰極体から0.2mmだけ離して、陰極リードフレーム9、9’の端部に導電性接着剤7を介して接続される。
図12および13は、それぞれ、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9、9’のそれぞれの少なくとも一部を露出させながら、積層体、陽極リードフレーム8、8’の残余部分、陰極リードフレーム9、9’の残余部分、および銅板12を、絶縁性封止材13でパッケージングして作製した積層型固体電解コンデンサの断面図および斜視図である。
【0031】
(実施例2)
図14は、陰極リードフレーム9、9’に導電性接着剤7を介して電気的に接続した厚さ0.3mmの断面がコ字状であり、かつ陽極部上方を覆う庇部を有する銅板14(シールド部材)を、コンデンサ素子C1〜C4の積層体の陰極体および陽極部P1〜P4の一部を覆うように形成した状態を示す断面図であり、図15は、図14の線C−C’線に沿った断面図である。銅板14に設けられた庇部は、一方側陽極リードフレーム8に対し、陽極部P1、P3を挟んで反対側に配置されるとともに、他方側陽極リードフレーム8’に対し、陽極部P2、P4を挟んで反対側に配置され、陽極部P1〜P4を上方から覆う。 この積層型固体電解コンデンサの製品寸法を、16.7mm×12.1mm×2.5mmとした。銅板14は、積層体の陰極部N1〜N4に接触しないように、積層体の陰極体から0.2mmだけ離して、陰極リードフレーム9、9’の端部に導電性接着剤7を介して接続される。
図16および17は、それぞれ、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9、9’のそれぞれの少なくとも一部を露出させて、積層体、陽極リードフレーム8、8’ の残余部分、陰極リードフレーム9、9の残余部分’、および銅板14を、絶縁性封止材13でパッケージングして作製した積層型固体電解コンデンサの断面図および斜視図である。
【0032】
(従来例)
陰極部N1〜N4、陽極部P1〜P4を銅板12、14で覆わないこと以外は、実施例1、2と同様の方法で、積層型固体電解コンデンサを作製した。製品寸法を、実施例1および実施例2と同じように、16.7mm×12.1mm×2.5mmとした。
【0033】
上記本発明の実施例1および実施例2の積層型固体電解コンデンサと、従来例の積層型固体電解コンデンサとの電磁波に対するシールド効果を比較した。表1には、それぞれの例について、100MHzの交流電流を、基板に実装した部品単体に流した時に発生する電磁波の透過ノイズレベルを比較した結果を示すものである。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から判るように、実施例1および実施例2の積層型固体電解コンデンサは、従来例に比べて、透過ノイズレベルが小さい(シールド効果が高い)。パッケージング内において、積層体の少なくとも一部を、陰極リードフレームに接続された導電性のシールド部材で覆うようにしたので、製品寸法を拡大する事なく、従来例より大きいシールド効果を有する積層型固体電解コンデンサを実現できた。
また、表1から判るように、この発明の効果は、シールド部材で覆う面積を広くするほど大きくなる。
【0036】
このようにシールド効果が大きくなったのは、陰極体の周囲を覆う銅板により、積層型固体電解コンデンサ本体から発生する電磁ノイズが、吸収されて積層型固体電解コンデンサの陰極フレームから回路基板のグランドに逃がされるからである。
実施例1および実施例2では、積層体の陰極体を全て銅板で覆った場合を説明したが、覆う範囲を少なくしても、シールド効果は若干小さくなるが、従来例に比べて十分なシールド効果が得られる。
また、実施例1および実施例2では、銅板の厚さを0.3mmとしたが、製品寸法に入る範囲であれば、銅板を厚くしても薄くしても、従来例に比べて十分なシールド効果が得られる。
さらに、実施例1および実施例2では、銅板が積層体に接触しないように0.2mmの隙間を取ったが、製品寸法内で、銅板が積層体に接触しないように、その隙間を広く、もしくは狭くしても、従来例に比べて十分なシールド効果が得られる。
【0037】
実施例2において、銅板(シールド部材)が陽極部上方を覆う庇部を有しているが、銅板(シールド部材)がさらに、陽極部の突出方向と直交する方向において陽極部を挟むように陽極部を覆う塀部を有するように構成してもよい。この場合、実施例2に比べてより高いシールド効果が得られる。
【0038】
また、本発明による積層型固体電解コンデンサは、陰極部の周囲を覆う銅板により、高い機械的強度を有し、また、十分な放熱効果を有している。
【0039】
なお、上述の実施例では、弁作用金属としてアルミニウムの場合について説明したが、タンタルやニオブ箔またその焼結体を用いても、同様の効果が得られる。
【0040】
さらに、上述の実施例では、積層体を覆うシールド部材として銅を一例として説明したが、金、銀、ニオブ、タンタル、アルミニウム、導電性高分子等の導電性のある材料を用いても、同様の効果が得られる。
【0041】
そして、シールド部材の形状として板材を用いたが、パンチングメタルや網目状としても、同様の効果が得られる。
【0042】
またさらに、上述の実施例では、固体電解質として導電性高分子の場合について説明したが、二酸化マンガンでも同様の効果が得られる。
【0043】
最後に、実施例では、4枚積層としたが積層枚数を増加しても同様の効果が得られる。また、3端子としたが、端子数を増やしても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】1つのコンデンサ素子の構成を説明するための上面図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った拡大断面図である。
【図3】4枚のコンデンサ素子を積み重ねた積層体の上面図である。
【図4】4枚のコンデンサ素子を積み重ねた積層体の側面図である。
【図5】陽極部および陰極部を、リードフレームに接続した状態を示す側面図である。
【図6】リードフレームの構成を示す上面図である。
【図7】陽極部および陰極部を、リードフレームに接続した状態を示す上面図である。
【図8】図7のB−B’線に沿った断面図である。
【図9】図7のC−C’線に沿った断面図である。
【図10】本発明の実施例1における銅板を示す断面図である。
【図11】図10の線C−C’線に沿った断面図である。
【図12】本発明の実施例1の積層型固体電解コンデンサの断面図である。
【図13】本発明の実施例1の積層型固体電解コンデンサの斜視図である。
【図14】本発明の実施例2における銅板を示す断面図である。
【図15】図14のC−C’線に沿った断面図である
【図16】本発明の実施例2の積層型固体電解コンデンサの断面図である。
【図17】本発明の実施例2の積層型固体電解コンデンサの斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 弁作用金属板
2 酸化皮膜層
3 固体電解質層
4 カーボン層
5 銀層
6 マスキング部材
7 導電性接着剤
8、8’ 陽極リードフレーム
9、9’ 陰極リードフレーム
10 橋渡し部材
11 マスキング部材
12 銅板(シールド部材)
13 絶縁性封止材
14 銅板(シールド部材)
C コンデンサ素子
C1〜C4 コンデンサ素子
g 空隙部
N 陰極部
N1〜N4 陰極部
P 陽極部
P1〜P4 陽極部(陽極露出部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型固体電解コンデンサに関するものであり、特に陰極端子の両側に陽極端子を有する多端子構造の積層型固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解コンデンサには、通常の2端子構造の他に、陽極端子と陰極端子の引き出し方向が互いに直交するように配置される多端子構造のものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また一般に、固体電解コンデンサは、アルミニウム、タンタルなどの弁作用金属を陽極とし、その上に形成した酸化皮膜層を誘電体とし、さらに、その上に固体電解質層を形成して陰極を構成したものが多く使われている。この固体電解質としては二酸化マンガンの他、TCNQ錯体、導電性高分子などが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
近年、電子機器の小型・高周波化が進み、コンデンサに対しても高周波領域での低インピーダンス化が要求されるようになり、高導電率の導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサが商品化されている。この固体電解コンデンサは、固体電解質に高導電率の導電性高分子を用いているため、二酸化マンガンを用いた固体電解コンデンサに比べて低ESR化を実現する事ができることからさまざまな改良がなされている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
また、コンピュータのCPUの低電圧化と高速化に伴い、コンデンサに流れる電流が飛躍的に大きくなっているため、コンデンサのESRが高いと、その発熱量が大きく、コンデンサの故障の原因となる。従って各コンデンサは低ESRである事が必須の条件となりつつある。
【0006】
この低ESR化を実現するための一つの方法として、コンデンサ素子を積層構造とし、その積層枚数を増やす手法がある。
積層型固体電解コンデンサの積層構造としては、陽極部と、固体電解質層からなる陰極部を備えた単板コンデンサ素子を、その陽極部は陽極部同士、陰極部は陰極部同士が互いに重なり合うように複数枚積層し、各電極にそれぞれ電位取り出し用リードフレーム(端子板)を接続した構成のものが知られている(例えば、特許文献6参照)。
また、本願出願人は、単板コンデンサ素子を陽極部が陰極部を中心に対向するように交互に積層し、陽極部及び陰極部を複数に分岐して引き出すことで磁界を打ち消し、さらにESLを下げる構造を提案した(例えば、特許文献7参照)。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−155607号公報
【特許文献2】実開昭63−188937号公報
【特許文献3】特開平06−120088号公報
【特許文献4】特許第2969692号公報
【特許文献5】特開2003−45753号公報
【特許文献6】特開2000−68158号公報
【特許文献7】特開2007−180327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、電子機器の高周波領域での使用に伴い、高周波回路で使用される多端子構造の積層型固体電解コンデンサに、数MHz〜数GHzの高周波電流が流れる。このため、積層型固体電解コンデンサ本体から発生し、外部に向けて輻射される電磁波、および外部から積層型固体電解コンデンサに飛来する電磁波による機器に対するノイズの影響が問題となっている。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜7に記載の技術では、上記積層型固体電解コンデンサから外部に向けて輻射される電磁波、および外部から積層型固体電解コンデンサに飛来する電磁波による影響に関しては十分に考慮されておらず、これら電磁波ノイズの影響により機器が誤動作を引き起こすおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外部に向けて輻射される電磁波、および外部から飛来する電磁波による影響を低減することができる積層型固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、一方側に陽極部、他方側に陰極部を備えた平板状のコンデンサ素子を複数枚、前記陰極部の位置を整合させ、前記陽極部の突出方向が交互に反対になるように積み重ねた積層体と、前記複数個の陰極部からなる陰極体の一側面に電気的に接続された陰極リードフレームと、前記陰極体の一方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された一方側陽極リードフレームと、前記陰極体の他方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された他方側陽極リードフレームと、を備えた積層型固体電解コンデンサであって、前記陰極リードフレームに電気的に接続されるとともに、前記陰極体の側面の少なくとも一部を覆う導電性のシールド部材をさらに備え、前記陰極リードフレーム、前記一方側陽極リードフレームおよび前記他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させながら、各リードフレームの残余部分、前記積層体および前記導電性のシールド部材を絶縁性封止材で封止したことを特徴としている。
【0012】
また、前記シールド部材は、前記陰極体のうち、前記陰極リードフレームが接続された一側面および前記陽極部の突出面を除く側面のすべてを覆う、断面がコ字状のシールド板を有することを特徴とする積層型固体電解コンデンサである。
【0013】
このように構成された発明では、積層型固体電解コンデンサは、複数個の陰極部からなる陰極体の一側面に電気的に接続された陰極リードフレームと、陰極体の一方側に突出した陽極部に電気的に接続され、陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された一方側陽極リードフレームと、陰極体の他方側に突出した陽極部に電気的に接続され、陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された他方側陽極リードフレームとを備える。そして、陰極リードフレームに電気的に接続された導電性のシールド部材により、陰極体の側面の少なくとも一部が覆われている。
このため、外部から陰極体に飛来する電磁波のみならず、陰極体から外部に向けて輻射される電磁波についても遮蔽することができ、これら電磁波による影響を低減することができる。
しかも、陰極リードフレーム、一方側陽極リードフレームおよび他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させながら、各リードフレームの残余部分、積層体および導電性のシールド部材を絶縁性封止材で封止している。つまり、シールド部材は絶縁性封止材内に埋め込まれている。このため、絶縁性封止材の外側をシールド部材で覆う場合に比較してコンデンサ全体の体積を小さくしながら、電磁波による影響を低減することが可能となっている。
【0014】
ここで、陰極体のうち、陰極リードフレームが接続された一側面および陽極部の突出面を除く側面のすべてを覆う、断面がコ字状のシールド板を有するように構成すると、陰極体に向けて外部から飛来する電磁波および陰極体から外部に向けて輻射される電磁波を確実に遮蔽することができ、機器へのノイズの影響を効果的に抑制することができる。
さらに、断面がコ字状のシールド板で積層体(陰極体)を覆うことで、コンデンサ本体の機械的強度を高めることができる。
【0015】
さらに、コ字状のシールド板が、陽極部の少なくとも一部を覆う庇部を有するように構成すると、陰極体のみならず、陽極部に対して陽極リードフレームおよび他方側陽極リードフレームと反対側から外部に向けて輻射される電磁波および飛来する電磁波を庇部が遮蔽する。これにより、積層体に対する電磁波耐性を高め、積層体からの電磁波の放射を抑制することができる。
【0016】
また、コ字状のシールド板が、陽極部の突出方向と直交する方向において陽極部を挟むように陽極部を覆うように構成すると、積層体に対する電磁波耐性、積層体からの電磁波の放射抑制性能をさらに高めることができる。また、コンデンサ本体のさらなる機械的強度の向上を図ることができる。
【0017】
なお、コ字状のシールド板は銅板であることが好ましい。これにより、上記した電磁波に対するシールド性、機械的強度を確保しながらも、積層体からの放熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層型固体電解コンデンサにおいて、外部に向けて輻射される電磁波、および外部から飛来する電磁波による影響を低減することができる。しかも、コンデンサ全体の体積を小さくしながら、電磁波に対するシールド性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の1実施例による積層型固体電解コンデンサを構成する1つのコンデンサ素子の構成を説明するための上面図であり、図2は、図1のA−A’線に沿った拡大断面図である。
図2を参照して、コンデンサ素子Cは、アルミニウム、タンタル等を粗面化した薄板からなる弁作用金属板1を備える。弁作用金属板1の全面に、誘電体となる酸化皮膜層2が形成される。弁作用金属板1の一方側は陽極部Pを構成し、弁作用金属板1の他方側には酸化皮膜層2上に固体電解質層3が、その上にカーボン層4が、さらにその上に銀層5が順次形成されて、陰極部Nを構成する。固体電解質層3は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)などの導電性高分子を含む電解質を化学重合もしくは電解重合によって形成した層である。
【0021】
この実施例では、機能的にみると、弁作用金属板1全体が陽極であるが、上記固体電解質層3、カーボン層4、銀層5からなる部分を総称して陰極部Nと称する一方、弁作用金属板1の陰極部Nが構成されていない部分、即ち、図2の左側に突出している部分(陽極露出部)を便宜上陽極部Pと称する。
【0022】
弁作用金属板1における陽極部Pおよび陰極部Nの間の適切な位置には、弁作用金属板1の酸化皮膜層2の表面上に、絶縁性のマスキング部材6が設けられて、陽極部Pと陰極部Nとは完全に絶縁隔離される。
【0023】
次に、コンデンサ素子の作製方法を、弁作用金属板として、アルミニウムを用いた場合の作製例について以下に説明する。
表面を電気化学的に粗面化した厚さ0.1mmの長尺のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム水溶液中において10Vの電圧を印加しながら、約60分間陽極酸化し、表面に誘電体となる酸化皮膜層を形成する。酸化皮膜層が形成されたアルミニウム箔を、図1に示すように、すなわち、アルミニウム箔を幅(w)10mm、長さ(l)15mmの平面サイズに裁断する。
次に、図2に示すように、適切な位置に絶縁性樹脂等のマスキング部材6を周方向に塗布することにより、左右の領域(陽極部Pと陰極部N)を区分する。
その後、前述の裁断によって露出した弁作用金属板1の側面部を、再度アジピン酸アンモニウム水溶液中において7Vの電圧を印加しながら、約30分間酸化処理し、裁断された側面部にも誘電体となる酸化皮膜層を形成する。その後、マスキング部材6より右側部分に、固体電解質層3、カーボン層4、銀層5を設けて陰極部Nを構成し、コンデンサ素子Cを作製する。
【0024】
次に、この平板状のコンデンサ素子を積層した積層型固体電解コンデンサの作製方法を説明する。
【0025】
図3および図4は、それぞれ、上述の方法で作製した4枚の平板状のコンデンサ素子C1、C2、C3、C4を積み重ねた積層体の上面図および側面図である。
図3および図4に示すように、陰極部N1、N2、N3、N4の位置が整合し、陽極部P1、P2、P3、P4の突出方向が、陰極部N1〜N4の積層体を中心に交互に反対となるように、コンデンサ素子C1〜C4を順次積み重ねる。さらに、陰極部N1〜N4を、導電性接着剤7を介して密に、電気的に接合する。なお、積み重ねた陰極部N1〜N4により形成された陰極部全体を陰極体と称する。
ここで、陰極部N1〜N4の内部構造(固体電解質層3、カーボン層4、銀層5)は、図2に示した構造と同一である。
【0026】
図5は、コンデンサ素子C1〜C4の積層体の陽極部P1〜P4および陰極部N1〜N4を、それぞれ、該積層体下側に配置された端子部材となる陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9に接続した状態を示す側面図である。
図5に示すように、陰極体の一方側(左側)に突出した陽極部P1およびP3と、他方側(右側)に突出した陽極部P2およびP4とを、それぞれ、陰極リードフレーム9と離間しながら同一平面に配置された2つの陽極リードフレーム8、8’、つまり一方側陽極リードフレーム8と他方側陽極リードフレーム8’に電気的に接続する。より具体的には、これら陽極リードフレーム8および8’は陰極リードフレーム9の左右に設けられ、陽極部P1およびP3を一方側陽極リードフレーム8に、陽極部P2およびP4を他方側陽極リードフレーム8’に抵抗溶接等によって電気的に接続する。さらに、最も下部に位置する陰極部N1と、その下面に配置された陰極リードフレーム9とを、導電性接着剤7を介して、密に電気的に接続する。
そして、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9のそれぞれの少なくとも一部を露出させて、各リードフレーム8、8’、9の残余部分、積層体および後述する銅板12(導電性のシールド部材)を、絶縁性封止材(絶縁性樹脂)で封止(パッケージング)して、多端子構造の積層型固体電解コンデンサを作製する。なお、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9として、銅系合金を使用するのが好ましいが、金、銀、銅、ニオブ、タンタル、アルミニウムおよび導電性高分子のうちのいずれか、またはそれを複数組み合わせたものを使用してもよい。
【0027】
図6、図7、図8、および図9は、陽極リードフレーム8および8’の間を、このリードフレームと同じ材質の橋渡し部材10で橋渡しして接続した一例で、積層した平板状のコンデンサ素子C1〜C4の左右両側の陽極部P1およびP3と、陽極部P2およびP4とを、それぞれ、陽極リードフレーム8および8’に抵抗溶接等により電気的に接続し、最も下部に位置する陰極部N1を、陰極リードフレーム9および9’に導電性接着剤7により電気的に接続し、コンデンサ素子C1〜C4の積層体をリードフレームにマウントした状態を示した図である(絶縁性封止材の図示は省略する)。
【0028】
なお、陽極部P1〜P4同士を最短の距離で接続するために、図6に示すように、2分割した陰極リードフレーム9および9’の間の空隙部gに、橋渡し部材10を配置したH形リードフレームを使用した。
図8は、図7のB−B’線に沿った断面図である。図8に示すように、陽極リードフレーム8、8’の断面は両側付近が厚く、橋渡し部材10の部分が薄くなっている。
また、図9は図7のC−C’線に沿った断面図である。
なお、陽極リードフレームの橋渡し部材10がコンデンサ素子の陰極部N1の表面に接してショートしないように、予め絶縁性樹脂などのマスキング部材11を、陰極部N1の下面側に該橋渡し部材10の幅より広く塗布するか、橋渡し部材10に巻き付けるように塗布しておく。
【0029】
次に本発明の実施例について説明する。
【0030】
(実施例1)
図10は、陰極リードフレーム9、9’に導電性接着剤7を介して電気的に接続した厚さ0.3mmの断面がコ字状の銅板12(シールド部材)を、コンデンサ素子C1〜C4の積層体の陰極体の全体を覆うように形成した状態を示す断面図であり、図11は、図10のC−C’線に沿った断面図である。銅板12は、陰極体のうち、陰極リードフレーム9、9’が接続された一側面および陽極部P1〜P4の突出面を除く側面のすべてを覆うように形成されている。この積層型固体電解コンデンサの製品寸法は、16.7mm×12.1mm×2.5mmである。図10および図11に示すように、銅板12は、積層体の陰極体に接触しないように、積層体の陰極体から0.2mmだけ離して、陰極リードフレーム9、9’の端部に導電性接着剤7を介して接続される。
図12および13は、それぞれ、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9、9’のそれぞれの少なくとも一部を露出させながら、積層体、陽極リードフレーム8、8’の残余部分、陰極リードフレーム9、9’の残余部分、および銅板12を、絶縁性封止材13でパッケージングして作製した積層型固体電解コンデンサの断面図および斜視図である。
【0031】
(実施例2)
図14は、陰極リードフレーム9、9’に導電性接着剤7を介して電気的に接続した厚さ0.3mmの断面がコ字状であり、かつ陽極部上方を覆う庇部を有する銅板14(シールド部材)を、コンデンサ素子C1〜C4の積層体の陰極体および陽極部P1〜P4の一部を覆うように形成した状態を示す断面図であり、図15は、図14の線C−C’線に沿った断面図である。銅板14に設けられた庇部は、一方側陽極リードフレーム8に対し、陽極部P1、P3を挟んで反対側に配置されるとともに、他方側陽極リードフレーム8’に対し、陽極部P2、P4を挟んで反対側に配置され、陽極部P1〜P4を上方から覆う。 この積層型固体電解コンデンサの製品寸法を、16.7mm×12.1mm×2.5mmとした。銅板14は、積層体の陰極部N1〜N4に接触しないように、積層体の陰極体から0.2mmだけ離して、陰極リードフレーム9、9’の端部に導電性接着剤7を介して接続される。
図16および17は、それぞれ、陽極リードフレーム8、8’および陰極リードフレーム9、9’のそれぞれの少なくとも一部を露出させて、積層体、陽極リードフレーム8、8’ の残余部分、陰極リードフレーム9、9の残余部分’、および銅板14を、絶縁性封止材13でパッケージングして作製した積層型固体電解コンデンサの断面図および斜視図である。
【0032】
(従来例)
陰極部N1〜N4、陽極部P1〜P4を銅板12、14で覆わないこと以外は、実施例1、2と同様の方法で、積層型固体電解コンデンサを作製した。製品寸法を、実施例1および実施例2と同じように、16.7mm×12.1mm×2.5mmとした。
【0033】
上記本発明の実施例1および実施例2の積層型固体電解コンデンサと、従来例の積層型固体電解コンデンサとの電磁波に対するシールド効果を比較した。表1には、それぞれの例について、100MHzの交流電流を、基板に実装した部品単体に流した時に発生する電磁波の透過ノイズレベルを比較した結果を示すものである。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から判るように、実施例1および実施例2の積層型固体電解コンデンサは、従来例に比べて、透過ノイズレベルが小さい(シールド効果が高い)。パッケージング内において、積層体の少なくとも一部を、陰極リードフレームに接続された導電性のシールド部材で覆うようにしたので、製品寸法を拡大する事なく、従来例より大きいシールド効果を有する積層型固体電解コンデンサを実現できた。
また、表1から判るように、この発明の効果は、シールド部材で覆う面積を広くするほど大きくなる。
【0036】
このようにシールド効果が大きくなったのは、陰極体の周囲を覆う銅板により、積層型固体電解コンデンサ本体から発生する電磁ノイズが、吸収されて積層型固体電解コンデンサの陰極フレームから回路基板のグランドに逃がされるからである。
実施例1および実施例2では、積層体の陰極体を全て銅板で覆った場合を説明したが、覆う範囲を少なくしても、シールド効果は若干小さくなるが、従来例に比べて十分なシールド効果が得られる。
また、実施例1および実施例2では、銅板の厚さを0.3mmとしたが、製品寸法に入る範囲であれば、銅板を厚くしても薄くしても、従来例に比べて十分なシールド効果が得られる。
さらに、実施例1および実施例2では、銅板が積層体に接触しないように0.2mmの隙間を取ったが、製品寸法内で、銅板が積層体に接触しないように、その隙間を広く、もしくは狭くしても、従来例に比べて十分なシールド効果が得られる。
【0037】
実施例2において、銅板(シールド部材)が陽極部上方を覆う庇部を有しているが、銅板(シールド部材)がさらに、陽極部の突出方向と直交する方向において陽極部を挟むように陽極部を覆う塀部を有するように構成してもよい。この場合、実施例2に比べてより高いシールド効果が得られる。
【0038】
また、本発明による積層型固体電解コンデンサは、陰極部の周囲を覆う銅板により、高い機械的強度を有し、また、十分な放熱効果を有している。
【0039】
なお、上述の実施例では、弁作用金属としてアルミニウムの場合について説明したが、タンタルやニオブ箔またその焼結体を用いても、同様の効果が得られる。
【0040】
さらに、上述の実施例では、積層体を覆うシールド部材として銅を一例として説明したが、金、銀、ニオブ、タンタル、アルミニウム、導電性高分子等の導電性のある材料を用いても、同様の効果が得られる。
【0041】
そして、シールド部材の形状として板材を用いたが、パンチングメタルや網目状としても、同様の効果が得られる。
【0042】
またさらに、上述の実施例では、固体電解質として導電性高分子の場合について説明したが、二酸化マンガンでも同様の効果が得られる。
【0043】
最後に、実施例では、4枚積層としたが積層枚数を増加しても同様の効果が得られる。また、3端子としたが、端子数を増やしても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】1つのコンデンサ素子の構成を説明するための上面図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った拡大断面図である。
【図3】4枚のコンデンサ素子を積み重ねた積層体の上面図である。
【図4】4枚のコンデンサ素子を積み重ねた積層体の側面図である。
【図5】陽極部および陰極部を、リードフレームに接続した状態を示す側面図である。
【図6】リードフレームの構成を示す上面図である。
【図7】陽極部および陰極部を、リードフレームに接続した状態を示す上面図である。
【図8】図7のB−B’線に沿った断面図である。
【図9】図7のC−C’線に沿った断面図である。
【図10】本発明の実施例1における銅板を示す断面図である。
【図11】図10の線C−C’線に沿った断面図である。
【図12】本発明の実施例1の積層型固体電解コンデンサの断面図である。
【図13】本発明の実施例1の積層型固体電解コンデンサの斜視図である。
【図14】本発明の実施例2における銅板を示す断面図である。
【図15】図14のC−C’線に沿った断面図である
【図16】本発明の実施例2の積層型固体電解コンデンサの断面図である。
【図17】本発明の実施例2の積層型固体電解コンデンサの斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 弁作用金属板
2 酸化皮膜層
3 固体電解質層
4 カーボン層
5 銀層
6 マスキング部材
7 導電性接着剤
8、8’ 陽極リードフレーム
9、9’ 陰極リードフレーム
10 橋渡し部材
11 マスキング部材
12 銅板(シールド部材)
13 絶縁性封止材
14 銅板(シールド部材)
C コンデンサ素子
C1〜C4 コンデンサ素子
g 空隙部
N 陰極部
N1〜N4 陰極部
P 陽極部
P1〜P4 陽極部(陽極露出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に陽極部、他方側に陰極部を備えた平板状のコンデンサ素子を複数枚、前記陰極部の位置を整合させ、前記陽極部の突出方向が交互に反対になるように積み重ねた積層体と、
前記複数個の陰極部からなる陰極体の一側面に電気的に接続された陰極リードフレームと、
前記陰極体の一方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された一方側陽極リードフレームと、
前記陰極体の他方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された他方側陽極リードフレームと
を備えた積層型固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極リードフレームに電気的に接続されるとともに、前記陰極体の側面の少なくとも一部を覆う導電性のシールド部材をさらに備え、
前記陰極リードフレーム、前記一方側陽極リードフレームおよび前記他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させながら、各リードフレームの残余部分、前記積層体および前記導電性のシールド部材を絶縁性封止材で封止したことを特徴とする積層型固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記シールド部材は、前記陰極体のうち、前記陰極リードフレームが接続された一側面および前記陽極部の突出面を除く側面のすべてを覆う、断面がコ字状のシールド板を有することを特徴とする請求項1記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記コ字状のシールド板は、前記一方側陽極リードフレームおよび前記他方側陽極リードフレームに対し、陽極部を挟んで反対側に配置され、前記陽極部の少なくとも一部を覆う庇部を有することを特徴とする請求項2記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記コ字状のシールド板は、前記陽極部の突出方向と直交する方向において前記陽極部を挟むように前記陽極部を覆うことを特徴とする請求項3記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記コ字状のシールド板は、銅板からなることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項1】
一方側に陽極部、他方側に陰極部を備えた平板状のコンデンサ素子を複数枚、前記陰極部の位置を整合させ、前記陽極部の突出方向が交互に反対になるように積み重ねた積層体と、
前記複数個の陰極部からなる陰極体の一側面に電気的に接続された陰極リードフレームと、
前記陰極体の一方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された一方側陽極リードフレームと、
前記陰極体の他方側に突出した前記陽極部に電気的に接続され、前記陰極リードフレームと離間しながら同一平面に配置された他方側陽極リードフレームと
を備えた積層型固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極リードフレームに電気的に接続されるとともに、前記陰極体の側面の少なくとも一部を覆う導電性のシールド部材をさらに備え、
前記陰極リードフレーム、前記一方側陽極リードフレームおよび前記他方側陽極リードフレームの各々の少なくとも一部を露出させながら、各リードフレームの残余部分、前記積層体および前記導電性のシールド部材を絶縁性封止材で封止したことを特徴とする積層型固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記シールド部材は、前記陰極体のうち、前記陰極リードフレームが接続された一側面および前記陽極部の突出面を除く側面のすべてを覆う、断面がコ字状のシールド板を有することを特徴とする請求項1記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記コ字状のシールド板は、前記一方側陽極リードフレームおよび前記他方側陽極リードフレームに対し、陽極部を挟んで反対側に配置され、前記陽極部の少なくとも一部を覆う庇部を有することを特徴とする請求項2記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記コ字状のシールド板は、前記陽極部の突出方向と直交する方向において前記陽極部を挟むように前記陽極部を覆うことを特徴とする請求項3記載の積層型固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記コ字状のシールド板は、銅板からなることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の積層型固体電解コンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−27900(P2010−27900A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188401(P2008−188401)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
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