説明

積層型有機発光素子、それを有する撮像装置及び画像表示装置

【課題】 各有機発光素子を独立して駆動する積層型有機発光素子において、アクティブ
素子と駆動電極との接続の際に、駆動電極と中間電極とのショートの問題を抑止する。
【解決手段】 異なる発光色を発する第1有機化合物層(310)と第2有機化合物層(330)が基板(101)に積層された積層型有機発光素子において、第1有機化合物層が第1電極(300)と第2電極(320)で挟まれた第1発光素子と、第2有機化合物層(330)が第2電極と第3電極(340)とで挟まれた第2発光素子とを有している。そして、第1発光素子及び第2発光素子が発光する領域とは異なる領域に、第3電極と電気的に接続するTFT回路(200)が基板上に形成されており、TFT回路まで延在する第3電極と第2電極とを電気的に接続させないために、第2電極の端部を覆うように第2有機化合物層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型有機発光素子、それを有する撮像装置及び画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子において、複数色の発光を実現するものが知られている。
【0003】
特開2007−012359号公報では、1画素に各々が異なる色に発光する有機化合物層を基板垂直方向に、複数積層しれ、レーザ加工により、それぞれの有機EL素子の駆動電極をアクティブ素子に電気的に接続している。
【0004】
なお、アクティブ素子とはTFT回路のことを示す。また、駆動電極とは、アクティブ素子と電気的に接続した電極を示す。
【0005】
具体的な構成としては、第1電極(青用陽極)上に第1有機化合物層(青用発光層)、第2電極(青用陰極)、第1絶縁層が、この順に積層されている。
【0006】
更に第1絶縁層の上に、第3電極(緑用陽極)、第2有機化合物層(緑用発光層)、第4電極(緑用陰極)、第2絶縁層が、この順に積層されている。更に第2絶縁層の上に、第5電極(赤用陽極)、第3有機化合物層(赤用発光層)、第6電極(赤用陰極)が順次積層されている。
【0007】
ここで、アクティブ素子に接続されているのは、第1電極(青用陽極)、第3電極(緑用陽極)、及び第5電極(赤用陽極)である。ここでは、各有機化合物層を独立して発光させるために、積層された各発光素子間にはアクティブ素子と第1電極、第3電極、及び第5電極とのコンタクトを実現させる必要がある。そのため、第1電極、第3電極、及び第5電極の夫々が他の電極と電気的に接続しないようにしている。例えば、アクティブ素子と第3電極とを電気的に接続させるために、第1絶縁層が第1有機化合物層及び第2電極の端部まで覆うように形成している。そのため、第1電極はバンク(BNK)で囲まれているので他の電極との電気的な接続はされない。
【0008】
次に、アクティブ素子と第5電極が電気的に接続させるために、第2絶縁層が、第2電極、第1絶縁層、第3電極、第2有機化合物層、第4電極の端部まで覆うように形成されている。
【0009】
上記構成により、複数の有機EL素子を積層した構造の有機EL表示装置の長寿命化、高精細化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−012359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献では、第1電極、第3電極、及び第5電極の夫々には、アクティブ素子とを電気的に接続させると共に、他の電極とを電気的に接続させないようにするために、別途に第1絶縁層及び第2絶縁層を形成する必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記のように別途に絶縁層を設けることなく、簡易な構成でアクティブ素子に所望の駆動電極を電気的に接続させることのできる積層型有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
互いに異なる発光色を発する第1有機化合物層と第2有機化合物層とが、この順で基板に積層された積層型有機発光素子において、
前記第1有機化合物層が第1電極と第2電極で挟まれた第1発光素子と、
前記第2有機化合物層が前記第2電極と第3電極とで挟まれた第2発光素子と、を有しており、前記第1発光素子および前記第2発光素子が発光する領域とは異なる領域に、前記第3電極と電気的に接続する第1のTFT回路の電極が前記基板上に形成されており、
前記第1のTFT回路の電極まで延在する前記第3電極と前記第2電極とが電気的に接続しないように、前記第2電極の端部を覆うように前記第2有機化合物層が形成されていることを特徴とする積層型有機発光素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、各有機発光素子を独立して駆動する積層型有機発光素子において、アクティブ素子と駆動電極との接続の際において、簡易な構成で駆動電極とアクティブ素子を電気的に接続させることができる。
【0015】
また、駆動電極同士が電気的に接続させない、いわゆるショートの発生を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施例に係る積層型有機発光素子を示す模式図である。
【図2】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の電極のxy平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る図2のA−A´線、B−B´線、C−C´線、D−D´線、E−E´線に対応した断面模式図である。
【図4】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図5】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図6】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図7】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図8】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図9】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図10】第1の実施例に係る積層型有機発光素子の製造方法を示す図である。
【図11】第1の比較例に係る図2のA−A´線、B−B´線、C−C´線、D−D´線、E−E´線に対応した断面模式図である。
【図12】第2の比較例に係る図2のA−A´線、B−B´線、C−C´線、D−D´線、E−E´線に対応した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る積層型有機発光素子は、基板上に、互いに異なる発光色を発する第1有機化合物層と第2有機化合物層とが、この順で基板に対して垂直方向に積層されている。そして、この積層型有機発光素子には、第1有機化合物層が第1電極と第2電極で挟まれた第1発光素子と、第2有機化合物層が第2電極と第3電極とで挟まれた第2発光素子とが積層されている。さらに、第1発光素子および第2発光素子が発光する領域とは異なる領域に、第3電極と電気的に接続する第1のTFT回路の電極が基板上に形成されている。
【0018】
ここで、TFT回路の電極まで延在する第3電極が、第2電極と電気的に接続しないように、基板面内方向においてTFT回路に対向する側の第2電極の端部を覆うように、第2有機化合物層が形成されている。
【0019】
これにより、第2電極と第3電極とを電気的に接続させないという課題を解決することができる。
【0020】
なお、各有機発光素子を独立して駆動するために、アクティブ素子と第1電極及び第3電極である駆動電極を接続する必要がある。
【0021】
また、アクティブ素子とは、TFT回路や、その他のスイッチング作用を有する素子のことを示す。
【0022】
また、駆動電極とは、アクティブ素子と電気的に接続された電極のことを示し、本願発明では特に、最も光取出し側に形成された電極のことを示す。
【0023】
また、第1有機化合物層と第2有機化合物層とは異なる発光色を発する第3有機化合物層が、第2電極と第4電極とで挟まれた第3発光素子を構成しても良い。この第3発光素子は、第1発光素子上で第2発光素子と並置されている。そして、第1発光素子、第2発光素子、および第3発光素子が発光する領域とは異なる領域に、第4電極と電気的に接続する第2のTFT回路の電極が基板上に形成されている。そして、第2のTFT回路の電極まで延在する第4電極と第2電極とが電気的に接続しないように、第2電極の端部を覆うように第3有機化合物層が形成されている。
【0024】
なお、アクティブ素子と駆動電極とを電気的に接続させるために、コンタクトホール上にある有機化合物層の除去方法としてはレーザ照射が望ましい。
【0025】
また、透明な第2電極は、第1電極と第3電極の間にある、いわゆる中間電極であり、何れの単位素子においても共通した構成要素である。例えば、単位素子が複数のサブピクセルから構成されているときには、すべてのサブピクセルにおいて延在されている。
【0026】
また、本発明の積層型有機発光素子が基板に設けられていて、その基板が光に対して不透過である場合を想定する。このとき、基板が配置されている側と反対側で光を取り出す構成に本発明の積層型有機発光素子を好ましく用いることが出来る。
【0027】
また、基板の材質は特に問わない。有機物でも無機物でもよい。有機物の場合、例えばフレキシブル基板として用いることが出来る。無機物の場合例えばガラスをもちいることができる。
【0028】
基板が有機化合物層からの光を透過させる部材か透過させない部材かは問わない。また、光を透過させる部材を用いて光取り出し側が基板であってもよい。あるいはガラスのような光透過部材に単位素子を駆動するためのTFT等のスイッチング素子を有し、更に他の部材を設けた結果基板が実質的な光不透過な物品となっているものを用いても良い。
【0029】
また、本発明の積層型有機発光素子を画像表示部に複数有した画像表示装置を提供することができる。
【0030】
画像表示装置は積層型有機発光素子の1つ1つに対応して設けられるアクティブ素子を有している。
【0031】
画像表示装置はアクティブマトリクス駆動するものが好ましいが単純マトリクス駆動するものでもよい。
【0032】
このような画像表示装置とはより具体的にはパソコン等のディスプレイやテレビジョンや電車内の広告用表示装置や自動車内に取り付けられるカーナビゲーション装置などである。
【0033】
また、画像表示装置は自動車の運転席の表示部に用いられてもよく、あるいは携帯電話の表示部に用いられても良い。
【0034】
あるいは、画像表示装置はレーザープリンタや複写機等の電子写真方式の画像形成装置の操作パネル部分に用いられても良い。
【0035】
あるいは、スチルカメラ、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像部を有する撮像装置の表示部に用いられても良い。
【0036】
本発明は、上述した趣旨を逸脱しない限り、以上説明した構成に限られることはなく、種々の応用、変形が可能である。
【実施例】
【0037】
以下実施例を図面とともに説明する。
【0038】
なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0039】
また、以下に説明する実施例は、発明の1つの実施例であって、これらに限定されるものではない。
【0040】
図1は、本実施例に係る積層型有機発光素子の模式図である。
【0041】
本実施例に係る積層型有機発光素子の1画素は、並列に配置された複数のサブピクセルで構成されている。
【0042】
複数のサブピクセルは、各々が異なる色に発光する有機化合物層が複数積層されて構成されている。
【0043】
例えば、第1サブピクセル(図1における分離された左側)が青色発光素子、緑色発光素子からなる。第2サブピクセル(図1における分離された右側)が、青色発光素子、赤色発光素子からなる。
【0044】
そして、青色発光素子の有機化合物層の極性(ダイオード特性)と、緑色発光素子及び赤色発光素子の有機化合物層の極性とが互いに逆方向である。そして、青色発光素子と、緑色発光素子及び赤色発光素子の有機化合物層との間に設けられる電極が透明であり、第1及び第2サブピクセルに延在して配置された共通な透明電極で構成されている。
【0045】
これを、図1を用いて説明をする。
【0046】
1画素を並列に配置した2つのサブピクセルには、反射性を有する第1電極300が形成されている。
【0047】
この反射性を有する第1電極300上には、第1色(青色)の有機化合物層310と、第1サブピクセルと第2サブピクセルの両方に形成された共通な透明電極である第2電極320とが順次積層されている。
【0048】
そして、第1サブピクセル側の第2電極320上には、第2色(緑色)の有機化合物層330、第3電極340が順次積層されている。
【0049】
一方、第2サブピクセル側の第2電極320上には、第3色(赤色)の有機化合物層350、第4電極360が順次積層されている。
【0050】
ここで先述したように、第1色の有機化合物層310のダイオード特性と、第2色の有機化合物層330及び第3色の有機化合物層350のダイオード特性とが互いに逆方向に構成されている。
【0051】
また、第1色の有機化合物層310、第2色の有機化合物層330及び第3色の有機化合物層350は次のような構成からなる。単層型(発光層)、2層型(正孔輸送層/発光層)、3層型(正孔輸送層/発光層/電子輸送層)、4層型(正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層)、又は5層型(正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層)のいずれでもよい。
【0052】
各色の発光層材料としては、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物、及びこれらの単独オリゴ体、或いは複合オリゴ体などを用いることができる。
【0053】
正孔注入及び輸送材料としては、フタロシアミン化合物、トリアリールアミン化合物、導電性高分子、ペリレン系化合物、Eu錯体などが用いることができる。
【0054】
電子注入及び輸送材料としては、アルミに8−ヒドロキシキノリンの3量体が配位したAlq3、アゾメチン亜鉛錯体、ジスチリルビフェニル誘導体系などを用いることができる。
【0055】
また、電子注入材料としてLiFなどの公知の無機化合物を使用しても良い。
【0056】
次に、図2において、図1で示した積層型有機発光素子を上から見た模式図を示す。
【0057】
第1サブピクセル(図2中の中央から左側)では、図示しないガラス基板上に青色発光素子、緑色発光素子が順次積層された構成である。
【0058】
一方、第2サブピクセル(図2中の中央から右側)では、先述の図示しないガラス基板上に青色発光素子、赤色発光素子が順次積層された構成からなる。これらの第1サブピクセル及び第2サブピクセルによってフルカラーを表示することができる。
【0059】
ここで、図2中の第1の電極コンタクト部400、第2の電極コンタクト部500及び第3の電極コンタクト部600とは、反射性を有する第1電極300と図3の説明で詳述するTFT200におけるドレイン電極110とが電気的に接続する部分のこと示す。
【0060】
次に、図3では、図2のA−A´線、B−B´線、C−C´線、E−E´線に沿って切断した断面図を示す。
【0061】
図3のA−A´断面図に示すように、ガラス基板101上には、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(以下、TFT)200を用いたアクティブな画素回路が配置されている。TFT200はPoly−Si104、Poly−Si104のソース領域102、ドレイン領域103が形成される。
【0062】
Poly−Si104上には、ゲート電極105、ドレイン領域103に接続されたドレイン電極110が形成され、このドレイン電極110を覆うように絶縁膜106、層間絶縁膜107、120が設けられている。
【0063】
また、図3のA−A´断面図に示すように、ドレイン電極110上に反射性を有する第1電極300が設けられ、第1色(青色)の有機化合物層310、第2電極320が順次積層され、青色有機EL素子が形成されている。
【0064】
その際、TFT200がp型の場合は、第1色(青色)の有機化合物層310の構成は正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層されることが好ましい。
【0065】
尚、第1色(青色)の有機化合物層310は、蒸着等により、表示領域の全体に渡り、積層することが好ましい。
【0066】
さらに、第2電極320上に第2色(緑色)の有機化合物層330を積層し、緑色有機EL素子を駆動するための駆動電極である第3電極340を積層する。なお、第2電極は図示しない電源と接続させる。
【0067】
ここで、第3電極340をTFT200のドレイン電極110と電気的にコンタクトさせることを説明する。図3のA−A´断面図に示すように、第1色(青色)の有機化合物層310、第2電極320、第2色(緑色)の有機化合物層330をレーザ加工により除去する。これにより形成した第2の電極コンタクト部500を通じ、TFT200のドレイン電極110と第3電極340を電気的にコンタクトさせる。
【0068】
その際、TFT200がp型の場合は、第2色(緑色)の有機化合物層330の構成は電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の順に積層させることが好ましい。
【0069】
同様に、第2電極320上に第3色(赤色)の有機化合物層350を積層し、赤色有機EL素子を駆動するための駆動電極である第4電極360を積層する。
【0070】
ここで、第4電極360とTFT200のドレイン電極110とを電気的にコンタクトさせることを説明する。これは、図3のA−A´断面図に示すように、第1色(青色)の有機化合物層310、第2電極320、第3色(赤色)の有機化合物層350をレーザ加工により除去する。これにより形成した第3の電極コンタクト部600を通じ、第4電極360とTFT200のドレイン電極110とを電気的にコンタクトさせる。その際、TFT200がp型の場合は、第3色(赤色)の有機化合物層350の構成は正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層することが好ましい。
【0071】
上記において、第2色(緑色)の有機化合物層330と第3色(赤色)の有機化合物層350は、図2及び図3C−C´断面図、図3D−D´断面図に示すように形成する。すなわち、TFT200の電極に対して延在する第3電極340とTFT200に対して延在する第4電極360が、第2電極320と夫々電気的に接続しないようにする必要がある。そのため、基板面内方向において、TFT200の電極に対向する第2電極の端部を覆うように有機化合物層330、有機化合物層350を形成するために、公知のマスク蒸着技術を用いて塗り分けて形成されている。
【0072】
また、図2および図3C−C’断面図、図3D−D’断面図により、TFT200の電極は、発光領域とは異なる周辺領域で基板上に設けられていることが分かる。ここで、発光領域とは、第2色の有機化合物層330及び第3色の有機化合物層350が発光する領域を示す。なお、TFT200の第3電極或いは第4電極と電気的に接続するドレイン電極110以外のゲート電極105やソース領域102は、発光領域にあっても良い。
【0073】
次に、本実施例の製造方法を図面で説明する。
【0074】
図4から図10は本発明の第1実施例の製造方法を表す図である。
ここで、図4から図10の流れを簡単に説明する。
まず、図4では基板101上にTFT200を形成し、その上に層間絶縁膜107を形成する。このとき、コンタクト部において層間絶縁膜107をレーザ等で除去しておく。図5ではTFT200が形成された基板101上に反射性を有する第1電極300を形成する。
【0075】
次に図6では、反射性を有する第1電極300をフォトリソグラフィ等によりパターニングし、図7ではパターニングされた反射性を有する第1電極300上に、層間絶縁膜107上に青色を発光する有機化合物層310を形成する。そして、更にサブピクセル間に亘って共通で透明な第2電極320を順次積層する。
【0076】
次に図8では、青色を発光する有機化合物層310及び共通な透明電極である第2電極320をレーザ加工し、反射性を有する第1電極300と、第3電極340及び第4電極350を接触させるためのコンタクト部を形成する。
【0077】
次いで図9では、第2電極320に緑色の発光をする有機化合物層330と、赤色の発光をする有機化合物層350を積層する。
【0078】
さらに、図10では、緑色有機発光素子、及び赤色有機発光素子を駆動する駆動電極である第3電極340及び第4電極360を、緑色の発光をする有機化合物層330及び赤色の発光をする有機化合物層350上に夫々積層する。
【0079】
次に、上述した製造工程を、より詳細に説明するために、図2のA−A´線、B−B´線、C−C´線、D−D´線及びE−E´線に沿って切断した断面図である図4から図10を用いて説明をする。
【0080】
まず、図4のA−A´断面図に示すように、TFT200は、ガラス基板101上に、Poly−Si104が形成され、Poly−Si104のソース領域102、ドレイン領域103が形成される。
【0081】
さらに、Poly−Si104上には、ゲート電極105、ドレイン領域103に接続されたドレイン電極110が形成され、このドレイン電極110を覆うように絶縁膜106、層間絶縁膜107、120が設けられている。
【0082】
なお、TFT200は図示したトップゲート型に限定されることはなく、ボトムゲート型であっても良い。
【0083】
また、TFT200の特性がp型、n型でも良い。
図5では、ドレイン電極110上に、反射性を有する第1電極300を形成する。この第1電極300は、電極コンタクト部(400、500、600)でTFT200に接続されている。第1電極300の材料としては、Cr、Al、Agなどの金属または、合金、ITO、IZOなどの透明導電性材料、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0084】
次に、図6では、反射性を有する第1電極300に対して、画素部及び電極コンタクト部400、500、600を形成する。この形成には公知の技術であるフォトリソグラフィにより形成しても良いが、必要な領域のみに形成されるよう、公知のマスク蒸着技術を用いて、塗り分けして形成しても良い。
【0085】
もちろん、レーザ加工により必要な領域のみに形成しても良い。
また、本実施例では画素間を分離するための画素間分離膜を明記していないが、画素分離膜を形成してもよい。画素分離膜の材料としては、アクリル、ポリイミドなどの高分子化合物、酸化珪素、窒化珪素などの無機化合物を用いることができる。
【0086】
次に、図7のように、パターニングされた反射性を有する第1電極300及び層間絶縁膜120上に、第1色(青色)の有機化合物層310、第2電極320を順次積層し、青色有機発光素子を形成する。
【0087】
その際、TFT200がp型の場合は、第1色(青色)の有機化合物層310の構成は正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層することが好ましい。
【0088】
尚、第1色(青色)の有機化合物層310は、蒸着等により、表示領域の全体に渡り、積層することが好ましい。
【0089】
第2電極320の材料としては、ITO、IZOなどの透明な電極となる材料を用いることが望ましい。また、2nmから30nmの膜厚を有する半透過性のAl薄膜、Ag薄膜などを用いることもできる。
【0090】
また、第2電極320の材料はAg、IZO、若しくはAgとIZOの積層膜であってもよく、厚さは10nm〜15nmであることが好ましい。
【0091】
次に図8のように、第1電極300から有機化合物層310、第2電極320をレーザ加工により除去し、各電極コンタクト部400、500、600を形成する。この際、加工に用いるレーザのパルス幅を調節し、フォトマスクを介して、所望の加工部のみに光が照射されるように光の照射部を変えることにより、コンタクトホールを形成することが可能となる。この場合、第1色(青色)の有機化合物層310と第2電極320の端部は、図8に示すように傾斜角を有する。このとき、基板面内方向と端部のなす角度が90°未満であることが望ましい。例えば、エキシマレーザー波長248nm、パルス幅25nsec、出力500mJにてレーザ加工することにより、傾斜角を15°程度にすることができる。
【0092】
これにより、後述する図10における第3電極340を積層する際において、第3電極340が断線するのを防ぐことが可能となる。
【0093】
なお、各電極コンタクト部400、500、600を形成するレーザとしては、YAGレーザ、エキシマレーザーなどを用いることができる。
【0094】
また、加工パターンの形成方法としては、数μmに集光したレーザを走査する方法、或いは、遮光膜をパターン配置したマスクを用いて所望の領域にのみレーザを照射する方法などを用いることができる。
【0095】
次いで、図9のように、第2電極320上に、第2色(緑色)の有機化合物層330、及び第3色(赤色)の有機化合物層350を積層する。
【0096】
その際、下部の第1色(青色)の有機化合物層310、及び第2電極320の端部が、第2色(緑色)の有機化合物層330、及び第3色(赤色)の有機化合物層350に覆うようにする。
【0097】
また、電極コンタクト部400、500、600に、図10で説明する第3電極340、第4電極360を電気的にコンタクトさせるためには、電極コンタクト部400、500、600上に、第2色(緑色)の有機化合物層330、及び第3色(赤色)の有機化合物層350が無いことが望ましい。
【0098】
尚、第2色(緑 色)の有機化合物層330、及び第3色(赤色)の有機化合物層350の構成はTFT200がp型の場合は、電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の順に積層することが好ましい。
【0099】
また、図9からわかる通り、第2色(緑色)の有機化合物層330、及び第3色(赤色)の有機化合物層350は必要な領域のみに形成されるよう、公知のマスク蒸着技術を用いて、塗り分けて、形成されている。もちろん、レーザ加工により必要な領域のみに形成しても良い。
【0100】
次に、図10のように、緑色有機発光素子、及び赤色有機発光素子を駆動するための第3電極340、及び第4電極360を積層する。
【0101】
ここで、TFT200(第1のTFT回路)と第3電極340、及びTFT200(第2のTFT回路)と第4電極360を電気的にコンタクトさせることを説明する。
【0102】
各電極コンタクト部400、500、600は、図6で説明したように、第1色(青色)の有機化合物層310、第2電極320をレーザ加工等により必要な領域のみ選択的に除去する。
【0103】
そして、形成された第2の電極コンタクト部500、及び第3の電極コンタクト600を通じ、TFT200(第1のTFT回路)と第3電極340及び、TFT200(第2のTFT回路)と第4電極360とを電気的にコンタクトさせるのである。
【0104】
第3電極340、及び第4電極360の材料としては、ITO、IZOなどの透明電極を用いることが望ましいが、10nmから30nmの膜厚を有する半透過性のAl薄膜、Ag薄膜などを用いることもできる。
【0105】
以上によって積層型有機発光素子の製造方法を図4から図10を用いて説明した。
【0106】
なお、本実施例では、2層積層型の有機発光素子の構造を説明したが、2層以上の積層型有機発光素子においても、同様のプロセスで作製可能である。
【0107】
(第1の比較例)
図11は、本実施例に係る積層型有機発光素子のA−A´線、B−B´線、C−C´線、D−D´線、E−E´線に沿って切断した断面図を示す。
【0108】
図11C−C´、D−D´断面図のように、下部の第1色(青色)の有機化合物層310、及び第2電極320の端部が、第2色(緑色)の有機化合物層330、及び第3色(赤色)の有機化合物層350に覆われていない。この場合は、第2電極320と第3電極340、及び第4電極360が接触する。そのためショートにより非発光となってしまう。
【0109】
(第2の比較例)
図12は、本実施例に係る積層型有機発光素子のA−A´線、B−B´線、C−C´線、D−D´線、E−E´線に沿って切断した断面図を示す。
【0110】
図12C−C´、D−D´断面図のように、下部の第1色(青色)の有機化合物層310、及び第2電極320の端部の形状が、傾きが90°以上となっている。この場合は、第3電極340、及び第4電極360が断線する場合があるため非発光となってしまう。
【符号の説明】
【0111】
101 ガラス基板
200 TFT
300 第1電極
310 第1色の有機化合物層
320 第2電極
330 第2色の有機化合物層
340 第3電極
350 第3色の有機化合物層
360 第4電極
370 第5電極
400 第1の電極コンタクト部
500 第2の電極コンタクト部
600 第3の電極コンタクト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる発光色を発する第1有機化合物層と第2有機化合物層とが、この順で基板に積層された積層型有機発光素子において、
前記第1有機化合物層が第1電極と第2電極で挟まれた第1発光素子と、
前記第2有機化合物層が前記第2電極と第3電極とで挟まれた第2発光素子と、
前記第1発光素子および前記第2発光素子が発光する領域とは異なる領域に、前記第3電極と電気的に接続する第1のTFT回路の電極が前記基板上に形成されており、
前記第1のTFT回路の電極まで延在する前記第3電極と前記第2電極とを電気的に接続させないために、前記第2電極の端部を覆うように前記第2有機化合物層が形成されていることを特徴とする積層型有機発光素子。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極とを電気的に接続させないために、前記第1電極の端部を少なくとも覆うように、前記第1有機化合物層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型有機発光素子。
【請求項3】
前記第1有機化合物層と前記第2有機化合物層とは異なる発光色を発する第3有機化合物層が、前記第2電極と第4電極とで挟まれた第3発光素子を有し、前記第3発光素子は、前記第2発光素子に対して前記第1発光素子上で並置されており、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子が発光する領域とは異なる領域に、前記第4電極と電気的に接続する第2のTFT回路の電極が前記基板上に形成されており、
前記第2のTFT回路の電極まで延在する前記第4電極と前記第2電極とを電気的に接続させないために、前記第2電極の端部を覆うように前記第3有機化合物層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型有機発光素子。
【請求項4】
前記第2電極と前記第1有機化合物層の端部は傾斜角を有しており、該端部と前記基板のなす角度は90°未満であることを特徴とする請求項1に記載の積層型有機発光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の積層型有機発光素子を複数有した表示部と、撮像部とを有する撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の積層型有機発光素子を複数有した表示部を有する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−153360(P2010−153360A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237481(P2009−237481)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】