説明

積層型燃料電池の端子ユニット

【課題】電圧モニター端子のセパレーターへの取り付けを容易にすると共に電気的な接触を確実にし、しかも、燃料電池セルに特別な構成を必要とせずに、端子の脱着が容易にできる積層型燃料電池の端子ユニットを提供する。
【解決手段】金属製端子2をホルダー3の窪み部内に頂部が外部に突出するように嵌め込む。ホルダー3に積載型燃料電池6の各セパレーター8に対向するように複数の金属製端子2を保持させる。一方、積層型燃料電池6には、側面6cに沿って凹部6dを形成し、この凹部6d内にホルダー3を着脱可能に嵌挿し、凹部6d内で金属製端子2をセパレーター8に弾接させて電気的に接続することにより、電圧モニターを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型燃料電池における端子ユニットに係り、特にセパレーターの電圧モニター用端子の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型燃料電池では、各燃料電池セルあるいは数個の燃料電池セルおきに設けられたカーボン材料からなるセパレーターに取付用穴を設け、この取付用穴に、燃料電池セルの電圧を測定するための電圧モニター端子として、電圧測定用の端子あるいは計測線などを差し込み、これらの端子あるいは計測線を導電性ペーストなどで接着固定したり、またはネジなどを用いて締結していた(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
図10は従来の電圧モニター端子の一例を示す斜視図であり、この従来例は、セパレーター21の側面に丸穴22を形成し、この丸穴22に端子23を差し込んで電圧モニターする構成である。
【0004】
図11は従来の電圧モニター端子の他例を示す斜視図であり、この従来例は、セパレーター31の側面に形成した端子結合穴32に対して、プレート33に櫛歯状に設けた端子34を差し込む構成である。
【特許文献1】特開平9−283166号公報
【特許文献2】特開2002−124285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の積層型燃料電池における電圧モニター端子は、前記のような構成であって、電圧モニター用の端子あるいは計測線を取り付けるための取付用穴を設けるため、セパレーターに割れやクラックなどを生じさせたり、加工工数が多いためコスト高になっていた。
【0006】
しかも、生産工程において計測線の端子が邪魔なばかりでなく、取り扱いに慎重さを必要とするため、作業効率を低下させる原因になっていた。
【0007】
また計測線を取り付ける場合に、引出し線の取り扱いが煩雑であり、燃料電池として完成した後も、その部分に関しては慎重な取り扱いを必要とするだけでなく、積層形燃料電池の作動時にスタックの膨張などが生じたときに、それに追従できない端子部から応力がセパレーターに加わって、クラック発生などの不具合を生じるという課題があった。
【0008】
そこで、システム内部に格納される積層型燃料電池として、コンパクトであり、取り扱いが簡便であり、しかも安定して確実な電圧モニタリングを実現できるモニターユニットの開発が強く望まれている。
【0009】
本発明は、前記従来技術の課題を解消し、電圧モニター端子のセパレーターへの取り付けを容易にすると共に電気的な接触を確実にし、しかも、燃料電池セルに特別な構成を必要とせずに、端子の脱着が容易にできる積層型燃料電池の端子ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、燃料電池セルと、電気伝導性材料により構成されたセパレーターとが積層された構成の積層型燃料電池における電圧モニターを行うための端子を有する端子ユニットであって、絶縁性部材よりなるホルダーの少なくとも一側部に、弾性を有する金属製端子を複数設置し、前記ホルダーを燃料電池本体の一側部に着脱可能に装着して、前記各金属製端子を前記セパレーターにそれぞれ弾接させたことを特徴とし、この構成によって、電圧モニター用の端子の各セパレーターに対する取り付けが容易になると共に、端子の弾性によりセパレーターに対する電気的な接触が確実になり、しかも燃料電池セル側に特別な部材を設けることなく端子の脱着が容易にできる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の積層型燃料電池の端子ユニットにおいて、ホルダーを燃料電池本体に形成された凹部内に埋設したことを特徴とし、この構成によって、端子類が邪魔にならずに断熱材,外部絶縁被覆材およびケーシングなどの取り付けが簡便に行え、かつ断熱性と収納性とが向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の積層型燃料電池の端子ユニットにおいて、ホルダーを、複数の小ホルダーをガイドロッドを介して移動可能に連結することにより構成し、各小ホルダーに弾性を有する金属製端子を設置したことを特徴とし、この構成によって、熱膨張などで積層方向の寸法に変化を生じ易いセパレーターに対応させて、小ホルダーおよび端子を移動させることができるため、各端子をセパレーターにおける積層ピッチの変化に高精度に追従させることが可能になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載の積層型燃料電池の端子ユニットにおいて、燃料電池本体の凹部を、該燃料電池本体の載置面および該載置面と対向する上面以外の側面一部に形成したことを特徴とし、この構成によって、組立時やメンテナンス時における作業が容易になり、またケーシングなどにより密閉空間となった部分で発生する結露などが原因として生じる液滴が、セパレーターが埋設される凹部に溜まることが防止され、端子の腐食などを防止することができるなど、安定した電圧のモニターリングが可能になる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の積層型燃料電池の端子ユニットにおいて、ホルダーを凹部に嵌着すると共に、金属製端子を前記セパレーターに密着させたことを特徴とし、この構成によって、端子の弾性によりセパレーターに対して安定した接触が実現することから、従来行われていたセパレーターに端子を接着固定するなどの方法に比べ、接着剤や有機溶剤などを使用する必要がないことから、端子部の高い構造的安定性と、燃料電池の性能に影響を及ぼす可能性のある物質を完全に排除でき、さらに対環境性の観点においても高い安全性を有することになる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1,3または4記載の積層型燃料電池の端子ユニットにおいて、金属製端子をホルダーの相対向する側面にそれぞれ設けたことを特徴とし、この構成によって、ホルダーの着脱を容易に行うことができ、またセパレーターの種々の配置構成に対応して確実な電気的接触が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電圧モニター用の端子の各セパレーターに対する取り付けが容易になると共に、端子の弾性によりセパレーターに対する電気的な接触が確実になり、しかも燃料電池セル側に特別な部材を設けることなく端子の脱着が容易にできる。
【0017】
また、ホルダーを凹部に埋設したことにより、端子類に邪魔されずに断熱材,外部絶縁被覆材およびケーシングなどの取り付けを簡便に行うことができ、かつ断熱性と収納性が向上する。
【0018】
また、各セパレーターに対応させて、小ホルダーおよび端子のユニット体を移動させることができるため、各端子を各セパレーターにおける積層ピッチの変化などに高精度に追従させることができる等、実際的な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1を説明するための積層型燃料電池と電圧モニター端子ユニットの斜視図、図2は実施形態1の電圧モニター端子ユニットの縦断面図である。
【0021】
図1,図2において、1は電圧モニター端子ユニット、2は弾性を有する側面視へ字状の金属製端子、3は絶縁性部材からなる横長形状のホルダー、4は金属製端子2に接続されたリード線、5は接続用コネクターである。
【0022】
6は、燃料電池セル7と、電気伝導性材料により構成されたセパレーター8とが積層された構成の積層型燃料電池である。
【0023】
図2において、金属製端子2は、非拘束形状aに対して外力を加え、内方へ撓ませて拘束形状bに変形させた後、ホルダー3の上側部に複数形成された窪み部3a内に頂部2aが外部に突出するように嵌め込まれ、かつ前記各セパレーター8に対向するように複数個がホルダー3に保持される。ホルダー3には、各窪み部3aに連通する縦通孔3bと、この縦通孔3bに連通してホルダー側方に開口する横溝3cとが形成されている。
【0024】
各金属製端子2には、リード線4の一端が、例えば半田付け,カシメ工法などにより固定されている。各リード線4は、ホルダー3の各窪み部3aから縦通孔3bと横溝3cとを通って、ホルダー3の外方にて接続用コネクター5に結束される。
【0025】
積層型燃料電池6には、その載置面(底面)6aと該載置面6aに対向する上面6b以外の側面6cに沿って凹部6dが形成されており、この凹部6d内にホルダー3が着脱可能に嵌挿される。
【0026】
前記のような構成の実施形態1の電圧モニター端子ユニット1を燃料電池本体6の凹部6dに嵌め込むと、図3に示すように、ホルダー3と一体の金属製端子2の頂部2aがセパレーター8部分の凹部6dの周壁に当接して金属製端子2が変形し、この変形時の弾反力により電圧モニター端子ユニット1と燃料電池本体とが、強固に連結して電気的に接続することになり、各セパレーター8の電圧モニターが可能になる。
【0027】
図3に示す連結状態では、電圧モニター端子ユニット1は、セパレーター8により外方に突出することなく、積層型燃料電池6の本体に取り付けることができるため、燃料電池本体に付設される断熱材9、および外部絶縁被覆材10を平板で構成することが可能となり、設計などに余裕ができる。
【0028】
さらに、図3に示すように、積層方向が水平になるように設置される積載型燃料電池において、凹部6d内にホルダー3全体が入り込む構成であるため、微小な水漏れ,温度変化による結露水などの液滴が滞留する凹凸のない構成になり、このため液滴による導通不良および端子腐食などを防止することができる。
【0029】
また、図4に示すように、隣り合う金属製端子2は、各セパレーター8の突出部分8aのみに接触するように構成されている。また、突出させるセパレーター8を燃料極側、もしくは反応極側の何れかに決めて電圧モニターすることによって、セパレーター8の接触抵抗に影響されることなく、安定したモニターを行うことが可能となる。
【0030】
(実施形態2)
図5は本発明の実施形態2における電圧モニター端子ユニットの縦断面図であり、実施形態2が実施形態1の電圧モニター端子ユニットと異なる点は、ホルダー3の上下両側面に窪み部3aを設け、各窪み部3a内に金属製端子2を頂部2aが外部に突出するように嵌め込み、ホルダー3に、各窪み部3aに連通する縦通孔3bを形成して、リード線4を配置できるようにした構成である。このようにすることにより、例えばセパレーター8がホルダー3の上下側面に設置された構成に対応して電圧モニターが行えるようになる。
【0031】
また、図6に示すように、セパレーター8の突出部分8aを凹部6dの上下に設け、金属製端子2との接触個所が千鳥配置となるようにすることによって、金属製端子2の個々の幅を拡大して、セパレーター8との接触および導通をより確実にする構成にすることも考えられる。
【0032】
なお、電圧モニター端子ユニット1における金属製端子2の保持構造としては、前記のような弾性保持以外にも、図7に示すように、金属端子2をビス11にてホルダー3に締結したり、熱溶着などによりホルダー3に固定することにより、ホルダー3と金属製端子2との締結,固定をより確実にすることが考えられる。
【0033】
図8は電圧モニター端子ユニットと積載型燃料電池との接続部分における変形例を示す図であり、本例は、ホルダー3に積載型燃料電池6側に開口する横溝3dを形成し、該横溝3dの内壁に、金属製端子2が実施形態1と同様に嵌め込まれる受け凹部3eを設け、さらに、リード線4が通るように、受け凹部3eと外部とを連通する縦通孔3fを形成し、横溝3dに対して積載型燃料電池6に突出して設けたセパレーター8部分を嵌挿することにより、セパレーター8と金属製端子2とを弾接させ、電気的に接続させた構成のものである。
【0034】
(実施形態3)
図9は本発明の実施形態3における電圧モニター端子ユニットを示す斜視図であり、実施形態3が実施形態1の電圧モニター端子ユニット1と異なる点は、ホルダー3を複数の小ホルダー13を並設して構成し、各小ホルダー13に金属製端子2を前記実施形態と同様にはめ込むようにして設置し、各小ホルダー13をガイドロッド棒14にて横動可能に支持した構成である。
【0035】
さらに、図9に示すように、横に並べられた小ホルダー13の両側に支持ブロック15を設け、ガイドロッド棒14の端部を支持し、支持ブロック15の一方(図では右側)から突出したガイドロッド棒14の一端部を固定用プレート16に固定し、この固定用プレート16と支持ブロック15間のガイドロッド棒14には圧縮バネ17を巻回している。
【0036】
実施形態3では、金属製端子2を、セパレーターにおける積層ピッチの変化に対応させて移動させることが可能になる。例えば、積層型燃料電池の動作中、セパレーターが熱膨張などで積層方向の寸法に変化が生じ、所定位置から変位することがある。このため、小ホルダー13を金属製端子2と共に、セパレーターの変位に応じてスライド移動させることによって、金属製端子2とセパレーターとを確実に弾接させることができる。
【0037】
圧縮バネ17は、小ホルダー13がセパレーターの動きに追従して移動した場合、小ホルダー13に戻り方向の付勢力を与えるためのものである。
【0038】
このように、各小ホルダー13を連結して圧縮バネ17により、ガイドロッド棒14上をスライド移動できる構造とすることにより、積層型燃料電池のセパレーターにおける積層ピッチの誤差や変化に高精度で追従することができる。
【0039】
前記構成の実施形態における電圧モニター端子ユニット1を、例えば積層型燃料電池に悪影響を及ぼすような不具合の発生に対して十分配慮されたエンジニアリングプラスティックなどの樹脂製のホルダー3と、耐蝕金メッキを施した金属製端子2とにより構成すれば、セパレーター8と金属製端子2との接触および導通は、金属製端子2の弾発力によって維持されているため、構成全体として接着剤や有機溶剤など不具合発生の原因となる物質を用いない電圧モニターユニットとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、積層型燃料電池の電圧モニターを行うための端子を有する端子ユニットに適用され、また電圧モニター装置の内部にCPU,バッテリー,着脱型メモリーモジュール、あるいは書き換え型のメモリーモジュールなどの各種部材が独立して配設されているデーターロガーの端子ユニットなどの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1を説明するための積層型燃料電池と電圧モニター端子ユニットの斜視図
【図2】実施形態1の電圧モニター端子ユニットの縦断面図
【図3】実施形態1における金属製端子とセパレーター部分との接触状態を示す断面図
【図4】実施形態1における金属製端子と各セパレーターの突出部分との接触状態を示す断面図
【図5】本発明の実施形態2における電圧モニター端子ユニットの縦断面図
【図6】実施形態2における金属製端子と各セパレーターの突出部分との接触状態を示す断面図
【図7】実施形態2における電圧モニター端子ユニットの他例を示す縦断面図
【図8】本実施形態に係る電圧モニター端子ユニットと積載型燃料電池との接続部分における変形構成例を示す図
【図9】本発明の実施形態3における電圧モニター端子ユニットを示す斜視図
【図10】従来の電圧モニター端子の一例を示す斜視図
【図11】従来の電圧モニター端子の他の例を示す斜視図
【符号の説明】
【0042】
1 電圧モニター端子ユニット
2 金属製端子
2a 頂部
3 ホルダー
3a 窪み部
3b 縦通孔
3c 横溝
4 リード線
5 接続用コネクター
6 積層型燃料電池
6d 凹部
7 燃料電池セル
8 セパレーター
8a 突出部分
9 断熱材
10 外部絶縁被覆材
13 小ホルダー
14 ガイドロッド棒
15 支持ブロック
17 圧縮バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルと、電気伝導性材料により構成されたセパレーターとが積層された構成の積層型燃料電池における電圧モニターを行うための端子を有する端子ユニットであって、
絶縁性部材よりなるホルダーの少なくとも一側部に、弾性を有する金属製端子を複数設置し、前記ホルダーを燃料電池本体の一側部に着脱可能に装着して、前記各金属製端子を前記セパレーターにそれぞれ弾接させたことを特徴とする積層型燃料電池の端子ユニット。
【請求項2】
前記ホルダーを前記燃料電池本体に形成された凹部内に埋設したことを特徴とする請求項1記載の積層型燃料電池の端子ユニット。
【請求項3】
前記ホルダーを、複数の小ホルダーをガイドロッドを介して移動可能に連結することにより構成し、前記各小ホルダーに前記弾性を有する金属製端子を設置したことを特徴とする請求項1または2記載の積層型燃料電池の端子ユニット。
【請求項4】
前記燃料電池本体の凹部を、該燃料電池本体の載置面および該載置面と対向する上面以外の側面一部に形成したことを特徴とする請求項2記載の積層型燃料電池の端子ユニット。
【請求項5】
前記ホルダーを前記凹部に嵌着すると共に、前記金属製端子を前記セパレーターに密着させたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の積層型燃料電池の端子ユニット。
【請求項6】
前記金属製端子を前記ホルダーの相対向する側面にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1,3または4記載の積層型燃料電池の端子ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−87858(P2007−87858A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277557(P2005−277557)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】