説明

積層型電子部品

【課題】コモンモードのノイズを効率良く除去することが可能でありつつも、導体パターンが重なることに起因する厚みばらつきを抑制することができる積層型電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の導体パターンの渦巻き方向と第2の導体パターンの渦巻き方向とが同じ向きである。そして、平面透視した場合に第1の導体パターンが配設された領域と第2の導体パターンが配設された領域とが重なり合わない積層型電子部品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の導体パターンが内部に埋設された電子部品に関するものである。このような電子部品は、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサを備えたモジュールの部品として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の導体パターンが内部に埋設された電子部品としては、たとえば、特許文献1に記載の積層チップインダクタが知られている。特許文献1に記載の積層チップインダクタは、複数の磁性体層を積層して得られる積層体に複数の渦巻き状のコイル用導体パターンを埋設することによって形成されている。
【0003】
積層方向に隣り合うコイル用導体パターンは、流れる電流の渦巻き方向が同じ向きとなるように配設されており、複数のコイル用導体パターン全体として大きなインダクタンスを形成している。このような積層チップインダクタは、積層方向に隣り合うコイル用導体パターンを流れる電流の渦巻き方向を逆方向とすることによってコモンモードのコイルとしても用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の積層チップインダクタは、上記の通り、積層方向に隣り合うコイル用導体パターンを流れる電流の渦巻き方向を逆方向とすることによってコモンモードのコイルとして用いることができる。しかしながら、このような場合、積層方向に隣り合うコイル用導体パターンが互いに重なり合う領域が生じる。近年、より大きな電流を流すためには導体パターンの厚みを大きくすることが求められているが、このように導体パターンの厚みを大きくした場合、導体パターンが重なることに起因して大きな厚みばらつきが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、コモンモードのノイズを効率良く除去することが可能でありつつも、導体パターンが重なることに起因する厚みばらつきを抑制することができる積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる積層型電子部品は、第1の絶縁体層、該第1の絶縁体層の上面に配設された第2の絶縁体層、および該第2の絶縁体層の上面に配設された第3の絶縁体層を備えた積層体と、前記第1の絶縁体層と前記第2の絶縁体層との間に配設された渦巻き状の第1の導体パターンと、前記第2の絶縁体層と前記第3の絶縁体層との間に配設された渦巻き状の第2の導体パターンと、を有し、前記第1の導体パターンの渦巻き方向と前記第2の導体パターンの渦巻き方向とが同じ向きである。そして、平面透視した場合に前記第1の導体パターンが配設された領域と前記第2の導体パターンが配設された領域とが重なり合わないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様に基づく積層型電子部品においては、第1の導体パターンの渦巻き方向と第2の導体パターンの渦巻き方向とが同じ向きであるとともに、平面透視した場合に第1の導体パターンが配設された領域と第2の導体パターンが配設された領域とが重なり合っていない。そのため、より大きな電流を流すためには導体パターンの厚みを大きくした場合であっても、導体パターンが重なることに起因する厚みばらつきが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の積層型電子部品を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の積層型電子部品の平面透視図である。
【図3】図2に示す実施形態の積層型電子部品のA−A断面図である。
【図4】第2の実施形態の積層型電子部品を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の積層型電子部品について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の積層型電子部品は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0011】
図1〜3に示すように、本実施形態の積層型電子部品1は、複数の絶縁体層3を積層してなる積層体5と、この積層体5に埋設された第1の導体パターン7および第2の導体パターン9とを有している。
【0012】
積層体5は、複数の絶縁体層3として、第1の絶縁体層3a、第1の絶縁体層3aの上面に配設された第2の絶縁体層3b、および第2の絶縁体層3bの上面に配設された第3の絶縁体層3cを備えている。また、第1の導体パターン7は、平面視した場合の形状が渦巻き状であり、第1の絶縁体層3aと第2の絶縁体層3bとの間に配設されている。第2の導体パターン9は、平面視した場合の形状が渦巻き状であり、第2の絶縁体層3bと第3の絶縁体層3cとの間に配設されている。
【0013】
本実施形態の積層型電子部品1は、複数の絶縁体層3を積層してなる積層体5の表面に位置して、ビア導体パターン11(第1のビア導体パターン11)及び接続導体23を介して第1の導体パターン7または第2の導体パターン9に接続された外部電極13を備えている。外部電極13は、リード端子などを介して外部配線(不図示)と電気的に接続するための部材である。そのため、本実施形態における外部電極13は積層体5の上面および下面に配設されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、外部電極13は積層体5の側面に配設されていてもよい。
【0014】
第1の絶縁体層3a、第2の絶縁体層3b、第3の絶縁体層3cはそれぞれ上面および下面に開口する貫通孔を有しており、第2の絶縁体層3bの貫通孔に第1のビア導体パターン11が埋設されるとともに、第1の絶縁体層3a及び第3の絶縁体層3cの貫通孔に接続導体23が埋設される。
【0015】
本実施形態の積層型電子部品1は、第1の導体パターン7の渦巻き方向と第2の導体パターン9の渦巻き方向とが同じ向きであって、第1の導体パターン7を流れる電流の渦巻き方向と第2の導体パターン9を流れる電流の渦巻き方向とが逆向きである。
【0016】
第1の導体パターン7の渦巻き方向と第2の導体パターン9の渦巻き方向とが同じ向き
であるとは、渦巻き形状である場合に、この渦巻きの回転方向が同じであることを意味している。図1に示すように、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9は、いずれも外側から中心に向かって時計回りで回転しながら渦を巻くようにして形成されている。このように、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9のいずれも外側から中心に向かって時計回りもしくは反時計回りで渦を巻くようにして形成されている場合に、渦巻き方向が同じ向きであるといえる。
【0017】
本実施形態の積層型電子部品1においては、第1の導体パターン7の渦巻きの中心側に位置する端部および第2の導体パターン9の渦巻きの外周側に位置する端部がそれぞれ接続導体23を介して積層体5の上面に配設された外部電極13に接続されている。
【0018】
そのため、積層体5の上面に配設された外部電極13から接続導体23を介して第1の導体パターン7および第2の導体パターンへと流れる電流は、第1の導体パターン7において中心から外側に向かって反時計回りで回転しながら流れるとともに、第1の導体パターン7において外側から中心に向かって時計回りで回転しながら流れる。
【0019】
このように、第1の導体パターン7において反時計回りで回転しながら電流が流れるとともに、第2の導体パターン9において時計回りで回転しながら電流が流れた場合、第1の導体パターン7を流れる電流によって生じる磁界の向きと第2の導体パターン9を流れる電流によって生じる磁界の向きとが反転する。そのため、積層方向に隣り合う第1の導体パターンと第2の導体パターンとの間でコモンモードのノイズを効率良く除去することができる。
【0020】
また、第1の導体パターン7を流れる電流によって生じる磁界の向きと第2の導体パターン9を流れる電流によって生じる磁界の向きとが反転していることから、互いの磁界を相殺しあうので、外部への磁界の漏れが小さくなる。そのため、IC素子のような半導体素子、あるいは、配線回路を備えた電子部品モジュールの部品として本実施形態の積層型電子部品1を用いた場合であっても、積層型電子部品1から生じた磁界による半導体素子、あるいは、配線回路への影響を小さくできる。
【0021】
本実施形態の積層型電子部品1は、複数の絶縁体層3を積層してなる積層体5を有している。積層体5は、複数の絶縁体層3として、第1の絶縁体層3a、第1の絶縁体層3aの上面に配設された第2の絶縁体層3b、および第2の絶縁体層3bの上面に配設された第3の絶縁体層3cを備えている。
【0022】
本実施形態における複数の絶縁体層3としては、それぞれ高い絶縁性を有している部材を用いることができる。具体的には、例えば、フェライト質焼結体、フォルステライト質焼結体およびガラスセラミック材料等のセラミック材料を用いることができる。あるいは、複数の絶縁体層3として絶縁性の樹脂を用いてもよい。また、複数の絶縁体層3が非磁性絶縁材料と磁性絶縁材料の組合せであっても良い。
【0023】
なお、本実施形態における複数の絶縁体層3は、それぞれ平面視した場合の外周形状が矩形状となっているが特にこれに限られるものではない。たとえば、平面視した場合の外周形状が、六角形または八角形のような多角形状、或いは、楕円形状または円形状のような曲面形状であってもよい。
【0024】
複数の絶縁体層3を構成する第1の絶縁体層3a、第2の絶縁体層3b、第3の絶縁体層3cにはそれぞれ上面および下面に開口する貫通孔が形成されている。そして、第2の絶縁体層3bの貫通孔に第1のビア導体パターン11が埋設されるとともに、第1の絶縁体層3a及び第3の絶縁体層3cの貫通孔には、外部電極と第1の導体パターン7又は第
2の導体パターン9とを電気的に接続する接続導体23がそれぞれ埋設される。
【0025】
また、第2の絶縁体層3bは、積層方向に隣り合う第1の導体パターン7と第2の導体パターン9との間であって、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9が互いに離隔するように位置している。そのため、第2の絶縁体層3bは、積層方向に隣り合う第1の導体パターン7および第2の導体パターン9が電気的に短絡しない程度の絶縁性を確保できる厚みを有していることが求められる。
【0026】
そして、本実施形態の積層型電子部品1においては、第2の絶縁体層3bの厚みが、第1の絶縁体層3aおよび第3の絶縁体層3cの厚みよりも小さい。本実施形態の積層型電子部品1は、第1の導体パターン7を流れる電流によって生じる磁界と第2の導体パターン9を流れる電流によって生じる磁界とが相殺されることによって、外部への磁界の漏れを小さくしている。第1の導体パターン7と第2の導体パターン9との間に位置する第2の絶縁体層3bの厚みが相対的に小さい場合には、第1の導体パターン7と第2の導体パターン9との間隔が小さくなる。そのため、このような場合には、第1の導体パターン7を流れる電流によって生じる磁界と第2の導体パターン9を流れる電流によって生じる磁界とのずれが小さくなるので、これらの磁界を効率よく相殺させることができ、コモンモードのノイズを効率良く除去することができる。
【0027】
また、第1の絶縁体層3aの厚みが相対的に大きいことによって、第1の導体パターン7を流れる電流によって生じる磁界の外部への漏れを小さくすることができるとともに、第3の絶縁体層3cの厚みが相対的に大きいことによって、第2の導体パターン9を流れる電流によって生じる磁界の外部への漏れを小さくすることができる。
【0028】
また、第1の絶縁体層3aの厚みと第3の絶縁体層3cの厚みとが略等しいことが好ましい。このような場合には、第1の導体パターン7を流れる電流によって生じる磁界と第2の導体パターン9を流れる電流によって生じる磁界とのばらつきが小さくなるので、これらの磁界を効率よく相殺させることができ、コモンモードのノイズを効率良く除去することができるからである。
【0029】
第1の絶縁体層3a、第2の絶縁体層3bおよび第3の絶縁体層3cの厚みの比較は、下記の方法により評価することができる。積層体5の下面と第1の導体パターン7との間に位置する絶縁体層3が、第1の絶縁体層3aであるので、この部分の厚みを測定することによって、第1の絶縁体層3aの厚みを評価することができる。また、積層方向に隣り合う第1の導体パターン7と第2の導体パターン9との間に位置する絶縁体層3が第2の絶縁体層3bであるので、この部分の厚みを測定することによって、第2の絶縁体層3bの厚みを評価することができる。さらに、積層体5の上面と第2の導体パターン9との間に位置する絶縁体層3が、第3の絶縁体層3cであるので、この部分の厚みを測定することによって、第3の絶縁体層3cの厚みを評価することができる。以上のようにして、測定された第1の絶縁体層3a、第2の絶縁体層3bおよび第3の絶縁体層3cの厚みを評価することができる。
【0030】
また、本実施形態の積層型電子部品1は、積層体5に埋設された第1の導体パターン7および第2の導体パターン9を有している。具体的には、第1の導体パターン7は、平面視した場合の形状が、外側から中心に向かって時計回りで回転しながら渦を巻くような渦巻き状であり、第1の絶縁体層3aと第2の絶縁体層3bとの間に配設されている。第2の導体パターン9は、平面視した場合の形状が、外側から中心に向かって時計回りで回転しながら渦を巻くような渦巻き状であり、第2の絶縁体層3bと第3の絶縁体層3cとの間に配設されている。
【0031】
このように、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9がそれぞれ渦巻き形状であることから、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9をそれぞれインダクタとして用いることができる。なお、本実施形態の第1の導体パターン7および第2の導体パターン9は、時計回りの渦巻き形状であるが、特にこれに限られるものではない。たとえば、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9が、それぞれ反時計回りの渦巻き形状であっても何ら問題ない。
【0032】
本実施形態の積層型電子部品においては、平面透視した場合に第1の導体パターン7と第2の導体パターン9とが重なり合っていない。本実施形態の積層型電子部品1においては、第2の導体パターン9の渦巻き形状の部分が第1の導体パターン7の渦巻き形状の部分に対して平面透視した場合に180度の回転対称となるように配設されている。
【0033】
第1の導体パターン7及び第2の導体パターン9の抵抗値を小さくして、より大きな電流を流すためには導体パターンの厚みを大きくすることが好ましいが、導体パターンの厚みを大きくした場合、積層型電子部品1の全体として導体パターンが重なっている部分の厚みが特に大きくなるので、内部にひずみが生じやすくなる。しかしながら、図1〜3に示すように、第1の導体パターン7の渦巻き方向と第2の導体パターン9の渦巻き方向とが同じ向きであって、平面透視した場合に第1の導体パターン7と第2の導体パターン9とが重なり合っていないことから、上記の厚みばらつきが生じることを抑制できる。
【0034】
第1の導体パターン7および第2の導体パターン9としては、導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体を第1の導体パターン7および第2の導体パターン9として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0035】
本実施形態の積層型電子部品1は、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9と外部電極13とを電気的に接続する第1のビア導体パターン11および接続導体23を有している。具体的には、第3の絶縁体層3cに形成された貫通孔に充填された接続導体23を介して第2の導体パターン9と外部電極13とが電気的に接続されており、第3の絶縁体層3cに形成された貫通孔に充填された接続導体23及び第2の絶縁体層3bに形成された貫通孔に充填された第1のビア導体パターン11を介して第2の導体パターン9と外部電極13とが電気的に接続されている。
【0036】
既に示した通り、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9は、いずれも外側から中心に向かって時計回りで回転しながら渦を巻くようにして形成されている。このような第1の導体パターン7および第2の導体パターン9がそれぞれ積層体5の上面に配設された外部導体13と電気的に接続されていることによって、第1の導体パターン7を流れる電流の回転方向と第2の導体パターン9を流れる電流の回転方向とを反転させることができる。
【0037】
結果、第1の導体パターン7に生じる磁界の向きと第2の導体パターン9に生じる磁界の向きとを反転させることができるので、積層型電子部品1の周囲に大きな磁界の漏れが生じる可能性を小さくすることができ、コモンモードのノイズを効率良く除去することができる。
【0038】
第1のビア導体パターン11及び接続導体23としては、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体を第1のビア導体パターン11として用いるこ
とができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0039】
外部電極13としては、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体を外部電極13として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0040】
また、外部電極13の積層体5から露出する表面には、メッキを形成することが好ましい。外部に露出する外部電極13が劣化することを抑制できるからである。また、リード端子などを介して外部電極13と外部配線(不図示)とを電気的に接続する場合には、外部電極13とリード端子との接合性を高めることができる。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキまたは錫めっきを用いることができる。一例として、外部電極13の積層体5から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0041】
次に、上記実施形態にかかる積層型電子部品1の製造方法について説明する。
【0042】
まず、積層体5を構成する絶縁体層3となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤ならびにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、絶縁材料、磁性材料等であり、例えば、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)および酸化硼素(B)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0043】
なお、第2の絶縁体層3bの厚みを第1の絶縁体層3aおよび第3の絶縁体層3cの厚みよりも薄くするためには、混合部材をシート状に成形する際に、第2の絶縁体層3bとなるセラミックグリーンシートを第1の絶縁体層3aおよび第3の絶縁体層3cとなるセラミックグリーンシートよりも厚みが薄くなるようにシート状に成形すればよい。また、単一の厚みのセラミックグリーンシートを成形するとともに、第1の絶縁体層3aおよび第3の絶縁体層3cとなる部分においては、このセラミックグリーンシートを複数枚積層することによって第2の絶縁体層3bの厚みを第1の絶縁体層3aおよび第3の絶縁体層3cの厚みよりも小さくしてもよい。
【0044】
また、第1のビア導体パターン11が充填される第2の絶縁体層3bの貫通孔に関しては、第2の絶縁体層3bとなるセラミックグリーンシートを焼成した後に貫通孔を形成してもよいが、セラミックグリーンシートにビアホールを形成することによって作成してもよい。
【0045】
また、接続導体23が充填される第1の絶縁体層3aの貫通孔及び第3の絶縁体層3cの貫通孔に関しても、例えば、セラミックグリーンシートにビアホールを形成することによって作成してもよい。
【0046】
次に、第1の導体パターン7、第2の導体パターン9、第1のビア導体パターン11及び接続導体23を形成する。具体的には、それぞれ第1の導体パターン7、第2の導体パターン9、第1のビア導体パターン11及び接続導体23となる第1の導体ペースト、第2の導体ペーストおよびビア導体ペーストを準備する。これらの導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金、白金、やニッケルのような金属材料粉末、絶縁材料との密着性を加
えるためのガラス質、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを用いることができる。なお、上記の金属材料は単一の材料を用いてもよいが、合金あるいは混合物を用いても何ら問題ない。
【0047】
このようにして作製された導体ペーストを用いて、上記のビアホールに第1のビア導体パターン11または接続導体23となるビア導体ペーストを配設する。また、第1の絶縁体層3aとなるセラミックグリーンシートの上面に第1の導体パターン7となる渦巻き形状の第1の導体ペーストを配設する。そして、第1の導体ペーストが上面に配設されたセラミックグリーンシートに、ビアホールにビア導体ペーストが充填されたセラミックグリーンシートを積層する。このとき、第1の導体パターン7の渦巻きの中心側に位置する端部がビア導体ペーストと接続されるように、第1の絶縁体層3aとなるセラミックグリーンシートと第2の絶縁体層3bとなるセラミックグリーンシートとの相対的な位置を調整して積層する。
【0048】
さらに、第2の絶縁体層3bとなるセラミックグリーンシートの上面に第2の導体パターン9となる渦巻き形状の第2の導体ペーストを配設する。このとき、第2の導体パターン9の渦巻きの中心側に位置する端部がビア導体ペーストと接続されるように第2の導体ペーストを配設する。このとき、第1の導体ペーストの渦巻き方向と第2の導体ペーストの渦巻き方向とが同じ向きになるように第1の導体ペーストおよび第2の導体ペーストが配設されることが肝要である。なお、セラミックグリーンシート上に第1の導体ペースト、第2の導体ペーストおよびビア導体ペーストを配設する方法としては、例えば、スクリーン印刷法を用いればよい。
【0049】
さらに、第2の導体ペーストが上面に配設されたセラミックグリーンシートに、第3の絶縁体層3cとなるセラミックグリーンシートを積層する。このようにして、本実施形態の積層型電子部品1となる生積層体が作製される。
【0050】
また、生積層体の表面であって第1の導体ペーストおよび第2の導体ペーストと接続されるように外部電極13となる第3の導体ペーストを配設してもよい。第3の導体ペーストとしては、第1の導体ペーストと同様に、例えば、銅、銀、金、白金、やニッケルのような金属材料粉末、絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを用いることができる。
【0051】
上記の通り作製された生積層体を焼成することによって本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0052】
また、上記の実施形態においては、生積層体の上面に第3の導体ペーストを配設しているが特にこれに限られるものではない。例えば、生積層体を焼成した後に、第1の導体パターン7および第2の導体パターン9と電気的に接続されるように焼成済みの積層体5の表面に外部電極13を配設してもよい。外部電極13を焼成済みの積層体5の表面に配設する方法としては、例えば、周知の蒸着またはスパッタリングの手法を用いればよい。
【0053】
また、外部電極13の積層体5から露出する表面にメッキを形成する場合には、焼成済みの積層体5の表面に配設された外部電極13にメッキを形成すればよい。具体的には、例えば、外部電極13の積層体5から露出する表面をニッケルメッキで被膜した後、さらにニッケルメッキの表面を金メッキで被膜すればよい。
【0054】
上記する構成を有する生積層体が複数併設された生積層体の集合体を形成してもよい。
このような生積層体の集合体を作製した後、それぞれの生積層体に分割するとともにそれぞれの生積層体を焼成することによって複数の積層型電子部品1を同時に作製することができる。また、上記する生積層体の集合体を同時焼成した後に、それぞれの積層型電子部品1に分割してもよい。
【0055】
次に、第2の実施形態の積層型電子部品1について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、第2の実施形態の積層型電子部品1は、第1の実施形態の積層型電子部品1と比較して、第1の実施形態の積層型電子部品1は、インダクタとして第1の導体パターン7および第2の導体パターン9を備えているが、本実施形態の積層型電子部品1はインダクタとしてさらに第3の導体パターン15および第4の導体パターン17を備えている。
【0057】
具体的には、本実施形態の積層型電子部品1において、積層体5は、複数の絶縁体層3として、第1の絶縁体層3a、第1の絶縁体層3aの上面に配設された第2の絶縁体層3b、第2の絶縁体層3bの上面に配設された第4の絶縁体層3d、第4の絶縁体層3dの上面に配設された第5の絶縁体層3eおよび第5の絶縁体層3eの上面に配設された第3の絶縁体層3cを備えている。
【0058】
そして、本実施形態の積層型電子部品1においては、積層方向に隣り合う導体パターンに挟まれた第2の絶縁体層3b、第2の絶縁体層3bの上面に配設された第4の絶縁体層3d及び第4の絶縁体層3dの上面に配設された第5の絶縁体層3eの厚みが、第1の絶縁体層3a及び第3の絶縁体層3cの厚みよりも小さい。
【0059】
このように、第1の導体パターン7と第2の導体パターン9との間及び第3の導体パターン15と第4の導体パターン17との間での磁界の重なりがそれぞれ大きいため、コモンモードのノイズを効率良く除去することができる。
【0060】
第3の導体パターン15は、平面視した場合の形状が渦巻き状であり、第3の絶縁体層3cと第4の絶縁体層3dとの間に配設されている。さらに、第4の導体パターン17は、平面視した場合の形状が渦巻き状であり、第4の絶縁体層3dと第5の絶縁体層3eとの間に配設されている。
【0061】
また、第1の導体パターン7と第3の導体パターン15とは、第2の絶縁体層3bに埋設された第2のビア導体パターン11及び第3の絶縁体層3cに埋設された第2のビア導体パターン19によって電気的に接続されている。さらに、第2の導体パターン9と第4の導体パターン17とは、第3の絶縁体層3cに埋設された第2のビア導体パターン19及び第4の絶縁体層3dに埋設された第3のビア導体パターン21によって電気的に接続されている。
【0062】
そして、第1の導体パターン7及び第2の導体パターン9、並びに、第3の導体パターン15および第4の導体パターン17の渦巻き方向がそれぞれ同じ向きであって、第1の導体パターン7および第3の導体パターン15を流れる電流の渦巻き方向と第2の導体パターン9および第4の導体パターン17を流れる電流の渦巻き方向とが逆向きである。
【0063】
このように、インダクタとして第1の導体パターン7および第2の導体パターン9だけでなく、さらに第3の導体パターン15および第4の導体パターン17を備えた多層型の電子部品としても何ら問題ない。特に、このとき、複数の導体パターンによって生じる磁
界を効率よく相殺させて、外部への磁界の漏れを抑制するためには、導体パターンが偶数個であることがより好ましい。
【0064】
上述の通り、本実施形態の積層型電子部品およびその製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0065】
1・・・積層型電子部品
3・・・絶縁体層
3a・・・第1の絶縁体層
3b・・・第2の絶縁体層
3c・・・第3の絶縁体層
3d・・・第4の絶縁体層
3e・・・第5の絶縁体層
5・・・積層体
7・・・第1の導体パターン
9・・・第2の導体パターン
11・・・第1のビア導体パターン
13・・・外部電極
15・・・第3の導体パターン
17・・・第4の導体パターン
19・・・第2のビア導体パターン
21・・・第3のビア導体パターン
23・・・接続導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁体層、該第1の絶縁体層の上面に配設された第2の絶縁体層、および該第2の絶縁体層の上面に配設された第3の絶縁体層を備えた積層体と、
前記第1の絶縁体層と前記第2の絶縁体層との間に配設された渦巻き状の第1の導体パターンと、
前記第2の絶縁体層と前記第3の絶縁体層との間に配設された渦巻き状の第2の導体パターンと、を有し、
前記第1の導体パターンの渦巻き方向と前記第2の導体パターンの渦巻き方向とが同じ向きであるとともに、前記第1の導体パターンを流れる電流の向きと前記第2の導体パターンを流れる電流の向きが逆方向であって、
平面透視した場合に前記第1の導体パターンが配設された領域と前記第2の導体パターンが配設された領域とが重なり合わないことを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第3の絶縁体層の上面に配設された渦巻き状の第3の導体パターンと、
前記第1の導体パターンと前記第3の導体パターンと、をさらに備え、
前記第1の導体パターンの渦巻き方向と前記第3の導体パターンの渦巻き方向とが同じ向きであることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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