積層成形体の成形装置
【目的】 樹脂芯材と表皮材とをモールドプレス成形用型内で一体成形する積層成形体の成形装置において、表皮材の成形性を高めるとともに、成形後の表皮材のシワ,たるみ等の外観不良を確実に防止することを目的とする。
【構成】 表皮材12をセットする上型40の周縁に設定されるサポートピン62,66の少なくとも一部のサポートピン62を可動式サポート枠61に取付けることにより、モールドプレス成形時、表皮材12に加わるテンションに応じてサポートピン62を可動させて、複雑な曲面形状に表皮材12を追従させるとともに、表皮材12に加わるテンションをほぼ均一に維持する。
【構成】 表皮材12をセットする上型40の周縁に設定されるサポートピン62,66の少なくとも一部のサポートピン62を可動式サポート枠61に取付けることにより、モールドプレス成形時、表皮材12に加わるテンションに応じてサポートピン62を可動させて、複雑な曲面形状に表皮材12を追従させるとともに、表皮材12に加わるテンションをほぼ均一に維持する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車用ドアトリム等の自動車用内装部品に好適な積層成形体の成形に使用する成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車の車体パネルに内装される自動車用ドアトリム,リヤコーナートリム等の自動車用内装部品の構成について、図10に示す自動車用ドアトリムを例示して説明すると、自動車用ドアトリム1は、所望の曲面形状を備えるように成形された樹脂芯材2と、この樹脂芯材2の表面側に積層一体化され、クッション性を備える表皮材3との積層成形体から構成されている。
【0003】そして、樹脂芯材2の成形方法としては、近時、造形上複雑な立体形状が要求されることから、成形性の優れたモールドプレス成形工法が多用される傾向にある。
【0004】この場合、工程を短縮化する意味合いから、樹脂芯材2のモールドプレス成形時に、表皮材3を樹脂芯材2に対して一体化している。
【0005】すなわち、図11に示すように、まず、モールドプレス成形用上型4のセットピン4aに表皮材3を予めセットしておき、モールドプレス成形用上型4を下降させて、上下型4,5間に所定クリアランスを維持した状態で、モールドプレス成形用下型5の型面上に、射出成形機6からホットランナ5a,このホットランナ5aから分岐する複数のゲート5bを通じて分配供給される樹脂材料7を上下型4,5を係合圧締めすることにより、所要形状にモールドプレス成形して樹脂芯材2を成形するとともに、この樹脂芯材2の表面側に表皮材3を一体化して図10に示す自動車用ドアトリム1が製品形状に成形されるというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように樹脂芯材2と表皮材3とをモールドプレス成形により一体プレス成形して積層成形品を成形する従来工法では、モールドプレス成形時、表皮材3が高展開形状に追従できず、表皮切れが生じ、切れた部分から樹脂がしみ出し、成形不良が多発するという欠点が指摘されている。
【0007】この対策として、表皮材3が高展開形状に沿うように成形途中で、セットピン4aから表皮材3の端末を外した場合、表皮材3に加わるテンションの不均一により、セットピン4aから外した箇所周辺の表皮材3にシワが発生するという不具合があった。
【0008】この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的とするところは、モールドプレス成形工法により、樹脂芯材と表皮材とを一体化した積層成形品の成形装置において、表皮材の成形性を高め、かつ成形後表皮材にシワ,凹凸等が発生するのを確実に防止して、意匠性の良好な積層成形体が成形できる成形装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、溶融樹脂を所要形状にモールドプレス成形して樹脂芯材を成形するとともに、この樹脂芯材のモールドプレス成形時、樹脂芯材と表皮材とを一体化してなる積層成形体の成形装置において、前記成形装置は、溶融樹脂が分配供給される所望の型面を備えたモールドプレス成形用下型と、所望の型面形状を備え、下型と係合可能なモールドプレス成形用上型と、上型の型面に表皮材を保持すべく、上型の周縁に設置されるサポートピンとを備え、少なくとも一辺側のサポートピンが表皮材からのテンションに応じて可動できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
【作用】以上の構成から明らかなように、表皮材の端末を保持するサポートピンの少なくとも一部が可動できるように構成されているため、モールドプレス成形時、金型の複雑な曲面形状に沿って表皮材が容易に追従する。
【0011】さらに、モールドプレス成形時、表皮材に加わるテンションに応じてサポートピンが可動するため、表皮材に加わるテンションがほぼ均一なものとなる。
【0012】
【実施例】以下、本発明による積層成形体の成形装置について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】図1は本発明による装置を使用して製作した自動車用ドアトリムを示す外観図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は本発明に係る成形装置の第1実施例の構成を示す全体図、図4ないし図8R>8は図3に示す成形装置を使用してドアトリムを製作する各工程を示す断面図、図9は本発明に係る成形装置の第2実施例の構成を示す要部断面図である。
【0014】図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、所要形状に成形された樹脂芯材11と、この樹脂芯材11の表面側に積層一体化された表皮材12とから大略構成されている。
【0015】さらに詳しくは、上記樹脂芯材11は、タルクを混入したポリプロピレン樹脂を使用し、所要の曲面形状を備えたモールドプレス成形用型内に溶融状態で分配供給した後、モールドプレス成形により複雑な曲面形状を備えた形状に成形されている。
【0016】そして、表皮材12としては、トップ層12a,発泡層12b,基布12cからなる積層シートが使用されており、トップ層12aとしてはPVCシートが、発泡層12bとしてはポリエチレンフォームが、基布12cとしてはポリエステル繊維不織布がそれぞれ使用されており、トップ層12aにより良好な表面外観、発泡層12bにより良好なクッション性能が得られるとともに、基布12cにより樹脂芯材11のモールドプレス成形時、発泡層12bに溶融樹脂の浸み出しを防止する機能をもつ。
【0017】次に、上述した自動車用ドアトリム10をモールドプレス成形する成形装置の構成について説明する。
【0018】図3に示すように、この成形装置20は、所望の型面を備えたモールドプレス成形用下型30と、この下型30の上方に位置し、ほぼ同一の型面を有するモールドプレス成形用上型40と、下型30に接続され、下型30の型面上の樹脂芯材11の素材である溶融樹脂を供給する材料供給機構50と、上型40に設置される表皮材12を均一なテンションで保持する表皮材のサポート機構60とから大略構成されている。
【0019】さらに詳しくは、材料供給機構50としては、下型30に射出成形機51が連結設置されており、射出成形機51のノズルから、下型30に穿設加工されたホットランナ31,複数のゲート32を通じて、溶融樹脂が下型30の型面上の所定箇所に分配供給されることになる。
【0020】次いで、下型30の上方に位置する上型40は、昇降用シリンダ41により上下動可能に構成されており、上型40の周縁部に沿って表皮材12のサポート機構60が設置されている。
【0021】そして、このサポート機構60の少なくとも一辺側には可動式サポート機構が採用されている。
【0022】すなわち、断面L字状のサポート枠61と、サポート枠61の端部に沿って所定間隔毎に設置される表皮材12を突き刺すサポートピン62と、サポート枠61のフランジ63に設けた貫通孔63aに,上型40の側面に固定した支持杆64を挿通させて、この支持杆64にスプリング65を巻装することにより、サポート枠61が図3中矢印方向に可動できるように構成されている。
【0023】なお、本実施例においては、可動式のサポートピン62を一辺側について採用し、上型40の残る3辺については、上型40の型面に固定式のサポートピン66を採用している。
【0024】上述した成形装置20を使用して、自動車用ドアトリム10のモールドプレス成形工程について説明する。
【0025】まず、図4に示すように、上型40に表皮材12を基布12cを下側に向けてセットする。
【0026】次いで、上型40が昇降シリンダ41の作動により下降して、上下型30,40の型間クリアランスが30mm前後で、上型40の下降動作が停止し、図5に示すように、射出成形機51のノズルを通じて溶融樹脂Mがホットランナ31,ゲート32を通じて下型30の型面上の所定箇所に分配供給される。
【0027】その後、上型40が再度下降し、図6に示すように、モールドプレス成形用上下型30,40の係合圧締めにより、樹脂芯材11が成形されるとともに、樹脂芯材11の表面側に表皮材12が一体化される。
【0028】このとき、表皮材12は、上下型30,40の型面形状に馴染むようにテンションが加わるが、可動式サポート機構60により、図7に示すように、サポート枠61が図中左方向に可動するため、表皮材12は型面形状に無理なく馴染むことができ、さらに表皮側12には無理なテンションが加わることがない。
【0029】そして、モールドプレス成形工程が完了すれば、上型40が上昇して、下型30に設置された図示しないエジェクト機構により、ドアトリム10の下側が矢印A方向にエジェクトされ、その後矢印B方向に下型30からドアトリム10を脱型した後、表皮材12の周縁部分を樹脂芯材11の裏面側に巻き込み処理すれば、図1,図2に示す自動車用ドアトリム10の製作が完了する。
【0030】このように、本発明による成形装置20を使用すれば、モールドプレス成形時、表皮材12に加わるテンションに応じてサポート機構60のサポート枠61がスプリング65のバネ圧に対して可動し、モールドプレス成形用上下型30,40の型形状が複雑な曲面形状であっても、表皮材12が型形状に容易に追従し、従来の表皮切れ等の不具合が生じることがないとともに、表皮材12には均一なテンションが加わるため、成形後シワ,凹凸等の外観不良も皆無となる。
【0031】したがって、本発明による成形装置20によれば、成形不良を未然に防止でき、表面外観が良好なドアトリム10を成形できる利点を備えているとともに、比較的伸び特性に劣る材質のものも使用でき、表皮材12の材料選択における自由度を飛躍的に向上させることができるという利点もある。
【0032】上述した実施例は、スプリング65のバネ圧を利用して、サポート枠61を可動できるように構成したものであるが、この他に、図9に示すように、上型40の側面にエアシリンダ67を取付け、このエアシリンダ67のピストンロッド67aにサポート枠61のフランジ63を固定するという構成のものでもよく、このエアシリンダ67のストローク量を金型形状および表皮材12の材質により予め設定しておけば、表皮材12はモールドプレス成形時における金型形状に確実に追従することができ、かつ表皮材には、ほぼ均一なテンションが加わることになり、上述実施例と同様の作用効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明による成形装置によれば、以下に記載する格別の作用効果を有する。
【0034】(1)表皮材の周縁部の少なくとも一部を可動式のサポートピンにより保持するというものであるから、樹脂芯材と表皮材とのモールドプレス成形時、表皮材にテンションが加われば、サポートピンが可動して、複雑な型面形状に表皮材が容易に追従するため、製品形状を複雑な立体形状に設定しても表皮材の切れや樹脂漏れ等が生じないため、製品の造形自由度を大幅に向上させ、かつ不良率を著しく低減させることができるという効果を有する。
【0035】(2)表皮材の周縁端末の少なくとも一辺側を可動式のサポートピンにより保持するというものであるから、このサポートピンが可動することにより表皮材に加わるテンションはほぼ均一なものとなり、モールドプレス成形後表皮材にシワ,たるみ,シボ不良等の外観不良が生じることがなく、意匠性の良好な積層成形体が得られるという効果を有する。
【0036】(3)表皮材の周縁部の少なくとも一部を可動式のサポートピンにより保持するというものであるから、比較的伸び特性の劣る材料を表皮材として適用できるため、表皮材における材料選択の自由度を大幅に向上させることができ、コストダウンを招来するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による装置を使用して製作された自動車用ドアトリムを示す外観図。
【図2】図1に示す自動車用ドアトリムの構成を示す断面図。
【図3】本発明に係る成形装置の一実施例の構成を示す全体図。
【図4】図3に示す成形装置における表皮材のセット状態を示す断面図。
【図5】図3に示す成形装置における溶融樹脂の供給工程を示す断面図。
【図6】図3に示す成形装置におけるモールドプレス成形工程を示す断面図。
【図7】図3に示す成形装置におけるサポートピンの作用を示す断面図。
【図8】図3に示す成形装置におけるモールドプレス成形後の成形品の脱型工程を示す断面図。
【図9】本発明に係る成形装置の第2実施例の構成を示す要部断面図。
【図10】従来の自動車用ドアトリムの一般構成を示す断面図。
【図11】従来のモールドプレス成形工法を示す断面図。
【符号の説明】
10 自動車用ドアトリム
11 樹脂芯材
12 表皮材
20 成形装置
30 モールドプレス成形用下型
40 モールドプレス成形用上型
50 材料供給機構
60 サポート機構
61 サポート枠
62,66 サポートピン
65 スプリング
67 エアシリンダ
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車用ドアトリム等の自動車用内装部品に好適な積層成形体の成形に使用する成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車の車体パネルに内装される自動車用ドアトリム,リヤコーナートリム等の自動車用内装部品の構成について、図10に示す自動車用ドアトリムを例示して説明すると、自動車用ドアトリム1は、所望の曲面形状を備えるように成形された樹脂芯材2と、この樹脂芯材2の表面側に積層一体化され、クッション性を備える表皮材3との積層成形体から構成されている。
【0003】そして、樹脂芯材2の成形方法としては、近時、造形上複雑な立体形状が要求されることから、成形性の優れたモールドプレス成形工法が多用される傾向にある。
【0004】この場合、工程を短縮化する意味合いから、樹脂芯材2のモールドプレス成形時に、表皮材3を樹脂芯材2に対して一体化している。
【0005】すなわち、図11に示すように、まず、モールドプレス成形用上型4のセットピン4aに表皮材3を予めセットしておき、モールドプレス成形用上型4を下降させて、上下型4,5間に所定クリアランスを維持した状態で、モールドプレス成形用下型5の型面上に、射出成形機6からホットランナ5a,このホットランナ5aから分岐する複数のゲート5bを通じて分配供給される樹脂材料7を上下型4,5を係合圧締めすることにより、所要形状にモールドプレス成形して樹脂芯材2を成形するとともに、この樹脂芯材2の表面側に表皮材3を一体化して図10に示す自動車用ドアトリム1が製品形状に成形されるというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように樹脂芯材2と表皮材3とをモールドプレス成形により一体プレス成形して積層成形品を成形する従来工法では、モールドプレス成形時、表皮材3が高展開形状に追従できず、表皮切れが生じ、切れた部分から樹脂がしみ出し、成形不良が多発するという欠点が指摘されている。
【0007】この対策として、表皮材3が高展開形状に沿うように成形途中で、セットピン4aから表皮材3の端末を外した場合、表皮材3に加わるテンションの不均一により、セットピン4aから外した箇所周辺の表皮材3にシワが発生するという不具合があった。
【0008】この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的とするところは、モールドプレス成形工法により、樹脂芯材と表皮材とを一体化した積層成形品の成形装置において、表皮材の成形性を高め、かつ成形後表皮材にシワ,凹凸等が発生するのを確実に防止して、意匠性の良好な積層成形体が成形できる成形装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、溶融樹脂を所要形状にモールドプレス成形して樹脂芯材を成形するとともに、この樹脂芯材のモールドプレス成形時、樹脂芯材と表皮材とを一体化してなる積層成形体の成形装置において、前記成形装置は、溶融樹脂が分配供給される所望の型面を備えたモールドプレス成形用下型と、所望の型面形状を備え、下型と係合可能なモールドプレス成形用上型と、上型の型面に表皮材を保持すべく、上型の周縁に設置されるサポートピンとを備え、少なくとも一辺側のサポートピンが表皮材からのテンションに応じて可動できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
【作用】以上の構成から明らかなように、表皮材の端末を保持するサポートピンの少なくとも一部が可動できるように構成されているため、モールドプレス成形時、金型の複雑な曲面形状に沿って表皮材が容易に追従する。
【0011】さらに、モールドプレス成形時、表皮材に加わるテンションに応じてサポートピンが可動するため、表皮材に加わるテンションがほぼ均一なものとなる。
【0012】
【実施例】以下、本発明による積層成形体の成形装置について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】図1は本発明による装置を使用して製作した自動車用ドアトリムを示す外観図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は本発明に係る成形装置の第1実施例の構成を示す全体図、図4ないし図8R>8は図3に示す成形装置を使用してドアトリムを製作する各工程を示す断面図、図9は本発明に係る成形装置の第2実施例の構成を示す要部断面図である。
【0014】図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、所要形状に成形された樹脂芯材11と、この樹脂芯材11の表面側に積層一体化された表皮材12とから大略構成されている。
【0015】さらに詳しくは、上記樹脂芯材11は、タルクを混入したポリプロピレン樹脂を使用し、所要の曲面形状を備えたモールドプレス成形用型内に溶融状態で分配供給した後、モールドプレス成形により複雑な曲面形状を備えた形状に成形されている。
【0016】そして、表皮材12としては、トップ層12a,発泡層12b,基布12cからなる積層シートが使用されており、トップ層12aとしてはPVCシートが、発泡層12bとしてはポリエチレンフォームが、基布12cとしてはポリエステル繊維不織布がそれぞれ使用されており、トップ層12aにより良好な表面外観、発泡層12bにより良好なクッション性能が得られるとともに、基布12cにより樹脂芯材11のモールドプレス成形時、発泡層12bに溶融樹脂の浸み出しを防止する機能をもつ。
【0017】次に、上述した自動車用ドアトリム10をモールドプレス成形する成形装置の構成について説明する。
【0018】図3に示すように、この成形装置20は、所望の型面を備えたモールドプレス成形用下型30と、この下型30の上方に位置し、ほぼ同一の型面を有するモールドプレス成形用上型40と、下型30に接続され、下型30の型面上の樹脂芯材11の素材である溶融樹脂を供給する材料供給機構50と、上型40に設置される表皮材12を均一なテンションで保持する表皮材のサポート機構60とから大略構成されている。
【0019】さらに詳しくは、材料供給機構50としては、下型30に射出成形機51が連結設置されており、射出成形機51のノズルから、下型30に穿設加工されたホットランナ31,複数のゲート32を通じて、溶融樹脂が下型30の型面上の所定箇所に分配供給されることになる。
【0020】次いで、下型30の上方に位置する上型40は、昇降用シリンダ41により上下動可能に構成されており、上型40の周縁部に沿って表皮材12のサポート機構60が設置されている。
【0021】そして、このサポート機構60の少なくとも一辺側には可動式サポート機構が採用されている。
【0022】すなわち、断面L字状のサポート枠61と、サポート枠61の端部に沿って所定間隔毎に設置される表皮材12を突き刺すサポートピン62と、サポート枠61のフランジ63に設けた貫通孔63aに,上型40の側面に固定した支持杆64を挿通させて、この支持杆64にスプリング65を巻装することにより、サポート枠61が図3中矢印方向に可動できるように構成されている。
【0023】なお、本実施例においては、可動式のサポートピン62を一辺側について採用し、上型40の残る3辺については、上型40の型面に固定式のサポートピン66を採用している。
【0024】上述した成形装置20を使用して、自動車用ドアトリム10のモールドプレス成形工程について説明する。
【0025】まず、図4に示すように、上型40に表皮材12を基布12cを下側に向けてセットする。
【0026】次いで、上型40が昇降シリンダ41の作動により下降して、上下型30,40の型間クリアランスが30mm前後で、上型40の下降動作が停止し、図5に示すように、射出成形機51のノズルを通じて溶融樹脂Mがホットランナ31,ゲート32を通じて下型30の型面上の所定箇所に分配供給される。
【0027】その後、上型40が再度下降し、図6に示すように、モールドプレス成形用上下型30,40の係合圧締めにより、樹脂芯材11が成形されるとともに、樹脂芯材11の表面側に表皮材12が一体化される。
【0028】このとき、表皮材12は、上下型30,40の型面形状に馴染むようにテンションが加わるが、可動式サポート機構60により、図7に示すように、サポート枠61が図中左方向に可動するため、表皮材12は型面形状に無理なく馴染むことができ、さらに表皮側12には無理なテンションが加わることがない。
【0029】そして、モールドプレス成形工程が完了すれば、上型40が上昇して、下型30に設置された図示しないエジェクト機構により、ドアトリム10の下側が矢印A方向にエジェクトされ、その後矢印B方向に下型30からドアトリム10を脱型した後、表皮材12の周縁部分を樹脂芯材11の裏面側に巻き込み処理すれば、図1,図2に示す自動車用ドアトリム10の製作が完了する。
【0030】このように、本発明による成形装置20を使用すれば、モールドプレス成形時、表皮材12に加わるテンションに応じてサポート機構60のサポート枠61がスプリング65のバネ圧に対して可動し、モールドプレス成形用上下型30,40の型形状が複雑な曲面形状であっても、表皮材12が型形状に容易に追従し、従来の表皮切れ等の不具合が生じることがないとともに、表皮材12には均一なテンションが加わるため、成形後シワ,凹凸等の外観不良も皆無となる。
【0031】したがって、本発明による成形装置20によれば、成形不良を未然に防止でき、表面外観が良好なドアトリム10を成形できる利点を備えているとともに、比較的伸び特性に劣る材質のものも使用でき、表皮材12の材料選択における自由度を飛躍的に向上させることができるという利点もある。
【0032】上述した実施例は、スプリング65のバネ圧を利用して、サポート枠61を可動できるように構成したものであるが、この他に、図9に示すように、上型40の側面にエアシリンダ67を取付け、このエアシリンダ67のピストンロッド67aにサポート枠61のフランジ63を固定するという構成のものでもよく、このエアシリンダ67のストローク量を金型形状および表皮材12の材質により予め設定しておけば、表皮材12はモールドプレス成形時における金型形状に確実に追従することができ、かつ表皮材には、ほぼ均一なテンションが加わることになり、上述実施例と同様の作用効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明による成形装置によれば、以下に記載する格別の作用効果を有する。
【0034】(1)表皮材の周縁部の少なくとも一部を可動式のサポートピンにより保持するというものであるから、樹脂芯材と表皮材とのモールドプレス成形時、表皮材にテンションが加われば、サポートピンが可動して、複雑な型面形状に表皮材が容易に追従するため、製品形状を複雑な立体形状に設定しても表皮材の切れや樹脂漏れ等が生じないため、製品の造形自由度を大幅に向上させ、かつ不良率を著しく低減させることができるという効果を有する。
【0035】(2)表皮材の周縁端末の少なくとも一辺側を可動式のサポートピンにより保持するというものであるから、このサポートピンが可動することにより表皮材に加わるテンションはほぼ均一なものとなり、モールドプレス成形後表皮材にシワ,たるみ,シボ不良等の外観不良が生じることがなく、意匠性の良好な積層成形体が得られるという効果を有する。
【0036】(3)表皮材の周縁部の少なくとも一部を可動式のサポートピンにより保持するというものであるから、比較的伸び特性の劣る材料を表皮材として適用できるため、表皮材における材料選択の自由度を大幅に向上させることができ、コストダウンを招来するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による装置を使用して製作された自動車用ドアトリムを示す外観図。
【図2】図1に示す自動車用ドアトリムの構成を示す断面図。
【図3】本発明に係る成形装置の一実施例の構成を示す全体図。
【図4】図3に示す成形装置における表皮材のセット状態を示す断面図。
【図5】図3に示す成形装置における溶融樹脂の供給工程を示す断面図。
【図6】図3に示す成形装置におけるモールドプレス成形工程を示す断面図。
【図7】図3に示す成形装置におけるサポートピンの作用を示す断面図。
【図8】図3に示す成形装置におけるモールドプレス成形後の成形品の脱型工程を示す断面図。
【図9】本発明に係る成形装置の第2実施例の構成を示す要部断面図。
【図10】従来の自動車用ドアトリムの一般構成を示す断面図。
【図11】従来のモールドプレス成形工法を示す断面図。
【符号の説明】
10 自動車用ドアトリム
11 樹脂芯材
12 表皮材
20 成形装置
30 モールドプレス成形用下型
40 モールドプレス成形用上型
50 材料供給機構
60 サポート機構
61 サポート枠
62,66 サポートピン
65 スプリング
67 エアシリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶融樹脂(M)を所要形状にモールドプレス成形して樹脂芯材(11)を成形するとともに、この樹脂芯材(11)のモールドプレス成形時、樹脂芯材(11)と表皮材(12)とを一体化してなる積層成形体の成形装置において、前記成形装置(20)は、溶融樹脂(M)が分配供給される所望の型面を備えたモールドプレス成形用下型(30)と、所望の型面形状を備え、下型(30)と係合可能なモールドプレス成形用上型(40)と、上型(40)の型面に表皮材(12)を保持すべく、上型(40)の周縁に設置されるサポートピン(62,66)とを備え、少なくとも一辺側のサポートピン(62)が表皮材(12)からのテンションに応じて可動できるようにしたことを特徴とする積層成形体の成形装置。
【請求項1】 溶融樹脂(M)を所要形状にモールドプレス成形して樹脂芯材(11)を成形するとともに、この樹脂芯材(11)のモールドプレス成形時、樹脂芯材(11)と表皮材(12)とを一体化してなる積層成形体の成形装置において、前記成形装置(20)は、溶融樹脂(M)が分配供給される所望の型面を備えたモールドプレス成形用下型(30)と、所望の型面形状を備え、下型(30)と係合可能なモールドプレス成形用上型(40)と、上型(40)の型面に表皮材(12)を保持すべく、上型(40)の周縁に設置されるサポートピン(62,66)とを備え、少なくとも一辺側のサポートピン(62)が表皮材(12)からのテンションに応じて可動できるようにしたことを特徴とする積層成形体の成形装置。
【図2】
【図7】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図6】
【図8】
【図7】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図6】
【図8】
【公開番号】特開平6−238695
【公開日】平成6年(1994)8月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−32186
【出願日】平成5年(1993)2月22日
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【公開日】平成6年(1994)8月30日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)2月22日
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
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