積層板及び成形体
【解決手段】積層板16,18においては、ガラス繊維を含む繊維マット7を有する本体11の表側に不織布の表面シート9を重ねて露出させ、その本体11内の空隙及び表面シート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させて本体11の表側に表面シート9を接着した。
【効果】積層板16,18の強度を高めることができるとともに、その本体11の繊維マット7の表側に重ねた表面シート9により手触りや外観を良くすることができる。しかも、その本体11の繊維マット7内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、表面シート9内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながるため、本体11の繊維マット7の表側に対する表面シート9の接着強度を高めて表面シート9の非剥離性を向上させることができる。
【効果】積層板16,18の強度を高めることができるとともに、その本体11の繊維マット7の表側に重ねた表面シート9により手触りや外観を良くすることができる。しかも、その本体11の繊維マット7内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、表面シート9内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながるため、本体11の繊維マット7の表側に対する表面シート9の接着強度を高めて表面シート9の非剥離性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維を含む繊維マットに熱可塑性樹脂を含浸させた積層板、並びに、その積層板を成形した成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1には、熱可塑性樹脂を含浸させて撓み強度を向上させた繊維マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1にかかる繊維マットの表側にはガラス繊維が露出しているため、手触りが悪くなっていた。そのような繊維マットの表側に不織布を重ねると、不織布により手触りや外観は良くなるが、繊維マットの表側から不織布が剥離し易くなる問題があった。
【0005】
この発明は、繊維マットを含む本体の表側に不織布などの表面シートを重ねて手触りや外観を良くした積層板及び成形体において、本体の表側に対する表面シートの接着強度を高めて表面シートの非剥離性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態(第1〜16実施形態)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる積層板(16,18)は、ガラス繊維を含む繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)の表側に不織布などの表面シート(9)を重ねて露出させたものであって、その本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させて本体(11)の表側に表面シート(9)を接着している。
【0007】
請求項1の発明では、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させたので、積層板(16,18)の強度を高めることができるとともに、本体(11)の表側に重ねた表面シート(9)により手触りや外観を良くすることができるばかりではなく、本体(11)内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、表面シート(9)内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながって本体(11)の表側に対する表面シート(9)の接着強度を高めることができる。
【0008】
請求項2の発明にかかる積層板(16)においては、ガラス繊維を含む繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)と不織布などの表面シート(9)と熱可塑性樹脂シ−ト(8,8a,8b)とを重ねた第一重合体(10)に対し加熱処理及び加圧処理を施すことにより、熱可塑性樹脂シ−ト(8,8a,8b)を溶融させてその本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させた第二重合体(13)を設け、その第二重合体(13)に対しさらに冷却処理及び加圧処理を施すことにより、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂を固化させて本体(11)の表側に表面シート(9)を接着した第三重合体(15)を有している。
【0009】
請求項2の発明では、前記第一重合体(10)から前記第二重合体(13)を経て前記第三重合体(15)を有する積層板(16)を容易に製造することができる。第三重合体(15)を有する積層板(16)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有するとともに、撓み強度を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる積層板(18)においては、前記第三重合体(15)に加熱処理を施すことにより、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂を溶融して本体(11)の繊維マット(7,7a,7b)が膨らみ、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が固化することにより、前記第三重合体(15)よりも厚みの大きい第四重合体(17)を有している。
【0011】
請求項3の発明では、前記第三重合体(15)から前記第四重合体(17)を有する積層板(18)を容易に製造することができる。第四重合体(17)を有する積層板(18)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有するばかりでなく、熱可塑性樹脂が含浸した不織布などの表面シート(9)に生じる薄膜と、熱可塑性樹脂が含浸した繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)に生じる多孔質部とが、相俟って入射音を減衰し、吸音性を高めることができる。
【0012】
請求項4の発明にかかる成形体(20)は、請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明にかかる積層板(16,18)を型成形した第五重合体(19)を有している。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明にかかる積層板(16,18)から前記第五重合体(19)を有する成形体(20)を容易に製造することができる。前記第五重合体(19)を有する成形体(20)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有する。第四重合体(17)を有する積層板(18)を型成形した第五重合体(19)を有する成形体(20)は、請求項3の発明の効果と同様に吸音性を高めることができる。
【0014】
請求項5の発明にかかる成形体(22)は、請求項3の発明にかかる積層板(18)の一部に冷却処理及び加圧処理を施すことにより、その積層板(18)を成形した第六重合体(21)を有し、この第六重合体(21)には前記第四重合体(17)に加えて前記第三重合体(15)も形成している。
【0015】
請求項5の発明では、前記第四重合体(17)を有する積層板(18)に前記第三重合体(15)も形成した前記第六重合体(21)を有する成形体(22)を容易に製造することができる。第三重合体(15)と第四重合体(17)とを有する成形体(22)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有するとともに、請求項3の発明の効果と同様に吸音性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)の表側に不織布などの表面シート(9)を重ねて手触りや外観を良くした積層板(16,18)及び成形体(20,22)において、本体(11)の表側に対する表面シート(9)の接着強度を高めて表面シート(9)の非剥離性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は第1実施形態の積層板に利用する繊維マットを製造する装置を概略的に示す側面図であり、(b)は第1実施形態の積層板を製造する装置を概略的に示す側面図である。
【図2】(a)は第1実施形態にかかる積層板の製造過程において第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は同じく第二重合体を概略的に示す断面図であり、(c)は同じく第三重合体を概略的に示す断面図であり、(d)は同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態の積層板を加工した第五重合体を有する成形体を概略的に示す斜視図であり、(b)は第1実施形態の積層板を加工した第六重合体を有する成形体を示す断面図である。
【図4】(a)は第1実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は第2実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(c)は第3実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(d)は第4実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(e)は第5実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(f)は第6実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図である。
【図5】(a)は第7実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は第8実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(c)は第9実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(d)は第10実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(e)は第11実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(f)は第12実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図である。
【図6】(a)は第13実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は第14実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図である。
【図7】(a)は第1,3,5,6実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図8】(a)は第2,4実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図9】(a)は第7,9,11,12実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図10】(a)は第8,10実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図11】(a)は第13実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図12】(a)は第14実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の第1実施形態について図1〜3を参照して説明する。
図1(a)に示すように、チョップガラス繊維容器1または連続ガラス繊維容器2から引き出されたガラス繊維は、チョップタイプ繰出し装置3からチョップドガラス繊維として、または、連続タイプ繰出し装置4から連続ガラス繊維として、それぞれ、ネットコンベア5に供給された後に、ニードルパンチ装置6で処理されて不織布の繊維マット7として搬出される。
【0019】
図1(b)に示すように、熱可塑性樹脂シート8が重ねられた一対の不織布の表面シート9と前記繊維マット7とがそれぞれ搬送されて、図2(a)に示す第一重合体10となる。その第一重合体10においては、一枚の繊維マット7からなる本体11の表側に一枚の表面シート9が両表面シート9間でその繊維マット7を挟むように重ねられ、さらにこの両表面シート9の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8が繊維マット7との間でその表面シート9を挟むように重ねられる。
【0020】
第一重合体10が加熱加圧ゾーン12を通過する際に加熱処理及び加圧処理されると、図2(b)に示すように、熱可塑性樹脂シ−ト8が溶融してその繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂が含浸された第二重合体13となる。第二重合体13が冷却加圧ゾーン14を通過する際に冷却処理及び加圧処理されると、図2(c)に示すように、繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が固化して繊維マット7の表側に両表面シート9が接着された第三重合体15である積層板16となる。積層板16において、表面シート9の厚みは図2(a)に示す第一重合体10の繊維マット7の厚みよりも小さくなっている。
【0021】
ちなみに、不織布の表面シート9は、例えば、ポリプロピレンやポリエステルやポリエチレンやナイロンやビニロンやレーヨンやアクリルやアラミドやポリ乳酸などから選択した一つの樹脂の繊維からなる。その樹脂繊維の軟化温度が熱可塑性樹脂シ−ト8の軟化温度よりも高いため、熱可塑性樹脂シ−ト8が溶融して繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂が含浸される際にも、表面シート9の形態を保つことができる。また、熱可塑性樹脂シート8は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルなどから選択した一つの樹脂により成形されている。
【0022】
前記第三重合体15である積層板16に加熱処理を施すと、図2(d)に示すように、繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂が溶融して繊維マット7が繊維のスプリングバックにより膨らむ。そのスプリングバックにより、繊維マット7内の空隙率よりも表面シート9内の空隙率が小さくなる。その後、繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が自然冷却により固化し、前記第三重合体15よりも厚みの大きい例えば二倍以上の厚みの第四重合体17である積層板18となる。積層板18において、表面シート9の厚みは図2(c)に示す繊維マット7の厚みよりも大きくなっている。
【0023】
図3(a)に示すように、第三重合体15または第四重合体17である積層板16,18を金型にセットして成形すると、第五重合体19である成形体20となる。
図3(b)に示すように、第四重合体17である積層板18に成形枠セットして、第四重合体17である積層板18の一部、例えば積層板18の外周縁全体に加熱処理及び加圧処理を施すと、台板部としての第四重合体17の外周縁全体に第三重合体15がその台板部の縁板部として成形された第六重合体21である成形体22となる。
【0024】
なお、前記積層板16,18や成形体20,22については、表面シート9の色や模様などに変化を持たて装飾性を高めることができる。
次に、第2〜16実施形態を第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0025】
図4(b)に示す第2実施形態の第一重合体10においては、図2(a)及び図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0026】
図4(c)に示す第3実施形態の第一重合体10においては、一枚の繊維マット7(本体11)の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8が両熱可塑性樹脂シ−ト8間でその繊維マット7を挟むように重ねられ、さらにこの両熱可塑性樹脂シ−ト8の表側に一枚の表面シート9が繊維マット7との間でその熱可塑性樹脂シ−ト8を挟むように重ねられる。
【0027】
図4(d)に示す第4実施形態の第一重合体10においては、図4(c)に示す第3実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0028】
図4(e)に示す第5実施形態の第一重合体10においては、図2(a)及び図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における熱可塑性樹脂シ−ト8が、互いに重ねられた二枚の熱可塑性樹脂シ−ト8a,8bからなり、一方の熱可塑性樹脂シ−ト8aの材質と他方の熱可塑性樹脂シ−ト8bの材質とが互いに異なる。例えば、一方の熱可塑性樹脂シ−ト8aはポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルなどから選択した一つの樹脂により成形され、他方の熱可塑性樹脂シ−ト8bはポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルやポリカーボネートやポリ塩化ビニルやポリスチレンやABS樹脂などから選択した一つの樹脂により成形されている。
【0029】
図4(f)に示す第6実施形態の第一重合体10においては、図4(c)に示す第3実施形態の第一重合体10における両表面シート9の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8c(熱可塑性樹脂フィルム)が重ねられる。例えば、熱可塑性樹脂シ−ト8c(熱可塑性樹脂フィルム)は、ポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルやポリカーボネートやポリ塩化ビニルやポリスチレンやABS樹脂などから選択した一つの樹脂により成形されている。
【0030】
図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10においては、図2(a)及び図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における本体11が、二枚の繊維マット7とそれらの間に挟まれた一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8とからなる。
【0031】
図5(b)に示す第8実施形態の第一重合体10においては、図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0032】
図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10においては、図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10における本体11の繊維マット7の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8が両熱可塑性樹脂シ−ト8間でその本体11を挟むように重ねられ、さらにこの両熱可塑性樹脂シ−ト8の表側に一枚の表面シート9が本体11の繊維マット7との間でその熱可塑性樹脂シ−ト8を挟むように重ねられる。
【0033】
図5(d)に示す第10実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0034】
図5(e)に示す第11実施形態の第一重合体10においては、図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10における表側の熱可塑性樹脂シ−ト8が、互いに重ねられた二枚の熱可塑性樹脂シ−ト8a,8bからなり、一方の熱可塑性樹脂シ−ト8aの材質と他方の熱可塑性樹脂シ−ト8bの材質とが互いに異なる。
【0035】
図5(f)に示す第12実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における両表面シート9の表側に熱可塑性樹脂シ−ト8c(熱可塑性樹脂フィルム)が重ねられる。
【0036】
図6(a)に示す第13実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における本体11が、互いに重ねられた三枚の繊維マット7a,7b,7aを一組とするマット群からなり、両繊維マット7aの材質と両繊維マット7a間の繊維マット7bの材質とが互いに異なる。例えば、両繊維マット7a間の繊維マット7bは第1実施形態と同様にチョップドガラス繊維や連続ガラス繊維からなる不織布であり、両繊維マット7aはその不織布のガラス繊維に対しガラス繊維以外例えば織物などを混ぜたりしたものである。
【0037】
図6(b)に示す第14実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における本体11が、互いに重ねられた二枚の繊維マット7a,7bを一組とする一対のマット群と、その両マット群間に挟まれた一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8とからなり、一組の両繊維マット7a,7bのうち熱可塑性樹脂シ−ト8に重ねられた一方の繊維マット7aの材質と他方の繊維マット7bの材質とが互いに異なる。
【0038】
図7(a)に示す第3,5,6実施形態の第三重合体15(積層板16)は、図2(b)及び図7(a)に示す第1実施形態の第三重合体15(積層板16)と同様である。図7(b)に示す第3,5,6実施形態の第四重合体17(積層板18)は、図2(c)及び図7(b)に示す第1実施形態の第四重合体17(積層板18)と同様である。
【0039】
図8(a)に示す第2,4実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図8(b)に示す第2,4実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(一枚の繊維マット7)の表側に一枚の表面シート9が重ねられている。
【0040】
図9(a)に示す第7,9,11,12実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図9(b)に示す第7,9,11,12実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(二枚の繊維マット7)の表側に二枚の表面シート9が重ねられている。
【0041】
図10(a)に示す第8,10実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図10(b)に示す第8,10実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(二枚の繊維マット7)の表側に一枚の表面シート9が重ねられている。
【0042】
図11(a)に示す第13実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図11(b)に示す第13実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(三枚の繊維マット7a,7b,7a)の表側に二枚の表面シート9が重ねられている。
【0043】
図12(a)に示す第14実施形態のび第三重合体15(積層板16)と、図12(b)に示す第14実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(四枚の繊維マット7a,7b,7b,7a)の表側に二枚の表面シート9が重ねられている。
【0044】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 積層板16,18及び成形体20,22において、ガラス繊維を主体とする繊維マット7,7a,7bを主体とする本体11内の空隙と、不織布の表面シート9内の空隙とにそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させたので、積層板16,18及び成形体20,22の強度を高めることができるとともに、その本体11の繊維マット7,7a,7bの表側に重ねた表面シート9により手触りや外観を良くすることができる。しかも、その本体11の繊維マット7,7a,7b内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、表面シート9内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながるため、本体11の繊維マット7,7a,7bの表側に対する表面シート9の接着強度を高めて表面シート9の非剥離性を向上させることができる。
【0045】
(2) 積層板18において、熱可塑性樹脂が含浸した不織布の表面シート9には薄膜や微細穴が生じるため、その表面シート9に衝突した入射音が薄膜を振動させたり微細穴を通過したりする際に生じるエネルギー変換作用により、主に入射音の低周波域を減衰する。また、積層板18において、熱可塑性樹脂が含浸した繊維マット7,7a,7bを有する本体11に多孔質部が生じるため、表面シート9を通過した入射音がその多孔質部を通過する際に生じるエネルギー変換作用により、主に入射音の中周波域や高周波域を減衰する。従って、積層板18の吸音性を高めることができる。そのような積層板18を利用して成形された成形体20,22についても同様に吸音性を高めることができる。
【0046】
(3) 積層板16(第三重合体15)は積層板18(第四重合体17)と比較して撓み強度を高めることができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0047】
・ 不織布の繊維マット7,7a,7bとしては、ガラス繊維(無機繊維)のみにより構成したり、ガラス繊維(無機繊維)以外にカーボン繊維(無機繊維)や樹脂繊維や天然繊維や金属繊維やパルプ繊維などを混ぜて構成したりしてもよく、また、不織布以外に織物や編物であってもよい。
【0048】
・ 本体11としては、繊維マット7,7a,7bのみにより構成したり、繊維マット7,7a,7b以外の材質のマットを繊維マット7,7a,7bに重ねて構成したりしてもよい。
【0049】
・ 表面シート9としては、樹脂繊維の不織布以外に、ガラス繊維(無機繊維)やカーボン繊維(無機繊維)や天然繊維や金属繊維やパルプ繊維などの不織布であってもよく、また、不織布以外に織物や編物であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
7,7a,7b…繊維マット、8,8a,8b,8c…熱可塑性樹脂シ−ト、9…表面シート、10…第一重合体、11…本体、13…第二重合体、15…第三重合体、16…積層板、17…第四重合体、18…積層板、19…第五重合体、20…成形体、21…第六重合体、22…成形体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維を含む繊維マットに熱可塑性樹脂を含浸させた積層板、並びに、その積層板を成形した成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1には、熱可塑性樹脂を含浸させて撓み強度を向上させた繊維マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1にかかる繊維マットの表側にはガラス繊維が露出しているため、手触りが悪くなっていた。そのような繊維マットの表側に不織布を重ねると、不織布により手触りや外観は良くなるが、繊維マットの表側から不織布が剥離し易くなる問題があった。
【0005】
この発明は、繊維マットを含む本体の表側に不織布などの表面シートを重ねて手触りや外観を良くした積層板及び成形体において、本体の表側に対する表面シートの接着強度を高めて表面シートの非剥離性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態(第1〜16実施形態)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる積層板(16,18)は、ガラス繊維を含む繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)の表側に不織布などの表面シート(9)を重ねて露出させたものであって、その本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させて本体(11)の表側に表面シート(9)を接着している。
【0007】
請求項1の発明では、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させたので、積層板(16,18)の強度を高めることができるとともに、本体(11)の表側に重ねた表面シート(9)により手触りや外観を良くすることができるばかりではなく、本体(11)内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、表面シート(9)内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながって本体(11)の表側に対する表面シート(9)の接着強度を高めることができる。
【0008】
請求項2の発明にかかる積層板(16)においては、ガラス繊維を含む繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)と不織布などの表面シート(9)と熱可塑性樹脂シ−ト(8,8a,8b)とを重ねた第一重合体(10)に対し加熱処理及び加圧処理を施すことにより、熱可塑性樹脂シ−ト(8,8a,8b)を溶融させてその本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させた第二重合体(13)を設け、その第二重合体(13)に対しさらに冷却処理及び加圧処理を施すことにより、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂を固化させて本体(11)の表側に表面シート(9)を接着した第三重合体(15)を有している。
【0009】
請求項2の発明では、前記第一重合体(10)から前記第二重合体(13)を経て前記第三重合体(15)を有する積層板(16)を容易に製造することができる。第三重合体(15)を有する積層板(16)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有するとともに、撓み強度を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる積層板(18)においては、前記第三重合体(15)に加熱処理を施すことにより、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂を溶融して本体(11)の繊維マット(7,7a,7b)が膨らみ、本体(11)内の空隙及び表面シート(9)内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が固化することにより、前記第三重合体(15)よりも厚みの大きい第四重合体(17)を有している。
【0011】
請求項3の発明では、前記第三重合体(15)から前記第四重合体(17)を有する積層板(18)を容易に製造することができる。第四重合体(17)を有する積層板(18)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有するばかりでなく、熱可塑性樹脂が含浸した不織布などの表面シート(9)に生じる薄膜と、熱可塑性樹脂が含浸した繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)に生じる多孔質部とが、相俟って入射音を減衰し、吸音性を高めることができる。
【0012】
請求項4の発明にかかる成形体(20)は、請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明にかかる積層板(16,18)を型成形した第五重合体(19)を有している。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明にかかる積層板(16,18)から前記第五重合体(19)を有する成形体(20)を容易に製造することができる。前記第五重合体(19)を有する成形体(20)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有する。第四重合体(17)を有する積層板(18)を型成形した第五重合体(19)を有する成形体(20)は、請求項3の発明の効果と同様に吸音性を高めることができる。
【0014】
請求項5の発明にかかる成形体(22)は、請求項3の発明にかかる積層板(18)の一部に冷却処理及び加圧処理を施すことにより、その積層板(18)を成形した第六重合体(21)を有し、この第六重合体(21)には前記第四重合体(17)に加えて前記第三重合体(15)も形成している。
【0015】
請求項5の発明では、前記第四重合体(17)を有する積層板(18)に前記第三重合体(15)も形成した前記第六重合体(21)を有する成形体(22)を容易に製造することができる。第三重合体(15)と第四重合体(17)とを有する成形体(22)は、請求項1の発明の効果と同様な効果を有するとともに、請求項3の発明の効果と同様に吸音性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、繊維マット(7,7a,7b)を有する本体(11)の表側に不織布などの表面シート(9)を重ねて手触りや外観を良くした積層板(16,18)及び成形体(20,22)において、本体(11)の表側に対する表面シート(9)の接着強度を高めて表面シート(9)の非剥離性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は第1実施形態の積層板に利用する繊維マットを製造する装置を概略的に示す側面図であり、(b)は第1実施形態の積層板を製造する装置を概略的に示す側面図である。
【図2】(a)は第1実施形態にかかる積層板の製造過程において第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は同じく第二重合体を概略的に示す断面図であり、(c)は同じく第三重合体を概略的に示す断面図であり、(d)は同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態の積層板を加工した第五重合体を有する成形体を概略的に示す斜視図であり、(b)は第1実施形態の積層板を加工した第六重合体を有する成形体を示す断面図である。
【図4】(a)は第1実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は第2実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(c)は第3実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(d)は第4実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(e)は第5実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(f)は第6実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図である。
【図5】(a)は第7実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は第8実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(c)は第9実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(d)は第10実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(e)は第11実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(f)は第12実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図である。
【図6】(a)は第13実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図であり、(b)は第14実施形態の第一重合体を概略的に示す断面図である。
【図7】(a)は第1,3,5,6実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図8】(a)は第2,4実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図9】(a)は第7,9,11,12実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図10】(a)は第8,10実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図11】(a)は第13実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【図12】(a)は第14実施形態にかかる第二重合体及び第三重合体を概略的に示す断面図であり、(b)同じく第四重合体を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の第1実施形態について図1〜3を参照して説明する。
図1(a)に示すように、チョップガラス繊維容器1または連続ガラス繊維容器2から引き出されたガラス繊維は、チョップタイプ繰出し装置3からチョップドガラス繊維として、または、連続タイプ繰出し装置4から連続ガラス繊維として、それぞれ、ネットコンベア5に供給された後に、ニードルパンチ装置6で処理されて不織布の繊維マット7として搬出される。
【0019】
図1(b)に示すように、熱可塑性樹脂シート8が重ねられた一対の不織布の表面シート9と前記繊維マット7とがそれぞれ搬送されて、図2(a)に示す第一重合体10となる。その第一重合体10においては、一枚の繊維マット7からなる本体11の表側に一枚の表面シート9が両表面シート9間でその繊維マット7を挟むように重ねられ、さらにこの両表面シート9の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8が繊維マット7との間でその表面シート9を挟むように重ねられる。
【0020】
第一重合体10が加熱加圧ゾーン12を通過する際に加熱処理及び加圧処理されると、図2(b)に示すように、熱可塑性樹脂シ−ト8が溶融してその繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂が含浸された第二重合体13となる。第二重合体13が冷却加圧ゾーン14を通過する際に冷却処理及び加圧処理されると、図2(c)に示すように、繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が固化して繊維マット7の表側に両表面シート9が接着された第三重合体15である積層板16となる。積層板16において、表面シート9の厚みは図2(a)に示す第一重合体10の繊維マット7の厚みよりも小さくなっている。
【0021】
ちなみに、不織布の表面シート9は、例えば、ポリプロピレンやポリエステルやポリエチレンやナイロンやビニロンやレーヨンやアクリルやアラミドやポリ乳酸などから選択した一つの樹脂の繊維からなる。その樹脂繊維の軟化温度が熱可塑性樹脂シ−ト8の軟化温度よりも高いため、熱可塑性樹脂シ−ト8が溶融して繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂が含浸される際にも、表面シート9の形態を保つことができる。また、熱可塑性樹脂シート8は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルなどから選択した一つの樹脂により成形されている。
【0022】
前記第三重合体15である積層板16に加熱処理を施すと、図2(d)に示すように、繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂が溶融して繊維マット7が繊維のスプリングバックにより膨らむ。そのスプリングバックにより、繊維マット7内の空隙率よりも表面シート9内の空隙率が小さくなる。その後、繊維マット7内の空隙及び表面シート9内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が自然冷却により固化し、前記第三重合体15よりも厚みの大きい例えば二倍以上の厚みの第四重合体17である積層板18となる。積層板18において、表面シート9の厚みは図2(c)に示す繊維マット7の厚みよりも大きくなっている。
【0023】
図3(a)に示すように、第三重合体15または第四重合体17である積層板16,18を金型にセットして成形すると、第五重合体19である成形体20となる。
図3(b)に示すように、第四重合体17である積層板18に成形枠セットして、第四重合体17である積層板18の一部、例えば積層板18の外周縁全体に加熱処理及び加圧処理を施すと、台板部としての第四重合体17の外周縁全体に第三重合体15がその台板部の縁板部として成形された第六重合体21である成形体22となる。
【0024】
なお、前記積層板16,18や成形体20,22については、表面シート9の色や模様などに変化を持たて装飾性を高めることができる。
次に、第2〜16実施形態を第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0025】
図4(b)に示す第2実施形態の第一重合体10においては、図2(a)及び図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0026】
図4(c)に示す第3実施形態の第一重合体10においては、一枚の繊維マット7(本体11)の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8が両熱可塑性樹脂シ−ト8間でその繊維マット7を挟むように重ねられ、さらにこの両熱可塑性樹脂シ−ト8の表側に一枚の表面シート9が繊維マット7との間でその熱可塑性樹脂シ−ト8を挟むように重ねられる。
【0027】
図4(d)に示す第4実施形態の第一重合体10においては、図4(c)に示す第3実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0028】
図4(e)に示す第5実施形態の第一重合体10においては、図2(a)及び図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における熱可塑性樹脂シ−ト8が、互いに重ねられた二枚の熱可塑性樹脂シ−ト8a,8bからなり、一方の熱可塑性樹脂シ−ト8aの材質と他方の熱可塑性樹脂シ−ト8bの材質とが互いに異なる。例えば、一方の熱可塑性樹脂シ−ト8aはポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルなどから選択した一つの樹脂により成形され、他方の熱可塑性樹脂シ−ト8bはポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルやポリカーボネートやポリ塩化ビニルやポリスチレンやABS樹脂などから選択した一つの樹脂により成形されている。
【0029】
図4(f)に示す第6実施形態の第一重合体10においては、図4(c)に示す第3実施形態の第一重合体10における両表面シート9の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8c(熱可塑性樹脂フィルム)が重ねられる。例えば、熱可塑性樹脂シ−ト8c(熱可塑性樹脂フィルム)は、ポリプロピレンやポリエチレンやポリアミドやポリエステルやポリカーボネートやポリ塩化ビニルやポリスチレンやABS樹脂などから選択した一つの樹脂により成形されている。
【0030】
図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10においては、図2(a)及び図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における本体11が、二枚の繊維マット7とそれらの間に挟まれた一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8とからなる。
【0031】
図5(b)に示す第8実施形態の第一重合体10においては、図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0032】
図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10においては、図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10における本体11の繊維マット7の表側に一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8が両熱可塑性樹脂シ−ト8間でその本体11を挟むように重ねられ、さらにこの両熱可塑性樹脂シ−ト8の表側に一枚の表面シート9が本体11の繊維マット7との間でその熱可塑性樹脂シ−ト8を挟むように重ねられる。
【0033】
図5(d)に示す第10実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における両表面シート9のうち一方の表面シート9が省略されている。
【0034】
図5(e)に示す第11実施形態の第一重合体10においては、図5(a)に示す第7実施形態の第一重合体10における表側の熱可塑性樹脂シ−ト8が、互いに重ねられた二枚の熱可塑性樹脂シ−ト8a,8bからなり、一方の熱可塑性樹脂シ−ト8aの材質と他方の熱可塑性樹脂シ−ト8bの材質とが互いに異なる。
【0035】
図5(f)に示す第12実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における両表面シート9の表側に熱可塑性樹脂シ−ト8c(熱可塑性樹脂フィルム)が重ねられる。
【0036】
図6(a)に示す第13実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における本体11が、互いに重ねられた三枚の繊維マット7a,7b,7aを一組とするマット群からなり、両繊維マット7aの材質と両繊維マット7a間の繊維マット7bの材質とが互いに異なる。例えば、両繊維マット7a間の繊維マット7bは第1実施形態と同様にチョップドガラス繊維や連続ガラス繊維からなる不織布であり、両繊維マット7aはその不織布のガラス繊維に対しガラス繊維以外例えば織物などを混ぜたりしたものである。
【0037】
図6(b)に示す第14実施形態の第一重合体10においては、図5(c)に示す第9実施形態の第一重合体10における本体11が、互いに重ねられた二枚の繊維マット7a,7bを一組とする一対のマット群と、その両マット群間に挟まれた一枚の熱可塑性樹脂シ−ト8とからなり、一組の両繊維マット7a,7bのうち熱可塑性樹脂シ−ト8に重ねられた一方の繊維マット7aの材質と他方の繊維マット7bの材質とが互いに異なる。
【0038】
図7(a)に示す第3,5,6実施形態の第三重合体15(積層板16)は、図2(b)及び図7(a)に示す第1実施形態の第三重合体15(積層板16)と同様である。図7(b)に示す第3,5,6実施形態の第四重合体17(積層板18)は、図2(c)及び図7(b)に示す第1実施形態の第四重合体17(積層板18)と同様である。
【0039】
図8(a)に示す第2,4実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図8(b)に示す第2,4実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(一枚の繊維マット7)の表側に一枚の表面シート9が重ねられている。
【0040】
図9(a)に示す第7,9,11,12実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図9(b)に示す第7,9,11,12実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(二枚の繊維マット7)の表側に二枚の表面シート9が重ねられている。
【0041】
図10(a)に示す第8,10実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図10(b)に示す第8,10実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(二枚の繊維マット7)の表側に一枚の表面シート9が重ねられている。
【0042】
図11(a)に示す第13実施形態の第三重合体15(積層板16)と、図11(b)に示す第13実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(三枚の繊維マット7a,7b,7a)の表側に二枚の表面シート9が重ねられている。
【0043】
図12(a)に示す第14実施形態のび第三重合体15(積層板16)と、図12(b)に示す第14実施形態の第四重合体17(積層板18)とは、本体11(四枚の繊維マット7a,7b,7b,7a)の表側に二枚の表面シート9が重ねられている。
【0044】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 積層板16,18及び成形体20,22において、ガラス繊維を主体とする繊維マット7,7a,7bを主体とする本体11内の空隙と、不織布の表面シート9内の空隙とにそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させたので、積層板16,18及び成形体20,22の強度を高めることができるとともに、その本体11の繊維マット7,7a,7bの表側に重ねた表面シート9により手触りや外観を良くすることができる。しかも、その本体11の繊維マット7,7a,7b内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、表面シート9内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながるため、本体11の繊維マット7,7a,7bの表側に対する表面シート9の接着強度を高めて表面シート9の非剥離性を向上させることができる。
【0045】
(2) 積層板18において、熱可塑性樹脂が含浸した不織布の表面シート9には薄膜や微細穴が生じるため、その表面シート9に衝突した入射音が薄膜を振動させたり微細穴を通過したりする際に生じるエネルギー変換作用により、主に入射音の低周波域を減衰する。また、積層板18において、熱可塑性樹脂が含浸した繊維マット7,7a,7bを有する本体11に多孔質部が生じるため、表面シート9を通過した入射音がその多孔質部を通過する際に生じるエネルギー変換作用により、主に入射音の中周波域や高周波域を減衰する。従って、積層板18の吸音性を高めることができる。そのような積層板18を利用して成形された成形体20,22についても同様に吸音性を高めることができる。
【0046】
(3) 積層板16(第三重合体15)は積層板18(第四重合体17)と比較して撓み強度を高めることができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0047】
・ 不織布の繊維マット7,7a,7bとしては、ガラス繊維(無機繊維)のみにより構成したり、ガラス繊維(無機繊維)以外にカーボン繊維(無機繊維)や樹脂繊維や天然繊維や金属繊維やパルプ繊維などを混ぜて構成したりしてもよく、また、不織布以外に織物や編物であってもよい。
【0048】
・ 本体11としては、繊維マット7,7a,7bのみにより構成したり、繊維マット7,7a,7b以外の材質のマットを繊維マット7,7a,7bに重ねて構成したりしてもよい。
【0049】
・ 表面シート9としては、樹脂繊維の不織布以外に、ガラス繊維(無機繊維)やカーボン繊維(無機繊維)や天然繊維や金属繊維やパルプ繊維などの不織布であってもよく、また、不織布以外に織物や編物であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
7,7a,7b…繊維マット、8,8a,8b,8c…熱可塑性樹脂シ−ト、9…表面シート、10…第一重合体、11…本体、13…第二重合体、15…第三重合体、16…積層板、17…第四重合体、18…積層板、19…第五重合体、20…成形体、21…第六重合体、22…成形体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体の表側に表面シートを重ねて露出させ、その本体内の空隙及び表面シート内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させて本体の表側に表面シートを接着したことを特徴とする積層板。
【請求項2】
ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体と表面シートと熱可塑性樹脂シ−トとを重ねた第一重合体に対し加熱処理及び加圧処理を施すことにより、熱可塑性樹脂シ−トを溶融させてその本体内の空隙及び表面シート内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させた第二重合体を設け、その第二重合体に対しさらに冷却処理及び加圧処理を施すことにより、本体内の空隙及び表面シート内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂を固化させて本体の表側に表面シートを接着した第三重合体を有することを特徴とする積層板。
【請求項3】
前記第三重合体に加熱処理を施すことにより、本体内の空隙及び表面シート内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂を溶融して本体の繊維マットが膨らみ、本体内の空隙及び表面シート内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が固化することにより、前記第三重合体よりも厚みの大きい第四重合体を有することを特徴とする請求項2に記載の積層板。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項に記載の積層板を型成形した第五重合体を有することを特徴とする成形体。
【請求項5】
請求項3に記載の積層板の一部に加熱処理及び加圧処理を施すことにより、その積層板を成形した第六重合体を有し、この第六重合体には前記第四重合体に加えて前記第三重合体も形成したことを特徴とする成形体。
【請求項1】
ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体の表側に表面シートを重ねて露出させ、その本体内の空隙及び表面シート内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させて本体の表側に表面シートを接着したことを特徴とする積層板。
【請求項2】
ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体と表面シートと熱可塑性樹脂シ−トとを重ねた第一重合体に対し加熱処理及び加圧処理を施すことにより、熱可塑性樹脂シ−トを溶融させてその本体内の空隙及び表面シート内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させた第二重合体を設け、その第二重合体に対しさらに冷却処理及び加圧処理を施すことにより、本体内の空隙及び表面シート内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂を固化させて本体の表側に表面シートを接着した第三重合体を有することを特徴とする積層板。
【請求項3】
前記第三重合体に加熱処理を施すことにより、本体内の空隙及び表面シート内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂を溶融して本体の繊維マットが膨らみ、本体内の空隙及び表面シート内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が固化することにより、前記第三重合体よりも厚みの大きい第四重合体を有することを特徴とする請求項2に記載の積層板。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項に記載の積層板を型成形した第五重合体を有することを特徴とする成形体。
【請求項5】
請求項3に記載の積層板の一部に加熱処理及び加圧処理を施すことにより、その積層板を成形した第六重合体を有し、この第六重合体には前記第四重合体に加えて前記第三重合体も形成したことを特徴とする成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−152982(P2012−152982A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13164(P2011−13164)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(500003453)クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン 株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(500003453)クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン 株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]