説明

積層構造体

【課題】 本発明は、合成樹脂を主材料とする積層構造体を利用した、第三者には分り難い、あるいは模倣し難い方法の隠し文字や図柄による、模倣品に係る判別機能を創出することを課題とするものである。
【解決手段】 積層構造体において、2つの合成樹脂製の基材層を貼り合わせ状に積層し、両基材層の間にこれら両基材層よりもX線透過率を小さくした材料から成る標識層を積層し、少なくとも一方の基材層を不透明とし、標識層は部分的に凹凸状に屈曲させた凹凸部を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層構造体、特に模倣品に係る判別機能が発揮されるように構成された積層構造体に関する。

【背景技術】
【0002】
近年においては流通の国際化も相俟って、ブランド品の高度な偽物も出回り、その対策が重要となってきており、たとえばICタグの物品への装着による方法が有力な方法の一つである。
また、医薬品や化粧品の分野でも模倣品が多く出回り、中でも模倣品の薬による健康被害も報告されており、医薬品メーカーは模倣品を防止する対策として包装容器に蛍光印刷などによる隠し文字や図柄などを配設し(特許文献1参照)、商品の真偽を判別できるようにしている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−318290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、合成樹脂を主材料とする積層構造体を利用した、第三者には分り難いあるいは模倣し難い方法の隠し文字や図柄による、模倣品に係る判別機能を創出することを課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明の主たる構成は、
積層構造体において、2つの合成樹脂製の基材層を貼り合わせ状に積層し、両基材層の間にこれら両基材層よりもX線透過率を小さくした材料から成る標識層を積層し、
少なくとも一方の基材層を不透明とし、
標識層は部分的に凹凸状に屈曲させた凹凸部を有する構成とする、と云うものである。
【0006】
上記構成において、標識層の凹凸部は、所謂、隠し文字あるいは図柄としての機能を発揮するものであり、少なくとも一方の基材層を不透明とすることにより、標識層を外部から見えないようにすることができる。
また他方で、標識層のX線透過率が低いこと、そして凹凸部ではその凹凸構造に沿ってX線の標識層中での透過距離が変化し、X線の透過量が変化することを利用し、X線透過装置あるいはCT装置等の物体内のX線透過率の差異を検出可能な装置(以下、X線透過装置等と記す。)により必要に応じて、製品を破壊することなく凹凸部により形成される隠し文字あるいは図柄等の有無を確認することができ、
このような積層構造体を包装容器等に配設することにより、模倣品に係る判別機能を商品に付与することができる。
【0007】
なお、両基材層は目的に応じて同じ合成樹脂製とすることもできるし、異種の合成樹脂製とすることもできる。
また、一方だけの基材層を不透明とするか、両方の基材層を不透明とするかは、積層構造体の使用態様によって選択することができ、積層構造体の両面側が外部に露出するような使用態様では勿論、両方の基材層を不透明にする。
また、両方の基材層を不透明とすることにより、たとえば積層構造体としての包装容器が分解された場合にも標識層の存在が隠されるので、より確実に模倣品の出現を防止することが可能となる。
【0008】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、標識層を文字、記号、図柄、模様から選ばれる平面形状に積層し標識を形成する、と云うものであり、X線透過装置等による凹凸部の確認を容易に達成することができる。
【0009】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、標識層を、合成樹脂に無機フィラー若しくは無機顔料を分散した材料製とする、と云うものである。
【0010】
標識層の材質は、両基材層よりX線透過率が小さいと云う範疇内で特に限定されるものではないが、上記構成により標識層を合成樹脂に無機フィラー若しくは無機顔料を分散した材料とすることにより、両基材層と標識層の接着性や、標識層の積層による積層構造体の柔軟性を大きく損なうことなく、標識層のX線透過率を両基材層より小さくすることができる。
特に、両基材層と標識層に使用する合成樹脂を同種のものとすれば、3つの層を熱溶着状に確実に接着した状態で積層することができる。
【0011】
なお、両基材層を不透明にするために両基材層に自体に少量の無機フィラー若しくは無機顔料を分散する場合があるが、この場合には標識層には、より大きな比率で無機フィラー若しくは無機顔料を分散する。
【0012】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、標識層を塗装層とすると云うものである。
【0013】
上記構成は標識層の積層方法に係るものであるが、X線透過率の小さい無機フィラーや無機顔料を分散させた塗料を使用することにより、塗装層のX線透過率を小さくするこができ、塗装により標識層を容易に積層することができる。
そして、一方の基材層の一方の面に層厚を変化させて凹凸を形成しておき、この凹凸に沿って上記のように標識層となる塗装層を形成し、この塗装層を他の基材層で被覆するようにして積層構造体を製造することができる。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、積層構造体をラベルとすると云うものであり、模倣品に係る判別機能を有する積層構造体であるラベルを包装容器等に貼付することにより、模倣品に係る判別機能を容易に商品に付与することができる。
【0015】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、積層構造体を、標識層がアルミ箔若しくはアルミシート製で全周面に亘って積層するチューブ体とする、と云うものである。
【0016】
上記構成のチューブ体は、全周に亘ってアルミ箔あるいはアルミシート製の標識層が積層するものであり、このチューブ体をチューブ容器の胴部として使用することにより、ガスバリア性や、香料等の成分の揮散を防止する機能が十分に発揮されるので、内容物の品質の低下を効果的に抑制できると共に、模倣品に係る判別機能を備えたチューブ容器を提供することができる。
なお、上記のようなチューブ体はプレス加工等でアルミ箔あるいはアルミシートに凹凸形状を形成し、その両側に合成樹脂製の基材層をラミネートあるいはオーバーコートしてシート片状の積層構造体を作成し、さらにこのシート片を巻回して両側端部をシールして作成することができる。

【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有する積層構造体にあっては、標識層の凹凸部は、所謂、隠し文字あるいは図柄としての機能を発揮するものであり、
少なくとも一方の基材層を不透明とすることにより、標識層さらには凹凸部外部から見ることができず、他方、標識層のX線透過率が低いこと、そして凹凸部ではその凹凸構造に沿ってX線の標識層中での透過距離が変化し、X線の透過量が変化することを利用し、X線透過装置あるいはCT装置等の物体内のX線透過率の差異を検出可能な装置により必要に応じて、製品を破壊することなく凹凸部により形成される隠し文字あるいは図柄等の有無を確認することができ、このような積層構造体を包装容器等に配設することにより、模倣品に係る判別機能を商品に付与することができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の積層構造体の第1実施例のチューブ体を使用したチューブ容器を示す斜視図である。
【図2】図1のチューブ容器の層構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の積層構造体の第2実施例のラベルを示す平面図である。
【図4】図3のラベルの層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1、2は本発明の積層構造体の第1実施例であるチューブ体を使用したチューブ容器を説明するためのもので、図1は斜視図であり、図2はその層構成を示す斜視図であり手前にその断面構造が示されている。
このチューブ容器1は、シート片を巻回して両側端部をシールして作成した円筒状のチューブ体2tを胴部2として使用し、この胴部2の一端に射出成形あるいは圧縮成形によって取り付けて一体化したヘッド部3から成り、残る一端から内容物を充填しその端部をフラットな底シール部4としたものである。
【0020】
このチューブ容器1の胴部2を形成するチューブ体2tの周壁の層構成は図1あるいは図2示されるように、貼り合わせ状に積層した外側の基材層11と内側の基材層12の間に全周面に亘って標識層13を積層したものである。
なお、図1では、周壁の一部を切出し、さらにその切出した部分で内側の基材層12の一部を剥離、切除した状態を示している。
【0021】
本実施例では外側の基材層11は低密度ポリエチレン樹脂製、内側の基材層12は高密度ポリエチレン樹脂製とし、外側の基材層11には樹脂100重量部に対して3重量部のチタンホワイトの微粉を混合して白色不透明としている。
【0022】
そして、標識層13はアルミ製の薄肉シート製で、プレス加工で部分的に凹凸状に屈曲させた凹凸部Sを有し、この凹凸部Sにより隠し文字となる図案化した文字A、Bが形成されている。
【0023】
そして、本実施例のチューブ体2tは、通常の状態では外側の基材層11が白色不透明であるので、標識層13さらには凹凸部Sを外側から視認することはできないが、標識層13のX線透過率が低いことと図2中の3本の点線矢印X1、X2、X3で示されるように凹凸部Sではその凹凸構造に沿って標識層13中でのX線の透過距離が変化しX線の透過量が変化することを利用し、X線透過装置等により必要に応じて、製品を破壊することなく凹凸部Sによる隠し文字であるA、Bの文字の有無を確認することができる。
【0024】
たとえば、上記図2中の3本の点線矢印X1、X2、X3で比較すると、X1、X3の位置に比較し、X2の位置ではX線の標識層13中の透過距離が大きく、X線の透過量が小さくなり、その結果X線透過装置等により文字Aを検出することが可能となる。
【0025】
次に、図3、4は本発明の積層構造体の第2実施例であるラベルを説明するためのもので、図3はその平面図、図4は層構成を示す断面図である。
このラベル20の層構成は図2に示されるように、貼り合わせ状に積層した外側の基材層21と内側の基材層22の間に、標識層23を積層した積層体を有し、さらに内側の基材層22の下側に接着層26を積層し、外側の基材層21の上側には加飾のための、図案化したa、b、c、d、eの文字を形成する加飾印刷層24が積層され、さらにこの加飾印刷層24を被覆するように透明な保護層25が積層されている。
本実施例では外側の基材層21と内側の基材層22は共に、不透明となるように着色したポリプロピレン樹脂の延伸フィルム製である。
【0026】
また、標識層23はX線透過率の小さい無機顔料を分散させた塗料を塗装した塗装層であり、内側の基材層22の上面を、層厚を変化させて凹凸状に形成しておき、この凹凸に沿って標識層23となる塗装層を形成し、さらにこの塗装層を外側の基材層21で被覆するようにして、凹凸部Sを有する積層構造体を製造することができ、この凹凸部Sにより隠し文字となる図案化した文字A、Bが形成されている。
【0027】
本実施例のラベル20では、通常の状態では外側と内側の基材層21、22が不透明であるので、図3の平面図で見られるようにA、Bの文字を表す標識層13を外部から視認することはできないが、前述した第1実施例のチューブ体2tと同様に、
標識層23のX線透過率が低いことと、凹凸部Sではその凹凸構造に沿って標識層23中でのX線の透過距離が変化しX線の透過量が変化することを利用し、X線透過装置等により必要に応じて、凹凸部Sによる隠し文字であるA、Bの文字の有無を確認することができる。
【0028】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果を説明したが、本発明の積層構造体は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、本発明の積層構造体は必要に応じて加飾層やガスバリア層等の層を追加することができる。また、積層構造体は上記実施例のチューブ体やラベルに限定されるものではなく、さまざまな態様の成形品とすることができる。
【0029】
また、上記実施例ではX線透過量を小さくするため、標識層をアルミ製の薄肉シート製、あるいは無機顔料を混合した塗料によるものとしたが、他にも合成樹脂に無機フィラーや無機顔料を混合した樹脂材料とする、金属箔層を積層したホットスタンプフィルムを使用する等の手段も採用することができる。

【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように本発明の積層構造体は、X線の透過率の差を利用した第三者には分り難いあるいは模倣し難い方法の隠し文字や図柄による、模倣品に係る判別機能を有するものであり、模倣品対策として幅広い利用展開が期待される。

【符号の説明】
【0031】
1 ;チューブ容器
2 ;胴部
2t;チューブ体
3 ;ヘッド部
4 ;底シール部
11;(外側の)基材層
12;(内側の)基材層
13;標識層
20;ラベル
21;(外側の)基材層
22;(内側の)基材層
23;標識層
24;加飾印刷層
25;保護層
26;接着層
S ;凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの合成樹脂製の基材層を貼り合わせ状に積層し、該両基材層の間に前記両基材層よりもX線透過率を小さくした材料から成る標識層を積層し、少なくとも一方の基材層を不透明とし、前記標識層は、該標識層を部分的に凹凸状に屈曲させた凹凸部を有する構成とした積層構造体。
【請求項2】
凹凸部により、文字、記号、図柄、模様から選ばれる形状が現出する構成とした請求項1記載の積層構造体。
【請求項3】
標識層を合成樹脂に無機フィラー若しくは無機顔料を分散した材料から成るものとした請求項1または2記載の積層構造体。
【請求項4】
標識層を塗装層とした請求項1または2記載の積層構造体。
【請求項5】
積層構造体をラベルとした請求項1、2、3または4記載の積層構造体。
【請求項6】
積層構造体を、標識層がアルミ箔若しくはアルミシート製で全周面に亘って積層するチューブ体とした請求項1または2記載の積層構造体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110907(P2011−110907A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271769(P2009−271769)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】