説明

積層部品の洗浄および乾燥用装置

【課題】積層した各部品を確実に洗浄、乾燥する積層部品の洗浄および乾燥用装置を提供する。
【解決手段】パレット2に立設した円筒状部材3の側面5に切り欠き部6a1,6a1,6b1,6b2を形成し、該切り欠き部に第1、第2の部品受け部材7、8を設ける。第1の部品受け部材7は、球体9を側面5外に配置させ、軸13を中心に回転可能に設けられている。1つ目の部品が円筒状部材3に遊嵌されると、該部品に押されて第1の部品受け部材7が反時計回りに回転する。これにより球体9が該部品とパレット2間に配置され、該部品を点で受ける。第1、第2の部品受け部材7、8は互いに連結部材11によって連結されており、第1の部品受け部材7の回転に伴い、円筒状部材3内に配設されている球体8が、連結部材11に押されて側面5外に突出する。これにより2つ目の部品が円筒状部材3に遊嵌されると、第2の部品受け部材(球体)8が該部品を点で受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層して配置した部品を洗浄および乾燥するための洗浄用および乾燥用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に、積層して配置した部品を洗浄および乾燥させる従来の形態を示す。洗浄・乾燥用装置のパレット50上に設けた鉛直方向へ延びる円筒状部材51に、部品52、53に形成された貫通孔により部品52、53を嵌めて該部品を洗浄および乾燥させる。このように洗浄等する場合、サイクル時間を短縮させるため、あるいはパレットサイズの制限があるために、同一の円筒状部材51に複数の部品を重ねて挿入し、一回の洗浄・乾燥によって多くの部品を洗浄・乾燥させるようにしていた。
【0003】
下記に示す特許文献1、2には、複数の部品を効率よく洗浄および乾燥させる技術として以下のようなものが開示されている。
特許文献1には、複数枚の板状部品を互いに移動可能な状態で保持シャフトに保持し、洗浄時には、板状部品を浸した洗浄液を超音波発振器により振動させると共に、液中ノズルから洗浄液を吹き付けることにより、洗浄液の圧力によって板状部品が互いに移動して隣り合った板状部品の間隔が開き、洗浄が十分に行われ、乾燥時には、エアノズルによって板状部品に乾燥空気が吹き付けられることにより、乾燥空気の圧力によって板状部品が互いに移動して隣り合った板状部品の間隔が開き、乾燥が十分に行われるようにした板状部品洗浄装置の発明が開示されている。
特許文献2には、下面が閉寒され上面が開放された円筒状の洗浄・乾燥槽に、螺旋状の搬送路をその内周面に形成し、該搬送路を下から洗浄路、水切路、乾燥路に仕切って、被洗浄部材が各搬送路を順次搬送されることにより洗浄、水切、乾燥させるようにした水洗浄・乾燥装置の発明が開示されている。洗浄・乾燥槽に投入された被洗浄部材は、槽の底部に集まり、槽が加振器によって周方向および上下方向に振動されることにより、被洗浄部材は搬送路上を螺旋上方に向かって個々に順次転動していく。これにより被洗浄部材は、洗浄路、水切路、乾燥路を個々に通過して確実に洗浄、乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−279882号公報
【特許文献2】特開平7−112165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7に示す上記従来の方法では、複数の部品を同一の円筒状部材に重ねて挿入すると、重ね合った部品面同士が密着してしまうため、この重なった面を十分に洗浄することができず、また、面と面との間54、55、円筒状部材と貫通孔との間56に洗浄液、水等が挟まれて溜まるため、エアーブローによる乾燥を行ってもエアーが届き難く、さらに自然乾燥も困難で、効率よく洗浄・乾燥することが困難であった。
【0006】
また、上記特許文献1の発明は、液中ノズルから洗浄液を、またはエアノズルから乾燥空気を吹き付けることにより、複数枚の板状部品が互いに移動する構成の装置に対しては効果的であったが、図7に示すように同一の円筒状部材に上下方向へ部品を重ねて配置する構成のものに対しては有効ではなかった。また、上記特許文献2の発明は、加振器による振動によって螺旋状の搬送路を部材が移動していく構成の装置に対しては効果的であったが、図7に示すように同一の円筒状部材に上下方向へ部品を重ねて配置する構成のものに対しては有効ではなかった。
【0007】
そこで、本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、重ねて配置した各部品を、安価かつ簡単な構成で、確実に洗浄および乾燥させることができる積層部品の洗浄および乾燥用装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層部品の洗浄および乾燥用装置は、下記各態様の構成のものとすることに特徴を有する。
【0009】
(発明の態様)
各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本明細書に記載した技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、技術的特徴は、各項に付随する記載、実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、一態様となり得る。なお、以下の各項において、(1)項ないし(3)項の各々が、請求項1ないし請求項3の各々に対応する。
【0010】
(1) パレット上に立設した円筒状部材に部品を複数、遊嵌し、該部品を洗浄および乾燥する積層部品の洗浄および乾燥用装置において、
前記円筒状部材の上下側面には、切り欠き部が一対ずつ軸方向に対称的に形成され、
前記円筒状部材の下部切り欠き部から円筒状部材の側面外へ突出する先端部が、その支持体とともに、円筒状部材の側面内に設けられた軸を中心に回転可能に配設されている第1部品受け部材と、
前記上下の切り欠き部の中間部には、前記第1部品受け部材が、前記円筒状部材に遊嵌
された部品を受け支えたときに、前記第1部品受け部材と連結される連結部材に固着された先端部が、上部切り欠き部から円筒状部材の側面外へ突出するように支持されている第2部品受け部材とが設けられていることを特徴とする積層部品の洗浄および乾燥用装置。
【0011】
(2)前記第1部品受け部材と第2部品受け部材を連結する連結部材は、弾性部材からなり、前記部品受け部材の先端部は、球状体からなることを特徴とする1項に記載の積層部品の洗浄および乾燥用装置。
【0012】
パレット上にはパレット面に対して略鉛直方向に延びる円筒状部材が立設されている。円筒状部材の本数は単数でも、あるいは複数であってもよい。円筒状部材には洗浄、乾燥する製品(製品を構成する部品も含む)が遊嵌される。部品には円筒状部材が嵌入される貫通孔が形成されている。効率よく部品を洗浄・乾燥させるために円筒状部材には、複数の部品が重ねて遊嵌される。円筒状部材は、上面は有さず、また下面は立設するパレットの面で構成されている。円筒状部材の側面(側壁)には、切り欠き部が軸方向に対称的に形成されている。例えば、切り欠き部は円筒状部材の高さ方向において側面の上下に2箇所形成され、この2箇所の切り欠き部と向き合う対称の位置にも2箇所の切り欠き部が形成されて、上下側面に一対ずつ対称に合計4箇所の切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は洗浄液、乾燥用空気等が通過する空間でもあるので、部品の隅々まで洗浄液等が達するためには、切り欠き部はより大きく形成されていることが望ましい。例えば、円筒状部材の上端部から下端部まで連続して切り欠き部を形成することが望ましいが、側面に連結部材のガイド部(後述する)を設ける場合には、該ガイド部を除く側面に形成するようにしてもよい。また、円筒状部材の外側面と嵌め込まれる部品の孔の内面との間にも洗浄液、空気等が容易に入り込むように、部品に形成されている貫通孔の径は、円筒状部材の径よりも大きい寸法(部品の大きさに応じて適宜決定される)に形成することが望ましい。
【0013】
この形態の装置には、積層される部品を他の部材に密着させないようにするために部品間に部品受け部材が設けられている。最初に円筒状部材に遊嵌された部品の下面とパレット面との密着を防止するための第1の部品受け部材と、次に円筒状部材に遊嵌された部品の下面と最初に遊嵌された部品の上面との密着を防止するための第2の部品受け部材とが設けられている。
【0014】
第1の部品受け部材は、部品とパレット面間に配設されるものであるため、円筒状部材の下部であって第2の部品受け部材よりも下側に設けられている。該部品受け部材は、腕(支持体)の一端部に部品受け部(先端部)を備えており、筒内に設けられた回転軸で腕が支持され、該軸を中心に回転可能に取り付けられている。部品受け部は、部品との接触面積をより小さくするために(点で接触するようにするために)、例えば、球体形状、円錐または角錐形状を有している。該部品受け部材は、上記側面に形成された切り欠き部を通過して部品受け部(球体部)が側面よりも外部へ突出して配設されている。円筒状部材に1つ目の部品が遊嵌されると、球体部が部品の下面により下方に押され該部品受け部材が反時計回りに回転する。回転した球体部は、パレット面に当接し、部品の下面とパレットの面との間に位置して部品を点で受け支える。
【0015】
第2の部品受け部材は、円筒状部材の高さ方向において上記第1の部品受け部材よりも上部に設けられ、円筒状部材に2つ目の部品が遊嵌されたときに該2つ目の部品を受け支える部材であって、第1の部品受け部材の支持体に固着される連結部材の先端に設けられている。第2の部品受け部材は、部品受け部(上記第1の部品受け部材の部品受け部(先端部)と同様に球体形状等からなる)のみから構成され、第1の部品受け部材のような腕部分(支持体)は有していない。第2の部品受け部材は、円筒状部材に部品が遊嵌されていないときは、筒内に収納されている状態(筒の外周面よりも内側に有る状態)に配設され、円筒状部材に1つ目の部品が遊嵌されたときに、切り欠き部を介して筒の外側(筒の外周面よりも外)に突出した状態で配設されるようになっている。切り欠きの幅は、少なくとも部品受け部材(球体部)が通過できる大きさに形成されている。
【0016】
第1の部品受け部材と第2の部品受け部材とは連結部材によって固着されているので、円筒状部材に1つ目の部品が遊嵌されると、該部品によって第1の部品受け部材の部品受け部(以下、第1の球体という)が下方に押され、第1の部品受け部材は回転軸を中心に反時計回りに回転する。連結部材は該回転軸を挟んで第1の球体とは反対側の腕部分に固着されているため、この回転に伴って連結部材は上方に押し上げられる。連結部材が押し上げられることにより、該連結部材の第1の部品受け部材(腕部)とは逆の端部に固着されている第2の部品受け部材(以下、第2の球体という)が連結部材によって押され、該第2の球体は切り欠き部を介して筒の側面よりも外側に押し出される。第2の球体の押出される位置は、円筒状部材の高さ方向において、遊嵌された1つ目の部品の位置よりも上側の位置である。この状態で2つ目の部品が円筒状部材に遊嵌されると、該部品の下面が、側面よりも外側に配設された第2の球体によって点で受け支えられる。連結部材は弾性部材からなるが、上記2つ目の部品が遊嵌されたときでもそれらの重さ(2つ目の部品の重さ及び第2の球体の重さを含む)によって変形することなく、第2の球体を介して2つ目の部品を受け支える。
【0017】
以上のように、軸方向の切り欠き部は円筒状部材の円周方向に対して等間隔に形成されているので、その切り欠き部の位置に配設される部品受け部材(球体)によって、部品を接触面積の小さい点で受けることができると共に、安定よく水平状態に保って支えることができる。
また、以上のような構成により、洗浄するために吹き付ける洗浄液あるいは水等、あるいは乾燥させるために吹き付けられる空気は、部品受け部材によって形成された部品間の隙間に直接入り込み、あるいは、円筒状部材内の空間部、円筒状部材の切り欠き部を介して入り込み、効率よく部品を洗浄および乾燥させることができる。さらには、円筒状部材の側面と遊嵌された製品の内周面との間にも容易に洗浄液、空気等が入り込むことが可能となり、同様に効率よく部品を洗浄および乾燥させることができる。
【0018】
(3)前記第1の部品受け部材と第2の部品受け部材が設けられている間の側面には、前記第1の部品受け部材から第2の部品受け部材へ延びる連結部材をガイドするための連結部材ガイド通路が設けられていることを特徴とする1項または2項に記載の積層部品の洗浄および乾燥用装置。
【0019】
1つ目の部品を遊嵌させたときに第1の部品受け部材の反時計回りの回転に伴って第2の部品受け部材が確実に円筒状部材の側面(側壁)外に配設されるように、またその逆に、1つ目の部品を取り外したとき(部品を全て取り外したとき)に第1の部品受け部材の時計回りの回転に伴って第2の部品受け部材が確実に円筒状部材の側面内に配設されるように連結部材の通過位置をガイドする連結部材ガイド通路が形成されている。該通路は、円筒状部材の高さ方向において第1の部品受け部材の位置と第2の部品受け部材の位置の間に形成されている。
【0020】
上記(1)で説明したように、円筒状部材に1つ目の部品が遊嵌されると、第1の部品受け部材は回転軸を中心に反時計回りに回転する。該回転軸を挟んで第1の球体とは反対側の腕部分には、底面(この形態ではパレット面)との間に弾性部材(例えば、バネ等)が接続されている。弾性部材は1つ目の部品が遊嵌されて第1の部品受け部材が反時計回りに回転したとき自然長よりも伸ばされた状態になるように設定されている。したがって、1つ目の部品を円筒状部材から取り外すと、弾性部材の収縮力によって第1の部品受け部材は時計回りに回転する。この時計回りの回転により上記腕部に連結された連結部材が下方に引かれ、側面(側壁)外に配設されていた第2の球体は切り欠き部を通過して筒内部に収納される。
【0021】
この構成により、部品が円筒状部材に遊嵌されていないときは、円筒状部材の側面外には第1の球体だけが配設されるので、1つ目の部品が遊嵌されると該第1の球体によって1つ目の部品が受け支えられる。そして、1つ目の部品が遊嵌された後は、第2の球体が円筒状部材の側面外に配設されるようになるので、2つ目の部材が遊嵌されると該第2の球体によって2つ目の部品が受け支えられる。したがって、1つ目の部品と2つ目の部品との間に容易、かつ確実に受け部材を配設することができ、部品同士を密着させずに効率よく洗浄・乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る積層部品の洗浄および乾燥用装置によれば、パレットに立設された円筒状部材に部品を順次遊嵌させるだけで、容易かつ確実に部品間に受け部材を配設させることができ、部品同士の密着を防止することができるので、重ねて配置した各部品を効率よく、かつ確実に洗浄および乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る積層部品の洗浄および乾燥用装置の一形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す積層部品の洗浄および乾燥用装置の上面図であり、(b)は一部断面図である。
【図3】図1に示す積層部品の洗浄および乾燥用装置に部品を遊嵌させた状態を示す一部断面図である。
【図4】図1に示す積層部品の洗浄および乾燥用装置に部品を遊嵌させた状態であって、図3とは別の形態で、連結部材が変形する一形態を示す一部断面図である。
【図5】(a)は部品が遊嵌されていない積層部品の洗浄および乾燥用装置の一形態を示す上面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその側面図である。
【図6】(a)は部品が遊嵌された積層部品の洗浄および乾燥用装置の一形態を示す上面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその側面図である。
【図7】積層して配置した部品を洗浄および乾燥させる従来の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は、下記の形態に限定されるものではなく、下記実施の形態の他、前記(発明の態様)の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0025】
図1に示すように、本積層部品の洗浄および乾燥用装置1は、パレット2と、パレットに立設された円筒状部材3と、円筒状部材の側面(側壁)5に形成された切り欠き部6(6a、6b)と、円筒状部材に遊嵌される部品を受け支える第1の部品受け部材7と、第2の部品受け部材8と、第1の部品受け部材7と第2の部品受け部材8とを連結する連結部材11と、第1の部品受け部材7に取り付けられた弾性部材12とから概略構成されている。
【0026】
パレット2にはパレット面に対して略鉛直方向に延びる円筒状部材3が設けられている。この形態では図面の見易さを考慮してパレット上に1本の円筒状部材が立設されているが、円筒状部材の本数は複数設ける形態であってもよい。円筒状部材3は、中心部分を空間とし、下面はパレット2の面で構成される。円筒状部材3の形状は円筒形状に限定されるものではなく、該部材3に遊嵌される部品に形成された貫通孔の形状に対応するもの(例えば、貫通孔が矩形状のときは矩形状)であればよい。円筒状部材3の側面5には、二対の切り欠き部6a1、6b1、及び6a2、6b2(図示省略)が形成されている。これらの切り欠き部6a1、6a2、6b1、6b2は、軸方向に対称的に形成されており、切り欠き部6a1と6b1、および切り欠き部6a2と6b2は、筒の円周方向を等間隔に分ける位置(180度間隔)に形成されている。また、切り欠き部6a1と6a2とは円筒状部材3の高さ方向において側面の上下に形成されており、この2箇所の切り欠き部と向き合う対称の位置に切り欠き部6b1と6b2が形成されている。切り欠き部の形態は、これに限らず、例えば、円周方向に120度間隔で3個、高さ方向に上下2個の計6個形成するものであってもよい。
【0027】
切り欠き部6a1、6a2と切り欠き部6b1、b2には、部品受け部材7、8が対称的に設けられている。部品受け部材7、8は、円筒状部材3に重ねて遊嵌される部品間に配設される部材であり、積層される部品の面が大きな面積で他の部品と密着しないよう機能する。円筒状部材3の下部には、円筒状部材に遊嵌された1つ目の部品31(図3参照)の下面とパレット2の面との密着を防止するための第1の部品受け部材7が設けられている。また、円筒状部材3の中腹には、円筒状部材に遊嵌された1つ目の部品31の上面と2つ目の部品32(図3参照)の下面との密着を防止するための第2の部品受け部材8が設けられている。
【0028】
第1の部品受け部材7は、腕部(支持体)10の一方の先端部に部品受け部(球体)9を備えた構成を有しており、円筒状部材3の空間内に固定された回転軸13に腕部10が支持され、該軸13を中心に回転可能に取り付けられている。第1の部品受け部材7は、切り欠き部6a1を通過するように配設され、その球体9が側面5よりも外部へ突出した状態で配設されている。部品受け部9は、受け支える部品との接触面積がより小さいことが望ましく、例えば、図に示されるような球体、あるいは円錐や角錐形状を有するものであってもよい。円筒状部材3に1つ目の部品31が遊嵌されると、球体7が部品31により下方に押され、第1の部品受け部材7は反時計回りに回転する。球体7は、回転してパレット2面に当接し、部品31の下面とパレット2の面との間に位置して部品31を受け支える。部品受け部7を球体形状、あるいは錐形状にすることにより、受ける部品を点で支えることが可能となる。
【0029】
第2の部品受け部材8は、第1の部品受け部材7と連結部材11によって固着されており、第1の部品受け部材7でいう部品受け部(先端部)のみから構成され、腕部は有していない。第2の部品受け部材(球体)8は、円筒状部材3に部品が遊嵌されていないときは、円筒内に収納された状態で配設され、円筒状部材3に1つ目の部品31が遊嵌されたときに、切り欠き部6a2を通過して円筒状部材3の外側に突出した状態で配設される。このように1つ目の部品が遊嵌された後に球体8が円筒状部材3の外部に配設される構成により、次に円筒状部材3に遊嵌される2つ目の部品32を該球体8によって受け支えることが可能となる。第2の部品受け部材8は、第1の部品受け部材7の部品受け部9と同様に、球体形状あるいは錐形状を有している。
【0030】
第2の部品受け部材(球体)8は、1つ目の部品31が円筒状部材3に遊嵌されたとき、連結部材11によって円筒状部材3の外部に押し出される。先ず、円筒状部材3に1つ目の部品31が遊嵌されると、該部品31によって第1の部品受け部材7の部品受け部(球体)9が下方に押され、第1の部品受け部材7は回転軸13を中心に反時計回りに回転する。連結部材11は、該回転軸13を挟んで球体9とは反対側の腕部10に連結されている。よって、この回転に伴って連結部材11は、第1の部品受け部材7によって上方に押し上げられる。連結部材11が押し上げられることにより該連結部材11の上端部に連結されている第2の部品受け部材(球体)8が連結部材11によって押され、該球体8は切り欠き部6a2を通過して円筒状部材3の側面5よりも外側に押し出される(図3参照)。次に、2つ目の部品32を円筒状部材3に遊嵌されると、該部品32の下面は、側面5よりも外側に配設された球体8によって点で受け支えられる。連結部材11はワイヤーからなり、球体8が部品32を受けたときでも部品32の重さで変形することなく支える。
【0031】
第1の部品受け部材7の腕部10には、弾性部材12が接続されている。該弾性部材12は、第1の部品受け部材7を回転させるための部材であり、回転軸13を挟んで球体9とは反対側の腕部10とパレット2との間に接続されている。例えば、弾性部材はバネ等から構成されている。弾性部材12は、円筒状部材3に部品が遊嵌されていないときに自然長となるように取り付けられている(図1、2の状態)。そして、1つ目の部品31が円筒状部材3に遊嵌され第1の部品受け部材7が反時計回りに回転すると、弾性部材12は腕部10からの引っ張り力によって伸ばされる(図3参照)。一方、この状態から部品31が取り外されると、弾性部材12の収縮力によって腕部10が引かれ、第1の部品受け部材7は時計回りに回転する。この回転に伴い、腕部10に連結された連結部材11が下方に引かれ、円筒状部材3の側面5から外部へ突出していた球体8は、連結部材11に引かれて円筒内に収納される。
【0032】
円筒状部材3の高さ方向において、上部切り欠き部6a1、6b1と下部切り欠き部6a2、6b2との間の側壁15には、連結部材11の移動する位置をガイドする連結部材ガイド通路14が形成されている。連結部材ガイド通路14は、側壁15を貫通して形成されており、該貫通路14に連結部材11が通されている。連結部材ガイド通路14は、1つ目の部品31を遊嵌させたときに、第1の部品受け部材7の回転に伴い連結部材11によって押される第2の部品受け部材(球体)8を、確実に円筒状部材3の側面外に押し出すことができるように連結部材11の通過を誘導する通路である。また、1つ目の部品31を取り外したときに、第1の部品受け部材7の回転に伴い連結部材11によって引かれる球体8を、確実に円筒状部材3の側面内に収納することができるように連結部材11の通過を誘導する通路である。
【0033】
切り欠き部6a1、6a2、6b1、6b2は、部品31、32を洗浄するときあるいは乾燥させるときに洗浄液、乾燥用空気が通過する空間でもあるため、部品の隅々まで洗浄液、空気等が達するためには、各切り欠き部はより大きく形成されていることが望ましい。例えば、上述した側壁15が形成される部分を除いて、円筒状部材3の上端部から下端部まで連続して切り欠き部を形成するようにしてもよい。また、円筒状部材3の外側面と遊嵌される部品31、32の孔の内面との間にも洗浄液、空気等が容易に入り込む程度に、円筒状部材3の径を、部品31、32に形成されている貫通孔の径よりも、小さく形成することが望ましい。
【0034】
図5、図6にパレット2上に複数の円筒状部材3が立設されている形態を示す。図5は部品が遊嵌されていない状態のものを示しており、図6は部品31、32が遊嵌された状態のものを示している。それぞれ(a)がパレットを上側からみた図、(b)は正面から見た図、(c)は側面から見た図である。図5に示すように、部品が遊嵌されていない場合には、球体9のみが円筒状部材3の外部に配設されている。球体8は円筒状部材3の内部に収納されている。これに対して、図6に示すように、部品31、32が円筒状部材3に遊嵌されている場合には、球体8も円筒状部材3の外部に配設され、球体9は1つ目の部品31とパレット2間に配設されて部品31を受け支え、球体8は1つ目の部品31と2つ目の部品32との間に配設され部品32を受け支える。
【0035】
以上説明した構成を備えることにより、本発明では、切り欠き部6a1と6b1、及び6b1と6b2が円筒状部材3の円周方向に対して等間隔に形成されているので、その切り欠き部6a1と6b1、6a2と6b2の位置に配設される球体8、9によって、部品31、32を接触面積の小さい点で受けることができると共に、安定よく水平状態に保って支えることができ、洗浄液、水等が部品に漏れなく到達し、効率よく確実に各部品を洗浄することができる。また、部品間の洗浄液の残り、水の残りを防ぐことができ、効率よく確実に各部品を乾燥させることができる。
【0036】
また、洗浄するために吹き付ける洗浄液および水等、あるいは乾燥させるために吹き付けられる空気が、球体8、9によって部品間に形成された隙間に直接入り込むことができるので、あるいは、円筒状部材3内の空間部、円筒状部材の切り欠き部6a1、6a2、6b1、6b2を介して部品間に入り込むことができるので、効率よく部品を洗浄および乾燥させることができる。さらには、円筒状部材3の側面と遊嵌された部品31、32の内周面との間にも容易に洗浄液、空気等が入り込むことが可能となり、同様に効率よく部品を洗浄および乾燥させることができる。
【0037】
また、部品が円筒状部材3に遊嵌されていないときは、円筒状部材3の側面外には円筒状部材3の下部に設けらた球体9だけが配設される構成を有するので、円筒状部材3に遊嵌された1つ目の部品31を該球体9によって確実に受け支える。そして、1つ目の部品31が遊嵌された後に、球体8が円筒状部材3の中腹の側面外に配設される構成を有するので、円筒状部材3に遊嵌される2つ目の部品32を該球体8によって確実に受け支える。これにより、1つ目の部品31と2つ目の部品32との間に容易、かつ確実に球体8を配設することができ、部品同士を密着させず各部品を効率よく洗浄・乾燥させることができる。
【0038】
上述した形態では図3に示すように、2つの部品31、32を円筒状部材3に遊嵌させたときに、2つ目の部品32の重さによって連結部材11が変形せずに支える場合を説明したが、例えば、図4に示すように、2つ目の部品32の重さにより連結部材11が弾性的に変形する形態であってもよい。この形態の場合には、連結部材11が弾性変形することにより球体8の位置が1つ目の部品31の位置まで下がり、球体8は1つ目の部品31の上面と2つ目の部品32の下面との間に両部品に当接した状態で位置して2つ目の部品32を点で受け支える。連結部材11としては、2つ目の部品32が遊嵌されていないときは変形せずに伸びた状態で球体8を支え、部品32が遊嵌されたときその重さによって変形し、さらにその状態から部品32が取り除かれると変形前の状態に戻る弾性部材を使用することが望ましい。このような構成により、1つ目の部品31と2つ目の部品32との間には洗浄液、乾燥空気等が十分に流れ込む空間を確保することができ、効率的かつ確実に各部品を洗浄および乾燥させることができる。なお、その他の構成およびその機能に関しては図3に示す形態と同様である。また、その効果についても図3に示す形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0039】
1 積層部品の洗浄および乾燥用装置
2 パレット
3 円筒状部材
5 側面
6a1、6a2、6b1、6b2 切り欠き部
7 第1の部品受け部材
8 第2の部品受け部材
9 球体(先端部)
10 腕部
11 連結部材
12 弾性部材
13 回転軸
14 連結部材ガイド通路
15 側壁
31、32 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット上に立設した円筒状部材に部品を複数、遊嵌し、該部品を洗浄および乾燥する積層部品の洗浄および乾燥用装置において、
前記円筒状部材の上下側面には、切り欠き部が一対ずつ軸方向に対称的に形成され、
前記円筒状部材の下部切り欠き部から円筒状部材の側面外へ突出する先端部が、その支持体とともに、円筒状部材の側面内に設けられた軸を中心に回転可能に配設されている第1部品受け部材と、
前記上下の切り欠き部の中間部には、前記第1部品受け部材が、前記円筒状部材に遊嵌
された部品を受け支えたときに、前記第1部品受け部材と連結される連結部材に固着された先端部が、上部切り欠き部から円筒状部材の側面外へ突出するように支持されている第2部品受け部材とが設けられていることを特徴とする積層部品の洗浄および乾燥用装置。
【請求項2】
前記第1部品受け部材と第2部品受け部材を連結する連結部材は、弾性部材からなり、前記部品受け部材の先端部は、球状体からなることを特徴とする請求項1に記載の積層部品の洗浄および乾燥用装置。
【請求項3】
前記上下の切り欠き部の中間部には、前記第1の部品受け部材から第2の部品受け部材へ延びる連結部材をガイドするための連結部材ガイド通路が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層部品の洗浄および乾燥用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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