説明

穴あけ工具

【課題】動作性能に関して改善する穴あけ工具を提供する。
【解決手段】穴あけ工具は、少なくとも1つの穴あけ器本体(6)とそれに結合することができる穴あけ器ヘッド(4)とから構成された複数部品からなる穴あけ工具であって、穴あけ器本体(6)と穴あけ器ヘッド(4)との間に配置され、摺動部分を形成するために、穴あけ器本体(6)および穴あけ器ヘッド(4)の側面を越えて突出する環状領域(78)を有する支持要素(75)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転切削工具、特に穴あけ工具であって、中心軸に沿って延在しかつドライバ接続(driver connection)を介して互いに取外し可能に締結される受入部材および正面部材を備えた工具に関する。
【背景技術】
【0002】
工具は、概して、被加工物を機械加工する回転工具である。工具は、複数部品、特に2部品設計であり、受入部材および正面部材を備える。穴あけ工具の場合、受入部材は穴あけ本体であり、正面部材は穴あけヘッドである。フライス工具の場合、受入部材はフライスシャンクであり、正面部材はフライスヘッドである。中心軸(軸方向)に沿って延在するこれら2つの部材は、ドライバ接続を介して互いに取外し可能に締結される。ドライバ接続は、互いに別個でありかつ中心軸に対して偏心して配置される2つの継手対を有する。継手対の各々は、この場合、2つの噛み合う継手要素、すなわち、一方はドライバピンであり他方は前記ドライバピンを完全に包囲する受入ポケットである要素によって形成される。継手要素は、第1に、2つの部材の間でトルク力を伝達する役割を果たす。第2に、2つの継手要素はまた、2つの部材を互いに整列するように方向付ける役割を果たし、すなわち、2つの部材は、互いに対して、かつ中心軸に対して継手要素を介して心出しされる。
【0003】
欧州特許出願公開第1524052A号明細書は、穴あけヘッドおよび穴あけ本体を備えた穴あけ工具を開示している。穴あけヘッドと穴あけ本体との間に、中間ディスクが挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1524052A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、冒頭で述べたタイプの工具であって、高トルクの伝達に対して設計されると同時に、受入部材にもたらす弱化が非常にわずかであり、それにより工具の安定した戻りを確実にする、ドライバ接続が改善された工具を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する工具により本発明に従って達成される。
【0007】
本発明は、継手領域に、すなわち穴あけ器本体と穴あけ器ヘッドとの間の分割ラインの領域に支持要素を取り付けることにある。支持要素を、特別に適合された材料から製造することができ、支持要素は、継手領域において工具を特に安定化させる役割を果たす。支持要素は、穴あけ器本体および穴あけ器ヘッドの互いに対するあらゆる移動または振動を抑制する役割を果たす。特に、穴あけ器ヘッドおよび穴あけ器本体の対向する振動は、工具の振動摩耗を低減するために低減されるかまたは中和されるべきである。さらに、穴あけ器本体と穴あけ器ヘッドとの間の分割ラインの領域における固体伝搬音の伝達が低減されるかまたは除去される。この固体伝搬音の伝達が低減することによっても、工具の特性が改善する。
【0008】
こうした工具は、特に、被加工物において著しい深さの横ボアに好適である。さらに、工具はまた、斜めのボア出口があるボアにも好適である。
【0009】
第1構成では、支持要素は、穴あけ本体および穴あけヘッドの互いに隣接する端面に対して面平行なディスクとして構成される。このディスク状支持要素は、穴あけ器本体および穴あけ器ヘッドの側面を越えて摺動リング切片のように突出することが好ましく、したがって、ボア壁に対して穴あけ工具を支持する。このように、穴あけ器ヘッドの切削縁がボア壁を加工することができる間に、ボアにおける穴あけ工具の進路が安定化する。
【0010】
支持要素のさらなる好ましい実施形態は、穴あけ器本体かまたは穴あけ器ヘッドの、あるいは同時に穴あけ器本体および穴あけ器ヘッドの側面に重なる、リング状一体形成部分を有する。この実施形態には、支持要素が、摺動リングのようにボア壁の広い領域を圧迫するという利点がある。さらに、面平行ディスクとして構成される基礎本体と環状一体形成部分とを有する支持要素のボウル状構成において、特に継手領域における穴あけ器本体および穴あけ器ヘッドの優れた取付けが確実になる。さらなる構成では、切屑の除去を最適化するために、支持要素に、穴あけ器本体および穴あけ器ヘッドに形成された溝に対応する凹部を設けることができる。支持要素のリング状一体形成部分の比較的広い外周面により、ボア壁において穴あけ器を案内するために特別な案内要素を取り付けることが可能になる。これら案内要素は、ストリップ状であるかまたは隆起していてもよく、あるいはボアにおける工具の同心状の移動を促進する他の形状で設計されることが可能である。これら案内要素を、リング要素の外面に一体的に埋め込むことができる。しかしながら、それらをリング要素に締め付けるように固定することも可能である。
【0011】
さらなる構成では、支持要素は、特にリング状一体形成部分の領域においてコーティングを有することができる。このコーティングは、ボア壁に対するリングの外面の摩耗を防止するのに役立つことができる。コーティングはまた、工具の他の振動特性および伝達特性に影響を与えることも可能である。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、リング状一体形成部分を、特に受入ボウルとしての構成において、同時に、曲げばねとして構成することができる。この構成では、リング要素は、ボア壁にばね力を加え、したがって、ばね力の作用により工具の中心位置からの工具のドリフトに対抗する。したがって、工具は、ボア壁において弾性的に案内される。このように、支持要素は、加工される被加工物に対する工具のための減衰部材を形成する。
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照してより詳細に説明する。図面では部分的に略図で示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】支持要素を備える穴あけ工具の第1実施形態の部分の全体図を示す。
【図2】図1に示す穴あけ工具の組立分解図を示す。
【図3】図1による穴あけ器ヘッドの継手面の図を示す。
【図4】面平行ディスクとして設計された図1による支持要素の図を示す。
【図5】図1からの穴あけ器本体の継手面の平面図を示す。
【図6】穴あけ器本体と両面受入ボウルを有する支持要素との組立分解図を示す。
【図7】穴あけ器本体の方向において有効な受入ボウルを備えた支持要素を有する、図6からの組立分解図を示す。
【図8】拡大した受入ボウルを備えた支持要素の、図7に示す例示的な実施形態に比較して変更された例示的な実施形態を示す。
【図9】環状一体形成部分の外周面に案内要素を有する支持要素の実施形態を示す。
【図10】曲げばねとしてかつ受入ボウルとして構成された環状一体形成部分の実施形態を示す。
【図11】図10に示しかつ曲げばねとして構成されたリング状一体形成部分の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面において、同じ効果を有する部材には、同じ記号を与えている。以下、さまざまな変形実施形態において、ドライバ接続を、穴あけ工具に関して説明する。ドライバ接続を、概して、他の切削工具にも、工具の2つの部材を結合するために適用することができる。さまざまな変形および設計構成に関して後述する個々の特徴を、それらが相互に排他的でなければ、互いに結合することも可能である。
【0016】
図1の穴あけ器ヘッド4は、その切削側62に、周縁において互いに対向する穴あけ点10および2つの切削先端12を有している。さらに、穴あけ器ヘッド4の領域には、冷却剤通路65および締結手段66が設けられている。締結手段66は、たとえば、切削先端12を締結するか、または切削先端ホルダ等を締結する役割を果たす。
【0017】
ヘッド継手側67は、穴あけ器ヘッド4の切削側62から離れている。ヘッド継手側67は、穴あけ器本体6に面する、穴あけ器ヘッド4の端面を有している。ヘッド継手側67のこの端面から、例示的な実施形態では、2つのドライバピン18が、ヘッド継手側67から穴あけ器本体6の方向において突出している。ドライバピン18は、この場合もまた、冷却剤通路65の後方開口部を有している。
【0018】
穴あけ器本体6の穴あけ器ヘッド4に面する側は、シャンク継手側70である。シャンク継手側70およびヘッド継手側67は、穴あけ器本体6と穴あけ器ヘッド4との間に継手領域を形成する。シャンク継手側70の面に、ドライバピン18に対して相補的であるように設計された2つの受入ポケット20が形成されている。この場合もまた、受入ポケット20に冷却剤通路65があり、前記冷却剤通路65は、最終的に組み立てられた状態で穴あけ器ヘッド4の冷却剤通路65と整列する。したがって、冷却剤通路65は、穴あけ工具全体を通る。最後に、穴あけ器ヘッド4および穴あけ器本体6はともに、各々心出しボア72を有している。穴あけ器ヘッド4および穴あけ器本体6のフランク73と、フランク73の間に組み込まれたらせん状溝15も示されている。
【0019】
穴あけ器本体6の工具取付け端(図には示さず)は、穴あけ器本体6のシャンク継手側70から離れている。工具取付け端により、穴あけ器本体6は、穴あけ工具の適所に締め付けられる。
【0020】
図1および図2による例示的な実施形態では、面平行板として設計された支持要素75が、穴あけ器ヘッド4と穴あけ器本体6との間に配置されている。支持要素75は、ドライバピン18の外側輪郭に対応する貫通開口部76を有している。貫通開口部76により、支持要素75は、簡単に穴あけ器ヘッド4上に滑り込み、ドライバピン18は、貫通開口部76で支持要素75を貫通する。したがって、ドライバピン18は、支持要素75と形状嵌合(form fit)を形成する。工具の図1に示す最終的な組立てのために、ドライバピン18は、まず、貫通開口部76を貫通し、穴あけ器本体6の受入ポケット20と形状嵌合で係合する。支持要素75は、心出しボア72も有している。さらに、支持要素75は、溝15に対応する凹部77を有している。
【0021】
図1の図から、支持要素75が、穴あけ器ヘッド4および穴あけ器本体6の、フランク73によって形成される側面を越えて突出することが分かる。したがって、最終的に組み立てられた穴あけ工具では、支持要素75は、突出環状領域78を形成し、それは、穴あけ工具、すなわち穴あけヘッド4および穴あけ本体6の外囲面を越えて突出する。穴あけ動作中、支持要素75は、この環状領域78でボア壁を圧迫し、したがって、工具をボア壁に対して案内する。
【0022】
図6の組立分解図は、図1〜図5と同じ穴あけ器本体6を示す。図6による例示的な実施形態では、支持要素75は、リング状一体形成部分79を有する。一体形成部分79は、穴あけ器ヘッド4のヘッド継手側67と穴あけ器本体6のシャンク継手側70との両方に、穴あけ工具の中心軸8の方向において部分的に重なる。したがって、図6に示す支持要素75は、穴あけ器ヘッド4のヘッド継手側67と穴あけ器本体6のシャンク継手側70との両方を受け入れる両面受入ボウルを形成する。
【0023】
それとは対照的に、図7に示す支持要素75の例示的な実施形態は、環状一体形成部分79のみを有し、それは、穴あけ工具の中心軸8の方向において穴あけ器本体6のシャンク継手側70に向かって延在する。言い換えれば、環状一体形成部分79は、穴あけ器本体6のシャンク継手側70のみに重なり、同時に、面平行板として穴あけ器ヘッド4のヘッド継手側67を圧迫する。
【0024】
それとは対照的に、図6に示す例示的な実施形態における環状一体形成部分79は、穴あけ器本体6のシャンク継手側70と穴あけ器ヘッド4のヘッド継手側67との両方に部分的に重なり、したがって、穴あけ器本体6のシャンク継手側70と穴あけ器ヘッド4のヘッド継手側67との両方に対する両面受入ボウルを形成する。一方、図7による例示的な実施形態は、穴あけ器本体6用の1つの受入ボウル、すなわち穴あけ器本体6のシャンク継手側70のみを形成する。
【0025】
図8に示す例示的な実施形態は、この場合もまた、穴あけ器本体6に関してのみ有効な受入ボウルと、穴あけ器ヘッド4を圧迫する面平行板とを有する支持要素75を示す。図7に示す例示的な実施形態とは対照的に、この例示的な実施形態では、環状一体形成部分79は、穴あけ器本体6のシャンク継手側70に、大幅に大きく重なる。工具が組み立てられると、中心軸8の方向における一体形成部分79の広がりは、図7に示す提示的な実施形態より大幅に大きくなる。このように、環状一体形成部分79に案内要素81を配置することが可能である。
【0026】
図9に示す例示的な実施形態は、こうした案内要素81の例として、環状一体形成部分79に対で取り付けられたガイドスタッドを示す。これら案内要素81は、加工プロセス中にボア壁を摺動する。
【0027】
図10に示す例示的な実施形態は、この場合もまた、穴あけ器本体6の方向にのみ有効な受入ボウルを有する支持要素75を示す。この場合、環状一体形成部分79は、曲げばねとして構成される。この目的で、環状一体形成部分79に、ばねスロット82が作成される。さらに、図11の図から、案内要素81が、穴あけ器本体6から環状一体形成部分79内に押し込まれることも分かる。そのばね作用により、環状一体形成部分79は、中心軸8に対して横切る横方向83において穴あけ工具に弾性的に取り付けられる。したがって、支持要素75は、曲げばね要素として設計される。
【0028】
当然ながら、穴あけ器本体6に関連する受入ボウルとしての支持要素75の構成に関して、図7〜図10のすべての実施形態を、穴あけ器ヘッド4に等しく適用することも可能である。両面に作用する受入ボウルが、穴あけ器本体6のシャンク継手側70のみでなく、穴あけ器ヘッド4のヘッド継手側67のより狭い領域にも部分的に重なる構成も考えられる。
【符号の説明】
【0029】
2 穴あけ工具
4 穴あけ器ヘッド
6 穴あけ器本体
8 中心軸
10 穴あけ器点
12 切削先端
14 排出開口部
15 溝
16 締付ねじ
18 ドライバピン
20 受入ポケット
22、22’ 冷却剤ボア
24、24’ 締付ボア
26 冷却剤通路
28 外側支持面
30 ドライバ面
32 補償要素
34 締付シャンク
36 シャンクレセプタクル
38 無頭止めねじ
40 工具
42 貫通孔
44 レセプタクル
46 棒先
48 締付ピン
50 受入開口部
52 締付要素
54 凹部
62 切削側
65 冷却剤通路
66 締結手段
67 ヘッド継手側
70 シャンク継手側
72 心出しボア
73 フランク
75 支持要素
76 貫通開口部
77 凹部
78 環状領域
79 一体形成部分
81 案内要素
82 ばねスロット
83 横方向
、r 曲率半径
α 回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの穴あけ器本体(6)と前記穴あけ器本体(6)に結合することができる穴あけ器ヘッド(4)とから構成される、複数部品からなる穴あけ工具であって、
前記穴あけ器本体(6)と前記穴あけ器ヘッド(4)との間に支持要素(75)が配置され、
摺動部分を形成するために、前記支持要素(75)が、前記穴あけ器本体(6)および前記穴あけ器ヘッド(4)の側面を越えて突出する環状領域(78)を有することを特徴とする、穴あけ工具。
【請求項2】
前記支持要素(75)が、穴あけ器本体(6)および穴あけ器ヘッド(4)の、継手領域において互いに割り当てられた、端面に対して面平行なディスクを備えることを特徴とする、請求項1に記載の穴あけ工具。
【請求項3】
前記支持要素(75)上のリング状一体形成部分(79)は、前記継手領域における前記穴あけ器本体(6)または前記穴あけ器ヘッド(4)の前記側面の一方、あるいは前記穴あけ器本体(6)または前記穴あけ器ヘッド(4)の前記側面の両方に部分的に重なることを特徴とする、請求項2に記載の穴あけ工具。
【請求項4】
前記ディスクおよび前記一体形成部分(79)が、各々、前記継手領域において前記穴あけ器本体(6)および前記穴あけ器ヘッド(4)の端部のための受入ボウルを形成することを特徴とする、請求項3に記載の穴あけ工具。
【請求項5】
前記穴あけ器本体(6)および前記穴あけ器ヘッド(4)に形成された溝(15)に対応する凹部(77)が形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の穴あけ工具。
【請求項6】
ボア壁において前記穴あけ工具を案内するために、前記リング状一体形成部分(79)の外周面上に案内要素(81)が形成されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の穴あけ工具。
【請求項7】
前記支持要素(75)が少なくとも部分的にコーティングされることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一項に記載の穴あけ工具。
【請求項8】
前記リング状一体形成部分(79)の前記外周面上に摩耗抑制コーティングされることを特徴とする、請求項7に記載の穴あけ工具。
【請求項9】
前記リング状一体形成部分(79)の前記外周面上に摩耗抑制要素が形成されることを特徴とする、請求項3〜8のいずれか一項に記載の穴あけ工具。
【請求項10】
前記リング状一体形成部分(79)が曲げばねとして構成されることを特徴とする、請求項3〜9のいずれか一項に記載の穴あけ工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−136415(P2011−136415A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271457(P2010−271457)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(399031078)ケンナメタル インコーポレイテッド (182)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
【住所又は居所原語表記】1600 Technology Way Latrobe PA 15650−0231, USA
【Fターム(参考)】