説明

穴あけ工具

【課題】液体シムの高温硬化及び穴あけ治具の機能を促進する穴あけ工具
【解決手段】工具206は、第一及び第二の構造部材202、204の間に配置された液体シム216の層を有する第一及び第二の構造部材を貫通して穴をあけることを提供する。工具は、構造部材にあけられる穴の位置を定める開口部を有する穴あけ治具208と、穴あけ治具の底表面の少なくとも一部分に結合されたヒートブランケット210を有し、液体シムに近接したエリアの前記構造部材の一に結合される。方法は、構造部材にあけられる穴に対応する穴あけ工具を提供するステップ、液体シムに近接したエリアに前記構造部材の一に前記工具を結合するステップ、前記ヒートブランケットをアクティブにし、既定の期間に硬化温度を超える温度まで液体シムの温度を上昇させるステップ、及び、前記穴あけ治具の前記穴を貫通して、前記構造部材及び前記液体シムに穴をあけるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体シムとともに使用する穴あけ工具に関するもので、より具体的には、液体シムの高温硬化及び穴あけ治具の機能を促進する穴あけ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業で使用される複合構造体などの構造部材は、多くの場合、構造部材を貫く穴をあけ、構造部材をボルトや他の締結装置のようなもので留めることにより、接合される。正確に穴をあけ適切に噛み合うことを確実にするため、できる限り締まった構造部材間の接合部分を有することが一般的に望まれる。しかしながら、部品のサイズ、形状、及び耐性により、空洞及び隙間がそのような構造部材間にしばしば存在することになる。
【0003】
正確に穴があけられ、ボルトが嵌められる際に構造部材間の接合部分が締まるように、液体シムがそのような構造部材間の空洞や隙間を縮小または除去するために使用される。液体シムは、一般的には粘着性の樹脂である。一般的な液体シムの例として、高い圧縮強度を持つエポキシ樹脂材料が含まれる。二の構造部材間に空洞または隙間が見つかると、その空洞または隙間をうめるのに十分な量の液体シムが構造部材間に塗布され、材料を硬化させるための時間が与えられる。液体シムは、室温または高温で硬化される。熱を加えることは、硬化工程の迅速化に大いに役立つ。続いて、締結装置が適用できるように、構造部材及び液体シムを貫通して穴があけられる。
【0004】
液体シムを使用して構造部材に穴をあける従来の方法は、工具を適用し且つそれらを除去するために、一般的に多大な時間、工程、工具、及び労働力が要求される。たとえば、一般的な方法として、はじめに構造部材間に液体シムが塗布され、液体シムを硬化するために特別な硬化工具が構造部材に適用される。次いで、穴あけ工程が始まる前に、硬化工具が除去されなければならない。除去された時点で、構造部材や液体シムなどを貫通して穴をあけるために、穴あけ治具のような穴あけ工具が適用される。それゆえ、液体シムを使用する際の現在の穴あけ方法では不十分である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本開示の第一の態様では、液体シムを使用する構造部材に穴をあける工具が提供され、これにより、工具を構造部材から除去せずに、液体シムの硬化すること及び穴をあけることが可能になる。工具は、少なくとも一の穴を定める穴あけ治具、及び、穴あけ治具の底表面の少なくとも一部分に結合されるヒートブランケットを有する。ヒートブランケットは、穴あけ治具により定められる少なくとも一の穴と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、その穴の少なくとも直径である、少なくとも一の穴を定める。
【0006】
好適には、ヒートブランケットは、穴あけ治具により定められる少なくとも一の穴と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、その穴の少なくとも直径である、少なくとも一の穴を定める。好適には、ヒートブランケットの底表面が穴あけ治具の底表面と同一平面になるように、ヒートブランケットは、穴あけ治具の底表面に形成された凹部に結合される。好適には、工具は、穴あけ治具とヒートブランケットとの間に位置付けられた断熱層を有する。好適には、穴あけ治具は、金属、プラスチックまたはゴムからなるグループから選択された材料から作られる。好適には、ヒートブランケットは、巻かれた抵抗線のグリッドを囲むゴムパッドを有する。好適には、ヒートブランケットは、液体シムの層に少なくともおよそ華氏140度の温度を提供するように構成される。
【0007】
本開示による別の態様では、工具は、第一及び第二の構造部材の間に配置された液体シムの層を有する第一の構造部材及び第二の構造部材を貫通して穴をあけることを提供する。工具は、あけられる穴の位置を定める開口部を有する穴あけ治具、及び、穴あけ治具の底表面の少なくとも一部分に結合されるヒートブランケットを有する。ヒートブランケットは、穴あけ治具の開口部と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、その開口部の少なくとも直径である、開口部を有する。ヒートブランケットが構造部材に隣接するように、液体シムのエリアに隣接する構造部材の一に工具を結合することにより、工具は使用される。
【0008】
好適には、ヒートブランケットは、穴あけ治具により定められた開口部と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、その開口部の少なくとも直径である、開口部を有する。好適には、ヒートブランケットの底表面が穴あけ治具の底表面と同一平面になるように、ヒートブランケットが、穴あけ治具の底表面に形成された凹部に結合される。好適には、工具は、穴あけ治具とヒートブランケットとの間に結合される断熱層をさらに有する。好適には、穴あけ治具は、金属、プラスチックまたはゴムからなるグループから選択された材料から作られる。好適には、ヒートブランケットは、巻かれた抵抗線のグリッドを囲むゴムパッドを有する。好適には、ヒートブランケットは、液体シムの層に少なくともおよそ華氏140度の温度を提供するように構成される。
【0009】
本開示のさらに別の態様では、互いの間に配置される液体シムの層を有する第一及び第二の構造部材に穴をあける方法が提供される。方法は、ヒートブランケットが穴あけ治具の底表面の少なくとも一部分に結合され、ヒートブランケットに結合された穴を定める穴あけ治具を有する穴あけ工具を提供するステップ、液体シムに近接したエリアに構造部材の一に穴あけ工具を結合するステップ、ヒートブランケットをアクティブにし、硬化温度を超える温度に液体シムの温度を上昇させるステップ、液体シムが硬化するのを待つステップ、穴あけ治具及びヒートブランケットの穴を貫通し、第一の構造部材、第二の構造部材、及び硬化された液体シムを貫通するまで穴をあけるステップ、及び構造部材から工具を除去するステップを含む。
【0010】
好適には、方法において、ヒートブランケットは、穴あけ治具により定められる穴と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、その穴の少なくとも直径である、穴を定める。好適には、方法は、前記構造部材から前記工具を除去するステップをさらに含む。好適には、方法において、液体シムの温度は、少なくともおよそ華氏140度まで上昇させられる。好適には、方法において、ヒートブランケットの底表面が穴あけ治具の底表面と同一平面になるように、ヒートブランケットは、穴あけ治具の底表面に形成された凹部に結合される。好適には、方法は、穴あけ治具とヒートブランケットとの間で断熱層を検査するステップを含む。
【0011】
他の目的、特徴及び効果は、図面とともに好適な実施形態の詳細な説明が考察されれば、明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】穴をあけ且つ液体シムを硬化させるための穴あけ工具を使用する工程を示す。
【図2A】接合される構造体の適合前の穴あけ工具の等角図を示す。
【図2B】図2Aの線2B−2Bに沿った断面図を示す。
【図3A】接合される構造体に適合される穴あけ工具の等角図を示す。
【図3B】図3Aの線3B−3Bに沿った断面図を示す。
【図4A】接合するために穴あけ工具を構造体に適合し、構造体に穴を開ける様子を示す等角図である。
【図4B】図4Aの線4B−4Bに沿った断面図を示す。
【図5A】穴あけ工具が接合された構造体から除去され、構造体に穴が開けられた様子を示す等角図である。
【図5B】図5Aの線5B−5Bに沿った断面図を示す。
【図6A】本開示の内容を使用して形成される穴に固定された留め具と接合される第一及び第二の構造体の等角図を示す。
【図6B】図6Aの線6B−6Bに沿った断面図を示す。
【図7A】底側を上面にして描かれた、穴あけ工具の第一の実施形態の等角図を示す。
【図7B】底側を上面にして描かれた、ヒートブランケットの凹部を伴う、穴あけ工具の第二の実施形態の等角図を示す。
【図7C】底側を上面にして描かれた、ヒートブランケットの凹部及びヒートブランケットと穴あけ治具との間の断熱材の層を伴う、穴あけ工具の第三の実施形態の等角図を示す。
【0013】
以下で図面を参照するが、異なる図面の類似の参照番号は類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、液体シムとともに使用する穴あけ工具、及びそれを使用する方法を提供する。穴あけ工具は、あけられる穴の位置を示す穴あけ位置合わせ用の穴を有する穴あけ治具、及び、穴あけ治具の底表面の少なくとも一部分を覆う付属のヒートブランケットを有する。ヒートブランケットは、穴あけ治具の穴に対応し、且つ、その穴と軸方向に一列に整列される穴を有してもよい。工具は、硬化工具及び穴あけ治具の二元的な役割を果たすことにより、製造時間及びコストの効率化を提供し、且つ、別個の硬化工具及び別個の硬化工具の使用に関わる時間と労力の必要性を取り除く。さらに、この単独の工具は二元的な役割で使用できるので、硬化する間及び穴をあける間に、工具のより高い可搬性が提供される。
【0015】
これから図1を参照して、穴をあけ且つ高温で液体シムを硬化するための穴あけ工具の使用方法を示し、説明する。また、穴あけ工具が使用される例となる設定を示す図2Aから図6B、及び、穴あけ工具の追加的実施形態を示す図7Aから図7Cについても言及する。
【0016】
ステップ102、図2A及び図2Bでは、第一の構造体202、第二の構造体204及び液体シム216の層が提供される。第一の構造体202及び第二の構造体204は、ボルトまたは穴をあけることを必要とする他の締結方法によって接合される組立品を有する。そのような組立品において、望まれない空洞または隙間が、第一の構造体202と第二の構造体204との間に存在する。
【0017】
そのような空洞を埋めるため、液体シム216が使用される。一般的な液体シム216は、高い圧縮強度を有するエポキシベースの材料からなる。そのような液体シム216は、ある厚さ未満の空洞を埋めるために一般的に使用される。炭素複合体に適する市販の液体シムの一例として、カリフォルニア州、Hysol Corporation of Bay Pointから入手可能なHysol Brand Liquid Shimsが挙げられる。
【0018】
接合される第一の構造体202及び第二の構造体204は、多種多様な材料のいずれかとする。本開示の穴あけ工具206は、炭素複合構造体と接合する状況で特に有益である、というのは、それらによりヒートブランケットから液体シムの層へ十分な熱伝達が可能になるからである。しかしながら、穴あけ工具は、十分に熱を伝えるいかなる材料、またはヒートブランケットとともに液体シムの下位層を十分に暖められる他のいかなる材料とも使用できる。
【0019】
また、工具206は、空洞または隙間がつくられてもよいとする精密部品の寸法公差に起因して、航空宇宙用材料に使用される炭素複合材との関連においても特に有益である。しかしながら、そのようなシムが使用されるいかなる状況においても、液体シムに熱を加え、結果として液体シムの硬化を加速するために穴あけ工具が使用される、ということが理解されるべきである。
【0020】
液体シム216は二の構造体のうちの一に付加され、それらの構造体は結合される。必要ならば、構造体に圧力を加え、不必要な液体シム216を押し出す。選択的に、液体シム216は、構造要素202及び204が結合された後に、シリンジなどの装置によって付加される。
【0021】
ステップ104では、ヒートブランケット210に結合された穴あけ治具208を有する穴あけ工具206が提供される。穴あけ治具208は、構造体202及び204への迅速かつ正確な配置及び穴あけを促進するために提供され、アルミニウムまたは繊維ガラスのような液体材料から作られ、または、平坦でない部分または輪郭部分については、それらの部分の表面に一致するゴムのような弾力性物質から作られる。穴あけ治具208の形状、サイズ及び構成は、接合して使用される構造体の形状、サイズ、構成及び位置によって決定される。
【0022】
穴あけ治具208は、一または複数の穴212を定めるが、それらの穴は、下位の構造体の位置を示し、下位の構造体で穴をあけることを促進するものである。穴あけ治具208は、既定の穴あけ構造に基づいて、一列に整列して穴をあけるのに役立つ。それゆえ、穴あけ治具は、構造要素202及び204に穴をあけるのに貫通する少なくとも一の穴212を有する。また、穴あけ治具208は、構造体上に治具208の位置付け及び方向付けのための特性を有する。この特性は、調整穴及び工具ピンを有する。図2A及び図2Bにおいて、工具206上の穴212を穴があけられる構造体202及び204上のポイントと正しく一列に整列するために、工具ピン211は、穴あけ治具208の穴212に挿入され貫通し、第一及び第二の構造体202及び204上にある一セットの調整穴213と一列に整列されるように示されている。調整穴213は、あけられる穴の総数の小さなサブセットを有しており、それらは標準より小さい穴とされる。工具ピン211の代わりに、クレコタイプの一時的な留め具が穴あけ治具の穴に挿入され、構造体202及び204の調整穴213まで貫通されてもよい。クレコはレベットの代わりに使用される一時的な留め具の種類であり、ピンを収容する円筒軸からなる。ピンは、バネ押上式であり、ヘッドとプロングを伴うテールを有する。クレコは、テールを先にして二の構造体に挿入され接合される。ヘッドが押し下げられると、プロングがクレコから伸び、引き続きヘッドがゆるめられると、プロングは引っ込むが、外に向かって伸び、構造体の一の表面に達し、クレコをその場所に保持する。ヘッドに近接したフランジは、クレコを別の構造体に貼り付け、これにより二つの構造体を互いに所定の場所に保持する。
【0023】
穴あけ治具208を使用するため、穴あけ治具208の穴が穴を必要とする構造体のエリアに対応するように、穴あけ治具208は、穴を必要とし一列に整列された構造体202及び204上の位置に配置される。構造が液体シムを含まず、且つ硬化が要求されない場合は、ドリルは穴あけ治具208の穴を貫通して構造体に穴をあけるために使用される。
【0024】
ヒートブランケット210は、液体シム216を硬化させるための構造体を介して十分な熱を提供できるいかなる種類の素材でもよい。一の適する種類のヒートブランケット210は、繊維ガラスと強化されたシリコンゴムの二層の間で加硫処理された、巻かれた抵抗線のグリッドを含むシリコンゴムパッドからなる。たとえば、適するヒートブランケットは、ワシントン州シアトルのHeatcon Composite Systemsから入手できる。ヒートブランケット210は、ヒートブランケット210から伸びる一または複数のワイヤー221に接続された外部の電源(図示せず)により、電力供給される。ワイヤー221の外端は、プラグまたは他のクイックリリースタイプのコネクタなど、ワイヤーを電源に接続するためのあらゆる種類の市販の手段に適合される。ヒートブランケットからの熱による損傷を防ぐために、ワイヤーは保護剤に適合される。
【0025】
ヒートブランケット210は、穴あけ治具208の形状に対応する形状を有するよう形成され、且つ、穴あけ治具208の穴212に対応する穴214を有する。それゆえ、穴あけ工具206は、工具、すなわち、ヒートブランケット210及び穴あけ治具208、の複合構造を貫通する穴212及び214を有する。ヒートブランケットの穴は、穴あけ治具の穴と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、穴あけ治具の穴の少なくとも直径である。この構造により、穴あけ工具206が所定の位置にある間に、構造体に穴をあけることが可能になる。
【0026】
ヒートブランケットは、穴あけ治具の穴を取り囲む底表面全体を覆うことができ、また、底表面の一部分のみを覆うこともできる。それゆえ、ヒートブランケットは、ヒートブランケットの連続的な層であってもよく、また、穴あけ治具の穴が覆われないという条件で、穴あけ治具の長さまたは幅に沿って一定の間隔を保つ、あるいは、穴あけ治具の底表面の少なくとも一部分を覆う別の類似の構造を有する、一セットの細長い形状を有していてもよい。また、ヒートブランケットは、穴あけ治具の長さまたは幅よりも細い、細長い形状を有していてもよい。
【0027】
ヒートブランケットの形状を決定する際に考慮すべきことは、熱分配である。液体シムが所望の時間内に硬化するように、ヒートブランケットからの十分な熱量が液体シムの層のすべてのエリアへ到達することが有益である。このことは、穴があけられる位置に近接した液体シムの層のこれらの部分に、特に当てはまる。
【0028】
液体シムの層に十分な熱伝達を確保するのに役立つ方法の一つは、ヒートブランケットを液体シムの層全体の真上に形成することである。これにより、液体シムの層のすべての部分の真上に熱源を確保できる。しかしながら、熱はヒートブランケットからヒートブランケットの真下ではない位置に伝わるので、このような構造は必ずしも必要ではない。それゆえ、液体シムの層を完全には覆わないヒートブランケットを使用することも容認できる。しかしながら、液体シムのエリア全体を硬化させるのに十分な熱を供給するには、ヒートブランケットが十分な量の液体シムを覆うことが好ましい。要求されるヒートブランケットの量は、構造体の材料、構造体の厚さ、構造体の形状、及び他の要因によって決まる。たとえば、ヒートブランケット素材と液体シム層との距離が増加するにつれ液体シムへ供給される熱量は減少するので、構造体が厚くなると、より多くのヒートブランケット素材が液体シムの層の真上にあることが必要になる。
【0029】
図7Aから図7Cは、底面を上面にした方向で、穴あけ工具の実施形態を示す。
【0030】
図7Aは、上述したように、穴あけ治具の平らな底表面に結合されたヒートブランケットを有する穴あけ工具、すなわち、図2Aから図6Bに示される穴あけ工具206の第一実施形態を図示する。穴あけ工具206の底表面(“ヒートブランケットサイド”ともいう)218が、上に向かって示される。ヒートブランケット210の底表面が穴あけ工具206の底表面となるように、ヒートブランケット210の形状及びサイズは、穴あけ治具208の形状及びサイズに合わせるのが好ましい。
【0031】
図7Bは、穴あけ治具の底表面により形成された縁718で囲まれた、穴あけ治具708の底表面の少なくとも一部分において、穴あけ治具708に凹部714が提供された、穴あけ工具706の実施形態を示す。ヒートブランケットの底表面713が穴あけ治具708の底表面の縁と同一平面になるよう、凹部は、ヒートブランケット710が凹部の小さな空間にはまるほど深くなければならない。それゆえ、穴あけ工具の底表面は、ヒートブランケット710の底表面713及び縁718から構成されている。さらに、穴あけ工具706が取り付けられる構造(つまり、暖められる構造体に対して)内にあるときには、ヒートブランケット及び底表面の縁は構造体と同一平面上にある。
【0032】
図7Cは、図7Bで示した実施形態に類似する、穴あけ治具728が凹部734を有する穴あけ工具726の実施形態である。本実施形態では、かなりの量の熱がヒートブランケット730から穴あけ治具728へ伝達されるのを防ぐため、凹部734は、断熱材736の層によって覆われている。このことは、たとえば、穴あけ治具728が熱の良導体である場合、または、穴あけ治具728が高い温度にさらされることにより曲がる、溶ける、または他の悪影響を受ける可能性のある物質から作られている場合、など、様々な理由に有益である。断熱材は、図7Aで示すヒートブランケット210と穴あけ治具208との間で使用してもよい。
【0033】
図7A、図7B及び図7Cに示される穴あけ工具206、706、726の各々の実施形態において、パンチング、カッティング、またはドリリングにより、穴はヒートブランケットを貫通する。ヒートブランケットは、このような穴を有するのもとして特別に製造してもよい。穴がヒートブランケットからパンチング、カッティングまたはドリリングされる場合には、ブランケット内で内部の発熱体の露出を防ぐために、電気的に及び/または熱的に断熱材が使われる。ヒートブランケットは、穴あけ治具に、接着剤で結合される、または、適する留め具で機械的に留められる。
【0034】
図2A及び図2Bでは、第一の構造体202、第二の構造体204及び穴あけ工具206が示される。穴あけ工具206は、穴あけ治具208及びヒートブランケット210を有するものとして図示され、その両者はそれらを貫通して延びる穴212及び214を有する。第一の構造体202及び第二の構造体204が、それらの間に配置された液体シム216の層と共に図示されている。この構造における液体シム216は硬化されない。
【0035】
ステップ106、図3A及び図3Bにおいて、熱が構造体204に直接加わるように、工具のヒートブランケット210のサイド218が構造体204と向かい合った状態で、穴あけ工具206は、第一の構造体202または第二の構造体204に(図3A及び3Bにおいては、構造体204に)結合される。工具206の穴212は、穴があけられる構造体204上のポイントと一列に整列される。
【0036】
穴あけ工具206は、接着剤の使用または物理的接着機構を介して、第一の構造体202または第二の構造体204に接着される。
【0037】
ステップ108において、ヒートブランケット210はアクティブにされ、構造体204を介して熱が液体シム216に加えられ、その硬化は加速する。エポキシベースの液体シム216などの、一般的な熱硬化性液体シム216について、硬化はおよそ華氏140度で約1時間で完了する。熱ベースの加速がなければ、同様の液体シム216を室温で硬化するには、およそ9時間以上かかる。それゆえ、工具206は、製造時間短縮の観点から多大な利益を提供する。工具206は、ヒートブランケット210が必要とされない状況においては、ヒートブランケット210をアクティブにすることなく使用される。
【0038】
ステップ110では、ヒートブランケット210がアクティブにされた後に、液体シム216は所定時間硬化される。
【0039】
ステップ112、図4A及び図4Bにおいて、液体シムが硬化した後に、穴212及び214により示されるように、構造体204及び202及び液体シム216を貫通して穴をあけるために、ドリル220が使用される。小さい直径の調整穴がある場合には、これらの穴はフルサイズまで全開される。
【0040】
ステップ114、図5A及び図5Bにおいて、穴あけ工具206が取り除かれる。これにより、第一の構造体202及び第二の構造体204、及び硬化されたシム222の層はそのまま残され、それらすべてが所望の位置を貫通した穴を有することになる。
【0041】
ステップ116、図6A及び図6Bにおいて、この時点で貫通した穴を有する、第一の構造体202、第二の構造体204及び硬化されたシム222の層は、留め具224によって連結される。留め具224は、ナット付きのネジ状のボルトを有し、ボルトは第一の構造体202及び第二の構造体204の穴を貫通し、ナットで保持される。留め具224は、代替的に、穴を貫通して二の構造体を連結するのに適したいかなる種類の留め具を有することができる。
【0042】
図2Aから図6Bまでに示された構造体は単なる例となるものであり、上述した穴あけ工具は広範な種類の構造、形状及び穴の構造で使用できると理解されるべきである。
【0043】
それゆえ、本開示の主題である穴あけ工具は、多数の部品を交換する必要がなく、簡単でわかりやすい方法で発熱体及び穴あけ位置合わせ工具(穴あけ治具)の適用を可能にする。これにより、時間、労働力、人件費が削減され、液体シムを必要とする穴あけ手順の複雑さが軽減される。さらに、本開示により促進される液体シムの高温硬化により、そのような液体シムを必要とする部品形成に必要な時間が大いに短縮される。
【0044】
様々な実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示の範囲から逸脱せずに、様々な変更が行われてもよく、且つ、同等のものがその構成要素として代用されてもよいことが、当業者には理解されるべきである。また、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、本開示の内容に特定の状況を適用するために、多くの変更が行われてもよい。それゆえ、本開示の方法を実行するためにここで開示され熟考された特定の実施形態に本開示を限定することが目的ではなく、本開示が添付された請求項の範囲内に収まる全ての実施形態を含んでいることが目的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の穴(212)を定める穴あけ治具(208)、及び
穴あけ治具(208)の底表面(218)の少なくとも一部分に結合されたヒートブランケット(210)を有する穴あけ工具(206)。
【請求項2】
ヒートブランケット(210)は、穴あけ治具(208)により定められる少なくとも一の穴(212)と実質的に軸方向に一列に整列され、且つ、少なくとも一の穴(212)の少なくとも直径である、少なくとも一の穴(214)を定める、請求項1に記載の工具(206)。
【請求項3】
ヒートブランケット(210)の底表面(713)が穴あけ治具(208)の底表面(218)と同一平面になるように、ヒートブランケット(210)は、穴あけ治具(218)の底表面(208)に形成された凹部(714)に結合される、請求項1に記載の工具(206)。
【請求項4】
穴あけ治具(208)とヒートブランケット(210)との間に位置付けられた断熱層をさらに有する、請求項1に記載の工具(206)。
【請求項5】
穴あけ治具(208)が、金属、プラスチックまたはゴムからなるグループから選択された材料から作られる、請求項1に記載の工具(206)。
【請求項6】
ヒートブランケット(210)は、巻かれた抵抗線のグリッドを囲むゴムパッドを有する、請求項1に記載の工具(206)。
【請求項7】
ヒートブランケット(210)は、液体シム(216)の層に少なくともおよそ華氏140度の温度を提供するように構成された、請求項1に記載の工具(206)。
【請求項8】
第一の構造部材(202)と第二の構造部材(204)との間に配置される液体シム(216)の層を有する第一及び第二の構造部材(202、204)に穴をあける方法であって、
穴あけ治具(208)は、穴あけ治具(208)の底表面(218)の少なくとも一部分を覆うヒートブランケット(210)に結合されており、構造部材(202、204)にあけられる穴に対応する穴(212)を有する前記穴あけ治具(208)を有する穴あけ工具(206)を提供するステップ、
液体シム(216)に近接したエリアに前記構造部材(202、204)の一に前記工具(206)を結合するステップ、
前記ヒートブランケット(210)をアクティブにし、既定の期間に硬化温度を超える温度に液体シム(216)の温度を上昇させるステップ、及び
前記穴あけ治具(208)の前記穴(212)を貫通して、前記構造部材(202、204)及び前記液体シム(216)に穴をあけるステップを含む方法。
【請求項9】
液体シム(216)の温度は、少なくともおよそ華氏140度まで上昇させられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒートブランケット(210)の底表面(713)が穴あけ治具(208)の底表面(218)と同一平面になるように、ヒートブランケット(210)が、穴あけ治具(208)の底表面(218)に形成された凹部(714)に結合される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
穴あけ治具(208)とヒートブランケット(210)との間に断熱層を提供するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2013−43283(P2013−43283A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−185307(P2012−185307)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】