説明

究極の磁気ランダムアクセスメモリベース3値CAM

【課題】 究極の磁気ランダムアクセスメモリベース3値CAMを提供する。
【解決手段】 本発明は、第1および第2の磁気トンネル接合部であって、それらのいずれの側にそれぞれ延伸する第1および第2のストラップにそれぞれ接続された第1および第2の磁気トンネル接合部と、第1および第2のストラップの一端部にそれぞれ接続された第1および第2の選択トランジスタと、第1および第2の電流線と、第1および第2の磁気トンネル接合部を、第1および第2のストラップを接続する接合部端部に対向する接合部端部において、直列に電気的に接続する導電線と、を含む磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルに関する。本明細書で開示されるセルは、サイズがより小さく、高セル密度アレイを有するメモリ装置において有利に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ランダムアクセスメモリに関し、特に、限定するわけではないが、磁気トンネル接合部を含む磁気ランダムアクセスメモリMRAMベース3値連想メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
連想メモリ(CAM)は、ランダムアクセスメモリ(RAM)技術の所産である。ワードのアドレスに基づいてワードにアクセスするRAMと異なり、CAMは、ワードの内容に基づいてワードにアクセスする。CAMは、従来のRAMと同様の方法でデータを記憶する。しかしながら、CAMを「読み出す」ことには、一致すべき入力データを提供し、次に、一致するものを求めてCAMを検索し、一致するもののアドレスを出力できるようにすることが含まれる。CAMは、次のように設計される。すなわち、ユーザが、データワードを供給し、CAMが、そのメモリ全体を1クロックサイクルで検索して、そのどこかにそのデータワードが記憶されているかどうかを確かめるように設計される。データワードが見つかった場合には、CAMは、そのワードが見つかった1つまたは複数の記憶アドレスのリストを返す。CAMは、装置の起動時にプリロードでき、かつ装置の動作中に再書き込みすることができる。
【0003】
メモリ全体を素早く検索するために、CAMは、各メモリ行ごとに別個の一致論理を用いる。検索キーがユーザによって提示されると、検索キーの各ビットは、列における全ての一致論理セルに対して同時に可視化される。次に、一致論理セルの各行が、提供された検索キーと連想されたメモリ行における記憶されたキーとの間でビットごとの比較を実行する。比較結果は、2進値にされて(例えば、一致には1、不一致には0)、プライオリティエンコーダに供給され、このエンコーダが、最終的に検索結果を生成する。全てのメモリ行に対する比較が並列に実行されるので、CAMは、広帯域幅で一定時間の検索性能を達成する。
【0004】
CAMおよび特に3値CAM(TCAM)は、主にネットワーク装置で用いられる。これらのCAMおよびTCAMは、通常のメモリのように読み出しおよび書き込みを提供するが、さらにメモリ全体においてあらゆる一致データのインデックスを見つける検索をサポートする。特にTCAMには、1および0の両方に一致するワイルドカードビットを含むことができる。これらのワイルドカードは、メモリの両方のアクセス動作に使用でき(検索のいくつかのビットが「don’t care」値を有することを示す)、またはデータ自体と共に記憶することができる(データのいくつかのビットは、一致を決定するために用いるべきではないことを示す)。マスクビットがアクティブである(例えば、論理0値にセットされる)場合には、3値CAMセルは、「don’t care」またはX値を記憶しているように扱われるが、これは、アクティブにマスクされた3値CAMセル上で実行される全ての比較演算が、結果としてセルの一致状態をもたらすことを意味する。したがって、論理0データビットが、アクティブマスクビットおよび論理1データビットを記憶している3値CAMセルに適用された場合には、比較演算は、セルの一致状態を示す。セルの一致状態はまた、論理1データビットが、アクティブマスクビットおよび論理0データビットを記憶している3値CAMセルに適用された場合にも示される。したがって、TCAMは、部分マッチングを実行することができる。TCAMによって提供される完全並列検索によって、ルーティングテーブル検索のような多数の複雑な演算の実行が容易にされる。TCAMがメモリ内のあらゆる位置を一度で検索するので、TCAMにおける要素の順序付けは、それほど重要ではなく、大きなインデックス構造は、多くの場合に完全に回避することができる。この並列検索は、(IP検索のような)いくつかのアプリケーションの要件を直接実行し、より多くの検索方式の構成要素としての役割を果たすことができる。TCAMはまた、パケット分類、アクセスリスト制御、侵入検出用のパターンマッチングなどの他の高速ネットワークアプリケーションにおいて用いられる。TCAMはまた、コプロセッサとしてネットワークプロセッサと共に用いられて、パケット分類およびルーティング検索などのいくつかのアプリケーションにおいてネットワークプロセッサを補足する。
【0005】
スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)TCAMセルの典型的な実装は、10〜12のトランジスタを組み合わせた、2つのSRAMを含む3値記憶装置からなる。このTCAMセルはまた、比較論理を有するが、この比較論理は、基本的には4つの追加的なパストランジスタを用いたXNORゲートである。したがって、実装は、14〜16のトランジスタの非常に大きなセルサイズ、したがって高価な装置に帰着する。
【0006】
最近、熱支援切り替え(TAS)またはスピントルク移動(STT)手順を用いた磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)ベースTCAMが、2008年11月4日出願で同時係属中の特許文献1に提案されたが、この文献は、本出願の譲受人に譲渡され、その開示は、その全体において、全ての目的のために、参照によって本明細書に援用されている。
【0007】
かかるTAS−MRAM TCAMセル1の例が、図1に概略的に示されている。TAS−MRAM TCAMセル1には、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’が含まれ、各磁気トンネル接合部2、2’は、記憶層とセンス層との間に配置された絶縁層から形成される(絶縁層、記憶層およびセンス層は、図1には示されていない)。2つの磁気トンネル接合部2、2’は、第1の力線5および第2の力線(同じく図示せず)を共有するように配置されるが、しかしそれでも2つの別個の電流線3、3’によってアドレスを取ることができる。第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、第1および第2のストラップ14、14’をそれぞれ通して選択トランジスタ(図示せず)に電気的に接続される。内蔵CMOS前置増幅器12が、接合部2、2’に電気的に接続される。CMOS前置増幅器12には、典型的には、イネーブルトランジスタ(図示せず)と、2つのPチャネルMOSFETトランジスタおよび2つのNチャネルMOSFETトランジスタ(同じく図示せず)が含まれる。図1において、差し込み図は、上から見た2つの磁気トンネル接合部2、2’を示す。
【0008】
書き込み動作中に、書き込み界磁電流(図示せず)が、第1の力線5を通過して、記憶層の磁化方向を切り替えることができ、かつ書き込み界磁電流の方向に依存して高論理状態「1」または低論理状態「0」でデータビットを記憶できる書き込み界磁電流を生成するようにする。加熱電流パルス(同じく図示せず)が、記憶層磁化の切り替えを容易にするために、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’を連続的に通過する。
【0009】
検索動作中に、高「1」または低「0」論理状態を備えた検索データビットが、セル1における記憶されたデータビットを検索するために、第1の力線5を介して、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’のセンス層に連続的に供給される。この目的のために、検索界磁電流が、力線5を通過し、検索磁界の方向に従って各磁気トンネル接合部2、2’のセンス層の磁化方向を切り替えることができる検索磁界を生成する。次に、センス層の磁化方向が、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’間の差動接合部抵抗を測定することによって、記憶層の磁化方向と比較される。TAS−MRAM TCAMセル1には、さらに、CMOS前置増幅器12によって駆動されるプルダウンNMOSセンストランジスタ8、およびセンストランジスタ8によって制御されるプリチャージされた一致線9が含まれる。CMOS前置増幅器12は、1ビットアナログ/デジタル変換器(ADC)の役割をして、磁気トンネル接合部2、2’の差動抵抗を2進レールツーレール電圧に変換し、かつプルダウンNMOSトランジスタ8をブロックモードから通過モードへ駆動して、プリチャージされた一致線9を放電したりしなかったりするようにする。
【0010】
TAS−MRAM TCAMセル1は、少なくとも5つのトランジスタを用いるCMOS前置増幅器12ゆえに、かなり大きなサイズである。さらに、TAS−MRAM TCAMセル1は、遅い検索動作に帰着する大容量、および高電力消費を伴う。したがって、より早い検索速度およびより低い電力消費を伴うTAS−MRAM TCAMセルの必要がある。
【0011】
特許文献2は、磁気トンネル接合部ベースのメモリセルを有するCAMを開示している。磁気トンネル接合部は、第1および第2の磁気層を有し、かつデータストアおよびデータセンスの役割をすることができる。各セル内では、登録されるデータは、1つまたは複数の電流線における電流パルスを介して、磁気トンネル接合部における第1の磁気層の磁気方向を設定することによって書き込まれる。登録されたデータとの比較用の入力データは、電流線を介し、第2の磁気層の磁気方向を通して同様に設定することができる。データセンスは、セル抵抗を測定することによって実行されるが、セル抵抗は、磁気層の相対的な磁気方向に依存する。データ記憶、データ入力およびデータセンスが、1つのセルに統合されるので、メモリは、より高い密度と不揮発性とを組み合わせる。メモリは、高速、電力消費の低減、およびデータマスキングをサポートすることができる。
【0012】
非特許文献1は、MRAM装置を統合する18kbの不揮発性TCAMの設計を提示している。磁気TCAMは、従来のTCAMセルを、16のトランジスタから2つのMRAMセルおよび6つのトランジスタへと単純化することができる。さらに、かかる装置は、本質的に不揮発性、例えば耐停電性である。MRAMセルは、情報を記憶するため、およびXOR論理関数のように情報を入力されたデータと比較(検索)するための両方に用いられるのに対して、CMOS部分は、セル状態を検出および増幅するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第08291025号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/040561号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M. El Baraji et. al., ”Towards an ultra−low power, high density and non−volatile Ternary CAM”, Technology Symposium, 2008, 9th Annual IEEE, Piscataway, NJ, USA, 11 November 2008, pages. 1−7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願は、先行技術の少なくともいくつかの制限を克服する磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態には、より小さなサイズ、高い検索速度およびより低い電力消費のセルが含まれる。
【0017】
実施形態によれば、第1および第2の磁気トンネル接合部と、第1および第2の磁気トンネル接合部にそれぞれ接続され、かつ第1およびそれぞれ第2の磁気トンネル接合部のいずれの側にそれぞれ延伸する第1および第2のストラップと、第1および第2のストラップの一端部にそれぞれ接続され、かつ第1および第2のストラップをそれぞれ通して加熱電流を選択的に通過させることができる第1および第2の選択トランジスタと、加熱電流および/またはセンス電流を通過させるための第1および第2の電流線と、を含む磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルであって、このセルが、第1および第2の磁気トンネル接合部を、第1および第2のストラップを接続する接合部端部に対向する接合部端部において、直列に電気的に接続する導電線をさらに含み、第1および第2の電流線が、2つの選択トランジスタがブロックモードである場合に第1および第2の磁気トンネル接合部にセンス電流を通過させるために、第1および第2のストラップのもう一方の端部にそれぞれ接続されるセル。
【0018】
実施形態において、セルには、少なくとも第1の書き込み界磁電流を通過させるための第1の力線がさらに含まれる。
【0019】
別の実施形態において、セルには、第1の力線にほぼ直角に配置された第2の力線がさらに含まれる。
【0020】
さらに別の実施形態において、セルには、一致線に電気的に接続されたセンストランジスタがさらに含まれるが、このセンストランジスタは、2つの磁気トンネル接合部間における導電線上の電圧によって駆動される。
【0021】
さらに別の実施形態において、セルには、ビット線および検索ワード線に電気的に接続されたビットトランジスタが含まれるが、このビットトランジスタは、ビット線にビット電流を通過させるために検索ワード線によって制御される。
【0022】
さらに別の実施形態において、各磁気トンネル接合部は、第1の安定方向から第2の安定方向に切り替えることができる磁化を有する記憶層と、可変磁化方向を有するセンス層と、記憶層およびセンス層間の絶縁層と、から形成される。
【0023】
さらに別の実施形態において、記憶層は、硬質強磁性材料で作製される。
【0024】
さらに別の実施形態において、センス層は、低保磁力の軟質強磁性材料で作製される。
【0025】
さらに別の実施形態において、各磁気トンネル接合部には、記憶層に交換バイアスをかけ、その磁化を高温閾値で非固定化する反強磁性記憶層が含まれる。
【0026】
さらに別の実施形態において、磁気メモリ装置は、複数の磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルを含むアレイを組み立てることによって形成される。
【0027】
さらに別の実施形態において、磁気メモリ装置の各セルは、センストランジスタをさらに含み、かつセンストランジスタを介して一致線に接続される。
【0028】
本発明はまた、磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルに書き込みデータを書き込み、かつ検索する方法であって、
書き込み動作中に:
書き込み動作の第1の書き込みサイクル中に、第1の磁気トンネル接合部の記憶層に第1の書き込みデータを書き込むことと、
書き込み動作の第2の書き込みサイクル中に、第2の磁気トンネル接合部の記憶層に第2の書き込みデータを書き込むことと、
検索動作中に:
第1の力線を通過する検索界磁電流の極性に従って、第1および第2の磁気トンネル接合部のセンス層の磁化を、第1および第2の配向方向に配向させることと、
第1および第2の選択トランジスタがブロックモードである場合に、第1および第2のストラップを介して、第1および第2の磁気トンネル接合部にセンス電流を通過させることによって、前記第1および第2の書き込みデータを、2つの磁気トンネル接合部のセンス層の配向された磁化と比較することと、
を含む方法に関する。
【0029】
実施形態において、第1の書き込みデータの前記書き込みには、
第1の磁気トンネル接合部を高温閾値に加熱することと、
第1の磁気トンネル接合部の記憶層の磁化を第1の方向に切り替えることと、
第1の磁気トンネル接合部の記憶層の磁化が、書き込まれた状態において固定される低温閾値に、第1の磁気トンネル接合部を冷却することと、
が含まれ、第2の書き込みデータの前記書き込みには、
第2の磁気トンネル接合部を高温閾値に加熱することと、
第2の磁気トンネル接合部の記憶層の磁化を第2の方向に切り替えることと、
第2の磁気トンネル接合部の記憶層の磁化が、書き込まれた状態において固定される低温閾値に、第2の磁気トンネル接合部を冷却することと、
が含まれる。
【0030】
別の実施形態において、前記セルには、第1の力線にほぼ直角に配置された第2の力線がさらに含まれ、第1の磁気トンネル接合部の記憶層の磁化の前記切り替えには、第1の極性を有する第1の書き込み界磁電流を、第1の力線または第2の力線に通過させることが含まれ、第2の磁気トンネル接合部の記憶層の磁化の前記切り替えには、第2の極性を有する第2の書き込み界磁電流を、第1の力線または第2の力線に通過させることが含まれる。
【0031】
さらに別の実施形態において、第1の磁気トンネル接合部の前記加熱には、第1の選択トランジスタが通過モードである場合に、加熱電流を第1のストラップに通過させることが含まれ、第2の磁気トンネル接合部の前記加熱には、第2の選択トランジスタが通過モードである場合に、加熱電流を第2のストラップに通過させることが含まれる。
【0032】
さらに別の実施形態において、前記検索界磁電流は、連続的に変化する極性を有する。
【0033】
さらに別の実施形態において、セルは、プリチャージされた一致線に電気的に接続されたセンストランジスタであって、2つの磁気トンネル接合部間における導電線上の電圧によって駆動されるセンストランジスタをさらに含み、センス電流の前記通過は、2つの磁気トンネル接合部間における導電線上の電圧であって、第1および第2の書き込みデータ、ならびに2つの磁気トンネル接合部における配向されたセンス層磁化のそれぞれの方向に依存して、一致線を放電したりしなかったりするためにセンストランジスタを駆動する電圧を生成する。
【0034】
セルの小さなサイズゆえに、本明細書に開示されたセルを用いて、検索動作速度が向上したセルのより高密度のアレイを有する磁気メモリ装置を作製することができる。また、このセルによって、より低い製造コストが可能になる。
【0035】
好ましい実施形態は、例として提示され、図によって例示された実施形態の説明の助けを借りて、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の熱支援切り替え(TAS)磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)ベース3値連想メモリ(TCAM)セルを示す。
【図2a】実施形態による磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)ベース3値連想メモリ(TCAM)セルの上から見たレイアウトマスク表現を示す。
【図2b】TAS−MRAM TCAMセルの側面から見られたレイアウトマスク表現を示す。
【図3】TAS−MRAM TCAMセルの透視図を示す。
【図4】MRAMベースTCAMセルの等価回路を示す。
【図5】記憶層およびセンス層磁化のそれぞれの方向を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)ベース3値連想メモリ(TCAM)セル10が、実施形態に従って図2a、2bおよび3に示されている。特に、図2aおよび2bは、上から見た(図2a)、および側面から見た(図2b)MRAMベースTCAMセル10のレイアウトマスク表現を示す。図3は、MRAMベースTCAMセル10の透視図を示す。
【0038】
MRAMベースTCAMセル10には、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’が含まれる。第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、第1のストラップ14および第2のストラップ14’にそれぞれ電気的に接続されるが、第1および第2のストラップ14、14’は、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’の両側にそれぞれ延伸する。第1および第2の選択トランジスタ6、6’が、第1および第2のストラップ14、14’の一端部にそれぞれ接続される。第1および第2のストラップ14、14’の他の端部は、第1および第2の電流線3、3’にそれぞれ接続される。第1および第2の選択トランジスタ6、6’は、ワード線7によって選択可能であり、第1の選択トランジスタ6が通過モードである場合には第1のストラップ14に、かつ第2の選択トランジスタ6が通過モードにある場合には第2のストラップ14’に、加熱電流31を選択的に通過させることができるようにする。セル10には、2つの磁気トンネル接合部2、2’と通じている第1の力線5(図3を参照)がさらに含まれるが、第1の力線5は、少なくとも第1の書き込み界磁電流51を通過させることができる。
【0039】
好ましい実施形態において、導電線、例えば金属11が、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’を、第1および第2のストラップ14、14’を接続する接合部端部に対向する接合部端部において、直列に電気的に接続する。金属11によって、2つの選択トランジスタ6、6’がブロックモードである場合に、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’を横断してセンス電流32を通過させることが可能になる。
【0040】
図3の例において、各磁気トンネル接合部2、2’は、第1の安定方向から第2の安定方向に切り替えることができる磁化を有する記憶層21と、可変磁化方向を有するセンス層23と、記憶層21およびセンス層23間に配置された絶縁層22と、から形成される。好ましくは、記憶層21は、硬質強磁性材料で作製され、一方でセンス層23は、低保磁力の軟質強磁性材料で作製される。強磁性材料には、典型的には、鉄、コバルトニッケルまたはそれらの合金が含まれる。好ましくは、絶縁層22は、典型的にはナノメートル範囲の薄層であり、例えば、アルミナまたは酸化マグネシウムなどの任意の適切な絶縁材料から形成される。
【0041】
実施形態(図示せず)において、各磁気トンネル接合部2、2’には、好ましくは記憶層21に隣接し、かつ記憶層21に交換バイアスをかける反強磁性記憶層がさらに含まれる。反強磁性記憶層は、記憶層21の磁化を、反強磁性層のブロッキング温度TBs未満の低温閾値で固定化し、記憶層の磁化を、ブロッキング温度TBsを超える高温閾値で非固定化する。反強磁性層は、典型的には、IrMn、PtMnまたはNiMnなどの反強磁性材料で作製される。
【0042】
図2a、2bのMRAMベースTCAMセル10用の等価回路18が、図4に示されている。図4において、第1および第2のストラップ14、14’は、第1および第2のストラップ抵抗R、R’によってそれぞれ表され、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、第1および第2の接合部抵抗RおよびRによってそれぞれ表される。2つの磁気トンネル接合部2、2’は、第1および第2のストラップ14、14’の抵抗よりはるかに高い抵抗を有する。例えば、各磁気トンネル接合部2、2’用の5kΩ.μmの典型的な抵抗−面積の積(RA)に対して、対応する接合部抵抗R、Rは、約500kΩであり、一方でストラップ抵抗R、R’用の値は、典型的には約10kΩである。
【0043】
書き込み動作の第1の書き込みサイクルにおいて、TAS−MRAMセル10の書き込み動作中に、第1の磁気トンネル接合部2は、第1の選択トランジスタ6が通過モードである場合に第1の電流線3および第1のストラップ14を通して加熱電流31を印加することによって加熱される。第1の磁気トンネル接合部2は、ブロッキング温度TBSの上に位置する高温閾値へ加熱することができるが、この高温閾値では、反強磁性層と記憶層21との間の交換結合が消えて、記憶層21の磁化は、自由に調整することができる。磁気トンネル接合部2の第1の接合部抵抗Rが、第1のストラップ抵抗Rよりはるかに高いので、実質的に全ての加熱電流31は、ストラップ14を通過する。
【0044】
同時にかまたは短時間の遅延後、ひとたび第1の磁気トンネル接合部2が高温閾値に達すると、第1の極性を有する適度な第1の書き込み界磁電流51を第1の力線5に通過させることによって、第1の書き込みデータが、第1の磁気トンネル接合部2の記憶層21に書き込まれる。第1の書き込み界磁電流51は、第1の力線5にほぼ直角な第1の方向に、記憶層21の磁化を切り替えることができる第1の書き込み磁界52を誘導する。高閾値温度において、記憶層23の磁化は、自由に調整され、切り替え動作を容易にすることができる。
【0045】
第1の磁気トンネル接合部2の温度が高温閾値に達した後で、第1の選択トランジスタ6を選択解除(またはブロックモードで設定)して、加熱電流31が印加されるのを防ぎ、第1の磁気トンネル接合部2を冷却することができる。第1の書き込み界磁電流51は、第1の磁気トンネル接合部2の冷却中に維持することができ、ひとたび第1の磁気トンネル接合部2が低温閾値に達するとスイッチオフすることができるが、この低温閾値は、反強磁性層のブロッキング温度TBS未満に位置し、ここでは記憶層21の磁化が、書き込まれた状態で固定される。
【0046】
書き込み動作には、第2の書き込みサイクルをさらに含むことができるが、この場合に、第2の磁気トンネル接合部2’は、第2の選択トランジスタ6’が通過モードにある場合に、第2の電流線3’および第2のストラップ14’を通して加熱電流31を印加することによって、加熱される。同時にかまたは短時間の遅延後に、ひとたび第2の磁気トンネル接合部2’が高温閾値に達すると、第1の極性と反対の第2の極性を有する第2の書き込み界磁電流51’を通過させることによって、第2の書き込みデータが、第2の磁気トンネル接合部2の記憶層21に書き込まれる。第2の書き込み界磁電流51’は、第1の力線5にほぼ直角な第2の方向に記憶層21の磁化を切り替えることができる第2の書き込み磁界52’を誘導する。
【0047】
第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、第1および第2のストラップ14、14’をそれぞれ通過する加熱電流31によるジュール効果の寄与によって加熱される。ストラップ14、14’に加熱電流を通過させることによって、磁気トンネル接合部2、2’の信頼性が増加する。なぜなら、エレクトロマイグレーション、電圧破壊または酸化物劣化などの影響が、磁気トンネル接合部2’自体を通して流れる加熱電流がない状態で最小限にされるからである。さらに、磁気トンネル接合部2、2’は、MRAMセル10の熱性能および信頼性性能に影響を与えずに、高いRAを有することができ、例えば最高250%の高いトンネル磁気抵抗(TMR)を可能にすることができる。
【0048】
実施形態(図示せず)において、MRAMベースTCAMセル10には、第1の力線5にほぼ直角に配置された第2の力線が含まれる。書き込み動作の第1および第2の書き込みサイクル中に、第1の書き込み界磁電流51および第2の書き込み界磁電流51’を第2の力線に通過させて、誘導された第1および第2の磁界52、52’が、記憶層21の磁化を第1の力線5にほぼ平行な方向に切り替えるようにすることができる。
【0049】
図5a〜5cは、上から見た第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’を概略的に示す。図5a〜5cにおいて、細い矢印は、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’にそれぞれ書き込まれる第1および第2の書き込みデータを表す。図5bの例において、第1の磁気トンネル接合部2には、「0」の論理状態を備えた書き込みデータが含まれ、第2の磁気トンネル接合部2’には、「1」の論理状態を備えた書き込みデータが含まれる。これは、記憶層21の磁化が、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’においてそれぞれ上方および下方に、第1の力線5に直角に配向されることに対応する。図5cにおいて、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’には、「1」および「0」の論理状態を備えた書き込みデータがそれぞれ含まれ、記憶層の磁化は、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’においてそれぞれ下方および上方に、第1の力線5に直角に配向される。図5aにおいて、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’の記憶層の磁化は、書き込みデータが両方の磁気トンネル接合部2、2’においてマスクされた論理状態「X」を有することに対応して、第1の力線5とほぼ平行に、かつ反対方向に配向される。
【0050】
TAS−MRAMセル10の検索動作中に、連続的に変化する極性を有する検索界磁電流53が、第1の力線5を通過する。好ましくは、検索界磁電流53は、しかるべく変化する極性を備えた検索磁界54を誘導する交流電流を有する。センス層21の磁化が固定されず、自由に変化できるので、検索磁界54は、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’両方のセンス層磁化を、第1および第2の配向方向に同時に配向することができる。好ましくは、検索界磁電流53の振幅は小さく、検索磁界54は、センス層23の磁化を完全には切り替えない。検索界磁電流53の振幅は、例えば、約700μAまたはより小さくすることができる。これは、センス層23の磁化を完全に切り替えるために必要とされる約15mAまたはより大きな電流振幅よりはるかに小さく、結果として電力消費の低減をもたらす。電力消費は、書き込み動作中に、センス層23の切り替えエネルギを最小限にすることによって、さらに低減することができる。さらに、小さな検索界磁電流振幅を用いることによって、高速検索動作が可能になる。検索動作中に、第1および第2の選択トランジスタ6、6’は、ブロックモードである。
【0051】
検索磁界54によって配向されるセンス層磁化の方向が、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’に対して、太い矢印で図5a〜5cに示されている。特に、図5a〜5cの上部に示された磁気トンネル接合部2、2’は、「1」の論理状態に対応する極性を有する検索界磁電流53による、例えば第1の配向方向に対応する上方方向に配向されたセンス層磁化を用いて表されている。反対に、図5a〜5cにおいて下に示された磁気トンネル接合部2、2’は、「0」の論理状態に対応する極性を有する検索界磁電流53による、例えば第2の配向方向に対応する下方方向に配向されてセンス層磁化を用いて表されている。
【0052】
次に、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’にそれぞれ書き込まれた第1および第2の書き込みデータは、第1および第2の電流線3、3’を介し、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’にセンス電流32をそれぞれ通過させることによって、2つの磁気トンネル接合部2、2’におけるセンス層23の配向された磁化と比較することができる。図3に示すように、センス電流32は、第1および第2のストラップ14、14’を介して、2つの磁気トンネル接合部2、2’および金属線11を横断して、第1および第2の電流線3、3’間をそれぞれ循環することができる。金属線11を通して直列に接続された2つの磁気トンネル接合部2、2’は、第1および第2の電流線3、3’間の分圧器を形成する。
【0053】
図5bの例において、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、「0」の論理状態および「1」の論理状態をそれぞれ有する第1および第2の書き込みデータで書き込まれる。「1」の論理状態(上部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)に対応する極性を備えた検索界磁電流53は、第1の磁気トンネル接合部2において記憶層磁化により近い、および第2の磁気トンネル接合部2’において記憶層磁化により遠い方向に、それぞれセンス層磁化を配向させる。次に、第1の接合部抵抗Rに対する測定値は、第2の接合部抵抗Rに対する測定値より小さく、負のトンネル磁気抵抗ΔRをもたらす。対照的に、「0」の論理状態(下部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)に対応する極性を備えた検索界磁電流53は、第1および第2の磁気トンネル接合部2’における記憶層磁化により遠い、およびより近い方向に、それぞれセンス層磁化を配向させる。ここで、第1の接合部抵抗Rに対する測定値は、第2の接合部抵抗Rに対する測定値Rより大きく、正のトンネル磁気抵抗ΔRをもたらす。
【0054】
図5cの例において、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、「1」の論理状態および「0」の論理状態をそれぞれ有する第1および第2の書き込みデータで書き込まれる。上記のように、センス層磁化の検査は、「1」の論理状態(上部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)に対応する極性を有する検索界磁電流53でセンス層磁化を配向させることによって、正のトンネル磁気抵抗ΔRがもたらされることを示す。反対に、「0」の論理状態(下部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)に対応する極性を有する検索界磁電流53でセンス層磁化を配向させることによって、負のトンネル磁気抵抗ΔRがもたらされる。
【0055】
図5aの例において、第1および第2の磁気トンネル接合部2、2’は、「X」の論理状態を有する第1および第2の書き込みデータで書き込まれる。ここで、「1」および「0」の論理状態(それぞれ上部および下部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)に対応する極性を有する検索界磁電流53でセンス層磁化を配向させることによって、マスクされたかまたはdon’t care状態に対応する負のトンネル磁気抵抗ΔRがもたらされる。
【0056】
図4に示す実施形態において、回路18には、好ましくはプルダウンNMOSトランジスタ型のセンストランジスタ8、および事前に印加(プリチャージ)された一致線9が含まれる。2つの磁気トンネル接合部2、2’間の金属線11における電圧V(図4のポイントD)は、センストランジスタ8のゲートを駆動するために用いられ、センストランジスタ8は、一致線9を制御する。
【0057】
センス電流32によって生成される電圧Vは、第1および第2の接合部抵抗R、Rのそれぞれの値に依存し、これらの接合部抵抗R、Rは、上記のように、それぞれの第1および第2の書き込みデータならびに検索界磁電流53の極性に依存する。図5cの例において、「1」の論理状態(上部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)を備えた検索界磁電流53を通過させることによって、高い値の電圧Vがもたらされる。高電圧Vは、不一致状態に対応し、一致線9を放電する通過モードにセンストランジスタ8を設定する。反対に、「0」の論理状態(下部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)を備えた検索界磁電流53を通過させることは、小さな値の電圧Vをもたらし、一致線9が一致状態に対応して充電されたままに留まるブロックモードにセンストランジスタ8を設定する。
【0058】
同様に、図5bの例において、「1」の論理状態(上部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)を備えた検索界磁電流53を通過させることによって、一致線が充電されたままに留まる一致状態に対応する小さな電圧値がもたらされ、「0」の論理状態(下部の2つの磁気トンネル接合部2、2’)を備えた検索界磁電流53を通過させることによって、一致線が放電される不一致状態に対応する高電圧値がもたらされる。図5aの例において、「1」および「0」の論理状態を備えた検索界磁電流53を両方とも通過させることによって、小さな値の電圧Vがもたらされ、一致線9は、マスクされたかまたはdon’t care状態に対応して、両方の場合に充電されたままに留まる。
【0059】
実施形態(図示せず)において、MRAMベースTCAMセル10には、2つの一致線9が含まれる。2つの一致線9を用いて、2つの一致線9の端部で検出された差動信号を提供し、検索動作中に読み出し差分値(マージン)を改善するようにすることができる。この構成において、センストランジスタ8は、プルアップPMOSトランジスタ型であるのが好ましい。
【0060】
図2a、2bおよび4に示す別の実施形態において、MRAMベースTCAMセル10には、ビットトランジスタ15がさらに含まれるが、このビットトランジスタ15は、読み出しワード線16によって制御され、ビット線17に電気的に接続される。読み出しワード線16は、ビットトランジスタ15を通過モードに設定することができ、ビット電流(図示せず)がビットライン17を流れることができるようにする。この構成において、1つの単一のセル10の電圧Vは、ビットライン17上で読み出すことができる。
【0061】
検索界磁電流53が、「1」および「0」の論理状態をそれぞれ有するときに測定された電圧V間の電圧差ΔVは、次の式1によって決定することができる。
ΔV=V(TMR/(2+TMR))=0.56TMR (式1)。
【0062】
磁気トンネル接合部2、2’が、250%のTMRを有する場合で、電圧差ΔVが、一致および不一致状態間の有意差を得られるほど高い390mVの値を有すると仮定すると、式1は、電圧Vに対して0.7Vの値をもたらす。したがって、電圧Vは、磁気トンネル接合部2、2’が高いTMR値を有する場合には、大きくなるはずである。
【0063】
検索動作の速度は、電流およびビット線3、3’、17の放電時定数RCにとりわけ依存する。さらに、異なるRC値は、センストランジスタ8がプルダウンまたはプルアップトランジスタであるかどうかということ、およびセンストランジスタ8のリークの度合い(トランジスタ8の電流特性)に依存して、得ることができる。リークの程度は、センストランジスタ8のボディバイアス電圧を適切に調整することによって最小限にすることができる。
【0064】
実施形態(図示せず)において、磁気メモリ装置は、複数のMRAMベースTCAMセル10を含むアレイを組み立てることによって、形成することができる。セル10のアレイは、装置パッケージ(図示せず)内に配置することができる。磁気メモリ装置を形成する場合に、各MRAMベースTCAMセル10は、センストランジスタ8を介して一致線9に接続できるが、一致線9は、場合により、検索動作中にアレイの行または列の単一のセル10によって放電される。一致線9は、信号を十分な論理レベルへ増幅でき、かつ信号を従来の方法で出力できる一致線増幅器(図示せず)に結合することができる。一致線増幅器は、差動センス増幅器および/または多段差動センス増幅器とすることができる。第1の力線5は、アレイの行または列における1つもしくはいくつかのセル10に同時にアドレスを取るか、あるいはアレイにおける全てのセル10に同時にアドレスを取ることができる。後の構成によって、ビット当たりの電力を低減することが可能になる。
【0065】
本発明は、様々な修正および代替形態の余地があり、その特定の例が、図面に例として示され、本明細書に詳細に説明されている。しかしながら、本発明が、開示された特定の形態または方法に限定されるべきではなく、反対に、本発明が、全ての修正、均等物および代案をカバーし得ることを理解されたい。
【0066】
2つの選択トランジスタ6、6’、センストランジスタ8および場合によりビットトランジスタ15を含むMRAMベースTCAMセル10は、追加のCMOS前置増幅器を用いる従来のMRAMセルと比較して、約4分の1に低減されたサイズを有する。また、MRAMベースTCAMセル10のサイズは、最大16のトランジスタを用いる従来のSRAMベースTCAMセルまたは少なくとも7つのトランジスタを用いる従来のMRAMベースTCAMセルの1つより小さい。MRAMベースTCAMセル10によって、より高いセル密度ならびに必要なマスクおよびシリコンがより少ないことによるより低い製造コストの磁気メモリ装置が可能になる。
【0067】
また、MRAMベースTCAMセル10のより小さなサイズによって、特に一致線9および電流線3、3’に沿った寄生容量の低減、および検索動作速度の向上が可能になる。例えば、一検索サイクルは、100MHz〜200MHzに含まれる範囲内の速度を有することができる。次に、電流線3、3’では低電圧、例えば130nmのCMOS技術用に約0.5Vを用いることができるので、MRAMベースTCAMセル10の動的電力消費は、少なくとも4分の1に低減することができる。また、MRAMベースTCAMセル10の静的電力消費は、従来のMRAMベースTCAMセルよりも低い。例えば、MRAMベースTCAMセル10における一検索サイクルは、単に約50nWの電力を必要とするだけである。
【0068】
さらに、磁気メモリ装置は、アレイにおけるよりも少ない数のMRAMベースTCAMセル10を含むサブアレイ(図示せず)にさらにセグメント化して、時定数RCを低減しかつ検索動作速度を向上させるようにすることができる。しかしながら、この構成は、それぞれのサブアレイにおいてセンス電流、加熱電流および界磁電流をそれぞれ駆動するために、各電流線3、3’および第1の力線5用の追加ドライバを用いる必要があり、ダイサイズおよび回路の複雑さの増加に帰着する。
【符号の説明】
【0069】
1 MRAMベースTCAMセル
2 第1の磁気トンネル接合部
2’ 第2の磁気トンネル接合部
21 記憶層
22 絶縁層
23 センス層
3 第1の電流線
3’ 第2の電流線
31 加熱電流
32 センス電流
5 第1の力線
51 第1の書き込み界磁電流
52 第1の書き込み磁界
51’ 第2の書き込み界磁電流
52’ 第2の書き込み磁界
53 検索界磁電流
54 検索磁界
6 第1の選択トランジスタ
6’ 第2の選択トランジスタ
7 第1の書き込みワード線
7’ 第2の書き込みワード線
8 センストランジスタ
9 一致線
10 究極のTAS−MRAM TCAMセル
11 金属線
12 CMOS前置増幅器
14 第1のストラップ
14’ 第2のストラップ
15 ビットトランジスタ
16 読み出しワード線
17 ビット線
18 回路
第1の接合部抵抗
第2の接合部抵抗
ΔR トンネル磁気抵抗
第1のストラップ抵抗
R’ 第2のストラップ抵抗
RC 時定数
分圧器で測定された電圧
ΔV 差動電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の磁気トンネル接合部と、
前記第1および第2の磁気トンネル接合部にそれぞれ接続され、かつ前記第1および第2の磁気トンネル接合部のいずれの側にそれぞれ延伸する第1および第2のストラップと、
前記第1および第2のストラップの一端部にそれぞれ接続され、かつ前記第1および第2のストラップに加熱電流をそれぞれ選択的に通過させることができる第1および第2の選択トランジスタと、
前記加熱電流および/またはセンス電流を通過させるための第1および第2の電流線と、
を含む磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルであって、
前記セルが、前記第1および第2の磁気トンネル接合部を、前記第1および第2のストラップを接続する接合部端部に対向する接合部端部において、直列に電気的に接続する導電線をさらに備え、前記第1および第2の電流線が、前記2つの選択トランジスタがブロックモードである場合に前記第1および第2の磁気トンネル接合部に前記センス電流を通過させるために、前記第1および第2のストラップのもう一方の端部にそれぞれ接続されるセル。
【請求項2】
少なくとも第1の書き込み界磁電流を通過させるための第1の力線をさらに備える、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
ビット線および検索ワード線に電気的に接続されたビットトランジスタを更に備え、該ビットトランジスタは、前記ビット線にビット電流を通過させるために、前記検索ワード線によって制御されることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項4】
複数の磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルを含むアレイを組み立てることによって形成された磁気メモリ装置であって、各セルが、第1および第2の磁気トンネル接合部と、前記第1および第2の磁気トンネル接合部にそれぞれ接続され、かつ前記第1および第2の磁気トンネル接合部のいずれの側にそれぞれ延伸する第1および第2のストラップと、前記第1および第2のストラップの一端部にそれぞれ接続され、かつ前記第1および第2のストラップに加熱電流をそれぞれ選択的に通過させることができる第1および第2の選択トランジスタと、前記加熱電流および/またはセンス電流を通過させるための第1および第2の電流線と、を含み、前記セルが、前記第1および第2の磁気トンネル接合部を、前記第1および第2のストラップを接続する接合部端部に対向する接合部端部において、直列に電気的に接続する導電線をさらに含み、前記第1および第2の電流線が、前記2つの選択トランジスタがブロックモードである場合に前記第1および第2の磁気トンネル接合部に前記センス電流を通過させるために、前記第1および第2のストラップのもう一方の端部にそれぞれ接続される磁気メモリ装置。
【請求項5】
第1および第2の磁気トンネル接合部であって、それぞれが、第1の安定方向から第2の安定方向に切り替えることができる磁化を有する記憶層、可変磁化方向を有するセンス層、および前記記憶層と前記センス層との間の絶縁層から形成される第1および第2の磁気トンネル接合部と、前記第1および第2の磁気トンネル接合部にそれぞれ接続され、かつ前記第1および第2の磁気トンネル接合部のいずれの側にそれぞれ延伸する第1および第2のストラップと、前記第1および第2のストラップの一端部にそれぞれ接続され、かつ前記第1および第2のストラップに加熱電流をそれぞれ選択的に通過させることができる第1および第2の選択トランジスタと、前記加熱電流および/またはセンス電流を通過させるための第1および第2の電流線と、少なくとも第1の書き込み界磁電流を通過させるための第1の力線と、前記第1および第2の磁気トンネル接合部を、前記第1および第2のストラップを接続する接合部端部に対向する接合部端部において、直列に電気的に接続する導電線と、を備え、前記第1および第2の電流線が、前記2つの選択トランジスタがブロックモードである場合に前記第1および第2の磁気トンネル接合部に前記センス電流を通過させるために、前記第1および第2のストラップのもう一方の端部にそれぞれ接続された、磁気ランダムアクセスメモリベース3値連想メモリセルに書き込みデータを書き込みかつ検索する方法であって、
書き込み動作中に:
前記書き込み動作の第1の書き込みサイクル中に、前記第1の磁気トンネル接合部の前記記憶層に第1の書き込みデータを書き込むことと、
前記書き込み動作の第2の書き込みサイクル中に、前記第2の磁気トンネル接合部の前記記憶層に第2の書き込みデータを書き込むことと、
検索動作中に:
前記第1の力線を通過する検索界磁電流の極性に従って、前記第1および第2の磁気トンネル接合部の前記センス層の前記磁化を、第1および第2の配向方向に配向させることと、
前記第1および第2の選択トランジスタがブロックモードである場合に、前記第1および第2のストラップを介して、前記第1および第2の磁気トンネル接合部に前記センス電流を通過させることによって、前記第1および第2の書き込みデータを、前記2つの磁気トンネル接合部の前記センス層の前記配向された磁化と比較することと、
を含む方法。
【請求項6】
第1の書き込みデータの前記書き込みが、
前記第1の磁気トンネル接合部を高温閾値に加熱することと、
前記第1の磁気トンネル接合部の前記記憶層の前記磁化を第1の方向に切り替えることと、
前記第1の磁気トンネル接合部の前記記憶層の前記磁化が、前記書き込まれた状態において固定される低温閾値に、前記第1の磁気トンネル接合部を冷却することと、
を含み、
第2の書き込みデータの前記書き込みが
前記第2の磁気トンネル接合部を高温閾値に加熱することと、
前記第2の磁気トンネル接合部の前記記憶層の前記磁化を第2の方向に切り替えることと、
前記第2の磁気トンネル接合部の前記記憶層の前記磁化が、前記書き込まれた状態において固定される低温閾値に、前記第2の磁気トンネル接合部を冷却することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記セルが、前記第1の力線にほぼ直角に配置された第2の力線をさらに含み、
前記第1の磁気トンネル接合部の前記記憶層の前記磁化の前記切り替えが、第1の極性を有する第1の書き込み界磁電流を、前記第1の力線または前記第2の力線に通過させ、かつ、
前記第2の磁気トンネル接合部の前記記憶層の前記磁化の前記切り替えが、第2の極性を有する第2の書き込み界磁電流を、前記第1の力線または前記第2の力線に通過させることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の磁気トンネル接合部の前記加熱が、前記第1の選択トランジスタが通過モードである場合に、前記加熱電流を前記第1のストラップに通過させ、かつ、
前記第2の磁気トンネル接合部の前記加熱が、前記第2の選択トランジスタが通過モードである場合に、前記加熱電流を前記第2のストラップに通過させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記検索界磁電流が、連続的に変化する極性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記セルが、事前に印加された一致線に電気的に接続されたセンストランジスタを更に備え、
前記センストンランジスタは、前記2つの磁気トンネル接合部間における前記導電線上の電圧によって駆動され、
センス電流の前記通過が、前記2つの磁気トンネル接合部間における導電線上の電圧を生成し、該電圧は、前記第1および第2の書き込みデータ、ならびに前記2つの磁気トンネル接合部における前記配向されたセンス層磁化のそれぞれの方向に依存して、前記一致線を放電したりしなかったりするために前記センストランジスタを駆動することを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−14228(P2011−14228A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−150704(P2010−150704)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(509096201)クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム (33)