説明

空冷装置の異常警報装置

【課題】 ノイズキャンセルと空冷装置の異常報知とを行う。
【解決手段】筐体2内には、変圧器26等の発熱電気部品が収容されている。筐体2の内外を連通するように空気流入口20が形成されている。筐体2内に設けたファンが、空気流入口20から筐体2内に流入させた空気に変圧器26等を通過させて、筐体2の外部に流出させる。筐体2内に設けられた音源56が、ファン22の作動により空気流入口20から空気が流入することによって発生する騒音と逆相の音を発生する。この音を筐体2内に放音するように、筐体2内にスピーカ58が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器や電子機器の筐体内に設けた発熱部品を空冷する空冷装置に異常がある場合に、これを報知する異常警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の異常警報装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術では、例えばファンが回転停止した場合に、アラームレベル出力信号をLからHに変化させる異常検出回路をファンに設け、この異常検出回路のアラームレベル出力信号をアラーム処理回路に供給し、アラーム出力レベルがLからHに変化したとき、アラーム処理回路に設けたリレーが駆動される。
【0003】
【特許文献1】特開平5−145260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、異常検出回路及びアラーム処理回路を設ける必要がある上に、例えば可聴音で異常が発生したことを報知しようとすると、駆動されたリレーによって作動を開始するブザーのような鳴動装置が必要になり、構成が複雑になる。また、ファンの異常は検出できるが、例えばファンが設けられている筐体内において、部品の脱落等によって空気の流れが阻害されていても、それを検出することができない。
【0005】
本発明は、ファンの故障や筐体内での空気の流れが阻害されていることを、簡単な構成で報知する異常警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の空冷装置の異常警報装置は、筐体を有し、この筐体内には、発熱電気部品が設けられている。発熱電気部品としては、例えば半導体素子や変圧器等がある。この筐体の内外を連通するように前記筐体に空気流入口が形成されている。空気流入口は、複数設けることができる。筐体内にファンが設けられている。このファンは、前記空気流入口から前記筐体内に流入させた空気に前記発熱電気部品を通過させて、前記筐体の外部に流出させる。ファンは、空気流入口の近傍に設けることもできるし、空気流入口とは別に設けた空気流出口の近傍に設けることもできる。前記筐体内に音源が設けられている。この音源は、前記筐体内への前記空気の流入及び流出が正常に行われているときの前記ファンの作動により、前記空気流入口から前記空気が流入することによって発生する騒音と逆相のノイズキャンセル用音を発生する。この音源の音を前記筐体内に放音するように、前記筐体内にスピーカが設けられている。
【0007】
このように構成すると、ファンが正常に動作しているときには、空気流入口から空気が流入することによって発生している騒音は、音源からのノイズキャンセル用音によってほぼ抑圧されており、殆ど聞こえない。ファンが故障により停止している場合、若しくはファンの回転数が規定値よりも低下しているようなファンに異常がある場合、或いはファンに異常はないが、筐体内でなんらかの理由で空気の流れが阻害されているような場合、空気の流入によって発生する騒音が変化し、この騒音と音源からのノイズキャンセル用音とは逆相関係で無くなり、ノイズキャンセル用音によっては騒音を抑圧できなくなり、騒音が聞こえる。今まで抑圧されていた騒音が聞こえることによって、空冷装置に異常があることを容易に確認することができる。
【0008】
前記スピーカは、前記空気流入口付近に設けることができる。空気の流入による騒音は、空気流入口の付近で発生するので、その付近にスピーカを設けることによって、騒音を良好に抑圧することができ、正常状態では、静寂な環境を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、異常検出回路や処理回路を設ける必要なく、空気流入口を空気が通過することによって発生する騒音を利用して、簡単な構成で異常を報知することができ、しかも正常時には機器の騒音を低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の1実施形態の空冷装置の異常警報装置は、例えば無停電電源装置や溶接機等の電気機器に実施されたもので、図1に示すように、筐体2を有している。筐体2は、例えば縦長の直方体状に構成されている。筐体2は、間隔を隔てて配置された主壁4、6と、これら主壁4、6の上端部を繋ぐ上壁8と、主壁4、6の下端部を繋ぐ下壁10とを、備えている。さらに、主壁4、6の両側端部をそれぞれ繋ぐ側壁も有している。
【0011】
上壁8における主壁4、6方向の中途から下壁10方向に向けて区画壁12が伸延している。これによって、筐体2の内部は、第1及び第2の部屋、例えば部屋14、16に区画されている。なお、区画壁12の先端は、下壁10には到達しておらず、区画壁12の先端と下壁10との間に、空気流通口18が形成されている。
【0012】
主壁4の下部には、複数の空気流入口20が、上下方向に例えば一列に形成されている。この空気流入口20の列は、主壁4の両端間に複数形成されている。なお、これら空気流入口20に対応する部屋14内の位置に、部屋14内に空気を流入させるためのファンを設けることもできる。
【0013】
部屋16内の上壁8には、ファン22が設けられている。ファン22は、上壁8に形成した空気排出口24に取り付けられている。なお、空気流入口20側にファンを設けた場合、ファン22を省略することも可能である。
【0014】
部屋16の下壁10上には、無停電電源装置や溶接機等に使用される発熱部品、例えば変圧器26が配置されている。この変圧器26は、ファン22を駆動することによって空気流入口20から部屋14に流入し、空気流通口18を介して部屋16に流入し、ファン22によって排出される空気によって冷却される。
【0015】
変圧器26よりも上部の区画壁12上には、上下方向に間隔をあけて2つの貫通孔28、28aが形成されている。下方にある貫通孔28には、空気流通路形成手段、例えばダクト32が設けられている。ダクト32は、部屋16側に位置するように貫通孔28に取り付けられている。ダクト32は貫通孔28よりも一回り小さい開口を有し、この開口の上部に放熱体34が取り付けられ、ダクト32の開口が空気流入口36となる。放熱体34は、ダクト32の上部開口から一部が突出している。従って、空気流入口36から流入した空気が、放熱体34の上端間や放熱体34の上端とダクト28の上端との間に形成された空気流出口37から、上方に向かう空気流通路が形成されている。
【0016】
同様に、上方にある貫通孔28aにも、空気流通路形成手段、例えばダクト32aが設けられ、これは、放熱体34a、空気流入口36a、空気流出口37aを有している。但し、空気流入口36aは、上壁8側に位置し、空気流出口37aが下方に位置している。空気流入口36aから流入した空気が放熱体34aの間を抜けて、空気流出口37aから下方に向かう空気流通路が形成されている。これらダクト32、32aは、同一直線上に位置し、ダクト32、32aの空気流出口37、37aは、間隔をおいて対向し、空気流出口37、37aから流出した空気は、これらの中間で合流する。
【0017】
ダクト32の放熱体34には、発熱部品、例えばコンバータ構成用の半導体スイッチング素子、具体的にはIGBT38が、図1に示すように取り付けられ、部屋14側に突出している。コンバータは、例えば変圧器26によって変圧された三相交流電圧を整流するものである。この整流された三相交流電圧は、部屋14に設けた発熱部品、例えば複数の平滑用コンデンサ40によって直流化される。また、ダクト32aの放熱体34aには、発熱部品、例えばインバータ構成用の半導体スイッチング素子、具体的にはIGBT38aが、IGBT38と同様に取り付けられ、平滑用コンデンサ40から供給される直流化された電圧を高周波電圧に変換する。
【0018】
これら各IGBT38、38a、平滑用コンデンサ40を接続するために、部屋14側に区画壁12に接近して、平行導体板42が配置されている。平行導体板42は、絶縁物で形成された板状体44、44aの区画壁12側と、これの反対側とに、それぞれ導体46、46aを形成したものである。
【0019】
通常、ダクト32aは、ダクト32と同様に上方から空気が抜けるように配置するが、平行導体板42を設けた関係上、ダクト32aは、ダクト32と逆向きに取り付けて、空気流入口36aが上方に位置するようにしている。そのため、上述したように空気流出口37、37aが対向しており、空気流出口37、37aから流出した空気は、これらの中間で衝突し、乱流を発生させる。この乱流の発生を防止するために、空気流出口37、37aの間の空気の合流位置には、案内部材48、48aが設けられている。
【0020】
案内部材48は、空気流出口37に対して斜めに配置された板状体で、その基端が区画壁12に固定され、先端が主壁6側に向かって斜め上方に位置している。案内部材48aは、空気流出口37aに対して斜めに配置された板状体で、その基端が区画壁12に固定され、先端が主壁6側に向かって斜め下方に位置している。これら案内部材48、48aの先端が互いに接し、側面形状が三角形をなしている。これら案内部材48、48aの互いに接した先端から、主壁8側に向かって直線状部50が主壁8に対して垂直に伸びている。直線状部50は、ダクト32、32aの背面付近まで伸びていて、変圧器26を通過してきた空気の流れを阻害することはない。空気流出口37から流出した空気は、案内部材48、直線状部50に案内されて、変圧器26を冷却してきた空気と円滑に合流し、空気流出口37aから流出した空気は、案内部材48a、直線状部50に案内されて、変圧器26を冷却してきた空気と円滑に合流し、空気流出口37、37aから流出した空気が衝突して乱流を生成することはない。
【0021】
筐体2内の部屋14側において、区画壁12の下部付近に、区画壁12に沿ってプリント基板52がスペーサ54を介して取り付けられている。プリント基板52には、音源56が設けられている。音源56は、例えばデジタル音源である。このデジタル音源が発生するデジタル音は、正常状態、例えばファン22が規定の回転数で回転している状態で、かつ空気流入口20から流入した空気が上述した各発熱部品を冷却してファン22によって筐体2の外部に正常に流出している状態において、空気流入口20から空気が流入することによって発生する騒音を所定の周期にわたって集音して、ディジタル信号に変換し、このデジタル信号の位相を反転させたものを記憶しているものである。なお、前記騒音は、可聴周波数成分を含むものである。可聴周波数成分を含む騒音を発生するように、空気流入口20の数や位置、筐体2の大きさ等は設定されている。上記デジタル音源からのデジタル信号は、繰り返し読み出され、音源56が備えるD/A変換器によってアナログ音に変換され、音源56が備える増幅器によって増幅される。この増幅器の出力は、ノイズキャンセル用音としてスピーカ58に供給される。スピーカ58は、図1では略して示してあるが、プリント基板52に取り付けられ、空気流入口20の近傍に配置されている。例えばスピーカ58の放音口が、空気流入口20の最上段にあるもの付近に位置するように配置されている。この音源56は、例えば、この無停電電源装置や溶接機に電源が供給されたとき、動作を開始する。
【0022】
このように構成された空冷装置の異常警報装置では、無停電電源装置や溶接機に電源が供給され、ファン22が駆動されると、空気流入口20、20から空気が流入し、空気流通口18を介して部屋16に入り、変圧器26を冷却して、ファン22によって筐体2の外部に排出される。一方、部屋14内の空気の一部は、空気流入口36を介してダクト32内に入り、放熱体34の間を通過して、放熱体34に取り付けられているIGBT38を冷却する。また、部屋14内の空気の残りのものは、各平滑コンデンサ40の間、平滑コンデンサ40と主壁4との間、平行導体板42を通過して、これらを冷却した後、空気流入口36aからダクト32a内に入り、放熱体34aの間を通過して、放熱体34aに取り付けられているIGBT38aを冷却する。
【0023】
ダクト32、32aの空気流出口37、37aから流出した空気は、案内部材48、48a、直線状部50によって案内されて向きを変えて、変圧器26を冷却してきた空気と円滑に合流し、ファン22によって筐体2の外部に排出される。従って、空気流出口37、37aから流出した空気による乱流は発生しない。なお、直線状部50によって案内された空気の一部は、筐体2の主壁6に衝突し、これを冷却するので、筐体2全体が高温になることを防止できる。また、空気流入口20から流入した空気が、分岐されて、その一方が変圧器26を冷却し、他方がIGBT38、38aを冷却するので、温度が低い空気によって、これらを冷却することができ、放熱効果が高く、筐体2内の回路の損失を小さくすることができる。また、図示していないが、平滑用コンデンサ40と下壁10との間に配置されている部品も、空気流入口20から流入した空気によって冷却されるし、変圧器26の上方に位置する図示していない部品も、変圧器26の間を通過してきた空気によって冷却される。
【0024】
また、無停電電源装置や溶接機に電源が供給されたことにより、音源56が動作して、スピーカ58から、音源56からノイズキャンセル用音が放音される。上述したように、このノイズキャンセル用音は、空気流入口20から空気が流入することによって発生する騒音と逆相であるので、この騒音を抑圧することができる。従って、静寂な無停電電源装置や溶接機とすることができる。
【0025】
空冷装置に異常が発生した場合、例えば、ファン22が故障によって停止した場合や、回転数が正常状態の回転数よりも低下した場合や、筐体2内に設けられた各部品のうち一部が所定の取付位置から外れたことにより、正常な空気の流れが阻害される。これによって、空気流入口20から空気が流入することによって発生している騒音は、正常状態に発生している騒音とは異なったものとなる。その結果、音源56からの音をスピーカ58から放音していても、異常発生時の騒音を抑圧することができず、この抑圧されなかった騒音の発生によって、空冷装置に異常が発生していることを、報知することができる。
【0026】
上記の実施形態では、溶接機や無停電電源装置に本発明を実施したが、これに限ったものではなく、筐体の内部に発熱部品が存在し、空気流入口とファンとを備える電気または電子機器であれば、種々のものに使用することができる。また、上記の実施形態では、縦長の筐体2を使用したが、これに限ったものではなく、例えば筐体2を横倒しにした状態で使用することもできる。また、上記の実施形態では、区画壁12を設けて筐体2内を2つの部屋に区画したが、必ずしも、このように区画する必要はない。上記の実施形態では、音源56には、騒音を逆相にしたものを記憶させたが、騒音をそのまま記憶させておき、スピーカ58で放音する前に位相を反転させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の空冷装置の異常警報装置を実施した電気機器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
2 筐体
20 空気流入口
22 ファン
26 変圧器(発熱部品)
38 38a IGBT(発熱部品)
40 平滑コンデンサ(発熱部品)
56 音源
58 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱電気部品を内部に有する筐体と、
この筐体の内外を連通するように前記筐体に形成された空気流入口と、
前記筐体内に設けられ、前記空気流入口から前記筐体内に流入させた空気に前記発熱電気部品を通過させて、前記筐体の外部に流出させるファンと、
前記筐体内に設けられており、前記筐体内への前記空気の流入及び流出が正常に行われているときの前記ファンの作動により、前記空気流入口から前記空気が流入することによって発生する騒音と逆相の音の音源と、
この音源の音を前記筐体内に放音するように、前記筐体内に設けられたスピーカとを、
具備する空冷装置の異常警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の空冷装置の異常警報装置において、前記スピーカは、前記空気流入口付近に設けられている空冷の異常警報装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−27647(P2010−27647A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183590(P2008−183590)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】