説明

空圧緩衝器

【課題】シリンダとピストンの摺動部に効率良く潤滑油を供給できる空圧緩衝器。
【解決手段】減衰力発生部8と、ピストン側室50からロッド側室40へのみ流れを許容する逆止弁10を有する潤滑油用通路9とを備え、ロッド側室40内又はロッド側室と潤滑油用通路9内に潤滑油を注入すると共に、シリンダ内に作動気体を封入した空圧緩衝器において、上記潤滑油用通路9内に当該潤滑油用通路9を開閉する開閉弁11を設け、上記ピストン側室50内に油面検出部材Aを浮動自在に設け、上記油面検出部材Aの位置に応じて上記開閉弁11を開閉制御する開閉弁制御部材を設け、ピストン側室50内の潤滑油の油量の増加に伴って上記油面検出部材Aが予め定められた油面まで上昇した時には当該油面検出部材Aが上記開閉弁制御部材を介して開閉弁11を開状態とすると共に、潤滑油の減少に伴って予め定められた油面位置まで下降した時には上記開閉弁11を閉状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業車両等の車両のサスペンション装置に使用可能な空圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空圧緩衝器としては、種々の構造のものを例示することができるが、車両のサスペンション装置に使用される空圧緩衝器としては、特許文献1に示すものを例示することができる。
【0003】
即ち、図5に示すように、筒状に形成されたシリンダ42の上下端は、それぞれヘッド部材(本願発明のロッドガイドに相当)43とボトム部材44とによって閉塞されると共に、シリンダ42内に摺動自在に挿入されるピストン45によってこのシリンダ42内がロッド側室40とピストン側室50とに区画されている。
【0004】
上記ヘッド部材43は環状に形成され、その内周にはピストンロッド51を軸支する軸受46を備えると共に、上端側から開口する貯留凹部47が設けられている。
【0005】
上記シリンダ42はシリンダ42の外方に配置される有底筒状の外筒41によって覆われており、この外筒41の図中の上端である開口端部には、内周側で環状シール48を保持する封止部材49が上記ヘッド部材43に積層された状態で固定されている。
【0006】
そして、上記封止部材49から突出している環状シール48の下端は、ヘッド部材43の貯留凹部47内に配置されており、この貯留凹部47、封止部材49、及びピストンロッド51で貯油室Sが画成されている。
【0007】
上記環状シール48の内周側にはシリンダ42から突出する上記ピストンロッド51が、ヘッド部材43の上記軸受46内に摺動自在に挿入され、この環状シール48は所定の緊迫力でピストンロッド51の外周面に圧接されている。
【0008】
従って、上記ピストンロッド51は貯油室Sを貫いており、この貯油室Sはピストンロッド51と環状シール48との摺動部に臨むようになっている。
【0009】
更に、貯油室Sは、ヘッド部材43に設けた接続路52によってロッド側室40に連通されると共に、他の接続路53によって循環通路R内に連通されている。
【0010】
上記ピストン45には、ロッド側室40とピストン側室50とを連通する圧側連通路45a及び伸側連通路45bが夫々穿設されている。
【0011】
上記圧側連通路45aには圧側減衰弁56と、ピストン側室50からロッド側室40へのみガスGの流れを許容する圧側逆止弁56aとが設けられており、同じく上記伸側連通路45bには伸側減衰弁57と、ロッド側室40からピストン側室50へのみガスG及び潤滑油Oの流れを許容する伸側逆止弁57aとが設けられている。この場合、上記各減衰弁56、57及び逆止弁56a、57aはリーフバルブで構成されている。
【0012】
上記ボトム部材44には、ピストン側室50と循環通路Rとを連通する通路54が設けられ、この通路54の途中には、ピストン側室50から循環通路Rへのみ流体の流れを許容する逆止弁55が設けられている。
【0013】
上記循環通路Rと接続路52、53及び通路54の少なくとも一箇所に絞りを設け、又は流路断面を細くして流体の流れに抵抗を与え、圧側減衰弁56で減衰力を発生できるようにしている。
【0014】
そして、シリンダ42内には作動気体としてのガスGが封入されると共に、貯油室S内及び循環通路R内には潤滑油Oが充填されるが、貯油室S内の油面が、貯油室S内のガスGのガス圧力と、循環通路R内のガスGのガス圧力とのバランスによって環状シール48の最下端より下方に下がらないような配慮のもと、循環通路R内には充分な量の潤滑油Oが充填されている。
【0015】
又、ロッド側室40及びピストン側室50内にも少量の潤滑油Oが注入されるが、ロッド側室40内に注入される潤滑油Oは、空圧緩衝器が伸縮作動を初めて行うときに、シリンダ42とピストン45との間を潤滑するためであり、ピストン側室50内の潤滑油Oは空圧緩衝器の圧側行程時、循環通路R内にガスGより先んじて潤滑油Oを供給して貯油室S内の油面の下降を防止するためである。
【0016】
このように構成された空圧緩衝器では、ピストンロッド51がシリンダ42内から退出する、即ち、空圧緩衝器の伸側行程において、ロッド側室40内に封入されたガスGがピストン45に設けた伸側連通路45bを通過してピストン側室50に流入すると共に、この伸側連通路45bに設けた伸側減衰弁57によって伸側減衰力を発生する。
【0017】
又、ピストンロッド51がシリンダ42内へ侵入する、即ち、空圧緩衝器の圧側行程において、ピストン側室50内に封入されたガスGがピストン45に設けた圧側連通路45aを通過してロッド側室40に流入すると共に、この圧側連通路45aに設けた圧側減衰弁56よって圧側減衰力を発生する。
【0018】
このとき、ピストン側室50内の圧力上昇によって、ピストン側室50内の潤滑油Oは上記逆止弁55付きの通路54を介して循環通路R内に流入する。
【0019】
すると、循環通路R及び貯油室Sは、ピストン側室50と同様に加圧されることになるので、循環通路R内の潤滑油Oは貯油室S内に流入し、貯油室S内の圧力及び油面を上昇させる。
【0020】
この油面の上昇及び貯油室Sの圧力上昇によって、上記潤滑油Oは、上記接続路52を通過してロッド側室40内に流入し、空圧緩衝器内で潤滑油Oが循環することになる。
【特許文献1】特開2007−16880号公報(図2及び段落番号〜)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このように構成された空圧緩衝器においては、上述したように潤滑油Oをロッド側室40とピストン側室50とに行き来させることで、上記ピストン45の外周とシリンダ42の内周との間の摺動部の潤滑と、シリンダ42上端に設けた上記封止部材49の内周とピストンロッド51の外周との間の摺動部の潤滑とを行って空圧緩衝器の作動の円滑化を図っているので、特に問題がある訳ではないが、次のような不具合の改善が望まれている。
【0022】
即ち、上記接続路52、ピストンロッド51と軸受46との間の隙間を流れる潤滑油の全量がシリンダ42の内周とピストン45の外周との間に供給されるわけでは無く、一部はピストン45bに設けた伸側減衰弁57、伸側逆止弁57aを介してそのままピストン側室50に流出してしまう場合がある。
【0023】
そのため、ピストン45の外周に十分な潤滑油を供給させるには潤滑油の注入量を多くすればよいが、この場合に経済性において不利となる。
【0024】
本発明の目的は、潤滑油を多量に注入しなくてもシリンダの内周とピストンの外周との摺動部に効率良く潤滑油を供給でき、経済性の向上を図れる空圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、シリンダと、このシリンダの端部に設けられてピストンロッドを案内するロッドガイドと、このロッドガイドの上面に配置されると共に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールと、上記ピストンロッドを介してシリンダ内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ内をロッド側室及びピストン側室に区画するピストンと、これらロッド側室及びピストン側室を連通する通路と、この通路に設けた減衰力発生部と、上記ピストン側室及びロッド側室を連通すると共にこのピストン側室からロッド側室へのみ流体の流れを許容する逆止弁を有する潤滑油用通路とを備え、ロッド側室内又はロッド側室と潤滑油用通路内に潤滑油を注入すると共に、上記シリンダ内に作動気体を封入した空圧緩衝器において、上記潤滑油用通路内に当該潤滑油用通路を開閉する開閉弁を設け、上記ピストン側室内に油面検出部材を浮動自在に設け、更に上記油面検出部材の位置に応じて上記開閉弁を開閉制御する開閉弁制御部材を設け、ピストン側室内の潤滑油の油量の増加に伴って上記油面検出部材が予め定められた油面位置まで上昇した時には当該油面検出部材が上記開閉弁制御部材を介して上記開閉弁を開状態とすると共に、潤滑油の減少に伴って予め定められた油面位置まで下降した時には上記開閉弁を閉状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の空圧緩衝器によれば、ピストン側室内の潤滑油の油量の増加に伴って油面検出部材が予め定められた油面位置まで上昇した時には当該油面検出部材が開閉弁制御部材を介して開閉弁を開状態とすると共に、潤滑油の減少に伴って予め定められた油面位置まで下降した時には上記開閉弁を閉状態とするようにしたから、開閉弁を開いてピストン側室内に溜まった余剰の潤滑油をロッド側室に戻すことが可能となり、常に所定量以上の潤滑油をロッド側室に貯えておくことができる。
【0027】
従って、潤滑油を多量に注入しなくてもシリンダの内周とピストンの外周との摺動部に効率良く潤滑油を供給でき、経済性の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明のバルブ構造を自動車のサスペンション装置に使用する空圧緩衝器に具体化した一実施の形態を図に基づいて説明する。
【0029】
この実施の形態では、単筒型空圧緩衝器について説明し、通路手段をシリンダ3の外部の管路を使用しているが、シリンダ3の外側に外筒を設け、シリンダ3と外筒との間に通路手段を設けた複筒式の空圧緩衝器にも適用できる。
【0030】
図1、2に示す実施の形態の空圧緩衝器1は、シリンダ3と、このシリンダ3の端部に設けられてピストンロッド6を案内するロッドガイド12と、このロッドガイド12の上面に配置されると共に、上記ピストンロッド6に摺接してこれらの間をシールする内周リップ15を備えたメインシール13と、上記ピストンロッド6を介してシリンダ3内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ内をロッド側室40及びピストン側室50に区画するピストン5と、これらロッド側室40及びピストン側室50を連通する通路7と、この通路7に設けた減衰力発生部8と、上記ピストン側室50及びロッド側室40を連通すると共にこのピストン側室50からロッド側室40へのみ流体の流れを許容する逆止弁10を有する潤滑油用通路9とを備え、ロッド側室40内又はロッド側室40と潤滑油用通路9内に潤滑油を注入すると共に、上記シリンダ内に作動気体を封入したものである。
【0031】
そして、上記潤滑油用通路9内に当該潤滑油用通路9を開閉する開閉弁11を設け、上記ピストン側室50内に油面検出部材Aを浮動自在に設け、更に上記油面検出部材Aの位置に応じて上記開閉弁11を開閉制御する開閉弁制御部材を設け、ピストン側室50内の潤滑油の油量の増加に伴って上記油面検出部材Aが予め定められた油面位置まで上昇した時には当該油面検出部材Aが上記開閉弁制御部材を介して上記開閉弁11を開状態とすると共に、潤滑油の減少に伴って予め定められた油面位置まで下降した時には上記開閉弁11を閉状態とするものである。
【0032】
この場合、上記油面検出部材Aが油に浮く材質により形成されるか又は中空構造にすることで潤滑油Oの油面上に浮くフロート部材21で構成され、潤滑油の油面の高さに応じてシリンダ3に沿って上下方向に浮動するようになっている。
更に、このフロート部材21は電気センサーとして利用され、開閉弁11が、例えば、ソレノイドバルブで構成され、上記開閉弁制御部材がソレノイドから構成され、フロート部材21で検出した油面位置を電気信号としてソレノイドに送ってソレノイドバルブを開閉させるようになっている。
【0033】
以下、更に詳述すると、シリンダ3の開口端部には、上記ピストンロッド6を案内するロッドガイド12が配置され、このロッドガイド12の上面には上記メインシール13が載置されている。
【0034】
そして、上記シリンダ3の上端を内側に折り曲げることで、このシリンダ3、メインシール13及びロッドガイド12が一体的に加締め固定されている。
【0035】
上記ロッドガイド12は、中心部に軸受としてのベアリング12aが取り付けられる案内孔17を備えた円柱状に形成されており、ベアリング12aの内周面がピストンロッドの外周面と摺接することで、このピストンロッド6を摺動自在に軸受支持すると共に、上面側には潤滑油Oを貯える貯油室Sを画成している。
【0036】
又、上記ベアリング12aにはシール部材としてのシールリング12bが嵌合されており、上記貯油室Sには潤滑油Oが密封状態で貯えられるようになっている。
【0037】
上記メインシール13は、環状のインサートメタル14と、このインサートメタル14の内周側に一体形成された環状シールとしての内周リップ15とを備えている。
【0038】
上記内周リップ15は、ピストンロッド6の外周面に摺接して大気側からのダストの侵入を防止するダストリップ15aと、同じくピストンロッド6の外周面に摺接して上記貯油室Sからの潤滑油Oがシリンダ3内に封入されたガスGと共に大気側へ漏れるのを防止するオイルリップ15bとから形成されている。
【0039】
又、上記貯油室S内には上記オイルリップ15bのリップ部が浸漬する位置まで潤滑油Oが貯えられ、この貯油室S内に貯えられた潤滑油Oによって内周リップ15とピストンロッド6との間の油膜切れを防止するようになっている。
【0040】
上記ピストン5はピストンロッド6の下端に取付固定されており、ピストン5の外周にはシリンダ3の内周面に摺接するピストンリングが嵌挿されていてもよい。
【0041】
上記通路7は、シリンダ3の上部において上記ロッド室側40と接続され、同じくシリンダ3の下部において上記ピストン側室50と接続されると共に、この通路7には上記減衰力発生部としての絞り部8が設けられている。但し、上記通路7の取り付け位置は図示のものに限定されるものではない。
【0042】
上記潤滑油用通路9は、シリンダ3の上部において上記ロッド室側40と接続され、同じくシリンダ3の下部において上記ピストン側室50と接続されると共に、この潤滑油用通路9の途中にはピストンロッド側室50側から順にソレノイドバルブからなる開閉弁11と逆止弁10とが設けられている。
【0043】
又、上記開閉弁11はソレノイドからなる開閉弁制御部材と連動しており、後述する油面検出部材Aの位置によってこの開閉弁11を開閉制御するようになっている。
【0044】
上記油面検出部材Aは、上記したように、油に浮く比重の小さな材質により形成されるか、中空構造にすることで潤滑油Oの油面上に浮く円板状のフロート部材21であって、このフロート部材21自体がセンサーとして構成されているが、フロート部材21にセンサーを取り付けおいても良い。
【0045】
フロート部材21は、フロート本体が、例えば、図1に示すように、シリンダ3内周面に設けた上下方向に延びる案内部材22に腕部23を介して連結されることで、このシリンダ3に沿って上下動するようになっている。この場合、案内部材22をセンサーとして利用しても良い。
【0046】
但し、案内部材22を設けず単独でシリンダ側室50内に上下浮動自在に設けても良い。
【0047】
又、フロート部材21は検出した油面位置を電気信号に変換してソレノイドからなる開閉弁制御部材に送り、このソレノイドの吸引制御で開閉弁11を開かせる。
【0048】
案内部材22側のシリンダ3外周面と、上記開閉弁11との間には上記電気信号を送るためのリード線24が接続されている。
【0049】
そして、ピストン側室50内の潤滑油の油量の増加に伴ってフロート部材21が予め定められた油面位置まで上昇した時には当該フロート部材21からの信号で開閉弁11を開状態とすると共に、潤滑油の減少に伴って予め定められた油面位置まで下降した時には開閉弁11を閉状態とする。
【0050】
即ち、フロート部材21でピストン側室50内に溜められた潤滑油Oの油面が、図1に示すように、予め定められた所定位置以下であることを検出した場合には、上記開閉弁11を閉状態とすると共に、ロッド側室40から漏れた潤滑油Oによってピストン側室50の潤滑油Oの油量が増え、図2に示すように、その油面が上記所定位置以上に上昇したことを検出した場合には、上記開閉弁11を開状態とし、更に、この油面が予め定められた位置に戻ったことを検出した場合には、再度、上記開閉弁11を閉状態とする制御を行うようになっている。
【0051】
このように構成された空圧緩衝器1は、例えば、ピストンロッド6先端に設けられた図示しないロッド側アイを車体側に取り付けると共に、シリンダ3の下端に設けられたシリンダ側アイ37を車軸側に取り付けることで自動車のサスペンション装置に組み込まれる。
【0052】
続いて、その作用を説明すると、ピストンロッド6がシリンダ3内から退出する、即ち、空圧緩衝器1の伸長行程では、ロッド側室40内に封入されたガスGが上記通路7を通過してピストン側室50に流入すると共に、この通路7の途中に設けた絞り部8によって伸側減衰力が発生する。
【0053】
又、ピストンロッド6がシリンダ3内へ侵入する、即ち、空圧緩衝器1の圧側行程では、ピストン側室50内に封入されたガスGが上記通路7を通過してロッド側室40に流入すると共に、この通路7の途中に設けた絞り部8によって圧側減衰力が発生する。
【0054】
このとき、ピストン側室50に貯えられた潤滑油Oが予め定められた所定量である場合には、上記フロート部材21は油面が所定位置であることを検出し、その検出信号によりソレノイドからなる開閉弁制御部材は開閉弁11を閉状態とするので、ピストン側室50の内圧が上昇する空圧緩衝器1の圧側行程で、上記潤滑油Oがロッド側室40へ導かれることはない。
【0055】
ところが、空圧緩衝器1の作動状態によっては、ロッド側室40に溜められた潤滑油Oが、シリンダ3の内周面とピストン5の外周面との摺動部分で生じる微少の漏れによってピストン側室50へ流出することがある。
【0056】
この場合には、ロッド室側40から漏れた潤滑油Oによってピストン側室50の潤滑油Oの油量が増え、その油面が上昇することで、この油面上に浮かんでいる上記フロート部材21を上昇させる。
【0057】
すると、図2に示すように、フロート部材21は潤滑油Oの油面が図1に示す所定位置以上に上昇したことを検出し、その検出信号により上記開閉弁制御部材が開閉弁11を開状態とするので、上記潤滑油用通路9が開く。
【0058】
このため、ピストン側室50の内圧が上昇する上記空圧緩衝器1の圧側行程時に、上記潤滑油用通路9を介して余剰な潤滑油Oがロッド側室40へ導かれる。
【0059】
そして、このロッド側室40への潤滑油Oの供給作業は、油面が下降して図1に示す所定位置になったことをフロート部材21が検出し、上記開閉弁11を閉状態として潤滑油用通路9を再び閉じるまで、継続して行われることになる。
【0060】
従って、上記ロッド側室40におけるピストン5とシリンダ3との摺動部には常に所定量以上の潤滑油Oが貯えられていることになり、この摺動部の潤滑性を安定させて空圧緩衝器1としての円滑な作動を確保する。
【0061】
以上、詳述したように本実施の形態の空圧緩衝器1においては、ロッド側室40に溜められた潤滑油Oがピストン側室50へ流出し、ピストン側室50に貯えられた潤滑油Oが予め定められた所定量を超えた場合のみ、潤滑油用連通路9に設けた開閉弁11が開いて余剰の潤滑油Oをロッド側室40に戻すと共に、余剰分を戻した後は開閉弁11を閉じることで循環作業を行わないので、常に、所定量以上の潤滑油Oをロッド側室40に貯えておくことができる。この場合、ピストン側室50内には必ずしも潤滑油Oを貯えておかなくても使用可能である。
【0062】
上記のように、上記ロッド側室40におけるピストン5とシリンダ3との摺動部には常に所定量以上の潤滑油Oを貯えておくことができ、潤滑油を多量に注入しなくてもシリンダ3の内周とピストン5の外周との摺動部に効率良く潤滑油を供給できる。
【0063】
又、潤滑油Oが通過する潤滑油用通路9と、ガスGが通過する通路7とを別々に設けたので、それぞれ専用の設計ができて本来要求される性能を充分に発揮させることができる。
【0064】
図3は本発明の他の実施の形態を示す。
【0065】
これは、油面検出部材Aとしてのフロート部材21が磁性体からなるフロート本体21Aを備え、上記開閉弁制御装置が予め定められた潤滑油の油面に対応してシリンダ3の外周に取り付けたマグネットスイッチPからなり、フロート本体21AがマグネットスイッチPの位置に対応する位置まで上昇した時当該マグネットスイッチPが開閉弁11を開かせるものである。その他の構造、作用効果は図1の実施の形態と同じである。
【0066】
上記の各実施の形態では、フロート部材21による油面位置検出Aを電気制御としているが、フロート部材21の上下動を機械的に検出して、例えばリンク機構等で開閉弁11の開閉操作を機械的に行うようにしても良い。
【0067】
例えば、図4に示す他の実施の形態のように、開閉弁制御部材がシールSLを介してシリンダ3を貫通するリンクLKからなり、当該リンクLKがフロート部材21と開閉弁Vとの間に連結され、潤滑油Oの油面の位置に対応するフロート部材21の位置に応じて上記リンクLKを変位させて上記開閉弁Vを開閉させるようにしている。
【0068】
この場合の作用効果と他の構造は図1の実施の形態と同じである。
【0069】
なお、図3、図4の実施の形態では、フロート部材21を円板状としたが、多角形状でも良く、球状や円錐状としても良い。
【0070】
球状や円錐状の場合には、フロート部材21上に潤滑油Oが付着してフロート部材21を重くすることを防止できる効果もある。
【0071】
更に、フロ−ト本体21Aの下方には当該フロート本体21Aの外周隙間、又は点線で示すようにフロート本体21A自体に形成した上下に貫通するポートを介して潤滑油を導くようにしている。この場合、フロート本体21Aが最下降してシリンダのボトム上に当接した時でも潤滑油を下方に導入できるようにフロート本体21Aの下面に溝や窪みを設けておく方が良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態を示す空圧緩衝器の縦断面図である。
【図2】図1の空圧緩衝器においてロッド側室に注入された潤滑油の油面位置が上昇した状態を示す縦断面図である。
【図3】他の実施の形態に係わる空圧緩衝器の一部切欠き縦断面図である。
【図4】他の実施の形態に係わる空圧緩衝器の一部切欠き縦断面図である。
【図5】従来の空圧緩衝器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 空圧緩衝器
3 シリンダ
3a 内周面
5 ピストン
6 ピストンロッド
7 通路
8 絞り部(減衰力発生部)
9 潤滑油用通路
10 逆止弁
11 開閉弁
12 ロッドガイド
12a シールリング(シール部材)
13 メインシール(封止部材)
15 内周リップ
18 貯留凹部
21 フロート部材
21A フロート本体
22 案内部材
23 腕部
40 ロッド側室
50 ピストン側室
A 油面検出部材
O 潤滑油
P マグネットスイッチ
LK リンク
S 貯油室
G ガス(作動気体)
V 開閉弁





【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ3と、このシリンダ3の端部に設けられてピストンロッド6を案内するロッドガイド12と、このロッドガイド12の上面に配置されると共に、上記ピストンロッド6に摺接してこれらの間をシールする内周リップ15を備えたメインシール13と、上記ピストンロッド6を介してシリンダ3内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ内をロッド側室40及びピストン側室50に区画するピストン5と、これらロッド側室40及びピストン側室50を連通する通路7と、この通路7に設けた減衰力発生部8と、上記ピストン側室50及びロッド側室40を連通すると共にこのピストン側室50からロッド側室40へのみ流体の流れを許容する逆止弁10を有する潤滑油用通路9とを備え、ロッド側室40内又はロッド側室40と潤滑油用通路9内に潤滑油を注入すると共に、上記シリンダ内に作動気体を封入した空圧緩衝器において、上記潤滑油用通路9内に当該潤滑油用通路9を開閉する開閉弁11又はVを設け、上記ピストン側室50内に油面検出部材Aを浮動自在に設け、更に上記油面検出部材Aの位置に応じて上記開閉弁11又はVを開閉制御する開閉弁制御部材を設け、ピストン側室50内の潤滑油の油量の増加に伴って上記油面検出部材Aが予め定められた油面位置まで上昇した時には当該油面検出部材Aが上記開閉弁制御部材を介して上記開閉弁11又はVを開状態とすると共に、潤滑油の減少に伴って予め定められた油面位置まで下降した時には上記開閉弁11又はVを閉状態とすることを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項2】
上記油面検出部材Aが油に浮く材質により形成されるか又は中空構造にすることで潤滑油の油面上に浮くフロート部材21で構成され、潤滑油の油面の高さに応じてシリンダ3に沿って上下方向に浮動することを特徴とする請求項1に記載の空圧緩衝器。
【請求項3】
上記フロート部材21は電気センサーとして利用され、開閉弁11がソレノイドバルブからなり、上記開閉弁制御部材がソレノイドからなり、上記フロート部材21で検出した油面位置を電気信号としてソレノイドに送ってソレノイドバルブを開閉させることを特徴とする請求項2に記載の空圧緩衝器。
【請求項4】
上記フロート部材21が磁性体からなるフロート本体21Aを備え、上記開閉弁制御装置が予め定められた潤滑油の油面位置に対応してシリンダ3の外周に取り付けたマグネットスイッチPからなり、フロート本体21AがマグネットスイッチPの位置に対応する位置まで上昇した時当該マグネットスイッチPが開閉弁11を開かせることを特徴とする請求項2に記載の空圧緩衝器。
【請求項5】
開閉弁制御部材がシールSLを介してシリンダ3を貫通するリンクLKからなり、当該リンクLKがフロート部材21と開閉弁Vとの間に連結され、油面位置に対応するフロート部材21の位置に応じて上記リンクLKを変位させて上記開閉弁Vを開閉させることを特徴とする請求項2に記載の空圧緩衝器。
【請求項6】
上記ロッドガイド12のピストンロッド6との摺動部にシール部材12bを設けると共に、このロッドガイド12の上面側に貯油室Sを画成したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の空圧緩衝器。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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