空圧緩衝器
【課題】油溜り凹部に収容の潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し、その汎用性の向上を期待するのに最適となる空圧緩衝器を提供する。
【解決手段】作動流体たる気体を収容するシリンダ体１と、このシリンダ体１内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体１内をロッド側室Ｒ１とピストン側室Ｒ２とに区画するピストン体３と、このピストン体３を先端側に結合して上記シリンダ体１内に出没可能に挿通されるロッド体２と、上記シリンダ体１のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体２を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部５ａを内周に有する油溜りケース５とを有してなる空圧緩衝器において、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段６を有し、この阻止手段６が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体３と上記油溜りケース５との間に配在されてなる。
【解決手段】作動流体たる気体を収容するシリンダ体１と、このシリンダ体１内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体１内をロッド側室Ｒ１とピストン側室Ｒ２とに区画するピストン体３と、このピストン体３を先端側に結合して上記シリンダ体１内に出没可能に挿通されるロッド体２と、上記シリンダ体１のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体２を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部５ａを内周に有する油溜りケース５とを有してなる空圧緩衝器において、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段６を有し、この阻止手段６が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体３と上記油溜りケース５との間に配在されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、空圧緩衝器に関し、特に、車両のサスペンション装置への利用に適する空圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【０００２】
車両のサスペンション装置への利用に適する空圧緩衝器としては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献１に開示の提案にあっては、空圧緩衝器における伸縮作動性が保障されている。
【０００３】
すなわち、この特許文献１に開示の空圧緩衝器にあっては、凡そこの種の空圧緩衝器がそうであるように、たとえば、下端側部材とされて車両における車軸側に連結されるシリンダ体に上端側部材とされて車両における車体側に連結されるロッド体が出没可能に挿通されてなる。
【０００４】
そして、この空圧緩衝器にあって、シリンダ体の上端たるヘッド端は、軸芯部にロッド体を貫通させるロッドガイドで封止され、このロッドガイドは、ロッド体の外周に摺接するシールを有し、したがって、シリンダ体内への封入気体がこのシールによって外部に漏れ出ない。
【０００５】
その一方で、この空圧緩衝器にあっては、ロッドガイドに油溜り凹部を有し、この油溜り凹部に収容される潤滑油がロッド体の外周に付着し、ロッド体の外周に潤滑油膜を形成する。
【０００６】
それゆえ、この特許文献１に開示の空圧緩衝器にあっては、ロッド体の外周に潤滑油膜が形成されるので、ロッド体のロッドガイドに対する摺動性が保障され、したがって、シリンダ体に対するロッド体の出没作動性、すなわち、空圧緩衝器における伸縮作動性が保障される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開２００９‐４１７６６公報（明細書中の段落０００３，同０００４，同０００８，図２参照）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、上記した特許文献１に開示の空圧緩衝器にあっては、伸縮作動性が保障される点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【０００９】
すなわち、油溜り凹部に収容される潤滑油は、その機能するところを鑑みると、その量が不足することはもちろん問題になるが、量が減らないにしても汚れるなどして劣化することも問題になる。
【００１０】
つまり、空圧緩衝器であるがために、シリンダ体内に収装されるピストン体が摺動する雰囲気は、多くの場合にドライ傾向になり、したがって、仮にピストン体のシリンダ体に対する摺動などで発生した異物、たとえば、極めて細かい金属粉がシリンダ体内を漂うような状況が醸し出されると、その細かい金属粉が油溜り凹部の潤滑油に混入することが危惧される。
【００１１】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、油溜り凹部に収容の潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し、その汎用性の向上を期待するのに最適となる空圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
上記課題を解決するための手段は、作動流体たる気体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストン体と、このピストン体を先端側に結合して上記シリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体と、上記シリンダ体のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部を内周に有する油溜りケースとを有してなる空圧緩衝器において、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段を有し、この阻止手段が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体と上記油溜りケースとの間に配在されてなるとする。
【発明の効果】
【００１３】
本発明によれば、この阻止手段が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体と上記油溜りケースとの間に配在されてなるため、ピストン体のシリンダ体に対する摺動などで発生した異物が、上記阻止手段に吸着されて、上記潤滑油中に異物が混入することを防止し、これにより上記潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し得る。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明の第一の実施の形態における空圧緩衝器の縦断面図である。
【図２】本発明の第二の実施の形態における空圧緩衝器の縦断面図である。
【図３】本発明の第三の実施の形態における空圧緩衝器の部分縦断面図である。
【図４】本発明の第四の実施の形態における空圧緩衝器の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、本発明の実施の形態を示す緩衝器について、図面を参照して詳細に説明する。
【００１６】
本発明の実施の形態を示す空圧緩衝器は、図１に示すように、作動流体たる気体を収容するシリンダ体１と、このシリンダ体１内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体１内をロッド側室Ｒ１とピストン側室Ｒ２とに区画するピストン体３と、このピストン体３を先端側に結合して上記シリンダ体１内に出没可能に挿通されるロッド体２と、上記シリンダ体１のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体２を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部５ａを内周に有する油溜りケース５とを有してなる。
【００１７】
そして、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段６を有し、この阻止手段６が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体３と上記油溜りケース５との間に配在されてなる。
【００１８】
つまり、阻止手段が、弾性の多孔質体で形成されると共に、上記ピストン体３と上記油溜りケース５との間に配在されてなるため、ピストン体３のシリンダ体１に対する摺動などで発生した異物が、上記阻止手段６に吸着されて、上記潤滑油中に異物が混入することを防止し、これにより上記潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し得る。
【００１９】
以下に上記本発明に係る空圧緩衝器について詳細に説明する。本発明に係る空圧緩衝器は、下端側部材とされて車両における車軸（図示せず）側に連結されるシリンダ体１と、上端側部材とされて車両における車体（図示せず）側に連結されるロッド体２とを有し、このロッド体２の図１中で下端側となる先端側がシリンダ体１内に挿通されてなる。
【００２０】
このとき、作動流体たる気体を収容するシリンダ体１の図中で下端となるボトム端は、ボトムキャップ１１の溶接などで機密状態に封鎖され、このボトムキャップ１１はアイ１１ａを有し、このアイ１１ａを利用してこのシリンダ体１の、すなわち、この空圧緩衝器の車両における車軸側への連結を可能にしている。
【００２１】
そして、ロッド体２の図中で上端部となる基端部は、エンドボルト部２ａとされ、このエンドボルト部２ａを利用してこのロッド体２の、すなわち、この空圧緩衝器の車体側への連結を可能にしている。
【００２２】
また、この空圧緩衝器にあって、ロッド体２の図中で下端部となる先端部に保持されてシリンダ体１内に摺動可能に収容されるピストン体３を有し、このピストン体３は、シリンダ体１内に上方気室たるロッド側室Ｒ１と下方気室たるピストン側室Ｒ２とを画成する。
【００２３】
このとき、ピストン体３は、例えば、シリンダ体１の内周に外周を摺接させるピストンリング（図示せず）を一体的に有するモールドピストンとされる一方で、シリンダ体１内を昇降するときに所定の減衰作用をする減衰手段を有してなる。
【００２４】
そして、この減衰手段は、ピストン体３がシリンダ体１内を上昇するときに、ロッド側室Ｒ１の気体がピストン側室Ｒ２に抜ける際に伸側の減衰作用をするリーフバルブ３１と、逆に、ピストン体３がシリンダ体１内を下降するときに、ピストン側室Ｒ２の気体がロッド側室Ｒ１に抜ける際に圧側の減衰作用をするリーフバルブ３２とを有してなる。
【００２５】
上記シリンダ体１の上端部たるヘッド端部は、内側にロッドガイド４を有するとともに、このロッドガイド４に適宜の手段で連結などされて所定位置に定着される油溜りケース５を有し、シリンダ体１のヘッド端は、キャップ１２の螺着で封鎖されている。
【００２６】
上記ロッドガイド４は、外周にシール（図示せず）を有するなどしてシリンダ体１に気密状態に連結され、軸心部にロッド体２を貫通させ、このロッド体２を貫通させる内周側部には、軸受４１が保持され、この軸受４１の内周がロッド体２の外周に摺接してロッド体２のロッドガイド４に対する摺動性を保障している。
【００２７】
また、このロッドガイド４の内周側部には、チェックシール４２とダストシール４３とが配設され、チェックシール４２は、たとえば、Ｕパッキンからなり、後述する油溜り凹部５ａに収容の潤滑油が油膜となってロッド体２の外周に付着し、したがって、このロッド体２がシリンダ体１内から抜け出るようになるとき、油膜となる潤滑油がいわゆる外部に漏出しないようにロッド体２の外周から油膜を掻き落とす。
【００２８】
上記ダストシール４３は、シリンダ体１の外に突出するロッド体２の外周に付着するダストを掻き落とし、ダストがロッド体２の外周に付着したままシリンダ体１内に侵入するのをあらかじめ阻止する。
【００２９】
一方、油溜りケース５は、上記のロッドガイド４の下端に垂設されるように配在されるとともに油溜り凹部５ａを有してなり、この油溜り凹部５ａは、上端側から中央部を抉るように欠落形成されて、文字通り油、すなわち、潤滑油を定量収容している。
【００３０】
このとき、この油溜りケース５は、外周にシール（図示せず）を有するなどしてシリンダ体１との間の気密性を保障すると共に、軸心部にロッド体２を上下方向に貫通させ、したがって、ロッド体２は油溜り凹部５ａを上下方向に貫通し、それゆえ、ロッド体２の外周には潤滑油が付着する。
【００３１】
更に、この油溜りケース５は、油溜り凹部５ａの下方となる下端部にチェックシール５１を有し、このチェックシール５１は、たとえば、Ｕパッキンからなり、油溜り凹部５ａに収容の潤滑油が油膜となってロッド体２の外周に付着し、したがって、このロッド体２がシリンダ体１内に没入するようになるとき、油膜となる潤滑油がシリンダ体１内に漏出しないようにロッド体２の外周から油膜を掻き落す。
【００３２】
そして、本実施の形態に係る空圧緩衝器にあっては、上記油溜り凹部５ａに収容される潤滑油の汚れによる劣化を阻止するため、弾性の多孔質体からなる阻止手段６を有しており、この構成が本発明において最も特徴とするものである。
【００３３】
上記阻止手段６は、ロッド側室Ｒ１に収容されるロッド側阻止部６ａと、ピストン側室Ｒ２に収容されるピストン側阻止部６ｂとからなり、上記ロッド側室Ｒ１内及びピストン側室Ｒ２内の全域に上記阻止手段６が配在されてなる。
【００３４】
つまり、上記阻止手段６が多孔質体からなることから、シリンダ体１に対するピストン体３の摺動により生じた異物を吸着及び保持することが可能である。
【００３５】
また、上記阻止手段６が弾性体からなることから、ピストン体３の昇降によりロッド側室Ｒ１及びピストン側室Ｒ２の容積が変化したとしても、弾性変形してピストン体３の昇降を妨げない。
【００３６】
上記阻止手段６の素材は、弾性且つ多孔質であれば適宜素材を選択することが可能であるが、例えば、スポンジや発砲ウレタン等の使用が可能である。
【００３７】
更に、上記ロッド側室Ｒ１内及びピストン側室Ｒ２内の全域に上記阻止手段６が配在されて、ロッド側阻止部６ａの上下端は油溜りケース５とピストン体３に常に当接していることから、シリンダ体１に対するピストン体３の摺動により異物が発生したとしても、上記阻止手段６に確実に吸着され、シリンダ体１やロッド体２に異物が付着したとしても拭き取られ、異物が油溜り凹部５ａに到達しない。
【００３８】
これにより上記異物が油溜り凹部５ａに混入することを防ぎ、油溜り凹部５ａに収容される潤滑油が汚れて劣化することを防止することが容易且つ安価に可能となる。
【００３９】
また、上記阻止手段６がロッド側室Ｒ１及びピストン側室Ｒ２の全域に設けられていることから、阻止手段６を固定しなくても阻止手段６がずれることがなく、阻止手段６がずれて隙間を生じ、この隙間を異物が通過して油溜り凹部５ａに混入する心配がない。
【００４０】
更には、上記阻止手段６が、緩衝器の最伸張時や最収縮時におけるピストン体３の油溜りケース５やボトムキャップ１１に対する作用力を吸収する衝撃吸収材としての役割を担うと共に、シリンダ体１に対するピストン体３が摺接する際に生じる摺接音などの異音を吸収する効果がある。
【００４１】
尚、本実施の形態においては、上記阻止手段６をピストン側室Ｒ２にも設けることより、異物の吸着や上記異音の吸収が効率的で、緩衝器の最収縮時の衝撃吸収が可能であるがこの限りではなく、ロッド側室Ｒ１にのみ阻止手段を設けるとしても良い。
【００４２】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【００４３】
例えば、図２に示すように、阻止手段６が、円筒形状に形成されてロッド側室Ｒ１の一部に設けられ、上端を上記油溜りケース５に下端を上記ピストン体３に接着されるとしても良く、この構成によれば、阻止手段６が小さくて済み、更に容易且つ安価に製造可能である。
【００４４】
また、上記阻止手段６は、図３に示すように、軸心部に貫通孔６ｃを有して環状に形成されてなり、外周を上記シリンダ体１内周に摺接させ、内周をロッド体２に摺接させてなるとしても良い。
【００４５】
この場合においては、上記阻止手段６を固定する必要性がなく、上記阻止手段６の構成が更に簡単である。
【００４６】
また、この場合において、図４に示すように、上記阻止手段６をピストン体３に固定した場合においては、阻止手段６の内周面をロッド体２に摺接させる必要がなく、阻止手段６を小さく形成することでき、安価に製造することが可能である。
【符号の説明】
【００４７】
Ｒ１ ロッド側室
Ｒ２ ピストン側室
１ シリンダ体
２ ロッド体
３ ピストン体
４ ロッドガイド
５ 油溜りケース
６ 阻止手段
６ａ ロッド側阻止部
６ｂ ピストン側阻止部
３１、３２ 減衰手段たるリーフバルブ
【技術分野】
【０００１】
この発明は、空圧緩衝器に関し、特に、車両のサスペンション装置への利用に適する空圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【０００２】
車両のサスペンション装置への利用に適する空圧緩衝器としては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献１に開示の提案にあっては、空圧緩衝器における伸縮作動性が保障されている。
【０００３】
すなわち、この特許文献１に開示の空圧緩衝器にあっては、凡そこの種の空圧緩衝器がそうであるように、たとえば、下端側部材とされて車両における車軸側に連結されるシリンダ体に上端側部材とされて車両における車体側に連結されるロッド体が出没可能に挿通されてなる。
【０００４】
そして、この空圧緩衝器にあって、シリンダ体の上端たるヘッド端は、軸芯部にロッド体を貫通させるロッドガイドで封止され、このロッドガイドは、ロッド体の外周に摺接するシールを有し、したがって、シリンダ体内への封入気体がこのシールによって外部に漏れ出ない。
【０００５】
その一方で、この空圧緩衝器にあっては、ロッドガイドに油溜り凹部を有し、この油溜り凹部に収容される潤滑油がロッド体の外周に付着し、ロッド体の外周に潤滑油膜を形成する。
【０００６】
それゆえ、この特許文献１に開示の空圧緩衝器にあっては、ロッド体の外周に潤滑油膜が形成されるので、ロッド体のロッドガイドに対する摺動性が保障され、したがって、シリンダ体に対するロッド体の出没作動性、すなわち、空圧緩衝器における伸縮作動性が保障される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開２００９‐４１７６６公報（明細書中の段落０００３，同０００４，同０００８，図２参照）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、上記した特許文献１に開示の空圧緩衝器にあっては、伸縮作動性が保障される点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【０００９】
すなわち、油溜り凹部に収容される潤滑油は、その機能するところを鑑みると、その量が不足することはもちろん問題になるが、量が減らないにしても汚れるなどして劣化することも問題になる。
【００１０】
つまり、空圧緩衝器であるがために、シリンダ体内に収装されるピストン体が摺動する雰囲気は、多くの場合にドライ傾向になり、したがって、仮にピストン体のシリンダ体に対する摺動などで発生した異物、たとえば、極めて細かい金属粉がシリンダ体内を漂うような状況が醸し出されると、その細かい金属粉が油溜り凹部の潤滑油に混入することが危惧される。
【００１１】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、油溜り凹部に収容の潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し、その汎用性の向上を期待するのに最適となる空圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
上記課題を解決するための手段は、作動流体たる気体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストン体と、このピストン体を先端側に結合して上記シリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体と、上記シリンダ体のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部を内周に有する油溜りケースとを有してなる空圧緩衝器において、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段を有し、この阻止手段が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体と上記油溜りケースとの間に配在されてなるとする。
【発明の効果】
【００１３】
本発明によれば、この阻止手段が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体と上記油溜りケースとの間に配在されてなるため、ピストン体のシリンダ体に対する摺動などで発生した異物が、上記阻止手段に吸着されて、上記潤滑油中に異物が混入することを防止し、これにより上記潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し得る。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明の第一の実施の形態における空圧緩衝器の縦断面図である。
【図２】本発明の第二の実施の形態における空圧緩衝器の縦断面図である。
【図３】本発明の第三の実施の形態における空圧緩衝器の部分縦断面図である。
【図４】本発明の第四の実施の形態における空圧緩衝器の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、本発明の実施の形態を示す緩衝器について、図面を参照して詳細に説明する。
【００１６】
本発明の実施の形態を示す空圧緩衝器は、図１に示すように、作動流体たる気体を収容するシリンダ体１と、このシリンダ体１内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体１内をロッド側室Ｒ１とピストン側室Ｒ２とに区画するピストン体３と、このピストン体３を先端側に結合して上記シリンダ体１内に出没可能に挿通されるロッド体２と、上記シリンダ体１のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体２を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部５ａを内周に有する油溜りケース５とを有してなる。
【００１７】
そして、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段６を有し、この阻止手段６が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体３と上記油溜りケース５との間に配在されてなる。
【００１８】
つまり、阻止手段が、弾性の多孔質体で形成されると共に、上記ピストン体３と上記油溜りケース５との間に配在されてなるため、ピストン体３のシリンダ体１に対する摺動などで発生した異物が、上記阻止手段６に吸着されて、上記潤滑油中に異物が混入することを防止し、これにより上記潤滑油を異物の混入で劣化させずして、伸縮作動性を恒久的に保障し得る。
【００１９】
以下に上記本発明に係る空圧緩衝器について詳細に説明する。本発明に係る空圧緩衝器は、下端側部材とされて車両における車軸（図示せず）側に連結されるシリンダ体１と、上端側部材とされて車両における車体（図示せず）側に連結されるロッド体２とを有し、このロッド体２の図１中で下端側となる先端側がシリンダ体１内に挿通されてなる。
【００２０】
このとき、作動流体たる気体を収容するシリンダ体１の図中で下端となるボトム端は、ボトムキャップ１１の溶接などで機密状態に封鎖され、このボトムキャップ１１はアイ１１ａを有し、このアイ１１ａを利用してこのシリンダ体１の、すなわち、この空圧緩衝器の車両における車軸側への連結を可能にしている。
【００２１】
そして、ロッド体２の図中で上端部となる基端部は、エンドボルト部２ａとされ、このエンドボルト部２ａを利用してこのロッド体２の、すなわち、この空圧緩衝器の車体側への連結を可能にしている。
【００２２】
また、この空圧緩衝器にあって、ロッド体２の図中で下端部となる先端部に保持されてシリンダ体１内に摺動可能に収容されるピストン体３を有し、このピストン体３は、シリンダ体１内に上方気室たるロッド側室Ｒ１と下方気室たるピストン側室Ｒ２とを画成する。
【００２３】
このとき、ピストン体３は、例えば、シリンダ体１の内周に外周を摺接させるピストンリング（図示せず）を一体的に有するモールドピストンとされる一方で、シリンダ体１内を昇降するときに所定の減衰作用をする減衰手段を有してなる。
【００２４】
そして、この減衰手段は、ピストン体３がシリンダ体１内を上昇するときに、ロッド側室Ｒ１の気体がピストン側室Ｒ２に抜ける際に伸側の減衰作用をするリーフバルブ３１と、逆に、ピストン体３がシリンダ体１内を下降するときに、ピストン側室Ｒ２の気体がロッド側室Ｒ１に抜ける際に圧側の減衰作用をするリーフバルブ３２とを有してなる。
【００２５】
上記シリンダ体１の上端部たるヘッド端部は、内側にロッドガイド４を有するとともに、このロッドガイド４に適宜の手段で連結などされて所定位置に定着される油溜りケース５を有し、シリンダ体１のヘッド端は、キャップ１２の螺着で封鎖されている。
【００２６】
上記ロッドガイド４は、外周にシール（図示せず）を有するなどしてシリンダ体１に気密状態に連結され、軸心部にロッド体２を貫通させ、このロッド体２を貫通させる内周側部には、軸受４１が保持され、この軸受４１の内周がロッド体２の外周に摺接してロッド体２のロッドガイド４に対する摺動性を保障している。
【００２７】
また、このロッドガイド４の内周側部には、チェックシール４２とダストシール４３とが配設され、チェックシール４２は、たとえば、Ｕパッキンからなり、後述する油溜り凹部５ａに収容の潤滑油が油膜となってロッド体２の外周に付着し、したがって、このロッド体２がシリンダ体１内から抜け出るようになるとき、油膜となる潤滑油がいわゆる外部に漏出しないようにロッド体２の外周から油膜を掻き落とす。
【００２８】
上記ダストシール４３は、シリンダ体１の外に突出するロッド体２の外周に付着するダストを掻き落とし、ダストがロッド体２の外周に付着したままシリンダ体１内に侵入するのをあらかじめ阻止する。
【００２９】
一方、油溜りケース５は、上記のロッドガイド４の下端に垂設されるように配在されるとともに油溜り凹部５ａを有してなり、この油溜り凹部５ａは、上端側から中央部を抉るように欠落形成されて、文字通り油、すなわち、潤滑油を定量収容している。
【００３０】
このとき、この油溜りケース５は、外周にシール（図示せず）を有するなどしてシリンダ体１との間の気密性を保障すると共に、軸心部にロッド体２を上下方向に貫通させ、したがって、ロッド体２は油溜り凹部５ａを上下方向に貫通し、それゆえ、ロッド体２の外周には潤滑油が付着する。
【００３１】
更に、この油溜りケース５は、油溜り凹部５ａの下方となる下端部にチェックシール５１を有し、このチェックシール５１は、たとえば、Ｕパッキンからなり、油溜り凹部５ａに収容の潤滑油が油膜となってロッド体２の外周に付着し、したがって、このロッド体２がシリンダ体１内に没入するようになるとき、油膜となる潤滑油がシリンダ体１内に漏出しないようにロッド体２の外周から油膜を掻き落す。
【００３２】
そして、本実施の形態に係る空圧緩衝器にあっては、上記油溜り凹部５ａに収容される潤滑油の汚れによる劣化を阻止するため、弾性の多孔質体からなる阻止手段６を有しており、この構成が本発明において最も特徴とするものである。
【００３３】
上記阻止手段６は、ロッド側室Ｒ１に収容されるロッド側阻止部６ａと、ピストン側室Ｒ２に収容されるピストン側阻止部６ｂとからなり、上記ロッド側室Ｒ１内及びピストン側室Ｒ２内の全域に上記阻止手段６が配在されてなる。
【００３４】
つまり、上記阻止手段６が多孔質体からなることから、シリンダ体１に対するピストン体３の摺動により生じた異物を吸着及び保持することが可能である。
【００３５】
また、上記阻止手段６が弾性体からなることから、ピストン体３の昇降によりロッド側室Ｒ１及びピストン側室Ｒ２の容積が変化したとしても、弾性変形してピストン体３の昇降を妨げない。
【００３６】
上記阻止手段６の素材は、弾性且つ多孔質であれば適宜素材を選択することが可能であるが、例えば、スポンジや発砲ウレタン等の使用が可能である。
【００３７】
更に、上記ロッド側室Ｒ１内及びピストン側室Ｒ２内の全域に上記阻止手段６が配在されて、ロッド側阻止部６ａの上下端は油溜りケース５とピストン体３に常に当接していることから、シリンダ体１に対するピストン体３の摺動により異物が発生したとしても、上記阻止手段６に確実に吸着され、シリンダ体１やロッド体２に異物が付着したとしても拭き取られ、異物が油溜り凹部５ａに到達しない。
【００３８】
これにより上記異物が油溜り凹部５ａに混入することを防ぎ、油溜り凹部５ａに収容される潤滑油が汚れて劣化することを防止することが容易且つ安価に可能となる。
【００３９】
また、上記阻止手段６がロッド側室Ｒ１及びピストン側室Ｒ２の全域に設けられていることから、阻止手段６を固定しなくても阻止手段６がずれることがなく、阻止手段６がずれて隙間を生じ、この隙間を異物が通過して油溜り凹部５ａに混入する心配がない。
【００４０】
更には、上記阻止手段６が、緩衝器の最伸張時や最収縮時におけるピストン体３の油溜りケース５やボトムキャップ１１に対する作用力を吸収する衝撃吸収材としての役割を担うと共に、シリンダ体１に対するピストン体３が摺接する際に生じる摺接音などの異音を吸収する効果がある。
【００４１】
尚、本実施の形態においては、上記阻止手段６をピストン側室Ｒ２にも設けることより、異物の吸着や上記異音の吸収が効率的で、緩衝器の最収縮時の衝撃吸収が可能であるがこの限りではなく、ロッド側室Ｒ１にのみ阻止手段を設けるとしても良い。
【００４２】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【００４３】
例えば、図２に示すように、阻止手段６が、円筒形状に形成されてロッド側室Ｒ１の一部に設けられ、上端を上記油溜りケース５に下端を上記ピストン体３に接着されるとしても良く、この構成によれば、阻止手段６が小さくて済み、更に容易且つ安価に製造可能である。
【００４４】
また、上記阻止手段６は、図３に示すように、軸心部に貫通孔６ｃを有して環状に形成されてなり、外周を上記シリンダ体１内周に摺接させ、内周をロッド体２に摺接させてなるとしても良い。
【００４５】
この場合においては、上記阻止手段６を固定する必要性がなく、上記阻止手段６の構成が更に簡単である。
【００４６】
また、この場合において、図４に示すように、上記阻止手段６をピストン体３に固定した場合においては、阻止手段６の内周面をロッド体２に摺接させる必要がなく、阻止手段６を小さく形成することでき、安価に製造することが可能である。
【符号の説明】
【００４７】
Ｒ１ ロッド側室
Ｒ２ ピストン側室
１ シリンダ体
２ ロッド体
３ ピストン体
４ ロッドガイド
５ 油溜りケース
６ 阻止手段
６ａ ロッド側阻止部
６ｂ ピストン側阻止部
３１、３２ 減衰手段たるリーフバルブ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
作動流体たる気体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストン体と、このピストン体を先端側に結合して上記シリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体と、上記シリンダ体のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部を内周に有する油溜りケースとを有してなる空圧緩衝器において、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段を有し、この阻止手段が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体と上記油溜りケースとの間に配在されてなることを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項２】
上記阻止手段が円筒形状に形成され、上端を上記油溜りケースに下端を上記ピストン体に当接してなる請求項１に記載の空圧緩衝器。
【請求項３】
上記阻止手段が軸心部に貫通孔を有する環状に形成されて、外周を上記シリンダ体内周に摺接させ、内周をロッド体に摺接させてなる請求項１又は請求項２に記載の空圧緩衝器。
【請求項４】
上記阻止手段が軸心部に貫通孔を有する環状に形成されて、外周を上記シリンダ体内周に摺接させ、下端を上記ピストン体に固定されてなる請求項１又は請求項２に記載の空圧緩衝器。
【請求項５】
上記阻止手段が上記ロッド側室及びピストン側室の全域に設けられる請求項１乃至請求項３に記載の空圧緩衝器。
【請求項１】
作動流体たる気体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に摺動可能に設けられて上記シリンダ体内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストン体と、このピストン体を先端側に結合して上記シリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体と、上記シリンダ体のヘッド端部の内側に設けられて上記ロッド体を貫通させると共に潤滑油を収容する油溜り凹部を内周に有する油溜りケースとを有してなる空圧緩衝器において、上記潤滑油中に異物が混入することを防止する阻止手段を有し、この阻止手段が弾性の多孔質体で形成される共に上記ピストン体と上記油溜りケースとの間に配在されてなることを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項２】
上記阻止手段が円筒形状に形成され、上端を上記油溜りケースに下端を上記ピストン体に当接してなる請求項１に記載の空圧緩衝器。
【請求項３】
上記阻止手段が軸心部に貫通孔を有する環状に形成されて、外周を上記シリンダ体内周に摺接させ、内周をロッド体に摺接させてなる請求項１又は請求項２に記載の空圧緩衝器。
【請求項４】
上記阻止手段が軸心部に貫通孔を有する環状に形成されて、外周を上記シリンダ体内周に摺接させ、下端を上記ピストン体に固定されてなる請求項１又は請求項２に記載の空圧緩衝器。
【請求項５】
上記阻止手段が上記ロッド側室及びピストン側室の全域に設けられる請求項１乃至請求項３に記載の空圧緩衝器。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１０−２７６０６７（Ｐ２０１０−２７６０６７Ａ）
【公開日】平成２２年１２月９日（２０１０．１２．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１２７３２８（Ｐ２００９−１２７３２８）
【出願日】平成２１年５月２７日（２００９．５．２７）
【出願人】（００００００９２９）カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１２月９日（２０１０．１２．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年５月２７日（２００９．５．２７）
【出願人】（００００００９２９）カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Ｆターム（参考）】
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