説明

空気二次電池用正極触媒及び空気二次電池

【課題】酸素の還元活性と、水の酸化活性と、の両方に優れた空気二次電池用正極触媒、及び該触媒を用いた空気二次電池を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される金属錯体を用いてなる空気二次電池用正極触媒。


(式中、Zは3価の有機基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていてもよい。Eは酸素原子又は硫黄原子であり、複数のEは互いに同一でも異なっていてもよい。Qは少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。Tは水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気二次電池用正極触媒及び該触媒を用いた空気二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の酸素を活物質として使用する空気電池は、高エネルギー密度化が可能であることから、電気自動車用等の種々の用途への応用が期待されている。
空気電池は、酸素還元能を有する正極触媒と、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素等を活物質とする負極活物質を使用する電池である。
従来の空気電池としては、二酸化マンガンを正極触媒として用いたものが開示されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Power Sources,Volume 91,2000,Pages 83−85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、充電することにより電気を蓄え、繰り返し使用することができる電池(二次電池、充電式電池、蓄電池)が知られており、これは、上述の空気電池のような、空気中の酸素を活物質として使用する電池においても開発が進められている。以下の説明においては、空気中の酸素を活物質として使用し、充電及び放電が繰り返し可能な電池を、上述した空気電池と区別するために「空気二次電池」と称する。
【0005】
空気二次電池の正極触媒には、放電のみを行う空気電池(一次電池)の正極触媒に求められる酸素の還元活性に加え、充電時に水の酸化活性が求められる。この観点から従来の空気電池の正極触媒を見ると、上述の二酸化マンガンは、酸素の還元活性を有するが、水の酸化活性が低い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、酸素の還元活性と、水の酸化活性と、の両方に優れた空気二次電池用正極触媒を提供することを課題とする。また、このような空気二次電池用正極触媒を用いた空気二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、下記一般式(1)で表される金属錯体を用いてなる空気二次電池用正極触媒を提供する。
【0008】
【化1】

(式中、
は3価の有機基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていてもよい。
Eは酸素原子又は硫黄原子であり、複数のEは互いに同一でも異なっていてもよい。
は少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。
は水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。
Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンである。
Xは対イオン又は中性分子であり、nは0以上の整数であり、nが2以上の場合、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記一般式(1)で表される金属錯体が、下記一般式(2)で表される金属錯体であるものが好ましい。
【0010】
【化2】

(式中、
は水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
は少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。
は水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。
M、X及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【0011】
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記T又はTが、含窒素芳香族複素環を有する有機基であるものが好ましい。
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記一般式(2)で表される金属錯体が、下記一般式(3)で表される金属錯体であるものが好ましい。
【0012】
【化3】

(式中、
は水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
及びQは、それぞれ独立に下記一般式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(3−5)又は(3−6)で表される2価の基である。
M、X及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【0013】
【化4】

(式中、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、複数のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR、R、R、R、R及びRが置換基である場合、これらはそれぞれ互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
Aは、下記式(3−a)、(3−b)又は下記一般式(3−c)で表される2価の基であり、複数のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
【化5】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。)
【0015】
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記Mが、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる群から選ばれる一種の原子又はそのイオンであるものが好ましい。
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記金属錯体とカーボンとを含む組成物を用いてなるものでもよい。
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記金属錯体、又は前記金属錯体とカーボンとを含む組成物を、300〜1200℃で加熱して得られたものでもよい。
また、本発明は、上記本発明の空気二次電池用正極触媒を正極触媒層に含み、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素、及び、これらのイオンからなる群より選ばれる一種以上を負極活物質として用いた空気二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素の還元活性と、水の酸化活性と、の両方に優れた空気二次電池用正極触媒、及び該触媒を用いた空気二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る空気二次電池の一実施形態を例示する概略断面図である。
【図2】実施例7における空気二次電池の充放電サイクル試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明において「置換基を有する」とは、特に断りの無い限り、対象の基において、「1つ以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換される」こと、そして「置換基の数及び位置は限定されず、すべての水素原子が置換基で置換されていてもよい」ことを意味するものとする。
【0019】
<空気二次電池用正極触媒>
本発明の空気二次電池用正極触媒(以下、単に「正極触媒」と言うことがある。)は、下記一般式(1)で表される金属錯体を用いてなる。
【0020】
【化6】

(式中、
は3価の有機基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていてもよい。
Eは酸素原子又は硫黄原子であり、複数のEは互いに同一でも異なっていてもよい。
は少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。
は水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。
Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンである。
Xは対イオン又は中性分子であり、nは0以上の整数であり、nが2以上の場合、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0021】
(金属錯体)
前記一般式(1)中、Zは3価の有機基であり、複数(2つ)のZは互いに同一でも異なっていてもよい。
前記3価の有機基としては、置換基を有していてもよい芳香族基が例示される。
【0022】
における前記芳香族基とは、芳香族化合物から(好ましくは、芳香族化合物の環を構成する炭素原子から)水素原子を3個除去して生じる3価の基である。ここで芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ビフェニル、ビナフチル、フェナントレン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピリジン、ピラジン、ピロール等の炭素数が好ましくは3〜60、より好ましくは3〜40の芳香族化合物が挙げられ、単環式及び多環式のいずれでもよい。
【0023】
前記芳香族基が有していてもよい前記置換基(以下、「置換基G」と言う。)は、水素原子以外の基であり、置換基Gが複数ある場合、これら複数の置換基Gは、互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合う置換基G同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成してもよい。
置換基Gとしては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、ヒドロキシスルホニル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルメルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基2つで置換されたアミノ基(即ち、置換基を有していてもよい炭化水素二置換アミノ基である。以下、「置換アミノ基」と言うことがある。)、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基2つで置換されたアミノカルボニル基(即ち、置換基を有していてもよい炭化水素二置換アミノカルボニル基である。以下、「置換アミノカルボニル基」と言うことがある。)が好ましい。
【0024】
これらの中でも、置換基Gとしては、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基2つで置換されたアミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルメルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基2つで置換されたアミノ基が更に好ましく、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基が特に好ましい。
置換基Gにおいて、水素原子が結合した窒素原子が存在する場合、該水素原子はヒドロカルビル基で置換されていることが好ましい。また、置換基Gが複数の置換基を有する場合には、これら複数の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合う置換基同士が互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成してもよい。
【0025】
置換基Gにおける前記ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の、炭素数が好ましくは1〜50、より好ましくは1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の、炭素数が好ましくは3〜50、より好ましくは3〜20の単環式又は多環式の環状のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の、炭素数が好ましくは2〜50、より好ましくは2〜20の直鎖状、分岐鎖状又は環状(環状の場合には、単環式又は多環式)のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の、炭素数が好ましくは6〜50、より好ましくは6〜20の単環式又は多環式のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の、炭素数が好ましくは7〜50、より好ましくは7〜20のアラルキル基が例示でき、炭素数3〜10のアルキル基が好ましい。
【0026】
置換基Gにおける前記ヒドロカルビル基は、炭素数が1〜20のものが好ましく、炭素数が2〜12のものがより好ましく、炭素数が3〜10のものが更に好ましい。
【0027】
置換基Gにおける前記ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルメルカプト基、ヒドロカルビルカルボニル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基、ヒドロカルビルスルホニル基は、それぞれ、オキシ基、メルカプト基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基に、前記ヒドロカルビル基が1個結合してなる1価の基である。
【0028】
置換基Gにおける前記置換アミノ基及び置換アミノカルボニル基は、それぞれアミノ基又はアミノカルボニル基中の2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換された基である。ここで、ヒドロカルビル基は、置換基Gとしての前記ヒドロカルビル基と同じである。
【0029】
置換基Gにおける前記ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルメルカプト基、ヒドロカルビルカルボニル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基、ヒドロカルビルスルホニル基、置換アミノ基及び置換アミノカルボニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルメルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基が例示できる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルメルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基は、置換基Gとして例示したものと同じである。
【0030】
置換基Gは、上記の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ピリジル基であることが特に好ましい。
【0031】
隣り合う置換基G同士が互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成している場合、このような環としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環、ナフタレン環が好ましい。また、このような環は、上記で説明した置換基Gを置換基として有していてもよい。
【0032】
前記3価の有機基としては、前記芳香族基に加えて、前記芳香族基に該当しない、炭化水素化合物から水素原子を3個除去して生じる3価の基も例示でき、置換基Gにおける前記ヒドロカルビル基から更に水素原子を2個除去して生じる基が好ましい。
【0033】
前記一般式(1)中、Eは酸素原子又は硫黄原子であり、複数(2つ)のEは互いに同一でも異なっていてもよい。
前記Eは、酸素原子であることが好ましい。
【0034】
前記一般式(1)中、Qは少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基であり、下記一般式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される基が好ましい。
【0035】
【化7】

(式中、
10及びR11は、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、複数のR10及びR11は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
12は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基であり、複数のR12は互いに同一でも異なっていてもよい。
及びZは、それぞれ独立に2価の有機基である。
及びYは、それぞれ独立に式「−N=」又は「−NH−」で表される基である。
は、YとYの隣接位の2つの炭素原子と一体となって複素環を形成する原子群である。
は、YとYの隣接位の2つの炭素原子と一体となって複素環を形成する原子群である。
は単結合、二重結合又は連結基である。)
【0036】
前記一般式(4−1)及び(4−2)中、R10及びR11は、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、複数のR10及びR11は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
10及びR11で表される前記置換基としては、前記置換基Gと同じものが例示できる。
【0037】
前記一般式(4−2)中、R12は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基である。複数のR12は互いに同一でも異なっていてもよい。
12における前記ヒドロカルビル基は、炭素数が1〜12である点以外は、置換基Gにおける前記ヒドロカルビル基と同じである。
【0038】
前記一般式(4−1)及び(4−2)中、Z及びZは、それぞれ独立に2価の有機基である。Z及びZとしては、置換基で置換されていてもよいアルキレン基又は2価の芳香族基が好ましい。
【0039】
及びZにおける前記アルキレン基は、飽和炭化水素から水素原子を2個除去して生じる2価の基であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、1,1−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、2,4−ブチレン基、2,4−ジメチル−2,4−ブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等の、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び炭素数が好ましくは3〜20の環状のアルキレン基が例示できる。
及びZにおける前記アルキレン基は、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0040】
及びZにおける前記2価の芳香族基は、芳香族化合物から(好ましくは、芳香族化合物の環を構成する炭素原子から)水素原子を2個除去して生じる2価の基であり、単環式及び多環式のいずれでもよい。ここで芳香族化合物としては、ベンゼン、フェノール、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ビフェニル、ビナフチル、フェナントレン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピリジン、ピラジン等の、炭素数が好ましくは3〜60、より好ましくは3〜40のものが例示できる。
及びZにおける前記芳香族基は、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0041】
前記一般式(4−1)で表されるQとしては、下記式(4−1−1)〜(4−1−11)で表される基が好ましく、下記式(4−1−1)〜(4−1−6)で表される基がより好ましい。そして、下記式(4−1−1)〜(4−1−11)で表されるQは、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0042】
【化8】

【0043】
前記一般式(4−2)で表されるQとしては、下記一般式(4−2−1)〜(4−2−11)で表される基が好ましく、下記一般式(4−2−1)〜(4−2−6)で表される基がより好ましい。下記一般式(4−2−1)〜(4−2−11)で表されるQは、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0044】
【化9】

(式中、R42は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基である。複数のR42は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0045】
式中、R42は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、R12における前記ヒドロカルビル基と同じである。
複数のR42は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
前記一般式(4−3)中、Y及びYは、それぞれ独立に式「−N=」又は「−NH−」で表される基である。そして、式「−N=」で表される基である場合、その二重結合の位置、即ち、Y及びYそれぞれの隣接位の2つの炭素原子のどちら側に二重結合が位置するかは、限定されない。
【0047】
前記一般式(4−3)中、Pは、YとYの隣接位の2つの炭素原子と一体となって複素環を形成する原子群である。
前記一般式(4−3)中、Pは、YとYの隣接位の2つの炭素原子と一体となって複素環を形成する原子群である。
等が形成する前記複素環、及び、P等が形成する前記複素環は、単環式及び多環式のいずれでもよいが、芳香族複素環であることが好ましく、含窒素芳香族複素環であることがより好ましい。前記複素環として、ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、インドールが例示でき、ピロール、ピリジン、チアゾール、イミダゾール、オキサゾールが好ましい。
【0048】
等が形成する前記複素環、及び、P等が形成する前記複素環は、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。そして、置換基が複数の場合、隣り合う置換基同士が互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成してもよい。これら置換基、P、P及びDが環を形成している場合には、このような環で好ましいものとしては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環、ナフタレン環が例示できる。また、このような環は、更に上記で説明した置換基Gを置換基として有していてもよい。
【0049】
前記一般式(4−3)中、Dは単結合、二重結合又は連結基である。
で表される前記連結基は、アルキレン基、一般式「−C(G)=」で表される基、又は一般式「−N(G)−」で表される基であることが好ましい。連結基であるアルキレン基としては、Z及びZにおける前記アルキレン基と同じものが例示でき、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。Gは、前述の置換基Gと同義である。
【0050】
等が形成する前記複素環、及び、P等が形成する前記複素環は、前記D以外の結合又は連結基を介して互いに結合し、多環式複素環を形成していてもよい。
【0051】
前記一般式(4−3)で表されるQとしては、下記一般式(4−3−1)〜(4−3−14)で表される基が好ましく、下記一般式(4−3−1)〜(4−3−7)で表される基がより好ましい。下記一般式(4−3−1)〜(4−3−14)で表されるQは、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0052】
【化10】

(式中、R43は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基である。複数のR43は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0053】
式中、R43は、前記R42と同じである。
【0054】
前記一般式(1)中、Tは水素原子又は有機基であり、複数(2つ)のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これら複数のTは互いに結合していてもよい。
で表される前記有機基としては、前記置換基Gとして例示した基、これら例示した基に該当しない窒素原子を有する有機基が例示できる。
【0055】
前記窒素原子を有する有機基としては、下記一般式(5−a)、(5−b)又は(5−c)で表される基が例示できる。
【0056】
【化11】

(式中、
13及びR14は、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、複数のR13及びR14は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
15は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基である。
は式「−N=」又は「−NH−」で表される基である。
は、YとYの隣接位の2つの炭素原子と一体となって含窒素芳香族複素環を形成する原子群である。)
【0057】
前記一般式(5−a)及び(5−b)中、R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、前記置換基としては、前記置換基Gと同じものが例示できる。そして、複数のR13及びR14は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
前記一般式(5−b)中、R15は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基であり、前記R42と同じである。
【0058】
前記一般式(5−c)中、Yは、式「−N=」又は「−NH−」で表される基であり、前記一般式(4−3)中のY及びYと同じである。したがって、Yが式「−N=」で表される基である場合、その二重結合の位置、即ち、Yの隣接位の2つの炭素原子のどちら側に二重結合が位置するかは、限定されない。
【0059】
等が形成する前記含窒素芳香族複素環は、単環式及び多環式のいずれでもよく、好ましいものとして、ピリジン、ピロール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、インドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ベンゾジアジンが例示でき、ピリジン、ピロール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、インドール、ベンゾイミダゾールがより好ましく、ピリジン、ピロール、チアゾール、イミダゾール、オキサゾールが更に好ましい。前記含窒素芳香族複素環は、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0060】
複数のTが互いに結合して形成された2価の有機基で好ましいものとしては、下記式(5−1)〜(5−35)で表されるものが例示できる。下記式(5−1)〜(5−35)で表される有機基は、置換基として前記置換基Gと同じものを有していてもよい。
【0061】
【化12】

(式中、R51は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基である。複数のR51は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

(式中、R51は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基である。複数のR51は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0064】
前記式中、R51は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のヒドロカルビル基であり、前記R42と同じである。
【0065】
前記一般式(1)中、Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンであり、前記金属錯体において、少なくとも前記Eとの間で配位結合又はイオン結合している。
【0066】
前記遷移金属原子としては、周期表の第4周期から第6周期に属する遷移金属が例示できる。
周期表の第4周期から第6周期に属する遷移金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が例示でき、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステンが好ましく、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンがより好ましく、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が更に好ましく、鉄、コバルトが特に好ましい。
【0067】
前記遷移金属イオンとしては、前記遷移金属原子のイオンが例示できる。
【0068】
前記一般式(1)中、Xは対イオン又は中性分子であり、前記対イオンとは、前記金属錯体を電気的に中性にするものであり、前記中性分子とは、それ自体が電気的に中性の分子である。
【0069】
前記Xのうち、中性分子(中性化合物)としては、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4−トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、オキサミド、ジメチルグリオキシム、o−アミノフェノール等の窒素原子含有化合物;水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−メトキシエタノール、フェノール、シュウ酸、カテコール、サリチル酸、フタル酸、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロペンタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、2,2’−ビナフトール等の酸素原子含有化合物;ジメチルスルホキシド、尿素等の硫黄原子含有化合物;1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−フェニレンビス(ジメチルホスフィン)等のリン原子含有化合物が例示できる。
【0070】
これらの中でも、中性分子としては、好ましくは、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4−トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、オキサミド、ジメチルグリオキシム、o−アミノフェノール、水、フェノール、シュウ酸、カテコール、サリチル酸、フタル酸、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロペンタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、2,2’−ビナフトールであり、より好ましくは、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4−トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、o−アミノフェノール、フェノール、カテコール、サリチル酸、フタル酸、1,3−ジフェニル−1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトールであり、更に好ましくは、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、フェニレンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、o−アミノフェノール、フェノールである。
【0071】
前記Xのうち、対イオンは、アニオン性を有する対イオン及びカチオン性を有する対イオンのいずれでもよい。
アニオン性を有する対イオンとしては、水酸化物イオン;ペルオキシド;スーパーオキシド;シアン化物イオン;チオシアン酸イオン;フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸イオン;硝酸イオン;炭酸イオン、過塩素酸イオン;テトラフルオロボレートイオン;テトラフェニルボレートイオン等のテトラアリールボレートイオン;ヘキサフルオロホスフェイトイオン;メタンスルホン酸イオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン;p−トルエンスルホン酸イオン;ベンゼンスルホン酸イオン;リン酸イオン;亜リン酸イオン;酢酸イオン;トリフルオロ酢酸イオン;プロピオン酸イオン;安息香酸イオン;金属酸化物イオン;メトキサイドイオン;エトキサイドイオンが例示できる。
これらの中でも、好ましくは、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンであり、より好ましくは、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンである。
【0072】
カチオン性を有する対イオンとしては、アルカリ金属イオン;アルカリ土類金属イオン、;テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムイオン;テトラフェニルホスホニウムイオン等のテトラアリールホスホニウムイオンが例示できる。
これらの中でも、好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンであり、より好ましくは、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンであり、更に好ましくは、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンである。
【0073】
前記一般式(1)中、nは0以上の整数であり、前記金属錯体を構成するXの数を表す。
そして、nが2以上の場合、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のXは、対イオンのみでもよいし、中性分子のみでもよく、対イオン及び中性分子が共存してもよい。
【0074】
前記一般式(1)で表される金属錯体は、下記一般式(2)で表される金属錯体であることが好ましい。
【0075】
【化15】

(式中、
は水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
は少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。
は水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。
M、X及びnは、前記と同じ意味を表す)
【0076】
前記一般式(2)中、M、X及びnは、前記一般式(1)中のM、X及びnと同じである。
【0077】
前記一般式(2)中、Qは少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基であり、前記一般式(1)中のQと同じである。
前記一般式(2)中、Tは水素原子又は有機基であり、前記一般式(1)中のTと同じである。したがって、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTは互いに結合していてもよい。
【0078】
前記一般式(2)中、Rは、水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rは、水素原子でもよい点を除けば、前記置換基Gと同じである。即ち、Rで表される前記置換基は、前記置換基Gと同じである。
【0079】
は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基又はピリジル基であることが特に好ましい。
【0080】
前記一般式(2)で表される金属錯体で好ましいものとしては、下記一般式(3)で表される金属錯体が例示できる。
【0081】
【化16】

(式中、
は水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
及びQは、それぞれ独立に下記一般式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(3−5)又は(3−6)で表される2価の基である。
M、X及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【0082】
【化17】

(式中、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、複数のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR、R、R、R、R及びRが置換基である場合、これらはそれぞれ互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
Aは、下記式(3−a)、(3−b)又は下記一般式(3−c)で表される2価の基であり、複数のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0083】
【化18】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。)
【0084】
前記一般式(3)中、M、X及びnは、前記一般式(1)中のM、X及びnと同じである。
【0085】
前記一般式(3)中、Rは水素原子又は置換基であり、前記一般式(2)中のRと同じである。したがって、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
【0086】
前記一般式(3)中、Q及びQは、それぞれ独立に前記一般式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(3−5)又は(3−6)で表される2価の基である。
【0087】
前記一般式(3−1)〜(3−6)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、前記一般式(2)中のRと同じである。したがって、複数のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR、R、R、R、R及びRが置換基である場合、これらはそれぞれ互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
前記一般式(3−6)中、Aは、前記式(3−a)、(3−b)又は前記一般式(3−c)で表される2価の基であり、複数のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0088】
前記一般式(3−c)中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
における前記ヒドロカルビル基は、置換基Gにおける前記ヒドロカルビル基と同じである。
【0089】
前記一般式(3)で表される金属錯体において、R、Q及びQを含む前記一般式で表される配位子は、後述する式(6−7)〜(6−11)で表される配位子が好ましく、式(6−7)〜(6−9)で表される配位子がより好ましい。
【0090】
本発明において、前記金属錯体を構成する配位子で好ましいものとしては、下記式(6−1)〜(6−30)で表される配位子が例示でき、これらの中でも、式(6−1)〜(6−15)で表される配位子がより好ましい。なお、下記式(6−1)〜(6−30)において、電荷は省略している。
【0091】
【化19】

(式中、Buはtert−ブチル基である。)
【0092】
【化20】

(式中、Buはtert−ブチル基である。)
【0093】
【化21】

(式中、Meはメチル基であり、Buはtert−ブチル基である。)
【0094】
【化22】

(式中、Meはメチル基であり、Buはtert−ブチル基である。)
【0095】
本発明において、好ましい前記金属錯体としては、下記一般式(7−1)〜(7−31)で表される金属錯体が例示できる。なお、下記一般式(7−1)〜(7−31)において、電荷、並びに対イオン及び中性分子(X)は省略している。
【0096】
【化23】

(式中、Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンであり、Buはtert−ブチル基である。)
【0097】
【化24】

(式中、Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンであり、Buはtert−ブチル基である。)
【0098】
【化25】

(式中、Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンであり、Meはメチル基であり、Buはtert−ブチル基である。)
【0099】
【化26】

(式中、Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンであり、Meはメチル基であり、Buはtert−ブチル基である。)
【0100】
前記一般式(7−1)〜(7−31)中、Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンであり、前記一般式(1)中のMと同じである。
【0101】
前記一般式(7−1)〜(7−31)で表される金属錯体は、本発明における好ましい前記金属錯体の一部として例示したものである。例えば、一般式(7−1)〜(7−8)、(7−10)、(7−11)、(7−16)、(7−22)及び(7−23)で表される金属錯体において、Mの配位対象となる窒素原子が、これら一般式で示されているもの(一般式(1)中のQに相当する基が有する窒素原子)に代わり、未配位となっている窒素原子(例えば、一般式(7−1)であれば、一般式(1)中のTに相当するピリジル基中の窒素原子)となった金属錯体や、一般式(7−30)で表される金属錯体において、Mの配位対象が、この一般式で示されている窒素原子(一般式(1)中のQに相当する基が有する窒素原子)に代わり、未配位となっている酸素原子となった金属錯体も、好ましい前記金属錯体である。
【0102】
(金属錯体の製造方法)
前記金属錯体は、例えば、以下に示すように、配位子となる化合物(以下、「配位子化合物」と言う。)を有機化学的に合成し、これを遷移金属原子又は遷移金属イオンを付与する反応剤(以下、「金属付与剤」と言う。)と混合する工程を有する方法で製造できる。
【0103】
前記金属付与剤は、例えば、前記一般式(1)〜(3)中の遷移金属原子であるMと対イオンであるXとの組み合わせからなる金属塩であり、好ましいM及びXは先に説明した通りであるが、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル又は銅であるMと、酢酸イオン、塩化物イオン又は硝酸イオンであるXとの組み合わせが好ましく、酢酸コバルト、酢酸鉄が特に好ましい。なお、前記金属付与剤は、無水物であっても水和物であってもよい。
【0104】
前記配位子化合物は、例えば、「Journal of Organic Chemistry,69,5419(2004)」に記載されているように、アルデヒド基を有するフェノール化合物と、アミノ基を有する化合物とを、アルコール等の溶媒中で反応させる工程を有する方法で製造できる。また、例えば、「Australian Journal of Chemistry,23,2225(1970))に記載されているように、反応時に金属塩を添加しておく方法で、目的とする前記金属錯体を直接製造することもできる。また、「Tetrahedron.,1999,55,8377.」に記載されているように、有機金属反応剤の複素環への付加及び酸化反応を行い、ハロゲン化反応、次いで遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応を行う工程を有する方法で製造できる。また、複素環のハロゲン化物を用いて、段階的にクロスカップリング反応を行う工程を有する方法でも製造できる。
【0105】
前記配位子化合物及び金属付与剤を混合する工程は、適切な溶媒の存在下で行う。
前記溶媒としては、水、酢酸、アンモニア水、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、デカリン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジンが例示でき、前記配位子化合物及び金属付与剤が溶解し得る溶媒が好ましい。
前記溶媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0106】
前記配位子化合物及び金属付与剤の混合温度は、好ましくは−10〜200℃であり、より好ましくは0〜150℃であり、特に好ましくは0〜100℃である。また、混合時間は、好ましくは1分間〜1週間であり、より好ましくは5分間〜24時間であり、特に好ましくは1時間〜12時間である。なお、前記混合温度及び混合時間は、前記配位子化合物及び金属付与剤の種類を考慮して調節することが好ましい。
【0107】
生成した前記金属錯体は、公知の再結晶法、再沈殿法、クロマトグラフィー法から適した方法を選択して適用することで、前記溶媒から取り出すことができ、この時、複数の前記方法を組み合わせてもよい。なお、前記溶媒の種類によっては、生成した前記金属錯体が析出することがあり、この場合には、析出した前記金属錯体を濾別等で分離した後、洗浄、乾燥等を行えばよい。
【0108】
(空気二次電池用正極触媒及びその製造方法)
本発明の空気二次電池用正極触媒は、前記金属錯体を用いてなる。そして、前記金属錯体は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。特に、触媒活性がより向上するので、空気二次電池用正極触媒は、Mがコバルト原子又はコバルトイオンである前記金属錯体を用いてなるものが好ましい。また、前記金属錯体は、単独で用いてもよいし、その他の成分と併用し、組成物として用いてもよい。
【0109】
前記その他の成分としては、カーボンが例示できる。そして、前記その他の成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0110】
前記カーボンとしては、「ノーリット」(NORIT社製)、「ケッチェンブラック」(Lion社製)、「バルカン」(Cabot社製)、「ブラックパールズ」(Cabot社製)、「アセチレンブラック」(電気化学工業社製)(いずれも商品名)等のカーボンブラック;C60、C70等のフラーレン;カーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、シングルウォールカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のカーボン繊維;グラフェン;グラフェンオキシドが例示でき、カーボンブラックが好ましい。
前記カーボンは、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子と組み合わせて用いてもよい。
【0111】
前記金属錯体とその他の成分とを含む組成物は、これら成分を混合することで調製できる。
前記組成物において、前記金属錯体の含有量は、前記金属錯体及びその他の成分の合計量(前記金属錯体の含有量と、前記その他の成分の含有量との和)に対して、5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。
【0112】
本発明の好ましい空気二次電池用正極触媒としては、(1)前記金属錯体からなるもの、(2)前記金属錯体とカーボンとを含む組成物からなるもの等、金属錯体、及び、金属錯体とその他の成分とを含む組成物が例示できる。
また、本発明の好ましい空気二次電池用正極触媒としては、(3)前記金属錯体の加熱処理物からなるもの、(4)前記金属錯体とカーボンとを含む組成物の加熱処理物からなるもの等、金属錯体の加熱処理物、及び、金属錯体とその他の成分とを含む組成物の加熱処理物(前記(1)又は(2)の加熱処理物)からなるものが例示できる。前記加熱処理は、例えば、対象物を加熱することで行う。
【0113】
前記加熱処理を行う場合には、その前処理として、温度を15〜200℃とし、圧力を1333.22Pa以下とした条件下で、処理対象物を6時間以上乾燥させることが好ましい。この前処理は、例えば、真空乾燥機を用いて行うことができる。
【0114】
前記加熱処理は、水素、一酸化炭素等の還元ガス雰囲気下;酸素、二酸化炭素、水蒸気等の酸化ガス雰囲気下;窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気下;アンモニア、アセトニトリル等の含窒素化合物又はその蒸気等のガス雰囲気下;二種以上のこれらガスからなる混合ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
これらの中でも、例えば、
還元ガス雰囲気下であれば、水素、又は水素及び前記不活性ガスの混合ガス雰囲気下;
酸化ガス雰囲気下であれば、酸素、又は酸素及び前記不活性ガスの混合ガス雰囲気下;
不活性ガス雰囲気下であれば、窒素、ネオン、アルゴン、又は二種以上のこれらガスからなる混合雰囲気下が好ましい。
【0115】
前記加熱処理の圧力は、例えば、50.7〜152.0kPa(0.5〜1.5気圧)であり、常圧又はその近傍圧力が好ましい。
【0116】
前記加熱処理の温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、更に好ましくは400℃以上、特に好ましくは500℃以上である。また、かかる温度は、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1200℃以下、特に好ましくは1000℃以下である。
【0117】
前記加熱処理の時間は、前記ガスの種類、温度等に応じて設定できる。例えば、前記ガスを充填して密閉した環境下、又は前記ガスを通気させた環境下では、室温から徐々に昇温させて目的温度に到達させた後、すぐに降温させてもよい。但し、目的温度に到達させた後、当該温度又はその近傍温度を所定時間維持することで、徐々に加熱することが好ましい。こうすることで、得られる触媒の耐久性をより向上させることができる。この時、前記温度を維持する時間は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜40時間、更に好ましくは2〜10時間、特に好ましくは2〜3時間である。
【0118】
前記加熱処理を行う装置としては、オーブン、ファーネス(管状炉等)、IHホットプレートが例示できる。
【0119】
前記加熱処理は、沸点若しくは融点が250℃以上である有機化合物、又は熱重合開始温度が250℃以下である有機化合物を添加して、行ってもよい。
【0120】
沸点若しくは融点が250℃以上である前記有機化合物としては、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、二無水ピロメリット酸等の、芳香族系化合物のカルボン酸誘導体が例示できる。以下にこのような化合物を例示する。
【0121】
【化27】

【0122】
熱重合開始温度が250℃以下である前記有機化合物は、芳香環と二重結合又は三重結合とを有する有機化合物であり、アセナフチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体が例示でき、アセナフチレン及びビニルナフタレンが好ましい。
【0123】
<空気二次電池>
本発明の空気二次電池は、上記本発明の空気二次電池用正極触媒を正極触媒層に含み、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素、及び、これらのイオンからなる群より選ばれる一種以上を負極活物質として用いたものであり、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム及び水素からなる群より選ばれる一種以上を負極活物質として用いたものが好ましい。
【0124】
本発明の空気二次電池において、前記正極触媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0125】
図1は、本発明に係る空気二次電池の一実施形態を例示する概略断面図である。
ここに示す空気二次電池1は、前記正極触媒を含む正極触媒層11、正極集電体12、負極活物質層13、負極集電体14、電解質15、及びこれらを収容する容器(図示略)を備える。
正極集電体12は正極触媒層11に接触して配置され、これらにより正極が構成されている。また、負極集電体14は負極活物質層13に接触して配置され、これらにより負極が構成されている。また、正極集電体12には正極端子(リード線)120が接続され、負極集電体14には負極端子(リード線)140が接続されている。
正極触媒層11及び負極活物質層13は、対向して配置され、これらの間にこれらに接触するように電解質15が配置されている。
なお、本発明に係る空気二次電池は、ここに示すものに限定されず、必要に応じて一部構成が変更されていてもよい。
【0126】
正極触媒層11は、前記正極触媒以外に、導電材及び結着材を含むものが好ましい。
前記導電材は、正極触媒層11の導電性を向上させることができるものであればよいが、カーボンが好ましい。ここでカーボンとは、前記その他の成分として説明及び例示したカーボンと同じである。
前記導電材は、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子と組み合わせて用いてもよい。
【0127】
前記結着材は、前記正極触媒、導電材等を正極集電体12に接着するものであり、例えば、電解質15として使用する電解液に溶解しないものが挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素樹脂が好ましい。
【0128】
正極触媒層11の前記正極触媒、導電材及び結着材の含有量は、限定されない。前記正極触媒の触媒活性をより向上させることができるので、導電材の含有量は、前記正極触媒1質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、1〜15質量部であることが特に好ましく、結着材の配合量は、前記正極触媒1質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましく、0.5〜3質量部であることが特に好ましい。
【0129】
正極触媒層11において、前記正極触媒、導電材及び結着材等の各構成成分は、それぞれ一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0130】
正極集電体12の材質は、導電性であればよい。好ましい正極集電体12としては、金属メッシュ、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスが例示できる。
前記金属メッシュ及び金属焼結体における金属としては、ニッケル、クロム、鉄、チタン等の金属の単体;二種以上のこれら金属を含む合金が例示でき、ニッケル、ステンレス(鉄−ニッケル−クロム合金)が好ましい。
【0131】
負極活物質層13における負極活物質は、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、リチウムイオン、水素が好ましく、亜鉛、鉄、水素がより好ましく、亜鉛が特に好ましい。
【0132】
亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウムを活物質とする負極としては、従来の亜鉛−空気電池、鉄−空気電池、アルミニウム−空気電池、マグネシウム−空気電池、リチウム−空気電池に用いられている負極が例示できる。また、水素を活物質とする負極としては、水素の吸蔵放出が可能な水素吸蔵合金等からなる負極が例示できる。
【0133】
負極活物質層13において、負極活物質等の構成成分は、それぞれ一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0134】
負極集電体14は、正極集電体12と同様のものでよい。
【0135】
電解質15は、水系溶媒又は非水系溶媒に溶解されて電解液として用いることが好ましい。
水系溶媒に対する電解質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウムが好ましい。この場合、電解液中の電解質の濃度は、1〜99質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましい。
【0136】
容器は、正極触媒層11、正極集電体12、負極活物質層13、負極集電体14及び電解質15を収容するものである。容器の材質としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の樹脂や、前記正極触媒層11等の収容物とは反応しない金属が例示できる。
【0137】
空気二次電池1においては、別途、酸素拡散膜を設けてもよい。酸素拡散膜は、正極集電体12の外側(正極触媒層11の反対側)に設けることが好ましい。こうすることで、酸素拡散膜を介して正極触媒層11に酸素(空気)が優先的に供給される。
前記酸素拡散膜は、酸素(空気)を好適に透過できる膜であればよく、樹脂製の不織布又は多孔質膜が例示でき、前記樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂が例示できる。
【0138】
空気二次電池1においては、正極と負極との接触による短絡を防止するために、これらの間にセパレータを設けてもよい。
セパレータは、電解質15の移動が可能な絶縁材料からなるものであればよく、樹脂製の不織布又は多孔質膜が例示でき、前記樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂が例示できる。また、電解質15を水溶液として用いる場合には、前記樹脂として、親水性化されたものを用いることが好ましい。
【0139】
本発明の空気二次電池は、例えば、自動車用電源、家庭用電源、携帯電話又は携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源として有用である。
【実施例】
【0140】
以下、具体的実施例により、本発明について更に詳しく説明する。但し、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本実施例で用いた化合物は、以下の通りである。また、以下において、濃度の単位「M」は「mol/L」を表す。
プロピオン酸:Wako社製、メタノール無水物及びジクロロメタン無水物:Wako社製、酢酸コバルト4水和物:アルドリッチ社製、シリカゲル(ワコーゲルC300):Wako社製
【0141】
<金属錯体の合成>
[合成例1]
(化合物(A)の合成)
以下の反応式に従い、化合物(A)、及び化合物(B)を経由して配位子化合物(C)を合成した。そして、配位子化合物(C)と金属付与剤とを用いて、金属錯体(D)を合成した。
【0142】
【化28】

(式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基であり、dbaはジベンジリデンアセトンである。)
【0143】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、3.945gの2,9−(3’−ブロモ−5’−tert−ブチル−2’−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリン(Tetrahedron.,1999,55,8377.の記載に従って合成した。)、3.165gの1−N−Boc−ピロール−2−ボロン酸、0.138gのトリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0.247gの2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、及び5.527gのリン酸カリウムを、200mLのジオキサンと20mLの水との混合溶媒に加えて溶解させ、60℃にて6時間攪拌した。反応終了後、放冷して蒸留水及びクロロホルムを加えて、有機層を抽出した。得られた有機層を濃縮して、黒い残留物を得た。これを、シリカゲルカラムを用いて精製し、化合物(A)を得た。得られた化合物(A)の同定データを以下に示す。
【0144】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)=1.34(s,18H),1.37(s,18H),3.30(s,6H),6.21(m,2H),6.27(m,2H),7.37(m,2H),7.41(s,2H),7.82(s,2H),8.00(s,2H),8.19(d,J=8.6Hz,2H),8.27(d,J=8.6Hz,2H).
【0145】
(化合物(B)の合成)
【0146】
【化29】

(式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である。)
【0147】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.904gの化合物(A)を10mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。得られたジクロロメタン溶液を−78℃に冷却しながら、ここに8.8mLの三臭化ホウ素(1.0Mジクロロメタン溶液)をゆっくり滴下した。滴下後、10分間そのまま攪拌し、室温になるまでさらに攪拌しながら放置した。3時間後、反応液を0℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムを加えて抽出し、有機層を濃縮した。得られた褐色の残留物を、シリカゲルカラムで精製し、化合物(B)を得た。得られた化合物(B)の同定データを以下に示す。
【0148】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)=1.40(s,18H),6.25(m,2H),6.44(m,2H),6.74(m,2H),7.84(s,2H),7.89(s,2H),7.92(s,2H),8.35(d,J=8.4Hz,2H),8.46(d,J=8.4Hz,2H),10.61(s,2H),15.88(s,2H).
【0149】
(配位子化合物(C)の合成)
【0150】
【化30】

【0151】
反応容器内において、0.061gの化合物(B)と0.012gのベンズアルデヒドを5mLのプロピオン酸に溶解させ、140℃で7時間加熱した。その後、得られた反応液からプロピオン酸を留去して、得られた黒い残渣をシリカゲルカラムで精製して、配位子化合物(C)を得た。得られた配位子化合物(C)の同定データを以下に示す。
【0152】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)=1.49(s,18H),6.69(d,J=4.8Hz,2H),7.01(d,J=4.8Hz,2H),7.57(m,5H),7.90(s,4H),8.02(s,2H),8.31(d,J=8.1Hz,2H),8.47(d,J=8.1Hz,2H).
【0153】
(金属錯体(D)の合成)
【0154】
【化31】

(式中、Acはアセチル基であり、Meはメチル基である。)
【0155】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.047gの配位子化合物(C)と、0.018gの酢酸コバルト4水和物を含んだ3mLのメタノール及び3mLのクロロホルムの混合溶液とを混合し、80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮して乾燥させることで固化させて、緑色固体を得た。これを水で洗浄することにより、金属錯体(D)を得た。なお、前記反応式における金属錯体(D)は、コバルト(Co)が原子又はイオンの状態で、配位子化合物(C)中のいずれかの箇所に配位していることを示す。得られた金属錯体(D)の同定データを以下に示す。
ESI−MS[M+・]:m/z=749.0
【0156】
[合成例2]
(金属錯体(E)の合成)
金属錯体(E)を以下の反応式に従って合成した。錯体の原料となる下記配位子化合物は、「Tetrahedron.,1999,55,8377」の記載内容に基づいて合成した。
【0157】
【化32】

(式中、Acはアセチル基であり、Etはエチル基である。)
【0158】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.300gの前記配位子化合物と0.149gの酢酸コバルト4水和物を含んだ4mlのエタノールを25mlのナスフラスコに入れ、80℃にて1時間攪拌した。生成した褐色沈殿を濾取してエタノールで洗浄後、乾燥させることで金属錯体(E)を得た(収量0.197g)。得られた金属錯体(E)の同定データを以下に示す。
元素分析値(%):C3234CoNとして、
(計算値)C,67.48;H,6.02;N,4.92.
(実測値)C,68.29;H,5.83;N,4.35.
ESI−MS[M+・]:533.1
【0159】
[合成例3]
(金属錯体(F)の合成)
金属錯体(F)を以下の反応式に従って合成した。錯体の原料となる配位子化合物としては、合成例2におけるものと同じものを用いた。
【0160】
【化33】

(式中、Acはアセチル基であり、Etはエチル基である。)
【0161】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.143g(0.30mmol)の前記配位子化合物と0.0522g(0.30mmol)の酢酸鉄(II)を含んだ10mlのエタノールを25mlのナスフラスコに入れ、80℃にて2時間攪拌した。生成した褐色沈殿を濾取してエタノールで洗浄後、乾燥させることで金属錯体(F)を得た(収量0.12g)。
【0162】
[合成例4]
(金属錯体(G)の合成)
金属錯体(G)を以下の反応式に従って合成した。錯体の原料となる下記配位子化合物は、「A Chemistry,European Journal,1999,5,1460」の記載内容に基づいて合成した。
【0163】
【化34】

(式中、Acはアセチル基であり、Etはエチル基である。)
【0164】
0.214gの前記配位子化合物を含んだ3mlのクロロホルム溶液が入った25mlナスフラスコへ、0.125gの酢酸コバルト4水和物を含んだ7mlのエタノールを攪拌しながら加え、室温下で6時間攪拌した。析出した褐色沈殿を濾過してエタノールで洗浄した後、真空乾燥させて金属錯体(G)を得た(収量0.138g)。得られた金属錯体(G)の同定データを以下に示す。
元素分析値(%):C2834CoNとして、
(計算値)C,64.49;H,6.57;N,5.37.
(実測値)C,64.92;H,6.13;N,5.06.
ESI−MS[M+・]:485.1
【0165】
<空気二次電池用正極触媒の製造>
[実施例1]
(正極触媒(1)の製造)
金属錯体(D)をカーボンに担持させることで正極触媒(1)を製造した。具体的には、2mgの金属錯体(D)と、8mgのカーボン(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン社製)とをメタノール中で混合し、15分間超音波を照射した後、エバポレーターで溶媒を留去し、200Paの減圧下で一晩乾燥させて、正極触媒(1)を得た。
【0166】
[実施例2〜4]
(正極触媒(2)〜(4)の製造)
金属錯体(D)に代えて、金属錯体(E)、(F)又は(G)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、正極触媒(2)、(3)又は(4)を製造した。
【0167】
[実施例5〜6]
(正極触媒(5)〜(6)の製造)
金属錯体(D)に代えて、金属錯体(H)としてサルコミン(東京化成工業社製、製品コードS0318)、又は金属錯体(I)としてN,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン鉄(II)(東京化成工業社製、製品コードD2571)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、正極触媒(5)又は(6)を製造した。
【0168】
[比較例1]
(正極触媒(R1)の製造)
二酸化マンガン(アルドリッチ社製、製品コード203750)と、カーボン(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン社製)とを、質量比1:4で混合し、エタノール中、室温にて15分間攪拌後、室温にて200Paの減圧下で12時間乾燥させることにより、正極触媒(R1)を得た。
【0169】
<空気二次電池用正極触媒の評価>
(酸素還元活性の評価)
上記で得られた正極触媒(正極触媒(1)〜(6)及び(R1))について、回転ディスク電極により、酸素還元活性を評価した。具体的には、以下の通りである。
電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径6.0mm)であるディスク電極を用いた。
正極触媒が1mg入ったサンプル瓶へ、0.5質量%のナフィオン(登録商標)溶液(5質量%ナフィオン(登録商標)溶液をエタノールにて10倍希釈した溶液)を1mL加えた後、超音波を照射して15分間分散させた。得られた懸濁液7.2μLを前記電極のディスク部に滴下して乾燥させた後、80℃に加熱した乾燥機にて3時間乾燥させることで、測定用電極を得た。
この測定用電極を用いて、下記測定装置及び測定条件において、酸素還元反応の電流値を測定した。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態(窒素雰囲気下)、酸素を飽和させた状態(酸素雰囲気下)でそれぞれ行い、酸素雰囲気下での測定で得られた電流値から、窒素雰囲気下での測定で得られた電流値を引いた値を酸素還元反応の電流値とした。この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。結果を表1に示す。なお、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して−0.8Vのときの値である。
【0170】
(測定装置)
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
(測定条件)
セル溶液:0.1mol/L水酸化カリウム水溶液(酸素飽和又は窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
電極回転速度:1600rpm
【0171】
(水の酸化活性の評価)
上記で得られた正極触媒(正極触媒(1)〜(6)及び(R1))について、酸素還元活性の評価の場合と同様の測定用電極を作製し、これを用いて、下記測定装置及び測定条件において、水の酸化反応の電流値を測定した。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態で行い、この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。結果を表1に示す。なお、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して1Vのときの値である。
【0172】
(測定装置)
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
(測定条件)
セル溶液:1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
電極回転速度:900rpm
【0173】
【表1】

【0174】
表1から分かるように、本発明の正極触媒(1)〜(6)は、正極触媒(R1)とは異なり、酸素還元活性及び水の酸化活性のいずれにおいても顕著に優れていた。
【0175】
<空気二次電池の製造>
[実施例7]
(空気二次電池用正極(1)の製造)
メノー乳鉢中で、正極触媒として金属錯体(D)(1質量部)、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製)(10質量部)、結着材としてPTFE粉末(ダイキン社製)(1質量部)、分散溶液としてエタノール(ピペットで5滴)を混合した後、薄膜化し、正極触媒層(1)を得た。
次いで、得られた正極触媒層(1)を、撥水性PTFEシートと、ステンレスメッシュとで両側から挟み、プレス機で圧着することで、空気二次電池用正極(1)を得た。
【0176】
(負極(1)の製造)
負極となる水素吸蔵合金を以下の方法で取り出した。単3形充電式ニッケル水素電池(エネループ(登録商標)、三洋電機社製、HR−3UTGA)を充放電試験機(東洋システム社製、製品名TOSCAT−3000U)に接続し、電池電圧が1.0Vとなるまで放電した。次いで、前記ニッケル水素電池を解体し、水素吸蔵合金を取り出した。
該水素吸蔵合金を多孔質金属体(セルメット#8、富山住友電工社製)で挟み、プレス機でプレスすることで、負極(1)を得た。
【0177】
(空気二次電池(1)の製造)
上記で得られた空気二次電池用正極(1)及び負極(1)を容器内に設置した後、電解液として8.0Mの水酸化カリウム水溶液を注液することで、図1に示す構成の空気二次電池(1)を得た。
【0178】
<空気二次電池の性能評価>
(充放電サイクル試験)
上記で得られた空気二次電池(1)を充放電試験機(東洋システム社製、製品名TOSCAT−3000U)に接続し、充放電サイクル試験を行った。充放電サイクルは、以下のステップ1〜4をこの順に10回繰り返すことで行った。この時の電圧の測定結果を図2に示す。
ステップ1:定電流3mAにて20分間充電。
ステップ2:5分間休止。
ステップ3:定電流3mAにて放電。電圧が0.5Vとなった時点でステップ4へ移る。
ステップ4:5分間休止。
【0179】
図2に示すように、空気二次電池(1)は、十分な充放電性能を有していた。
【符号の説明】
【0180】
1・・・空気二次電池、11・・・正極触媒層、12・・・正極集電体、120・・・正極端子、13・・・負極活物質層、14・・・負極集電体、140・・・負極端子、15・・・電解質
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明は、空気二次電池としてエネルギー分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される金属錯体を用いてなる空気二次電池用正極触媒。
【化1】

(式中、
は3価の有機基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていてもよい。
Eは酸素原子又は硫黄原子であり、複数のEは互いに同一でも異なっていてもよい。
は少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。
は水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。
Mは遷移金属原子又は遷移金属イオンである。
Xは対イオン又は中性分子であり、nは0以上の整数であり、nが2以上の場合、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される金属錯体が、下記一般式(2)で表される金属錯体である請求項1に記載の空気二次電池用正極触媒。
【化2】

(式中、
は水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
は少なくとも2つの窒素原子を有する2価の有機基である。
は水素原子又は有機基であり、複数のTは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のTが有機基の場合、これらは互いに結合していてもよい。
M、X及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
前記T又はTが、含窒素芳香族複素環を有する有機基である請求項1又は2に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される金属錯体が、下記一般式(3)で表される金属錯体である請求項2又は3に記載の空気二次電池用正極触媒。
【化3】

(式中、
は水素原子又は置換基であり、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
及びQは、それぞれ独立に下記一般式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(3−5)又は(3−6)で表される2価の基である。
M、X及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【化4】

(式中、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、複数のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR、R、R、R、R及びRが置換基である場合、これらはそれぞれ互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
Aは、下記式(3−a)、(3−b)又は下記一般式(3−c)で表される2価の基であり、複数のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化5】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。)
【請求項5】
前記Mが、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる群から選ばれる一種の原子又はそのイオンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項6】
前記金属錯体とカーボンとを含む組成物を用いてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項7】
前記金属錯体、又は前記金属錯体とカーボンとを含む組成物を、300〜1200℃で加熱して得られた請求項1〜6のいずれか一項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の空気二次電池用正極触媒を正極触媒層に含み、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素、及び、これらのイオンからなる群より選ばれる一種以上を負極活物質として用いた空気二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−16474(P2013−16474A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129292(P2012−129292)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】