説明

空気処理装置

【課題】塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)を備えた空気処理装置において水滴発生部(32)で水滴を帯電させる構成を採用する場合に、装置を大型化せずに製造コストも抑える。
【解決手段】被処理空気中の塵埃を帯電させる塵埃荷電部(31)と、水滴を吹き出す水滴発生部(32)と、この水滴を帯電させる水滴荷電部(33)とを設け、塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の構成要素のうち、少なくとも2つにより、1つのユニット(30)を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気処理装置に関し、特に、空気処理装置を小型で低コスト化するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気の脱臭を行う空気処理装置として、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1の装置は、空気中のダストやミストのような塵埃を帯電させるイオン化部(塵埃荷電部)と、このイオン化部に対して空気の流れ方向の下流側で水滴を噴霧するスクラバー部(水滴発生部)とを備えている。そして、帯電したダストやミストを、スクラバー部で噴霧された水滴に付着させて捕捉するようにしている。
【0003】
この空気処理装置において、スクラバー部の水滴を帯電させて、ダストやミストを水滴にクーロン力で付着させるようにすることが考えられる。こうすると、ダストやミストの捕集効率が上がるから、装置の集塵性能を高めることができる。
【特許文献1】特開2003−126728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スクラバー部の水滴を帯電させるためにはイオン化部に設ける放電機構とは別に、スクラバー部にも放電機構を設ける必要がある。このように放電機構を2つ設けると、装置が大型化してしまう。また、装置が大型化すると、装置の製造コストも高くなってしまう。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、塵埃荷電部とスクラバー部を備えた空気処理装置において、スクラバー部で水滴を帯電させる構成を採用する場合に、装置を大型化せずに製造コストも抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被処理空気に対して集塵を行う空気処理装置を前提としている。
【0007】
そして、この空気処理装置は、塵埃を帯電させる塵埃荷電部(31)と、水滴を吹き出す水滴発生部(32)と、該水滴を塵埃と逆極性に帯電させる水滴荷電部(33)とを備え、上記塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の構成要素のうち、少なくとも2つにより、1つのユニット(30)が構成されていることを特徴としている。
【0008】
この第1の発明では、塵埃荷電部(31)において塵埃が帯電し、水滴発生部(32)において水滴荷電部(33)により水滴が帯電する。この場合、塵埃の電荷の極性と水滴の電荷の極性は逆極性になる。このことにより、塵埃と水滴が帯電した後の空間で塵埃が水滴にクーロン力で引き寄せられて付着する。したがって、塵埃の捕集効率を高くして、装置の集塵性能を高めることができる。
【0009】
第2の発明は、被処理空気に対して集塵と脱臭を行う空気処理装置を前提としている。
【0010】
そして、この空気処理装置は、塵埃を帯電させる塵埃荷電部(31)と、水滴を吹き出す水滴発生部(32)と、該水滴を塵埃と逆極性に帯電させる水滴荷電部(33)と、水滴を電気的作用で活性種に変換する活性種発生部(34)とを備え、上記塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)の構成要素のうち、少なくとも2つにより、1つのユニット(30)が構成されていることを特徴としている。
【0011】
この第2の発明では、塵埃荷電部(31)において塵埃が帯電し、水滴発生部(32)において水滴荷電部(33)により水滴が帯電する。この場合、塵埃の電荷の極性と水滴の電荷の極性は逆極性になる。このことにより、塵埃と水滴が帯電した後の空間で塵埃が水滴にクーロン力で引き寄せられて付着する。したがって、塵埃の捕集効率を高くして、装置の集塵性能を高めることができる。また、活性種発生部(34)により、水滴から各種の活性種が発生する。したがって、空気中の臭気物質や汚染物質を分解することもできる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記1つのユニット(30)として水滴発生部(32)の水滴吹出方向に水滴荷電部(33)が配置され、水滴荷電部(33)には、水滴発生部(32)と異なる電位が与えられていることを特徴としている。
【0013】
この第3の発明では、1つのユニット(30)を構成する水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の一方が放電電極(42)として作用し、他方が対向電極として作用することにより水滴が帯電する。この帯電した水滴が、逆極性に帯電した塵埃を吸着する。
【0014】
第4の発明は、第2の発明において、上記1つのユニット(30)として水滴発生部(32)の水滴吹出方向に活性種発生部(34)が配置され、水滴発生部(32)と活性種発生部(34)は、一方が放電電極(42)として構成され、他方が対向電極として構成されていることを特徴としている。
【0015】
この第4の発明では、1つのユニット(30)を構成する水滴発生部(32)と活性種発生部(34)の一方が放電電極(42)として作用し、他方が対向電極として作用することにより水滴が帯電する。この帯電した水滴が、逆極性に帯電した塵埃を吸着する。
【0016】
第5の発明は、第1または第2の発明において、上記構成要素として複数の電極(41,42)と複数の水滴吹出部材(38,39)とを備え、上記1つのユニット(30)が、電極(41,42)同士または水滴吹出部材(38,39)同士を一体化することにより構成されていることを特徴としている。
【0017】
この第5の発明では、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42)同士または水滴吹き出し部材同士が一体化される。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、上記1つのユニット(30)を構成する電極(41,42)同士または水滴吹出部材(38,39)同士が、被処理空気の流れ方向同一位置に配置されていることを特徴としている。
【0019】
この第6の発明では、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42)同士または水滴吹き出し部材同士が、被処理空気の流れ方向同一位置に配置される。
【0020】
第7の発明は、第5の発明において、上記1つのユニット(30)を構成する複数の電極(41,42)が同一の電源(37)に接続されていることを特徴としている。
【0021】
この第7の発明では、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)の構成要素である複数の電極(41,42)同士が同一の電源(37)に接続され、この同一の電源(37)から電力が供給される。
【0022】
第8の発明は、第5の発明において、上記1つのユニット(30)を構成する複数の水滴吹出部材(38,39)が並列に接続された送水手段(72)を備えていることを特徴としている。
【0023】
この第8の発明では、水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の水滴吹き出し部材同士が送水手段(72)に並列に接続され、1つの送水手段(72)から複数の水滴吹き出し部材に水が供給される。
【0024】
第9の発明は、第5の発明において、上記1つのユニット(30)が、導電性で通風性を有する基材(35,36)に複数の電極(41,42)同士または複数の水滴吹出部材(38,39)同士を固定することにより構成されていることを特徴としている。
【0025】
この第9の発明では、上記1つのユニット(30)を構成する複数の電極(41,42)同士または水滴吹出部材(38,39)同士が、導電性で通風性を有する基材(35,36)に固定される。
【0026】
第10の発明は、第1または第2の発明において、上記1つのユニット(30)を収納するケーシング(10)を備え、該ユニット(30)が該ケーシング(10)に対して着脱可能に構成されていることを特徴としている。
【0027】
この第10の発明では、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42)同士または水滴吹き出し部材同士が1つのユニット(30)としてケーシング(10)に着脱できる。
【0028】
第11の発明は、第1または第2の発明において、水滴発生部(32)における水の吹出方向に塵埃荷電部(31)が配置されていることを特徴としている。
【0029】
この第11の発明では、水滴発生部(32)から噴き出される水が塵埃荷電部(31)の電極(41,42)に吹き付けられるので、塵埃荷電部(31)に付着しがちな汚れを除去できる。
【0030】
第12の発明は、第1または第2の発明において、水滴荷電部(33)が、水滴を噴霧するノズル(38)と、該ノズル(38)に対向する網目状の対向電極(35,36)とを備え、上記ノズル(38)と対向電極(35,36)に電位差を与えることにより水滴を帯電させるように構成されていることを特徴としている。
【0031】
この第12の発明では、水滴荷電部(33)のノズル(38)と対向電極(35,36)とから1つのユニット(30)を構成できる。
【0032】
第13の発明は、第2の発明において、水滴荷電部(33)が、水滴を噴霧する第1のノズル(38)と、該ノズル(38)に対向する網目状の対向電極(35,36)とを備え、活性種発生部(34)が、水滴を噴霧する第2のノズル(39)と、該ノズル(38)に対向する針状の放電電極(42)とを備え、上記第1のノズル(38)と網目状の対向電極(35,36)に電位差を与えて放電を起こすことにより水滴を帯電させるとともに、上記第2のノズル(39)と針状の放電電極(42)に電位差を与えてストリーマ放電を起こすことにより活性種を発生させるように構成されていることを特徴としている。
【0033】
この第13の発明では、水滴荷電部(33)の第1のノズル(38)と対向電極(35,36)とから1つのユニット(30)を構成でき、活性種発生部(34)の第2のノズル(39)と対向電極(35,36)とから別の1つのユニット(30)を構成できる。
【0034】
第14の発明は、第13の発明において、上記第1のノズル(38)と第2のノズル(39)が同一平面上に配置され、共通の送水手段(72)に並列に接続されていることを特徴としている。
【0035】
この第14の発明では、同一平面上に配置された第1のノズル(38)と第2のノズル(39)に共通の送水手段(72)に並列に接続され、この共通の送水手段(72)から第1のノズル(38)と第2のノズル(39)に水が供給される。
【0036】
第15の発明は、第13の発明において、ノズル(38)側の電位が該ノズル(38)同士で同一の電位に設定され、対向電極(35,36)側の電位が該対向電極(35,36)同士で同一であってノズル(38)側とは異なる電位に設定されていることを特徴としている。
【0037】
この第15の発明では、水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)において、ノズル(38)同士の同一の電位と、対向電極(35,36)同士で同一でノズル(38)側とは異なる電位の間で、放電が発生する。
【0038】
第16の発明は、第1または第2の発明において、被処理空気の流れ方向の最も下流側に水滴回収部(60)を備えていることを特徴としている。
【0039】
この第16の発明では、処理に使われた後の水や使われなかった水が水滴回収部(60)において捕捉される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、塵埃荷電部(31)において塵埃が帯電し、水滴発生部(32)において水滴荷電部(33)により水滴が帯電する。この場合、塵埃の電荷の極性と水滴の電荷の極性は逆極性になる。このことにより塵埃が水滴にクーロン力で引き寄せられて付着する。したがって、塵埃の捕集効率を高くして、装置の集塵性能を高めることができる。ここで、本発明では、塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の構成要素のうち、少なくとも2つにより1つのユニット(30)が構成されている。したがって、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0041】
上記第2の発明によれば、塵埃荷電部(31)において塵埃が帯電し、水滴発生部(32)において水滴荷電部(33)により水滴が帯電する。この場合、塵埃の電荷の極性と水滴の電荷の極性は逆極性になる。このことにより塵埃が水滴にクーロン力で引き寄せられて付着する。したがって、塵埃の捕集効率を高くして、装置の集塵性能を高めることができる。また、活性種発生部(34)により、水滴から各種の活性種が発生する。したがって、空気中の臭気物質や汚染物質を分解することもできる。ここで、本発明では、塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の構成要素のうち、少なくとも2つにより1つのユニット(30)が構成されている。したがって、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0042】
上記第3の発明によれば、1つのユニット(30)を構成する水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の一方が放電電極(42)として作用し、他方が対向電極として作用することにより水滴が帯電する。そして、この帯電した水滴が、逆極性に帯電した塵埃を吸着する。この発明では、水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)が1つのユニット(30)を構成しているので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。また、塵埃荷電部(31)と同じ電位極性の電極(41,42)を用いて逆極性の水滴ができるので、装置部品のユニット(30)化や同一電源(37)化に適している。
【0043】
上記第4の発明によれば、1つのユニット(30)を構成する水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)/活性種発生部(34)の一方が放電電極(42)として作用し、他方が対向電極として作用することにより水滴が帯電する。そして、この帯電した水滴が、逆極性に帯電した塵埃を吸着する。この発明では、水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)/活性種発生部(34)が1つのユニット(30)を構成しているので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。また、塵埃荷電部(31)と同じ電位極性の電極(41,42)を用いて逆極性の水滴ができるので、装置部品のユニット(30)化や同一電源(37)化に適している。ストリーマ放電の場合は活性化力が高まり性能が良くなるし、水滴荷電部(33)と似た構造になるので一体化しやすい。
【0044】
上記第5の発明によれば、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42)同士または水滴吹き出し部材同士が一体化されるので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0045】
上記第6の発明によれば、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42)同士または水滴吹き出し部材同士が、被処理空気の流れ方向同一位置に配置されるので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0046】
上記第7の発明によれば、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)の構成要素である複数の電極(41,42)同士が同一の電源(37)に接続され、この同一の電源(37)から電力が供給されるから、必要な電源(37)の個数が少なくて済む。
【0047】
上記第8の発明によれば、水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の水滴吹き出し部材同士が送水手段(72)に並列に接続され、1つの送水手段(72)から複数の水滴吹き出し部材に水が供給される。このように水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)で送水手段(72)を共用することで装置の小型化や低コスト化が可能になる。
【0048】
上記第9の発明によれば、上記1つのユニット(30)を構成する複数の電極(41,42)同士または水滴吹出部材(38,39)同士が、導電性で通風性を有する基材(35,36)に固定されているので、被処理空気を処理空間に直接通すことができる。従って、装置を小型化しても高い性能を得ることができる。
【0049】
上記第10の発明によれば、塵埃荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42)同士または水滴吹き出し部材同士が1つのユニット(30)としてケーシング(10)に着脱できるので、1つのユニット(30)を一体の構造物にすることができ、部品点数を低減できる。
【0050】
上記第11の発明によれば、水滴発生部(32)から噴き出される水が塵埃荷電部(31)の電極(41,42)に吹き付けられるので、塵埃荷電部(31)に付着しがちな汚れを除去できる。したがって、塵埃荷電部(31)のメンテナンスを不要にしたり、メンテナンスの間隔を長くしたりすることが可能になる。
【0051】
上記第12の発明によれば、水滴荷電部(33)のノズル(38)と対向電極(35,36)とから1つのユニット(30)を構成できるので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0052】
上記第13の発明によれば、水滴荷電部(33)の第1のノズル(38)と対向電極(35,36)とから1つのユニット(30)を構成でき、活性種発生部(34)の第2のノズル(39)と対向電極(35,36)とから別の1つのユニット(30)を構成できるから、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0053】
上記第14の発明によれば、同一平面上に配置された第1のノズル(38)と第2のノズル(39)に共通の送水手段(72)に並列に接続され、この共通の送水手段(72)から第1のノズル(38)と第2のノズル(39)に水が供給される。このように構成しても、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0054】
上記第15の発明によれば、水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)において、ノズル(38)同士の同一の電位と、対向電極(35,36)同士で同一でノズル(38)側とは異なる電位の間で、放電が発生する。ノズル(38)同士を同一の電位にし、対向電極(35,36)同士をノズル(38)側とは異なる同一の電位にしているので、電気系統を簡素化できる。
【0055】
上記第16の発明によれば、処理に使われた後の水や使われなかった水が水滴回収部(60)において捕捉されるから、水が装置から外に流出するのを防止できる。したがって、装置を使用する場所に関して制限をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0057】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
【0058】
この実施形態1は、本発明に係る空気処理装置に関するものであって、被処理空気である厨房排気に含まれるオイルミストやダストを除去するとともに臭気成分を分解する機能を有している。そして、これらの機能を、水滴の噴霧による集塵作用と、放電により発生する低温プラズマの臭気分解作用とを利用して行うようにしたものである。
【0059】
〈全体構成〉
まず、装置の全体構成について説明する。図1は、この空気処理装置(1)の構成を示すブロック図である。この空気処理(1)は、ケーシング(10)と、このケーシング(10)内に形成されている空気通路(11)中に配置された機能部品類を備えている。ケーシング(10)には、空気通路(11)に対する被処理空気の入口側に空気吸込口(12)が形成され、空気通路(11)に対する被処理空気の出口側に空気吹出口(13)が形成されている。
【0060】
ケーシング(10)内には、空気通路(11)の上流側から下流側へ向かって、グリスフィルタ(20)、処理ユニット(30)、処理空間(50)、そして水滴回収部(60)が順に配置されている。水滴回収部(60)は、ケーシング(10)内における被処理空気の流れ方向の最も下流側に配置されており、デミスタ(61)と、その下方に設けられた水受け皿(62)とを有している。
【0061】
ケーシング(10)内には、水滴回収部(60)で回収された水を溜める貯水槽(71)とその水を処理ユニット(30)に供給するポンプ(送水手段)(72)とを有する水循環機構(70)が設けられている。水循環機構(70)は、水受け皿(62)と貯水槽(71)との間に接続された回収側水配管(73)と、貯水槽(71)と処理ユニット(30)との間にポンプ(72)を介して接続された供給側水配管(74)とを有している。
【0062】
図2は、この空気処理装置(1)の外観と、その内部の機能部品の位置関係とを示した配置図であり、図2(A)は右側面図、図2(B)は正面図である。図では、便宜上、ケーシング(10)の外郭形状も、内部の機能部品の形状も、実線で示している。
【0063】
ケーシング(10)は、下端部に位置して床面に設置される基部(10a)と、この基部(10a)の後部から起ち上げられたスタンド部(10b)と、スタンド部(10b)の上部に設けられている空気処理部(10c)とから構成されている。基部(10a)の上面には、コンロ(2)などの調理器具が載置されている。
【0064】
上記ケーシング(10)の基部(10a)の中は空間になっており、上記貯水槽(71)とポンプ(72)とが収納されている。上記ケーシング(10)の空気処理部(10c)の中も空間になっている。この空気処理部(10c)におけるコンロ(2)の上方の前面側はテーパ面になっている。このテーパ面には上記空気吸込口(12)が形成され、空気処理部(10c)内には、空気吸込口(12)に沿ってグリスフィルタ(20)が配置されている。このグリスフィルタ(20)は、厨房排気中に含まれる比較的大きなオイルミストを捕捉して、ケーシング(10)内に進入するのを防止するためのものである。
【0065】
空気処理部(10c)内におけるグリスフィルタ(20)よりも上方の空間はほぼ直方体の空間であり、この空間の上側部分を占める処理空間(S1)に電装品(15)と処理ユニット(30)とデミスタ(61)が配置され、処理空間(S1)とデミスタ(61)との間の水受け空間(S2)に水受け皿(62)が配置されている。太い黒塗りの矢印が水の流れを示しており、ハッチングを付した矢印が空気の流れを示している。デミスタ(61)の右側に示す矢印から分かるように、ケーシングの右上面には空気吹出口(13)が形成されており、この空気吹出口(13)は、排気ダクト(図示せず)を介して屋外空間に連通している。なお、排気ダクトには、図示していないが排気ファンが設けられている。
【0066】
〈具体構成〉
次に、図3〜図5を参照して処理ユニット(30)を始めとする機能部品の具体構成について説明する。図3は図1及び図2の処理ユニット(30)を上方から見た構成図である。この図3に示すように、処理ユニット(30)は、オイルミスト(塵埃)を帯電させるオイルミスト荷電部(塵埃荷電部)(31)と、水滴を吹き出す水滴発生部(32)と、この水滴をオイルミストと逆極性に帯電させる水滴荷電部(33)と、水滴を電気的作用で活性種に変換する活性種発生部(34)とを備え、これらの構成要素がまとまって1つのユニットとして構成されている。帯電したオイルミストと水滴は処理空間(50)で接触する。
【0067】
上記処理ユニット(30)は、所定間隔で対向して配置された金属製の第1メッシュ板(35)及び第2メッシュ板(36)を有し、第1メッシュ板(35)が第2メッシュ板(36)に対して厨房排気の流れ方向の上流側に配置されている。第1メッシュ板(35)と第2メッシュ板(36)にはオイルミストや水滴を帯電させるための電源(37)が接続されている。この電源(37)は直流の高圧電源(37)であり、第1メッシュ板(35)にマイナス極が接続され、第2メッシュ板(36)にプラス極が接続されている。
【0068】
第1メッシュ板(35)には、図4に示すように、縦横に所定間隔で複数のノズル(水滴発生部(32))(38,39)が固定されている。これらのノズル(38,39)のうち、四隅のノズル(39)を除くものが水滴荷電部(33)に用いられる第1ノズル(38)であり、四隅のものが活性種発生部(34)に用いられる第2ノズル(39)である。各ノズル(38,39)は、供給側水配管(74)を介して、ポンプ(72)に対して並列に接続されている。そして、上記各ノズル(38,39)は、吹き出す水の粒径が10μm以上で100μm以下になるように、噴霧口(図示せず)の寸法や形状が定められている。
【0069】
図3に示すように第2メッシュ板(36)には電極板(40)が重ねて配置されており、この第2メッシュ板(36)と電極板(40)とは電気的に接続されている。この電極板(40)もメッシュ状で導電性の薄い板材料により構成されている。図5に示すように、この電極板(40)には、水滴発生部(32)用の各ノズル(38,39)(第1ノズル(38))に対して千鳥配置(互い違いの配置)となる位置関係でオイルミスト荷電部(31)用の突起状の第1放電電極(41)が形成されている。つまり、第1ノズル(38)の水の吹出方向からずれた位置に第1放電電極(41)が配置されている。
【0070】
また、この電極板(40)には、第1メッシュ板(35)の四隅に設けられている第2ノズル(39)に対向する位置(第2ノズル(39)の水滴吹出方向の位置)に活性種発生部(34)用の第2放電電極(42)が形成されている(図3)。この第2放電電極(42)は複数の針状電極により構成されており、第2ノズル(39)が対向電極として構成されている。そして、第2ノズル(39)と第2放電電極(42)との間に電位差を与えてストリーマ放電を起こすことにより活性種を発生させるようになっている。
【0071】
この電極板(40)では、水滴荷電部(33)用の第1ノズル(38)に対向する位置(第1ノズル(38)の水滴吹出方向にある位置)には放電電極(41,42)は形成されておらず、平坦な形状になっている。第2電極板(40)は、第1ノズル(38)に対向する部分が水滴荷電部(33)を構成している。つまり、水滴荷電部(33)は、水滴を噴霧する第1ノズル(38)と、この第1ノズル(38)に対向するメッシュ(網目)状の平坦な対向電極部(43)とを備え、この第1ノズル(38)と対向電極部(43)とに電位差を与えた状態において、上記第1ノズル(38)から噴霧された水滴がメッシュ状の対向電極部(43)を通過することにより、水滴が電荷(マイナス電荷)を帯びるようにしている。このため、水滴荷電部(33)には、上記第2ノズル(39)と異なる電位が与えられている。
【0072】
このように、処理ユニットには、その構成要素として複数の電極(41,42,43)と複数のノズル(38,39)とが設けられており、電極(41,42,43)同士及びノズル(38,39)同士が一体化されている。そして、この1つのユニットを構成する電極(41,42,43)同士が被処理空気の流れ方向に対して互いに同一の位置に配置され、ノズル(38,39)同士も被処理空気の流れ方向に対して互いに同一の位置に配置されている。なお、電極(41,42,43)同士と各ノズル(38,39)同士は互いに離れて対向する平面上の位置に配置されている。
【0073】
上記複数の電極(41,42,43)は、同一の電源(37)(一つの電源(37))に接続されている。そして、複数の電極(41,42,43)同士及び複数のノズル(38,39)同士が、導電性で通風性を有する基材としてのメッシュ板(35,36)に固定されることによって、処理ユニット(30)が一つのモジュールとして構成されている。この処理ユニット(30)は、上記ケーシング(10)に対して着脱可能に構成されている。
【0074】
以上の構成において、オイルミスト荷電部(31)用の第1放電電極(41)から第1メッシュ板(35)を対向電極としてコロナ放電が発生する。オイルミスト荷電部(31)の第1放電電極(41)が電源(37)のプラス側に接続されているため、オイルミストは、このオイルミスト荷電部(31)の放電場を通過することによりプラスに帯電する。また、水滴荷電部(33)では、第1ノズル(38)から噴霧された水滴が第2メッシュ板(36)の対向電極部(43)を通過することにより、水滴がマイナスに帯電する。さらに、活性種発生部(34)では、第2放電電極(42)から第1メッシュ板(35)と第2ノズル(39)とを対向電極として、ストリーマ放電が発生する。このストリーマ放電により、水滴から各種のラジカルなどの活性種が発生する。
【0075】
そして、処理ユニット(30)に対して空気の流れ方向下流側にある処理空間(50)において、プラスに帯電したオイルミストとマイナスに帯電した水滴とがクーロン力で引きつけ合って結合する。中には水滴と結合せずにプラスの電荷を帯びたまま単独で下流側へ流れていくオイルミストも存在するし、オイルミストと結合せずにマイナスの電荷を帯びたまま単独で下流側へ流れていく水滴も存在する。また、ストリーマ放電により発生した活性種の作用で、被処理空気中の臭気成分が分解される。
【0076】
上記デミスタ(61)は、水滴の通過を阻止する一方で空気の流通を許容する多数の空気流通孔を備えた導電性の網目状部材(61)であって、具体的には、細い金属繊維を凝集加工して所定の厚みを持つ多孔状に成形したものが用いられている。このデミスタ(61)は、ケーシング(10)を介して接地されている。つまり、デミスタ(61)には、水滴の電荷ともオイルミストの電荷とも異なる極性(接地電位)が与えられている。
【0077】
上記水受け皿(62)はオイルミストが付着した水滴を回収する。この水受け皿(62)は、回収した水から油分を分離する油分離機構(図示せず)を介して貯水槽(71)に接続されている。そして、上記回収側水配管(73)、ポンプ(72)及び供給側水配管(74)は、上記油分離機構により油分が分離されて貯水槽(71)に溜まった水を水滴発生部(32)に搬送する水搬送機構(75)を構成している。
【0078】
−運転動作−
この空気処理装置において、コンロ(2)などの調理器具を使用するときに排気ダクトに設けられている排気ファンを起動すると、厨房排気が空気吸込口(12)からケーシング(10)内に吸い込まれる。ケーシング(10)内に吸い込まれた厨房排気はグリスフィルタ(20)を通過し、その際に厨房排気中の比較的大きなオイルミストが除去される。グリスフィルタ(20)を通過した比較的粒径の小さな(数μm程度の)オイルミストは、処理ユニット(30)のオイルミスト荷電部(31)を通過することによってプラスに帯電する。
【0079】
水滴発生部(32)では、ポンプ(72)から水供給管(44)を介して第1,第2ノズル(38,39)まで供給されてきた水が、排気通路(11)における厨房排気の流れ方向下流側に向かって噴霧される。第1ノズル(38)に対して噴霧方向のすぐ近傍にはプラスの電位を与えられた第2メッシュ板(36)が配置されており、水滴がこの第2メッシュ板(36)を通過する。水滴が第2メッシュ板(36)を通過すると、水滴はマイナスに帯電する。
【0080】
このようにしてプラスに帯電したオイルミストとマイナスに帯電した水滴は、処理空間(50)内でクーロン力によって互いに引き付け合って結合し、下流側へ流れていく。また、中には結合しなかったオイルミストや水滴も存在し、これらはプラスやマイナスの電荷を帯びたまま下流側へ流れていく。
【0081】
一方、活性種発生部(34)にはストリーマ放電場(34a)が形成されている。このストリーマ放電場(34a)では、空気や水に対するストリーマ放電の作用により、種々の活性種が生成される。この活性種には、高速電子、イオン、ヒドロキシラジカルなどのラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など)が含まれている。ここで発生した活性種は処理空間(50)へ流れて行き、被処理空気に含まれる有害成分や臭気成分が分解される。また、ストリーマ放電場(34a)で水滴のすべてが活性種に変化するわけではなく、水滴の状態のまま処理空間(50)に流れてくるものもある。この水滴はストリーマ放電場(34a)を通過することで電荷を帯びている。したがって、グリスフィルタ(20)で除去できなかった比較的小さなオイルミストを電気的な力で吸着する。
【0082】
処理空間(50)の下流側にはデミスタ(61)が設けられている。このため、オイルミストが付着した水滴は、デミスタ(61)を通過する際にこのデミスタ(61)で捕捉される。このとき、水滴とともにオイルミストもデミスタ(61)に捕捉される。また、デミスタ(61)は接地電位であり、プラスに帯電したオイルミストともマイナスに帯電した水滴とも異なる電位を有しているため、オイルミスト及び水滴とデミスタ(61)との間に電気影像力が働き、互いに結合せずに単独で存在するオイルミストと水滴もデミスタ(61)に捕捉される。
【0083】
デミスタ(61)に付着した水滴は水の集合体となって大きくなり、デミスタ(61)の網目に沿って下方へ流れ、そのときに、デミスタ(61)に付着しているオイルミストも流し落とす。デミスタ(61)から滴下した水滴とオイルミストは水受け皿(62)に回収される。上述したように、図示していないが水受け皿(62)には水とオイルミストとを分離する機構が設けられており、水だけが水配管(34)を介してポンプ(33)に吸引される。ポンプ(45)に吸引された水はノズル(38)からの噴霧に再利用される。
【0084】
デミスタ(61)を通過した厨房排気は、オイルミストが除去された清浄な空気である。そして、このようにして清浄な状態に処理された厨房排気がケーシング(10)の空気吹出口(13)から排気ダクトへ流れ込み、排気ファン(70)を通じて室外へ吹き出される。
【0085】
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、オイルミスト荷電部(31)においてオイルミストが帯電し、水滴発生部(32)において水滴荷電部(33)により水滴が帯電する。この場合、オイルミストの電荷の極性と水滴の電荷の極性は逆極性になる。このことによりオイルミストが水滴にクーロン力で引き寄せられて付着する。したがって、オイルミストの捕集効率を高くして、装置(1)の性能を高めることができる。また、活性種発生部(34)により、水滴から各種の活性種が発生する。したがって、空気中の臭気物質や汚染物質を分解することもできる。ここで、本実施形態では、オイルミスト荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部)(33)の構成要素により1つのユニットが構成されている。したがって、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0086】
さらに、この実施形態では、1つのユニットを構成する水滴発生部(32)のノズル(38,39)と水滴荷電部(33)/活性種発生部(34)の電極(41,42,43)の一方が放電電極として作用し、他方が対向電極として作用することにより水滴が帯電する。そして、この帯電した水滴が、逆極性に帯電したオイルミストを吸着する。この実施形態では、水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)/活性種発生部(34)が1つのユニットを構成しているので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。また、オイルミスト荷電部(31)と同じ電位極性の電極を用いて逆極性の水滴ができるので、装置部品のユニット化や同一電源化に適している。そして、ストリーマ放電の場合は活性化力が高まり性能が良くなるし、水滴荷電部(33)と似た構造になるので一体化しやすい。
【0087】
また、オイルミスト荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42,43)同士またはノズル(38,39)同士が一体化され、しかも被処理空気の流れ方向に関して同一の位置に配置されるので、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0088】
さらに、オイルミスト荷電部(31)や水滴荷電部(33)の構成要素である複数の電極同士が同一の電源(37)に接続され、この同一の電源(37)から電力が供給されるから、必要な電源(37)の個数が少なくて済む。
【0089】
また、水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数のノズル(38,39)同士がポンプ(72)に並列に接続され、1つのポンプ(72)から複数のノズル(38,39)に水が供給される。このように水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)でポンプ(72)を共用することによっても装置の小型化や低コスト化が可能になる。
【0090】
さらに、上記1つのユニットを構成する複数の電極(41,42,43)同士またはノズル(38,39)同士が、導電性で通風性を有する基材(メッシュ板(35,36))に固定されているので、被処理空気を処理空間(S1)に直接通すことができる。従って、装置(1)を小型化しても高い性能を得ることができる。
【0091】
また、オイルミスト荷電部(31)や水滴荷電部(33)や活性種発生部(34)の構成要素である複数の電極(41,42,43)同士またはノズル(38,39)同士を1つのユニット(30)としてケーシング(10)に着脱できるので、1つのユニット(30)を一体の構造物にすることができ、部品点数を低減できる。
【0092】
さらに、水滴発生部(32)のノズル(38,39)から噴き出される水がオイルミスト荷電部(31)の第2放電電極(42)に吹き付けられるので、この第2放電電極(42)に付着しがちな汚れを除去できる。したがって、オイルミスト荷電部(31)のメンテナンスを不要にしたり、メンテナンスの間隔を長くしたりすることが可能になる。
【0093】
また、同一平面上に配置された第1ノズル(38)と第2ノズル(39)に共通のポンプ(72)が並列に接続され、この共通のポンプ(72)から第1ノズル(38)と第2ノズル(39)に水が供給される。このように構成すると、装置を大型化せずに製造コストも抑えることができる。
【0094】
また、水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)において、ノズル(38,39)同士の同一の電位と、放電電極(41,42)同士で同一でノズル(38,39)側とは異なる電位を与えることにより放電が発生する。ノズル(38,39)同士を同一の電位にし、放電電極(41,42,43)同士をノズル(38,39)側とは異なる同一の電位にしているので、電気系統を簡素化できる。
【0095】
さらに、処理に使われた後の水や使われなかった水が水回収部(60)において捕捉されるから、水が装置(1)から外に流出するのを防止できる。したがって、装置を使用する場所に関して制限をなくすことができる。
【0096】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。
【0097】
この実施形態2は、図6に示すように、オイルミスト荷電部(31)と活性種発生部(34)とを2つで1つのユニットとして構成するとともに、水滴荷電部(33)は単体でユニットとして構成するようにした例である。ここで、オイルミスト荷電部(31)と活性種発生部(34)のユニットを第1ユニット(30a)といい、水滴荷電部(33)のユニットを第2ユニット(30b)という。また、第1メッシュ板(35)は上流側第1メッシュ板(35a)と下流側第1メッシュ板(35b)とから構成されている。
【0098】
第1ユニット(30a)は、上流側第1メッシュ板(35a)と電極板(40)とを備えている。第1メッシュ板(35)には水滴発生部(32)の第2ノズル(39)が所定間隔で配置されている。電極板(40)には、第2ノズル(39)と千鳥配置(互い違いの配置)の位置関係でオイルミスト荷電部(31)の第1放電電極(41)が配置され、第2ノズル(39)に対向する位置に活性種発生部(34)の第2放電電極(42)が配置されている。
【0099】
第2ユニット(30b)は、下流側第1メッシュ板(35b)と、この下流側第1メッシュ板(35b)に所定の位置関係で配置された水滴荷電部(33)用の第1ノズル(38)と、第1メッシュ板(35)と対向するように配置された第2メッシュ板(36)とを備えている。
【0100】
電極板(40)と第2メッシュ板(36)は電源(37)のプラス極に並列に接続されている。上流側第1メッシュ板(35a)と下流側第2メッシュ板(36)は電源(37)のマイナス極に並列に接続されている。この電源(37)のマイナス極は、接地側になっている。
【0101】
また、第1ノズル(38)と第2ノズル(39)のすべては、ポンプ(72)に対して並列に接続されている
この実施形態2では、第1ユニット(30a)においてオイルミストに電荷を与える機能とストリーマ放電を起こす機能とを行い、第2ユニット(30b)において水滴に電荷を与える機能を行う。このようにしても、被処理空気(厨房排気)が流れるときに、これらのユニット(30a,30b)の下流側の処理空間(50)で水滴とオイルミストが付着するとともに、ストリーマ放電により発生した活性種で被処理空気中の臭気成分や有害成分が分解される。したがって、実施形態1と同様の機能により被処理空気を清浄な空気にすることができる。
【0102】
また、処理ユニット(30)を第1ユニット(30a)と第2ユニット(30b)に分けている点を除いては、構成は実施形態1と同じである。そのため、装置(1)の小型化と性能の向上を両立できるなど、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0103】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。
【0104】
この実施形態3は、図7に示すように、所定間隔で配置した第1メッシュ板(35)と第2メッシュ板(36)の間に電極板(40)を配置した例である。
【0105】
上流側に位置する第1メッシュ板(35)には、活性種発生部(34)に用いる水滴発生部(32)の複数の第2ノズル(39)が配置されている。この第2ノズル(39)は、空気の流れ方向の下流側にある電極板(40)に向かって水滴を吹き出すように構成されている。この電極板(40)には、この第2ノズル(39)に対向する位置に第2放電電極(42)が配置されている。また、電極板(40)には、第2ノズル(39)と千鳥配置の位置関係となる配置に第1放電電極(41)が設けられている。
【0106】
第2メッシュ板(36)には複数の第1ノズル(38)が固定されており、空気の流れ方向の下流側から上流側に向かうように、電極板(40)の方向へ水滴を吹き出すように構成されている。
【0107】
第1メッシュ板(35)と第2メッシュ板(36)は電源(37)のマイナス極に並列に接続されている。また、電極板(40)は電源(37)のプラス極に接続されている。この構成において、マイナス極が接地側になっている。
【0108】
また、図示していないが、第1ノズル(38)と第2ノズル(39)は1つのポンプ(72)に対して並列に接続されている。
【0109】
この実施形態3では、第1メッシュ板(35)と電極板(40)の間でオイルミストに電荷を与える機能とストリーマ放電を起こす機能とを行い、電極板(40)と第2メッシュ板(36)の間で水滴に電荷を与える機能を行う。このようにしても、被処理空気(厨房排気)が流れるときに、この処理ユニット(30)の下流側の処理空間(50)で水滴とオイルミストが付着するとともに、ストリーマ放電により発生した活性種で被処理空気中の臭気成分や有害成分が分解される。したがって、実施形態1,2と同様の機能により被処理空気を清浄な空気にすることができる。
【0110】
また、処理ユニット(30)の構成は実施形態1,2と異なるものの、装置(1)の小型化と性能の向上を両立できるなど、実施形態1,2と同様の効果を奏することができる。
【0111】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。
【0112】
実施形態2,3は、オイルミスト荷電部(31)と活性種発生部(34)とを一体化した例であるが、この実施形態4は、図8に示すように、水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)とを一体化した例である。この図において、空気の流れ方向は図の下から上へ向かう方向としている。
【0113】
この処理ユニット(30)では、電極板(40)を上流側電極板(40a)と下流側電極板(40b)に分割し、上流側電極板(40a)に第1放電電極(41)を設けるとともに、下流側電極板(40b)に第2放電電極(42)を設けている。そして、上流側から順に、上流側電極板(40a)、第1メッシュ板(35)、第2メッシュ板(36)及び下流側電極板(40b)を配置している。
【0114】
上流側電極板(40a)は、第1放電電極(41)が第1メッシュ板(35)の方向を向くように、第1メッシュ板(35)から所定の距離を隔てて配置されている。
【0115】
第1メッシュ板(35)には第1ノズル(38)と第2ノズル(39)が設けられ、第1メッシュ板(35)から所定の距離を隔てて配置された第2メッシュ板(36)の方向へ水滴を吹き出すように構成されている。
【0116】
第2メッシュ板(36)と下流側電極板(40b)は重ねて配置され、第2放電電極(42)が第2ノズル(39)と対向するように配置されている。
【0117】
この実施形態4では、上流側電極板(40a)と第1メッシュ板(35)の間でオイルミストに電荷を与える機能を行い、第1メッシュ板(35)と第2メッシュ板(36)及び下流側電極板(40b)の間で水滴に電荷を与える機能とストリーマ放電を起こす機能とを行う。このようにしても、被処理空気(厨房排気)が流れるときに、この処理ユニット(30)の下流側の処理空間(50)で水滴とオイルミストが付着するとともに、ストリーマ放電により発生した活性種で被処理空気中の臭気成分や有害成分が分解される。したがって、実施形態1〜3と同様の機能により被処理空気を清浄な空気にすることができる。
【0118】
また、処理ユニット(30)の構成は実施形態1〜3と異なるものの、装置の小型化と性能の向上を両立できるなど、実施形態1〜3と同様の効果を奏することができる。
【0119】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0120】
上記各実施形態では、それぞれ活性種発生部(34)を設けてストリーマ放電により被処理空気中の臭気成分や有害成分を分解するようにしているが、装置(1)を使用する用途によっては活性種発生部(34)は設けなくてもよい。
【0121】
また、実施形態1はオイルミスト荷電部(31)と水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)のすべてを1つのユニットとして構成した例であり、実施形態2〜4はそのうちの少なくとも2つをユニット化できる構成にした例であるが、処理ユニット(30)に用いる機能部品でユニット化するものは上記各実施形態で説明したものに限らず、適宜変更してもよい。
【0122】
また、この装置(1)を使用する用途は厨房排気を処理する装置に限らず、オイルミスト以外の塵埃を処理するものであってもよい。
【0123】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明したように、本発明は、空気処理装置を小型で低コスト化するための技術について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、この空気処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、この空気処理装置の外観と、その内部の機能部品の位置関係とを示した配置図であり、図2(A)は左側面図、図2(B)は正面図である。
【図3】図3は、処理ユニットを平面から見た構成図である。
【図4】図4は、処理ユニットにおけるノズルの配置図である。
【図5】第1放電電極と第1ノズルの相互の位置関係を示す斜視図である。
【図6】実施形態2に係る処理ユニットを平面から見た構成図である。
【図7】実施形態3に係る処理ユニットを平面から見た構成図である。
【図8】実施形態4に係る処理ユニットを平面から見た構成図である。
【符号の説明】
【0126】
1 空気処理装置
10 ケーシング
30 処理ユニット
31 オイルミスト荷電部(塵埃荷電部)
32 水滴発生部
33 水滴荷電部
34 活性種発生部
35 第1メッシュ板(対向電極、基材)
36 第2メッシュ板(対向電極、基材)
37 電源
38 第1ノズル(水滴吹出部材)
39 第2ノズル(水滴吹出部材)
41 第1放電電極
42 第2放電電極
60 水滴回収部
72 ポンプ(送水手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理空気に対して集塵を行う空気処理装置であって、
塵埃を帯電させる塵埃荷電部(31)と、水滴を吹き出す水滴発生部(32)と、該水滴を塵埃と逆極性に帯電させる水滴荷電部(33)とを備え、
上記塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)の構成要素のうち、少なくとも2つにより、1つのユニット(30)が構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
被処理空気に対して集塵と脱臭を行う空気処理装置であって、
塵埃を帯電させる塵埃荷電部(31)と、水滴を吹き出す水滴発生部(32)と、該水滴を塵埃と逆極性に帯電させる水滴荷電部(33)と、水滴を電気的作用で活性種に変換する活性種発生部(34)とを備え、
上記塵埃荷電部(31)と水滴発生部(32)と水滴荷電部(33)と活性種発生部(34)の構成要素のうち、少なくとも2つにより、1つのユニット(30)が構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項3】
請求項1または2において
上記1つのユニット(30)として水滴発生部(32)の水滴吹出方向に水滴荷電部(33)が配置され、
水滴荷電部(33)には、水滴発生部(32)と異なる電位が与えられていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項4】
請求項2において、
上記1つのユニット(30)として水滴発生部(32)の水滴吹出方向に活性種発生部(34)が配置され、
水滴発生部(32)と活性種発生部(34)は、一方が放電電極として構成され、他方が対向電極として構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
上記構成要素として複数の電極(41,42)と複数の水滴吹出部材(38,39)とを備え、
上記1つのユニット(30)は、電極(41,42)同士または水滴吹出部材(38,39)同士を一体化することにより構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記1つのユニット(30)を構成する電極(41,42)同士または水滴吹出部材(38,39)同士は、被処理空気の流れ方向の同一位置に配置されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項7】
請求項5において、
上記1つのユニット(30)を構成する複数の電極(41,42)が同一の電源(37)に接続されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項8】
請求項5において、
上記1つのユニット(30)を構成する複数の水滴吹出部材(38,39)が並列に接続された送水手段(72)を備えていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項9】
請求項5において、
上記1つのユニット(30)は、導電性で通風性を有する基材(35,36)に複数の電極(41,42)同士または複数の水滴吹出部材(38,39)同士を固定することにより構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項10】
請求項1または2において、
上記1つのユニット(30)を収納するケーシング(10)を備え、該ユニット(30)が該ケーシング(10)に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項11】
請求項1または2において、
水滴発生部(32)における水の吹出方向から偏倚した位置に塵埃荷電部(31)が配置されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項12】
請求項1または2において、
水滴荷電部(33)は、水滴を噴霧するノズル(38)と、該ノズル(38)に対向する網目状の対向電極(35,36)とを備え、
上記ノズル(38)と対向電極(35,36)に電位差を与えることにより水滴を帯電させるように構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項13】
請求項2において、
水滴荷電部(33)は、水滴を噴霧する第1のノズル(38)と、該ノズル(38)に対向する網目状の対向電極(35,36)とを備え、
活性種発生部(34)は、水滴を噴霧する第2のノズル(39)と、該ノズル(39)に対向する針状の放電電極(42)とを備え、
上記第1のノズル(38)と網目状の対向電極(35,36)に電位差を与えて放電を起こすことにより水滴を帯電させるとともに、上記第2のノズル(39)と針状の放電電極(42)に電位差を与えてストリーマ放電を起こすことにより活性種を発生させるように構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項14】
請求項13において、
上記第1のノズル(38)と第2のノズル(39)が同一平面上に配置され、共通の送水手段(72)に並列に接続されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項15】
請求項13において、
ノズル(38)側の電位が該ノズル(38)同士で同一の電位に設定され、対向電極(35,36)側の電位が該対向電極(35,36)同士で同一であってノズル(38)側とは異なる電位に設定されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項16】
請求項1または2において、
被処理空気の流れ方向の最も下流側に水滴回収部(60)を備えていることを特徴とする空気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−56448(P2009−56448A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228576(P2007−228576)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】