説明

空気力学的プロファイル要素のための発射/回収機構及び空気力学的プロファイル要素

【課題】駆動システムを、発射及び回収の手順の確実な実行が達成されるようなやり方で発展させ、畳まれた状態から展張された状態への伸帆及び展張された状態から畳まれた状態への縮帆を効率的に可能にするプロファイル要素を提供する。
【解決手段】空気力学的プロファイル要素は、上側可撓層と下側可撓層、上側及び下側層間の内部空間、空気取入開口、及びウォータークラフトへと接続するための複数の縮帆線を備える。縮帆線は、第1の端部がプロファイル要素上の離間した位置に固定され、第2の端部が引張ケーブル243に接続されている複数の引張線240へ接続され、上側及び下側層の縮帆又は伸帆でプロファイル要素のサイズを増減させる。第1の端部へと縮帆線262a、bのすべての第2の端部が接続されている中央縮帆ケーブル263を備える。中央縮帆ケーブルは、プロファイル要素の発射及び回収のための案内ケーブルとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にはウォータークラフト(watercraft)を駆動するために引っ張り力によってエネルギーを生成するための空気力学的プロファイル要素(profile element)であって、
・横方向及び長手方向に広がっている上側可撓層、
・前記上側層と平行に広がり、当該プロファイル要素の奥行き方向に延びる複数のウェブによって前記上側層へと接続されている下側可撓層、
・前記上側及び下側層の間の空気で満たされた内部空間、
・前記上側及び下側層の互いに平行な2つの前縁の間に配置され、前記内部空間へと空気を供給する少なくとも1つの空気取入開口、
・当該プロファイル要素をウォータークラフトへと接続するため、第1の端部が当該プロファイル要素上の離間した位置へと固定され、第2の端部が引張ケーブルへと接続されている複数の引張線、及び
・前記上側及び下側層を縮帆(reefing)又は伸帆(unreefing)することによって当該プロファイル要素のサイズを減少又は増加させるように構成され、第1の端部が前記層及び/又はウェブへと固定されている複数の縮帆線
を備えているプロファイル要素に関する。
【0002】
本発明のさらなる態様は、先の段落に記載のプロファイル要素であって、長手方向に延びる棒部材を有しているプロファイル要素のための発射/回収機構であって、
・上端にマスト・ヘッドが固定されているマスト、及び
・前記マスト・ヘッドに配置され、前記プロファイル要素の前記前端を前記マスト・ヘッドへと接続すべく垂直軸を中心にして回転できる接続装置
を備えている発射/回収機構である。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の入手性の低下及びコストの上昇の文脈において、特には例えばウォータークラフトの駆動機構として再生可能なエネルギー源からエネルギーを生成するための代替の機構について、大きな需要が存在している。国際公開第2006/027194号及び国際公開第2006/027195号が、ウォータークラフトのための新規な駆動機構を開示しており、そのような駆動機構は、本明細書の冒頭部分に記載した種類の凧ないしカイト(kite)の形態の空気力学的プロファイル要素から実質的になっており、本明細書の冒頭部分に記載した種類の発射/回収機構によってウォータークラフトからの発射及びウォータークラフトによる回収が可能である。
【0004】
国際特許出願番号PCT/EP2005/004186(国際公開第2005/100150号)が、そのような空気力学的プロファイル要素のための設定システムを開示しており、方位角方向に枢動可能な保持手段を有している。さらに、国際出願番号PCT/EP2005/004183(国際公開第2005/100147号)が、そのような空気力学的プロファイル要素のための位置決め装置を開示しており、引張ケーブルの張力が所定の値を下回り、あるいは上回るときに、空気力学的プロファイル要素の引き込み又は繰り出しをそれぞれ可能にするウインチを備えている。
【0005】
そのようなプロファイル要素及び設定システムは、特には船舶の駆動機構として使用されるが、基本的には、引張ケーブルの力を引張ケーブルの繰り出し及び引き込みのサイクルによってエネルギーの生成に使用することで、例えば電気エネルギーなどのエネルギーを生成するためにも使用することが可能である。この目的のために、プロファイル要素を、陸地に固定された状態で使用することができ、あるいは海において固定された状態又は可動な状態で使用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/027194号
【特許文献2】国際公開第2006/027195号
【特許文献3】国際公開第2005/100150号
【特許文献4】国際公開第2005/100147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の刊行物に記載されている技術は、空気力学的プロファイル要素、特にはカイトによってウォータークラフトを駆動するために必要とされる基本的手法を含んでいる。比較的大型のウォータークラフトに関して、つながれつつ自由に飛行する空気力学的プロファイル要素による駆動の考え方を経済的に実現するために解決しなければならない基本的課題は、充分な駆動力を生み出すために必要とされるプロファイル要素のサイズゆえに、スポーツの分野から公知の制御のやり方を採用することができず、あるいは限られた範囲でしか採用することができない点にある。特には、比較的小型のカイトを発射及び回収するためのやり方を、船舶を経済的に駆動するために必要とされる大幅に大きい空気力学的プロファイル要素においては、採用することが不可能である。大型の空気力学的プロファイル要素の発射のプロセス及び回収は、関連の駆動の考え方の実現に関して、格別な難問を呈している。
【0008】
ここに関係する第1の課題は、地面の付近を支配している風の状態が、風の状態が弱すぎることがしばしばであるほか、強さ及び方向に関して一貫していないために、プロファイル要素について安定な飛行姿勢を生み出すことを困難にする点にある。このことが、プロファイル要素が低く飛行しているほど、プロファイル要素の制御をより困難にしている。
【0009】
本発明の目的は、駆動システムを、発射及び回収の手順の確実な実行が達成されるようなやり方で発展させることにある。
【0010】
プロファイル要素の発射前及び回収後に生じるさらなる問題は、可能な限りコンパクトである畳まれた状態を、展張された状態にしなければならず、さらには反対に、展張された状態を畳まれた状態にしなければならない点にある。この手順は、典型的には、伸帆及び縮帆と称される。
【0011】
この点に関し、本明細書の冒頭部分に記載した種類の空気力学的プロファイル要素は、典型的には、実質的に横方向に広がり、その場合には、横方向に対して垂直である長手軸を中心にして、中央からそれぞれの横方向の端部に向かって湾曲している。典型的には、プロファイル要素の長手軸の方向の広がりは、横方向の広がりよりも小さい。最後に、2つの層を互いに平行な関係に配置して備えているプロファイル要素の構造が、横方向及び縦方向に対して垂直である奥行き方向の広がりをもたらしており、この奥行き方向の広がりは、典型的には、横及び長手方向の広がりに比べてわずかである。長手断面において、奥行き方向の広がりは、典型的には、プロファイル要素の全長において変化しており、揚力を生み出すように形作られた上側の低圧側及び下側の高圧側を有する翼断面を形成している。
【0012】
さらなる態様によれば、本発明の別の目的は、畳まれた状態から展張された状態への伸帆及び展張された状態から畳まれた状態への縮帆を効率的に可能にするプロファイル要素を提供することにある。
【0013】
大寸法のプロファイル要素のさらなる問題は、プロファイル要素の外形を特定的かつ意図的に安定させ、あるいは不安定にさせることにある。これは、典型的には、プロファイルの内部空間を空気で満たし、あるいは内部空間から空気を排出することによって達成され、そのような空気は、好ましくは大気に比べて高い圧力の空気である。またさらなる態様によれば、本発明の目的は、そのようなプロファイル要素の安定化及び不安定化を、大寸法のプロファイル要素に関しても確実に実行することにある。
【0014】
発射及び回収の手順に関するさらなる問題は、地面の付近の領域におけるプロファイル要素の制御を、引張ケーブル及びプロファイル要素そのものの適切な制御手段だけでは、確実に実行することができないことにある。特には、そのようなやり方では、接続装置の特定的かつ狙いをつけた操作が、プロファイル要素の寸法が大きい場合にほとんど不可能である。この目的のために、プロファイル要素へと接続され、発射及び回収プロセスのそれぞれにおいて発射及び回収の機構へと接続することができる案内ケーブルを使用することが、上記の特許出願から知られている。当然ながら、地面の付近の領域におけるプロファイル要素の制御を、そのような案内機構によって改善することができるが、プロファイル要素の操作は、引張ケーブル、案内ケーブル、及びさらなる縮帆線の引き込み又は繰り出しを並列かつ時間的に調和させた関係で行う必要があるため、きわめて複雑な手順であり、そのような手順の制御はミスの影響を受けやすい。さらなる態様によれば、本発明の目的は、地面の付近におけるプロファイル要素の制御を簡単にすることにあり、特には接続装置の船舶に取り付けられている部位へのプロファイル要素の案内を簡単にすることにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、特には駆動対象のウォータークラフトの上方の空域を飛行している他の航空機に関して、プロファイル要素の飛行の安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的及び他の目的が、本発明によって達成される。本発明の第1の態様によれば、本明細書の冒頭部分に記載の種類の空気力学的プロファイル要素であって、空気力学的プロファイルを安定させるために当該プロファイル要素の長手方向に延びている棒部材によって発展させられ、該棒部材が、前記上側層及び/又は下側層及び/又はウェブへと取り付けられており、前記縮帆線の少なくとも1つが、前記第1の端部の固定点から前記上側又は下側層の当該プロファイル要素の横方向に延びる縮帆線部分から、長手方向に延びる縮帆線部分へと、前記棒部材において方向を変化させているプロファイル要素が提供される。
【0017】
この点に関し、縮帆線は、長手方向において実質的に剛であり、すなわち伸ばすことができない線の形態であってよく、あるいは全長又は個々の部位の領域において長手方向に弾性的である線の形態であってよい。
【0018】
本発明によるプロファイル要素は、長手方向に延び、従って長手方向についてプロファイル要素の外形を安定化する棒部材を有している。この棒部材が、好ましくは横方向の中央に配置され、さらにはプロファイル要素の上側及び下側層の間の奥行き方向の中央に配置される。縮帆線は、好ましくは、棒部材に位置する偏向ローラによって向きを変える。これは、縮帆線をプロファイル要素の内部空間又は外側において棒部材からプロファイル要素上の固定点まで長手方向又は長手−横方向に案内できるように、プロファイル要素の内部の安定な固定点において縮帆線の方向の変化が生じることを可能にする。棒部材において向きを変えた後、縮帆線を、棒部材に沿って長手方向に案内することができ、例えば前縁においてプロファイル要素から出すことができる。これは、望ましくないからまり及びケーブルの引っかかりから無縁な巧みな案内効果をもたらすと同時に、縮帆線の操作もより容易である。
【0019】
第1の発展によれば、前記棒部材が、前記層の全長の一部分のみに延びており、特には前記層の全長の3分の1についてのみ延びていることが好ましい。この発展は、プロファイル要素を、長い長手方向の広がりを有している展張状態から、上記短くされた棒部材の長さに一致する長手方向の広がりへと縮小された折り畳み状態へと、縮帆することを可能にし、全長にわたる棒部材を備えているプロファイル要素に比べ、長さに関して大幅に縮小された折り畳み寸法を可能にする。棒部材における縮帆線の向きの変更と縮帆線を長手/横方向に向くように配置できる可能性とが、縮帆線を正確に長手方向に延ばす必要のないことを意味し、また、斜めに延びる部位が縮帆及び伸帆を妨げることがないということを意味するという認識に、この発展はもとづいている。選択肢として、この実施の形態において、縮帆線が長手方向に延びてもよいが、その場合には、縮帆線は、前記棒部材による安定化がない領域において、プロファイル要素の後部領域の中央へと案内され、そこで横方向へと向きを変える。このような縮帆線が縮帆されるとき、長手方向においてプロファイル要素の長さの速やかな減少が生じ、これは、着陸動作に関して多くの場合に好都合である。
【0020】
前記上側又は下側層の横方向に延びている少なくとも1つの縮帆線部分が、該縮帆線部分に引っ張りが加えられたときに前記層の縮帆が横方向かつ長手方向に生じるようなやり方で、少なくとも一部分において横方向に対して斜めに延びているならばさらに好ましい。縮帆線が、この方法で少なくとも部分的なやり方で斜めに延びているという事実は、縮帆が、縮帆線によって長手方向及び横方向の両方にもたらされることを意味し、縮帆線の数の削減をもたらすことができ、結果として縮帆作業を簡単化できることを意味している。
【0021】
この点に関し、この実施の形態を、長さの短い棒部材を有し、特には長さが全長の3分の1へと短縮された棒部材を有する実施の形態と組み合わせることが特に好ましく、長さの短い棒部材のおかげで可能であるプロファイル要素のコンパクトに畳まれた構成を、斜めに延びている縮帆線部分によって達成することができる。
【0022】
本発明によるプロファイル要素のさらなる発展は、当該プロファイル要素へと固定された少なくとも2つの縮帆線部分であって、一体に接続されており、該縮帆線部分において回転し、共通の縮帆線延長部が固定されているローラを超えて縮帆及び伸帆される少なくとも2つの縮帆線部分を提供する。この方法で、一種のケーブル平衡手段が、縮帆線へと挿入される。このやり方で設計されたケーブル平衡手段が、プロファイル要素へと固定された2つの縮帆線の可変の縮帆を提供することを可能にし、引っ張り力が縮帆の目的のために1つの縮帆線延長部へと加えられ、この引っ張り力が、縮帆線部分のうちの1つにおいて一時的に抵抗が増加したときに結果として他方の縮帆線部分のみが引かれて縮帆線の裂けの危険を低減できるようなやり方で、ケーブル平衡手段によって2つの縮帆線部分へと伝達される。
【0023】
この点に関し、複数のそのようなケーブル平衡手段を設けることが特に好ましく、特にはケーブル平衡手段を、カスケード配置で設けることができ、すなわち2つの縮帆線延長部が、縮帆線部分のやり方で一体に接続され、ケーブル平衡手段によって縮帆線延長部の延長部へと接続され、以下同様である。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書の冒頭部分に記載のプロファイル要素又は上記のプロファイル要素の発展が、中央縮帆ケーブルを提供し、該中央縮帆ケーブルの第1の端部へと前記縮帆線のすべての第2の端部が接続されており、該中央縮帆ケーブル又は前記縮帆線の第2の端部が、当該プロファイル要素の前端から、プロファイル要素の横方向に対して軸対称に配置された該対称の軸の方向に延びており、前記中央縮帆ケーブルが、プロファイル要素の発射及び回収のための案内ケーブルとして機能できるようなやり方で、その第2の端部にて中央引張ケーブルの第1及び第2の端部の間に解放可能に固定される。
【0025】
この発展は、技術水準によれば必要である別途の案内ケーブルを、なしで済ますことができるようにする。代わりに、プロファイル要素を、中央縮帆ケーブルによって、地面の付近で必要とされるやり方で案内することができる。プロファイル要素を回収するとき、典型的にはプロファイル要素が接続装置の船舶に取り付けられた部位へと接続されるまでは、一方では縮帆に対してプロファイル要素の満たされた内部空間によって引き起こされる抵抗が存在して、この抵抗が望ましくない過剰な縮帆を発生させることなく中央縮帆ケーブルによる案内を可能にし、他方では、接続装置の船舶に取り付けられた部位への接続前は、回収作業におけるプロファイル要素の特定的に制御された縮帆が多くの場合に好都合であって、たとえプロファイル要素が中央縮帆ケーブルによって案内されている場合に生じても好ましく許容することができるという理解に、本発明のこの態様はもとづいている。
【0026】
この点に関し、中央縮帆ケーブルを、接続装置によって引張ケーブルへと解放可能に接続することができる。接続装置を、引張ケーブル上の固定の位置へと接続することができ、好ましくは、第2の端部が引張ケーブルに沿ってスライドできるようなやり方で引張ケーブルへと固定されるように接続装置が設計される。
【0027】
上述のプロファイル要素のさらなる発展においては、プロファイル要素の領域に位置し、前記中央縮帆ケーブル又は前記縮帆線を解放可能にクランプするように構成されたケーブル・クランプ装置が存在する。このケーブル・クランプ装置は、プロファイル要素が中央縮帆ケーブルによって案内されている段階において、縮帆線又は中央縮帆ケーブルをプロファイル要素の領域においてブロックすることによって、プロファイル要素の意図せぬ縮帆又は伸帆を防止することを可能にする。
【0028】
この点に関し、プロファイル要素が長手方向に延びる棒部材を備えており、ケーブル・クランプ装置が、中央縮帆ケーブルに引っ張りが存在するときに自動クランプし、プロファイル要素の前縁の領域において棒部材へと固定されており、ケーブル・クランプ装置の開放を可能にする操作手段へと接続されていることが特に好ましい。この発展は、縮帆線又は中央縮帆ケーブルのケーブル・クランプを外部から制御することを可能にする。その結果、例えば、接続が生じるまでクランプ作用が有効であり、あるいは切り離しの直後に有効となり、従って意図せぬ伸帆/縮帆が防止されるが、接続後又は切り離し前にはプロファイル要素の縮帆又は伸帆が接続された状態において可能であるよう、接続装置の船舶に取り付けられた部位へと接続された状態においてケーブル・クランプ作用を取り除くことができる。特には、操作手段を、接続装置の船舶に取り付けられた部位への接続時に自動的に作動するようにして、クランプ効果を自動的に取り除くことができる。
【0029】
本発明によれば、さらなる態様において、本明細書の冒頭部分に記載の種類又は上記の種類のプロファイル要素であって、前記内部空間が、少なくとも1つの通気穴及び該少なくとも1つの通気穴を可変に閉じるための閉鎖装置を有しているプロファイル要素が提供される。
【0030】
本発明のこの態様は、比較的大寸法のプロファイル要素の場合に、特には内部空間の空気を必要とされる様相で逃がすことができないという事実ゆえに縮帆が妨げられているという理解にもとづいている。この欠点に対処しながら、同時にプロファイル要素の飛行特性及び形状安定性を悪化させないために、プロファイル要素が、可変に閉じることができる通気穴を有している。このやり方で、プロファイル要素の縮帆が望まれるときに通気穴を開くことができ、このやり方で、内部空間の空気をより迅速に内部空間から排出することができるが、飛行状態においては、通気穴を閉じた状態に保ってプロファイル要素の形状を安定にすることができる。
【0031】
この点に関し、通気穴が、細長いスリットの形態であり、弾性的に変形できるそれぞれの棒部材が、前記穴の少なくとも1つの縁に沿って固定され、好ましくは前記通気穴の両方の縁に沿って固定されており、開放ケーブルが、該開放ケーブルに引っ張りが加えられたときに前記棒部材が弾性的に湾曲して前記通気穴が開かれるように、前記棒部材の両端へと固定されていると特に好ましい。この発展は、一方ではプロファイル要素の軽量な構成に関する要求を満足し、他方では通気穴の確実な開放及び閉鎖を可能にする特有の構造を提供する。この点に関し、棒部材を、スリットの長手縁に沿ってさまざまなやり方で固定することができ、随意により、棒部材を互いに固定することも可能であり、例えば棒部材を、それらの端部において関節運動可能又は剛につなぎ合わせることができ、結果として、2つの棒部材がスリットの両方の長手縁に沿って配置されたときに、楕円形又はレンズ形の開口がもたらされる。
【0032】
通気穴を有する実施の形態においては、通気穴が、プロファイル要素が飛行状態にあるときにプロファイル要素の外側の低圧領域に位置する領域に配置され、特には前記層の後縁の間の領域又は前記上側層に配置されていると好ましい。この通気穴の配置によれば、内部空間の空気がきわめて迅速に内部空間から排出され、特には大寸法のプロファイル要素の場合に縮帆作業を大幅に高速にすることができる。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書の冒頭部分に記載の種類のプロファイル要素又は上述のとおりのプロファイル要素の発展において、前記上側及び下側層の前縁の間の領域が、プロファイル要素の長手中心線の周囲に複数の空気取入開口を有しており、外側領域において閉じられている。より小規模なカイトの設計の構成と対照的に、より大きな寸法のカイトの空気力学及び飛行安定性を、当該長手縁の一部分(特には、長手中心線の周囲に配置された一部分)のみを占めるカイト又はプロファイル要素の前縁の開口によって、他の領域(特には、先導の長手縁の大部分)を閉じつつ、改善できることが明らかになった。
【0034】
この点に関し、空気取入開口が、先導の風が当たる表面、すなわち空気力学的プロファイル要素の前面又は翼前縁の10〜30%、好ましくは30%を占めると特に好ましい。
【0035】
さらに、空気取入開口がスラットによって開いた状態に保持されると好ましい。この点に関し、スラットによって開いた状態に保持されるそのような空気取入開口の構成を、例えば上述の通気穴の構成に合わせることができ、あるいはスラットによって開いた状態に保持されるそのような空気取入開口の構成が、空気取入開口の縁に沿って配置されて互いに接続される複数の棒部材に頼ることができる。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書の冒頭部分に記載の種類又は上述の種類のプロファイル要素の発展において、少なくとも1つ、好ましくは複数の信号装置、好ましくは自発光信号素子が、引張ケーブルに配置される。このやり方で、他の航空機がプロファイル要素からウォータークラフトへと延びている引張ケーブルを見落とすことがないように保証することができ、全体としてのシステムの動作の安全性を向上させることができる。この点に関し、特には夜間の動作のために、自発光の信号素子、すなわち電源へと接続されて光を生じる信号素子を使用することが好ましい。
【0037】
この点に関し、特には信号装置が、赤色及び白色の信号素子、好ましくは自発光全方位位置表示灯を、引張ケーブルへと約100メートルの間隔で交互に固定して有することができる。
【0038】
信号手段が自発光である状況においては、信号手段が、エネルギーを供給するために引張ケーブル内を延びている電流搬送線へと誘導結合することが好ましい。この種のエネルギー供給は、一方ではきわめて確実であり、他方では、この点に関して、特にはプロファイル要素の下方に配置されたゴンドラの引張ケーブル(いずれにせよプロファイル要素の制御手順のために多くの場合に必要である)による電力の伝達を使用する。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書の冒頭部分に記載の発射/回収機構の発展において、接続装置が、2つの垂直に延びる側壁によって画定された収容空間を含んでおり、該収容空間に、棒部材の前端を受け入れることができ、該収容空間が、第1の水平後ろ側に向かっては当接壁によって画定され、第1の水平後ろ側に対して反対の関係にある第2の水平前側及び上方に向かっては、この側又は上方から棒部材の前端を導入するために開いている。
【0040】
このやり方でもたらされる接続装置は、特にはプロファイル要素が固定かつ所定の位置に保持されている場合にプロファイル要素のきわめて確実な発射及びきわめて確実な回収が可能にされる、以前の考えからの逸脱である。むしろ、本発明のこの発展は、全体システムの個々の構成部品(特には、プロファイル要素の棒部材)への荷重を、プロファイル要素の特定の移動性が接続された状態においても可能にされる場合に、大幅に軽減できるという認識にもとづいている。
【0041】
加えて、この構成の発射/回収機構は、プロファイル要素の発射及び回収を、プロファイル要素の多数の飛行位置及び飛行方向において達成可能にする。収容空間の上方及び前方に開いている構成が、棒部材を上方及び前方の両方から接続及び切り離しできることを意味する。これは、一連の発射及び回収の操作に関して好都合である。
【0042】
この点に関し、好ましくは、プロファイル要素の回収及びそれに結び付けられた棒部材の収容空間への導入を容易にするために、好ましくはじょうごのやり方で形作られた側壁によって、収容空間は画定される。
【0043】
第1の好都合な実施の形態によれば、本発明による発射/回収機構の発展において、接続装置が、水平及び/又は垂直軸を含んでおり、棒部材を接続された状態において水平及び/又は垂直軸を中心にして枢動させることができる。この発展は、プロファイル要素(特には、棒部材)の所定の枢動を提供する。この点に関し、水平軸を、装置構造に関して、接続装置内の構成部品として具現化でき、あるいはレバーなどの協働によって垂直軸の形態で具現化することができる。
【0044】
この点に関し、軸が、接続された棒部材を基準角度方向へと弾性的に復帰させるため、又は棒部材の枢動を減衰させるためのばね部材及び/又はダンパー部材へと接続されると特に好ましい。一方では枢動に関して高いレベルの加速度及び高い速度が達成されないが、他方では棒部材を所望の基準位置へと戻すための復帰力が加えられるようなやり方で、制御された発射及び回収手順のための自由な可動度が好ましくは制限されるべきであることが、明らかになっている。これを、減衰及び弾性復帰を有する構成によって達成することができる。
【0045】
本発明による発射/回収機構のさらなる発展が、棒部材を垂直及び/又は水平方向を向いた角度位置に固定するためのロック装置によって可能にされる。これは、例えばプロファイル要素の縮帆の完了後に、マストに対する棒部材の角度の向きを固定の位置に維持することを可能にし、垂直面における望ましくない枢動を防止する。
【0046】
その場合、ロック装置は、特には水平方向に移動可能な閉鎖部材を含むことができ、この閉鎖部材が、ロック時の配置において収容空間の上側開口領域を閉じ、非ロック時の配置において収容空間の上側開口領域を開放する。
【0047】
さらなる好ましい実施の形態によれば、発射/回収装置の発展において、少なくとも1つのカバー・フラップを、マスト・ヘッドに、特には接続装置に配置でき、棒部材がマスト・ヘッドへと接続されたときにプロファイル要素の空気取入開口を覆うことができる。プロファイル要素がマスト・ヘッドの領域に配置され、あるいはマスト・ヘッドへと接続されたときに、プロファイル要素の内部においてプロファイル要素の空気取入開口によって生み出される動圧が形状をさらに安定にして縮帆作業をより困難にすることを、カバー・フラップが防ぐ。この点に関し、特には、プロファイル要素の空気取入開口のそれぞれについてカバー・フラップが存在でき、そのようなカバー・フラップが、好ましくはあらゆる接続状態において空気取入開口の前方に位置できるよう、マスト・ヘッドの垂直軸及びおそらくは水平軸を中心にして接続装置と同じ様相で回転できる。
【0048】
ひとたび発射が行われたならば駆動対象のウォータークラフトの動作を妨げることがないよう、マストを完全に反転させ、あるいは高さの少なくとも一部分について反転させて、高さを減らすために、マストを少なくとも1つの軸を中心にして関節運動可能に構成することができる。発射/回収機構のさらなる発展によれば、上述の関節運動の選択肢に代え、あるいは上述の関節運動の選択肢に加えて、マストをテレスコピック式で伸縮させることができる。このやり方で、より大きな寸法のプロファイル要素に必要な発射高さを、船舶の残りの動作を妨げる大きなサイズのマスト機構を設置する必要なく、確実に達成することができる。
【0049】
本発明のさらなる態様は、上述の種類のプロファイル要素及び発射/回収機構を備えている船舶のための駆動機構であって、マストが、船舶の船首領域に配置され、引張ケーブルが、移動の方向においてマストの前方のプロファイル要素の全長の約3分の1に配置された船舶の船首領域の牽引点へと枢支されている駆動機構である。牽引点、すなわち引張ケーブルがウォータークラフトへと固定されている位置、又は引張ケーブルが固定位置へと向きを変えている位置は、好ましくは、ウォータークラフト上のマスト固定点からプロファイル要素の長さに対して3分の1という所与の関係に配置されることが明らかになっている。この点に関し、マストは垂直に延びていると仮定される。この間隔は、発射の作業も回収の作業もマスト・ヘッドによってプロファイル要素へと大きな案内力を伝達することを必要とせず、むしろつながれつつ自由に飛行するプロファイル要素の引張ケーブルが、引張ケーブルが相応に引かれたときにプロファイル要素をマスト・ヘッドに対して適切な間隔に実質的に保持するため、確実な発射手順及び確実な回収手順の両方を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるカイトの引張線の構成を図式的に示している正面図である。
【図2】図1に示したカイトの側面図を示している。
【図3】前部から斜め下向きにゴンドラ及び縮帆線の構成を有しているカイトの図式的な図である。
【図4】縮帆線の構成の図式的な図である。
【図5】前部カイト・スティック領域の案内線のクランプ機構の図式的な側面図である。
【図6】縮帆線のためのクランプの機能の図式的な図を示している。
【図7】可変に閉鎖可能な通気穴の機能の原理を説明する図式的な図を示しており、(a)は、通気穴が開放位置にある図、(b)は、通気穴が閉鎖位置にある図である。
【図8】カイトをウォータークラフトへと接続するためのマスト・ヘッドについて、前方から見下ろした図を示している。
【図9】後方から見上げたマスト・ヘッドの図を示している。
【図10】カイトをマスト・ヘッドから発射及びマスト・ヘッドへと回収する手順の図式的な図を示している。
【図11】マスト・ヘッド及びマスト・ヘッドに合わせて構成されたカイトのさらなる実施の形態の図式的な図を示している。
【図12】カイト・ヘッドが挿入されたマスト・ヘッドの一部分の部分断面側面図を、ロック位置及び非ロック位置に示している。
【図13a】マスト・ヘッドにおける接続装置の垂直及び水平方向の規制のための機構について、前方から斜めに見下ろした斜視図を示している。
【図13b】マスト・ヘッドにおける接続装置の垂直及び水平方向の規制のための機構について、前方から斜めに見下ろした斜視図を示している。
【図13c】マスト・ヘッドにおける接続装置の垂直及び水平方向の規制のための機構について、前方から斜めに見下ろした斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0052】
図1及び2を参照すると、本発明によるカイト100の形態の空気力学的プロファイル要素は、第1の上側層111及び第2の下側層112を備えている。図1に示されている正面図において、前縁111a及び112aの間に、上側及び下側層111、112の間の内部空間へと空気を取り込むように機能する4つの開口120a〜dが見える。開口120a〜dは、カイト100の水平な長手軸の周囲に配置されている。前縁111a、112aの間の外側領域には、開口が設けられていない。
【0053】
上側及び下側層111、112は、複数のウェブ121によって一体に接続されている。このように構成された上側及び下側層111、112並びにウェブ121からなる複合構成が、複数の引張線によってゴンドラ130へと接続されている。この構成において、複数の引張線がカイトへと取り付けられ、これらの引張線が、ゴンドラ130へと固定すべき引張線が6本だけとなるような程度まで引張線をまとめることができるよう、ゴンドラの方向において結び合わされている。
【0054】
図2から見ることができるとおり、プロファイル要素は、複数の引張線によって長手方向においてもゴンドラ130へと接続されており、これらの引張線が、横方向に分布した図1に示した引張線について上述したような程度まで、同じやり方で結び合わされている。
【0055】
カイト・スティック150の形態の剛な棒部材が、上側及び下側層111、112の間で、カイト100の長手中心線に沿って固定されている。カイト・スティック150は、カイト100の全長のほぼ3分の1にわたって延びている。案内線142が、カイト・スティック150上に案内されている。案内線142の機能については、さらに詳しく後述する。
【0056】
ゴンドラ130は、カイト110によって駆動されるウォータークラフトへゴンドラ130、従ってプロファイル要素を接続する引張ケーブル143へと接続されている。案内線142は、解放可能なスライド・リング144によって、引張ケーブル143上を変位できるように案内されている。
【0057】
図3及び4は、カイトの縮帆及び伸帆のための縮帆線の配置及び構成を図式的に示している。図式的に図示されたカイト210が、カイトの引っ張り力を中央の引張ケーブル243によってウォータークラフトへと伝達することができるゴンドラ230へと、複数の引張線240によって接続されている。
【0058】
複数の縮帆線が、カイト210の内部にて延びており、それぞれがカイトの横方向に延びるそれぞれの部位260a、bを有している。縮帆線のそのような部位260a、bは、外側固定点261a、bにおいてカイト210の外縁に固定されている。それぞれの縮帆線の部位260a、bは、カイト・スティック250(カイトの長手中心線に沿って固定されている)へと固定された偏向ローラ251a、bによって、長手方向に延びる縮帆線の部位262a、bへと向きを変えている。これらの長手方向に延びる縮帆線の部位262a、bは、カイト・スティック250の前端へと固定されたカイト・ヘッド252へと延びている。
【0059】
この実施の形態において、すべての縮帆線の部位262a、bは、カイトの外側で中央縮帆ケーブル263へと接続されている。図示の実施の形態においては、中央縮帆ケーブル263が同時に案内ケーブルを呈しており、解放可能なリング部材244によって引張ケーブル243上に案内されている。
【0060】
図3及び4から見て取ることができるとおり、縮帆線の部位260a、bは、必ずしも正確にカイト210の長手方向に延びておらず、長手方向を横切る方向に延びることもできる。すなわち、例えば、縮帆線260aは、カイト・スティック250の後端において向きを変え、固定点261aによって後ろ隅の領域においてカイト210へと固定されている。しかしながら、カイト・スティック250は、カイト210の全長にわたって延びているわけではなく、図示の実施の形態においては全長のおよそ3分の2を占めているにすぎないため、縮帆線の部位260aは、内側から後方に向かって外側へと斜めに延びている。従って、縮帆線の部位260aは、当該縮帆線260aが引かれるときに、長手方向の縮帆に加えて、横方向の縮帆成分も生み出すことを可能にする。
【0061】
図5は、カイト・ヘッド252の領域のクランプ装置270を示している。見て取ることができるように、図示の縮帆ケーブル263及び縮帆線の配置では、図3及び4に示した図と対照的に、縮帆線ではなくて縮帆/案内ケーブル263が、カイト・ヘッド252を通って案内されている。
【0062】
引張線263が、カイト・ヘッドの領域において、カイト・スティック250へと固定されたクランプ装置270によって案内されている。クランプ装置270は、カイト210の縮帆の程度に応じて、すなわち縮帆/案内線263及び縮帆線262a、bがクランプに対してとる位置に応じて、引張線263及び縮帆線262a、bの両方をクランプできるように設計されている。
【0063】
クランプ装置270は、クランプ装置をクランプ状態に保持する引っ張りばね271を含んでいる。換言すると、通常の飛行状態においては、クランプ装置が閉じられており、縮帆/案内ケーブル263をカイト・ヘッドから引き出すことが不可能である。このやり方で、通常の飛行状態において、縮帆/案内ケーブル263を、望まれないカイトの縮帆を生じさせることなく、カイトを案内するために使用することができる。
【0064】
クランプ装置を、レバー272の手動又は自動操作によって開くことができる。以下で詳しく説明されるとおり、このレバーを、特にはカイト・ヘッドがウォータークラフトのマスト・ヘッドへと接続されるときに自動的に作動させることができる。
【0065】
レバー272の作動時、クランプ装置270が解放され、縮帆/案内ケーブル263をカイト・ヘッド252から引き出すことができる。このやり方で、縮帆線262a、bを、クランプ装置を通ってカイトから引き出すことができ、このやり方でカイトの縮帆を行うことができる。縮帆が完了するや否や、レバー272を再び解放することができ、このやり方で、縮帆状態をクランプによって固定することができる。
【0066】
図6が、縮帆線又は縮帆/案内ケーブルのそれぞれのためのクランプ装置の別の実施の形態を示している。
【0067】
図6に示したクランプ装置は、縮帆線又は縮帆/案内ケーブル362a、b、363に対する摩擦を増加させる複数のリブ374が設けられた固定の相手面373を含んでいる。
【0068】
回転ジョイント376に枢動可能に支持された枢動可能なクランプ本体375が、固定の相手面373に対向する関係に配置されている。クランプ本体375が、圧縮ばね371によってクランプ位置へと押され、縮帆/案内ケーブル又は縮帆線に面するクランプ面に、やはり摩擦の効果を増すための複数のリブ377を有している。
【0069】
クランプ解放線378が、圧縮ばね371のクランプ・レバー375への枢支取り付け点の付近において、クランプ本体へと取り付けられている。クランプ解放線378は、向きを変え、縮帆線363a、bと平行な関係でカイト・ヘッドの外へと通過している。クランプ解放線378を引くことによって、クランプ本体375をクランプ位置から枢動させ、縮帆動作を実行すべく縮帆線362a、bを解放することができる。この実施の形態は、例えば縮帆が望まれ、カイト・ヘッドがマスト・ヘッドに接続されていないときに、クランプ作用を遠隔操作によって取り除くことができるという利点を有している。
【0070】
図7a及び7bは、カイトの内部空間の通気のために可変に開閉することができる通気穴80a、bを図式的に示している。
【0071】
図7bからはっきりと見て取ることができるように、通気穴は、長手方向のスリットの形態であり、互いに平行な関係で延びる2つの長手縁81、82を有している。可撓スラットが、長手縁81、82へと取り付けられている。スラットは、3つの箇所83a〜cにおいて互いに固定的に接続されている。
【0072】
開放線が、偏向ローラ85において向きを90°変えて偏向ローラ86へと通されている開放線の第1の部位84aにて、固定点83a及び固定点83bの間をスラットに平行に延びている。
【0073】
開放線の第1の部位84aは、偏向ローラ86において向きを180°変え、再び偏向ローラ85aを通過している。この戻りの線部分が、偏向ローラ85において向きを90°変えた後に固定点83b及び83cの間を延びる開放線の第2の部位82bの構成部分である。
【0074】
開放線の第1の部位84aは、固定点83aに固定され、開放線の第2の部位84bは、固定点83cに固定され、結果として開放線の第1及び第2の部位84a、bが協働して、偏向ローラ85、86において向きを変える固定点83a及び固定点83cの間の線接続を呈している。
【0075】
第2の偏向ローラ86が、開放引張ケーブル87へと接続されている。この開放引張ケーブル87は、図7bにおいては引っ張られていない。図7aにおいて開放引張ケーブル上の矢印で示されているように、開放引張ケーブル87が引かれると、開放線の部位84a、bも引っ張られ、結果として固定点83a、83cが固定点83bの方向に引き寄せられる。これにより、スラット81、82が変形し、カイトの内部空間の空気を流出させることができる8の字形の開口80a、bが形成される。
【0076】
図8及び9は、ウォータークラフトに取り付けられたマストの先端へとマスト・ヘッドの領域に取り付けることができる接続装置を示している。マスト、マスト・ヘッド、及び接続装置が、カイトの発射及び回収の手順を可能にすべく機能する。発射が行われた後で、カイトの引張ケーブルの力が、マストから離して配置された牽引点によって伝達され、マストは、通常の移動動作の最中はいかなる機能も実行しないため、例えばマストをテレスコピック構造として、縮めることができる。
【0077】
図8は、接続装置を前方かつ上方から示している。ここから見て取ることができるとおり、接続装置90は、収容空間の横方向を画定している側壁91a、bを有するハウジングを備えている。収容空間は、上方及び前方へと開いている。後方においては、収容空間92は、当接壁93によって画定されている。側壁91a、bは、下向きに収束しており、従ってこの方向にじょうご形状がもたらされている。また、側壁91a、bは、前縁及び上縁において丸みを帯びている。側壁91a、bのこの丸みを帯びた構成及び円錐状に収束する配置の両者が、カイト・ヘッドの収容空間92への導入をより容易にしている。
【0078】
接続装置の水平及び垂直の枢支機構が、後方領域の当接壁93の背後に配置されている。この機構については、さらに詳しく後述する。
【0079】
水平及び垂直の枢支機構の上方に、ロック板94が、側壁91a、bに沿って水平方向に延びている案内レール95a、bに案内されて配置されている。ロック板94を、図10に示されている非ロック位置から、上方から収容空間92を閉じて収容空間に配置されたカイト・ヘッドを動かぬようにロックするロック位置へと、案内レール95a、bに沿って移動させることができる。
【0080】
当接壁93の前方の収容空間の底部には、接続装置を下方へと貫いて延びる開口96が配置されており、この開口96が、特には図11から見て取ることができるとおり、案内ケーブル又は縮帆/案内ケーブルを偏向ローラ97へと案内するように構成されている。カイト・ヘッドを、このやり方で開口96に通された案内ケーブルによって収容空間92へと案内することができる。
【0081】
図10は、テレスコピック式のマスト500に配置された接続装置490へのカイト410のドッキング又は回収の手順並びに発射の手順を図式的に示している。
【0082】
両矢印Aによって示されているとおり、前端にカイト・ヘッド492を備えるカイト410が、強風の中を水平方向に接続装置490へと近付いている。この場合、カイト・ヘッド452が、前部から収容空間492へと通過する。この動きは、案内ケーブル463によって案内及び補助される。案内ケーブル463は、通常の飛行動作においては引張ケーブル443へと解放可能に固定されており、引張ケーブルが引き張られた後に、引張ケーブル443から取り外され、接続装置の開口496を通過し、従ってカイト・ヘッド452を収容空間492へと引き込むことができる。
【0083】
両矢印Bが、弱い風の状態でのカイト・ヘッド452の回収の方向を示している。この場合には、カイト・ヘッド452を、前方かつ上方に傾いた方向にて収容空間492へと導入する必要がある。
【0084】
両矢印Cが、カイト・ヘッド452の典型的な発射の方向を示している。制御をより容易にするために、発射の動作は、好ましくは上方へと行われ、すなわち移動の垂直方向に行われる。
【0085】
図12が、カイト・ヘッド552が接続された接続装置590の断面図を示している。カイト・ヘッド552が、前部552a及び細長い後部552bを含んでいる。細長い後部552bの下面は、前部552aに対して後退させられており、前部552aと後部552bとの間に段差が存在している。
【0086】
収容空間592の下側の収容面の前端に、カイト・ヘッド552の段差に一致する関係に形作られた突起598が設けられている。
【0087】
このような収容空間及びカイト・ヘッドの構成は、カイト・ヘッドが最初に水平な移動方向にて収容空間へと通過でき、次いで当接壁593に当接した後で、垂直下方へと移動できることを意味する。
【0088】
ロック板594が、図14においては2つの位置に示されている。位置594aは、カイト・ヘッド552を収容空間592に出し入れできる非ロック位置を表わしている。ロック板594を前方に移動させることで、ロック板がロック位置594bに達する。この位置において、ロック板594はカイト・ヘッド552の上方に位置し、カイト・ヘッドの上方への移動を不可能にする。その結果、突起598がカイト・ヘッドの前部552aに当接することによって、カイト・ヘッドが接続装置にロックされる。
【0089】
図11が、2つの空気取入開口620a、bを長手方向の中心線の周囲に配置して備えているカイト610を図式的に示している。空気取入開口は、カイトの長手方向において見たときに、カイト・スティック(図示されていない)の左側及び右側に配置されている。
【0090】
さらに図11は、接続装置690を示している。接続装置690は、2つのカバー板699a、bを、カイト610が接続装置690へと接続されたときに空気取入開口620a、bを覆うようなやり方で、接続装置に取り付けて備えている。これが、カイト610の内部空間へのさらなる空気の取り入れを防止し、カイト610の縮帆作業を容易にする。
【0091】
操作レバーが、カイト・ヘッドの領域に配置され、縮帆線又は縮帆/案内ケーブルのそれぞれのためのクランプ装置へと接続されている。プロファイル要素がマスト・ヘッドへと接続されたとき、操作レバー672がマスト・ヘッドに当接することによって枢動し、クランプ装置のクランプ作用が解放される。
【0092】
図13a〜cは、図10及び11に示した接続装置のマストへの機械的な接続装置を示している。プレート700及びプレート700に垂直に配置されたプレート701が、マストへと剛に取り付けられている。
【0093】
これらのプレートに、片持ちアーム704、705へと接続された回転軸702が取り付けられている。カイト・ヘッドを案内して収容空間に出し入れするときに案内ケーブルの向きを変えるように機能する偏向ローラ797が、片持ちアーム704、705へと回転可能に取り付けられている。
【0094】
回転軸702を中心とする回転運動は、一端がプレート700へと取り付けられ、他端が片持ちアーム704へと固定された片持ちアーム707へと取り付けられているダンパー部材706によって固定される。
【0095】
このようにして、回転軸702が、垂直軸を中心とする接続装置の枢動を可能にしている。
【0096】
片持ちアーム704、705の前端に、水平軸を中心とする2つの片持ちアーム708、709のわずかな枢動を可能にする枢支装置が配置されている。この水平軸を中心とする受動的な枢動の可能性は、接続されたカイトについて或る程度の可動性を可能にし、例えば突風又は船舶の運動によって生じうる力がカイトに作用するときに、カイト・スティックへの荷重を緩和するように機能する。さらに、この軸を中心とする枢動によってカイトを降下させることも可能である。
【符号の説明】
【0097】
100 カイト
111 上側層
111a 前縁
112 下側層
112a 前縁
120a〜120d 開口
121 ウェブ
130 ゴンドラ
142 案内線
143 引張ケーブル
144 スライド・リング
150 カイト・スティック
210 カイト
230 ゴンドラ
240 引張線
243 引張ケーブル
250 カイト・スティック
251a,251b 偏向ローラ
252 カイト・ヘッド
260a,260b 縮帆線のカイトの横方向に延びる部位
261a,261b 外側固定点
262a,262b 縮帆線の長手方向に延びる部位
263 縮帆ケーブル
264 リング部材
270 クランプ装置
271 引っ張りばね
272 レバー
363 縮帆ケーブル
371 圧縮ばね
374 リブ
373 相手面
375 クランプ本体
376 回転ジョイント
377 リブ
378 クランプ解放線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引っ張り力によってエネルギーを生成するための空気力学的プロファイル要素であって、
・横方向及び長手方向に広がっている上側可撓層(111)、
・前記上側可撓層と平行に広がり、当該プロファイル要素の奥行き方向に延びる複数のウェブ(121)によって前記上側可撓層へと接続されている下側可撓層(112)、
・前記上側及び下側可撓層の間の空気で満たされた内部空間、
・前記上側及び下側可撓層の互いに平行な2つの前縁の間に配置された前記内部空間へと空気を供給するための少なくとも1つの空気取入開口(120a〜d)、
・当該プロファイル要素をウォータークラフトへと接続するため、第1の端部が当該プロファイル要素上の離間した位置へと固定され、第2の端部が引張ケーブル(143)へと接続されている複数の引張線(140a〜f)、及び
・前記上側及び下側可撓層を縮帆又は伸帆することによって当該プロファイル要素のサイズを減少又は増加させるように構成され、第1の端部が前記上側及び下側可撓層及び/又はウェブへと固定されている複数の縮帆線(260a、262a)
を備えているプロファイル要素であり、
第1の端部へと前記縮帆線(262a、b)のすべての第2の端部が接続されている中央縮帆ケーブル(263)を備えており、
該中央縮帆ケーブル又は前記縮帆線の前記第2の端部が、当該プロファイル要素の前端から、当該プロファイル要素の横方向に対して軸対称に配置された該対称の軸の方向に延びており、
前記中央縮帆ケーブルが、当該プロファイル要素の発射及び回収のための案内ケーブルとして機能できるようなやり方で、その第2の端部にて中央引張ケーブル(243)の第1及び第2の端部の間に解放可能(244)に固定される、
ことを特徴とするプロファイル要素。
【請求項2】
前記中央縮帆ケーブルの前記第2の端部が、接続装置によって前記引張ケーブルへと解放可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のプロファイル要素。
【請求項3】
当該プロファイル要素の領域に位置し、前記中央縮帆ケーブル又は前記縮帆線を解放可能にクランプするように構成されたケーブル・クランプ装置(270)を特徴とする請求項1又は2に記載のプロファイル要素。
【請求項4】
長手方向に延びる棒部材を備えており、
前記ケーブル・クランプ装置が、前記中央縮帆ケーブルに引っ張りが存在するときに自動クランプし、当該プロファイル要素の前縁の領域において前記棒部材(250)へと固定されており、該ケーブル・クランプ装置の開放を可能にする操作手段へと接続されていることを特徴とする請求項3に記載のプロファイル要素。
【請求項5】
棒部材(250)が、空気力学的プロファイルを安定させるために当該プロファイル要素の長手方向に延びており、該棒部材が、前記上側及び/又は下側可撓層及び/又はウェブへと取り付けられており、前記縮帆線の少なくとも1つが、前記第1の端部の固定点から前記上側又は下側可撓層の当該プロファイル要素の横方向に延びる縮帆線部分(260a)から、長手方向に延びる縮帆線部分(262a)へと、前記棒部材において向きを変化させていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のプロファイル要素。
【請求項6】
前記棒部材(250)が、前記上側及び下側可撓層の全長の一部分のみに延びていることを特徴とする請求項5に記載のプロファイル要素。
【請求項7】
前記上側又は下側可撓層の横方向に延びている少なくとも1つの縮帆線部分が、該縮帆線部分に引っ張りが加えられたときに前記上側及び下側可撓層の縮帆が横方向かつ長手方向に生じるようなやり方で、少なくとも一部分において横方向に対して斜めに延びていることを特徴とする請求項5又は6に記載のプロファイル要素。
【請求項8】
当該プロファイル要素へと固定された少なくとも2つの縮帆線部分が、一体に接続されており、該縮帆線部分において回転し、共通の縮帆線延長部が固定されているローラを超えて縮帆及び伸帆されることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のプロファイル要素。
【請求項9】
前記内部空間が、少なくとも1つの通気穴(80a、80b)及び該少なくとも1つの通気穴を可変に閉じるための閉鎖装置(81、82、84a、b)を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプロファイル要素。
【請求項10】
前記通気穴が、細長いスリットの形態であり、
弾性的に変形できるそれぞれの棒部材(81、82)が、前記穴の少なくとも1つの縁に沿って固定されており、開放ケーブル(84a、84b)が、該開放ケーブルに引っ張りが加えられたときに前記棒部材が弾性的に湾曲して前記通気穴が開かれるように、前記棒部材の両端へと固定されていることを特徴とする請求項9に記載のプロファイル要素。
【請求項11】
前記通気穴が、当該プロファイル要素が飛行状態にあるときに当該プロファイル要素の外側の低圧領域に位置する領域に配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載のプロファイル要素。
【請求項12】
前記上側及び下側可撓層の前縁の間の領域が、当該プロファイル要素の長手中心線の周囲に複数の空気取入開口(120a〜d)を有しており、前記外側領域において閉じられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のプロファイル要素。
【請求項13】
前記空気取入開口が、先導の風が当たる表面、すなわち当該空気力学的プロファイル要素の前面又は翼前縁の10から30%を占めていることを特徴とする請求項12に記載のプロファイル要素。
【請求項14】
前記空気取入開口が、スラットによって開いた状態に保持されることを特徴とする請求項12又は13に記載のプロファイル要素。
【請求項15】
複数の信号装置が、前記引張ケーブルに配置されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のプロファイル要素。
【請求項16】
前記信号装置が、赤色及び白色の信号素子を有していることを特徴とする請求項15に記載のプロファイル要素。
【請求項17】
前記信号手段が自発光であり、エネルギーを供給するために前記引張ケーブル内を延びている電流搬送線へと誘導結合していることを特徴とする請求項15又は16に記載のプロファイル要素。
【請求項18】
長手方向に延びる棒部材を有している請求項1から17のいずれか一項に記載のプロファイル要素のための発射/回収機構であって、
・上端にマスト・ヘッドが固定されているマスト(500)、及び
・前記マスト・ヘッドに配置され、前記棒部材の前端を前記マスト・ヘッドへと接続すべく垂直軸を中心にして回転できる接続装置(90)
を備えている発射/回収機構であり、
前記接続装置が、2つの垂直に延びる側壁(91a、b)によって画定された収容空間(92)を含んでおり、該収容空間(92)に、前記棒部材の前端(552)を受け入れることができ、該収容空間(92)が、第1の水平側に向かっては当接壁(93)によって画定され、第1の水平側に対して反対の関係にある第2の水平側に向かっては、この側又は上方から前記棒部材の前端を導入するために上方に開いていることを特徴とする発射/回収機構。
【請求項19】
前記接続装置が、垂直軸(702)を含んでおり、前記棒部材を接続された状態において該垂直軸(702)を中心にして枢動させることができることを特徴とする請求項18に記載の発射/回収機構。
【請求項20】
前記軸が、接続された前記棒部材を基準角度方向へと弾性的に復帰させるため、又は前記棒部材の枢動を減衰させるためのばね部材及び/又はダンパー部材(706)へと接続されていることを特徴とする請求項19に記載の発射/回収機構。
【請求項21】
前記棒部材を水平方向を向いた角度位置に固定するためのロック装置(94)を特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載の発射/回収機構。
【請求項22】
前記ロック装置が、ロック時の配置において前記収容空間の上側開口領域を閉じ、非ロック時の配置において前記収容空間の前記上側開口領域を開放する水平方向に移動可能な閉鎖部材(94)を備えていることを特徴とする請求項21に記載の発射/回収機構。
【請求項23】
少なくとも1つのカバー・フラップ(699a、b)が、前記マスト・ヘッドに配置され、前記棒部材が前記マスト・ヘッドへと接続されたときに前記プロファイル要素の前記空気取入開口を覆うことを特徴とする請求項18から22のいずれか一項に記載の発射/回収機構。
【請求項24】
前記マストを、テレスコピック式にて伸縮させることができ、さらに/あるいは少なくとも1つの軸を中心にして折り畳むことができることを特徴とする請求項18から23のいずれか一項に記載の発射/回収機構。
【請求項25】
請求項1から17のいずれか一項に記載のプロファイル要素及び請求項18から24のいずれか一項に記載の発射/回収機構を含んでいる船舶のための駆動機構であって、
前記マストが、当該船舶の船首領域に配置され、前記引張ケーブルが、移動の方向において前記マストの前方の前記プロファイル要素の全長の約3分の1に配置された当該船舶の船首領域の牽引点へと枢支されていることを特徴とする駆動機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13a】
image rotate

【図13b】
image rotate

【図13c】
image rotate


【公開番号】特開2012−101794(P2012−101794A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7118(P2012−7118)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【分割の表示】特願2009−524080(P2009−524080)の分割
【原出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(509044833)スカイセイルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】SkySails GmbH & Co. KG