説明

空気流量測定装置

【課題】流量測定装置1において、第2ハウジング2Bを2次成形する際に、1次成形品として2次成形により圧力を受ける第1ハウジング2Aの耐圧性向上を目的とする。
【解決手段】流量測定装置1は、バイパス流路を形成するための第1ハウジング2Aと、第1ハウジング2Aを1次成形部品とする2次成形によって形成される第2ハウジング2Bとを備える。また、第2ハウジング2Bは、内部にバイパス流路が形成された中空部7を有し、第1ハウジング2Aの外周面において、中空部7の上側に、第1ハウジング2Aの内側に凹む凹部26が設けられている。これによれば、2次成形時に、第1ハウジング2Aを保持するための型Mの一部を凹部26に差し込むことができ、2次成形時に型Mによって支持される第1ハウジング2Aの型押え面積を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトの内部を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路を形成するための第1ハウジングと、第1ハウジングを1次成形部品とする2次成形によって形成される第2ハウジングとを有し、バイパス流路に配置される流量センサによって空気流量を測定する空気流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気流量測定装置100として、図7に示すように、ダクトの内部を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路101を形成するための第1ハウジング102と、第1ハウジング102をダクトに取り付けるための第2ハウジング103と、バイパス流路101を流れる空気の流量を測定する流量センサ104とを備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、第1ハウジング102を1次成形品として、第2ハウジング103を2次成形し、第1ハウジング102と第2ハウジング103を一体化しようとすると、第1ハウジング102はバイパス流路101を形成する中空部を有しているため、2次成形時に注入される2次成形樹脂の圧力によって、第1ハウジング102が変形したり、破損したりする虞が懸念される。
そして、第1ハウジング102が変形すると、バイパス流路101の形状が変わってしまうため、設計通りのバイパス流路101の流路形状とはならず、所望の流量センサ104の出力特性を得ることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−261771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、空気流量測定装置において、第2ハウジングを2次成形する際に、1次成形品として2次成形により圧力を受ける第1ハウジングの耐圧性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の空気流量測定装置は、ダクトの内部を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路を形成するための第1ハウジングと、第1ハウジングを1次成形部品とする2次成形によって形成される第2ハウジングと、バイパス流路に配設される流量センサとを備える。
【0007】
また、第1ハウジングは、第2ハウジングの下方に保持されており、内部にバイパス流路が形成された中空部と、中空部の上側において第1ハウジングの外周面が第1ハウジングの内側に凹む凹部とを有する。すなわち、上下方向において、中空部と第2ハウジングとの間に、第1ハウジングの外周面が第1ハウジングの内側に凹む凹部が設けられている。
【0008】
第1ハウジングが上述のような形状であるならば、2次成形時に、第1ハウジングを保持するための型の一部を凹部に差し込むことができる。
この場合、凹部を形成する側面の内の第2ハウジング側に位置する側面を型に当接させることができ、2次成形時に型によって支持される第1ハウジングの型押え面を増加させることができる。なお、凹部の数や、凹部の深さによって型押え面積を設定できる。
型押え面積が増大すると、広い面積で2次成形時を型押え面で受けることができるため第1ハウジングの耐圧性が向上するとともに、中空部にまで圧力の影響が及びにくくなり中空部の変形を防止できる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の空気流量測定装置によれば、凹部は、前記第1ハウジングの外周面の全周に亘って連続する周溝として設けられている。
これによれば、型押え面積を第1ハウジングの外周全周に亘って増大させることができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の空気流量測定装置によれば、凹部を形成する側面の内の第2ハウジング側に位置する側面は、第2ハウジングの成形時に、凹部に型の一部が挿入されることで、型押さえ面として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は空気流量測定装置の断面図であり、(b)は放出口を主流の下流側から見た図である(実施例1)。
【図2】(a)は空気流量測定装置の側面図であり、(b)は空気流量測定装置を下側から見た図である(実施例1)。
【図3】2次成形時の様子を説明する説明図である(実施例1)。
【図4】比較例における2次成形時の様子を説明する説明図である(比較例)。
【図5】空気流量測定装置の側面図である(変形例)。
【図6】(a)、(b)は、空気流量測定装置を下側から見た図である(変形例)。
【図7】空気流量測定装置の断面図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の空気流量測定装置は、ダクトの内部を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路を形成するための第1ハウジングと、第1ハウジングを1次成形部品とする2次成形によって形成される第2ハウジングと、バイパス流路に配設される流量センサとを備える。
また、第1ハウジングは、第2ハウジングの下方に保持されており、内部にバイパス流路が形成された中空部と、中空部の上側において第1ハウジングの外周面が第1ハウジングの内側に凹む凹部とを有する。
【実施例】
【0013】
〔実施例1〕
実施例1の流量測定装置1の構成を、図1、2を用いて説明する。
流量測定装置1は、例えば、自動車用エンジンへの吸入空気量を計測するエアフローメータであって、自動車用エンジンへの吸気路を形成するダクトDに取り付けられて使用されるものである。
流量測定装置1は、以下に説明するハウジング2、流量センサ3、回路チップ4などにより一体的に構成されている。
【0014】
ハウジング2は、樹脂によって形成されており、ダクトDの内部を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路を形成するための第1ハウジング2Aと、第1ハウジング2Aを1次成形部品とする2次成形によって形成される第2ハウジング2Bとを有する。
【0015】
第1ハウジング2Aは、ダクトDへの設置時に主流方向に垂直な方向(ダクト径方向)を上下方向とすると、第2ハウジング2Bの下方に保持される。
そして、第2ハウジング2BがダクトDの外側に配され、第1ハウジング2Aがダクト内に配される。
【0016】
第1ハウジング2Aは、内部にバイパス流路が形成された中空部7と、中空部7と第2ハウジング2Bとの間に設けられる中間部8とを有する。
また、第2ハウジング2Bは、ダクトDと接続される接続部9と、回路チップ4と外部機器とを電気的に接続するためのターミナル10を保持するコネクタ部11等を有する。なお、接続部9には、ダクトDへの取付け用ボルトが挿通される貫通穴が設けられている。
【0017】
中空部7は、吸気路を流れる空気の流れ(主流)の上流側に向かって開口し、吸入空気の一部を取り込む吸入口13と、吸入口13から取り込んだ空気を通す内部流路14と、吸気路の下流側に向かって開口し、吸入口13から取り込まれた空気を吸気路に戻す放出口15とを備える。
【0018】
内部流路14は、吸気路を流れる空気の流れ(主流)の上流側に向かって開口し、吸気路を順方向に流れる空気の一部を取り込む吸入口13と、吸入口13から取り込んだ空気を通すとともに流量センサ3を収容する内部流路14と、吸気路の下流側に向かって開口し、吸入口13から取り込まれて流量センサ3を通過した空気を吸気路に戻す放出口15とを備える。そして、流量センサ3は、吸入口13から取り込まれた空気との間に伝熱現象を発生させて質量流量相当の出力値を発生する。
【0019】
内部流路14は、吸入口13から下流側に連続する吸入流路17と、放出口15から上流側に連続する放出流路18と、流量センサ3を収容するとともに吸入流路17と放出流路18とを接続するように周回する周回流路19とを有する。
【0020】
吸入流路17は、吸入口13から下流側に直線的に伸びるように設けられており、吸入流路17における流れは、主流における順流と平行になる。そして、吸入流路17の下流端には、吸入口13から取り込まれた空気に含まれるダストを直進させて排出するためのダスト排出流路21が接続している。また、ダスト排出流路21の下流端はダスト排出口22を形成している。
【0021】
周回流路19は、例えば、吸入流路17と放出流路18とに略C字状に接続し、吸入口13から取り込まれた空気を吸入流路17から放出流路18に向かって周回させる。また、流量センサ3は、周回流路19において吸入流路17における流れ方向とは逆の方向に流れる部分に収容されている。すなわち、この周回流路19に配置された流量センサ3によって流量が検出される。
【0022】
放出流路18は、周回流路19の下流端に接続して、周回流路19の下流端から略直角に旋回するように屈曲しており、放出口15はその下流端に形成される(図1(a)、図2(a)参照)。
また、放出流路18は、吸入流路17に跨るように上流端から2つに分岐し、放出口15は、吸入流路17の両側の2箇所に形成されている(図1(b)参照)。
【0023】
中間部8は、中空部7と第2ハウジング2Bとの間に設けられており、ダクトDに形成される取付け孔23に嵌合する嵌合部25を有している。嵌合部25は円板状を呈し、外周面が取付孔23の内周面に当接する。
そして、中間部8の上側に2次成形によって第2ハウジング2Bが形成される。
【0024】
流量センサ3は、バイパス流路を流れる空気の流量に応じて電気的な信号(例えば電圧信号)を出力するものである。
具体的には、半導体基板に設けられたメンブレン上に、薄膜抵抗体で形成された発熱素子と感温素子とを有し、これらの素子が回路チップ4に内蔵される回路基板(図示せず)に接続されている。
【0025】
回路チップ4は、発熱素子を設定温度に制御するための発熱体制御回路、流量に応じた電圧を出力するための出力回路、この出力回路の出力電圧を増幅する増幅回路等を有しており、第1ハウジング2Aの内部に形成される収容スペースに収容される。
【0026】
〔実施例1の特徴〕
本実施例では、図2(a)に示すように、第1ハウジング2Aは、中空部7の上側において、第1ハウジング2Aの外周面が第1ハウジング2Aの内側に凹む凹部26を有する。
凹部26は、中間部8に設けられている。さらに具体的には、嵌合部25と中空部7との間の第1ハウジング2Aの外周面に設けられている。
【0027】
凹部26は、主流方向の上流側及び下流側の2箇所に設けられ、上流側の凹部26は下流側に凹んでおり、下流側の凹部26は上流側に凹んでいる。
嵌合部25の下面25aの一部が、凹部26を形成する上側(第2ハウジング側)の側面(以下、上側面26a)となっている。
【0028】
ここで、図3を用いて、第2ハウジング2Bの形成工程を説明する。
第2ハウジング2Bは、第1ハウジング2Aを1次成形品として、第1ハウジング2Aを型Mに固定した状態で、型M内に2次成形樹脂が注入されることで形成される。
なお、図3では、第2ハウジング2Bを形成する型Mの内、第1ハウジング2Aを固定する部分を断面で示している。
型Mは、凹部26に挿入される突出部Maを有している。突出部Maは、第1ハウジング2Aの外周から凹部26に挿入される。
【0029】
型Mは、突出部Maが凹部26の上側面26aを含む嵌合部25の下面25aに当接した状態で設置される。このため、突出部Maに当接する嵌合部25の下面25aは、2次成形時に第1ハウジング2Aを支持する型押え面となる。
なお、型押え面以外の第1ハウジング2Aの外周面と型Mとの間には、微小の隙間が存在する。
【0030】
〔実施例1の作用効果〕
実施例1の流量測定装置1は、中空部7の上側において、第1ハウジング2Aの外周面が第1ハウジング2Aの内側に凹む凹部26が設けられている。
第1ハウジング2Aが上述のような形状であるならば、2次成形時に、第1ハウジング2Aを保持するための型Mの一部を凹部26に差し込むことができる。
この場合、凹部26を形成する上側面26aを型Mに当接させることができ、2次成形時に型Mによって支持される第1ハウジング2Aの型押え面を増加させることができる。
【0031】
ここで、凹部26を設けない流量測定装置1を、比較例として図4に示す。
凹部26を設けない場合には、型Mに当接させることのできる嵌合部25の下面25a(型押え面)を、実施例と比較して、広くは確保できない。
2次成形樹脂の注入による圧力は、図4の実線矢印に示すように、上側から第1ハウジング2Aの全体に負荷される。このとき、型押え面が小さいと、第1ハウジング2Aが2次成形樹脂の注入による圧力によって、変形してしまう虞がある。特に、中空部7は変形しやすく、中空部7が変形すると、設計通りのバイパス流路の流路形状を維持することができないという問題を生じる虞がある。
【0032】
これに対し、本実施例では、型Mに当接する型押え面積を大きくすることができるため、広い面積で2次成形時を型押え面で受けることができ、第1ハウジング2Aの耐圧性が向上するとともに、中空部7にまで圧力の影響が及びにくくなり、中空部7の変形を防止できる。従って、設計通りのバイパス流路の流路形状を維持することができ、所望の流量センサ3の出力特性を得ることが可能となる。
なお、型押え面積は、凹部26の数や、凹部26の深さによって設定できる。
【0033】
〔変形例〕
実施例1では、凹部26が主流方向の上流側及び下流側の2箇所に設けられていたが、上流側または下流側のいずれか一方のみに設けられていてもよい。
また、凹部26が、第1ハウジング2Aの外周面の全周に亘って連続する周溝として設けられていてもよい(図5参照)。これによれば、型押え面積を第1ハウジング2Aの外周全周に亘って増大させることができる。
【0034】
また、実施例1では、周回流路19を有する内部流路14によってバイパス流路を設けていたが、バイパス流路の態様はこれに限らず、主流の一部を取り込んで周回させることなく、吸入口13から主流方向の順流に沿って形成され、吸入口13から入った吸気を主流方向の順流に沿って流して放出するようなバイパス流路の態様であってもよい。
【0035】
また、図6(a)に示すように、第2ハウジング2Bの接続部9には、ダクトDへの取付け用ボルトが挿通される金属ブッシュ30がインサート成形されていてもよい。また、図6(b)に示すように、第2ハウジング2Bに取付け用ボルトが挿通される貫通穴を有する金属プレート31をインサート成形し、接続部9としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 流量測定装置
2 ハウジング
2A 第1ハウジング
2B 第2ハウジング
3 流量センサ
7 中空部
14 内部流路(バイパス流路)
26 凹部
26a 上側面(凹部を形成する側面の内の第2ハウジング側に位置する側面)
D ダクト
M 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトの内部を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路を形成するための第1ハウジングと、
前記第1ハウジングを1次成形部品とする2次成形によって形成される第2ハウジングと、
前記バイパス流路に配設される流量センサとを備える空気流量測定装置であって、
前記第1ハウジングは、前記第2ハウジングの下方に保持されており、
内部に前記バイパス流路が形成された前記中空部と、前記中空部の上側において前記第1ハウジングの外周面が前記第1ハウジングの内側に凹む凹部とを有することを特徴とする空気流量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気流量測定装置において、
前記凹部は、前記第1ハウジングの外周面の全周に亘って連続する周溝として設けられていることを特徴とする空気流量測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気流量測定装置において、
前記凹部を形成する側面の内の前記第2ハウジング側に位置する側面は、前記第2ハウジングの成形時に、前記凹部に型の一部が挿入されることで、型押さえ面として機能することを特徴とする空気流量測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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