説明

空気浄化フィルター

【課題】空中に浮遊する微生物を直接殺菌浄化でき、捕集した微生物をも殺菌・滅菌除去することが可能な空気清浄フィルターを提供する。
【解決手段】 以下の(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)よりなる繊維群:(イ)−NHR(ここでRはメチル基等のアルキル基)、−NH、−CNH、−CHO、−COOH、−OHよりなる官能基群から選択される官能基を有するポリマーでコーテイングした、セルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;(ロ)繊維表面をシラン処理した後、−CHO基を導入したセルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;(ハ)繊維表面をリン酸処理したセルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;(ニ)−NH基または−COOH基を含有するイオン交換繊維;から選択される少なくとも1種の繊維で構成されたフィルター濾材に、溶菌酵素を、共有結合またはイオン結合によって固定化した空気浄化フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を担体の表面に固定化した空気浄化フィルターに関する。さらに詳しくは、撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維、官能基を有するイオン交換繊維または官能基を有するポリマーでコーテングされたボロン・シリカガラス繊維で構成されたHEPAフィルタ−の表面に酵素を固定化した空気浄化フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の異物を除去するための装置として、種々の空気浄化装置(空気清浄装置)や空気洗浄装置(エアウォッシャ)が知られている。空気浄化装置(空気清浄装置)は、主として空気浄化フィルター(エアフィルター)によって空気中のちり、ほこりなどの浮遊微小粒子、ガス状汚染物、油脂分、バクテリア等の微生物が付着した粉塵などの異物を濾過することによりこれらを除去する装置である。一方、空気洗浄装置(エアウォッシャ)は、通常、空気を水洗いすることにより、空気中の塵埃や微生物などを除去する装置である。
【0003】
前者の空気浄化フィルターについては、除去対象物の種類、除去対象物の粒径、粒子捕集率などの用途に応じて種々のフィルターが開発されている。またフィルタ−の形状に関しても、マット形、クサビ形、折り込み形、カゴ形、袋形、パネル形、ボックス形など様々な形が用いられている。しかしながら、従来の空気浄化フィルター単独では、空気中に浮遊するカビ、バクテリア、真菌等の微生物を十分には除去できなかった。さらに、フィルタ−に捕集された微生物を殺菌・滅菌することが困難でありフィルタ−上で微生物が増殖し飛散することで二次汚染を起こすおそれもあるため空気の浄化処理に関しては必ずしも満足すべき結果が得られなかった。
【0004】
そこで、本発明者らは空気中に浮遊するカビ、バクテリア、真菌等の微生物の殺菌・滅菌処理に関与することができる酵素類の使用を思い立った。かかる酵素類を用いる殺菌・滅菌手段あるいは抗菌手段としては、例えば、以下に挙げるような種々の技術が提案されている。
【0005】
特公昭54−21422号公報には、食品あるいはその原料に尿素、チオグリコール酸、メルカプトエタノールのうちから選ばれる1種以上と細菌細胞壁溶解酵素とを添加して一定時間保持したあと加熱処理することを特徴とする加工食品中の微生物(例えば、耐熱性細菌芽胞)の殺菌法が開示されている。
【0006】
特開昭64−30584号公報には、担体の表面に生体触媒として作用する微生物又は酵素と、溶菌酵素とを共存させて固定した、主として食品工業の分野で用いられる生体触媒固定化用担体が記載されている。また、同公報は、微生物としてグラム陰性のバクテリア、グラム陽性のバクテリア、酵母および糸状菌等を、酵素としてアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの加水分解酵素を、溶菌酵素としてリゾチーム、エンド−N−アセチルムラミダーゼ、エンド−N−アセチルグルコサミニダーゼ、オートリシン、エンソペプチダーゼ型細菌細胞壁溶解酵素、アミダーゼ型細菌細胞壁溶解酵素、糸状菌細胞壁溶解酵素および酵母細胞壁溶解酵素を、それぞれ教示している。
【0007】
特開平2−5822号公報には、天然抗菌剤として卵白リゾチームを配合したpHを2.0〜7.0の範囲に調整した生野菜用アルコール製剤および有機酸と有機酸塩類又はリン酸塩類とを配合してpHを2.0〜7.0の範囲に調整し卵白リゾチームを抗菌剤として配合した生野菜用改質剤が開示されている。
【0008】
特開平2−23856号公報には、食品の腐敗・変質を効果的に防止する目的で、食品の製造に際し、ポリグリセリン脂肪酸エステル、リゾチームおよびプロタミンを併用することを特徴とする食品の保存法が開示されている。
【0009】
特公平3−22144号公報には、食品にリゾチーム、キチナーゼ、β−1,6−グルカナーゼ等の溶菌酵素を作用させ、次いで超音波処理することを特徴とする食品の殺菌方法が記載されている。
【0010】
特開平5−76362号公報には、水和性物質のコア粒子と共に流動床反応器の反応室中にリゾチームの水性スラリーを噴霧し、それにより残留する水を蒸発させて粒子状コア物質上に被覆された乾燥リゾチームを残留させ、それによりリゾチームを含有する粒子を与えることからなるリゾチーム含有粒子の製造方法が記載されている。また、同公報は、このようなリゾチーム含有粒子が各種食品、化粧品、医薬品等の用途において有用であることを教示している。
【0011】
特開平5−276910号公報には、プロタミンに、リゾチーム、甘草抽出抗菌性物質、ビタミンB1エステル、重合リン酸塩から成る物質群より選ばれた1種と組み合わせたことを特徴とする食品保存料が開示されている。
【0012】
特開平6−217749号公報には、カプリル酸モノグリセライドおよび/またはカプリン酸モノグリセライドにグリシン、酢酸ナトリウム、リゾチームおよび有機酸および/または有機酸のアルカリ塩を併用することを特徴とする食品用保存剤並びにカプリル酸モノグリセライドおよび/またはカプリン酸モノグリセライドにグリシン、酢酸ナトリウム、リゾチームおよび重合リン酸塩を併用することを特徴とする食品用保存剤が開示されている。また、同公報は、リゾチームは溶菌効果が有ると言われているが、その効果は一部の菌種に限られており、単独の使用では実用的な静菌剤とは言えないことも教示している。
【0013】
特開平6−246157号公報には、リゾチーム、アビジンまたはトリプシンなどの蛋白質の変性蛋白質を水不溶性担体に固定化した細胞吸着体が開示されており、これを用いることにより細胞含有液から有効に細胞を分離または除去することができることが記載されている。
【0014】
特開平7−236479号公報には、ペリルアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンゾアルデヒド、バニリンなどの植物由来の抗菌性化合物、抗生物質、合成抗菌剤などより選択される抗菌性化合物をリゾチームに結合させることが開示されており、かかる抗菌性化合物結合リゾチームが医薬品、医薬部外品、食品等に利用可能であることが教示されている。
【0015】
また、銀、亜鉛、銅等の抗菌金属を無機系の担体に担持した無機抗菌材料も種々のものが提案されている。例えば、銀、亜鉛イオン等をイオン交換によりゼオライトに担持させた無機抗菌剤、金属銀を吸着によりリン酸カルシウムに担持させた無機抗菌剤、銀イオンをイオン交換によりリン酸ジルコニウムに担持させた無機抗菌剤、銀錯塩を錯体の吸蔵により非晶質酸化ケイ素に担持させた無機抗菌剤などが挙げられ、繊維、プラスチック、フィルム、塗料等種々の製品に応用されている(ゼオライト、Vol.13,No.2(1996)第56頁〜第63頁)。
【0016】
他方、前記の酵素を固定化するのに用いる担体としては、例えば、以下に挙げるような種々の担体が提案されている。
特開昭49−48825号公報には、卵白リゾチームを固定化するのにフェノール系、脂肪族アミン系のイオン交換樹脂を担体として用いることが記載されている。
【0017】
特開昭59−48080号公報には、複数の酵素を複合的に固定化するためにAmberliteやアミノ化ポリビニルアルコールで被覆した白金等を担体として用いることが開示されている。
【0018】
特開昭60−49795号公報には、殺菌能力を持つ溶菌酵素を固定化処理するために天然繊維又は化学繊維或いはこれらの混合繊維をウエブ構成繊維として構成した不織布を担体として用いることが開示されている。
【0019】
特開昭64−30584号公報には、生体触媒固定化用担体として、セラミックハニカム構造体からなるカラム、膜状体、粒状体、多孔質体が教示されており、具体的にはコーディライトからなる担体が記載されている。
【0020】
特開平1−256388号公報には、イヌリン−D−フラクトトランスフェラーゼを担持するための担体として陰イオン交換樹脂を用いることが教示されている。
特開平2−39239号公報には、酵素固定化用担体として1級アミノ基または2級アミノ基の少なくとも一方を交換基とする多孔性陰イオン交換樹脂を用いることが開示されている。
【0021】
特開平2−41166号公報には、酵素固定化用担体は、セラミック、ガラスあるいは有機高分子を多孔性膜状、繊維状、紡糸状、あるいは繊維状、紡糸状のものを編みあげた網目状、または粒子状にしたものが適当であることが記載されている。
【0022】
特開平3−269362号公報には、免疫分析用試薬において担体としてラテックスを用いることが教示されている。
特開平6−91117号公報には、粘液細菌フィルターと抗菌性ポリマーを基材とするフィルターを有する空気浄化装置が開示されている。また、同公報には、粘液細菌が生産する溶菌酵素及び抗生物質を固定化する基材として、通常ポリウレタンフォーム、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド及び/又は各種の光架橋性、光硬化性の合成高分子ポリマーが使用されることが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記したように、殺菌、抗菌、防腐、防カビ等の目的で酵素、例えばリゾチーム等の溶菌作用を有する酵素を溶液中で用いることが、食品、医薬品、化粧品等の技術分野において開発されている。
【0024】
しかしながら、特定の材質からなる空気浄化フィルターに、かかる溶菌作用を有する酵素を組み合わせて、空気浄化フィルターの微生物に対する殺菌・滅菌除去能力を向上させる手段はこれまでに一度も提案されたことがなかった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、空気浄化フィルターに溶菌作用を有する酵素単独、もしくは、種々の蛋白質・ペプチドや多糖類等を共存させて、空気浄化フィルターの微生物殺菌・滅菌除去能力を向上させるべく、種々の点から検討を加え、鋭意研究を重ねた結果、特定の材料および形状を有する担体の表面に酵素を固定化処理することにより、空気浄化フィルターの微生物殺菌・滅菌能力除去能力を向上させ、その微生物殺菌・滅菌能力並びに微生物除去能力を長期間に渡って維持することが可能であることを見いだした。本発明は上記知見に基
づいてなされたものである。
【0026】
本発明は、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)よりなる繊維群:
(イ)−NHR(ここでRはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチルのうちのいずれかのアルキル基)、−NH、−CNH、−CHO、−COOH、−OHよりなる官能基群から選択される、少なくとも1種の官能基を有するポリマーでコーテイングした、セルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;
(ロ)繊維表面をシラン処理した後、−CHO基を導入したセルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;
(ハ)繊維表面をリン酸処理したセルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維(例えば、ボロン・シリカガラス繊維);
(ニ)−NH基または−COOH基を含有するイオン交換繊維;
から選択される少なくとも1種の繊維で構成されたフィルター濾材に、溶菌酵素を、共有結合またはイオン結合によって固定化した空気浄化フィルターを提供する。この空気浄化フィルターは、例えば、空気中の微生物を捕集するフィルターとして用いることができる。
【0027】
また、本発明は、上記空気浄化フィルターに、空気を通し、空気中に含まれる微生物をフィルター上に捕集し、捕集した微生物を固定化した溶菌酵素により、フィルター上で殺菌する、空気浄化方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る空気浄化フィルターの担体材料としては、空気浄化フィルターとしての機能を果たす材料であれば特に制限はなく、例えばセルロ−ス繊維、ガラス繊維、イオン交換繊維などのガラス繊維以外の合成繊維等の各種の有機繊維や無機繊維を用いることができ、それぞれの素材の特性に応じて用途別に使用することができる。
【0029】
ガラス繊維のなかで、ボロン・シリカガラス繊維は、繊維径が4μm以下であっても十分な強度を有しており捕集性能に優れた高性能のフイルターを構成するのに適している。
多量の酵素を有効に繊維に固定化するためには撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維を使用することが好ましい。また、官能基を有するイオン交換繊維や官能基を有するポリマーでコーテングされたガラス繊維、好ましくはボロン・シリカガラス繊維を好ましく使用することができる。当該官能基は特に制限はないが、−NHR(RはH以外のメチル、エチル、n−プロピルやi−プロピルから選ばれるプロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチルおよびt−ブチルから選ばれるブチルのうちのいずれかのアルキル基)、−NH、−CNH、−CHO、−COOH、−OH等が好ましい。
【0030】
空気浄化フィルターの形状は、不織布等の綿状、濾紙状、ハニカム状、粒状および網状など特に制限はない。なお、ハニカムのセル形状は任意であり、三角、四角、五角、六角などの多角形状やコルゲート形状などの形状をとることができる。例えば、特開昭59−15028号公報に記載されているようなセラミック繊維の集合体(ハニクル担体)、すなわち、珪酸ゲルにより互いに結合されているシリカ繊維、アルミナ繊維、アルミノシリケート繊維、ジルコニア繊維などの無機質繊維から選択されるセラミック繊維のシート状集合体をハニカム状に積層して構成されるハニカム構造体が好ましい。
【0031】
特に、戦後、原子力技術開発の一環として depth filtration 原理を生かして開発された、繊維径4μm以下の極細ガラス繊維を主体とし強度付与のためチョップストランドガラス繊維を通常7%以下の少量配合し通常7%以下の有機バインダ−でガラス繊維間を結合したHEPAフィルタ−は他のフィルタ−に比べて卓越した低圧損特性、捕集効率およ
び物理的強度を有しており好ましい担体材料である。HEPAフィルタ−には、0.3μmDOP粒子を99.97%以上捕集出来る高性能のHEPAフィルタ−や、0.3μmDOP粒子を95〜99%以上捕集出来る準高性能の準HEPAフィルターや、捕集性能をさらに改善した超高性能のULPAフィルタ−がある。
【0032】
本発明において用いられる酵素は溶菌作用を有する酵素であれば特に制限はないが、リゾチーム、キチナーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルカナ−ゼ、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼおよびエンドリシンが好ましい溶菌作用を有する酵素として挙げられ、これらのうちの1種もしくは2種以上を酵素のみで用いるか、酵素以外の殺菌作用を有する蛋白質・ペプチドと組み合わせて用いるか、多糖類と組み合わせて用いることができる。
【0033】
殺菌作用を有する蛋白質・ペプチドとしては、例えば、プロタミン、ラクトフェリンおよびポリリジンなどを挙げることができる。
酵素、特にリゾチ−ムは、多糖類と効率的にグリコシル化して化学的共有結合し顕著な抗菌作用を発現する。多糖類としては、例えば、グルカン、デキストラン、マンナン、ガラクトマンナン、ラミナラン、カラギ−ナン、アガロ−スなどが挙げられる。これらの多糖類を1種もしくは2種以上用いる。
【0034】
酵素と酵素以外の蛋白質・ペプチドとの混合物もしくは化合物の例としては、リゾチームとプロタミンの組み合わせ、あるいは、リゾチームとアポラクトフェリンの組み合わせなどが挙げられる。酵素と多糖類の混合物もしくは化合物の例としては、リゾチームとグルカンとの組み合わせ、あるいは、リゾチームとガラクトマンナンとの組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明の空気浄化フィルターは、空気の浄化を必要とする一般家庭用および業務用の様々な場合において用いることができる。特に、半導体関連、食品関連、病院関連施設等により最適に適用できる。本発明の空気浄化フィルタ−は、従来の空気浄化フィルタ−では浄化処理できなかった空気中に浮遊するバクテリア、真菌、特に乾燥に強く空気中に長く浮遊する枯草菌(Bacillus subtilis)、ルテウス菌(Micrococcus luteus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)等の微生物を、直接溶菌反応によって殺菌除去して空気を浄化処理することを可能にし、さらに、従来の空気浄化フィルタ−ではいったん捕集した微生物であっても長桿菌のように小さな断面積を有する微生物であれば自らの蠕動によって空気浄化フィルタ−をすり抜けてしまう恐れもあったが、本発明の空気浄化フィルタ−では、いったん捕集した微生物は酵素の溶菌作用によって殺菌・滅菌し微生物のすり抜けを防止できる。また、従来の空気浄化フィルタ−では、捕集した微生物を殺菌・滅菌することができないためフイルター上で微生物が増殖し飛散することで空気を二次汚染する恐れがあったが、本発明の空気浄化フィルタ−は、フィルタ−上に捕集し付着した微生物に対しても優れた溶菌作用をおよぼし効果的にこれらの微生物を殺菌・滅菌処理し、空気の二次汚染を長期間に渡って防止することができる。
実施例
以下に、実施例、比較例および試験例によって本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
0.3μm単分散DOPテスト99.97%以上の高い捕集効率を有する日本無機株式会社製HEPAフィルタ−(商品名:アトモス)を、10%γーアミノプロピルトリエトキシシランのトルエン溶液に室温で12時間浸漬した後、トルエンで洗浄し、室温で風乾してシラン化したHEPAフイルターを得た。シラン化したHEPAフイルターを、室温にて6時間1%グルタルアルデヒド水溶液に浸漬処理し、シラン化したHEPAフイルター表面にアルデヒド基を導入した。その後水洗し、1%プロタミンおよび1%リゾチーム
をそれぞれ含有する50ミリモルの酢酸緩衝溶液中に24時間静置することによりプロタミンおよびリゾチームを固定化処理した。その後プロタミンおよびリゾチームを固定化処理したHEPAフイルターを500ミリモルのNaCl溶液と500ミリモルの酢酸溶液を混合して調製した緩衝溶液で更に洗浄し、風乾することによってHEPAフィルタ−への酵素の物理吸着分を取り除き、共有結合により固定化されたプロタミンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターAを調製した。
比較例1
実施例1で用いた未処理のHEPAフィルタ−を、空気浄化フィルタ−Axとする。
比較例2
実施例1で用いたHEPAフィルタ−を、実施例1と同様にしてシラン化し、その表面にアルデヒド基を導入した空気浄化フィルタ−Ayを調製した。
実施例2
実施例1において、担体としてHEPAフィルタ−にかえて東洋紡績株式会社製空調用レジンボンド不織布フィルタ−を用いたことを除いて同様にして、共有結合により固定化されたプロタミンおよびリゾチ−ムのみを残存させた空気浄化フィルタ−Bを調製した。比較例3
未処理の実施例2で用いた空調用レジンボンド不織布フィルタ−を空気浄化フィルタ−Bxとする。
比較例4
実施例2で用いた空調用レンジボンド不織布フィルタ−を、実施例2と同様にしてシラン化し、その表面にアルデヒド基を導入した空気浄化フィルタ−Byを調製した。
実施例3
実施例1において、担体としてHEPAフィルタ−にかえてセラミック繊維のシート状集合体をハニカム状に積層して構成される600セルのニチアス株式会社製ハニカム担体(商品名:ハニクル)を用いたことを除いて同様にして、共有結合により固定化されたプロタミンおよびリゾチ−ムのみを残存させた空気浄化フィルタ−Cを調製した。
比較例5
実施例3に用いた未処理のハニカム担体を空気浄化フィルタ−Cxとする。
比較例6
実施例3で用いたハニカム担体を、実施例3と同様にしてシラン化し、その表面にアルデヒド基を導入した空気浄化フィルタ−Cyを調製した。
試験例1
試料空気浄化フィルタ−ユニット(200mmX200mmX150mm)を密閉された100リットルの空中浮遊菌浄化性能試験装置内に載置し、送風機により毎分10リットルの流量で100リットル当たり1×10個の空中浮遊菌を含む空中浮遊菌浄化性能試験装置内の空気を循環させた。所定の時間循環処理した後、空中浮遊菌浄化性能試験装置内の空中浮遊菌を寒天培地に捕集し30℃の温度で120時間好気的に培養した後、被検空気100リットル中の生菌数を肉眼で算定した結果を表1〜6に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1には、実施例1並びに比較例1および2の空気浄化フィルタ−A並びにAxおよびAyをそれぞれ用い24時間循環処理した後の結果を示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2には、実施例1並びに比較例1および2の空気浄化フィルタ−A並びにAxおよびAyをそれぞれ用い2時間循環処理した後の結果を示す。
表1および表2より明らかなように、酵素を固定化処理していないHEPAフィルタ−も菌体への高い物理的捕集性能を示すが、プロタミンおよびリゾチ−ムを共有結合によって固定化処理した本発明の空気浄化フィルターは、固定化されたリゾチームにより菌体を吸着し菌体の細胞壁を溶解することでさらにその10倍以上の菌体への殺菌浄化処理性能を有することがわかる。
【0040】
【表3】

【0041】
表3には、実施例2並びに比較例3および4の空気浄化フィルタ−B並びにBxおよびByをそれぞれ用い24時間循環処理した後の結果を示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表4には、実施例2並びに比較例3および4の空気浄化フィルタ−B並びにBxおよびByをそれぞれ用い2時間循環処理した後の結果を示す。
表3および表4から明らかなように、菌体に対する補集性能が低い空調用レジンボンド不織布フィルタ−にプロタミンおよびリゾチ−ムを固定化処理した本発明の空気浄化フィルタ−は、酵素を固定化処理していない空調用レジンボンド不織布フィルタ−に比較して300倍以上の空気中の菌体への殺菌浄化処理性能を示すことがわかる。
【0044】
【表5】

【0045】
表5には、実施例3並びに比較例5および6の空気浄化フィルタ−C並びにCxおよびCyをそれぞれ用い24時間循環処理した後の結果を示す。
【0046】
【表6】

【0047】
表6には、実施例3並びに比較例5および6の空気浄化フィルタ−C並びにCxおよびCyをそれぞれ用い2時間循環処理した後の結果を示す。
表5および表6より明らかに、菌体に対する捕集性能がほとんど無いセラミック繊維のシート状集合体をハニカム状に積層して構成されるハニカム担体にプロタミンおよびリゾチ−ムを固定化処理した本発明の空気浄化フィルタ−が、酵素を固定化処理してないハニカム担体と比較して100倍以上の空気中の菌体への殺菌浄化処理性能を示すことがわかる。
試験例2
実施例1の空気浄化フィルタ−A並びに比較例1の空気浄化フィルタ−Axをそれぞれ200mmX200mmの大きさに分取し、実験用ダクト内のフィルタ−ホルダ−に載置し、送風機により毎分30リットルの風速で30リットル当たり空中浮遊菌を210個含
む空気をダクトに10分間送風した後、空気浄化フィルタ−を相対湿度60%に保持したデシケ−タ−内に室温で保存し、経時的にその一部を取り出して空気浄化フィルタ−に捕集された菌体への生残数を混釈培養法により測定し、その結果を図1に示す。図1は、縦軸に生菌数(個/cm)、横軸に経過日数を示す捕集された生菌の生残曲線を示すグラフであって、図1より明らかに、酵素を固定化処理した本発明の実施例1の空気浄化フィルタ−A上に捕集された生菌は、急速に減少し、1週間後には生存する生菌を、ほとんど検出できなかった。他方酵素を固定化処理していない比較例1の空気浄化フィルタ−Axでは、1ケ月経過しても生菌はわずかしか減少せず生残するのが認められた。即ち、酵素を固定化処理した本発明の空気浄化フィルターが、フィルタ−上に捕集された菌体を殺菌浄化処理出来ることが裏付けられた。
実施例4
北越製紙株式会社製の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる0.3μm単分散DOPテスト99%以上の捕集効率を有する準HEPAフィルター用の濾紙状担体を、10%γーアミノプロピルトリエトキシシランのトルエン溶液に室温で12時間浸漬した後、メタノールで洗浄し、室温で風乾してシラン化した濾紙状担体を得た。シラン化した濾紙状担体を、室温にて1時間2.5%グルタルアルデヒド水溶液に浸漬処理し、シラン化した濾紙状担体にアルデヒド基を導入した。アルデヒド基を導入した濾紙状担体を水洗し、次に500ミリモルのNaCl溶液と500ミリモルの酢酸溶液を混合して調製したpH7の緩衝液でさらに洗浄した後、1%リゾチームを含有する水溶液(S1)中に3時間静置することによりリゾチームの固定化処理を行った。リゾチームを固定化処理した濾紙状担体を、500ミリモルのNaCl溶液と500ミリモルの酢酸溶液を混合して調製したpH7の緩衝溶液(S2)で更に洗浄し、風乾することによって濾紙状担体への酵素の物理吸着分を取り除き、共有結合により固定化されたリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターD1を調製した。
実施例5
実施例4において、水溶液(S1)として1%プロタミンおよび1%リゾチームをそれぞれ含有する水溶液を用いたことを除いて以下同様にして共有結合により固定化されたプロタミンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターD2を調製した。
実施例6
実施例4において、水溶液(S1)として0.2%グルカンおよび1%リゾチームをそれぞれ含有する水溶液を用いたことを除いて以下同様にして共有結合により固定化されたグルカンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターD3を調製した。
実施例7
実施例4において、水溶液(S1)として1%プロタミン、0.2%グルカンおよび1%リゾチームをそれぞれ含有する水溶液を用いたことを除いて以下同様にして共有結合により固定化されたプロタミン、グルカンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターD4を調製した。
比較例7
実施例4で用いた撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用の未処理の濾紙状担体を、空気浄化フィルタ−Dxとする。
実施例8
北越製紙株式会社製の通常に用いられている撥水処理を施したボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用の濾紙状担体を、実施例4と同様にして共有結合により固定化されたリゾチームのみを残存させた空気浄化フィルタ−E1を調製した。
実施例9
実施例8において、水溶液(S1)として1%プロタミンおよび1%リゾチームをそれぞれ含有する水溶液を用いたことを除いて以下同様にして共有結合により固定化されたプロタミンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターE2を調製した。
実施例10
実施例8において、水溶液(S1)として0.2%グルカンおよび1%リゾチームをそ
れぞれ含有する水溶液を用いたことを除いて以下同様にして共有結合により固定化されたグルカンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターE3を調製した。
実施例11
実施例8において、水溶液(S1)として1%プロタミン、0.2%グルカンおよび1%リゾチームをそれぞれ含有する水溶液を用いたことを除いて以下同様にして共有結合により固定化されたプロタミン、グルカンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターE4を調製した。
比較例8
実施例8で用いた撥水処理を施したボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用の未処理の濾紙状担体を、空気浄化フィルタ−Exとする。
試験例3
実施例4、実施例5、実施例6および実施例7において、固定化処理後の使用済水溶液(S1A)中の残存するプロタミンおよび/またはリゾチームの量と固定化処理した濾紙状担体を洗浄した緩衝溶液(S2A)中に溶出したプロタミンおよび/またはリゾチームの量をバイオ・ラッド社製蛋白質測定キットを用い島津製作所製分光光度計UV-2100PCを使用して595nmの波長で測定し、調製された空気浄化フィルタ−に共有結合により固定化されたプロタミンおよび/またはリゾチームの固定化率(%)を算出し、その結果を表7に示す。
試験例4
毎分20リットルの流量で高純度炭酸ガスを液化ボンベより導入し、毎分0.1ミリリットルの割合で枯草菌(ATCC 6633)菌体培養溶液(菌数:1×10個/ミリリットル)を噴霧化し、この噴霧ガスをHEPAフィルタ−を通過した毎分80リットルの流量の清浄空気と混合し試料ガスを調製した。この試料ガスを、試料空気浄化フイルターを設置した空中遊菌測定装置に毎分100リットルの流量で導入し、導入時間を2時間および24時間に設定し殺菌性能加速実験を行った。各導入時間の最終1時間にわたって、試料空気浄化フイルター通過前の試料ガス中の25%と通過後の試料ガス中の25%を入口側の捕集溶液および出口側の捕集液にそれぞれ捕集し、おのおの捕集液の600倍希釈溶液10ミリリットルをそれぞれ培地に移植し、37℃の温度で48時間好気的に培養した後の試料空気浄化フイルター通過前のコロニー数(C0)と試料空気浄化フイルター通過後のコロニー数(Cs)をそれぞれ計測し、各試験時間における試料空気浄化フイルター通過後の試料ガス中の菌体の菌残存率C(%)を次式で求めた。
【0048】
(Cs/C0)×100=C(%)
その結果を表7〜11に示す。
試験例5
試験例4において、おのおの試料ガスの導入終了後、試料ガスにかえてHEPAフィルタ−を通過した清浄空気を毎分100リットルの流量で、試料空気浄化フイルターを設置した空中遊菌測定装置に1時間導入した後、直ちに空中遊菌測定装置より試料空気浄化フイルターを取り外し、試料空気浄化フイルターの上部、下部、左部、右部および中央部の五カ所より各々1cmの大きさの部分を分取し、これを各々直接培地に移動し、37℃の温度で48時間好気的に培養した後のコロニー数を計測し、その合計を試料空気浄化フイルターの5cm当たりの生存菌数として、各試験時間毎の結果を表7〜11に示す。
【0049】
【表7】

【0050】
表7に示された酵素の固定化率(%)の値より明らかなように、実施例4〜7の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用濾紙状担体によって構成される空気浄化フィルタ−D1、D2、D3およびD4は、実施例8〜11の撥水処理を施したボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用濾紙状担体によって構成される空気浄化フィルタ−E1、E2、E3およびE4に比較して、共有結合による酵素の固定化量が10倍以上であることがわかる。すなわち、撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維には、酵素を共有結合によって多量に固定化できることが裏付けられた。
【0051】
また、表7には、実施例4〜11並びに比較例7および8の空気浄化フィルタ−D1、D2、D3、D4、E1、E2、E3、およびE4並びにDxおよびExをそれぞれ用い試験例4において求めた空気浄化フイルター通過後の試料ガス中の菌残存率(%)の結果を示す。表7に示される菌残存率の値より明らかなように、比較例7および8の酵素を固定化処理していない準HEPAフィルタ−用濾紙状担体によって構成される空気浄化フィルタ−DxおよびExも菌体の高い捕集性能を示すが、実施例8〜11の撥水処理ボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用濾紙状担体によって構成される本発明の空気浄化フィルタ−E1、E2、E3およびE4は、その約8倍の菌体の殺菌浄化処理性能を有し、さらに実施例4〜7の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維から
なる準HEPAフィルタ−用濾紙状担体によって構成される本発明の空気浄化フィルタ−D1、D2、D3およびD4は、300倍以上の菌体の殺菌浄化処理性能を有することが裏付けられた。
【0052】
さらに、表7には、実施例4〜11並びに比較例7および8の空気浄化フィルタ−D1、D2、D3、D4、E1、E2、E3およびE4並びにDxおよびExについて試験例5で求めた空気浄化フイルター上での5cm当たりの生存菌数の値を示す。表7に示される試料ガス導入2時間後の空気浄化フイルターの生存菌数の値より明らかなように、比較例7および8の酵素を固定化処理していない準HEPAフィルタ−用濾紙状担体によって構成される空気浄化フィルタ−DxおよびExは殺菌浄化性能を具備していないため捕集した菌体が殺菌浄化されず空気浄化フィルタ−上に多量の菌体が生存することがわかる。これに対して実施例8〜11の酵素を固定化処理した撥水処理ボロン・シリカガラス繊維からなる本発明の空気浄化フィルタ−E1、E2、E3およびE4は、酵素を固定化処理していない比較例7および8の空気浄化フィルタ−DxおよびExと比較して6倍以上の空気浄化フィルタ−に捕集した菌体の殺菌浄化処理性能を有し、さらに実施例4〜7の酵素を固定化処理した撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルタ−用濾紙状担体によって構成される本発明の空気浄化フィルタ−D1、D2、D3およびD4は、100倍以上の空気浄化フィルタ−に捕集した微生物の殺菌浄化処理性能を有し、空気浄化フィルタ−に捕集された菌体が急速に減少することが裏付けられた。さらに本発明の空気浄化フィルタ−D1、D2、D3およびD4は、試料ガス導入24時間後においても空気浄化フイルター上での殺菌浄化処理性能が依然として維持されており、空気浄化フィルタ−に捕集された微生物が長期間に渡って効率よく殺菌浄化処理されていることが証明された。
【0053】
以上の試験例3、4および5結果より、酵素を固定化処理した本発明の空気浄化フィルタ−は、共有結合により固定化されたリゾチームにより菌体を吸着し菌体の細胞壁を溶解することで高い殺菌浄化性能を維持し、さらに多量のリゾチームを共有結合にて固定化することが長期間に渡ってより高い殺菌浄化性能を維持できることを証明した。
【0054】
実施例4によって得られた本発明の酵素を固定化した空気浄化フィルターD1および比較例7の酵素を固定化していない従来の空気フィルター浄化Dxに捕集された菌体の状態を電子顕微鏡写真図3および図4に示す。これらの電子顕微鏡写真は、日立製作所社製S−4000走査型電子顕微鏡を使用し加速電圧5KVで実施したものである。
【0055】
図3は、本発明のリゾチ−ムを固定化処理した空気浄化フィルターに捕集された枯草菌の細胞壁が直接溶かされている状態を示す。一方、図4には、従来の空気浄化フィルターには酵素が固定されていないため菌体が殺菌されることなく捕集されたそのままの状態であることを示す。これらの電子顕微鏡写真からも捕集された菌体の状態の差異は明らかであり、空気浄化フィルターに固定化された酵素がフィルター上に捕集した菌体に溶菌作用を及ぼし菌体を殺菌・滅菌除去できることが裏付けられた。
実施例12
北越製紙株式会社製の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる0.3μm単分散DOPテスト99%以上の捕集効率を有する準HEPAフィルター用の濾紙状担体を、500ミリモルのpH7のリン酸緩衝液に室温で30分間浸漬処理した後、取り出して余分な付着水分を取り除いた濾紙状担体を、1%リゾチームを含有する水溶液(S3)中に室温で3時間静置することによりリゾチームをイオン結合反応により濾紙状担体に固定化処理した。リゾチームを固定化処理した濾紙状担体を500ミリモルのpH7のリン酸緩衝溶液(S4)で更に洗浄し、風乾することによって、濾紙状担体の物理吸着による酵素を取り除き、イオン結合により固定化されたリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターFを調製した。
比較例9
実施例12で用いた撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用の未処理の濾紙状担体を、空気浄化フィルタ−Fxとする。
試験例6
実施例12においてイオン結合反応による固定化処理後の使用済水溶液(S3A)中のの残存するリゾチームの量と固定化処理した濾紙状担体を洗浄した緩衝溶液(S4A)中に溶出したリゾチームの量をバイオ・ラッド社製蛋白質測定キットを用い島津製作所製分光光度計UV-2100PCを使用して595nmの波長で測定し、調製された空気浄化フィルタ−に共有結合により固定化されたプロタミンおよびリゾチームの固定化率(%)を算出し、その結果を表8に示す。
【0056】
【表8】

【0057】
表8に示された酵素の固定化率(%)の値より明らかなように、実施例12の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用濾紙状担体によって構成される空気浄化フィルタ−Fは、イオン結合によっても多量のリゾチ−ムが有効に固定化処理できることがわかる。
【0058】
また、表8には、実施例12および比較例9の空気浄化フィルタ−FおよびFxをそれぞれ用い試験例4において求めた殺菌性能加速試験による空気浄化フイルター通過後のガス中の菌残存率(%)の結果を示す。表8に示される菌残存率の値より明らかなように、実施例12のリゾチ−ムをイオン結合によって固定化処理した撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルタ−用濾紙状担体によって構成される本発明の空気浄化フィルタ−Fは、比較例9の空気浄化フイルターFxに比較して、約300倍以上の菌体の殺菌浄化処理性能を有することが裏付けられた。
【0059】
さらに、表8には、試料ガス導入2時間後の試験空気浄化フイルター上での実施例13および比較例9の空気浄化フィルタ−FおよびFxについて試験例5で求めた空気浄化フイルター上での5cm当たりの生存菌数の値を示す。表8に示される生存菌数の値より明らかなように、実施例12の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる本発明の空気浄化フィルタ−Fが、比較例9と比較して100倍以上の空気浄化フィルタ−に捕集した菌体の殺菌浄化処理性能を有することがわかる。すなわち、本発明のリゾチ−ムをイオン結合によって固定化処理した空気浄化フィルタ−F上に捕集された菌体が、急
速に減少することが裏付けられた。さらに本発明の空気浄化フィルタ−Fは、試料ガス導入120時間後でも空気浄化フイルター上での殺菌浄化処理性能は維持され、空気浄化フィルタ−に捕集された菌体に長期間に渡って殺菌効果を示すことが明白となった。
【0060】
以上の試験例4、5および6の結果より、本発明の空気浄化フィルタ−Fは、先の共有結合と同様にイオン結合においても固定化されたリゾチームにより菌体を吸着し菌体の細胞壁を溶解することで高い殺菌浄化性能を維持し、さらに多量のリゾチーム等を有効にイオン結合にて固定化することが長期間に渡ってより高い殺菌浄化性能を維持できることを証明した。
実施例13
−NH官能基を有する平均径30μmのイオン交換繊維不織布フィルタ−を、pH7の500ミリモルのリン酸緩衝液に室温で30分間浸漬した後、取り出して余分な付着水分を取り除いたイオン交換繊維不織布フィルタ−を、2.5%グルタルアルデヒド水溶液に室温で1時間浸漬処理してイオン交換繊維不織布フィルタ−にアルデヒド基を導入した。アルデヒド基を導入したイオン交換繊維不織布フィルタ−を、500ミリモルのNaCl溶液と500ミリモルの酢酸溶液を混合して調製したpH7の緩衝液で更に洗浄した後、1%ポリリジンおよび1%リゾチームをそれぞれ含有する水溶液(S5)中に3時間静置することによりプロタミンおよびリゾチームの固定化処理を行った。ポリリジンおよびリゾチームを固定化処理したイオン交換繊維不織布フィルタ−を、100ミリモルのNaCl溶液と100ミリモルの酢酸溶液を混合して調製したpH7の緩衝溶液(S6)で更に洗浄し、風乾することによってイオン交換繊維不織布フィルタ−への酵素の物理吸着分を取り除き、共有結合により固定化されたポリリジンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターGを調製した。
比較例10
実施例13で用いた−NH官能基を有する平均径30μmの未処理のイオン交換繊維不織布フィルタ−を、空気浄化フィルタ−Gxとする。
実施例14
−COOH官能基を有する平均径30μmのイオン交換繊維不織布フィルタ−を、pH7の500ミリモルのリン酸緩衝液に室温で30分間浸漬処理した後、取り出して余分な付着水分を取り除いたイオン交換繊維不織布フィルタ−を、1%ポリリジンおよび1%リゾチームを含有する水溶液(S7)中に室温で3時間静置することによりポリリジンおよびリゾチームのイオン結合反応による固定化処理を行った。ポリリジンおよびリゾチームを固定化処理したイオン交換繊維不織布フィルタ−を、pH7の500ミリモルのリン酸緩衝溶液(S8)で更に洗浄し、風乾することによってイオン交換繊維不織布フィルタ−への酵素の物理吸着分を取り除き、イオン結合により固定化されたポリリジンおよびリゾチームのみを残存させた空気浄化フイルターHを調製した。
比較例11
実施例14で用いた−COOH官能基を有する平均径30μmの未処理のイオン交換繊維不織布フィルタ−を、空気浄化フィルタ−Hxとする。
試験例7
実施例13および14において共有結合およびイオン結合反応による固定化処理後の使用済水溶液(S5AおよびS7A)中の残存するポリリジンおよびリゾチームの量と固定化処理した濾紙状担体を洗浄した緩衝溶液(S6AおよびS8A)中に溶出したポリリジンおよびリゾチームの量をバイオ・ラッド社製蛋白質測定キットを用い島津製作所製分光光度計UV-2100PCを使用して595nmの波長で測定し、調製された空気浄化フィルタ−に共有結合およびイオン結合により固定化されたポリリジンおよびリゾチームの固定化率(%)を算出し、その結果を表9に示す。
【0061】
【表9】

【0062】
表9より明らかなように、実施例13の−NH官能基を有するイオン交換繊維不織布フィルタ−からなる本発明の空気浄化フイルターGおよび−COOH官能基を有する平均径30μmのイオン交換繊維不織布フィルタ−Hには、多量のポリリジンおよびリゾチ−ムが有効に結合して固定化されていることがわかる。
【0063】
また、表9には、実施例13および14並びに比較例10および11の空気浄化フィルタ−GおよびH並びにGxおよびHxをそれぞれ用い試験例4において求めた殺菌性能加速試験による空気浄化フイルター通過後のガス中の菌残存率(%)の結果を示す。表9に示される菌残存率の値より明らかなように、実施例7および8のリゾチ−ム等を共有結合およびイオン結合によって固定化処理した表9に示される菌残存率の値より明らかなように、酵素を固定化処理していない比較例10および11の官能基を有するイオン交換繊維不織布フィルタ−からなる空気浄化フィルタ−GxおよびHxと比較して実施例13および14の官能基を有するイオン交換繊維不織布フィルタ−からなる本発明の空気浄化フィルタ−GおよびHが、格段の菌体の殺菌浄化処理性能を有することが裏付けられた。
【0064】
さらに、表9には、試料ガス導入2時間後の空気浄化フイルター上での実施例13および14並びに比較例10および11の空気浄化フィルタ−GおよびH並びにGxおよびHxについて試験例5で求めた空気浄化フイルター上での5cm当たりの生存菌数の値を示す。表9に示される生存菌数の値より明らかなように、実施例13および14のポリリジンおよびリゾチ−ムを均一に固定化されたイオン交換繊維不織布フィルタ−からなる本発明の空気浄化フイルターGおよびHは、空気浄化フィルタ−に捕集した菌体の殺菌浄化処理性能においても秀逸の性能を示すことが裏付けられた。さらに本発明の空気浄化フィルタ−GおよびHは、試料ガス導入120時間後でも空気浄化フイルター上での殺菌浄化処理性能は維持され、空気浄化フィルタ−に捕集された菌体に長期間に渡って殺菌効果を示すことが明白となった。
【0065】
以上の試験例4、5および7の結果より、本発明の空気浄化フィルタ−GおよびHは、共有結合およびイオン結合において固定化されたリゾチーム等により菌体を吸着し菌体の
細胞壁を溶解することで高い殺菌浄化性能を維持し、さらに多量のリゾチーム等を有効に共有結合およびイオン結合にて固定化することが長期間に渡ってより高い殺菌浄化性能を維持できることを証明した。
比較例12
0.3μm単分散DOPテスト99%以上の捕集効率を有する北越製紙株式会社製の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用濾紙状担体を、磐田化学株式会社製ポリイタコン酸の50%水溶液を水で10倍に希釈した水溶液に室温で30分間浸漬処理した後、取り出して余分な付着水分を取り除いた濾紙状担体を、60℃の温度に保持した乾燥器中で1時間乾燥し空気浄化フィルタ−Ixを調製した。得られた空気浄化フィルタ−Ixを日本電子社製電子顕微鏡JSMー5300および日本電子社製フーリエ変換赤外分光光度計JIR−WINSPEC50を用いて同定した結果、−C00H官能基ポリマーが均一にコーテングされていることが確認された。
実施例15
比較例12で調製した−COOH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−Ixを、pH7の100ミリモルのリン酸緩衝液に室温で30分間浸漬処理した後、取り出して余分な付着水分を取り除いた−COOH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フイルターIxを、0.5%リゾチームおよび0.5%キチナーゼを含有する水溶液(S9)中に室温で3時間静置することによりリゾチームおよびキチナーゼのイオン結合反応による固定化処理を行った。リゾチームおよびキチナーゼを固定化処理した空気浄化フイルターを、pH7の100ミリモルのリン酸緩衝溶液(S10)で更に洗浄し、風乾することによって濾紙状担体への酵素の物理吸着分を取り除き、イオン結合により固定化されたリゾチームおよびキチナーゼのみを残存させた空気浄化フイルターIを調製した。
比較例13
0.3μm単分散DOPテスト99%以上の捕集効率を有する北越製紙株式会社製の撥水処理を施さないボロン・シリカガラス繊維からなる準HEPAフィルター用濾紙状担体を、日東紡績株式会社製ポリアリルアミンの50%水溶液を水で10倍に希釈した水溶液に室温で30分間浸漬処理した後、取り出して余分な付着水分を取り除いた濾紙状担体を、60℃の温度に保持した乾燥器中で1時間乾燥し空気浄化フィルタ−Jxを調製した。得られた空気浄化フィルタ−Jxを日本電子社製電子顕微鏡JSMー5300および日本電子社製フーリエ変換赤外分光光度計JIR−WINSPEC50を用いて同定した結果、−NH官能基ポリマーが均一にコーテングされていることが確認された。
実施例16
比較例13で調製した−NH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−Jxを、pH7の500ミリモルのリン酸緩衝液に室温で30分間浸漬処理した後、2.5%グルタルアルデヒド水溶液に室温で1時間浸漬処理してNH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−Jxにアルデヒド基を導入した。アルデヒド基を導入したNH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−に500ミリモルのNaCl溶液と500ミリモルの酢酸溶液を混合して調製したpH7の緩衝液で更に洗浄した後、0.5%リゾチームおよび0.5%キチナーゼを含有する水溶液(S11)中に3時間静置することによりリゾチームおよびキチナーゼの固定化処理を行った。リゾチームおよびキチナーゼを固定化処理したアルデヒド基を導入したNH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−を、500ミリモルのNaCl溶液と500ミリモルの酢酸溶液を混合して調製したpH7の緩衝溶液(S12)で更に洗浄し、風乾することによってアルデヒド基を導入したNH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−への酵素の物理吸着分を取り除き、共有結合により固定化されたリゾチームおよびキチナーゼのみを残存させた空気浄化フイルターJを調製した。
試験例8
実施例15および16においてイオン結合および共有結合による固定化処理後の使用済
水溶液(S9およびS11)中の残存するリゾチームおよびキチナーゼの量と固定化処理した濾紙状担体を洗浄した緩衝溶液(S10およびS12)中に溶出したリゾチームおよびキチナーゼの量をバイオ・ラッド社製蛋白質測定キットを用い島津製作所製分光光度計UV-2100PCを使用して595nmの波長で測定し、調製された空気浄化フィルタ−に共有結合により固定化されたリゾチームおよびキチナーゼの固定化率(%)を算出し、その結果を表10に示す。
【0066】
【表10】

【0067】
表10より明らかなように、実施例15の−COOH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−からなる本発明の空気浄化フイルターIおよび−NH官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−Jには、多量のリゾチ−ムおよびキチナーゼが均一に結合して固定化されていることがわかる。
【0068】
また、表10には、実施例15および16並びに比較例12および13の空気浄化フィルタ−IおよびJ並びにIxおよびJxをそれぞれ用い試験例4において求めた殺菌性能加速試験による空気浄化フイルター通過後のガス中の菌残存率(%)の結果を示す。表10に示される菌残存率の値より明らかなように、実施例9および10のリゾチ−ムおよびキチナーゼをイオン結合および共有結合によって固定化処理した表10に示される菌残存率の値より明らかなように、酵素を固定化処理していない比較例12および13の官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−からなる空気浄化フィルタ−IxおよびJxと比較して実施例15および16の官能基ポリマーが均一にコーテングされた空気浄化フィルタ−からなる本発明の空気浄化フィルタ−IおよびJが、格段の菌体の殺菌浄化処理性能を有することが裏付けられた。
【0069】
さらに、表10には、試料ガス導入2時間後の試験空気浄化フイルター上での実施例15および16並びに比較例12および13の空気浄化フィルタ−IおよびJ並びにIxおよびJxについて試験例5で求めた空気浄化フイルター上での5cm当たりの生存菌数の値を示す。表10に示される生存菌数の値より明らかなように、実施例15および16のリゾチ−ムおよびキチナーゼを均一に固定化されたポリマーが均一にコーテングされた
空気浄化フィルタ−からなる本発明の空気浄化フイルターIおよびJは、空気浄化フィルタ−に捕集した菌体の殺菌浄化処理性能においても秀逸の性能を示すことが裏付けられた。さらに本発明の空気浄化フィルタ−IおよびJは、試料ガス導入24時間後でも試験空気浄化フイルター上での殺菌浄化処理性能は維持され、空気浄化フィルタ−に捕集された菌体に長期間に渡って殺菌効果を示すことが明白となった。
【0070】
以上の試験例4、5および8の結果より、本発明の空気浄化フィルタ−IおよびJは、共有結合およびイオン結合において固定化されたリゾチーム等により菌体を吸着し菌体の細胞壁を溶解することで高い殺菌浄化性能を維持し、さらに多量のリゾチーム等を有効に共有結合およびイオン結合にて固定化することが長期間に渡ってより高い殺菌浄化性能を維持できることを証明した。
試験例9
試験例4および試験例5において、菌体の種類を枯草菌(ATCC 6633)に加えて、ルテウス菌(ATCC 9341)、黄色ブドウ球菌(IFO 13276)、大腸菌(ATCC 10536)、ビブリオ菌(IFO 12970)および青かびの一種ペニシルウム ロックフォルティ(IFO 5459)について2時間毎の試料空気フィルターの5cm当たりの生存菌数を同様に求めて、その結果を表11に示す。
【0071】
【表11】

【0072】
(注)DX:フィルターのみ
D1:フィルターに固定化、リゾチーム
D2:フィルターに固定化、リゾチーム+プロタミン
D3:フィルターに固定化、リゾチーム+グルカン
D4:フィルターに固定化、リゾチーム+プロタミン+グルカン

表11より明らかなように、リゾチ−ムにプロタミンを組み合わせた実施例5の空気浄化フィルターD2、リゾチ−ムにグルカンを組み合わせた実施例6の空気浄化フィルターD3およびリゾチ−ムにプロタミンおよびグルカンを組み合わせた実施例7の空気浄化フィルターD4は、リゾチ−ムのみを固定化処理した実施例4の空気浄化フィルターD1と比べてグラム陰性菌である大腸菌やビブリオ菌、並びにカビの1種であるペニシリウム・ロックフォルティに対する殺菌効果の向上が認められる。すなわち、酵素以外の殺菌作用を有する蛋白質・ペプチドと組み合わせて用いるか、多糖類と組み合わせて用いることによって、空気浄化フィルターの微生物に対する殺菌・滅菌除去能力を向上させることがで
きることが裏付けられた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の空気浄化フィルターを用いることにより、従来のフィルタ−では浄化処理できなかった空気中に浮遊するバクテリア、真菌等の微生物を効率よく吸着させて、微生物の細胞壁を直接溶し殺菌させることにより高い殺菌浄化性能と、長期間に渡って空気を殺菌浄化処理することを可能にし、さらに、フィルタ−上に捕集した微生物も殺菌・滅菌除去できるのでフィルタ−上での捕集した微生物の増殖を防止し、微生物による担体の劣化と微生物の飛散による二次汚染を防ぐことができる。このことは食品分野、化粧品分野、精密電子分野および医療分野等で微生物除去のため致し方なく使用されている粉塵微粒子除去を目的とした超高性能および高性能フイルターであるULPAおよびHEPAフイルターは送風の圧損が大きく電気エネルギーの消費量が莫大である。そこで本発明の空気浄化フィルターを用いることにより、数段階クラス下げた低圧損のフイルターが使用可能となり電気エネルギー消費が10分の1程度以下となることで環境負荷低減フイルターとしての機能を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来の空気浄化フィルター(比較例1の空気浄化フィルターX)と本発明の空気浄化フィルター(実施例1の空気浄化フィルターA)とを用いて、各々に捕集された微生物の生残数の経時変化を示すグラフである。
【図2】各試験例で用いた空気浄化フィルターの効果を試験するために用いた空中遊菌測定装置の構造を表わした図である。
【図3】本発明の空気浄化フィルター(実施例4の空気浄化フィルターD1)に捕集された菌体の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】従来の空気浄化フィルター(比較例7の空気浄化フィルターDx)に捕集された菌体の状態を示す電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)よりなる繊維群:
(イ)−NHR(ここでRはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチルのうちのいずれかのアルキル基)、−NH、−CNH、−CHO、−COOH、−OHよりなる官能基群から選択される、少なくとも1種の官能基を有するポリマーでコーテイングした、セルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;
(ロ)繊維表面をシラン処理した後、−CHO基を導入したセルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;
(ハ)繊維表面をリン酸処理したセルロース繊維、合成繊維またはガラス繊維;
(ニ)−NH基または−COOH基を含有するイオン交換繊維;
から選択される少なくとも1種の繊維で構成されたフィルター濾材に、溶菌酵素を、共有結合またはイオン結合によって固定化した空気浄化フィルター。
【請求項2】
ガラス繊維がボロン・シリカガラス繊維である、請求項1に記載の空気浄化フィルター。
【請求項3】
空気中の微生物を捕集するフィルターである、請求項1または2に記載の空気浄化フィルター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の空気浄化フィルターに、空気を通し、空気中に含まれる微生物をフィルター上に捕集し、捕集した微生物を固定化した溶菌酵素により、フィルター上で殺菌する、空気浄化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−203295(P2007−203295A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60141(P2007−60141)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【分割の表示】特願平10−508682の分割
【原出願日】平成9年7月24日(1997.7.24)
【出願人】(000226219)日揮ユニバーサル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】