空気浄化装置
【課題】長期間にわたってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供する。
【解決手段】空気浄化装置は、空気の流れを形成するための外枠部材1と、外枠部材1における空気の流れを促進するように配置された導入ファン5および放出ファン6と、外枠部材1の内側に配置された放電素子2aとを備える。放電素子2aよりも空気の流れの下流側に配置され、空気中に存在するオゾンを除去する作用を有するオゾン除去触媒11,12を備える。オゾン除去触媒11,12に対する放電素子2aの配置を変更するための駆動装置15を備える。
【解決手段】空気浄化装置は、空気の流れを形成するための外枠部材1と、外枠部材1における空気の流れを促進するように配置された導入ファン5および放出ファン6と、外枠部材1の内側に配置された放電素子2aとを備える。放電素子2aよりも空気の流れの下流側に配置され、空気中に存在するオゾンを除去する作用を有するオゾン除去触媒11,12を備える。オゾン除去触媒11,12に対する放電素子2aの配置を変更するための駆動装置15を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、住宅の密閉度が高くなることにより、室内の空気が滞留しやすい環境になりつつある。このような環境の中で、低濃度のVOC(Volatile Organic Compounds)が問題となっている。空気中に存在するVOCが人体に与える影響については、近年大きな社会問題となっている。特に、人が生活する住宅環境においては、VOCが化学物質過敏症(シックハウス症候群)の原因となっており、VOCを効果的に除去する技術の確立が急務となっている。
【0003】
ここで、VOCは、揮発性有機化合物の総称であり、種類は非常に多い。VOCには、厚生労働省が目標数値を規定している物質だけでも14種類ある。たとえば、代表的なものだけでも、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、アンモニア、クロロホルム、パラジクロロベンゼン、スチレン、ノナナール、n−テトラデカン、エチルベンゼンおよびスチレン等が挙げられる。これらの化学物質は古くから住宅関係の建築材料や塗料や接着剤などとして広く用いられている。
【0004】
住宅の室内空間においては、これらが揮発することにより人体に対して悪影響を与える場合がある。VOCの化学物質は、揮発することにより常温の室内空間にある程度の濃度(極低濃度であることが多い)で浮遊する。この浮遊している成分が、シックハウス症候群の主原因となっている。したがって、これらのVOCを先ず除去して、無害化する技術を確立することが、化学物質過敏症(シックハウス症候群)の解決に向けた当面の課題になっている。
【0005】
ここで、空気中に存在するVOCを除去するための方法として、放電現象による方法が古くから知られている。放電により発生するラジカル、イオン、およびオゾンがVOCの除去に効果的に作用している。たとえば、空気中に存在するVOCは、放電により酸化反応が生じて分解され、空気中から除去される(たとえば、特開2000−135281号公報)。
【0006】
放電現象を用いることにより、空気中に存在するVOCが除去されるので、化学物質過敏症(シックハウス症候群)となる危険性を排除することが可能である。放電により生じるオゾンは、VOCを除去することに対しては効果を示す。しかし、オゾン自体は不快な臭いを有し、また、人体に対する毒性を有する。したがって、オゾンについてはVOCを除去する役割を終えた後は、速やかに除去されることが好ましい。放電によって生じるオゾンの除去方法としては、触媒を用いることが効果的である(たとえば、特開2000−5628号公報参照)。
【0007】
放電現象により発生するオゾンを除去するためのオゾン除去触媒としては、各種の触媒が知られている。たとえば、オゾン除去触媒として、酸化銅−酸化マンガン系などの酸化物系触媒が知られている。または、白金などをシリカゲルなどの成型担体に担持させた貴金属系触媒が知られている。
【0008】
図14は、空気中のVOCを除去するための、従来の技術に基づく一の空気浄化装置の概略図である。空気浄化装置は、多くの場合、外枠部材101に各種の構成物が取り付けられている。この空気浄化装置は、外枠部材101の内側にVOCを除去するための放電素子102と、放電素子102のための電源108とを備える。この空気浄化装置は、放電現象により発生するオゾンを除去するためのオゾン除去触媒104と、オゾン除去触媒104を保持するための触媒保持部材103とを備える。
【0009】
この空気浄化装置は、矢印110に示すように内側にVOCを含む空気を送るための導入ファン105と、矢印111に示すように外部に空気を放出するための放出ファン106とを備える。この空気浄化装置においては、内側で空気中のVOCは除去され、VOCが除去された空気が放出される。
【0010】
図15に、従来の技術に基づく他の空気浄化装置の概略断面図を示す。他の空気浄化装置においては、放電素子102の電源108が、外枠部材101の外側に配置されている。
【特許文献1】特開2000−135281号公報
【特許文献2】特開2000−5628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図14および図15に示す従来の技術に基づく空気浄化装置においては、使用によりオゾン除去触媒が劣化する。すなわち、オゾン除去触媒には、寿命があり、放電素子を長時間に亘って駆動し続けると、オゾン除去性能が低下する。
【0012】
オゾン除去性能が低下する原因としては、いくつかの原因が考えられている。たとえば、上記のオゾン除去触媒のうち、マンガン系触媒については、長時間に亘って多量のオゾンを除去し続けるとオゾン除去触媒の主成分であるマンガン酸化物中の酸素原子の存在割合が増加する。酸素原子の存在割合が増加することによりオゾン除去性能が低下することが大きな原因と考えられている。
【0013】
オゾン除去触媒のオゾン除去性能が低下すると、放電素子によって生じたオゾンが、オゾン除去触媒で効果的に除去されなくなる。このため、空気浄化装置から、オゾンが完全に除去されずに、そのまま室内空間に放出される場合がある。オゾンが室内に放出されると不快な臭いが生じる。または、人体への影響が懸念される。
【0014】
従来の技術においては、オゾン除去触媒の劣化によりオゾンが室内空間に放出されることを抑制するために、いくつかの方法が提案されてきた。たとえば、第1の方法として、オゾン除去触媒のオゾン除去性能が劣化する前に、新しいものに交換する方法が考えられている。この方法によれば、オゾンを除去するための十分な性能を有するオゾン除去触媒を常に使用することができ、室内空間へのオゾンの放出を効果的に抑制することができる。しかし、この方法においては、オゾン除去触媒を新しいものに取替える頻度が高くなり、手間がかかるという問題があった。また、空気浄化装置の性能を維持するための費用が高くなってしまうという問題があった。
【0015】
また、第2の方法としては、オゾン除去触媒の寿命を長くするため、除去を行なうオゾンの量を少なくする方法が考えられる。このために、オゾンが生じる放電素子の駆動条件を変更して、オゾンの発生量を少なくすることが考えられる。オゾンの発生量が減少すれば、オゾン除去触媒が処理すべき量も少なくなるため、オゾン除去触媒の寿命は長期化する。しかしながら、オゾンの発生量が少なくなると、VOCを除去する性能自体が低下してしまうという問題がある。すなわち、本来求められるVOCの除去を効果的に行なうことができないという問題があった。
【0016】
本発明は、長期間にわたってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に基づく空気浄化装置は、空気の流れを形成するための枠部材と、上記枠部材における上記空気の流れを促進するように配置されたファンと、上記枠部材の内側に配置された放電素子とを備える。上記放電素子よりも上記空気の流れの下流側に配置され、上記空気に存在するオゾンを除去する作用を有するオゾン除去触媒を備える。上記オゾン除去触媒に対する上記放電素子の配置を変更するための駆動手段を備える。
【0018】
上記発明において好ましくは、上記駆動手段は、上記空気の流れの方向から見たときに、上記オゾン除去触媒の配置されている領域のほぼ全体に亘って上記放電素子を動かすように形成されている。
【0019】
上記発明において好ましくは、上記駆動手段は、上記放電素子を揺動させるための揺動手段と、上記放電素子を回転させるための回転手段とを含む。
【0020】
上記発明において好ましくは、上記駆動手段は、上記放電素子を直線的に平行移動させるように形成された平行移動手段を含む。
【0021】
上記発明において好ましくは、上記オゾン除去触媒を内部に保持するための触媒保持部材を備える。上記触媒保持部材は、上記空気の流れに垂直な方向に亘って、ほぼ均一な厚さで上記オゾン除去触媒を保持するように形成されている。
【0022】
上記発明において好ましくは、上記空気に含まれるオゾンを検出するためのオゾン検知センサを備える。上記オゾン検出センサは、上記空気の流れの方向において、上記オゾン除去触媒の下流側に配置されている。
【0023】
上記発明において好ましくは、上記オゾン検知センサは、半導体センサを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、長期間にわたってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施の形態1)
図1から図9を参照して、本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態における空気浄化装置の概略図である。本実施の形態における空気浄化装置は、空気の流れを形成するための枠部材として外枠部材1を備える。外枠部材1は、円筒状に形成されている。外枠部材1は、内側が空洞になるように形成されている。外枠部材1は、矢印23に示すように内側に空気を流すことができるように形成されている。
【0027】
本実施の形態における空気浄化装置は、外枠部材1における空気の流れを促進するように配置されたファンを備える。本実施の形態においては、ファンとして、導入ファン5および放出ファン6が配置されている。導入ファン5は、外枠部材1の空気の入口部分に配置されている。放出ファン6は、外枠部材1の空気の放出部分に配置されている。導入ファン5は、矢印20に示すように、外枠部材1の内側に空気を送り込むことができるように形成されている。放出ファン6は、矢印21に示すように、外枠部材1から空気を放出することができるように形成されている。導入ファン5および放出ファン6が駆動することにより、矢印23に示すように、外枠部材1の内側において、空気の流れが形成される。
【0028】
空気浄化装置は、外枠部材1の内側に配置された放電素子2aを備える。本実施の形態における放電素子2aは、2枚の板状電極を備える。2枚の板状電極のうち、一方の板状電極の表面には、尖る先端を有する凸部が形成されている。凸部は、複数形成されている。凸部は、他方の板状電極に向かって形成されている。放電素子2aは、図示しない支持部材に支持されている。放電素子2aは、電源8に接続されている。
【0029】
放電素子としては、この形態に限られず、任意の形態を採用することができる。放電素子としては、VOCを除去するために放電可能に形成されていれば構わない。放電の方式としては、たとえば、コロナ放電やバリア放電などの、VOCを除去する作用に優れた放電方式を採用することが好ましい。また、放電素子としては、放電強度を大きくしたり、放電領域を大きくしたりすることが好ましい。
【0030】
外枠部材1の内側の空気の流れる方向において、放電素子2aの下流側には、オゾン除去触媒11,12が配置されている。オゾン除去触媒11,12は、オゾンを分解などの方法により除去するための触媒である。オゾン除去触媒11,12としては、たとえば、酸化銅−酸化マンガン系、酸化ニッケル系、酸化鉄系、酸化銅−酸化クロム系などの酸化物系触媒や、白金、パラジウム、銅、またはバナジウムなどを、シリカゲル、アルミナ、チタンなどの成型担体に担持させた貴金属系触媒などが含まれる。これらのうち、オゾンを除去するための触媒としては、たとえばマンガン系触媒が好適である。
【0031】
オゾン除去触媒11,12は、触媒保持部材3の内部に配置されている。触媒保持部材3は、ほぼ均一にオゾン除去触媒11,12を保持できるように形成されている。オゾン除去触媒11,12は、矢印23に示す空気の流れ方向に垂直な方向に亘って、厚さがほぼ一定になるように保持されている。すなわち、図1に示すように、オゾン除去触媒11,12の厚さがほぼ一定になるように保持されている。オゾン除去触媒11,12は、外枠部材1の内側における空気の流路のほぼ全体を塞ぐように配置されている。
【0032】
矢印23に示す空気の流れ方向において、オゾン除去触媒11,12の下流側には、空気に含まれるオゾンを検出するためのオゾン検出センサ9が配置されている。本実施の形態におけるオゾン検出センサ9は、空気中に含まれるオゾン濃度を検出できるように形成されている。
【0033】
本実施の形態におけるオゾン検出センサ9は、外枠部材1の断面において、複数の点でオゾン濃度を測定できるように形成されている。オゾン検出センサ9は、外枠部材1の断面形状である円の内側の領域全体に亘って、オゾン濃度を測定できるように形成されている。すなわち、オゾン検出センサ9は、オゾン除去触媒11,12の後側の表面全体に対応するように配置されている。本実施の形態におけるオゾン検出センサは、半導体センサを含む。
【0034】
本実施の形態におけるオゾン検出センサ9は、連続的にオゾン濃度を測定することができるように形成されている。すなわち、オゾン検出センサ9は、オゾン濃度をリアルタイムでモニタリングすることができるように形成されている。
【0035】
本実施の形態における空気浄化装置は、オゾン除去触媒11,12に対する放電素子2aの配置を変更するための駆動手段として、駆動装置15を備える。駆動装置15は、外枠部材1の内側において、放電素子2aを動かすことができるように形成されている。本実施の形態における駆動装置15は、放電素子2aを揺動させるための揺動手段と、放電素子2aを回転させるための回転手段とを含む。
【0036】
図2に、本実施の形態における放電素子の概略斜視図を示す。矢印23に示す向きが、外枠部材1において空気が流れる向きである。放電素子2aは、長手方向を有する。本実施の形態における駆動装置は、揺動軸30にて放電素子2aを揺動可能に形成されている。揺動軸30は、空気の流れ方向に垂直な面内に配置されている。駆動装置によって、放電素子2aは、矢印24に示すように揺動する。
【0037】
駆動装置は、回転軸31にて放電素子2aを回転することができるように形成されている。回転軸31は、空気の流れ方向にほぼ平行に配置されている。駆動装置は、矢印25に示すように放電素子2aを回転可能に形成されている。本実施の形態における駆動装置は、放電素子の揺動運動と回転運動とを同時に行なうことができるように形成されている。すなわち、本実施の形態における放電素子は、揺動しながら回転するように形成されている。
【0038】
図3から図7に、本実施の形態における放電素子の駆動状況を説明する概略断面図を示す。図3から図7は、空気の流れ方向に垂直な面で切断したときの概略断面図である。または、図3から図7は、空気の流れの方向から見たときの概略断面図である。
【0039】
図3に示すように、外枠部材1の内側に放電素子2aが配置されている。放電素子2aは、重心位置が外枠部材1の断面形状である円の中心と重なるように配置されている。図3に示す状態においては、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とがほぼ平行になっている。図示しない駆動装置により、放電素子2aは、矢印25に示す向きに回転する。このとき、揺動軸30を揺動中心にして放電素子2aは揺動する。
【0040】
図4に示すように、放電素子2aは、長手方向が空気の流れ方向に対して、ほぼ垂直になるまで揺動する。放電素子2aは、矢印25に示すように、回転運動を継続する。揺動軸30は、放電素子2aの回転運動に伴って回転する。放電素子2aの長手方向と、空気の流れ方向とがほぼ垂直になったときに、放電素子2aは、元の状態に戻るように、揺動する向きを変える。
【0041】
図5に示すように、放電素子2aは、長手方向と空気の流れ方向とがほぼ平行になるまで揺動運動を継続する。空気の流れ方向と放電素子2aの長手方向とがほぼ平行になったときに揺動の向きを再び変える。この間、矢印25に示すように、放電素子2aの回転運動は継続している。
【0042】
図6に示すように、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とがほぼ垂直になるまで、揺動運動を継続する。この間、矢印25に示すように、放電素子2aの回転運動は継続している。このように、放電素子2aは、回転運動を持続しながら揺動する。
【0043】
図7に、本実施の形態における放電素子の駆動状況を説明する概略断面図を示す。揺動軸30aは、任意の時点における放電素子2aの揺動軸の状態を示す。放電素子2aは、長手方向が空気の流れ方向に対して平行である。揺動軸30bは、放電素子2aが、矢印25に示す向きにほぼ1回転して、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とが平行になったときの状態を示す。揺動軸30cは、放電素子2aが、さらにほぼ1回転して、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とが平行になったときの状態を示す。駆動装置は、放電素子が1回転するごとに、揺動軸がずれる位置に配置されるように形成されている。このように、本実施の形態における駆動装置は、放電素子2aが回転する周期と放電素子2aが揺動する周期とが、僅かにずれるように形成されている。すなわち、いずれか一方の周期が、他方の周期の整数倍にならないように形成されている。
【0044】
図8および図9に、本実施の形態における比較例としての空気浄化装置の説明図を示す。図8は、比較例としての空気浄化装置の概略図である。
【0045】
比較例としての空気浄化装置には、放電素子2bの駆動手段は配置されていない。放電素子2bは、外枠部材1の内側に固定されている。この空気浄化装置は、直径D1が18cm、長さL1が30cmの外枠部材1を備える。放電素子2bは、外枠部材1の円筒形状の中心軸上に配置されている。
【0046】
放電素子2bは、支持部材10に支持されている。支持部材10は、外枠部材1に固定されている。支持部材10は、円筒状に形成され、断面の直径d1が8cm、長さl1が8cmになるように形成されている。支持部材10は、外枠部材1の出口からの距離L2が10cmの位置に配置されている。比較例における空気浄化装置を駆動して、外枠部材1の出口の径方向のオゾン濃度を測定した。オゾン濃度の測定は、外枠部材1の出口から2cm外側の位置にて行なっている。オゾン濃度の測定においては、荏原実業株式会社製のオゾンモニタ(EG−2001)を用いた。
【0047】
この結果、矢印22に示すように、外枠部材1の中心軸上のオゾン濃度は2.85ppmであるのに対して、中心軸上からの距離r1が3cmの位置においては、オゾン濃度は0.85ppmであった。さらに、外枠部材1の中心軸からの距離r2が6cmの位置においては、オゾン濃度は、0.07ppmであった。
【0048】
このように、放電素子2bから放出されるオゾン濃度は、外枠部材1の径方向に対して均一なものではなく、外枠部材1の中心軸上が最も高く、外周に向かうにつれて急激にオゾン濃度が減少することを見出した。すなわち、放電素子2bの下流側において、放電素子2bの位置を空気の流れ方向に伸ばした直線上においては、オゾン濃度が非常に高くなる。しかし、外側に向かって、大きな濃度勾配でオゾン濃度が急激に減少することを見出した。
【0049】
また、このようなオゾン濃度の勾配は、ごく短時間に観察される現象ではなく、連続的に発現する現象であった。たとえば、この比較例の空気浄化装置を1ヶ月間連続して駆動した後に、再度のオゾン濃度の測定を行なっても、径方向のオゾン濃度の変化は見られなかった。この現象は、放電素子を駆動したときに生ずるオゾンは、放電素子の電極の表面の近傍から発生しているためと考えられる。
【0050】
図9に、比較例の空気浄化装置を長時間駆動した場合の概略図を示す。放電素子2bの下流側には、オゾン除去触媒11,12が配置されている。オゾン除去触媒12は、オゾン除去触媒のうち、劣化した触媒である。オゾン除去触媒12に示すように、放電素子2bの位置を空気の流れ方向に伸ばした直線上においては、オゾン濃度が高いためオゾン除去性能が低下する。比較例においては、外枠部材1の中心軸に近い領域において、劣化したオゾン除去触媒12が発現する。このため、このような状況で、空気浄化装置の駆動を継続すると、発生するオゾンが十分に除去されず、室内空間にオゾンが放出されてしまう場合がある。
【0051】
このように、発明者は、比較例の空気浄化装置においては、オゾン除去触媒を均一に劣化させることができず、オゾン除去触媒が局所的に劣化して、オゾン除去性能が低下することを見出した。また、劣化したオゾン除去触媒12の周りのオゾン除去触媒11は、十分なオゾン除去性能を有したままであることを見出した。
【0052】
本発明に基づく空気浄化装置においては、オゾン除去触媒に対する放電素子の配置を変更するための駆動手段を備える。この構成により、オゾン除去触媒に対する放電素子の相対的な位置が変化して、オゾン除去触媒が局所的に劣化することを抑制できる。この結果、長期間に亘ってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供することができる。
【0053】
図1を参照して、本発明における空気浄化装置は、オゾン除去触媒11をほぼ均一に劣化させることができる。オゾン除去触媒12は、劣化した触媒である。オゾン除去触媒12は、外枠部材1の長手方向に垂直な断面における径方向に対して、ほぼ一様になるように配置されている。放電素子の配置が変化することにより、オゾン濃度が高い部分を随時変更して、局所的にオゾン除去触媒の性能が低下することを抑制できる。
【0054】
本実施の形態における駆動手段は、空気の流れの方向から見たときに、オゾン除去触媒の配置されている領域のほぼ全体に亘って放電素子を動かすように形成されている。すなわち、放電素子が動く領域を空気の流れ方向に沿ってオゾン除去触媒に投影したときに、この投影範囲にオゾン除去触媒が含まれるように配置されている。この構成により、オゾン除去触媒ほぼ全体にわたって、ほぼ均一に劣化させることができる。
【0055】
本実施の形態における駆動手段は、放電素子を揺動させるための揺動手段と、放電素子を回転させるための回転手段とを備える。さらに、本実施の形態における駆動手段は、放電素子が回転する周期と放電素子が揺動する周期とが、ずれるように形成されている。この構成により、オゾン除去触媒がほぼ均一に劣化するように容易に放電素子を動かすことができる。
【0056】
放電素子の駆動手段においは、少なくとも放電素子から発生するオゾンが、オゾン除去触媒のすべての領域に散乱されるように、駆動する能力を有することが好ましい。また、放電素子を回転させる回転手段としては、回転手段の負荷を考慮して放電素子が1回転する周期を0.1秒以上の範囲にすることが好ましい。また、回転手段としては、1日を基準として1回転する周期が24時間以下に設定することが好ましい。
【0057】
本実施の形態における駆動手段は、放電素子をモータによって駆動している。放電素子の駆動手段としては、任意の駆動手段を採用することができる。たとえば、駆動手段は、電気的または機械的な方法に限られず、磁気的な方法により放電素子を駆動するように形成されていても構わない。
【0058】
図1を参照して、本実施の形態における空気浄化装置は、オゾン除去触媒11,12の下流側に、オゾン検出センサ9が配置されている。オゾン検出センサ9は、外枠部材1の空気が流れる方向と垂直な面で切断したときの空気の流路の全ての領域に亘って配置されている。オゾン検出センサは、放電素子で発生したオゾンのうち、オゾン除去触媒の劣化した領域に到達して除去されずに、オゾン除去触媒を通り抜けたオゾンを検出する。したがって、本実施の形態においては、オゾン除去触媒が部分的に劣化したことを検知できる。たとえば、放出される空気にオゾンが含まれることを早期に検知して使用者に警告を発することにより、早期の段階においてオゾン除去触媒の交換が可能になる。この結果、オゾンの放出を確実に防止することができる。
【0059】
本実施の形態におけるオゾン検出センサは、半導体センサを含む。この構成を採用することにより、空気の流れに垂直な面におけるオゾン濃度を複数点で容易に計測することができる。
【0060】
本実施の形態における触媒保持部材は、空気の流れに垂直な方向に亘って、ほぼ均一な厚さでオゾン除去触媒を保持するように形成されている。すなわち、空気の流れ方向におけるオゾン除去触媒の長さが、ほぼ一定になるようにオゾン除去触媒が保持されている。この構成により、オゾン除去触媒をほぼ均一に劣化させることができる。
【0061】
放電素子に印加する電圧や周波数などの放電素子を放電させるための条件は、任意の条件を採用することができる。したがって、従来の技術に基づく空気浄化装置に対して、放電素子を駆動するための駆動手段を配置することにより、オゾンを安定して長期間除去することができる。
【0062】
枠部材としては、本実施の形態における円筒状の外枠部材に限られず、任意の形態を採用することができる。枠部材としては、空気の流れが生ずるように形成されていれば構わない。また、本実施の形態における放電素子の電源は、外枠部材の外側に配置されているが、外枠部材の内側に配置されていても構わない。
【0063】
(実施の形態2)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置について説明する。
【0064】
本実施の形態における空気浄化装置は、実施の形態1における構成に加えて、放電素子の駆動装置を制御するための制御手段として、制御装置を備える(図示せず)。図1を参照して、制御装置は、オゾン検出センサ9の電気的な信号を検知して、放電素子2aの駆動状態を変更することができるように形成されている。
【0065】
図10に、制御装置の流れ図を示す。初めに空気浄化装置を駆動する。空気浄化装置を駆動することにより、放電素子が駆動されオゾンが発生する。放電素子の駆動手段が駆動され、放電素子が動く。オゾン検出センサが駆動され、外枠部材1の断面形状における円全体の領域のオゾン濃度が検出される。
【0066】
放電素子は、駆動手段により所定のパターンで駆動される。ここでは、放電素子が、揺動運動および回転運動を行なう。制御装置は、オゾン検出センサが検出したオゾン濃度が、管理値以上でないか判断する。オゾン検出センサが、外枠部材の断面形状である円全体の領域に亘って管理値の範囲内であれば、上記の所定のパターンにより放電素子の駆動を継続する。
【0067】
オゾン検出センサが、管理値を超えたオゾン濃度を検出した場合においては、制御装置は、放電素子の駆動パターンを変更する。本実施の形態においては、オゾン濃度の管理値を超えた領域における駆動速度を上昇させるように駆動パターンを変更する。
【0068】
この後に、引続きオゾン検出センサによりオゾン濃度の検出を継続する。さらに異なる領域において、オゾン濃度の管理値を超えた部分が生じた場合には、その部分についても放電素子の駆動速度を上昇させるように制御を行なう。
【0069】
オゾン濃度の上昇が検知された領域において、放電素子の駆動速度を上昇させることにより、オゾン除去触媒の劣化した部分にオゾンが到達することを抑制することができ、オゾンを効果的に除去できるとともにオゾン除去触媒の寿命をさらに長寿命化することができる。
【0070】
本実施の形態における空気浄化装置は、オゾン検出センサが得た情報を駆動手段を制御するための制御装置に随時送信するように形成されている。この信号を受けて、制御装置は、オゾン除去触媒の劣化した領域にオゾンが極力到達しないような駆動方式で駆動装置を制御する。このように、本実施の形態においては、オゾン検出センサの信号を検出して、放電素子の駆動手段にフィードバックさせることにより、オゾン除去触媒を均一に劣化させることができる。
【0071】
本実施の形態における制御装置は、オゾン濃度が管理値を超えた場合に、その領域における駆動速度を上昇させるように形成されているが、この形態に限られず、オゾン除去触媒の劣化した領域に到達するオゾンの量が減少するように駆動装置を制御可能に形成されていれば構わない。
【0072】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
【0073】
(実施の形態3)
図11から図13を参照して、本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置について説明する。
【0074】
図11は、本実施の形態における空気浄化装置の概略図である。本実施の形態における空気浄化装置は、放電素子の駆動手段の構成が実施の形態1と異なる。本実施の形態における空気浄化装置は、駆動手段として駆動装置16を備える。駆動装置16は、オゾン除去触媒に対して放電素子を直線的に平行移動させるように形成されている。
【0075】
図12に、空気の流れの方向に垂直な面で切断したときの概略断面図を示す。本実施の形態における空気浄化装置は、放電素子2cを備える。放電素子2cの駆動装置は、矢印26,27に示すように、互いに垂直な方向にそれぞれ独立して移動させることができるように形成されている。
【0076】
図13に、本実施の形態における放電素子の移動の説明図を示す。図13は、外枠部材の空気の流れ方向に垂直な面で切断したときの概略断面図である。移動軌跡35は、放電素子が移動するときの重心位置の軌跡である。本実施の形態における駆動装置は、空気の流れ方向から見たときに、オゾン除去触媒が配置されている領域のほぼ全体に亘って、放電素子2cを動かすように形成されている。本実施の形態においては、放電素子が内側から外側に向かう動き、および外側から内側に向かう動きを繰返しながら、外枠部材1の周方向に沿って移動するように形成されている。この構成を採用することにより、オゾン除去触媒をほぼ均一に劣化させることができる。
【0077】
本実施の形態においては、図13に示すように、放電素子が周方向に1回転したときに元の位置に戻るように形成されているが、この形態に限られず、たとえば、実施の形態1と同様に、周方向に1回転したときに、その位置が僅かにずれるように形成されていても構わない。この構成により、オゾン除去触媒をさらに均一に劣化させることができる。
【0078】
本実施の形態における空気浄化装置は、放電素子の駆動装置を制御するための制御手段として、制御装置を備える(図示せず)。図10を参照して、本実施の形態における制御装置は、オゾン検出センサが管理値を超えるオゾン濃度を検出した場合に、放電素子がこの領域を避けるように駆動装置を制御する。または、オゾン濃度の管理値を超える領域での移動速度を上昇させるように駆動装置を制御する。この制御により、オゾンを効果的に除去しながら、より均一にオゾン除去触媒を劣化させることができる。
【0079】
駆動装置による放電素子の移動速度に関しては、制限はなく任意の速度で移動させることができる。たとえば、オゾン除去触媒のすべての領域に一度均一にオゾンを放出するために要する時間(1周期)を、0.1秒以上24時間以下の範囲内で設定することが好ましい。
【0080】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
【0081】
上記の実施の形態に係るそれぞれの図面において、同一または相当する部分には、同一の符号を付している。
【0082】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の概略図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における放電素子の概略斜視図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第1の概略断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第2の概略断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第3の概略断面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第4の概略断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第5の概略断面図である。
【図8】実施の形態1における比較例としての空気浄化装置の第1の概略図である。
【図9】実施の形態1における比較例としての空気浄化装置の第2の概略図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2における駆動装置を制御するための制御装置のロジック図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の概略図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の第1の概略断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の第2の概略断面図である。
【図14】従来の技術に基づく第1の空気浄化装置の概略図である。
【図15】従来の技術に基づく第2の空気浄化装置の概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1 外枠部材、2a〜2c 放電素子、3 触媒保持部材、5 導入ファン、6 放出ファン、8 電源、9 オゾン検出センサ、10 支持部材、11,12 オゾン除去触媒、15,16 駆動装置、20〜27 矢印、30,30a〜30c 揺動軸、31 回転軸、35 移動軌跡、101 外枠部材、102 放電素子、103 触媒保持部材、104 オゾン除去触媒、105 導入ファン、106 放出ファン、108 電源、110,111 矢印。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、住宅の密閉度が高くなることにより、室内の空気が滞留しやすい環境になりつつある。このような環境の中で、低濃度のVOC(Volatile Organic Compounds)が問題となっている。空気中に存在するVOCが人体に与える影響については、近年大きな社会問題となっている。特に、人が生活する住宅環境においては、VOCが化学物質過敏症(シックハウス症候群)の原因となっており、VOCを効果的に除去する技術の確立が急務となっている。
【0003】
ここで、VOCは、揮発性有機化合物の総称であり、種類は非常に多い。VOCには、厚生労働省が目標数値を規定している物質だけでも14種類ある。たとえば、代表的なものだけでも、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、アンモニア、クロロホルム、パラジクロロベンゼン、スチレン、ノナナール、n−テトラデカン、エチルベンゼンおよびスチレン等が挙げられる。これらの化学物質は古くから住宅関係の建築材料や塗料や接着剤などとして広く用いられている。
【0004】
住宅の室内空間においては、これらが揮発することにより人体に対して悪影響を与える場合がある。VOCの化学物質は、揮発することにより常温の室内空間にある程度の濃度(極低濃度であることが多い)で浮遊する。この浮遊している成分が、シックハウス症候群の主原因となっている。したがって、これらのVOCを先ず除去して、無害化する技術を確立することが、化学物質過敏症(シックハウス症候群)の解決に向けた当面の課題になっている。
【0005】
ここで、空気中に存在するVOCを除去するための方法として、放電現象による方法が古くから知られている。放電により発生するラジカル、イオン、およびオゾンがVOCの除去に効果的に作用している。たとえば、空気中に存在するVOCは、放電により酸化反応が生じて分解され、空気中から除去される(たとえば、特開2000−135281号公報)。
【0006】
放電現象を用いることにより、空気中に存在するVOCが除去されるので、化学物質過敏症(シックハウス症候群)となる危険性を排除することが可能である。放電により生じるオゾンは、VOCを除去することに対しては効果を示す。しかし、オゾン自体は不快な臭いを有し、また、人体に対する毒性を有する。したがって、オゾンについてはVOCを除去する役割を終えた後は、速やかに除去されることが好ましい。放電によって生じるオゾンの除去方法としては、触媒を用いることが効果的である(たとえば、特開2000−5628号公報参照)。
【0007】
放電現象により発生するオゾンを除去するためのオゾン除去触媒としては、各種の触媒が知られている。たとえば、オゾン除去触媒として、酸化銅−酸化マンガン系などの酸化物系触媒が知られている。または、白金などをシリカゲルなどの成型担体に担持させた貴金属系触媒が知られている。
【0008】
図14は、空気中のVOCを除去するための、従来の技術に基づく一の空気浄化装置の概略図である。空気浄化装置は、多くの場合、外枠部材101に各種の構成物が取り付けられている。この空気浄化装置は、外枠部材101の内側にVOCを除去するための放電素子102と、放電素子102のための電源108とを備える。この空気浄化装置は、放電現象により発生するオゾンを除去するためのオゾン除去触媒104と、オゾン除去触媒104を保持するための触媒保持部材103とを備える。
【0009】
この空気浄化装置は、矢印110に示すように内側にVOCを含む空気を送るための導入ファン105と、矢印111に示すように外部に空気を放出するための放出ファン106とを備える。この空気浄化装置においては、内側で空気中のVOCは除去され、VOCが除去された空気が放出される。
【0010】
図15に、従来の技術に基づく他の空気浄化装置の概略断面図を示す。他の空気浄化装置においては、放電素子102の電源108が、外枠部材101の外側に配置されている。
【特許文献1】特開2000−135281号公報
【特許文献2】特開2000−5628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図14および図15に示す従来の技術に基づく空気浄化装置においては、使用によりオゾン除去触媒が劣化する。すなわち、オゾン除去触媒には、寿命があり、放電素子を長時間に亘って駆動し続けると、オゾン除去性能が低下する。
【0012】
オゾン除去性能が低下する原因としては、いくつかの原因が考えられている。たとえば、上記のオゾン除去触媒のうち、マンガン系触媒については、長時間に亘って多量のオゾンを除去し続けるとオゾン除去触媒の主成分であるマンガン酸化物中の酸素原子の存在割合が増加する。酸素原子の存在割合が増加することによりオゾン除去性能が低下することが大きな原因と考えられている。
【0013】
オゾン除去触媒のオゾン除去性能が低下すると、放電素子によって生じたオゾンが、オゾン除去触媒で効果的に除去されなくなる。このため、空気浄化装置から、オゾンが完全に除去されずに、そのまま室内空間に放出される場合がある。オゾンが室内に放出されると不快な臭いが生じる。または、人体への影響が懸念される。
【0014】
従来の技術においては、オゾン除去触媒の劣化によりオゾンが室内空間に放出されることを抑制するために、いくつかの方法が提案されてきた。たとえば、第1の方法として、オゾン除去触媒のオゾン除去性能が劣化する前に、新しいものに交換する方法が考えられている。この方法によれば、オゾンを除去するための十分な性能を有するオゾン除去触媒を常に使用することができ、室内空間へのオゾンの放出を効果的に抑制することができる。しかし、この方法においては、オゾン除去触媒を新しいものに取替える頻度が高くなり、手間がかかるという問題があった。また、空気浄化装置の性能を維持するための費用が高くなってしまうという問題があった。
【0015】
また、第2の方法としては、オゾン除去触媒の寿命を長くするため、除去を行なうオゾンの量を少なくする方法が考えられる。このために、オゾンが生じる放電素子の駆動条件を変更して、オゾンの発生量を少なくすることが考えられる。オゾンの発生量が減少すれば、オゾン除去触媒が処理すべき量も少なくなるため、オゾン除去触媒の寿命は長期化する。しかしながら、オゾンの発生量が少なくなると、VOCを除去する性能自体が低下してしまうという問題がある。すなわち、本来求められるVOCの除去を効果的に行なうことができないという問題があった。
【0016】
本発明は、長期間にわたってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に基づく空気浄化装置は、空気の流れを形成するための枠部材と、上記枠部材における上記空気の流れを促進するように配置されたファンと、上記枠部材の内側に配置された放電素子とを備える。上記放電素子よりも上記空気の流れの下流側に配置され、上記空気に存在するオゾンを除去する作用を有するオゾン除去触媒を備える。上記オゾン除去触媒に対する上記放電素子の配置を変更するための駆動手段を備える。
【0018】
上記発明において好ましくは、上記駆動手段は、上記空気の流れの方向から見たときに、上記オゾン除去触媒の配置されている領域のほぼ全体に亘って上記放電素子を動かすように形成されている。
【0019】
上記発明において好ましくは、上記駆動手段は、上記放電素子を揺動させるための揺動手段と、上記放電素子を回転させるための回転手段とを含む。
【0020】
上記発明において好ましくは、上記駆動手段は、上記放電素子を直線的に平行移動させるように形成された平行移動手段を含む。
【0021】
上記発明において好ましくは、上記オゾン除去触媒を内部に保持するための触媒保持部材を備える。上記触媒保持部材は、上記空気の流れに垂直な方向に亘って、ほぼ均一な厚さで上記オゾン除去触媒を保持するように形成されている。
【0022】
上記発明において好ましくは、上記空気に含まれるオゾンを検出するためのオゾン検知センサを備える。上記オゾン検出センサは、上記空気の流れの方向において、上記オゾン除去触媒の下流側に配置されている。
【0023】
上記発明において好ましくは、上記オゾン検知センサは、半導体センサを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、長期間にわたってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施の形態1)
図1から図9を参照して、本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態における空気浄化装置の概略図である。本実施の形態における空気浄化装置は、空気の流れを形成するための枠部材として外枠部材1を備える。外枠部材1は、円筒状に形成されている。外枠部材1は、内側が空洞になるように形成されている。外枠部材1は、矢印23に示すように内側に空気を流すことができるように形成されている。
【0027】
本実施の形態における空気浄化装置は、外枠部材1における空気の流れを促進するように配置されたファンを備える。本実施の形態においては、ファンとして、導入ファン5および放出ファン6が配置されている。導入ファン5は、外枠部材1の空気の入口部分に配置されている。放出ファン6は、外枠部材1の空気の放出部分に配置されている。導入ファン5は、矢印20に示すように、外枠部材1の内側に空気を送り込むことができるように形成されている。放出ファン6は、矢印21に示すように、外枠部材1から空気を放出することができるように形成されている。導入ファン5および放出ファン6が駆動することにより、矢印23に示すように、外枠部材1の内側において、空気の流れが形成される。
【0028】
空気浄化装置は、外枠部材1の内側に配置された放電素子2aを備える。本実施の形態における放電素子2aは、2枚の板状電極を備える。2枚の板状電極のうち、一方の板状電極の表面には、尖る先端を有する凸部が形成されている。凸部は、複数形成されている。凸部は、他方の板状電極に向かって形成されている。放電素子2aは、図示しない支持部材に支持されている。放電素子2aは、電源8に接続されている。
【0029】
放電素子としては、この形態に限られず、任意の形態を採用することができる。放電素子としては、VOCを除去するために放電可能に形成されていれば構わない。放電の方式としては、たとえば、コロナ放電やバリア放電などの、VOCを除去する作用に優れた放電方式を採用することが好ましい。また、放電素子としては、放電強度を大きくしたり、放電領域を大きくしたりすることが好ましい。
【0030】
外枠部材1の内側の空気の流れる方向において、放電素子2aの下流側には、オゾン除去触媒11,12が配置されている。オゾン除去触媒11,12は、オゾンを分解などの方法により除去するための触媒である。オゾン除去触媒11,12としては、たとえば、酸化銅−酸化マンガン系、酸化ニッケル系、酸化鉄系、酸化銅−酸化クロム系などの酸化物系触媒や、白金、パラジウム、銅、またはバナジウムなどを、シリカゲル、アルミナ、チタンなどの成型担体に担持させた貴金属系触媒などが含まれる。これらのうち、オゾンを除去するための触媒としては、たとえばマンガン系触媒が好適である。
【0031】
オゾン除去触媒11,12は、触媒保持部材3の内部に配置されている。触媒保持部材3は、ほぼ均一にオゾン除去触媒11,12を保持できるように形成されている。オゾン除去触媒11,12は、矢印23に示す空気の流れ方向に垂直な方向に亘って、厚さがほぼ一定になるように保持されている。すなわち、図1に示すように、オゾン除去触媒11,12の厚さがほぼ一定になるように保持されている。オゾン除去触媒11,12は、外枠部材1の内側における空気の流路のほぼ全体を塞ぐように配置されている。
【0032】
矢印23に示す空気の流れ方向において、オゾン除去触媒11,12の下流側には、空気に含まれるオゾンを検出するためのオゾン検出センサ9が配置されている。本実施の形態におけるオゾン検出センサ9は、空気中に含まれるオゾン濃度を検出できるように形成されている。
【0033】
本実施の形態におけるオゾン検出センサ9は、外枠部材1の断面において、複数の点でオゾン濃度を測定できるように形成されている。オゾン検出センサ9は、外枠部材1の断面形状である円の内側の領域全体に亘って、オゾン濃度を測定できるように形成されている。すなわち、オゾン検出センサ9は、オゾン除去触媒11,12の後側の表面全体に対応するように配置されている。本実施の形態におけるオゾン検出センサは、半導体センサを含む。
【0034】
本実施の形態におけるオゾン検出センサ9は、連続的にオゾン濃度を測定することができるように形成されている。すなわち、オゾン検出センサ9は、オゾン濃度をリアルタイムでモニタリングすることができるように形成されている。
【0035】
本実施の形態における空気浄化装置は、オゾン除去触媒11,12に対する放電素子2aの配置を変更するための駆動手段として、駆動装置15を備える。駆動装置15は、外枠部材1の内側において、放電素子2aを動かすことができるように形成されている。本実施の形態における駆動装置15は、放電素子2aを揺動させるための揺動手段と、放電素子2aを回転させるための回転手段とを含む。
【0036】
図2に、本実施の形態における放電素子の概略斜視図を示す。矢印23に示す向きが、外枠部材1において空気が流れる向きである。放電素子2aは、長手方向を有する。本実施の形態における駆動装置は、揺動軸30にて放電素子2aを揺動可能に形成されている。揺動軸30は、空気の流れ方向に垂直な面内に配置されている。駆動装置によって、放電素子2aは、矢印24に示すように揺動する。
【0037】
駆動装置は、回転軸31にて放電素子2aを回転することができるように形成されている。回転軸31は、空気の流れ方向にほぼ平行に配置されている。駆動装置は、矢印25に示すように放電素子2aを回転可能に形成されている。本実施の形態における駆動装置は、放電素子の揺動運動と回転運動とを同時に行なうことができるように形成されている。すなわち、本実施の形態における放電素子は、揺動しながら回転するように形成されている。
【0038】
図3から図7に、本実施の形態における放電素子の駆動状況を説明する概略断面図を示す。図3から図7は、空気の流れ方向に垂直な面で切断したときの概略断面図である。または、図3から図7は、空気の流れの方向から見たときの概略断面図である。
【0039】
図3に示すように、外枠部材1の内側に放電素子2aが配置されている。放電素子2aは、重心位置が外枠部材1の断面形状である円の中心と重なるように配置されている。図3に示す状態においては、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とがほぼ平行になっている。図示しない駆動装置により、放電素子2aは、矢印25に示す向きに回転する。このとき、揺動軸30を揺動中心にして放電素子2aは揺動する。
【0040】
図4に示すように、放電素子2aは、長手方向が空気の流れ方向に対して、ほぼ垂直になるまで揺動する。放電素子2aは、矢印25に示すように、回転運動を継続する。揺動軸30は、放電素子2aの回転運動に伴って回転する。放電素子2aの長手方向と、空気の流れ方向とがほぼ垂直になったときに、放電素子2aは、元の状態に戻るように、揺動する向きを変える。
【0041】
図5に示すように、放電素子2aは、長手方向と空気の流れ方向とがほぼ平行になるまで揺動運動を継続する。空気の流れ方向と放電素子2aの長手方向とがほぼ平行になったときに揺動の向きを再び変える。この間、矢印25に示すように、放電素子2aの回転運動は継続している。
【0042】
図6に示すように、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とがほぼ垂直になるまで、揺動運動を継続する。この間、矢印25に示すように、放電素子2aの回転運動は継続している。このように、放電素子2aは、回転運動を持続しながら揺動する。
【0043】
図7に、本実施の形態における放電素子の駆動状況を説明する概略断面図を示す。揺動軸30aは、任意の時点における放電素子2aの揺動軸の状態を示す。放電素子2aは、長手方向が空気の流れ方向に対して平行である。揺動軸30bは、放電素子2aが、矢印25に示す向きにほぼ1回転して、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とが平行になったときの状態を示す。揺動軸30cは、放電素子2aが、さらにほぼ1回転して、放電素子2aの長手方向と空気の流れ方向とが平行になったときの状態を示す。駆動装置は、放電素子が1回転するごとに、揺動軸がずれる位置に配置されるように形成されている。このように、本実施の形態における駆動装置は、放電素子2aが回転する周期と放電素子2aが揺動する周期とが、僅かにずれるように形成されている。すなわち、いずれか一方の周期が、他方の周期の整数倍にならないように形成されている。
【0044】
図8および図9に、本実施の形態における比較例としての空気浄化装置の説明図を示す。図8は、比較例としての空気浄化装置の概略図である。
【0045】
比較例としての空気浄化装置には、放電素子2bの駆動手段は配置されていない。放電素子2bは、外枠部材1の内側に固定されている。この空気浄化装置は、直径D1が18cm、長さL1が30cmの外枠部材1を備える。放電素子2bは、外枠部材1の円筒形状の中心軸上に配置されている。
【0046】
放電素子2bは、支持部材10に支持されている。支持部材10は、外枠部材1に固定されている。支持部材10は、円筒状に形成され、断面の直径d1が8cm、長さl1が8cmになるように形成されている。支持部材10は、外枠部材1の出口からの距離L2が10cmの位置に配置されている。比較例における空気浄化装置を駆動して、外枠部材1の出口の径方向のオゾン濃度を測定した。オゾン濃度の測定は、外枠部材1の出口から2cm外側の位置にて行なっている。オゾン濃度の測定においては、荏原実業株式会社製のオゾンモニタ(EG−2001)を用いた。
【0047】
この結果、矢印22に示すように、外枠部材1の中心軸上のオゾン濃度は2.85ppmであるのに対して、中心軸上からの距離r1が3cmの位置においては、オゾン濃度は0.85ppmであった。さらに、外枠部材1の中心軸からの距離r2が6cmの位置においては、オゾン濃度は、0.07ppmであった。
【0048】
このように、放電素子2bから放出されるオゾン濃度は、外枠部材1の径方向に対して均一なものではなく、外枠部材1の中心軸上が最も高く、外周に向かうにつれて急激にオゾン濃度が減少することを見出した。すなわち、放電素子2bの下流側において、放電素子2bの位置を空気の流れ方向に伸ばした直線上においては、オゾン濃度が非常に高くなる。しかし、外側に向かって、大きな濃度勾配でオゾン濃度が急激に減少することを見出した。
【0049】
また、このようなオゾン濃度の勾配は、ごく短時間に観察される現象ではなく、連続的に発現する現象であった。たとえば、この比較例の空気浄化装置を1ヶ月間連続して駆動した後に、再度のオゾン濃度の測定を行なっても、径方向のオゾン濃度の変化は見られなかった。この現象は、放電素子を駆動したときに生ずるオゾンは、放電素子の電極の表面の近傍から発生しているためと考えられる。
【0050】
図9に、比較例の空気浄化装置を長時間駆動した場合の概略図を示す。放電素子2bの下流側には、オゾン除去触媒11,12が配置されている。オゾン除去触媒12は、オゾン除去触媒のうち、劣化した触媒である。オゾン除去触媒12に示すように、放電素子2bの位置を空気の流れ方向に伸ばした直線上においては、オゾン濃度が高いためオゾン除去性能が低下する。比較例においては、外枠部材1の中心軸に近い領域において、劣化したオゾン除去触媒12が発現する。このため、このような状況で、空気浄化装置の駆動を継続すると、発生するオゾンが十分に除去されず、室内空間にオゾンが放出されてしまう場合がある。
【0051】
このように、発明者は、比較例の空気浄化装置においては、オゾン除去触媒を均一に劣化させることができず、オゾン除去触媒が局所的に劣化して、オゾン除去性能が低下することを見出した。また、劣化したオゾン除去触媒12の周りのオゾン除去触媒11は、十分なオゾン除去性能を有したままであることを見出した。
【0052】
本発明に基づく空気浄化装置においては、オゾン除去触媒に対する放電素子の配置を変更するための駆動手段を備える。この構成により、オゾン除去触媒に対する放電素子の相対的な位置が変化して、オゾン除去触媒が局所的に劣化することを抑制できる。この結果、長期間に亘ってオゾンを安定して除去することができる空気浄化装置を提供することができる。
【0053】
図1を参照して、本発明における空気浄化装置は、オゾン除去触媒11をほぼ均一に劣化させることができる。オゾン除去触媒12は、劣化した触媒である。オゾン除去触媒12は、外枠部材1の長手方向に垂直な断面における径方向に対して、ほぼ一様になるように配置されている。放電素子の配置が変化することにより、オゾン濃度が高い部分を随時変更して、局所的にオゾン除去触媒の性能が低下することを抑制できる。
【0054】
本実施の形態における駆動手段は、空気の流れの方向から見たときに、オゾン除去触媒の配置されている領域のほぼ全体に亘って放電素子を動かすように形成されている。すなわち、放電素子が動く領域を空気の流れ方向に沿ってオゾン除去触媒に投影したときに、この投影範囲にオゾン除去触媒が含まれるように配置されている。この構成により、オゾン除去触媒ほぼ全体にわたって、ほぼ均一に劣化させることができる。
【0055】
本実施の形態における駆動手段は、放電素子を揺動させるための揺動手段と、放電素子を回転させるための回転手段とを備える。さらに、本実施の形態における駆動手段は、放電素子が回転する周期と放電素子が揺動する周期とが、ずれるように形成されている。この構成により、オゾン除去触媒がほぼ均一に劣化するように容易に放電素子を動かすことができる。
【0056】
放電素子の駆動手段においは、少なくとも放電素子から発生するオゾンが、オゾン除去触媒のすべての領域に散乱されるように、駆動する能力を有することが好ましい。また、放電素子を回転させる回転手段としては、回転手段の負荷を考慮して放電素子が1回転する周期を0.1秒以上の範囲にすることが好ましい。また、回転手段としては、1日を基準として1回転する周期が24時間以下に設定することが好ましい。
【0057】
本実施の形態における駆動手段は、放電素子をモータによって駆動している。放電素子の駆動手段としては、任意の駆動手段を採用することができる。たとえば、駆動手段は、電気的または機械的な方法に限られず、磁気的な方法により放電素子を駆動するように形成されていても構わない。
【0058】
図1を参照して、本実施の形態における空気浄化装置は、オゾン除去触媒11,12の下流側に、オゾン検出センサ9が配置されている。オゾン検出センサ9は、外枠部材1の空気が流れる方向と垂直な面で切断したときの空気の流路の全ての領域に亘って配置されている。オゾン検出センサは、放電素子で発生したオゾンのうち、オゾン除去触媒の劣化した領域に到達して除去されずに、オゾン除去触媒を通り抜けたオゾンを検出する。したがって、本実施の形態においては、オゾン除去触媒が部分的に劣化したことを検知できる。たとえば、放出される空気にオゾンが含まれることを早期に検知して使用者に警告を発することにより、早期の段階においてオゾン除去触媒の交換が可能になる。この結果、オゾンの放出を確実に防止することができる。
【0059】
本実施の形態におけるオゾン検出センサは、半導体センサを含む。この構成を採用することにより、空気の流れに垂直な面におけるオゾン濃度を複数点で容易に計測することができる。
【0060】
本実施の形態における触媒保持部材は、空気の流れに垂直な方向に亘って、ほぼ均一な厚さでオゾン除去触媒を保持するように形成されている。すなわち、空気の流れ方向におけるオゾン除去触媒の長さが、ほぼ一定になるようにオゾン除去触媒が保持されている。この構成により、オゾン除去触媒をほぼ均一に劣化させることができる。
【0061】
放電素子に印加する電圧や周波数などの放電素子を放電させるための条件は、任意の条件を採用することができる。したがって、従来の技術に基づく空気浄化装置に対して、放電素子を駆動するための駆動手段を配置することにより、オゾンを安定して長期間除去することができる。
【0062】
枠部材としては、本実施の形態における円筒状の外枠部材に限られず、任意の形態を採用することができる。枠部材としては、空気の流れが生ずるように形成されていれば構わない。また、本実施の形態における放電素子の電源は、外枠部材の外側に配置されているが、外枠部材の内側に配置されていても構わない。
【0063】
(実施の形態2)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置について説明する。
【0064】
本実施の形態における空気浄化装置は、実施の形態1における構成に加えて、放電素子の駆動装置を制御するための制御手段として、制御装置を備える(図示せず)。図1を参照して、制御装置は、オゾン検出センサ9の電気的な信号を検知して、放電素子2aの駆動状態を変更することができるように形成されている。
【0065】
図10に、制御装置の流れ図を示す。初めに空気浄化装置を駆動する。空気浄化装置を駆動することにより、放電素子が駆動されオゾンが発生する。放電素子の駆動手段が駆動され、放電素子が動く。オゾン検出センサが駆動され、外枠部材1の断面形状における円全体の領域のオゾン濃度が検出される。
【0066】
放電素子は、駆動手段により所定のパターンで駆動される。ここでは、放電素子が、揺動運動および回転運動を行なう。制御装置は、オゾン検出センサが検出したオゾン濃度が、管理値以上でないか判断する。オゾン検出センサが、外枠部材の断面形状である円全体の領域に亘って管理値の範囲内であれば、上記の所定のパターンにより放電素子の駆動を継続する。
【0067】
オゾン検出センサが、管理値を超えたオゾン濃度を検出した場合においては、制御装置は、放電素子の駆動パターンを変更する。本実施の形態においては、オゾン濃度の管理値を超えた領域における駆動速度を上昇させるように駆動パターンを変更する。
【0068】
この後に、引続きオゾン検出センサによりオゾン濃度の検出を継続する。さらに異なる領域において、オゾン濃度の管理値を超えた部分が生じた場合には、その部分についても放電素子の駆動速度を上昇させるように制御を行なう。
【0069】
オゾン濃度の上昇が検知された領域において、放電素子の駆動速度を上昇させることにより、オゾン除去触媒の劣化した部分にオゾンが到達することを抑制することができ、オゾンを効果的に除去できるとともにオゾン除去触媒の寿命をさらに長寿命化することができる。
【0070】
本実施の形態における空気浄化装置は、オゾン検出センサが得た情報を駆動手段を制御するための制御装置に随時送信するように形成されている。この信号を受けて、制御装置は、オゾン除去触媒の劣化した領域にオゾンが極力到達しないような駆動方式で駆動装置を制御する。このように、本実施の形態においては、オゾン検出センサの信号を検出して、放電素子の駆動手段にフィードバックさせることにより、オゾン除去触媒を均一に劣化させることができる。
【0071】
本実施の形態における制御装置は、オゾン濃度が管理値を超えた場合に、その領域における駆動速度を上昇させるように形成されているが、この形態に限られず、オゾン除去触媒の劣化した領域に到達するオゾンの量が減少するように駆動装置を制御可能に形成されていれば構わない。
【0072】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
【0073】
(実施の形態3)
図11から図13を参照して、本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置について説明する。
【0074】
図11は、本実施の形態における空気浄化装置の概略図である。本実施の形態における空気浄化装置は、放電素子の駆動手段の構成が実施の形態1と異なる。本実施の形態における空気浄化装置は、駆動手段として駆動装置16を備える。駆動装置16は、オゾン除去触媒に対して放電素子を直線的に平行移動させるように形成されている。
【0075】
図12に、空気の流れの方向に垂直な面で切断したときの概略断面図を示す。本実施の形態における空気浄化装置は、放電素子2cを備える。放電素子2cの駆動装置は、矢印26,27に示すように、互いに垂直な方向にそれぞれ独立して移動させることができるように形成されている。
【0076】
図13に、本実施の形態における放電素子の移動の説明図を示す。図13は、外枠部材の空気の流れ方向に垂直な面で切断したときの概略断面図である。移動軌跡35は、放電素子が移動するときの重心位置の軌跡である。本実施の形態における駆動装置は、空気の流れ方向から見たときに、オゾン除去触媒が配置されている領域のほぼ全体に亘って、放電素子2cを動かすように形成されている。本実施の形態においては、放電素子が内側から外側に向かう動き、および外側から内側に向かう動きを繰返しながら、外枠部材1の周方向に沿って移動するように形成されている。この構成を採用することにより、オゾン除去触媒をほぼ均一に劣化させることができる。
【0077】
本実施の形態においては、図13に示すように、放電素子が周方向に1回転したときに元の位置に戻るように形成されているが、この形態に限られず、たとえば、実施の形態1と同様に、周方向に1回転したときに、その位置が僅かにずれるように形成されていても構わない。この構成により、オゾン除去触媒をさらに均一に劣化させることができる。
【0078】
本実施の形態における空気浄化装置は、放電素子の駆動装置を制御するための制御手段として、制御装置を備える(図示せず)。図10を参照して、本実施の形態における制御装置は、オゾン検出センサが管理値を超えるオゾン濃度を検出した場合に、放電素子がこの領域を避けるように駆動装置を制御する。または、オゾン濃度の管理値を超える領域での移動速度を上昇させるように駆動装置を制御する。この制御により、オゾンを効果的に除去しながら、より均一にオゾン除去触媒を劣化させることができる。
【0079】
駆動装置による放電素子の移動速度に関しては、制限はなく任意の速度で移動させることができる。たとえば、オゾン除去触媒のすべての領域に一度均一にオゾンを放出するために要する時間(1周期)を、0.1秒以上24時間以下の範囲内で設定することが好ましい。
【0080】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
【0081】
上記の実施の形態に係るそれぞれの図面において、同一または相当する部分には、同一の符号を付している。
【0082】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の概略図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における放電素子の概略斜視図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第1の概略断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第2の概略断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第3の概略断面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第4の概略断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の第5の概略断面図である。
【図8】実施の形態1における比較例としての空気浄化装置の第1の概略図である。
【図9】実施の形態1における比較例としての空気浄化装置の第2の概略図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2における駆動装置を制御するための制御装置のロジック図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の概略図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の第1の概略断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の第2の概略断面図である。
【図14】従来の技術に基づく第1の空気浄化装置の概略図である。
【図15】従来の技術に基づく第2の空気浄化装置の概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1 外枠部材、2a〜2c 放電素子、3 触媒保持部材、5 導入ファン、6 放出ファン、8 電源、9 オゾン検出センサ、10 支持部材、11,12 オゾン除去触媒、15,16 駆動装置、20〜27 矢印、30,30a〜30c 揺動軸、31 回転軸、35 移動軌跡、101 外枠部材、102 放電素子、103 触媒保持部材、104 オゾン除去触媒、105 導入ファン、106 放出ファン、108 電源、110,111 矢印。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流れを形成するための枠部材と、
前記枠部材における前記空気の流れを促進するように配置されたファンと、
前記枠部材の内側に配置された放電素子と、
前記放電素子よりも前記空気の流れの下流側に配置され、前記空気に存在するオゾンを除去する作用を有するオゾン除去触媒と、
前記オゾン除去触媒に対する前記放電素子の配置を変更するための駆動手段と
を備える、空気浄化装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記空気の流れの方向から見たときに、前記オゾン除去触媒の配置されている領域のほぼ全体に亘って前記放電素子を動かすように形成された、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記放電素子を揺動させるための揺動手段と、
前記放電素子を回転させるための回転手段と
を含む、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記放電素子を直線的に平行移動させるように形成された平行移動手段を含む、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記オゾン除去触媒を内部に保持するための触媒保持部材を備え、
前記触媒保持部材は、前記空気の流れに垂直な方向に亘って、ほぼ均一な厚さで前記オゾン除去触媒を保持するように形成された、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記空気に含まれるオゾンを検出するためのオゾン検知センサを備え、
前記オゾン検出センサは、前記空気の流れの方向において、前記オゾン除去触媒の下流側に配置された、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
前記オゾン検知センサは、半導体センサを含む、請求項6に記載の空気浄化装置。
【請求項1】
空気の流れを形成するための枠部材と、
前記枠部材における前記空気の流れを促進するように配置されたファンと、
前記枠部材の内側に配置された放電素子と、
前記放電素子よりも前記空気の流れの下流側に配置され、前記空気に存在するオゾンを除去する作用を有するオゾン除去触媒と、
前記オゾン除去触媒に対する前記放電素子の配置を変更するための駆動手段と
を備える、空気浄化装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記空気の流れの方向から見たときに、前記オゾン除去触媒の配置されている領域のほぼ全体に亘って前記放電素子を動かすように形成された、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記放電素子を揺動させるための揺動手段と、
前記放電素子を回転させるための回転手段と
を含む、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記放電素子を直線的に平行移動させるように形成された平行移動手段を含む、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記オゾン除去触媒を内部に保持するための触媒保持部材を備え、
前記触媒保持部材は、前記空気の流れに垂直な方向に亘って、ほぼ均一な厚さで前記オゾン除去触媒を保持するように形成された、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記空気に含まれるオゾンを検出するためのオゾン検知センサを備え、
前記オゾン検出センサは、前記空気の流れの方向において、前記オゾン除去触媒の下流側に配置された、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
前記オゾン検知センサは、半導体センサを含む、請求項6に記載の空気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−117352(P2007−117352A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312716(P2005−312716)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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