説明

空気浄化装置

【課題】 呼吸対象空間の空気をドラフト感なしに効果的に浄化できる装置を提供すること。
【解決手段】 空気浄化装置1は、未処理空気を吸い込む吸気口2と、これを浄化処理する浄化処理手段3と、排気部5と、空気を該排気部5から排出する気流形成手段4とを備え、排気部5は浄化対象空間をカバーして浄化空気流を排気する主排気部6と、浄化空気流と周囲空気とを遮断するバリア空気流を排気する副排気部7とからなり、気流全体として周囲空気よりも正圧であるよう各気流を生成可能に構成される。副排気部5は複数の排気口から構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気浄化装置に係り、特に、人間の呼吸対象空間の空気を効果的に浄化することのできる空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の空気浄化装置が提案されているが、近年は特に、アレルギー患者、喘息患者等、室内空気の浄化に対する要求がより高い使用者を考慮して、一般の装置よりも局所的な空気浄化性能に優れるとする局所浄化型の装置も提案されている(特許文献)。
【0003】
つまり、かかる特定の使用者等にとっては、その呼吸点(鼻、口)近傍の空気の清浄度を高めることが重要である。そこで、呼吸点を含む局所を迅速に清浄化できる装置として、たとえば、就寝者の頭部近傍に集中的に遅い流速の清浄空気を送風するもの(特許文献1)、清浄空気の吹き出し風速を吸い込み風速よりも小さく設定する(特許文献2)もの、あるいはまた、空気吹き出し口からの清浄空気の風速を、対象空間の外周部分では大きく、中心部分では小さく設定して、形成される清浄空間に対する外乱気流の影響をなくし、それによって塵埃粒子、アレルゲン粒子等の侵入防止を図るもの等が、従来開示されている。
【0004】
また、室内空気の清浄度は決して上述の特定の患者にとってのみの問題ではなく、住宅環境、オフィス環境、学校等、あらゆる空間における室内空気汚染が顕在化している。したがって対象使用者を選ばず、より効果的な空気浄化が求められている。たとえばシックスクール問題への対応としては、椅子の肘掛け部に設置する空気清浄装置の提案もなされている(非特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−171067「空気清浄装置」
【特許文献2】特開平7−256032「空気清浄器」
【非特許文献1】「児童用椅子設置型パーソナル空気清浄装置の開発とCFDによる清浄空気勢力範囲解析」、熊谷一清他、空気調和・冷凍連合講演会、2003.4、pp183〜185
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に開示された技術では、使用者にとってドラフト感が大きくて不快感を引き起こし、好ましくない。また非特許文献に開示された技術は、あくまでも児童用椅子設置という特殊用途向けの設計であり、より広く適用可能な方式が求められる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、人間の呼吸対象空間の空気を、ドラフト感を生じさせることなく、従来以上に効果的に浄化することのできる空気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、浄化対象空間への気流と、これを外気から遮断するバリア機能の気流とを、別の排気口から送り出す構成によって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
(1) 浄化処理された空気を供給する空気浄化装置であって、該装置は、未処理空気を吸い込む吸気口と、未処理空気を浄化処理して浄化空気とする浄化処理手段と、本装置内に吸い込まれた空気を排出する排気部と、該吸い込まれた空気を該排気部から排出するための気流形成手段とからなり、該排気部は、浄化対象空間をカバーして該浄化空気流を排気する主排気部と、該浄化空気流と周囲空気とを遮断し得るバリア空気流を排気するための副排気部とからなり、該主排気部からの浄化空気流および該副排気部からのバリア空気流の全体として、周囲空気よりも正圧であるように、各気流を生成可能であることを特徴とする、空気浄化装置。
(2) 前記副排気部は、複数の排気口からなることを特徴とする、(1)に記載の空気浄化装置。
(3) 前記副排気部からのバリア空気流は、前記主排気部からの浄化空気流よりも流圧もしくは流速が大きくなるよう、該副排気部が構成されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の空気浄化装置。
(4) 前記主排気部と前記副排気部には、各排気部から異なる流圧もしくは流速で気流を排気できるよう、それぞれ別個に前記気流形成手段が設けられることを特徴とする、(3)に記載の空気浄化装置。
(5) 前記副排気部に係る各排気口の面積は前記主排気部に係る排気口の面積よりも小さく形成されていることを特徴とする、(3)に記載の空気浄化装置。
(6) 前記副排気部は、前記浄化空気流を上方および両側方から包囲してこれを周囲空気から遮断可能な前記バリア気流を排気できるように、前記主排気部の外側に複数配置された排気口からなることを特徴とする、(2)に記載の空気浄化装置。
【0010】
(7) 前記吸気口は本装置筐体に直接設けられていることを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の空気浄化装置。
(8) 前記空気浄化装置は、横臥姿勢、着座姿勢もしくは立位姿勢をとる人間の呼吸対象空間に対して気流を送り、該呼吸対象空間の空気浄化用途を有するものであって、前記主排気部および副排気部は、本装置の前面部にアーチ形状をなして配置されることを特徴とする、(1)ないし(7)のいずれかに記載の空気浄化装置。
(9) 前記浄化処理手段は、前記吸気口と前記排気部との間に設けられ、集塵フィルタの他に、光触媒部とこれを励起するための励起光源からなる光触媒ユニットとを備えてなることを特徴とする、(1)ないし(8)のいずれかに記載の空気浄化装置。
(10) 前記光触媒ユニットは、前記主排気部に至る流路上に設けられ、該光触媒ユニットによる浄化作用を受けた浄化空気は該主排気部のみから排気されることを特徴とする、(9)に記載の空気浄化装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気浄化装置は上述のように構成されるため、これによれば、人間の呼吸対象空間の空気を、ドラフト感を生じさせることなく、従来以上に効果的に浄化することができる。また、外界の汚染空気・不浄な空気に曝されることを効果的に防止できる。
【0012】
また、あくまでも児童用椅子設置などの特殊用途に限定されることなく、より広い範囲で適用が可能であり、横臥位、立位、座位の各姿勢に対して、人間の呼吸対象空間の空気浄化を効率良く行うことができる。寝室、ベッド、椅子、ソファ等を利用する人間用に設計された、床置き、壁への取付けなどのアダプターをそれぞれ用意して、一種類の空気浄化装置本体に脱着できるようにすることで、いわばパーソナルな空気浄化装置として利用することができる。
【0013】
本願における「呼吸対象空間」とは、本発明装置を使用する人間の呼吸する空間、もしくは呼吸し得る空間をいい、つまり呼気の及び得る範囲と吸入がなされ得る範囲を含む空間である。したがって、いわゆる「呼気勢力範囲」を含むものであり、またかかる意味合いに該当する限りにおいては、「呼気勢力範囲」と同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1、2、3、4、4−2、5、6および7はいずれも、本発明に含まれる空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
図1に示すように本空気浄化装置1は、未処理空気を吸い込む吸気口2と、未処理空気を浄化処理して浄化空気とする浄化処理手段3と、本装置内に吸い込まれた空気を排出する排気部5と、該吸い込まれた空気を該排気部5から排出するための気流形成手段4とを備えてなり、該排気部5は、浄化対象空間をカバーして該浄化空気流を排気する主排気部6と、該浄化空気流と周囲空気とを遮断し得るバリア空気流を排気するための副排気部7とからなり、該主排気部6からの浄化空気流および該副排気部7からのバリア空気流の全体として、周囲空気よりも正圧であるように、各気流を生成可能に構成されていることを基本とする。該副排気部7は、複数の排気口から構成するものとすることができる。
【0015】
該気流形成手段4としては、ファン、特にシロッコファンを好適に用いることができる。また、該浄化処理手段3には、ろ過、物理的な吸着、化学的な吸着、触媒による分解、電磁波による殺菌など公知の浄化技術を形態化した種々の浄化用品、浄化用具、浄化機器を、適宜、一または複数組み合わせて用いることができる。該浄化処理手段3は、かならずしも装置1中において一定のまとまった箇所を占めて設けられる必要はなく、たとえば複数の要素が装置1中に分散して設けられた構成としてもよい。
【0016】
かかる構成により、図1に示した本発明の最も基本たる空気浄化装置1では、該吸気口2から未処理空気が装置1内に吸い込まれ、これが該浄化処理手段3によって浄化処理されて浄化空気となり、浄化空気は該気流形成手段4によって形成される気流に乗って該排気部5から排出される。該排気部5からの排気は大きく二つの気流に分けられる。つまり、該主排気部6からは浄化対象空間をカバーする浄化空気流が排気され、一方該副排気部7からは、該主排気部6からの浄化空気流と周囲空気とを遮断し得るバリア空気流が排気される。ここで、該副排気部7から排出されるバリア気流もまた浄化処理された空気であってもよい。この場合、前記浄化空気流とバリア空気流との浄化処理程度に差異がある場合も、ない場合も、いずれも本発明は含む。
【0017】
また、本装置1にて形成され排気される気流は、該主排気部6からの浄化空気流および該副排気部7からのバリア空気流の全体として、周囲空気よりも正圧であるため、外部からの汚染空気がバリア空気流内の本装置1による浄化対象空間内に入ってくることを遮断できる。
【0018】
また、該副排気部7を複数の排気口から構成し、これらの排気口を該主排気部6に係る排気口の周囲に設ける構成とすることにより、該主排気部6からの浄化空気流を周囲空気から遮断する度合い、遮断作用の確実性を高めることができる。
【0019】
該気流形成手段4が、単に浄化空気を排気するために機能するだけではなく、未処理空気を該吸気口2から吸い込み、これを該浄化処理手段3を通過させる機能を有することはいうまでもない。
【0020】
また、該副排気部7は、ここから排出されるバリア空気流が、該主排気部6からの浄化空気流よりも流圧もしくは流速が大きくなるように構成することができる。これにより、バリア空気流による周囲空気と浄化空気流の間の遮断作用を得ることができる。
【0021】
図2に示すように、本発明空気浄化装置11に備えられる前記浄化処理手段13と気流形成手段14の配置は、前者を前流側とし、後者を後流側とすることができる(I)が、他方(II)の装置21のように、該浄化処理手段23を後流側とし、気流形成手段14を前流側としてもよい。
【0022】
図3に例示するように本装置31は、上述の通り、前記浄化処理手段を複数箇所に分散して設置するものとすることもできる。たとえば図示するように、前記吸気口32の端部に浄化処理手段331としてプレフィルターを、また装置31内部には浄化処理手段332として紫外線殺菌灯を、さらに浄化処理手段333として、該紫外線殺菌灯による紫外線を光源としてVOC、汚染物質その他の処理対象空気・物質等を分解処理可能な光触媒を組み込んだ光触媒ユニットを、分散配設してもよい。
【0023】
図3では、前記気流形成手段34は装置31内の両浄化処理手段332、334間に設けてあるが、前述の通りその位置に本発明が限定されるものではなく、これを該浄化処理手段332よりも前流側に、あるいは該浄化処理手段333よりも後流側に配設してもよい。
【0024】
図4に示すように本発明空気浄化装置41は、前記主排気部46と前記副排気部47から、浄化程度の異なる気流を排出するために、装置内で空気流路を分岐して、それぞれ別個の浄化処理手段43H、43Lを設ける構成とすることができる。特に該主排気部6から排出する浄化空気流の浄化程度を高くするよう、該浄化処理手段43Hには、より高い浄化機能のものを採用することが望ましい。
【0025】
またこの場合も、図4−2に示すように、該浄化処理手段を分割して設けることができる。たとえば、前記吸気口422の端部に浄化処理手段4231としてプレフィルターを、また装置421内部には浄化処理手段4232として紫外線殺菌灯を、さらに各気流用の個別の浄化処理手段4233H、4233Lとして、該紫外線殺菌灯による紫外線を光源とする光触媒ユニットを、分散配設してもよい。かかる該浄化処理手段の分散配設例では、該浄化処理手段4223Hの方において、より分解性能の高い光触媒ユニットを採用することが望ましい。
【0026】
図5に示すように本発明空気浄化装置51は、前記主排気部56と前記副排気部57に、各排気部から異なる流圧もしくは流速で気流を排気できるよう、それぞれ別個に前記気流形成手段53H、53Lを設けた構成とすることができる。これにより、浄化空気流とバリア空気流の流圧もしくは流速を違えることができ、特にバリア空気流の流圧もしくは流速をより大きくすることによって、周囲空気と浄化空気流との間の遮断効果を高めて、本装置51の有するいわばパーソナルな空気浄化性能を高めることができる。
【0027】
このように、各排気部から異なる流圧もしくは流速で気流を排気せしめる構成としては、該副排気部に係る各排気口の面積を、該主排気部に係る排気口の面積よりも小さく形成するという方法を採ってもよい。この場合、副排気部に入る直前の空気の流速が主排気部に入る直前のそれと同じかそれ以上であれば、いわばオリフィス的な効果によって流速(流圧)が大きくなり、有効なバリア空気流を排出することができる。
【0028】
図6は、本装置の他の浄化処理手段配設例を示すものである。図示するように、装置61内に吸い込まれた被処理空気をまず第一段階の浄化処理手段6331にて比較的粗く処理し、これを前記気流形成手段64を経て各気流用に分岐し、浄化空気流形成のために前記主排気部66に流す空気については、分岐後に、より浄化程度の高い第二の浄化処理手段6332を通過させることとし、一方前記副排気部67に流しバリア空気流とする空気については、その後の浄化処理は施さずに処理する、というものである。
【0029】
ここで、両浄化処理手段6331、6332は、たとえば光触媒ユニットなど同種類の浄化手段であって浄化処理機能が異なるものを充ててもよいし、あるいはまた、第一の浄化処理手段6331には紫外線殺菌灯、第二の浄化処理手段6332には触媒による分解装置、のように異なる種類の浄化手段を配置することとしてもよい。
【0030】
なおまた、図7に示すバリエーションのように、各気流形成のための気流形成手段を、74H、74Lのようにそれぞれ個別に設けることとしてもよい。
【0031】
図8は、本発明空気浄化装置において、排気口側から見た排気部の配置構成例を示す説明図である。図示するように本装置の副排気部は、浄化空気流を上方および両側方から包囲してこれを周囲空気から遮断可能な前記バリア気流を排気できるように、前記主排気部の排気口86等の外側に複数配置された排気口87a等からなる構成とすることができる。
【0032】
つまり図の(I)の例のように、浄化空気流を排出する排気口86を本装置の略中央に配置し、その左右側および上側に、バリア空気流を排出する排気口87a、87bおよび88cを配置した構成とすることができる。しかし本発明はかかる配置構成に限定されるものではない。一例としては(II)のように、副排気部を構成する排気口として略逆U字形状、その他の山型形状等の単一の排気口827を設けることとしてもよい。また、(III)のような構成ももちろん該当するし、その他主排気部を副排気部にて囲むように形成された排気口構成である限り、各排気部に係る排気口の数や形状、あるいは細部の位置関係に関わらず、すべて本発明に該当する。
【0033】
なお、本発明空気浄化装置の吸気口は、装置筐体に直接設けられた構成とすることができる。かかる簡素な構成は、運搬・設置・保守の煩雑さを軽減できる。後述するように、筐体の裏側に設けたり、あるいは底部に設けてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図9−1は、実施例1の正面図、
図9−2は、実施例1の側方断面図、
図9−3は、実施例1の内部を示す正面図、そして、
図9−4は、実施例1の背面図である。これらに図示するように本実施例装置91は、大きくは、薄手かつ横長のパネル状の筐体91Cと、これを支持するスタンド91Sとから構成される。使用者の位置する空間つまり浄化対象空間が、横臥位か座位か立位かにより排気部の高さを調節できるように、スタンド91Sは上下伸縮可能に形成されている。吸気口92aは装置91の筐体91Cの背面に設けられる。排気部は筐体91Cの前面に設けられる。
【0035】
浄化処理手段としてプレフィルター931、紫外線殺菌灯932、およびこれを光源として機能する光触媒ユニット933を備える。また、気流形成手段として2台のシロッコファン946、947を搭載し、これは紫外線殺菌灯932の後流側、光触媒ユニット933の前流側に設けられる。
【0036】
プレフィルター931には、微粒子除去性能および集塵効果に優れるULPAフィルターを用いることができる。また、光触媒ユニット933には、公知の酸化チタン光触媒を適宜用いることができる。本装置91では、後述する主排気部の配置構成に合わせて、筐体91C内部の左右両端部域に設けられる。
【0037】
排気部は、浄化空気流を排出するための主排気部を構成する排気口96a、96bを筐体91C前面の左右両端部域に配置し、それらのさらに両外側、および上部に、バリア空気流を排出するための副排気部を構成する排気口97a、97bおよび97cを配置する。副排気部の排気口97a、97bおよび97cは、より狭く、小面積である。
【0038】
シロッコファン947は、副排気部のバリア空気流形成用流路に気流を形成するためのものとして設けられる。一方シロッコファン946は、主排気部用として設けられる。前者の気流がより強く設定される。
【0039】
以上の構成により本例装置91では、シロッコファンによって吸気口92aから被処理空気が装置91内に導入され、まずプレフィルター931にて被処理空気中の微粒子が高効率で集塵除去され、その後、紫外線殺菌灯932において細菌等微生物が処理され、シロッコファン947により導かれて流路987を進む気流は、バリア空気流として排気口97a、97bおよび97cから排出される。一方、シロッコファン946により導かれる気流は、その中のVOCその他の分解対象物質が、光触媒ユニット933において光触媒による分解作用を受けて浄化処理され、浄化空気流として排気口96a、96bから排出される。
【0040】
排気口97a等からのバリア空気流は、排気口96a等からの浄化空気流よりも大流速もしくは高い流圧にて排出される。また、主排気部(排気口96a等)および副排気部(排気口97a等)は、本装置91の前面部に、前者を内側に配置するアーチ形状をなして配置される。したがって、バリア空気流の内側に形成される浄化空気流は、バリア空気流によって外部の空気との間で遮断され、浄化対象空間外への拡散が制限されて該空間に対する浄化空気提供を効果的に行えるとともに、該空間内にいる人間の存在によって発生し得る新たな汚染空気の外部への拡散防止、また逆に、外部からの汚染空気の進入防止を効果的に行うことができる。本願において「アーチ形状」とは、図9−1に例示されるように、中央部を、少なくとも左右両側と上方において囲むようにした形状を広く指す。したがって、後出図12のパターン(I)〜(III)はこれに該当するし、また同図の(IV)も該アーチ形状が少なくとも含まれており、広くは該当するものである。
【0041】
本例装置91は、使用する人間が横臥姿勢か、着座姿勢か、もしくは立位姿勢をとるかに関わらず、いずれの姿勢の場合でも、その人間の呼吸対象空間に対して気流を送り、該呼吸対象空間の空気浄化用途に用いることができる。本装置91は、その前面の中央部には上記いずれの排気口も設けられない。使用する人間が横臥姿勢その他のいずれの姿勢である場合であっても、本装置91はその中央部が使用者の体の正面に対向するように設置されることにより、人体にまともに浄化空気流やバリア空気流が当たらないため、ドラフト感を防止することができる。かつまた、呼吸対象空間たる人体の両側方を浄化空気流がカバーするように排気がなされるため、必要な空間に対する集中的・効果的な空気浄化がなされる。
【0042】
<実施例2>
図9−5は、実施例2の側面図である。本例装置91Bは、吸気口92bが筐体91Cの底部に設けられる他は、実施例1と同じである。かかる位置への吸気口配置は、本装置91Bを設置する裏側の空間が狭小な場合、たとえば室内の壁面との間隙がほとんどない場合などに有効である。本装置91Bは、吸気口として、底面の吸気口92bと背面部の吸気口92aの二箇所を設け、設置環境によって適宜吸気口を選択できる、あるいは併用する設計とすることができる。
【0043】
<実施例3>
図10は、実施例3内部の正面図である。バリア空気流と浄化空気流を分岐して気流形成するための気流形成手段として、シロッコファンが計四台設けられる他は、実施例1と同様である。特に副排気部の計三箇所の排気口からの排気用にそれぞれ一台ずつのファンを用いる構成は、バリア空気流のバリア機能をより高めることができる。
【0044】
<実施例4>
図11は、実施例4内部の正面図、
図11−2は、実施例4の側方断面図である。シロッコファンは一台のみを設け、浄化処理手段として、浄化空気流用の光触媒ユニット11336の他に、バリア空気流用の光触媒ユニット11337を設けた構成とする他は、実施例1と同様である。バリア空気流自体の空気浄化度も高めた構成である。
【0045】
<実施例5>
図12は、本発明の排気部の構成例を示す説明図である。主排気部を内側、副排気部を外側とするアーチ形状による構成は上述の通りであるが、各実施例にて採用した構成の他、ここに図示するように、種々のパターンにて排気部を構成することができる。後述する使用例中、たとえばベッド用途ではパターン(IV)のような構成の採用は敢えて不要といえるが、着座位用途の場合等は、下方におけるバリア空気流形成がより好ましい場合があり、(IV)の採用は有意義である。
【0046】
以下、本発明の空気浄化装置の使用例について説明するが、その前に、人体の状態と空気の流れについて従来公知の知見を確認的に説明する。
(ア)基本原理
生理発熱により浮力上昇流が人体に沿いながら人体中心部に収束し、その上部に上昇流が生じて、人体はそれぞれの状態において可能な位置の空気を呼吸している。
(イ)横臥位の場合
胸部付近は、心臓などの臓器が存在することにより他の部位よりも体温が高い。そのため、上半身前面略中央部領域では浮力上昇流が発生する。また、
横臥位の吸気勢力範囲は比較的横方向に広く分布しており、人体は床面付近の空気を口元位置に吸引している。
(ウ)立位、座位の場合
顔面近傍に至る浮力上昇流は顎によって遮られる。
【0047】
したがって、これらの現象を踏まえて、呼気勢力範囲に対して浄化された空気を集中的に供給する本発明により、人体に対し効率よく改善された空気を供給することが可能となる。
【0048】
<実施例6>
図13Aは、実施例6の空気浄化装置を横臥位状態の使用者に対して使用中の場合について、右体側方向から見た説明図、
図13Bは、図13Aの場合について、上方から見た説明図、
図13Cは、図13Aの場合について、足方向から見た説明図、そして、
図13Dは、実施例6の空気浄化装置を複数の使用者に対して使用中の状態を上方から見た説明図である。横臥位状態において、呼気勢力範囲は頭付近の人体側面の床面水平方向に分布し、人体は口周辺の床面から空気を誘引し、吸入することが知られている。したがって、これらの範囲へ浄化した空気を提供することにより、汚染空気の吸引暴露を防止ないしは軽減することができる。
【0049】
図13Aに示すように、空気浄化装置131をベッドでの就寝など横臥位をとる使用者のために設置し用いた場合、頭部の上部全体にわたってバリア空気流VA13が形成され、浄化空気流CA13の上方への拡散および上方にある外部空気の浄化空気流CA13に対する進入が遮断される。
【0050】
また、図13Bに示すように、頭部の左右両側方全体にわたってバリア空気流VA13が形成され、その内側に形成される浄化空気流CA13の左右方向への拡散、および左右にある外部空気の浄化空気流CA13に対する進入が遮断される。浄化空気流CA13は使用者の呼気勢力範囲をカバーして浄化空気を供給するため、使用者は外部の汚染空気吸入を有効に防止できるとともに、浄化空気を有効に呼吸することができる。
【0051】
図13Cに示すように、使用者および浄化空気流CA13の上方・左右両方はバリア空気流VA13により囲まれ、使用者の下方はベッド等であるため、バリア空気流VA13の外部の空気との遮断は有効になされる。
【0052】
図13Dに示すように、本例装置131を病院や寄宿舎等のベッドが複数設置される共同施設に用いる場合、個々の使用者において上述のようないわばパーソナルな空気浄化作用を得られるとともに、特に、隣接する他の使用者からのクシャミにより発生したパーティクル等による汚染を、それぞれのバリア空気流VA13によって効果的に防止することができる。
【0053】
<実施例7>
図14Aは、実施例7の空気浄化装置を座位状態の使用者に対して使用中の場合について、上方から見た説明図、また、
図14Bは、図13Aの場合について、左方向から見た説明図である。図は特に、病院の診察室での使用状態を示している。座位状態において、呼気勢力範囲は口位置から床方向に分布するが、脚部からの上昇流が一度膝部で剥離を起こし、垂直方向へ拡散する傾向があることが知られている。また、大腿部上方で空気が吹き溜まり傾向を起こし、人体はこの空間から空気を吸引することも知られている。したがって、これらの範囲へ浄化した空気を提供することにより、汚染空気の吸引を防止ないしは軽減することができる。
【0054】
図14A、14Bに示すように、空気浄化装置141を着座位をとる使用者のために机の背面側に設置し用いた場合、身体の上部全体および左右両側方にわたってバリア空気流VA14が形成され、浄化空気流CA14の周囲への拡散および周囲にある外部空気の浄化空気流CA14に対する進入が遮断される。したがって、病院の診察室でこれを用いることにより、使用者たる医者は患者から放出される汚染空気から保護され、清浄な空気を呼吸することができる。前出図12のパターン(IV)のように、左右両側方および上方に加えてバリア空気流を下方からも形成可能な排気口構成を用いることにより、着座位姿勢時の下方からの汚染空気進入を遮断することができ、本装置の効果をより高めることができる。
【0055】
<実施例8>
図15A、15Bは、実施例8の空気浄化装置を座位状態の複数の使用者に対して使用中の場合について、上方から見た説明図である。図は特に、図書館、学習塾あるいはオフィス等の共同施設における使用状態を示している。
【0056】
各図に示すように、空気浄化装置151を着座位をとる使用者のために机の背面側に設置し用いた場合、身体の上方および左右両側方を保護するようにバリア空気流VA15が形成され、浄化空気流CA15の周囲への拡散および周囲にある外部空気の浄化空気流CA15に対する進入が遮断される。したがって、かかる共同施設においてこれを用いることにより、使用者は隣接する者から放出される汚染空気から保護されて、清浄な空気を呼吸することができる(中央の使用者にとって、図15B)とともに、自身が放出する汚染空気を他者に対して及ぼすことを防止することができる(中央の使用者にとって、図15A)。
【0057】
なおまた、立位状態においては、呼気勢力範囲は口位置から床方向に分布し、人体が自らの上昇流により室下部から誘引した空気を吸引していることが知られている。したがって、本発明の空気浄化装置を用いてこれらの範囲へ浄化した空気を提供することにより、使用者は周囲の汚染空気から保護され、清浄な空気を呼吸することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の空気浄化装置によれば、使用者の呼吸対象空間の空気を集中的に、ドラフト感を生じさせることなく、従来以上に効果的に浄化することができる。本発明装置は広い範囲で適用が可能であり、横臥位、立位、座位の各姿勢に対し、また学校・病院・図書館・オフィスといった施設においても、使用者各個人のいわばパーソナルな空間を、他者・外部から遮断された形で清浄に維持することができる。したがって、居住環境・学習環境・執務環境・学校現場・医療現場その他における空気浄化機能とその高度化の必要性が増大している中、極めて利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図2】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図3】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図4】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図4−2】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図5】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図6】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図7】本発明空気浄化装置の基本的な構成について示す概念図である。
【図8】本発明空気浄化装置において、排気口側から見た排気部の配置構成例を示す説明図である。
【0060】
【図9−1】実施例1の正面図である。
【図9−2】実施例1の側方断面図である。
【図9−3】実施例1の内部を示す正面図である。
【図9−4】実施例1の背面図である。
【図9−5】実施例2の側面図である。
【図10】実施例3内部の正面図である。
【図11】実施例4内部の正面図である。
【図11−2】実施例4の側方断面図である。
【図12】実施例5の排気部の構成例を示す説明図である。
【0061】
【図13A】実施例6の空気浄化装置を横臥位状態の使用者に対して使用中の場合について、右体側方向から見た説明図である。
【図13B】図13Aの場合について、上方から見た説明図である。
【図13C】図13Aの場合について、足方向から見た説明図である。
【図13D】実施例6の空気浄化装置を複数の使用者に対して使用中の状態を上方から見た説明図である。
【図14A】実施例7の空気浄化装置を座位状態の使用者に対して使用中の場合について、上方から見た説明図である。
【図14B】図13Aの場合について、左方向から見た説明図である。
【図15A】実施例8の空気浄化装置を座位状態の複数の使用者に対して使用中の場合について、上方から見た説明図である。
【図15B】実施例8の空気浄化装置を座位状態の複数の使用者に対して使用中の場合について、上方から見た説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1、11、21、31、41、421、51、61、71…空気浄化装置
2、12、22、32、42、422、52、62、72…吸気口
3、13、23、331、332、333、431、43H、43L、4231、4232、4233H、4233L、4231、4232、4233H、4233L、531、53H、53L、631、6331、6332、731、7331、7332…浄化処理手段(プレフィルター、光触媒ユニットなど具体的なものも含む)
4、14、24、34、44、424、54H、54L、64、74H、74L…気流形成手段
5、15、25、35、45、425、55、65、75…排気部
6、16、26、36、46、426、56、66、76…主排気部
7、17、27、37、47、427、57、67、77…副排気部
81C、821C、831C…筐体
86、826、836…主排気部の排気口
87a、87b、87c、827、837a、837b、837c…副排気部の排気口
【0063】
91、91B、101、111…空気浄化装置
91C、101C、111C…筐体
91S、101S、111S…スタンド
92a、92b…吸気口
931、1131…プレフィルター
932、1032、1132…殺菌灯
933、1033、11336、11337…光触媒ユニット
946、947、1046、1047、114…ファン
95、115…排気部
96a、96b…主排気部の排気口
97a、97b、97c…副排気部の排気口
987、1087、1187…バリア空気流用流路
【0064】
1211C、1212C、1213C、1214C…筐体
1261、1262a、1262b、1263a、1263b、1263c、1264a、1264b…主排気部の排気口
1271a、1271b、1271c、1272a、1272b、1272c、1273a、1273b、1273c、1274a、1274b、1274c、1274d…副排気部の排気口
131、141、151…空気浄化装置
CA13、CA14、CA15…浄化空気流
VA13、VA14、VA15…バリア空気流
SA…被処理空気


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化処理された空気を供給する空気浄化装置であって、該装置は、未処理空気を吸い込む吸気口と、未処理空気を浄化処理して浄化空気とする浄化処理手段と、本装置内に吸い込まれた空気を排出する排気部と、該吸い込まれた空気を該排気部から排出するための気流形成手段とからなり、該排気部は、浄化対象空間をカバーして該浄化空気流を排気する主排気部と、該浄化空気流と周囲空気とを遮断し得るバリア空気流を排気するための副排気部とからなり、該主排気部からの浄化空気流および該副排気部からのバリア空気流の全体として、周囲空気よりも正圧であるように、各気流を生成可能であることを特徴とする、空気浄化装置。
【請求項2】
前記副排気部は、複数の排気口からなることを特徴とする、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記副排気部からのバリア空気流は、前記主排気部からの浄化空気流よりも流圧もしくは流速が大きくなるよう、該副排気部が構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記主排気部と前記副排気部には、各排気部から異なる流圧もしくは流速で気流を排気できるよう、それぞれ別個に前記気流形成手段が設けられることを特徴とする、請求項3に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記副排気部に係る各排気口の面積は前記主排気部に係る排気口の面積よりも小さく形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記副排気部は、前記浄化空気流を上方および両側方から包囲してこれを周囲空気から遮断可能な前記バリア気流を排気できるように、前記主排気部の外側に複数配置された排気口からなることを特徴とする、請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
前記吸気口は本装置筐体に直接設けられていることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項8】
前記空気浄化装置は、横臥姿勢、着座姿勢もしくは立位姿勢をとる人間の呼吸対象空間に対して気流を送り、該呼吸対象空間の空気浄化用途を有するものであって、前記主排気部および副排気部は、本装置の前面部にアーチ形状をなして配置されることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項9】
前記浄化処理手段は、前記吸気口と前記排気部との間に設けられ、集塵フィルタの他に、光触媒部とこれを励起するための励起光源からなる光触媒ユニットとを備えてなることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項10】
前記光触媒ユニットは、前記主排気部に至る流路上に設けられ、該光触媒ユニットによる浄化作用を受けた浄化空気は該主排気部のみから排気されることを特徴とする、請求項9に記載の空気浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図10】
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【図11】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2007−175364(P2007−175364A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378683(P2005−378683)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591269712)アンデス電気株式会社 (33)
【Fターム(参考)】