説明

空気浄化装置

【課題】塵埃等の付着に起因する荷電集塵部の性能低下を抑制できる空気浄化装置を提案する。
【解決手段】空気通路(15)では、荷電集塵部(30)の上流側に噴霧部(21)が設けられる。噴霧部(21)からは空気中へ水が噴霧される。噴霧水は空気と共に荷電集塵部(30)の周囲を流れ、荷電集塵部(30)の電極(31,32)の洗浄に利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の塵埃を電気的に捕捉する荷電集塵部を備えた空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中の塵埃や臭気物質等を除去する空気浄化装置が知られており、室内の清浄化、あるいは厨房や工場等の排ガスの処理等の用途に広く適用されている。
【0003】
特許文献1には、厨房から排出される排ガスを処理する空気浄化装置が開示されている。この空気浄化装置は、空気が流れる空気通路に荷電集塵部が設けられている。荷電集塵部は、荷電部及び集塵部を有している。荷電部では、コロナ放電が生起されており、このコロナ放電により空気中の塵埃(油煙や水蒸気等も含む)が所定の電荷に帯電される。集塵部には集塵電極が設けられており、帯電された塵埃は集塵電極に電気的に誘引される。その結果、集塵電極の表面に空気中の塵埃が捕捉される。
【特許文献1】特開2007−29845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような荷電集塵部を搭載した空気浄化装置では、塵埃が上記荷電部や集塵部の各電極に付着することで集塵性能が徐々に低下してしまう。特に特許文献1のように、厨房の排ガスを処理する空気浄化装置では、被処理対象となる空気中に多量のオイルミストが含まれているので、集塵電極等の表面に油膜が形成され易く、集塵性能が低下し易い。従って、このような条件下においても、長期に亘って集塵性能を維持できる空気浄化装置が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、塵埃等の付着に起因する荷電集塵部の性能低下を抑制できる空気浄化装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ケーシング(11)内の空気通路(15)に配置されると共に空気中で帯電させた塵埃を電気的に誘引して捕捉するための荷電集塵部(30)を備えた空気浄化装置を前提としている。そして、この空気浄化装置は、上記空気通路(15)に、空気に向かって水を噴霧する噴霧部(21)が上記荷電集塵部(30)の上流側に設けられていることを特徴とするものである。ここで、第1の発明でいう「塵埃」は、空気中の微細な固体粒子だけでなく、例えばオイルミストや水蒸気等の微細な液体粒子も含むものであり、荷電集塵部(30)によって捕集可能な粒子を表す意味である。
【0007】
第1の発明では、空気通路(15)に荷電集塵部(30)が配置される。例えばコロナ放電等によって帯電された塵埃が荷電集塵部(30)の周囲を流れると、この塵埃はクーロン力によって集塵側の電極に引き寄せられる。その結果、荷電集塵部(30)の電極の表面に塵埃が捕捉され、空気中の塵埃が除去される。ここで、本発明では、荷電集塵部(30)の上流側に噴霧部(21)が設けられる。噴霧部(21)は、空気に向かって水を噴霧しており、この水は空気と共に荷電集塵部(30)を通過する。従って、荷電集塵部(30)では、その集塵側の電極等の表面に付着した塵埃が噴霧部(21)からの噴霧水によって洗い流される。その結果、荷電集塵部(30)では、集塵の捕集に利用される有効な表面積が確保されるので、集塵性能の低下が抑制される。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の空気浄化装置において、上記空気通路(15)には、上記噴霧部(21)に対向するように放電電極(22)が設けられ、噴霧部(21)から噴霧される水と上記放電電極(22)との間に電位差が付与されることで、上記放電電極(22)から噴霧水に向かって放電を生起するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明では、噴霧部(21)に対向するように放電電極(22)が配設される。所定の電源から、噴霧部(21)の噴霧水と放電電極(22)との間に電位差が付与されると、放電電極(22)から噴霧水に向かって放電が生起する。その結果、噴霧部(21)の近傍では、いわゆる活性種(ラジカル、オゾン、励起分子、高速電子等)が発生する。特に、水(即ち、HO)の存在下で放電を生起することで、OHラジカルが多量に発生する。この活性種は、噴霧水中に吸収/溶解しながら空気と共に荷電集塵部(30)側へ送られる。これにより、荷電集塵部(30)の各電極の表面に付着した塵埃(特にオイルミスト)が、活性種により分解除去されるので、荷電集塵部(30)の洗浄効果が更に向上する。また、この活性種により噴霧水中の有害物質の除去や殺菌がなされることで、水の清浄度が保たれる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明の空気浄化装置において、上記ケーシング(11)内では、下方に向かって空気が流れるように上記空気通路(15)が形成され、該空気通路(15)では、上記荷電集塵部(30)の上方に上記噴霧部(21)が配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明のケーシング(11)内の空気通路(15)では、下方に向かって空気が流れる。そして、空気通路(15)では、荷電集塵部(30)の上方に噴霧部(21)が配置される。従って、噴霧部(21)からの噴霧水は自重によって下方に滴下すると共に空気と共に下方へ流れる。その結果、噴霧水が荷電集塵部(30)の各電極の表面に積極的に送られるので、集塵電極等の表面における塵埃の洗浄効果が向上する。
【0012】
第4の発明は、第3の発明の空気浄化装置において、上記荷電集塵部(30)は、板状に形成されると共に鉛直な姿勢で上記空気通路(15)に保持される電極(31,32)を有していることを特徴とするものである。
【0013】
第4の発明では、荷電集塵部(30)の電極(31,32)が板状に形成されて鉛直な姿勢で空気通路(15)に設けられる。つまり、荷電集塵部(30)の電極(31,32)は、水平方向を向くように形成される。従って、噴霧部(21)から荷電集塵部(30)に向かって下方に送られる噴霧水は、荷電集塵部(30)の電極(31,32)の表面を伝って下側へ流下する。その結果、電極(31,32)の集塵面等における塵埃の洗浄効果が向上する。
【0014】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明の空気浄化装置において、上記ケーシング(11)の底部には、上記噴霧部(21)から噴霧された水が貯留される貯留槽(16)が形成され、上記貯留槽(16)に溜まった水を上記噴霧部(21)へ送るための水循環機構(50)を更に備えていることを特徴とするものである。
【0015】
第5の発明では、ケーシング(11)の底部に貯留槽(16)が形成される。噴霧部(21)からの噴霧水は、荷電集塵部(30)の洗浄に利用された後、貯留槽(16)に溜まり込む。貯留槽(16)に溜まった水は、水循環機構(50)により噴霧部(21)へ送られ、この噴霧部(21)から再び噴霧される。
【0016】
第6の発明は、第5の発明の空気浄化装置において、上記水循環機構(50)には、上記貯留槽(16)から上記噴霧部(21)へ送られる水に対して放電を生起させる放電部(60)が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
第6の発明では、水循環機構(50)に放電部(60)が設けられる。放電部(60)では、貯留槽(16)から噴霧部(21)へ送られる水に対して放電が生起される。そして、放電部(60)では、この放電に伴って上記の活性種が発生する。これらの活性種により、水中に吸収/溶解した有害物質(例えば油分やアンモニア等)が酸化分解されて除去される。また、貯留槽(16)等では、細菌が増殖してしまうことがあるが、上記活性種により水中の殺菌がなされる。これにより、細菌の増殖に伴うスラッジ等の発生が防止される。その結果、水循環機構(50)により循環される水の清浄度が保たれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、荷電集塵部(30)の上流側において、噴霧部(21)から水を噴霧するようにしたので、この水により荷電集塵部(30)の荷電部や集塵部の各電極の表面に付着した塵埃を洗い流すことができる。従って、荷電集塵部(30)における塵埃の捕集に寄与する有効な表面積を充分確保できるので、集塵性能の低下を抑制できる。その結果、長期に亘って安定して塵埃を捕集できる空気浄化装置を提供できる。
【0019】
また、噴霧部(21)からの噴霧水により、空気中に含まれる塵埃や有害物質等を吸収/溶解して、いわゆるスクラバー作用を得ることができる。その結果、この空気浄化装置における空気の浄化効率を向上できる。
【0020】
特に第2の発明では、放電電極(22)から噴霧水に向かって放電を行うことで、噴霧水に多量の活性種を含ませることができる。その結果、活性種を含んだ噴霧水により、荷電集塵部(30)を効果的に洗浄することができ、集塵性能の低下を一層効果的に抑制できる。また、スクラバー作用と活性種による酸化分解作用により、空気中の有害物質等を効果的に除去でき、空気の浄化効率を更に向上できる。加えて、活性種により、噴霧水中の有害物質の除去や殺菌を行うことができる。
【0021】
第3の発明によれば、空気通路(15)で空気を下向きに流すと共に、荷電集塵部(30)の上方から水を噴霧しているので、噴霧水を積極的に荷電集塵部(30)に送ることができ、荷電集塵部(30)の洗浄効果を向上できる。また、第4の発明によれば、板状の電極(31,32)を鉛直な姿勢で配置したので、これらの電極(31,32)の表面に沿うように水を流下させ、集塵面等を効果的に洗浄できる。
【0022】
更に、第5の発明によれば、貯留槽(16)に回収された噴霧水を水循環機構(50)により再び噴霧部(21)に送る、いわゆる循環式の散水を行うようにしたので、例えば一過式の散水と比べて水の補給量、消費量を減らすことができる。
【0023】
特に第6の発明では、貯留槽(16)から噴霧部(21)へ送られる水を放電部(60)により浄化している。これにより、水中の清浄度を保つことができる。その結果、例えば水の汚染に伴い荷電集塵部(30)の洗浄効果が低下してしまうことや、水の汚染に伴い上記のスクラバー作用が低下してしまうことを回避できる。加えて、細菌の増殖に伴うスラッジの発生を防止でき、このスラッジが例えば噴霧部(21)の噴霧口に詰まって噴霧部(21)の機能が損なわれてしまうことも回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
実施形態に係る空気浄化装置(10)は、レストランやホテル等の厨房空間から排出される空気(排ガス)を被処理対象とするものである。空気浄化装置(10)は、空気中のオイルミスト(油分が微細な粒子状になったもの)や、他の有害物質、臭気物質等が除去する。
【0026】
図1に示すように、空気浄化装置(10)は、縦長のケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)は、中空の円筒状あるいは矩形状に形成されている。ケーシング(11)の上部には、吸込口(12)が開口している。吸込口(12)は、図示しないダクト等を介して厨房空間と繋がっている。また、ケーシング(11)の下部の例えば側面には、吹出口(13)が開口している。吹出口(13)は、室外空間に臨んでいる。また、吹出口(13)には、空気を搬送するためのファン(14)が設けられている。そして、ケーシング(11)では、吸込口(12)から吹出口(13)に亘って空気が流れる空気通路(15)が形成されている。即ち、ケーシング(11)では、空気が下方に向かって流れるように空気通路(15)が形成されている。また、ケーシング(11)には、その底部に貯留槽(16)が形成されている。貯留槽(16)には、後述する噴霧ノズル(21)からの噴霧水が回収されて貯留される。
【0027】
空気通路(15)では、その上側から下側(空気流れの上流側から下流側)に向かって順に、放電噴霧部(20)、荷電集塵部(30)、及びデミスタ部(40)が設けられている。
【0028】
放電噴霧部(20)には、上記噴霧ノズル(21)と放電電極(22)とが設けられている。噴霧ノズル(21)は、空気に向かって水を噴霧する噴霧部を構成している。噴霧ノズル(21)は、その噴霧口が下方を向いている。また、噴霧ノズル(21)は、中空円錐状に噴霧水を噴出するように構成されている。つまり、噴霧ノズル(21)の近傍では、噴霧水が中空円錐状の領域のみに存在し、その内部には実質的に存在しないことになる。
【0029】
噴霧ノズル(21)の上端には、水循環流路(51)の流出端が接続されている。水循環流路(51)の流入端は、上記貯留槽(16)と繋がっている。つまり、水循環流路(51)は、貯留槽(16)に溜まった水を噴霧ノズル(21)へ送るための流路を構成している。また、水循環流路(51)には、その流出側から流入側に向かって順に、水循環ポンプ(52)と水フィルタ(53)とが設けられている。水循環ポンプ(52)は、貯留槽(16)に溜まった水を噴霧ノズル(21)まで汲み上げる水搬送手段を構成している。水フィルタ(53)は、水循環流路(51)を流れる水中に含まれる微細なゴミ(固形粒子)を物理的に捕捉する手段であり、この水を浄化する水浄化手段を構成している。上記水循環流路(51)及び水循環ポンプ(52)は、貯留槽(16)に溜まった水を噴霧ノズル(21)へ送るための水循環機構(50)を構成している。
【0030】
噴霧ノズル(21)の下側には、3本の上記放電電極(22)が設けられている。放電電極(22)は、針状あるいは棒状に形成され、鉛直な姿勢でケーシング(11)等に保持されている。放電電極(22)は、その先端部が噴霧ノズル(21)の噴霧口と向かい合っている。また、各放電電極(22)は、噴霧ノズル(21)の噴霧水が存在する中空円錐状の領域の内部に位置している。
【0031】
上記噴霧ノズル(21)と放電電極(22)とには、所定の通電経路を介して電源(23)が接続されている。電源(23)は、高圧の直流電源であることが好ましいが、交流電源やパルス電源であっても良い。また、電源(23)は、放電電極(22)からの放電の電流値が一定となるような、いわゆる定電流制御されるものが好ましい。
【0032】
本実施形態では、噴霧ノズル(21)が負極側となり、放電電極(22)が正極側となっている。電源(23)からは、噴霧ノズル(21)と放電電極(22)とに電位差が付与される。その結果、放電噴霧部(20)では、放電電極(22)から噴霧水に向かってストリーマ放電が生起する。
【0033】
図1及び図4に示すように、荷電集塵部(30)には、第1電極板(31)と第2電極板(32)とイオン化電極(33)とが設けられている。
【0034】
第1電極板(31)は、縦長の板状に形成されている。空気通路(15)では、複数の第1電極板(31)が鉛直な姿勢で保持されながら所定の間隔を介して平行に配列されている。第1電極板(31)では、その上側(上流側)寄りの略半分の部位が荷電電極部(31a)を構成し、その下側(下流側)寄りの略半分の部位が集塵電極部(31b)を構成している。つまり、第1電極板(31)には、荷電電極部(31a)と集塵電極部(31b)とが一体的に形成されている。
【0035】
イオン化電極(33)は、隣り合う荷電電極部(31a)の間の中間位置にそれぞれ設けられている。イオン化電極(33)は、第2電極板(32)の先端部を鋸歯状に形成したものである。イオン化電極(33)は、第1電極板(31)と平行な姿勢で、上方に突出する先鋭な突起を構成している。そして、上記荷電電極部(31a)とイオン化電極(33)とが、空気中の塵埃(主としてオイルミスト)を帯電させるための荷電部を構成している。なお、上記イオン化電極(33)は、例えば第2電極板(32)と別体に形成しても良いし、例えば棒状あるいは線状のイオン化線によって構成されていても良い。
【0036】
第2電極板(32)は、隣り合う集塵電極部(31b)の間の中間位置にそれぞれ設けられている。第2電極板(32)は、第1電極板(31)と平行で且つ水平に延びる板状に形成されている。そして、第2電極板(32)は、隣り合う各集塵電極部(31b)と向かい合うように配列されている。第2電極板(32)及び集塵電極部(31b)とは、上記荷電部で帯電した塵埃を電気的に捕捉するための集塵部を構成している。また、第1電極板(31)と第2電極板(32)とには、所定の通電経路を介して電源(34)が接続されている。本実施形態では、第1電極板(31)が正極側となり、第2電極板(32)が負極側となっている。
【0037】
上記デミスタ部(40)は、空気中に含まれる水滴を物理的に捕捉する水滴捕集手段を構成している。
【0038】
−運転動作−
次に実施形態に係る空気浄化装置(10)の運転動作について説明する。空気浄化装置(10)の運転時には、ファン(14)及び水循環ポンプ(52)が運転状態となる。また、電源(23)から噴霧ノズル(21)及び放電電極(22)へ電圧が印加され、電源(34)から第1電極板(31)及び第2電極板(32)へ電圧が印加される。
【0039】
ファン(14)の起動に伴い、厨房空間から排出された空気が吸込口(12)よりケーシング(11)内へ吸い込まれる。ケーシング(11)内の空気通路(15)を流れる空気は、下方へ流れて放電噴霧部(20)を通過する。放電噴霧部(20)では、噴霧ノズル(21)から噴霧された噴霧水に対して、放電電極(22)からストリーマ放電が生起している。具体的には、図2に示すように、噴霧ノズル(21)からはマイナスの電荷の粒状の水滴(21a)が飛び出している。噴霧されたマイナス電荷の水滴(21a)からは、放電電極(22)に向かって電子なだれが発生する。これにより、この水滴(21a)はマイナスの電荷を失い、電気的にニュートラルの状態になる。
【0040】
一方、放電電極(22)からはプラス電荷のリーダーと呼ばれる微小アーク(光柱)が水滴(21a)に向かって進展する。ここで、マイナスに帯電した水滴(21a)が仮に停滞している、あるいは噴霧ノズル(21)側へ向かって移動する場合には、上記リーダーが噴霧ノズル(21)まで更に進展してスパークが発生し易くなる。これに対し、本実施形態では、噴霧ノズル(21)から噴霧された水滴(21a)が噴霧ノズル(21)から離れる方向(即ち、放電電極(22)へ近づく方向)へ移動しているので、リーダーの進展が抑制されてスパークの発生が防止される。加えて、噴霧された複数の水滴(21a)は、互いに僅かな間隔で離れることになり、各水滴(21a)の間には空間が形成される。この空間が水滴(21a)の絶縁体として機能するので、リーダーの進展が抑制されてスパークの発生が防止される。放電噴霧部(20)では、電子なだれ→リーダー形成→リーダー消滅→電子なだれ→・・・が繰り返され、ストリーマ放電が発光を伴ったフレア状のプラズマ柱として安定して形成される。
【0041】
また、同図に示すように、噴霧ノズル(21)からは中空円錐状に水滴(21a)が噴霧されており、放電電極(22)はこのような中空円錐状の領域の内部に配置される。従って、放電電極(22)の先端から水滴(21a)の間に一定の距離が保持されるので、スパークの発生が防止されてストリーマ放電が安定する。また、放電電極(22)は、中空円錐状の領域の軸心寄りに位置しているので、放電電極(22)の先端からは、その周囲の水滴(21a)に対して放射状あるいはフレア状にストリーマ放電が生起する。
【0042】
以上のようなストリーマ放電により、放電噴霧部(20)では活性種(高速電子、イオン、オゾン、ラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など))が発生する。特に、放電場には多量の水が供給されているので、水の存在下において、OHラジカルの発生が促される。また、発生した活性種が、噴霧された水に付着するようにして飛散することで、活性種の拡散効果が増すことになる。
【0043】
空気中に含まれる有害物質や臭気物質は、上記活性種と反応することで酸化分解されて除去される。また、臭気物質のうち親水性の物質については、噴霧水に吸収されて捕捉される。更に、臭気物質のうち疎水性の物質については、活性種によって酸化されて親水性に変化し易い。従って、親水性となった臭気物質も、噴霧水に吸収されて捕捉される。
【0044】
以上のように放電噴霧部(20)では、ストリーマ放電による有害物質等の酸化分解作用と、噴霧ノズル(21)からの噴霧水を利用した有害物質等の吸収/溶解作用(即ち、スクラバー作用)により、有害物質等が効果的に除去される。なお、このような有害物質等の除去は、空気通路(15)における放電噴霧部(20)の下流側でも同様に行われることになる。
【0045】
放電噴霧部(20)を流出した空気は、更に下方に流れて荷電集塵部(30)を通過する。荷電集塵部(30)では、まず空気が荷電電極部(31a)とイオン化電極(33)との間を通過する。ここで、イオン化電極(33)と荷電電極部(31a)との間では、コロナ放電が行われている。このコロナ放電により、空気中のオイルミスト等がマイナスの電荷に帯電する。その後、空気は第2電極板(32)と集塵電極部(31b)との間を通過する。その結果、マイナスの電荷に帯電したオイルミスト等は、正極側となる集塵電極部(31b)の表面に付着する。具体的に、集塵電極部(31b)では、水平側を向く集塵面にオイルミスト等が誘引されて捕捉される。これにより、空気中のオイルミスト等が除去される。
【0046】
荷電集塵部(30)を流出した空気は、更に下方に流れてデミスタ部(40)を通過する。デミスタ部(40)では、空気中に含まれる水滴が物理的に捕捉される。以上のようにして、有害物質や臭気物質、オイルミストや水分等が除去された空気は、吹出口(13)から室外へ放出される。
【0047】
一方、デミスタ部(40)で捕捉された水は、下方へ滴下して貯留槽(16)に回収される。貯留槽(16)に貯留された水は、水循環ポンプ(52)によって水循環流路(51)へ吸い込まれ、水フィルタ(53)を通過した後、噴霧ノズル(21)から空気中へ再び噴霧される。
【0048】
−噴霧水の洗浄作用−
ところで、上記の運転動作においては、空気中に含まれるオイルミストが集塵電極部(31b)の表面に次々と付着していくため、集塵電極部(30b)の表面(特に集塵面)が油等で覆われてしまう虞がある。このように集塵面が汚れてしまうと、塵埃の捕捉に寄与する有効な表面積が小さくなり、オイルミスト等の集塵性能が低下してしまう。そこで、本実施形態では、噴霧ノズル(21)の噴霧水を利用して集塵電極部(31b)を洗浄するようにしている。
【0049】
具体的には、噴霧ノズル(21)から噴霧された噴霧水は、その自重により下方に滴下し、更に空気と共に下方へ流れて第1電極板(31)や第2電極板(32)の表面に積極的に送り込まれる。その結果、集塵電極部(31b)に付着した油等が噴霧水によって洗い流される。また、第2電極板(32)やイオン化電極(33)に油が付着した場合には、この油も噴霧水によって洗い流される。更に、第1電極板(31)や第2電極板(32)は、鉛直な姿勢となっているので、噴霧水は各電極板(31,32)の表面を伝うように流下する。これにより、各電極板(31,32)の洗浄効果が増す。
【0050】
加えて、噴霧水中には、上記の活性種が含まれているので、この活性種により各電極板(31,32)の表面に付着した油等が徐々に酸化分解される。その結果、油等が親水性の物質に変化していくので、噴霧水に溶解し易くなり、各電極板(31,32)の洗浄効果が更に向上する。
【0051】
荷電集塵部(30)では、集塵電極部(31b)の集塵面等が適宜洗浄されることで、有効な集塵面積が確保される。これにより、荷電集塵部(30)では、長期に亘って所望とする集塵性能が維持されることになる。
【0052】
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、荷電集塵部(30)の上流側において、噴霧ノズル(21)から水を噴霧するようにしたので、この水により集塵電極部(31b)や他の電極の表面に付着した油等を洗い流すことができる。従って、集塵電極部(31b)における塵埃の捕集に寄与する有効な表面積を充分確保でき、空気浄化装置(10)の集塵性能の低下を抑制できる。また、噴霧ノズル(21)からの噴霧水により、空気中に含まれるオイルミストや有害物質等を吸収/溶解して、いわゆるスクラバー作用を得ることができる。その結果、空気浄化装置(10)における空気の浄化効率を向上できる。
【0053】
また、放電電極(22)から噴霧水に向かってストリーマ放電を行うことで、噴霧水に多量の活性種を含ませることができる。その結果、活性種を含んだ噴霧水により、集塵電極部(31b)等を効果的に洗浄することができ、集塵性能の低下を一層効果的に抑制できる。また、スクラバー作用と活性種による酸化分解作用により、空気中の有害物質等を効果的に除去でき、空気の浄化効率を更に向上できる。
【0054】
更に、上記活性種により、噴霧水中に含まれる有害物質の除去や、噴霧水中での殺菌を行うこともできる。具体的に、噴霧水中には上記のスクラバー作用により、空気中に含まれるオイルミストや有害物質が吸収されるが、これらの成分を活性種により酸化分解できる。従って、貯留槽(16)に回収した水を噴霧ノズル(21)から再び噴霧するようにしても、噴霧水の清浄度が保たれる。よって、噴霧水の汚染に起因して集塵電極部(31b)の洗浄効果が低下してしまうことを防止できる。また、噴霧水の汚染に起因してスクラバー作用が低下してしまうことも防止できる。
【0055】
また、噴霧水を循環させて再利用するようにすると、水中で菌が増殖し易い。従って、菌の繁殖に伴うスラッジ(細菌由来の微細な汚泥等)の発生を防止でき、スラッジが水循環流路(51)や噴霧ノズル(21)で目詰まりを起こしてしまうことを未然に回避できる。その結果、貯留槽(16)の水を確実に噴霧ノズル(21)へ送ることができ、噴霧ノズル(21)から所望とする噴霧動作を行うことができる。
【0056】
〈実施形態の変形例〉
図3に示す変形例の空気浄化装置(10)では、噴霧ノズル(21)の下側に放電電極(22)が設けられていない。つまり、この変形例では、噴霧ノズル(21)の近傍で放電が行われない。一方、この変形例では、水循環流路(51)の途中に、水浄化放電部(60)が設けられている。
【0057】
具体的に、水循環流路(51)は、貯留槽(16)と繋がる第1流路(51a)と、噴霧ノズル(21)と繋がる第2流路(51b)とを有し、両者の流路(51a,51b)の間に水浄化放電部(60)が設けられている。また、第1流路(51a)には、中継ポンプ(54)と水フィルタ(53)とが設けられている。
【0058】
水浄化放電部(60)は、中継タンク(60a)を有している。中継タンク(60a)は、中空の円筒状あるいは矩形状に形成されている。中継タンク(60a)の内部には、その上側寄りに第1流路(51a)の流出端部が臨んでおり、この流出端部に水浄化用ノズル(61)が接続されている。そして、水浄化用ノズル(61)の下側に放電電極(62)が設けられている。変形例の水浄化用ノズル(61)及び放電電極(62)は、上記実施形態の噴霧ノズル(21)及び放電電極(62)と同様の構成となっている。即ち、電源(63)から水浄化用ノズル(61)と放電電極(62)とに電位差が付与されることで、水浄化用ノズル(61)から噴出された水に対して、放電電極(62)からストリーマ放電が生起する。
【0059】
変形例の空気浄化装置(10)の運転時において、空気通路(15)に流入した空気は、噴霧ノズル(21)の下方を流れる。その結果、空気中に含まれるオイルミストや有害物質等が噴霧ノズル(21)の噴霧水に吸収/溶解される。その後、荷電集塵部(30)では、空気中に含まれるオイルミスト等が集塵電極部(31b)に捕捉される。ここで、集塵電極部(31b)には、噴霧ノズル(21)の噴霧水が送られるので、集塵電極部(31b)に付着した油分等が洗い流される。
【0060】
また、この変形例では、貯留槽(16)に回収された水が、第1流路(51a)を通じて水浄化放電部(60)へ送られる。水浄化放電部(60)の中継タンク(60a)内では、放電電極(62)と噴霧水との間でストリーマ放電が行われる。このストリーマ放電に伴い発生する活性種により、水中に含まれる有害物質の除去や殺菌が行われる。以上のようにして多量の活性種を含んだ水は、第2流路(51b)を通じて噴霧ノズル(21)から噴霧される。これにより、噴霧ノズル(21)からは活性種を含んだ水が噴霧される。従って、この噴霧水により、空気中のオイルミストや有害物質等が分解が促され、更には集塵電極部(31b)の洗浄効果が向上する。
【0061】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0062】
上記実施形態の空気浄化装置(10)は、厨房空間の排ガス処理に用いられるものであるが、この空気浄化装置(10)を一般家庭向けの空気清浄機として利用することもできる。
また、上記実施形態では、噴霧ノズル(21,61)に対向する放電電極(22,62)を3本で構成しているが、1本であっても良いし他の本数であっても良い。なお、放電電極(22,62)を1本とした場合には、この放電電極(22,62)を噴霧ノズル(21,61)と同軸、即ち中空円錐状に存在する噴霧水の軸心と一致させるのが好ましい。この場合、放電電極(22,62)の先端部から、その周囲の噴霧水の距離が周方向に均一になるので、放電電極(22,62)から放射状に均一に放電を生起でき、活性種を広範囲に安定して発生させることができる。
【0063】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、空気中の塵埃を電気的に捕捉する集塵電極を備えた空気浄化装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、実施形態に係る空気浄化装置の概略の全体構成図である。
【図2】図2は、放電噴霧部を拡大した概略構成図であり、ストリーマ放電の原理を説明するものである。
【図3】図3は、変形例に係る空気浄化装置の概略の全体構成図である。
【図4】荷電集塵部を拡大した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
11 ケーシング
15 空気通路
16 貯留槽
21 噴霧ノズル(噴霧部)
22 放電電極
30 荷電集塵部
31 第1電極板
32 第2電極板
50 水循環機構
60 水浄化放電部(放電部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(11)内の空気通路(15)に配置されると共に空気中で帯電させた塵埃を電気的に誘引して捕捉するための荷電集塵部(30)を備えた空気浄化装置であって、
上記空気通路(15)には、空気に向かって水を噴霧する噴霧部(21)が上記荷電集塵部(30)の上流側に設けられていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記空気通路(15)には、上記噴霧部(21)に対向するように放電電極(22)が設けられ、
上記噴霧部(21)から噴霧される水と上記放電電極(22)との間に電位差が付与されることで、上記放電電極(22)から噴霧水に向かって放電を生起するように構成されていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記ケーシング(11)内では、下方に向かって空気が流れるように上記空気通路(15)が形成され、
上記空気通路(15)では、上記荷電集塵部(30)の上方に上記噴霧部(21)が配置されていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記荷電集塵部(30)は、板状に形成されると共に鉛直な姿勢で上記空気通路(15)に保持される電極(31,32)を有していることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記ケーシング(11)の底部には、上記噴霧部(21)から噴霧された水が貯留される貯留槽(16)が形成され、
上記貯留槽(16)に溜まった水を上記噴霧部(21)へ送るための水循環機構(50)を更に備えていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記水循環機構(50)には、上記貯留槽(16)から上記噴霧部(21)へ送られる水に対して放電を生起させる放電部(60)が設けられていることを特徴とする空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−125653(P2009−125653A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302853(P2007−302853)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】