説明

空気清浄機及びそれを備えた設備機器

【課題】第1の目的は、室内の浮遊物質(例えば、塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)を効率よく除去することである。第2の目的は、大風量・低騒音な空気清浄機を提供することである。
【解決手段】吸気口2、排気口3及び吸気口2と排気口3とを連通させる通風経路部12と、が形成された本体1と、通風経路部12に設けられており、吸気口2から空気を取り込み排気口3から排出する送風ファン4と、通風経路部12に設けられており、吸気口2から本体1内に取り入れた空気中の塵埃を除去するフィルタ5と、水とナノコロイドからなる帯電水滴W3を通風経路部12に霧化放射する静電霧化装置7と、を備え、送風ファン4により排気口3から帯電水滴W3を含んだ空気を前記吸気口2の吸気側に向けて排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電させたナノコロイドを霧化放射する静電霧化装置を有する空気清浄機及びそれを備えた設備機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体が供給されている放電電極と対向電極との間に、高電圧を印加して放電を発生させて、放電電極が保持している液体にレイリー分裂を起こし、放電電極に供給されている液体を正または負に帯電させて、帯電水滴として液体を放射する静電霧化装置が報告されている。
【0003】
このような帯電水滴は、活性種(ラジカル)を含んでいるため、空間に存在する細菌の除菌や脱臭効果を期待することができる。例えば、従来の静電霧化装置を備えた空気清浄機は、吹き出し口からナノメータサイズの帯電水滴を発生させて、室内に放出する。こうして、空気清浄機は、室内に拡散した帯電水滴が空気中に存在する細菌を殺菌したり、臭気物質と反応して脱臭することが可能となっている。
【0004】
上記の静電霧化装置を空気清浄機の所定の位置に設けて、効率よく正確に室内にナノメータサイズのミストを放出する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。これにより、上記静電霧化装置の霧化は、ファン(送風部)によって発生する空気流に直接あたるのを防止する壁面を隔てた位置で行われ、空気流に影響を受けることなく確実に活性種を含むナノメータサイズのミストを発生させることができるようになっている。
【0005】
そして、上記の静電霧化装置で発生させたナノメータサイズのミストを空気清浄機内の風路を流れる空気流により誘因するための開口部は、フィルタ(空気清浄機の吸気口から取り入れた空気中の塵埃を集塵するフィルタ)よりも下流側に設けられている。つまり、空気清浄機内の風路の途中に又は排気口と併設して開口部が設けられているので、送風部から送風される空気流に影響されることなく、発生させたミストを空気流によって誘因して、フィルタで浄化された空気と共に空気清浄機の外の室内に拡散させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4004437号公報(3頁、第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の空気清浄機は、室内の略全体にナノコロイドを含有した帯電水滴を拡散させるため、室内の浮遊物質(例えば、塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)と上記帯電水滴との接触確率が低減してしまい、上記帯電水滴で上記浮遊物質を効率的に集塵、除去しにくくなってしまっていた。
また、フィルタの目付量を大きくし(フィルタの高性能化)、且つ、ファンの出力を上げることで、フィルタを通気する空気中の浮遊物質を除去する方法が考えられる。しかし、フィルタの目付量を大きくしたことで空気がフィルタを通気した際の圧力の損失が大きくなってしまっていた。また、ファンの出力を上げたためファンから騒音を発生してしまうおそれがあった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、室内の浮遊物質(例えば、塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)を効率よく除去することである。第2の目的は、大風量・低騒音な空気清浄機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気清浄機は、吸気口、排気口及び前記吸気口と排気口とを連通させる通風経路部と、が形成された本体と、通風経路部に設けられており、吸気口から空気を取り込み排気口から排出する送風ファンと、通風経路部に設けられており、吸気口から本体内に取り入れた空気中の塵埃を除去するフィルタと、水とナノコロイドからなる帯電水滴を通風経路部に霧化放射する静電霧化装置と、を備え、送風ファンにより排気口から帯電水滴を含んだ空気を吸気口の吸気側に向けて排出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る空気清浄機は、上記帯電水滴を吸気口の吸気側に向けて排出することにより、効率的に上記浮遊物質を除去することが可能となり、また、フィルタの目付量を大きくしないでよいので、大風量・低騒音な運転が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気清浄機の概要構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る空気清浄機の全体図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る空気清浄機内に備えられている静電霧化装置の構成の説明図である。
【図4】図1で示される静電霧化装置の斜視図である。
【図5】図3及び図4で示した静電霧化装置に流した放電電流に対してどれだけの帯電水滴が空気中に放出されるかを試験した結果である。
【図6】室内塵埃が時間に対してどれだけ除去されるかを試験した結果である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る静電霧化装置の構成の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1又は実施の形態2に係る空気清浄機の清浄機能を空気調和器に適用した場合の説明図である。
【図9】図1に示す空気清浄機に排気口が2つ備えられている場合を表す概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気清浄機100の概要構成図である。本実施の形態1における、空気清浄機100は、本体1と、吸気口2と、排気口3と、送風ファン4と、フィルタ5と、風向板6と、静電霧化装置7と、気化フィルタ8と、給水タンク9と、貯水トレイ10と、を少なくとも備えて構成されている。
図1の矢印AR1は、排気口3から排気された吹き出し空気の流れを表している。また、矢印AR2は吸気口2から取り込まれる吸い込み空気の流れを表している。また、矢印AR3は、通風経路部12の空気の流れを表している。点線PAは、後述するナノコロイドを含んだ帯電水滴W3を送風ファン4によって排気される空気と共に送り込む領域を表している(吸気口の吸気側)。
【0013】
吸気口2は、図2の説明において後述する本体正面部Aの略全面に設けられており、空気を空気清浄機100の内部に取り入れる部分に相当する。
【0014】
排気口3は、図2の説明において後述する凹部11の上部に設けられている風向板6によって形成される空気の吹き出口に相当する部分である。吸気口2と排気口3は、空気清浄機本体1内の通風経路部12を介して連通している。
【0015】
フィルタ5は、空気清浄機100内に取り入れた空気中に含まれる塵埃を集塵する部材である。フィルタ5は、不織布からなる材料を例えばハニカム形状、コルゲート形状、プリーツ形状、平板形状で形成されていればよい。図1で示すように、フィルタ5は、空気清浄機100の内部に設けられており、本体正面部Aに形成されている吸気口2の近傍に配置されている。
【0016】
送風ファン4は、空気清浄機100内に取り入れた空気を除湿または加湿するための気化フィルタ8(気化フィルタの位置については後述する)の上部に設けられている。また、送風ファン4は、フィルタ5と静電霧化装置7と干渉しないように、それぞれが所定の間隔をあけて、空気清浄機100内部に設けられている。
【0017】
風向板6は、板状の部材である(可動するのであれば、複数でなく1枚から構成されていてもよいが、図1及び図2では複数の風向板6があるものとして図示している)。この風向板6は、空気清浄機100の上部に形成されている凹部11上部に取り付けられている。この風向板6を所定の向きに調整して吸気口2の吸気側に向けて、後述する帯電水滴W3を含む空気を排出することが本発明におけるポイントとなっている。図1に示すように、風向板6は、例えば6つから構成されているものとして図示しているが、風向板6の枚数は限定されるものではない。
【0018】
静電霧化装置7は、通風経路部12のいずれかの位置に設けられており、空気清浄機100の内面に固定されている。
【0019】
気化フィルタ8は、空気清浄機100内の下部で、且つ、通風経路部12のいずれかの位置に設けられている。また、後述する、貯水トレイ10から液体を供給しやすい位置にあればよい。
【0020】
給水タンク9は、空気清浄機100内の背面部に設けられている。また、水を蓄えられるように略箱状の形状をしている。給水タンク9は、静電霧化装置7に水を供給できるように、静電霧化装置7に隣接している。また、後述する貯水トレイ10から供給される水を受け取れるように給水タンク9の下部は貯水トレイ10の上面部に隣接している。
【0021】
貯水トレイ10は、空気清浄機100内の底部に設けられており、内部に所定の量の水を蓄えることができるように略箱状の形状をしている。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1に係る空気清浄機100の全体図である。図2の灰色の矢印は排気口3から排気される吹き出し空気の流れを表している。また、白色の3つの矢印は、吸気口2から空気清浄機100内に取り込まれる空気の流れを表している。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態1に係る空気清浄機100の本体1は、略箱形状をしているが、空気清浄機100の形状は特に限定されるものではない。しかし本実施の形態1では略箱形状として説明する。空気清浄機100の本体1は、少なくとも本体正面部Aと、本体上面部Bと、本体底面部Cと、本体右側部Dと、本体左側部Eと、本体背面部Fと、からなる。
【0024】
本体正面部Aは、空気清浄機100を正面から見たときに、正面に取り付けられ、本体1の一部分を構成している。本体正面部Aの形状は、特に限定されるものではない。本実施の形態1に係る空気清浄機100の吸気口2は、本体正面部Aの略全面に形成されており、空気清浄機100内部と連通している。
【0025】
本体上面部Bは、空気清浄機100を正面から見たときに天面に取り付けられ、本体1の一部分を構成するものである。本体上面部Bは、空気清浄機100の上方から見ると鉛直下方向に、空気清浄機100の側断面がU字となる、凹部11が形成されていることが特徴である。図2で示すように、本体上面部Bは正面から見て手前側は奥側に比べて、鉛直方向の高さが低くなっている。さらに、本体上面部Bの上記手前側の部分の略中央に上記した凹部11が形成されている。そして、凹部11は、風向板6が取り付けられている。
【0026】
本体底面部Cは、空気清浄機100の底部に取り付けられている本体1の一部分を構成するものである(載置されたときに床面と接触する部分)。本体底面部Cの形状は、特に限定されるものではない。
【0027】
本体右側部Dは、空気清浄機100を正面から見たときに右側に取り付けられ、本体1の一部分を構成するものである。本体右側部Dの形状は、特に限定されるものではない。
【0028】
本体左側部Eは、空気清浄機100を正面から見たときに左側に取り付けられ、本体1の一部分を構成するものである。本体左側部Eの形状は、特に限定されるものではない。また本体右側部Dと本体左側部Eは、互いに向きあう面は平行になるように、空気清浄機100に取り付けられている。
【0029】
本体背面部Fは、空気清浄機100を正面から見たときに背面に取り付けられている本体1の一部分を構成するものである。本体背面部Fの形状は、特に限定されるものではない。
【0030】
図3は、図1に示した静電霧化装置7の構成の説明図である。図3に示すように、静電霧化装置7は、ナノコロイドを含有した放電電極601と、対向電極602と、放電電極601に水を供給する水供給装置603と、放電電極601と対向電極602に接続し、両極間に電圧を印加する高圧電源604と、放電電極601にナノコロイドを供給するナノコロイド担持体605と、水供給装置603から搬送された水を一旦貯水する水溜め部606と、ケーシング607から構成される。
【0031】
放電電極601に水を供給する水供給装置603は、給水タンク9から水を供給される第二水溜め部608と、第二水溜め部608から水溜め部606に水を搬送するパイプ609と、で構成される。また、第二水溜め部608には、水中のイオン成分(例えば、カルシウムイオンとマグネシウムイオン)を除去するイオン交換樹脂610が設けられている。
【0032】
放電電極601は、孔径が50〜150μmで、空隙率70〜80%となる発泡金属(例えばチタン)を形成加工して作成される。上記した孔径及び空隙率とすることで、水が金属全体に容易に含浸することが可能となっている。また、本実施の形態1において放電電極601を形成加工して作成する段階で、ナノコロイドは放電電極601に担持されているものとする。
【0033】
図4は、図1で示される静電霧化装置7の斜視図である。図4に示すように、放電電極601の形状は、突起部を一部に設けた形状となっている。本発明の実施の形態1では放電電極601に突起部を3つ設けたが、複数個にこだわる必要はなく、1つでもよい。複数個設けた場合、帯電水滴W3を放出する量が突起部の数だけ増加する。対向電極602は、平板金属に略円形の穴を突起部の数だけ形成加工して作成される。
【0034】
対向電極602の材質は、通常、導電性をもったものであればよく、本実施の形態1ではステンレスとしている。対向電極602は、放電電極601の突起部が向いた方向に所定の間隔をおいて設置される。一方で、放電電極601は、対向電極602に形成されている略円形の穴の中心部に突起部が向かうよう設置される。
【0035】
ナノコロイド担持体605が担持しているナノコロイドは、粒子径が例えば1〜50nm程度の貴金属粒子(例えば、白金、金または銀)からなる。ナノコロイドは、ナノコロイドに分散素材(例えば、クエン酸やアスコルビン酸)を加えることによってナノコロイドの表面が上記分散素材に覆われた形態をとる。
【0036】
これにより、ナノコロイドは、ナノコロイド担持体605から放電電極601に水及び分散素材とともに浸透して移動し、その後、放電電極601を加熱することで放電電極601の表面にナノコロイドと水分のみが残る。つまり、分散素材は、ナノコロイドをナノコロイド担持体605から放電電極601表面に、容易に、かつ、均一に移動させる役割を果たしている。
【0037】
ナノコロイドを放電電極601に担持させる量は、放電電極601の加熱温度を変化させることで調節することが可能となっている。そして、ナノコロイドを担持させた後の放電電極601の空隙率を60%以上とすることで、帯電水滴W3の放出量は一定値に保たれる。
【0038】
上記したように、放電電極601は、形成加工される段階でナノコロイドを担持しているが、それに加えて更に、放電電極601にコロイダルシリカのセラミック粉を担持させることも有効である。なぜならコロイダルシリカのセラミック粉は、吸水性に優れており、放電電極601に担持させることで、放電電極601に容易に水を導くことが期待できる。静電霧化装置7の放電により、放電電極601の表面の水は次々に霧化されてしまうので、それに伴って水を供給していく必要があるが、コロイダルシリカにより、容易に放電電極601に浸透するようになり、より効率的に帯電水滴W3を放射することを期待することができる。
【0039】
ナノコロイド担持体605は、放電電極601の少なくとも一部が接するように、静電霧化装置7内に設けられている。また、ナノコロイド担持体605は、水溜め部606の貯留されている純水W2に浸漬するように設けられており、純水W2から水分を吸収できるようになっている(ナノコロイド担持体605は、例えば不織布より形成される吸水部材である)。
【0040】
ナノコロイド担持体605にも、放電電極601と同様のナノコロイドが、同様の形態で担持されている。この発明の実施の形態1では、ナノコロイド担持体605を設置したが、設置しなくてもよい。なぜなら、既に放電電極601にナノコロイドは担持されているからである。しかし、放電電極601に担持することができるナノコロイドの量は、ナノコロイド担持体605より少ない。つまり、空気清浄機100は、ナノコロイド担持体605を設けたほうがより長期間に渡ってナノコロイドを放出することができる(長寿命化)。従って、本実施の形態1においては、ナノコロイド担持体605を放電電極601に隣接させている。
【0041】
放電電極601及びナノコロイド担持体605には、水溜め部606から水が供給される。水溜め部606の上方には、第二水溜め部608が設置され、第二水溜め部608から水溜め部606に、パイプ609によって水を供給するようになっている。第二水溜め部608に貯留されている水は、給水タンク9に貯留されている水道水W1より供給されている。
【0042】
第二水溜め部608の内部に設置されるイオン交換樹脂610は、第二水溜め部608に貯留されている水道水W1のイオン成分(例えば、カルシウムイオンとマグネシウムイオン)を除去して純水W2とすることが可能となっている。その後、その純水W2は、パイプ609を伝い水溜め部606に貯留される。なお、本実施の形態1では、水溜め部606を設置したが、第二水溜め部608から直接放電電極601及びナノコロイド担持体605に供給してもよい。
【0043】
次に、静電霧化装置7の動作について説明する。
上記したように、静電霧化装置7は、給水タンク9に供給された水道水W1が、第二水溜め部608に供給され、第二水溜め部608の内部に設置されるイオン交換樹脂610により、水道水W1中のイオン成分(例えば、カルシウムイオンとマグネシウムイオン)を除去する。その後、純水W2は、パイプ609を流れていき水溜め部606に供給される。水溜め部606の純水W2は、放電電極601およびナノコロイド担持体605に供給される。
【0044】
放電電極601およびナノコロイド担持体605に担持されているナノコロイドは、上記した純水W2と一緒に移動する。放電電極601は、孔径が50〜150μm、空隙率が70〜80%で、ナノコロイドは、粒子径が1〜50nmとなっている。孔径はナノコロイドに比べて充分大きく、また、孔径は放電電極601に充分存在するので、ナノコロイドは放電電極601の内部を水と一緒に移動するのが容易になっている。
【0045】
放電電極601と対向電極602には、高圧電源604が接続されており、放電電極601に3〜6kVの高電圧が印加される。本実施の形態1においては、放電電極601は負に、対向電極602は正の電極につなぐようにする。
放電電極601に高電圧を印加すると、放電電極601の先端に保持されたナノコロイドを粒子として含有した水と対向電極602との間にクーロン力が働き、水の表面が局所的に盛り上がってテイラーコーンを生成する。クーロン力が水の表面張力を超えると、テイラーコーンが分裂し、数nmのナノコロイドを粒子として含有した帯電水滴W3となり空気清浄機100の外部に放出される。
【0046】
次に、静電霧化装置7を備えた空気清浄機100の動作について説明する。
上記の空気清浄機100においては、空気清浄機100を稼動すると、送風ファン4が稼動し、室内に浮遊する塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等は、吸気口2から空気清浄機100内に取り込まれる。静電霧化装置7からは、ナノコロイドを粒子として含有した帯電水滴W3が放出され、送風ファン4により清浄空気と一緒に排気口3から放出される。
【0047】
風向板6は、上記したように複数枚からなり、それぞれが独立して可動することが可能となっている。風向板6の可動範囲は、吸気口2の吸気側に向けて帯電水滴W3を供給することができるまで及ぶようになっている。本実施の形態1においては、風向板6は、第1風向板6aと第2風向板6bとから構成されている。第1風向板6aの向きは、第1風向板6aから排気される帯電水滴W3を含んだ空気が吸気口2の吸気側とし、第2風向板6bを室内(例えば、家の居住空間、サーバーが置かれるサーバールーム、倉庫等)とすることで、2方向に排気することが可能となっている。図1及び図2では、風向板6が複数枚設けられている空気清浄機100を図示しているが、風向板6の枚数は特に限定されるものではない。
例えば、風向板6は1枚で構成されていてもよい。その場合は、風向板6は、一定時間毎に方向が変化することで、塵埃・煙・花粉・かび・アレルゲン・ウイルス等を効率良く除去することができる。
【0048】
帯電水滴W3は、吸気口2から吸引される塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等を帯電、粗大化することができるようになっている。こうして、帯電、粗大化された花粉・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等は、フィルタ5により捕集されやすくなる。
【0049】
この場合、吸気口2の吸気側に搬送された帯電水滴W3は、吸気口2から吸引される塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等を帯電、粗大化し、室内に放出された清浄空気は、室内を撹拌することが可能となる。
【0050】
図9は、図1に示す空気清浄機100に排気口が2つ備えられている場合を表す概要構成図である。
図9に示すように、吸気口2の吸気側にナノコロイドを含む微細な帯電水滴W3及び清浄空気を排気する第1排気口3aと、清浄空気を室内に吹き出す第2排気口3bの2種類から構成した場合も同様の効果を得られる。この場合は、第1排気口3aからのみ帯電水滴W3を放出し吸気口2の吸気側に向けて送り込み、第2排気口3bからは清浄空気を室内略全体に送り込むことにして、それぞれの役割を明確に区別することが特徴である。
【0051】
つまり第1排気口3aは、帯電水滴W3を吸気口2の吸気側に送り込むという役割に焦点を絞っている。仮に、第1排気口3aから室内略全体に帯電水滴W3を送り込むとしたとき、室内略全体(清浄空間)浮遊している臭気物質の臭気を取り除き、また、細菌の除菌をすることはできる。しかし、それらを凝集して空気清浄機100内に取り込みフィルタ5で除去するという観点から考察すると非効率的となってしまう(図5にて詳細を述べる)。そこで、第1排気口3aは、帯電水滴W3を吸気口2の吸気側に送り込むことを役割とし、それにより効率的に室内の塵埃を集塵して除去することが可能となる。
【0052】
第2排気口3bは、清浄空気を室内全体に送り込むことを役割としている。これにより、室内略全体に清浄空気が行き渡るようになる。
【0053】
また、第1排気口3aは、空気清浄機100を正面から見たときに正面側に備えて、第2排気口3bは手前側からみて第1排気口3aより奥に備えるのがよい。これにより、第1排気口3aは吸気口2により近くなり、吸気口2の吸気側に帯電水滴W3を送り込みやすくなる。
【0054】
本実施の形態1において、空気清浄機100から排気される帯電水滴W3により、吸引する空気中に含まれる塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等を帯電、粗大化が可能となっていることは上記通りである。その他に、吸引する空気中に含まれる塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等を帯電、粗大化することで、フィルタ5の目付け量を低減しても、集塵効率を低下させることを避けることができる。
【0055】
つまり、本実施の形態1においては、高性能な目付量の多いフィルタ5を用いる必要がないということになる。加えて、目付量が少ないフィルタ5でもよいことから、圧力損失が低減するため、大風量化と低騒音化が可能になる。
まず第1に、目付量が小さいフィルタ5でもよいことから、フィルタ5を空気が通気しやすくなり、同じ送風ファン4の出力において、目付量の多いフィルタに比べると単位時間あたりより多くの空気を吸引し、より多くの空気を放出することが可能となっている(大風量化)。
【0056】
また、従来の目付量が多いフィルタ5では、フィルタ5がきめ細かいために、空気が通りづらくなってしまっていた。これに対応するために、空気を取り込む送風ファン4の出力を大きくしなければならなくなってしまっていた。これにより、送風ファン4の大出力化による騒音と、空気がフィルタ5を通過する際に発生する騒音が問題となってしまっていた。しかし本実施の形態1におけるフィルタではそういった騒音の発生を避けることが可能となっている(低騒音化)。
【0057】
図5は、図3及び図4で示した静電霧化装置7に流した放電電流に対してどれだけの帯電水滴W3が空気中に放出されるかを試験した結果である。縦軸が、単位体積あたりの帯電イオン数を、横軸は放電電極と対向電極間に流れている電流を示している。つまり、図5に関わる試験では、本発明の実施の形態1と同じ構成のナノコロイド(ナノコロイドには、白金を使用)含有帯電水滴W3を空気中に排気した場合に、放電電流に対する帯電イオンの空気中の単位体積あたりの個数と、ナノコロイドを含有しない水滴を空気中に排気した場合の放電電流に対する帯電イオンの空気中の単位体積あたりの個数と、を示したものである。
【0058】
図5に示すように、同じ放電電流でも、帯電イオン数は、ナノコロイド含有の帯電水滴W3の方が、ナノコロイドを含有しない帯電水滴W3よりも多いことがわかる。すなわち、ナノコロイドを含有する帯電水滴W3を排気することで、単位体積あたり、より多くの水滴が電荷を保持した状態で存在するということである。
【0059】
本実施の形態1において、放電電極601と対向電極602間に印加している電圧はマイナス(対向電極が正極、放電電極が負極)である。つまり帯電水滴W3は、負に帯電している。よって、プラスに帯電している塵埃等(例えば、塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)に対する吸引効果がある(負に帯電していない水滴より、負に帯電している水滴の方が塵埃等をより凝集、粗大化することが可能である)。そして、空気中の帯電イオン数が多いほうが、より吸引する効果が高い。そのため、水滴を例えば室内に放射する場合、ナノコロイドを含有させることで、塵埃等を吸引する効果が高まり、空気中の塵埃を凝集、粗大化することが容易になる。
【0060】
図6は、室内塵埃が時間に対してどれだけ除去されるかを試験した結果である。縦軸は、約1μmの塵埃(例えば、塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等から構成される粒子)の室内の残存率を、横軸は空気清浄機100を起動してからの経過時間を示している。つまり、図5は本実施の形態1における空気清浄機100を室内に設置して、室内の塵埃(直径1μmの粒子)の残存率がどのように時間変化をするかを示したものである。
【0061】
図6で示す試験では、本実施の形態1と同じ構成のナノコロイドを含有した帯電水滴W3を吸気口2の吸気側に排気した場合と、帯電水滴W3を室内略全体に排気した場合と、帯電水滴W3を排気しない場合と、3つの条件で試験している。
この試験から、本発明の実施の形態1と同じ構成のナノコロイドを含有した帯電水滴W3を吸気口2の吸気側に排気した場合は、速やかに上記粒子が室内から除去されていくことがわかる。一方で、帯電水滴W3を室内略全体に排気した場合と帯電水滴W3を排気しない場合は、上記粒子の除去速度が帯電水滴W3を吸気口2の吸気側に排気した場合に比べて遅い。加えて、帯電水滴W3を室内略全体に排気した場合と帯電水滴W3を排気しない場合の上記粒子の除去速度は、それぞれ同じ程度である。
【0062】
つまり、ナノコロイドを含有した帯電水滴W3を吸気口2の吸気側にポイントを絞って排気することは、室内の上記粒子を除去する上で有効である。しかし、室内略全体にナノコロイドを含有した帯電水滴W3を排気することは、室内略全体に浮遊している例えば細菌やウイルス等の殺菌という観点では有効と言えるが、室内略全体に浮遊している上記粒子を集塵してフィルタ5で除去する効果は小さい(帯電水滴W3を排気しない場合とあまり変わらない)。
【0063】
実施の形態1の説明の最後に、上記した本体上面部Bを正面から見たとき、手前側の鉛直方向の高さが低くなっていることについて説明する。本実施の形態1では、ナノコロイドを含んだ帯電水滴W3を吸気口2の吸気側(本体正面部Aの手前)に送り込むことで、効率的に、上記浮遊物質の除去が可能となっている。それに伴い、本体上面部Bに形成されている排気口3(凹部11と風向板6から形成されている)が、正確に吸気口2の吸気側にナノコロイドを含んだ帯電水滴W3を送り込む必要がある。そこで、本体上面部Bの上記手前側の鉛直方向の高さを低くして、排気口3と本体上面部Bの上記手前側に角度を持たせることで、ナノコロイドを含んだ帯電水滴W3が容易に吸気口2の吸気側に送りこまれる構成となっている。
【0064】
以上のように、本実施の形態1における空気清浄機100では、吸気口2の吸気側にナノコロイドを含む帯電水滴W3を排気することで、室内の浮遊物質(塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)と帯電水滴W3の接触確率を増加させ、室内の上記浮遊物質を効率よく帯電、粗大化し、フィルタで容易に除去することができる。
また、上記浮遊物質が粗大化されることにより、目付け量が少ない低圧力損失のフィルタを使用することが可能となり、大風量化、低騒音化が可能になるという効果がある。
【0065】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2を図面に基づいて説明する。
なお、本実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様の箇所は説明を省略し、本実施の形態2の特徴部分について説明するものとする。
図7は、本発明の実施の形態2に係る静電霧化装置7の構成の説明図である。実施の形態1との相違点は、静電霧化装置7に水を供給する方法が異なっている点である。実施の形態1では、水は貯水トレイ10に貯留されている水が給水タンク9に供給され、給水タンク9に貯留されている水が水供給装置603に供給されるという構成になっていた。
しかし、本実施の形態2においては、水供給装置603がペルチェ素子から水を供給される構成となっている。
【0066】
実施の形態1の水供給装置603は、貯水トレイ10及び給水タンク9に貯留されている水道水W1を供給される構成となっていた。そのため、水道水W1に含まれるイオン成分(例えば、カルシウムイオンとマグネシウムイオン)を除去する必要があった。しかしペルチェ素子611は、電極間に電圧を印加すると、電極間に温度差が発生する。それによりペルチェ素子611近傍の空気が冷やされて結露し、結露水が生成される。本実施の形態2では、このようにして生成された上記結露水を水供給装置603に供給する構成となっている。
【0067】
上記したペルチェ素子611から水供給装置603に供給される水は、水道水W1ではなく結露水なので、イオン成分(例えば、カルシウムイオンとマグネシウムイオン)を含んでいる水道水W1とは異なり、水分中に余計な不純物を殆ど含んでいない。従って、本実施の形態2においては、水供給装置603にイオン交換樹脂610を備える必要がなくなる。
【0068】
以上のように、本実施の形態2における空気清浄機100では、実施の形態1と同様に吸気口2の吸気側にナノコロイドを含む帯電水滴W3を排気することで、室内の浮遊物質(塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)と帯電水滴W3の接触確率を増加させ、室内の上記浮遊物質を効率よく帯電、粗大化し、フィルタ5で容易に除去することができる。また、上記浮遊物質が粗大化されることにより、目付け量が少ない低圧力損失のフィルタを使用することが可能となり、大風量化、低騒音化が可能になるという効果がある。
さらに、静電霧化装置7内の水供給装置603にペルチェ素子611が備えられており、ペルチェ素子611から水供給装置603に供給される結露水は、イオン成分(例えばカルシウムイオンとマグネシウムイオン)を含んでいないので、水供給装置603にイオン交換樹脂610を備える必要がなくなるという効果がある。
【0069】
以上、各実施の形態で説明した空気清浄機100は、室内の浮遊物質(塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)を効率よく除去する機能を有し、さらに、空気清浄機100に取り入れる空気の圧力損失は小さく、また、発生する騒音は小さい。そこで、上記浮遊物質の除去機能は、空気調和機、掃除機、ハンドドライヤー、加湿機、除湿機、冷蔵庫に対して適応してもよい。これらの設備機器に、上記浮遊物質の除去機能を持たせることで、ユーザーの快適性及び利便性が向上することが期待される。
【0070】
最後に、各実施の形態で説明した空気清浄機100の室内の浮遊物質の除去機能を空気調和機101に適用した際の動作例を簡単に説明する。
図8は、本発明の実施の形態1又は実施の形態2に係る空気清浄機100の清浄機能を空気調和機101に適用した場合の説明図である。図8の灰色の矢印AR4は、吸気口2から取り込んだ吸い込み空気の流れを表している。また、黒い矢印AR5は、排気口3から排気される空気の流れを表している。
【0071】
図8に示すように、空気調和機101は少なくとも本体1と、吸気口2と、排気口3と、送風ファン4と、フィルタ5と、風向板6と、静電霧化装置7と、熱交換器13と、を備えて構成されている。
【0072】
吸気口2から取り入れた吸い込み空気は、フィルタ5によって集塵される。こうして清浄された空気は、静電霧化装置7によってナノコロイドを含んだ帯電水滴W3を含み、その後、空気調和機101内の熱交換器13を通気して加温または冷却される。そして、加温又は冷却された帯電水滴W3を含んだ空気は、送風ファン4によって排気口3から排気される。そのとき、排気口3から排気される空気の一部は、風向板6の角度を所定の位置に調節することによって、吸気口2の吸気側に向けて送りこまれる。これにより、吸気口2の吸気側には、帯電水滴W3が排気されることになる。この帯電水滴W3は、吸気口2の吸気側の浮遊物質(塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等)を帯電して、粗大化する。そして、上記浮遊物質は、吸気口2から空気調和機101の内部に取り込まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 本体、A 本体正面部、B 本体上面部、C 本体底面部、D 本体右側部、E 本体左側部、F 本体背面部、2 吸気口、3 排気口、3a 第1排気口、3b 第2排気口、4 送風ファン、5 フィルタ、6 風向板、6a 第1風向板、6b 第2風向板、7 静電霧化装置、8 気化フィルタ、9 給水タンク、10 貯水トレイ、11 凹部、12 通風経路部、13 熱交換器、100 空気清浄機、101 空気調和機、601 放電電極、602 対向電極、603 水供給装置、604 高圧電源、605 ナノコロイド担持体、606 水溜め部、607 ケーシング、608 第二水溜め部、609 パイプ、610 イオン交換樹脂、611 ペルチェ素子、W1 水道水、W2 純水、W3 帯電水滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口、排気口及び前記吸気口と前記排気口とを連通させる通風経路部と、が形成された本体と、
前記通風経路部に設けられており、前記吸気口から空気を取り込み前記排気口から排出する送風ファンと、
前記通風経路部に設けられており、前記吸気口から前記本体内に取り入れた空気中の塵埃を除去するフィルタと、
水とナノコロイドからなる帯電水滴を前記通風経路部に霧化放射する静電霧化装置と、を備え、
前記送風ファンにより前記排気口から前記帯電水滴を含んだ空気を前記吸気口の吸気側に向けて排出する
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
前記排気口に設けられ、排出される空気の方向を変える風向板を備え、前記帯電水滴を含んだ空気の排出方向を前記吸気口の吸気側にする
ことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記風向板は、
前記帯電水滴を含んだ空気の排出方向を前記吸気口の吸気側にする第1風向板と、
前記帯電水滴を含んだ空気の排出方向を前記第1風向板とは異なる方向にする第2風向板と、で構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記排気口は、
前記吸気口の吸気側に前記帯電水滴を含む空気を排出する第1排気口と、
前記第1排気口とは異なる方向に前記帯電水滴を含む空気を排出する第2排気口と、で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記静電霧化装置は、前記静電霧化装置に水を供給する水供給装置を備え、
前記水供給装置は、樹脂から構成されるイオン除去部材を備えている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記静電霧化装置は、前記静電霧化装置に水を供給する水供給装置を備え、
前記水供給装置は、ペルチェ素子を備えている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記ナノコロイドを内部に担持し、前記放電電極に前記ナノコロイドを補充する担持体を備えている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記ナノコロイドは、白金、銀または金からなる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の空気清浄機を備えている
ことを特徴とする設備機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−226744(P2011−226744A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99141(P2010−99141)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】